説明

瞬間給湯式シャワートイレ

【課題】交流電源の周波数判定に要する判定時間を従来よりも短縮するとともに、判定信頼性及び安全性を一層向上した制御装置を備える瞬間給湯式シャワートイレを提供する。
【解決手段】給水管路2と、流量調整弁(3)と、水温センサ(45、46)と電気ヒータ(41)とからなり該給水管路2の途中に配設される加熱装置(4)と、水温入力部(51、52)と周波数判定部と加熱制御部と流量制御部とを有する制御装置5と、を備える瞬間給湯式シャワートイレ1において、前記周波数判定部は、前記交流電源の電圧ゼロ点を検出するゼロ点検出回路53と、検出された該電圧ゼロ点の時間間隔を求めさらに前記周波数Fを判定する演算手段(周波数演算ロジック部55)と、を有し、前記加熱制御部(温度制御ロジック部57及び位相制御回路54)は、判定した該周波数Fをもとにして制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気ヒータを用いた瞬間給湯式シャワートイレに関し、より詳細には交流電源の周波数を検出して電気ヒータを制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
洗浄ノズルから洗浄用の温水を噴出するシャワートイレでは、従来は温水タンクを備えて相当量の温水を常備する方式が一般的であった。しかしながら、温水タンクは大形で設置スペースが必要であり、また温水の温度を維持するために保温電力が必要とされていた。そこで最近では省スペース及び省エネルギの観点から、温水タンクに代えて瞬間給湯器を備えたシャワートイレの開発が進められている。瞬間給湯式シャワートイレの構成としては、給水管路、流量調整弁、電気ヒータ、水温センサを備え、さらに温水の温度や流量などを制御する制御装置を備えるのが一般的になっていた。制御装置は、使用者の操作に応じて動作し、水温を検出しつつ、電気ヒータに通電して適温の温水を供給するように構成されている。
【0003】
シャワートイレは一般家庭などに広く普及しており、電源には通常低圧交流電源が用いられている。周知のように、日本国内の交流電源の周波数は地域により50Hzと60Hzのどちらか一方が用いられており、海外でも周波数は国によって異なっている。そして、どちらの周波数にも適用できるように、シャワートイレは50/60Hz共用とされ、制御装置自身が周波数を判定して制御を行うように構成されている場合が多い。例えば、特許文献1〜3に開示された制御装置は、いずれも周波数の判定を行う制御部を備えている。
【0004】
特許文献1の制御部は、電源投入時だけでなく便座への着座があったときにも周波数の判定を行い、周波数が誤判定されたまま長時間続くことを防止している。周波数の判定方法は、交流電源の電圧ゼロ点を検出し、一定時間内例えば100ms内の電圧ゼロ点の個数をカウントして、50Hzか60Hzかを判定している。特許文献2では、着座がない場合にも一定時間毎に周波数を判定するようにして、信頼性を向上している。さらに、特許文献3では、電源投入時に周波数を複数回判定することにより、ノイズや電源不安定に起因する誤判定を除去するようにしている。
【特許文献1】特公平6−3035号公報
【特許文献2】特公平7−6224号公報
【特許文献3】特開平8−253962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1及び特許文献2の制御部では周波数の判定に100ms以上、特許文献3の制御部では最低でも200ms以上の判定時間が必要になる。この判定時間は、従来の温水タンク式シャワートイレではあまり問題にならないが、瞬間給湯式シャワートイレでは使用者の利便性を低下させることになる。なぜなら、温水タンク式では常備している温水を供給するだけでよいのに対し、瞬間給湯式では周波数判定後速やかに電気ヒータに通電して水を加熱する必要があるからである。たとえわずかであっても待ち時間の存在は、使用者の利便性、快適性を損ねるおそれがある。
