説明

短波長光用ファラデー回転子及びそのファラデー回転子を備えた光アイソレータ

【課題】比較的短波長域の光源に用いられる光アイソレータのファラデー回転子の光吸収を低減することで、ファラデー回転子の温度上昇を抑え、光アイソレータの光学特性の劣化防止や信頼性を確保する。
【解決手段】短波長光用ファラデー回転子を、ガーネット基板とビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶で構成し、ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶の格子定数を12.56Å以上かつ12.58Å以下に設定する。更に、ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶に入射する光の波長を1030nm以上かつ1090nm以下に設定し、ガーネット基板の片面又は両面にビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶を設ける。又、ガーネット基板に換えてビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶の熱伝導率の4倍以上の熱伝導率を有する光透過板を使用して短波長光用ファラデー回転子を形成する。
更に、その短波長光用ファラデー回転子を使用して光アイソレータを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短波長の光が入射した時に、光吸収による温度上昇を抑えることが可能なファラデー回転子と、そのファラデー回転子を備えた光アイソレータに関する。
【背景技術】
【0002】
光アイソレータは、一方向への光の通過を許容し、逆方向からの光の通過を阻止する非可逆性の光デバイスであり、例えば半導体レーザを光源とする光通信システムにおいて光信号が反射によって光源側に戻ることを防止するために用いられる。一般的にこのような光アイソレータは、ファラデー回転子と2個の偏光子及び永久磁石で構成される。光通信システムで用いられる近赤外波長(1310nm又は1550nm)用の光アイソレータでは、ファラデー回転子用の磁気光学素子として、ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶(以下、必要に応じて「ガーネット単結晶」と云う)などが使用されている。
【0003】
このようなガーネット単結晶は、通常、非磁性のガーネット基板上にLPE(液相エピタキシャル)法で育成した単結晶膜である。光アイソレータでは、ガーネット単結晶膜をガーネット基板付きのまま使用する構成(例えば、特許文献1参照)と、研磨加工によってガーネット基板を取り去ってガーネット単結晶膜のみで使用する構成の二通りが考案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−66160(第3−5頁、第1図)
【0005】
ガーネット基板付きガーネット単結晶膜を使用した光アイソレータ100の模式図を図20に示す。この光アイソレータ100は、ファラデー回転子として、LPE法により製造されたビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶膜101(以下、「ガーネット単結晶膜101」と云う)を用いると共に、このガーネット単結晶膜101の片面に非磁性のガーネット基板102を残したものを、偏光子103ともう一方の偏光子104(検光子)の間に配置して構成されている。
【0006】
更に、ガーネット単結晶膜101のもう一方の面には、偏光子103を密着させている。ガーネット基板102としては、透過させる光の波長域でできるだけ透明であることが望ましく、SGGG基板と称する格子定数が1.2490nm〜1.2515nmの非磁性ガーネットの中から適宜選択するのが最適である。このような格子定数1.2490nm〜1.2515nmのガーネット基板102で育成されるガーネット単結晶101の格子定数は、育成基板であるガーネット基板102の格子定数に依存するため、約12.49〜12.51Åの範囲で表される12.50Å近辺となる。
【0007】
