説明

短時間加熱および急速乾燥による低溶解性活性物質をベースとする固溶体の生成法

低溶解性物質の粉体形態または顆粒形態の固溶体を生成する方法であって、低溶解性物質は助剤マトリックス中で分子分散形態をとり、低溶解性活性成分とマトリックス助剤を含む溶液を噴霧することにより生成する方法であり、マトリックス助剤の存在下で低溶解性物質の水性懸濁液を常圧でのその沸点より高い温度に加熱するステップ、および低溶解性物質を溶解するステップ、続いて低溶解性物質とマトリックス助剤を含む溶液を噴霧乾燥することによって固体化するステップを含み、噴霧装置に導入する前のスプレー溶液の温度が90℃〜350℃である、上記方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低溶解性活性成分の固溶体の生成法、そのような方法によって得られる粉体生成物、および剤形へのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
水性媒体に溶けにくい活性成分は、生体に利用可能な剤形を開発するのがほとんど不可能なために、製剤化が極めて困難である。最も有望な手法の一つは、活性成分が分子分散形態で組み込まれた固溶体を形成することである。ポリマー溶解後、身体または植物は活性成分を溶解形態で利用できるので、この形態は極めて高い生物学的利用能をもたらすことが多い。
【0003】
固溶体という用語は、文献では不正確に使用されることが多い。固体結晶物質の組込みもまた固溶体と呼ぶからである。しかし、厳密に言えば、これらは固体分散体である。本願では、固溶体は純然たる分子分散体を意味する。
【0004】
固溶体の生成に適切であると言われる様々な物質が既に記載されており、特に、ポリビニルピロリドンなどのポリマー、セルロースエステル、糖類、糖アルコール、澱粉、および天然多糖類もまた記載されている。
【0005】
そのような固溶体の生成は、依然としてやや複雑な方法である。
【0006】
以下の方法を利用することができる。
【0007】
1.活性成分とポリマーを高温で溶融し押出す方法。この方法には、高温が数分間活性成分に作用し、さらに大型成形品がもたらされ、錠剤成形を可能にするために磨砕により手間をかけて粉末化しなくてはならないという欠点がある。さらに、一般的に成形品には空隙がなく、そのため圧縮率が極めて低い。それらの錠剤は、しばしば、粉砕耐性が低く崩壊しやすい。一定の最低空隙率を有する生成物しか容易に圧縮できない。別の要因は、熱応力に加え、溶融押出し中にずり応力も働き、活性成分を分解しかねないということである。
【0008】
2.活性成分とポリマーをそのどちらをも溶解する有機溶媒に溶解し、そして溶媒を蒸発させ、またはスプレー乾燥する方法。この方法にはそれ自体、大量の有機溶媒を使用する必要があるという欠点があり、それは環境に対して危険であり、爆発性であり、その使用には相当の経費がかかる。さらに、親水性ポリマーおよび親油性医薬物質の両方を溶解する溶媒を見つけるのは困難であることが多い。
【0009】
3.活性成分を水性ポリマー溶液に、例えば、湿式磨砕することによって分散させ、スプレー乾燥する方法。この場合、活性成分が水に不溶であるとき、固溶体ではなく固体分散体のみが形成され、この固体分散体は、分子溶液のような特性を有するには程遠く、特に生物学的利用能には関与しない。
【0010】
(特許文献1)は、プランルカスト、糖類、ならびに適切であれば水溶性ポリマーおよび界面活性剤から構成されるスプレー乾燥粉末について記載している。活性成分を賦形剤の水溶液に懸濁させ、後者の水溶液を通常の条件下でスプレー乾燥する。活性成分は、最終生成物中に結晶形で存在する。
【0011】
(特許文献2)は、ラパマイシン含有製剤について記載しており、その際、活性成分は溶媒に溶解され、ポリオキシエチレン‐ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリビニルピロリドン、微結晶セルロース、および水溶性サッカロースからなりうる担体と共に温度20〜80℃でスプレー乾燥される。この場合、多量の有機溶媒を使用し、スプレー乾燥前の溶液温度は明らかに100℃より低い。
【0012】
(特許文献3)は、非結晶パロキセチン製剤について記載しており、この製剤はパロキセチン塩、好ましくはその塩酸塩と、水およびポリマーとを混合し、続いて25〜100℃で、好ましくは60℃で乾燥することによって生成される。パロキセチン塩は、低温の水にも溶解し、従って固溶体の生成で特別な問題は生じない。同様に、(特許文献4)は、ポリビニルピロリドンと追加の酸の中で、非結晶パロキセチン塩を処理することに関する。生成は温度15〜40℃で行われる。
【0013】
(特許文献5)は、溶解促進ポリマーを含むマトリックス中の低水溶性医薬物質の固体分散体に関する。例えば、有機溶媒の使用または溶融処理による生成が記載されている。
【0014】
(特許文献6)は、異なる2種の物理的形状をした活性成分を含む医薬剤形に関する。この場合は、活性成分は、部分的に粒子形態および溶解形態である。有機溶媒を使用する従来法で生成することができる。固溶体の生成は、溶融押出しで行うのが好ましい。
【0015】
(特許文献7)および(特許文献8)は、水溶性ポリマーとイトラコナゾールの固体分散体について記載し、これは溶融押出しと続く磨砕によって生成される。これらの調製物は、例えば、低打錠性など、既に知られている短所がある。
【0016】
(特許文献9)に記載されている固体分散体は、低溶解性医薬物質とヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートとを共に有機溶媒に溶解しスプレー乾燥することによって生成される。調製物の一部を生成するのに異常に多量の溶媒が必要である。
【0017】
(特許文献10)は、有機溶媒に医薬物質とゲル形成水溶性ポリマーを溶解し乾燥する方法を開示している。次いで、アルカリと弱酸または強酸の塩にこの調製物を混合し打錠する。ゲル形成ポリマーはセルロースエーテルである。ゲル形成ポリマーは、崩壊と錠剤から活性成分の放出を遅らせるので、崩壊速度を速めるために別の添加物が必要になることは驚くにあたらない。
【0018】
(特許文献11)は、事実上不溶性の医薬物質と、酸性官能基を有するポリマーとの固体分散体について記載している。医薬物質は粒子形態であり、生成には有機溶媒、特に塩化メチレンを使用する。
【0019】