【0006】
さらに、特許文献1〜3の制御部では、不規則なノイズや電源電圧の波形変歪などに起因する周波数の誤判定がないとは断言できず、判定の信頼性を一層向上して安全性を高めることが好ましい。
【0007】
本発明は上記背景に鑑みてなされたものであり、交流電源の周波数判定に要する判定時間を従来よりも短縮するとともに、判定信頼性及び安全性を一層向上した制御装置を備える瞬間給湯式シャワートイレを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の瞬間給湯式シャワートイレは、洗浄ノズルに洗浄用の水を供給する給水管路と、該給水管路の途中に配設される流量調整弁と、水温を検出する水温センサと該水を加熱する電気ヒータとからなり該給水管路の途中に配設される加熱装置と、検出された該水温のデータが入力される水温入力部と該電気ヒータの交流電源の周波数を判定する周波数判定部と該電気ヒータを制御する加熱制御部と該流量調整弁を制御する流量制御部とを有する制御装置と、を備える瞬間給湯式シャワートイレにおいて、前記周波数判定部は、前記交流電源の電圧ゼロ点を検出するゼロ点検出回路と、検出された該電圧ゼロ点の時間間隔を求めさらに前記周波数を判定する演算手段と、を有し、前記加熱制御部は、判定した該周波数をもとにして制御を行う、ことを特徴とする。
【0009】
本発明の瞬間給湯式シャワートイレは、一定時間内の電圧ゼロ点の個数をカウントする方法に代え、電圧ゼロ点の時間間隔から交流電源の周波数を判定することにより、周波数判定時間を短縮することを要旨としている。
【0010】
まず、本発明の瞬間給湯式シャワートイレの構成について説明する。給水管路は、給水源と便器に設けられた洗浄ノズルとを接続し、洗浄用の水を供給する部位である。給水管路の途中には流量調整弁を配設することができる。流量調整弁は、給水管路の開閉及び開度の調整を行って、水の流量を調整する部位である。流量調整弁には、例えば、電気信号により遠隔制御可能な電磁弁を適用することができる。給水管路の途中にはさらに加熱装置を配設することができる。加熱装置は、水温を検出する水温センサと、水を加熱する電気ヒータと、で構成することができる。水温センサは、給水管路内を流れる水の温度を検出するものであり、その感温部は給水管路内に設けられることが好ましい。また水温検出の時間遅れを避けるために、感温部の熱容量は小さいことが好ましい。電気ヒータには、例えばジュール熱を発生するセラミックヒータを用いることができ、給水管路に巻回し管路壁を介して水を加熱するように配設することができる。あるいは、熱交換器を介して間接的に水を加熱するようにしてもよい。
【0011】
制御装置は、水温入力部と、周波数判定部と、加熱制御部と、流量制御部と、を有しており、例えば、マイクロコンピュータを応用した電子制御装置を用い、内蔵されたソフトウェアで制御を行うようにして、構成することができる。水温入力部には水温センサを配線接続して、検出された水温のデータが入力されるようにすることができる。
【0012】
周波数判定部は、ゼロ点検出回路と演算手段とで構成することができる。ゼロ点検出回路は、例えば、入力として電気ヒータの交流電源の電圧信号を取り込み、電圧ゼロ点でパルスを出力する公知のアナログ回路を用いて、構成することができる。あるいは、電圧信号をA/D変換しディジタル計測して得た電圧波形データから電圧ゼロ点のタイミングを読みとるディジタル回路を用いて、構成することもできる。演算手段は、検出された電圧ゼロ点のタイミングを認識し、タイマを内蔵して計時することにより、電圧ゼロ点の時間間隔Tを求めることができる。さらに、電圧ゼロ点は交流1サイクル中に2回発生することから、時間間隔Tの逆数を2で除することにより周波数F(=1/(2×T))を求めることができる。あるいは、求めた時間間隔Tの値により、周波数Fを50Hzまたは60Hzのどちらかと判定するようにしてもよい。演算手段による時間間隔Tや周波数Fの演算は、前述の電子制御装置のソフトウェアで行うようにすることができる。