ところで最近、光センサ又は精密加工用の光源として、1030〜1090nmの間の波長のレーザが用いられており、この光源への戻り光を防止するために、前記光源側にも光アイソレータの搭載が検討されている。従って、近赤外波長域(1310nm又は1550nm)よりも短波長な、1000nm付近で使用可能な光アイソレータが必要となる。このような比較的短波長領域で損失の小さいファラデー回転子用の磁気光学素子としては、常磁性単結晶あるいは常磁性ガラスが存在する。だが、これらを用いると、磁気光学素子の厚みが10mm以上必要となり、光アイソレータが大型化してしまう。更に、常磁性体の磁気光学素子を磁気飽和させるためには巨大な磁石が必要になり、このことも光アイソレータの大型化を招いてしまう原因となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、近赤外波長用の場合と同様、磁気光学素子に鉄ガーネット等の単結晶膜を用いて光アイソレータの小型化を図ることが検討されている。光通信分野で用いられているビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶は、単位長さあたりのファラデー回転係数が常磁性単結晶や常磁性ガラスに比べて著しく大きいため、光アイソレータを大幅に小型化することが可能である。
【0009】
しかし、約12.50Å近辺の格子定数を有するビスマス置換希土類鉄ガーネット等のガーネット単結晶では、900nm付近にピークをもつFe3価の光吸収が1000nm以上まで広がりを有するため、1000nm付近の波長域では光吸収が大きくなる。従って前記光センサ又は精密加工用と云った比較的短波長域の光源に対して使用される光アイソレータでは、磁気光学素子のガーネット単結晶膜が光を吸収し易くなる。更に、吸収された光は熱に変換されてガーネット単結晶膜の光透過部分に大きな温度上昇を引き起こす。この温度上昇によってガーネット単結晶膜のファラデー回転角が変化して、光アイソレータの消光比劣化や熱的損傷による信頼性の低下と云った問題が発生する。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みて成されたものであり、その目的は、比較的短波長域の光を出
射する光源に用いられる光アイソレータのファラデー回転子の光吸収を低減することで、ファラデー回転子の温度上昇を抑えて、光アイソレータの光学特性の劣化防止や信頼性の確保を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1記載の短波長光用ファラデー回転子は、
ガーネット基板とビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶を含み、
前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶は光を入射して、前記光の偏光面を回転させると共に、格子定数が12.56Å以上かつ12.58Å以下に設定され、
前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶に入射される前記光の波長をλ(nm)とした時に、前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶の使用環境は、λ=1030nm以上かつ1090nm以下の波長条件に設定され、
前記ガーネット基板の少なくとも片面に、前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶が設けられることを特徴とする短波長光用ファラデー回転子である。
【0012】
又、請求項2記載の短波長光用ファラデー回転子は、
光透過板とビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶を含み、
前記光透過板は前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶の熱伝導率の4倍以上の熱伝導率を有する材料で形成され、
前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶は光を入射して、前記光の偏光面を回転させると共に、格子定数が12.56Å以上かつ12.58Å以下に設定され、
前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶に入射される前記光の波長をλ(nm)とした時に、前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶の使用環境は、λ=1030nm以上かつ1090nm以下の波長条件に設定され、
前記光透過板の少なくとも片面に、前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶が設けられることを特徴とする短波長光用ファラデー回転子である。
【0013】
更に、請求項3記載の短波長光用ファラデー回転子は、
前記光透過板が単結晶から成り、その単結晶の光学的等方軸が前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶の光学面に対して垂直となるように、前記光透過板が前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶の少なくとも片面に設けられていることを特徴とする請求項2記載の短波長光用ファラデー回転子である。
【0014】