同様に、(特許文献12)は、有機溶媒を使用する固溶体の生成法について記載している。使用するポリマーは、セルロース誘導体およびポリビニルピロリドンである。他の賦形剤は湿潤剤である。
【0020】
有機溶媒を使用する他の固溶体は、(特許文献13)、(特許文献14)、(特許文献15)、(特許文献16)、(特許文献17)、(特許文献18)、(特許文献19)、(特許文献20)、(特許文献21)に記載されている。
【0021】
(特許文献22)および(特許文献23)は、サイズが2μm未満の活性成分粒子の取込みについて開示している。粒子状態のために、本当の意味での固溶体は含まれない。
【0022】
(特許文献24)は、保護コロイドの存在下、活性成分の融点より高い温度で、活性成分が水または水と有機溶媒の混合液に含まれている溶融乳濁液を生成し、この乳濁液をスプレー乾燥する方法について記載している。この場合、得られるのはコロイド状活性成分粒子であり固溶体ではない。
【特許文献1】US5876760
【特許文献2】US6197781
【特許文献3】WO99/56751
【特許文献4】WO01/30349
【特許文献5】WO03/000294
【特許文献6】DE19951617
【特許文献7】US2001/0007678
【特許文献8】US2003/0082239
【特許文献9】US2002/0009494
【特許文献10】US2002/0031547
【特許文献11】WO01/47492
【特許文献12】WO2002051385
【特許文献13】WO2001068092
【特許文献14】EP1027886
【特許文献15】EP102787
【特許文献16】EP102788
【特許文献17】US2001/0053778
【特許文献18】WO03/000235
【特許文献19】WO2001068092
【特許文献20】WO2003000226
【特許文献21】US2001/0053791
【特許文献22】US2003/0104068
【特許文献23】US2003/082236
【特許文献24】DE4329446
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
有機溶媒を使用せず、活性成分に大きな熱応力を与えることなく、良好な打錠性と流動性を備えた生成物を直接与え、実施が容易である方法を見出すことが本発明の目的であった。
【課題を解決するための手段】
【0024】
従って、低溶解性物質とマトリックス賦形剤の溶液を噴霧するステップによる、低溶解性物質の粉末固溶体を生成する方法であって、低溶解性物質が賦形剤マトリックス中で分子分散形態をとる方法が見出された。この方法は、マトリックス賦形剤の存在下で、低溶解性物質の水性懸濁液を0.08〜20MPaの加圧下、温度>90℃〜350℃に加熱するステップ、低溶解性物質を溶解するステップ、続いて噴霧乾燥によってそれを粉体形状に転換するステップを含み、その際、噴霧装置供給時のスプレー溶液の温度は>90〜350℃である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明において固溶体は、活性成分が、賦形剤マトリックス中で分子分散形態をとる状態をさす。この状態では、X線回折法によって検出可能な活性成分の結晶質画分はない。X線回折法で結晶質画分が検出できる限界は3重量%なので、「結晶質画分がない」という表現は、3重量%未満の結晶質画分が存在するということを意味する。分子分散状態は、示差走査熱量測定法(DSC)によって確認することができる。分子分散体の場合には、活性成分の融点領域内で溶融ピークが観察されない。この方法の検出限界は1重量%である。
【0026】
本発明において、低溶解性物質は、以下の媒体、すなわち、水、0.1モル濃度の塩酸水溶液、pH7.2のリン酸緩衝液、0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液の少なくとも一種における飽和溶解度が、室温(20℃)で1重量%未満である物質を意味する。
【0027】
本発明において好適な低溶解性物質は、多くの活性成分および活性物質であり、特に、医薬もしくは美容活性成分、栄養補助食品、食事療法組成物または食品添加物の活性成分である。
【0028】
本発明との関連では低溶解性物質の例には、以下の化合物、ならびにそれらの異性体、誘導体、塩または混合物がある。ピロキシカム、クロトリマゾール、カルバマゼピン、17‐β‐エストラジオール、スルファチアゾール、フェノフィブラート、ベンゾカイン、リドカイン、ジメチンデン、ビペリデン、ビサコジル、クリオキノール、ドロペリドール、ハロペリドール、ニフェジピン、ニトレンジピン、テトラサイクリン、フェニトイン、グラフェニン、フロクタフェニン、インドメタシン、ケトプロフェン、イブプロフェン、ジピリダモール、メフェナム酸、アミオダロン、フェロジピン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ダナゾール、フロセミド、トルブタミド、リトナビル、ロピナビル、ナプロキセン、スピロノラクトン、プロパフェノン、プロゲステロン、パクリタキセル、ドセタキセル、テオフィリン、ヒドロコルチゾン、β‐カロテン、ビタミンA、トコフェロールアセテート、リボフラビン、ビタミンQ10、ビタミンD、ビタミンK、ジスルフィラム、ニモジピン、クロロチアジド、クロルプロパミド、ジクマロール、クロラムフェニコール、ジゴキシン、ロニダミン、ピゾチフェン、アトバコン、アンプレナビル、ベキサロテン、カルシトロール、クロファジミン、ドキセルカルシフェロール、ドロナビノール、デュラステリド、エトポシド、ロラタジン、リスペリドン、サキナビル、シロリムス、バルプロ酸、アムホテリシン、アルプロスタジル、カルムスチン、クロルジアゼポキシド、フェノルドパム、メルファラン、メトカルバミル、オキシテトラサイクリン、ドセタキセル、フルベストラント、プロポフォール、ボリコナゾール、ジプラシドン、酢酸ロイプロリド、ビアズル、バルルビシン、トラマドール、セレコキシブ、エトドラク、レホコキシブ、オキサプロジン、レフルノミド、ジクロフェナク、ナブメトン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、テトラヒドロカンナビノール、カプサイシン、ケトロラック、アルベンダゾール、イベルメクチン、アミオダロン、ジロートン、ザフィルルカスト、アルブテロール、モンテルカスト、アジスロマイシン、シプロフロキサシン、クラリスロマイシン、ジリトロマイシン、リファブチン、リファペンチン、トロバフロキサシン、バクロフェン、リタノビル、サキナビル、ネルフィナビル、エファビレンツ、ジクマロール、チロフィブラン、シロスタゾール、チクリドピン、クロピドロゲル、オプレベルキン、パロキセチン、セルトラリン、ベンラファキシン、ブプロピオン、クロミプラミン、ミグリトール、レパグリニド、グリメプリド、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、トログリタゾン、グリブリド、グリピジド、グリベンクラミド、フォスフェニチオン、チアガビン、トピラマト、ラモトリギン、ビガバトリン、アムホテリシンB、ブテナフィン、テルビナフィン、イトラコナゾール、フルカナゾール、ミコナゾール、ケトコナゾール、メトロニダゾール、グリセオフルビン、ニトロフラントイン、リシノプリル、ベネゼプリル、ニフェジピン、ニルソリジピン、テルミサルタン、イルベサルタン、エポサルタン、バルサルタン、カンデサルタン、ミノキシジル、テラゾシン、ハロファントリン、メフロキン、ジヒドロエルゴタミン、エルゴタミン、フロバトリプタン、ピゾチフェン、スマトリプタン、ゾルミトリプタン、ナラチプタン、リザトリプタン、アミノグルテミド、ブスルファン、シクロスポリン、ミトキサントロン、イリノテカン、エトポシド、テニポシド、パクリタキセル、タクロリムス、シロリミウス、タモキシフェン、カンプトテカン、トポテカン、ニルタニド、ビカルタニド、トレミフェン、アトバコン、メトロニダゾール、フラゾリドン、パリカルシトール、ベンゾナテート、ミダゾラム、ゾルピデム、ガバペンチン、ゾピクロン、ジゴキシン、ベクロメタゾン、ブデソニド、ベタメタゾン、プレドニゾロン、シサプリド、シメチジン、ロペラミド、ファモチジン、ラノスプラゾール、ラベプラゾール、ニザチジン、オメプラゾール、シトリジン、シンナリジン、デキスクロフェニラミン、ロラタジン、クレマスチン、フェキソフェナジン、クロルフェニラミン、アクトレチン、タザロテン、カルシプロチエン、カルシトリオール、タルグレチン、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール、イソトレチノイン、トレチノイン、カルシフェジオール、フェノフィブラート、プロブコール、ゲムフィブロジル、セリビスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、チザニジン、ダントロレン、イソソルビドジナトラート、ジヒドロタキステロール、必須脂肪酸、コデイン、フェンタニル、メサドン、ナルブフィン、ペンタゾシン、クロミフェン、ダナゾール、ジヒドロエピアンドロステロン、メドロキシプロゲステロン、プロゲステロン、リメキソロン、酢酸メゲステロール、エストラジオール、フィナステリド、ミフェプリストン、L‐サリロキシン、タムスロシン、メトキサレン、タクリン、ドネペジル、ラロキシフェン、ベルトポルフィン、シブトラミン、ピリドスチグミン。
【0029】
本発明の方法によって生成される固溶体は、以下の定量的組成を含みうる。
【0030】
(i)少なくとも一種の活性成分1〜50重量%
(ii)少なくとも一種の水溶性マトリックス賦形剤10〜99重量%
(iii)一種または複数の界面活性剤0〜30重量%
(iv)共溶解剤0〜30重量%
(v)他の賦形剤0〜50重量%
その際、成分(i)〜(v)の量は合計で100重量%になる。
【0031】
好適なマトリックス構築賦形剤は、原則として、活性成分と固溶体を形成できる全ての物質である。
【0032】
好適な例は、以下の構造クラスの水溶性ポリマーである:
ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン‐酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルカプロラクタム、ポリビニルホルムアミド、ポリビニルアセトアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン
ヒドロキシアルキルセルロース、アルキルヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、アルキルヒドロキシアルキルセルロースアセテートサクシネート、アルキルヒドロキシアルキルセルロースアセテートフタレート、アルキルヒドロキシアルキルセルロースフタレート、セルロースアセテートフタレート
澱粉、ヒドロキシアルキル澱粉、カルボキシアルキル澱粉、加工澱粉、オクテニルコハク酸澱粉
デキストラン
ポリオキシエチレン‐ポリオキシプロピレンブロックコポリマー
ポリエチレンオキシド、酸化ポリプロピレン
ポリアミノ酸。
【0033】
しかし、以下の低分子量担体を使用することも可能である:
糖類、例えば、スクロース、グルコース、マルトース、キシロース、フルクトース、リボース、アラビノース、ガラクトース、トレハロース
糖アルコール、例えば、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、パラチノール、マルチトール、ラクチトール
尿素
ニコチンアミド
アミノ酸
シクロデキストリン。
【0034】
好ましい物質は、活性成分を高濃度溶解できるという理由でアミド構造を有する物質である。
【0035】
好ましく使用されるポリマーマトリックス賦形剤は、ポリビニルピロリドン、ならびにN‐ビニルピロリドンと酢酸ビニルのコポリマーである。メタクリル酸アルキルまたはアクリル酸アルキルを使用するのも好ましい。
【0036】
1重量%水溶液のポリマーのFikentscher K値は、5〜120であってよく、10〜95が好ましい。
【0037】
尿素は、特に好適な低分子量マトリックス賦形剤である。
【0038】
マトリックス賦形剤(ii)は30〜90重量%の量で使用するのが好ましい。
【0039】
さらに、溶解性をより改善するために溶解剤を使用することもできる。好適な溶解剤は、通常、HLB(HLB:親水親油バランス)が10を超える界面活性剤である。そのような溶解剤は、Fiedler, Lexikon der Hilfsstoffe, Editio Cantor Verlag Aulendorf,第5版,p.117‐121に記載されている。
【0040】
以下のものが、特に適切であることが証明されている:
脂肪酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、スルホン化または硫酸化脂肪酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪アルコール、ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセロール脂肪アルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、エトキシル化ヒマシ油、エトキシル化水素化ヒマシ油、エトキシル化12‐ヒドロキシステアリン酸、ポロクサマー、あるいはそれらの混合物。
【0041】
そのような界面活性剤(iii)を1〜20重量%の量で使用するのが好ましい。
【0042】
特定の場合には、HLBが10未満の共溶解剤(iv)を使用することも有利であることが証明されている。それによって固溶体の形成と安定性が促進されるからである。これらの物質は、同様に、Fiedler, Lexikon der Hilfsstoffe, Editio Cantor Verlag Aulendorf,第5版,p.115‐117に記載されている。
【0043】
例えば、以下の物質を使用することができる:
ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪アルコール、ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセロール脂肪アルコール、グリセロール脂肪酸エステル、グリセロール脂肪アルコール、ソルビタン脂肪酸エステル。
【0044】
追加の溶解剤として、10重量%までの量で有機溶媒を使用することも望ましいかもしれない。好適な有機溶媒は、エタノール、イソプロパノール、またはアセトンである。しかし、有機溶媒は使用しないのが好ましい。
【0045】
活性成分、溶解剤、および共溶解剤のいくつかは、相当の可塑化効果があり、すなわち、これらはポリマーのガラス転移温度を明らかに低減し、それによってスプレー乾燥を困難にする場合もある。このような場合、吸着剤の使用が非常に有利であることが証明されている。この吸着剤は、液体または半流動体の活性成分ポリマー溶液を吸収し、それによって満足に使用できる固体調製物が生成される。使用できる吸着剤の例としては以下の物質がある:シリカ、疎水性シリカ、アルカリ金属またはアルカリ土類金属ケイ酸塩、アルカリ土類金属/アルミニウムケイ酸塩、架橋ポリビニルピロリドン、セルロース、澱粉、架橋カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム。
【0046】
通常、吸着剤は、加熱ステップ前にスプレー溶液中に懸濁し一緒に乾燥する。しかし、一部を粉末形でスプレー塔に吹き入れてもよい。
【0047】
さらに、特定の性質を得るために以下の他の賦形剤(v)を使用することも可能である:
可塑剤
酸化防止剤
防腐剤
色素
香味料および付香剤
充填剤
固着防止剤
崩壊促進賦形剤(崩壊剤)
放出遅延剤。
【0048】
これらのタイプの賦形剤は、0.1〜20重量%の量で存在するのが好ましい。
【0049】
本発明によれば、活性成分、マトリックス賦形剤、および適切であれば他の成分(iii)〜(v)を含む水溶液を加熱によって最初に調製する。水は、唯一の溶媒として使用するのが好ましい。
【0050】
その溶液を調製するために、原則として以下の方法を行うことができる:
【0051】
方法A:懸濁形態の活性成分、溶解形態のマトリックス賦形剤、および適切であれば他の成分を含む水性懸濁液を調製する。これは、最初に水にマトリックス賦形剤を溶解し、この溶液に活性成分を懸濁させるステップによって、あるいは活性成分の水性懸濁液にマトリックス賦形剤を加えるステップによって行うことができる。このようにして得られた懸濁液を、次いで、活性成分が溶解するまで適切な装置で加熱する。
【0052】
方法B:溶解形態のマトリックス賦形剤を含む、活性成分の水性懸濁液を方法Aに記載したように調製し、活性成分が溶解するまで、熱湯流または蒸気流と混合することによってこの懸濁液を加熱する。
【0053】
方法C:方法Bを少し変更し、熱的に安定な限り、マトリックス賦形剤を熱湯流に溶解し、そして活性成分の水懸濁液と混合することもできる。
【0054】
選択した方法に関わりなく以下のことが当てはまる:
水または水性ポリマー溶液に活性成分を分散させるには小さい粒径が有利である。第一に容易に分散され、第二に高温での溶解工程が速いからである。粗い活性成分を用いる場合は、懸濁液を加熱する前に、ポリマー溶液中でこの成分のサイズを減少させ、または磨砕することができる。サイズの減少には、例えば、高圧ホモジナイザー、ローターステーター装置、ボールミル、またはコロイドミルを使用することができる。しかし、原則として、記載の活性成分を最初に水に入れ、次いでポリマーを加えるだけでも可能である。
【0055】
水性懸濁液の加熱は、適切な装置中で連続的に行う。
【0056】
加熱は、例えば任意の好適な熱交換器で行うことができ、ここで熱交換器と称する装置は、一般的に、加熱を行うために熱伝達剤によって熱を別の媒体に伝達する装置である。
【0057】
間接熱交換では、熱交換面によって熱伝達媒体と熱せられる媒体が分離している。熱伝達媒体として適切なものは、ホットオイル、高温蒸気または過熱湯、あるいは一般的に高温ガスまたは高温液体である。熱伝達媒体は、加熱する水性懸濁液に対して向流で通すことができる。他の可能性としてはまた、加熱する媒体を静止した熱伝達媒体に連続的に通すことである。
【0058】
直接熱交換では、本発明にしたがって方法B)またはC)で行われるように、2種の媒体を接触させる。従って、好適な直接熱交換剤は、熱伝達剤としての過熱湯または蒸気である。
【0059】
活性成分懸濁液の加熱は、一般的に、極めて速い加熱速度を可能にする全ての方法を使用して行うことができる。従って、電気加熱、誘導加熱、またはマイクロ波加熱も可能である。
【0060】
水に活性成分を溶解させるためには、大気圧下での混合物の沸点を超える温度に水性懸濁液を加熱する。これに関して選択できる温度は、>90℃〜350℃であり、110〜300℃が好ましく、120〜250℃が特に好ましい。
【0061】
出発物質に熱応力がかからないようにするために、記載の方法のいずれを使用するかに関わりなく、>90℃での加熱時の滞留時間は秒範囲に留めておく。活性成分含有媒体が加熱に使用される装置に滞留する時間は、180秒未満が好ましく、60秒未満が特に好ましく、15秒未満が特に極めて好ましい。活性成分を完全に溶解するためには、一般的に最少滞留時間0.5秒を選択する。