【0013】
加熱制御部は、検出された水温を設定された適温にまで上昇させるために、周波数判定部で判定した周波数をもとにして電気ヒータの通電を制御するものである。流量制御部は、設定された流量を実現するために、流量調整弁の開閉及び開度を制御するものである。
【0014】
制御装置は、上述の他に、使用者が洗浄を指示したり好みの水温や流量、ノズル位置などを設定したりする操作部や、使用者の着座を自動検出する着座検出部など、を有するようにしてもよい。
【0015】
次に、本発明の瞬間給湯式シャワートイレにおける周波数判定の方法、動作、作用について説明する。
【0016】
前記周波数判定部は、前記加熱制御部が前記電気ヒータに通電する直前に動作し、さらに通電中にも動作する、ことが好ましい。使用者が洗浄を指示したときに温水が必要となるため、加熱制御部は電気ヒータに通電するが、通電する直前に周波数判定部で交流電源の周波数を判定することが好ましい。さらに通電中にも周波数を判定することが好ましい。他に、給水管路内の水の凍結防止のために電気ヒータに通電する場合にも、周波数を判定することが好ましい。通電直前及び通電中に周波数を判定することにより、誤った周波数のままで電気ヒータを制御することがなくなり、安全性が向上する。
【0017】
前記周波数判定部は、求めた前記時間間隔が規定範囲を外れたときには無効として廃棄し無効回数をカウントアップするとともに該時間間隔を求める動作を繰り返し、該無効回数が規定回数に達する以前に該規定範囲内の有効な該時間間隔が得られた場合には前記周波数を判定し、該無効回数が規定回数に達した場合には装置異常と判定する、ようにしてもよい。
【0018】
電気的なノイズや電源不安定の影響により、電圧ゼロ点が必ずしも正しく検出できない場合に備えて、求めた時間間隔の有効性を確認する方法を用いることができる。以下に詳細に説明すると、電圧ゼロ点の時間間隔は、周波数50Hzで10ms、周波数60Hzで8.3msであり、この2値に対して有効な規定範囲の幅をそれぞれ設けることができる。そして、求めた時間間隔がどちらかの規定範囲内にあれば有効データとして周波数を50Hzまたは60Hzと判定し、規定範囲を外れたときには無効データとすることができる。無効データのときには、無効回数をカウントアップするとともに再度時間間隔を求める動作を繰り返すようにすることができる。無効回数が規定回数に達する以前に有効データが得られれば周波数を判定することができ、無効回数が規定回数に達した場合には、周波数の判定は不能として、装置異常と判定することができる。装置異常時には、制御装置の動作を中断するとともに、異常であることを表示または通報するように、構成しておくことが好ましい。
【0019】
上述の周波数判定方法によれば、通常の動作では電圧ゼロ点が正しく検出され、高々10ms程度で周波数が判定され、判定時間は従来よりも格段に短縮される。偶発的なノイズなどにより電圧ゼロ点が正しく検出されなかった場合には、再度の動作によって正しい電圧ゼロ点が検出され、正しい周波数が判定される。また、恒常的なノイズや電源不安定により周波数判定が行えない場合には装置異常と判定され、周波数が不明の状態で動作することはなくなる。さらに、装置異常が使用者に認識されるため、対策を講じることができる。以上説明したように、周波数判定の信頼性は一層向上するとともに、フェイルセーフ機能を有して安全性も向上する。
【0020】
前記加熱制御部は、前記交流電源の通電位相を制御して前記電気ヒータに供給する、ことが好ましい。
【0021】
本発明は、加熱制御部が交流電源の通電位相を制御する方式の場合、特に効果が顕著である。なぜなら、サイリスタなどの電力用半導体を用いて通電位相を制御する方式では、制御の基本となるのは交流1周期のサイクルタイムであり、正しい周波数を判定することが前提条件とされているからである。