更に、請求項4記載の短波長光用ファラデー回転子は、
前記ガーネット基板の厚みが1mm以上に設定されることを特徴とする請求項1に記載の短波長光用ファラデー回転子である。
【0015】
更に、請求項5記載の短波長光用ファラデー回転子は、
2個の前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶が前記ガーネット基板の両面に設けられると共に、
2個の前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶のそれぞれのファラデー回転方向は前記光の伝搬方向から見たときに同一方向に設定され、
更に、2個の前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶のファラデー回転角の合計が45度であることを特徴とする請求項1又は4に記載の短波長光用ファラデー回転子である。
【0016】
又、請求項6記載の短波長光用ファラデー回転子は、
2個の前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶が前記光透過板の両面に設けられると共に、
2個の前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶のそれぞれのファラデー回転方向は前記光の伝搬方向から見たときに同一方向に設定され、
更に、2個の前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶のファラデー回転角の合計が45度であることを特徴とする請求項2又は3に記載の短波長光用ファラデー回転子である。
【0017】
又、請求項7記載の短波長光用ファラデー回転子は、
前記ガーネット基板の片面に、前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶が設けられ
て構成される前記短波長光用ファラデー回転子を2個、前記光の伝搬方向に配列し、
2個の前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶のそれぞれのファラデー回転方向が前記光の伝搬方向から見たときに同一方向に設定され、
更に、2個の前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶のファラデー回転角の合計が45度であることを特徴とする請求項1又は4に記載の短波長光用ファラデー回転子である。
【0018】
又、請求項8記載の短波長光用ファラデー回転子は、
前記光透過板の片面に、前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶が設けられて構成される前記短波長光用ファラデー回転子を2個、前記光の伝搬方向に配列し、
2個の前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶のそれぞれのファラデー回転方向が前記光の伝搬方向から見たときに同一方向に設定され、
更に、2個の前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶のファラデー回転角の合計が45度であることを特徴とする請求項2又は3に記載の短波長光用ファラデー回転子である。
【0019】
更に、請求項9記載の短波長光用ファラデー回転子は、
前記光の入射側に配列される前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶が、もう一個の前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶よりも前記ファラデー回転角が小さく設定されることを特徴とする請求項5乃至8の何れかに記載の短波長光用ファラデー回転子である。
【0020】
更に、請求項10記載の短波長光用ファラデー回転子は、
非光透過面である前記短波長光用ファラデー回転子の側面に熱硬化性樹脂を塗布し、ペルチェ素子又はヒートシンクに前記短波長光用ファラデー回転子が接着されることを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載の短波長光用ファラデー回転子である。
【0021】
又、請求項11記載の短波長光用ファラデー回転子は、
非光透過面である前記短波長光用ファラデー回転子の側面に金属層を成膜し、ペルチェ素子又はヒートシンクにハンダによって前記短波長光用ファラデー回転子が接合されることを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載の短波長光用ファラデー回転子である。
【0022】
又、請求項12記載の短波長光用ファラデー回転子は、
非光透過面である前記短波長光用ファラデー回転子の側面に金の膜を設け、前記金の膜を熱圧着することによりペルチェ素子又はヒートシンクに前記短波長光用ファラデー回転子が圧着されることを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載の短波長高パワー用ファラデー回転子である。
【0023】
更に、請求項13記載の発明は、
請求項1乃至9の何れかに記載の前記短波長光用ファラデー回転子の、前記光の入射側及び出射側に偏光子を配置してなる光アイソレータである。
【0024】
又、請求項14記載の発明は、
請求項10乃至12の何れかに記載の前記短波長光用ファラデー回転子の、前記光の入射側及び出射側に偏光子を配置してなる光アイソレータである。
【0025】
更に、請求項15記載の光アイソレータは、
前記短波長光用ファラデー回転子及び前記偏光子の非光透過面である各側面が、熱伝導率15W/m・K以上の材料から形成されるホルダーによって保持されると共に、
前記ホルダーを介してペルチェ素子又はヒートシンクに前記ビスマス置換型希土類鉄ガーネットが接続されることを特徴とする請求項13に記載の光アイソレータである。
【0026】
更に、請求項16記載の光アイソレータは、
非光透過面である前記短波長光用ファラデー回転子の側面に熱硬化性樹脂を塗布し、前記ホルダーに前記短波長光用ファラデー回転子が接着されることを特徴とする請求項15に記載の光アイソレータである。
【0027】
又、請求項17記載の光アイソレータは、
非光透過面である前記短波長光用ファラデー回転子の側面に金属層を成膜し、前記ホルダーにハンダによって前記短波長光用ファラデー回転子が接合されることを特徴とする請求項15に記載の光アイソレータである。
【0028】
又、請求項18記載の光アイソレータは、
非光透過面である前記短波長光用ファラデー回転子の側面に金の膜を設け、前記金の膜を熱圧着することにより前記ホルダーに前記短波長光用ファラデー回転子が圧着されることを特徴とする請求項15に記載の光アイソレータである。
【0029】
更に、請求項19記載の光アイソレータは、
前記ホルダーに熱硬化性樹脂を塗布し、前記ペルチェ素子又はヒートシンクに前記ホルダーが接着されることを特徴とする請求項15乃至18の何れかに記載の光アイソレータである。
【0030】
又、請求項20記載の光アイソレータは、
前記ホルダーに金属層を成膜し、前記ペルチェ素子又はヒートシンクにハンダによって前記ホルダーが接合されることを特徴とする請求項15乃至18の何れかに記載の光アイソレータである。
【0031】
又、請求項21記載の光アイソレータは、
前記ホルダーに金の膜を設け、前記金の膜を熱圧着することにより前記ペルチェ素子又はヒートシンクに前記ホルダーが圧着されることを特徴とする請求項15乃至18の何れかに記載の光アイソレータである。
【0032】
更に、請求項22記載の光アイソレータは、
前記光の伝搬方向に垂直な方向における前記ホルダーの断面形状が、角形、凹形、平板形の何れかであることを特徴とする請求項15乃至21の何れかに記載の光アイソレータである。
【0033】
更に、請求項23記載の光アイソレータは、
熱伝導性を有する材料から構成される充填材を、前記短波長光用ファラデー回転子及び前記ホルダーと接触するように充填したことを特徴とする請求項15乃至22の何れかに記載の光アイソレータである。
【発明の効果】
【0034】
本発明の請求項1記載の短波長光用ファラデー回転子に依れば、ガーネット単結晶の格子定数を、12.56Å以上且つ12.58Å以下の範囲に設定することにより、光吸収に伴う光の透過損失がピークとなる波長帯域が、従来の約12.50Å近辺の格子定数を有するガーネット単結晶のピーク波長帯域に比べて、より短波長帯域へとシフトする。このシフトに伴い、波長1030以上かつ1090nm以下の帯域でのガーネット単結晶の光透過損失が低減されて、ガーネット単結晶での光吸収量も低減され、吸収光から変換される熱量が減少して、ガーネット単結晶の温度上昇が抑制される。
【0035】
又、ガーネット単結晶で吸収された光は、ガーネット単結晶内部で熱に変換されてガーネット基板へと拡散される。このようにガーネット単結晶にガーネット基板を設けることにより、ガーネット単結晶内部で光吸収により発生した熱が効率良く速やかにガーネット単結晶外部へと放熱される。よって、ガーネット単結晶の温度上昇が抑えられる。
【0036】
本発明の請求項2記載の短波長光用ファラデー回転子に依れば、ガーネット単結晶の格子定数を、12.56Å以上且つ12.58Å以下の範囲に設定することにより、光吸収に伴う光の透過損失がピークとなる波長帯域が、従来の約12.50Å近辺の格子定数を有するガーネット単結晶のピーク波長帯域に比べて、より短波長帯域へとシフトする。このシフトに伴い、波長1030nm以上かつ1090nm以下の帯域でのガーネット単結晶の光透過損失が低減されて、ガーネット単結晶での光吸収量も低減され、吸収光から変換される熱量が減少して、ガーネット単結晶の温度上昇が抑制される。