【0062】
通常、溶液の固形分は、1〜70重量%であり、3〜60重量%が好ましく、5〜40重量%が特に好ましい。
【0063】
その装置を通過後、高温の加圧された、活性成分、マトリックス賦形剤、および適切であれば他の成分の水溶液は直接噴霧装置に通される。噴霧は、ノズルを通して行うことができるが、その場合は単一式または複式流体ノズルが原則として適切であり、または噴霧は回転ディスクによって行うこともできる。乾燥塔内での調製物の噴霧は、10〜250barの圧力下で単一流体ノズルを通して行うのが好ましい。しかし、複式流体ノズル、特に2流体ノズルも使用することができ、その場合は噴霧ガスの圧力は0.15〜10MPaでありうる。
【0064】
乾燥用ガスの塔流入口温度は、50〜200℃であり、70〜180℃が好ましい。適切な乾燥用ガスは、空気、または窒素、アルゴンもしくはヘリウムなどの不活性ガスである。塔排出口温度は40〜120℃である。乾燥用ガスは、乾燥塔内の液滴に並流または向流で通すことができ、並流が好ましい。
【0065】
単純なスプレー乾燥に加え、内部および/または外部流動床(例えば、Niro社製FSD Technologie)による凝集スプレー乾燥を行うこともでき、その場合、スプレー乾燥中に形成される粒子は凝集して大きな構造体になる。
【0066】
一般的に、流動床スプレー造粒を含め、溶液を噴霧する全ての乾燥技術を使用することができる。
【0067】
スプレー乾燥された粒子が、ある種の付着傾向を示す場合は、極めて細かい微粒子固体をまぶすのが適切である。この場合は、この微粒子固体をダストとしてスプレー塔に導入し、それによって接着または凝集が生じないことを確かなものにする。ここでは、コロイド状シリカが非常に適切であることが証明されている。しかし、他の物質、例えば、疎水性シリカ、アルカリ金属またはアルカリ土類金属ケイ酸塩、アルカリ土類金属/アルミニウムケイ酸塩、架橋ポリビニルピロリドン、セルロース、澱粉、架橋カルボキシメチルスターチナトリウムまたは架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムを使用することも可能である。
【0068】
本発明に記載の方法Aによる固溶体生成の一実施形態では、医薬物質はポリマー水溶液に分散され、懸濁液は適切な装置内で90℃より高い温度に加熱され、その結果活性成分結晶が溶解する。活性成分含有ポリマー溶液の加熱は、医薬物質にかかる熱応力を最小限に抑えるために可能な限り迅速に行うべきである。この目的に向けて、活性成分含有懸濁液を適切な装置に連続的に通すが、滞留時間は記載したように数秒の範囲内であることが好ましい。続いて、この加熱し加圧した活性成分溶液を噴霧乾燥する。噴霧直前、すなわち、噴霧装置に導入する前のスプレー溶液の温度は、90〜350℃であり、110〜300℃が好ましく、120〜250℃が特に好ましい。この場合、スプレー溶液の圧力は、0.08〜20MPaであり、1〜15MPaが好ましい。
【0069】
本発明の好ましい実施形態では、活性成分含有ポリマー溶液は、温度110〜500℃の、好ましくは130〜300℃のホットオイルバスの中に入れた細いパイプラインを通して、ポンプで送ることができる。これにより迅速に熱を伝達させることができる。活性成分含有ポリマー溶液の温度は、オイルバス温度と流速を変えることによって調整する。パイプライン通過直後、高温の加圧された溶液はスプレーノズルを通して噴霧され、高温乾燥用ガスによって乾燥される。水分を蒸発させることにより、スプレー滴を急速に冷却乾燥する。
【0070】
このタイプの手順を例えば図1に図示する。この場合、活性成分のマトリックス賦形剤水溶液懸濁液は、スターラーを備えた容器1で調製され、次いで熱伝達媒体を加熱するためのヒーター2aを備えた熱交換器2を通るコイルパイプに、その懸濁液を連続的にポンプで送り、続いてその溶液をスプレー塔4内のノズル3を通して噴霧乾燥し、得られた粒子状固溶体5を採取する。
【0071】
本発明の別の実施形態では、下記の方法Bの手順を選択することもできる。この手順は、低溶解性物質の熱応力をさらに小さく抑えたいときに特に推奨される。室温、または活性成分が分解しない程度の多少高めの温度のポリマー溶液に低溶解性物質を懸濁させる。過熱湯または蒸気と攪拌混合する混合セルにこの懸濁液を供給する。熱湯または蒸気の温度は110〜500℃でなければならず、150〜400℃が好ましく、180℃〜300℃が特に好ましい。高温の熱湯もしくは蒸気、および攪拌混合により、ポリマー溶液の活性成分懸濁液は、極めて短時間のうちに100℃を超える温度に加熱され、活性成分は溶解する。混合セル通過後、直ちにスプレーノズルで噴霧されスプレー乾燥される。スプレーする溶液の温度は、2本の液体流の温度およびその混合比によって制御する。熱湯流または蒸気流の温度が高いほど、ならびに活性成分/ポリマー懸濁液に対して熱湯流または蒸気流の割合が大きいほど、スプレーされる活性成分溶液の温度は高くなる。混合セル中の滞留時間は、2本の液体流の流速および混合セルの形状に依存する。通常、ポリマー溶液の活性成分懸濁液は、瞬時に所望の温度に達する。活性成分にかかる熱応力は、混合後いかに迅速にスプレー乾燥されるかにも依存する。従って、混合セルとスプレーノズル間の距離は、適切に短くすべきである。活性成分結晶を溶解するのに最少滞留時間が必要とされ、それは活性成分特異的溶解速度、溶液または懸濁液の温度、ならびに粒径によって決まる。活性成分の高温での総滞留時間は、流速、混合セルの形状、およびスプレーノズルまでの距離によって調節することができる。通常は、総滞留時間は、30秒未満であり、15秒未満が好ましく、5秒未満が特に好ましい。
【0072】
活性成分の溶解率が高い場合は、1秒未満にもなりえる。
【0073】
流量は、9:1〜1:9の比で変化しうる。
【0074】
混合セルの形状は、単純なT型から、非常に精巧な高攪拌混合セルまで広く変化してよい。液流が合流する角度は5〜180℃になりうる。特定の実施形態では、一本の液流を他方の液流に注入ノズルによって注入することができる。
【0075】
通常、他の賦形剤、例えば溶解剤なども活性成分含有流に導入するが、それらも原則として温湯相を経由して供給する。
【0076】