【0022】
前記加熱制御部は、検出された前記水温に対して比例項と積分項とからなるPI制御を行い、かつ積分項の定数は判定された前記周波数に従属して可変とされている、ようにしてもよい。
【0023】
検出された水温を設定された適温にまで上昇させるために、加熱制御部はPI制御(比例積分制御、Proportional and Integral Control)を行うようにしてもよい。すなわち、検出水温と設定温度との差分に比例する比例項の熱量と、水温変化の積分量に比例する積分項の熱量と、の合算値が電気ヒータで発生するように制御してもよい。なお、検出水温のフィードバック及び制御条件の更新は、サイクルタイムの整数倍を制御周期として行うことが好ましい。そして、比例項及び積分項の定数を加熱装置の構造に合わせて適宜設定することにより、速やかでかつオーバーシュートのない滑らかな水温変化の収束特性を実現することができる。また、積分項には積分時間である制御周期が関与するため、積分項の定数が周波数に従属して可変になっていると、水温変化の収束特性は一層良好となる。実用上は、積分項の定数を50Hz用と60Hz用の2種類準備しておき、判定された周波数に基づいて使い分けるようにすることができる。
【発明の効果】
【0024】
上述の本発明の瞬間給湯式シャワートイレによれば、電圧ゼロ点を検出してその時間間隔から周波数を求める周波数判定部を有するので、周波数の判定時間を従来よりも格段に短縮することができる。また、加熱制御部が前記電気ヒータに通電する直前及び通電中に周波数判定を行う態様では、誤った周波数のままで電気ヒータを通電制御することがなくなり、安全性が向上する。さらに、電圧ゼロ点の時間間隔の有効性を確認する態様では、判定信頼性及び安全性を一層向上することができる。
【0025】
本発明は、加熱制御部が交流電源の通電位相を制御する方式の場合に効果が顕著であり、とりわけ、検出水温に対してPI制御を行う際に積分項の定数を周波数に従属して可変とすることにより、水温変化の収束特性を極めて良好なものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明を実施するための最良の形態を、図1〜図4を参考にして説明する。図1は、本発明の実施例の瞬間給湯式シャワートイレの構成を説明するブロック図である。実施例の瞬間給湯式シャワートイレ1は、給水管路2、流量調整/水路切替バルブ3、ヒータユニット4、電子制御装置5、操作部6を備えている。なお、図中の矢印は信号及び制御の流れを示している。
【0027】
給水管路2は、給水源に接続され、便器に設けられた洗浄ノズルに洗浄用の水を供給する部位である。流量調整弁に相当する流量調整/水路切替バルブ3は、給水管路2の途中に配設され、給水管路2の開閉及び開度の調整を行って、水路の切替及び流量調整を行う部位である。流量調整/水路切替バルブ3は電磁操作方式であり、制御装置5から制御されるようになっている。
【0028】
加熱装置に相当するヒータユニット4は、給水管路2の途中に配設されている。ヒータユニット4は、セラミックヒータ41と入口水温検知サーミスタ45及び出口水温検知サーミスタ46とからなっている。セラミックヒータ41はジュール熱を発生する抵抗体であり、給水管路2の内部に配設されて、管路2内の水を加熱するように構成されている。また、セラミックヒータ41は、後述の制御部5の位相制御回路54から通電されるように配線接続されている。2個のサーミスタ45、46は、加熱装置4内の給水管路2の入口と出口と設けられて水温を検出する水温センサである。また、2個のサーミスタ45、46の出力線はそれぞれ、電子制御装置5のサーミスタ入力回路51、52に配線接続されている。
【0029】