【0037】
又、ガーネット単結晶で吸収された光は、ガーネット単結晶内部で熱に変換されて光透過板へと拡散される。このようにガーネット単結晶に光透過板を設けることにより、ガーネット単結晶内部で光吸収により発生した熱が効率良く速やかにガーネット単結晶外部へと放熱される。よって、ガーネット単結晶の温度上昇が抑えられる。
【0038】
更に、請求項3記載の短波長光用ファラデー回転子に依れば、短波長光用ファラデー回転子に入射する図示しない光の入射角が小さい場合に、複屈折による影響を殆ど無視できるまでに小さく抑えることが可能となる。
【0039】
更に、請求項4記載の短波長光用ファラデー回転子に依れば、ガーネット基板の厚みを1mm以上に設定しているので、熱の伝導体積が大型化され、ガーネット単結晶の放熱効率が向上する。
【0040】
更に、請求項5乃至8記載の短波長光用ファラデー回転子に依れば、45度のファラデー回転角が生じる厚みを2個のガーネット単結晶に分割することにより、光吸収によって発生する熱量を分散させることが可能となる。更に、1個当たりの厚さを薄くできるので、1個当たりのガーネット単結晶での光吸収量が減少されて、それぞれのガーネット単結晶の温度上昇を抑えることも可能となる。
【0041】
ガーネット単結晶を複数設ける場合、その個数は2個が最適である。その理由は、組み立て易さとコストを抑えるためであり、3個以上に設定すると光学素子数が過度に増加して、光学素子間の組み立てが困難になると共に、製造コストも上昇するためである。
【0042】
更に、請求項7記載の短波長光用ファラデー回転子に依れば、製造工程の短縮と、放熱効率の向上が図れる。
【0043】
更に、請求項9記載の短波長光用ファラデー回転子に依れば、光が最初に透過することで発熱量が比較的大きい入射側のガーネット単結晶を、出射側のガーネット単結晶より薄く設定している。このため、両方のガーネット単結晶で発生する熱量が等しくなり、入射側のガーネット単結晶での発熱量が低減される。これにより2個のガーネット単結晶の温度上昇値をほぼ等しくして、最適な熱分散を行うことが可能となるため、ガーネット単結晶全体としての温度上昇を最少とすることができる。
【0044】
更に、請求項10乃至12又は請求項16乃至21に記載の短波長光用ファラデー回転子又は光アイソレータに依れば、ガーネット単結晶で発生した熱がガーネット単結晶外部へと伝導可能なように、熱硬化性樹脂、ハンダ、若しくは金の膜によって、ガーネット単結晶がホルダー又は冷却素子へと熱的に接続されているので、効率良く且つ速やかにガーネット単結晶を放熱することが可能となる。
【0045】
又、請求項13又は14に記載の光アイソレータに依れば、請求項1乃至12の何れかのファラデー回転子を備えることにより、光アイソレータの光学特性の劣化防止や信頼性を確保することが可能となる。更に、短波長帯域の光源を使用する光学デバイスや装置に適用可能な光アイソレータが実現化される。
【0046】
更に、請求項15記載の光アイソレータに依れば、15W/m・K以上の熱伝導率を有する材料のホルダーを介してガーネット単結晶を冷却素子に接続したので、高熱伝導率材料でガーネット単結晶と冷却素子とを熱的に接続する構造とすることができ、ガーネット単結晶の放熱効率を向上することが可能となる。
【0047】
更に、請求項22記載の光アイソレータに依れば、ホルダーの断面形状を、角形、凹形、又は平板形の何れかとすることにより、ホルダーの外形の一部に平面部を設けることで、冷却素子上への載置の容易化が図れる。又、平面部によってホルダーを冷却素子に面接触させるため、熱伝導面積の確保によるガーネット単結晶の速やかな放熱が可能となる。
【0048】
更に、請求項23記載の光アイソレータに依れば、ガーネット単結晶で発生した熱が、ガーネット基板又は光透過板だけでなく充填材からも伝導されるので、ガーネット単結晶の放熱効率を更に向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
<第1の実施の形態>
以下、本発明に係る短波長光用ファラデー回転子1(以下、「ファラデー回転子1」と云う)と、そのファラデー回転子1を使用した光アイソレータ8の第1の実施の形態について、図1〜図6を用いて詳細に説明する。
【0050】
図1に示すように、本実施形態に係るファラデー回転子1は、平板状で非磁性のガーネ
ット基板3の片面に、平板状のビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶2(以下、必要に応じて「ガーネット単結晶2」と云う)が接する様に設けられることで構成される。ガーネット基板3の片面にはガーネット単結晶2の光学面2osが接している。
【0051】
又、そのファラデー回転子1を使用した光アイソレータは、図3に示すようにファラデ