このタイプの手順を図2に図示する。この場合は、活性成分懸濁液は、スターラーを備えた容器6中のマトリックス賦形剤溶液で調製され、ポンプで連続的に混合セル8に送られる。ヒーター7bを備えた熱交換器7aを通して、容器7から水を連続的にポンプで送り出し、過熱湯または蒸気として同様に混合セル8にポンプで送る。活性成分の加熱および溶解は、混合セル8で2本の液流を連続的に混合することによって行われる。次いで、高温溶液をスプレー塔10中のノズル9を通して噴霧し、粒子状固溶体11を採取する。
【0077】
本発明の方法によって生成される粉末は、その多孔性のために非常に優れた打錠特性を示す。通常、25〜500μmの平均粒径が得られる。
【0078】
本発明により生成された調製物の利点は、高濃度の活性成分が固体の分子溶液の形態をとるため、固溶体は急速に水性媒体に溶解し、活性成分は水性媒体中過飽和領域で長時間維持されることである。それによって高い生物学的効果が得られる。
【0079】
本発明の調製物は、既に開示されている生成法の使用により得られる打錠性よりも、かなり優れた高い打錠性を示す。得られた錠剤は、粉砕耐性が高く破砕性が非常に低い。通常、本発明の調製物は、直接錠剤成形することができる。
【0080】
活性成分の放出は、放出遅延剤を加えることによって適切に制御することができる。従って、高い再現性で放出される、低溶解性活性成分の遅延放出形態を理想的に生成することができる。
[実施例1]
【0081】
ポビドン中のテオフィリンの固溶体
10.0kgのKollidon30を40.0kgの脱塩水に溶解した。5.0kgの微粉砕したテオフィリンを激しく攪拌しながらこのポリマー溶液に懸濁させた。温度155℃のオイルバスの中に入れた直径10mmの細いコイルパイプラインにこの溶液をポンプで通すことにより短時間加熱を行い、その間に溶液の温度は150℃に上昇した。高圧ポンプにより設定した流速は800〜1000ml/minであった。パイプライン内の圧力は10.45MPaであった。100barの圧力下、直径0.6mmの単一流体ノズルを通してこの高温溶液をスプレードライヤ中に噴霧した。流入口空気温度を145℃にし、排出口空気温度を95℃に設定した。乾燥した自由流動性粉末が得られた。
[実施例2]
【0082】
ポビドン中のカルバマゼピンの固溶体
10.0kgのKollidon30を40.0kgの脱塩水に溶解した。5.0kgの微粉砕したカルバマゼピンを激しく攪拌しながらこのポリマー溶液に懸濁させた。温度130℃のオイルバスの中に入れた直径10mmの細いコイルパイプラインにこの溶液をポンプで通すことにより短時間加熱を行い、その間に溶液の温度は125℃に上昇した。高圧ポンプで調整した流速は、9MPaの圧力下で700〜800ml/minであった。90barの圧力下、直径0.7mmの単一流体ノズルを通してこの高温溶液をFSDスプレードライヤ中に噴霧し凝集させた。流入口空気温度を145℃にし、排出口空気温度を96℃に設定した。優れた流動特性を有する乾燥粉末が得られた。
[実施例3]
【0083】
コポリビドン中のスルファチアゾールの固溶体
10.0kgのKollidon VA64および1.0kgのマンニトールを40.0kgの脱塩水に溶解した。5.0kgの微粉砕したスルファチアゾールを激しく攪拌しながらこのポリマー溶液に懸濁させた。温度130℃のオイルバスの中に入れた直径10mmの細いコイルパイプラインにこの溶液をポンプで通すことにより短時間加熱を行い、その間に溶液の温度は116℃に上昇した。高圧ポンプで調整した流速は、9.1MPaの圧力下で600〜800ml/minであった。90barの圧力下、直径0.6mmの単一流体ノズルを通してこの高温溶液をスプレードライヤ中に噴霧した。流入口空気温度を115℃にし、排出口空気温度を55℃に設定した。乾燥した自由流動性粉末が得られた。
[実施例4]
【0084】
1:1コポリビドン/ポビドン中のピロキシカムの固溶体
4.5kgのKollidon VA64、5.0kgのKollidon30、0.25kgのニコチンアミド、および0.5kgのラウリル硫酸ナトリウムを40.0kgの脱塩水に溶解した。3.0kgの微粉砕したピロキシカムを激しく攪拌しながらこのポリマー溶液に懸濁させた。温度200℃のオイルバスの中に入れた直径10mmの細いコイルパイプラインにこの溶液をポンプで通すことにより短時間加熱を行い、その間に溶液の温度は160℃に上昇した。高圧ポンプで調整した流速は、9.1MPaの圧力下で600〜700ml/minであった。90barの圧力下、直径0.6mmの単一流体ノズルを通してこの高温溶液をスプレードライヤ中に噴霧した。流入口空気温度を125℃にし、排出口空気温度を70℃に設定した。乾燥した自由流動性粉末が得られた。
[実施例5]
【0085】
ポビドンK17中のクロトリマゾールの固溶体
10.0kgのKollidon17PF、0.3kgのLutrol F68(ポロクサマー188)、および0.3kgのステアリン酸ナトリウムを40.0kgの脱塩水に溶解した。2.0kgの微粉砕したクロトリマゾールを激しく攪拌しながらこのポリマー溶液に懸濁させた。温度135℃のオイルバスの中に入れた直径10mmの細いコイルパイプラインにこの溶液をポンプで通すことにより短時間加熱を行い、その間に溶液の温度は115℃に上昇した。2流体ノズルでこの高温溶液をスプレー流動床ドライヤ中に噴霧した。流入口空気温度を100℃にし、排出口空気温度を65℃に設定した。乾燥し、比較的微細で自由流動性が高い粉末が得られた。
[実施例6]
【0086】
ポビドン中のシンナリジンの固溶体
10.0kgのKollidon30および0.5kgのCremophor RH40(水素化したヒマシ油と45molの酸化エチレンの反応生成物)を40.0kgの脱塩水に溶解した。2.5kgのシンナリジンを激しく攪拌しながらこのポリマー溶液に懸濁し、次いでUltra-turraxで15分間処理することによって均質化した。この微粒子懸濁液の液流を熱交換器で60℃に加熱し、280℃に加熱した熱湯流とT型を介して混合した。活性成分含有流:熱湯流の比率は1:2であった。スプレーノズル上流の高温溶液の温度は195℃であり、この温度での滞留時間は2.5秒であった。100barの圧力下、直径0.6mmの単一流体ノズルを通してこの高温溶液をスプレードライヤ中に噴霧した。流入口空気温度を145℃にし、排出口空気温度を95℃に設定した。乾燥した自由流動性粉末が得られた。
[実施例7]
【0087】
ポビドン/ポリビニルカプロラクタム中のケトコナゾールの固溶体