電子制御装置5は、2組のサーミスタ入力回路51、52、ゼロ点検出回路53、位相制御回路54、マイクロコンピュータ55で構成され、マイクロコンピュータ55のソフトウェアにより周波数演算ロジック部56及び温度制御ロジック部57が実現されている。水温入力部に相当する2組のサーミスタ入力回路51、52は、入口水温検知サーミスタ45及び出口水温検知サーミスタ46が検出した入口水温及び出口水温のデータを、温度制御ロジック部57に受け渡すものである。
【0030】
周波数判定部は、ゼロ点検出回路51と周波数演算ロジック部56とで構成されている。ゼロ点検出回路51は、低圧交流電源の電圧Vを入力とし、電圧ゼロ点を検出して、所定のゼロ点信号S0を出力する回路である。周波数演算ロジック部56は、2個のゼロ点信号S0の時間間隔Tを内蔵されたタイマにより計時し、周波数Fを50Hzまたは60Hzのどちらかと判定するものである。周波数演算ロジック部56が行う時間間隔Tの有効性の確認については、後のフローチャートで詳述する。
【0031】
加熱制御部は、温度制御ロジック部57と位相制御回路54とで構成されている。温度制御ロジック部57は、周波数演算ロジック部56で判定された周波数Fと、2組のサーミスタ入力回路51、52から受け取った水温のデータと、をもとにして、セラミックヒータ41の負荷率を演算し、さらに負荷率に適合する通電開始位相P1を演算して、位相制御回路54に制御信号を指令出力している。位相制御回路54は、サイリスタを用いることにより、低圧交流電源の位相を制御してセラミックヒータ41に供給する回路である。すなわち、位相制御回路54は、指令された通電開始位相P1から次の電圧ゼロ点までの間に限り、低圧交流電源をセラミックヒータ41に供給し、発熱量の多少を制御するようになっている。例えば、通電開始位相P1が60°のとき、正の電圧位相60〜180°及び負の電圧位相240〜360°の範囲だけセラミックヒータ41が発熱するようになっている。
【0032】
操作部6は、洗浄を指示する洗浄スイッチや好みの水温や流量を設定する設定スイッチと、動作状態を表示する表示部とをもち、使用者がスイッチを操作及び表示を確認できるようになっている。そして、操作された情報はマイクロコンピュータ55によって認識され、制御に反映されるように構成されている。
【0033】
なお、制御装置5をはじめとする全ての電装品は、低圧交流電源が分岐されて電源供給されている。
【0034】
次に、図1の実施例の瞬間給湯式シャワートイレ1の操作手順、動作について、図2を参考にして説明する。図2は実施例の瞬間給湯式シャワートイレ1の全体動作を説明するフローチャートであり、図中のカッコ付きの項目番号は以降の説明中に対応して記載されている。
【0035】
低圧交流電源が投入されると(1)、電子制御装置5は、まず水温のデータが一定温度以下であるか否かを確認する(2)。水温が一定温度以下の場合には、給水管路2中の水の凍結を防止するため、セラミックヒータ41に通電するが、通電する直前に電源の周波数Fを判定する(3)。次に、判定された周波数Fと水温とに基づいて、通電開始位相P1が演算され、セラミックヒータ41が通電されて、給水管路2内の水が加熱される(4)。電子制御装置5は、通電中にも随時、電源の周波数Fを判定する(5)。次に、電子制御装置5は、操作部6の洗浄スイッチの操作の有無を確認する(6)。洗浄スイッチがオンされていない場合、電子制御装置5は待機モードとなり、水温の確認(2)と、必要に応じて凍結防止のための周波数判定(3)(5)及び通電(4)と、を繰り返す。
【0036】
洗浄スイッチがオンされると電子制御装置5は洗浄モードとなり、通電する直前の電源の周波数判定(7)と、セラミックヒータ41通電(8)と、通電中の周波数判定(9)とが行われる。そして、水温が適温になった時点で、流量調整/水路切替バルブ3が開路されて洗浄ノズルに温水が供給され、洗浄が行えるようになる(10)。洗浄が行われている間に随時、電子制御装置5は洗浄スイッチの操作の有無を確認し(11)、オフされない間は、セラミックヒータ41通電(8)が継続し、割り込み処理により一定時間間隔で周波数判定(9)が行われる。洗浄スイッチがオフされると、電子制御装置5は、流量調整/水路切替バルブ3を閉路し(12)、水温確認(2)を行う待機モードに戻る。