ー回転子1の、光の入射側及び出射側に、それぞれ1個ずつ計2個の偏光子4、5を配置してすることで構成されている。
【0052】
ガーネット基板3は、12.56Å以上かつ12.58Å以下の範囲に設定された格子定数を有する非磁性の基板である。又、ガーネット単結晶2は、12.56Å以上かつ12.58Å以下の範囲に設定された格子定数を有し、その厚みt1は、直線偏光の光が入射された時、前記光の偏光面を45度回転させるように設定されている。
【0053】
ガーネット単結晶2は、LPE法により前記ガーネット基板3の片面上に育成される。白金坩堝内で加熱溶融した融剤を加熱溶融して十分に撹拌し、均一に混合した溶融液を作製する。この溶融液の液面に、直径2〜3インチ、厚みt2が1mm以上に設定された面方位{111}の前記ガーネット基板3を浸し、基板を回転させながらLPE法によって前記{111}面上に、前記ガーネット単結晶2を大気雰囲気中でエピタキシャル成長させて育成する。
【0054】
育成されたガーネット単結晶2の格子定数は、ガーネット基板3の格子定数と溶融液の組成に依存するため、前記のように12.56Å以上且つ12.58Å以下の範囲に設定される。この格子定数を有するガーネット単結晶2を、ファラデー回転角45度を有する厚みまで研磨し、表面に波長1030nm以上1090nm以下の任意の帯域に対するARコートを蒸着する。育成するガーネット単結晶2の組成に特に制限は無い。
【0055】
次に、ガーネット単結晶2を育成したガーネット基板3を、ダイサー等で等mm角に切断し、図1に示すようなガーネット単結晶2とガーネット基板3から構成される1〜2mm角のファラデー回転子1を得る。
【0056】
このようにして得られたファラデー回転子1の、非光透過面である側面に熱硬化性樹脂の接着剤を塗布し、ペルチェ素子又はヒートシンク9(以下、まとめて冷却素子9と記す)にファラデー回転子1を接着する(図2参照)。
【0057】
なお、熱硬化性樹脂に換えてハンダや金の膜を用いても良い。ハンダを用いる場合は、前記側面に真空蒸着によりCr、Pt、Auの三層から成る金属層を成膜し、冷却素子9にハンダ(例えばAu/Snハンダ)によってファラデー回転子1を接合する。又、金の膜を用いる場合は、前記側面に金(Au)を成膜して設け、前記金の膜を熱圧着することにより冷却素子9にファラデー回転子1を圧着させる。
【0058】
図3(d)より、ファラデー回転子1と共に光アイソレータ8を構成する偏光子4、5は、二色性を有する異方性ガラスから形成されており、特定の偏光成分は透過させるが、それと直交する偏光成分は光吸収・遮断させるものである。偏光子4、5は熱硬化性樹脂やハンダによって冷却素子9に固定すれば良い。更に、光アイソレータ用光学素子10(偏光子4、5とファラデー回転子1)の三辺の側面を覆うように、図4(d)及び図5(d)に示すようにコの字形をした永久磁石6を、ガーネット単結晶2の近傍に設置する。永久磁石6はSm-Co系又はNe-Fe-B系が最適である。永久磁石6の磁界はガーネット単結晶2を磁気飽和させるために十分な磁界とする。永久磁石6を載置することにより、飽和磁界を板厚方向に沿ってガーネット単結晶2にかけ、厚みt1方向を透過する波長1030nm以上かつ109
0nm以下の任意の波長の直線偏光が45度回転するようにした。
【0059】
又は、図2のようにファラデー回転子1を直接、冷却素子9に接続するのではなく、ファラデー回転子1をホルダーに保持しても良い。図3(a)〜(c)に示すように、光アイソレータ8を構成する偏光子4、5及びファラデー回転子1を、ホルダー(7a又は7b)内部に収納又はホルダー7c上に載置する。偏光子4、5及びファラデー回転子1の非光透過面である各側面が、ホルダー7a〜7cによって保持される。ホルダー7a〜7cは銅、SUS、アルミニウムと云った熱伝導率が15W/m・K以上の材料から形成される。
【0060】
更に、光アイソレータ用光学素子10(偏光子4、5とファラデー回転子1)の三辺の側面を覆うように、図4(a)〜(c)に示すコの字形をした永久磁石6を、ガーネット単結晶2の近傍に設置する。次に、ホルダー7a〜7cを図5(a)〜(c)に示すように、冷却素子9上に載置することによって、ホルダー7a〜7cを介して冷却素子9にガーネット単結晶2が接続される。
【0061】
ホルダー7a〜7cの形状は、図3(a)〜(c)に示すように光の伝搬方向(矢印P方向)と垂直な方向における断面形状が、角形(図3(a)参照)、凹形(図3(b)参照)、平板形(図3(c)参照)の何れかとなるように成形される。光アイソレータ8を構成するときは、図示しない光源側にガーネット単結晶2を配置する。このような配置にすれば、ガーネット単結晶2とガーネット基板3との界面での反射光は、更にガーネット単結晶2によりファラデー回転を受ける。従って光アイソレータ8からのいわゆる戻り光と同様に扱えるため、光アイソレータ8のアイソレーション低下を招かない。逆に、ガーネット基板3を光源側に配置すると、反射光が、ファラデー回転を受けずにそのまま光源に戻り、アイソレーションが低下する。