8.0kgのKollidon30、2.0kgのK値30のポリビニルカプロラクタム、0.2kgのポリソルベート80および0.1kgのパルミチン酸アスコルビルを40.0kgの脱塩水に溶解した。2.0kgのケトコナゾールを激しく攪拌しながらこのポリマー溶液に懸濁し、次いでUltra-turraxで15分間処理することによって均質化した。この微粒子懸濁液の液流を熱交換器で50℃に加熱し、混合セル中で240℃に加熱した熱湯流と混合した。活性成分含有流:熱湯流の比率は1:5であった。スプレーノズル上流の高温溶液の温度は200℃であり、この温度での滞留時間は2.0秒であった。100barの圧力下、直径0.6mmの単一流体ノズルを通してこの高温溶液をスプレードライヤ中に噴霧した。流入口空気温度を145℃にし、排出口空気温度を95℃に設定した。乾燥した自由流動性粉末が得られた。
[実施例8]
【0088】
ポビドン中のインドメタシンの固溶体
10.0kgのKollidon30、0.2kgのポリエチレングリコール6000、および0.2kgのCremophor RH40を40.0kgの脱塩水に溶解した。2.0kgのインドメタシンを激しく攪拌しながらこのポリマー溶液に懸濁し、次いでUltra-turraxで15分間処理することによって均質化した。この微粒子懸濁液の液流を熱交換器で50℃に加熱し、混合セル中で280℃に加熱した熱湯流と混合した。活性成分含有流:熱湯流の比率は1:1であった。スプレーノズル上流の高温溶液の温度は158℃であり、この温度での滞留時間は1.5秒であった。100barの圧力下、直径0.6mmの単一流体ノズルを通してこの高温溶液をスプレードライヤ中に噴霧した。同時に、ダストとして別個のノズルからAerosil200を塔に導入し、溶液の固体:Aerosilの比率は99:1であった。流入口空気温度を143℃にし、排出口空気温度を82℃に設定した。乾燥した自由流動性粉末が得られた。
[実施例9]
【0089】
ポビドン中のβ‐カロテンの固溶体
8.0kgのKollidon25、1.5kgのCremophor RH40、0.5kgの尿素、0.1kgのパルミチン酸アスコルビル、および0.05kgのブチルヒドロキシトルエンを30.0kgの酸素非含有脱塩水に溶解した。1.0kgのβ‐カロテンを激しく攪拌しながらこのポリマー溶液に懸濁し、次いでUltra-turraxで15分間処理することによって均質化した。この微粒子懸濁液の液流を熱交換器で70℃に加熱し、混合セル中で230℃に加熱した熱湯流と混合した。活性成分含有流:熱湯流の比率は1:3であった。スプレーノズル上流の高温溶液の温度は190℃であり、この温度での滞留時間は3.0秒であった。100barの圧力下、直径0.7mmの単一流体ノズルを通してこの高温溶液をスプレードライヤ中に噴霧した。流入口空気温度を120℃にし、排出口空気温度を69℃に設定した。乾燥した自由流動性粉末が得られた。
[実施例10]
【0090】
尿素中のテオフィリンの固溶体
10.0kgの尿素を40.0kgの脱塩水に溶解した。3.0kgの微粉砕したテオフィリンを激しく攪拌しながらこのポリマー溶液に懸濁させた。温度155℃のオイルバスの中に入れた直径3mmの細いコイルパイプラインにこの溶液をポンプで通すことにより短時間加熱を行い、その間に溶液の温度は150℃に上昇した。高圧ポンプにより設定した流速は500〜600ml/minであった。100barの圧力下、直径0.5mmの単一流体ノズルを通してこの高温溶液をスプレードライヤ中に噴霧した。流入口空気温度を125℃にし、排出口空気温度を77℃に設定した。乾燥した自由流動性粉末が得られた。
【0091】
比較例1
ポビドン中のテオフィリンの固体分散体
10.0kgのKollidon30を40.0kgの脱塩水に溶解した。5.0kgのテオフィリンを激しく攪拌しながらこのポリマー溶液に懸濁させた。100barの圧力下、直径0.5mmの単一流体ノズルを通してこの懸濁液をスプレードライヤ中に噴霧した。流入口空気温度を160℃にし、排出口空気温度を90℃に設定した。乾燥した自由流動性粉末が得られた。
【0092】
比較例2
ポビドン中のカルバマゼピンの固体分散体
10.0kgのKollidon30を40.0kgの脱塩水に溶解した。5.0kgのカルバマゼピンを激しく攪拌しながらこのポリマー溶液に懸濁させた。2流体ノズルを通してこの懸濁液をFSDスプレードライヤ中に噴霧し凝集させた。流入口空気温度を155℃にし、排出口空気温度を88℃に設定した。乾燥した粉末が得られた。
【表1】

[実施例11]
【0093】
テオフィリン錠剤
Turbulaミキサー中で、実施例1のテオフィリン固溶体2.1kgを1.5kgのLudipress(登録商標)LCE(93%ラクトース、3.5%ポビドン、3.5%クロスポビドンの共処理生成物)、0.03kgのコロイド状シリカ(Degussa社製Aerosil200)、0.15kgのクロスポビドン(BASF社製Kollidon CL)、および0.03kgのステアリン酸マグネシウムと10分間混合し、Korsch PH106型ロータリータブレットプレスを使用し、18kNの圧縮力下で圧縮して錠剤にした。錠剤の直径は10mmであり、重量は331mgであった。
【0094】
比較例1の粉末を使用した錠剤および純粋なテオフィリン結晶を含む錠剤もまた同様に圧縮した。
【0095】
この錠剤について粉砕耐性およびUSP2004パドル装置中の活性成分放出を測定した。
【表2】

[実施例14]
【0096】
カルバマゼピンカプセル
Turbulaミキサー中で、実施例2のカルバマゼピン固溶体180gを100gのリン酸水素カルシウム、1.5gのAerosil200、および20gのKollidon CLと10分間混合し、ゼラチンカプセル中に301.5mgの量で充填した。
【0097】
比較例2の粉末を含むカプセルおよび純粋なカルバマゼピン結晶を含むカプセルもまた同様に製造した。
【0098】
このカプセルについてUSP2004パドル装置中の活性成分放出を測定した。
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明に記載の方法Aによる固溶体の生成法を示す図である。
【図2】本発明に記載の方法Bによる固溶体の生成法を示す図である。
【符号の説明】
【0100】
1:容器
2:熱交換器
2a:ヒーター
3:ノズル
4:スプレー塔
5:粒子状固溶体
6:容器
7:容器
7a:熱交換器
7b:ヒーター
8:混合セル
9:ノズル
10:スプレー塔