【0037】
なお、通電直前または通電中の周波数判定(3)(5)(7)(9)の際に装置異常と判定されたときには、電子制御装置5は動作を停止するとともに、操作部6の表示部に異常を表示する(13)。
【0038】
次に、通電する直前の周波数判定動作の詳細について、図3を参考にして説明する。図3は実施例の瞬間給湯式シャワートイレ1の周波数判定の動作を説明するフローチャートであり、図中のカッコ付きの英字記号は以降の説明中に対応して記載されている。
【0039】
周波数判定を行う際に、周波数演算ロジック部56は、まず内部に設けられた無効カウンタをクリアし(a)、内蔵されたタイマをクリアする(b)。次に、ゼロ点信号S0の割り込み受付を開始して(c)、ゼロ点信号S0を待つ(d)。ゼロ点検出回路51が電圧ゼロ点を検出してゼロ点信号S0を出力すると、周波数演算ロジック部56はこのゼロ点信号S0を検出してタイマをスタートさせ(e)、随時ゼロ点信号S0の有無を確認する(f)。そして、所定のタイムアウト値に達する以前に次のゼロ点信号S0を検出するとタイマをストップして(g)、2つのゼロ点信号S0の時間間隔Tを計時する(h)。
【0040】
ここで、求めた時間間隔Tの有効性を確認する(i)。具体的には、10ms及び8.3msの2値に対して有効な規定範囲の幅を設定し、時間間隔Tがどちらかの幅に入っているか否かを確認する。そして、時間間隔Tが10msを中心とする幅に入っていれば周波数Fは50Hzと判定され、8.3msを中心とする幅に入っていれば周波数Fは60Hzと判定される(j)。
【0041】
時間間隔Tを求める際にタイマがタイムアウト値に達した場合(k)及び、時間間隔Tが求められてもどちらの幅にも入っていない場合には、周波数判定は無効とされ、無効カウンタがカウントアップされる(l)。そして、無効カウンタが規定回数以下であれば(m)、タイマクリア(b)に戻って、再度周波数判定を行う。無効カウンタが規定回数に達した場合は装置異常と判定し(n)、図2の異常表示(13)に戻る。
【0042】
通電中の周波数判定動作は、図3に示された通電直前の周波数判定動作と類似しているが、一部異なる点がある。すなわち、通電中に判定された周波数F1は通電直前に判定された周波数Fと比較され、万一異なる場合は後に求めた周波数F1が温度制御ロジック部57に提供される。また、通電中の周波数判定が無効のときに、無効カウンタのカウントアップのみを行い、周波数判定のリトライは行わない。なぜなら、周波数判定の機会は割り込み処理により一定時間間隔で与えられるので、リトライよりもセラミックヒータ41へ通電することを優先したほうが好ましいからである。
【0043】
次に、温度制御ロジック部57が行うPI制御について説明する。PI制御は、比例項と積分項の合算値により、セラミックヒータ41の発熱量を制御する手法である。比例項は、検出水温と設定温度との差分に比例する発熱量であり、水温を設定温度に近づける作用がある。ただし、設定温度に近づくにしたがい発熱量が減少するため収束特性が悪く、これを補うために積分項を用いる。積分項は、水温変化の積分量に比例する発熱量であり、適切な定数を乗じて比例項に合算することにより収束特性を改善することができる。温度制御ロジック部57は、積分項の定数を50Hz用と60Hz用の2種類もち、周波数演算ロジック部56によって判定された周波数Fに基づいて使い分けている。
【0044】