【0062】
ホルダー7a〜7cでファラデー回転子1を保持する際は、ファラデー回転子1の非光透過面である側面に熱硬化性樹脂の接着剤を塗布し、ホルダー7a〜7cにファラデー回転子1を接着する。なお、熱硬化性樹脂に換えてハンダや金の膜を用いても良い。ハンダを用いる場合は、前記側面に金属層を成膜し、前記ホルダー7a〜7cにハンダによってファラデー回転子1を接合する。金の膜を用いる場合は、前記側面に金の膜を設け、前記金の膜を熱圧着することにより前記ホルダー7a〜7cにファラデー回転子1を圧着する。偏光子4、5は熱硬化性樹脂やハンダによってホルダー7a〜7cに固定すれば良い。
【0063】
更に、光学素子を保持したホルダー7a〜7cの一面に熱硬化性樹脂を塗布し、図5(a)〜(c)に示すように冷却素子9にホルダー7a〜7cを接着する。なお、熱硬化性樹脂に換えてハンダや金の膜を用いても良い。ハンダを用いる場合は、前記一面に金属層を成膜し、冷却素子9にハンダによってホルダー7a〜7cを接合する。金の膜を用いる場合は、前記一面に金の膜を設け、前記金の膜を熱圧着することにより前記冷却素子9にホルダー7a〜7cを圧着する。
【0064】
以上のようにして冷却素子9に接続されたガーネット単結晶2の使用環境は、入射する光の波長をλ(nm)とした時に、λ=1030nm以上かつ1090nm以下の任意の波長条件に設定される。
【0065】
次に、光アイソレータ8の光学的な動作について図5を用いて説明する。光アイソレータ8に矢印I方向に沿って1030nm以上1090nm以下の任意の波長の光が入射されると、まず偏光子4に光が入射される。ここで入射した光の偏光方向は、偏光子4の偏光方向に合致する偏光成分のみに限定される。偏光子4を透過した光(直線偏光)は、次にファラデー回転子1のガーネット単結晶2に入射して、その偏光面が45度回転される。その際、ガーネット単結晶2の光透過部分で光吸収が発生し、入射光の一部が吸収される。ガーネット単結晶2の厚みt1は非常に薄型に形成されるため、この薄さと熱伝導率の悪さから、ガーネット単結晶2単体では十分に熱を拡散・放熱することは出来ない。
【0066】
しかしながら、前記のようにガーネット単結晶2の格子定数は、12.56Å以上且つ12.58Å以下の範囲に設定されている。従って図6に示すように、光吸収に伴う光の透過損失がピークとなる波長帯域が、従来の約12.50Å近辺(12.49〜12.51Å)の格子定数を有するガーネット単結晶のピーク波長帯域に比べて、より短波長帯域へとシフトされる。約12.50Å近辺の格子定数を有する従来のガーネット単結晶の光吸収ピーク波長が、900nm付近であったのに対し、本実施形態のガーネット単結晶2の光吸収ピーク波長は、格子定数の増大に伴い約890nm付近へとシフトする。図6では、従来の約12.50Å近辺(12.49〜12.51Å)の格子定数を有するガーネット単結晶の波長−光透過損失特性を曲線A-1で表し、本実施形態に係る12.56Å以上かつ12.58Å以下の格子定数を有するガーネット単結晶2の波長−光透過損失特性を曲線A-2で表す。なお、光吸収ピーク波長のシフト効果は、12.51超から12.55Å以下の格子定数を有するガーネット単結晶では確認されなかった。以上により、ガーネット単結晶2の格子定数の下限を12.56Åに限定した。
【0067】
ガーネット単結晶2の格子定数の上限を12.58Åに限定した理由は、12.58Å超の格子定数を有するガーネット単結晶2を育成するには、1030nm以上1090nm以下の波長帯域で光吸収を発生するネオジム(Nd)を含有する組成のガーネット基板を使用しなければならず、光吸収を発生しない組成のガーネット基板での育成限界が12.58Åであるためである。
【0068】
このシフトに伴い、波長1030nm以上かつ1090nm以下の帯域でのガーネット単結晶2の光透過損失は、波長1064nmの光が45度回転する厚みt1:120μmの場合で1.0dBから0.7dBへと低減される(図6では代表例として1064nmの場合を示している)。光透過損失が減少することにより、ガーネット単結晶2での光吸収量も低減され、吸収光から変換される熱量が減少するため、ガーネット単結晶2の温度上昇が抑制される。
【0069】
又、ガーネット単結晶2で吸収された光は、ガーネット単結晶2内部で熱に変換される。しかしながらガーネット単結晶2は、その光学面2osがガーネット基板3と接しているので、光学面2osから熱がガーネット基板3へと、立体的に且つ放射状に拡散する。ガーネット基板3へと伝導された熱は、冷却素子9へと伝えられて放熱される。このようにガーネット単結晶2にガーネット基板3を設けることにより、ガーネット単結晶2内部で光吸収により発生した熱が効率良く速やかにガーネット単結晶2外部へと放熱される。よって、ガーネット単結晶2の温度上昇が抑えられ、光アイソレータ8の光学特性の劣化防止や信頼性を確保することが可能となる。更に、短波長帯域の光源を使用する光学デバイスや装置に適用可能な光アイソレータ8が実現化される。