11:粒子状固溶体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分とマトリックス賦形剤の溶液を噴霧することにより低溶解性物質の粉体形態または顆粒形態の固溶体を生成する方法であって、低溶解性物質が賦形剤マトリックス中で分子分散形態をとり、マトリックス賦形剤の存在下で低溶解性物質の水性懸濁液を大気圧下でのその沸点より高い温度に加熱するステップ、および低溶解性物質を溶解するステップ、続いて低溶解性物質とマトリックス賦形剤の溶液を噴霧乾燥することによって固体形態に転換するステップを含み、噴霧装置に供給する前のスプレー溶液の温度が90℃〜350℃である、上記方法。
【請求項2】
噴霧化前のスプレー溶液の温度が110〜300℃であり、活性成分が溶解形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
噴霧化前のスプレー溶液の温度が120〜250℃であり、活性成分が溶解形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
90℃より高い温度での活性成分の滞留時間が180秒未満である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
90℃より高い温度での活性成分の滞留時間が60秒未満である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
90℃より高い温度での活性成分の滞留時間が15秒未満である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
賦形剤マトリックス中の低溶解性物質の濃度が1〜50重量%であり、好ましくは10%を超え、特に好ましくは20%を超える、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
賦形剤マトリックス中の低溶解性物質の濃度が10〜50重量%である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
賦形剤マトリックス中の低溶解性物質の濃度が20〜50重量%である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
アミド基を有するマトリックス賦形剤を使用して固溶体を形成する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
固溶体を形成するために使用するマトリックス賦形剤が、N‐ビニルピロリドン、N‐ビニルカプロラクタム、N‐ビニルホルムアミドまたはN‐ビニルアセトアミドのホモポリマーまたはコポリマーである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
固溶体が、さらに、溶解剤としてHLBが10を超える界面活性剤を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
固溶体が、さらに、HLBが10未満の共溶解剤を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
スプレー溶液が吸着剤を含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
活性成分の懸濁液を熱交換器によって加熱する、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
活性成分の懸濁液を加熱するステップを、高温液体流または高温蒸気流と混合することによって行う、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
活性成分の懸濁液と高温液体流の比率が9:1〜1:9である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
活性成分の懸濁液と高温液体流の比率が7:3〜3:7である、請求項16または17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
高温液体流または高温蒸気流の温度が110〜500℃である、請求項16〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
高温液体流または高温蒸気流の温度が150〜400℃である、請求項16〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
高温液体流または高温蒸気流の温度が180〜300℃である、請求項16〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
乾燥するために噴霧乾燥法または流動床スプレー造粒法を使用する、請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
噴霧乾燥中、スプレー塔に吸着剤またはまぶし剤を吹き込む、請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
低溶解性活性成分が、医薬物質、ビタミン、カロテノイド、または栄養補助食品である、請求項1〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法によって生成される、粉体形態または顆粒形態の固溶体。
【請求項26】
a)1〜50重量%の活性成分、b)10〜99重量%の水溶性マトリックス賦形剤、c)0〜30重量%の溶解剤、d)0〜30重量%の共溶解剤、およびe)0〜50重量%の他の慣用の賦形剤を含む、請求項25に記載の粉末または顆粒。
【請求項27】
医薬剤形、食品、または栄養補助食品を製造するための請求項25または26に記載の粉末または顆粒の使用。
【請求項28】
請求項25または26に記載の粉末または顆粒を含む、医薬剤形、食品、または栄養補助食品。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−542427(P2008−542427A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−515196(P2008−515196)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【国際出願番号】PCT/EP2006/062788
【国際公開番号】WO2006/131481
【国際公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】