図4は実施例の瞬間給湯式シャワートイレ1を用いた温度制御の実験結果を説明する図であり、(A)はPI制御の積分項の定数を2種類使い分けた場合、(B)は積分項の定数を60Hz用に固定した場合である。図中の横軸は経過時間を示し、縦軸は上段がセラミックヒータ41の電力、下段が洗浄ノズル出口の水温を示している。また、グラフは電源周波数が50Hzの場合を実線で、60Hzの場合を破線でそれぞれ示している。図4(A)では、周波数50Hzと60Hzのグラフは概ね重なっており、洗浄ノズル出口の水温は急峻に立ち上がった後速やかに適温に収束している。図4(B)では、実線で示される電源周波数50Hzのグラフが(A)と異なっている。すなわち、洗浄ノズル出口の水温は急峻に立ち上がった後に振動しており、適温への収束特性が劣っている。これは、上段のグラフに示されるセラミックヒータ41の電力が過大に増減したこと、すなわち、積分項の定数が60Hz用であって電源周波数50Hz対して不適合であったことに起因している。したがって、この実験結果により、PI制御の積分項の定数を周波数に従属して可変とする態様の効果が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施例の瞬間給湯式シャワートイレの構成を説明するブロック図である。
【図2】図1の実施例において、全体動作を説明するフローチャートである。
【図3】図1の実施例において、周波数判定の動作を説明するフローチャートである。
【図4】図1の実施例において、温度制御の実験結果を説明する図であり、(A)はPI制御の積分項の定数を2種類使い分けた場合、(B)は積分項の定数を60Hz用に固定した場合である。
【符号の説明】
【0046】
1:瞬間給湯式シャワートイレ
2:給水管路
3:流量調整/水路切替バルブ
4:ヒータユニット
41:セラミックヒータ
45:入口水温検知サーミスタ 46:出口水温検知サーミスタ
5:電子制御装置
51、52:サーミスタ入力回路 53:ゼロ点検出回路
54:位相制御回路 55:マイクロコンピュータ
56:周波数演算ロジック部 57:温度制御ロジック部
6:操作部
V:電圧
S0:ゼロ点信号
F:周波数
P1:通電開始位相

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄ノズルに洗浄用の水を供給する給水管路と、該給水管路の途中に配設される流量調整弁と、水温を検出する水温センサと該水を加熱する電気ヒータとからなり該給水管路の途中に配設される加熱装置と、検出された該水温のデータが入力される水温入力部と該電気ヒータの交流電源の周波数を判定する周波数判定部と該電気ヒータを制御する加熱制御部と該流量調整弁を制御する流量制御部とを有する制御装置と、を備える瞬間給湯式シャワートイレにおいて、
前記周波数判定部は、前記交流電源の電圧ゼロ点を検出するゼロ点検出回路と、検出された該電圧ゼロ点の時間間隔を求めさらに前記周波数を判定する演算手段と、を有し、前記加熱制御部は、判定した該周波数をもとにして制御を行う、ことを特徴とする瞬間給湯式シャワートイレ。
【請求項2】
前記周波数判定部は、前記加熱制御部が前記電気ヒータに通電する直前に動作し、さらに通電中にも動作する、請求項1に記載の瞬間給湯式シャワートイレ。
【請求項3】
前記周波数判定部は、求めた前記時間間隔が規定範囲を外れたときには無効として廃棄し無効回数をカウントアップするとともに該時間間隔を求める動作を繰り返し、該無効回数が規定回数に達する以前に該規定範囲内の有効な該時間間隔が得られた場合には前記周波数を判定し、該無効回数が規定回数に達した場合には装置異常と判定する、請求項1または2のいずれかに記載の瞬間給湯式シャワートイレ。
【請求項4】
前記加熱制御部は、前記交流電源の通電位相を制御して前記電気ヒータに供給する、請求項1〜3のいずれかに記載の瞬間給湯式シャワートイレ。
【請求項5】
前記加熱制御部は、検出された前記水温に対して比例項と積分項とからなるPI制御を行い、かつ積分項の定数は判定された前記周波数に従属して可変とされている、請求項4に記載の瞬間給湯式シャワートイレ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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