【0070】
更に、ガーネット基板3の厚みt2を1mm以上に設定しているので、熱の伝導体積が大型化され、ガーネット単結晶2の放熱効率が向上する。
【0071】
更に、ガーネット単結晶2で発生した熱が冷却素子9へと伝導可能なように、熱硬化性樹脂、ハンダ、若しくは金の膜によって、ガーネット単結晶2が冷却素子9へと熱的に接続されているので、効率良く且つ速やかにガーネット単結晶2を放熱することが可能となる。
【0072】
又、15W/m・K以上の熱伝導率を有する材料でホルダー7a〜7cを形成し、そのホルダー7a〜7cを介してガーネット単結晶2を冷却素子9に接続した。よって高熱伝導率材料でガーネット単結晶2と冷却素子9とを熱的に接続する構造とすることができ、ガーネット単結晶2の放熱効率を向上することが可能となる。
【0073】
更に、ホルダー7a〜7cの断面形状を、角形、凹形、又は平板形の何れかとすることにより、ホルダー7a〜7cの外形の一部に平面部を設けることで、冷却素子9上への載置の容易化が図れると共に、平面部によってホルダー7a〜7cを冷却素子9に面接触させるため、熱伝導面積の確保によるガーネット単結晶2の速やかな放熱が可能となる。
【0074】
最後に、偏光子5に光が入射されるが、順方向(矢印I方向)では偏光子4を透過した
光の偏光方向はガーネット単結晶2を介して、偏光子5の偏光方向と一致するように調整されるため、偏光子5で吸収される偏光成分はほとんど無く、光が通過されていく。
【0075】
反射などによる戻り光があった場合、偏光子5によって直線偏光に変換された後、ガーネット単結晶2によって45度偏光面が回転される。しかし、ガーネット単結晶2は非可逆性の光学素子なので、回転された偏光面の偏光方向は、偏光子4の偏光方向とは90度異なり、戻り光は偏光子4を通過できない。
【0076】
なお、以上で説明したファラデー回転子1及び光アイソレータ8では、ガーネット基板
3に換えて光透過板を使用しても良い。図7(a)と(b)及び図8〜図10に示すように、平板状の光透過板11の片面に、ガーネット単結晶2の光学面2osが接する様に設けることにより別形態のファラデー回転子12が構成される。
【0077】
光透過板11は、高熱伝導率を有する材料から構成されるものであり、更に、ガーネット単結晶2の光学面2osに面接触されて設けられるので、光学的に光透過性で光吸収がほとんど無いことが条件である。光透過板11はガーネット単結晶2で発生した熱を速やかに伝導して放熱させる作用を目的として設けられるため、その熱伝導率はガーネット単結晶2の熱伝導率に比べて少なくとも4倍以上大きくなければならない。
【0078】
ガーネット単結晶2はビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶で構成されているため、熱伝導率は約2.1W/m・K(25度)である。そのガーネット単結晶2よりも4倍以上大きな熱伝導率を有し、更に光透過性で透明な材料としては、サファイア単結晶(42W/m・K(25度))・ZnSe単結晶(18W/m・K(25度))などが挙げられる。光透過板11を設ける目的は、短波長帯域(1030nm〜1090nm)の光の入射に伴って発生するガーネット単結晶2の熱の放熱を効率良く行うことなので、透過可能な波長帯域を1030nm以上かつ1090nm以下に限定する必要がある。従って、サファイア単結晶(光透過波長域0.17μm〜6.5μm)のように、1030nm〜1090nmの波長帯域の光が透過可能な材料を光透過板11に用いることが最適である。
【0079】
光透過板11にサファイア単結晶のような光学的に異方性を示す単結晶を用いる場合、特
にファラデー回転子と云った偏光を扱う光学素子に使用する場合には、偏光状態に対する注意が必要である。具体的には、前記光学面2osに対して前記サファイア単結晶の光学的等方軸(一例として、C軸とする)が垂直になるように設定して、光透過板11をガーネット単結晶2に接触・接合する。このような接合によって、ファラデー回転子12に入射する図示しない光の入射角が小さい場合のみ、複屈折による影響を殆ど無視できるまでに小さく抑えることが可能となる。
【0080】
このようなファラデー回転子12は、ガーネット基板上にガーネット単結晶2を育成した後、ガーネット基板を研磨により除去し、光学面2osに光透過板11を面接触させ、光学面2osと光透過板11とを接合固定することによって製作される。その接合方法としては光学用エポキシ接着剤による接着が挙げられる。光学用エポキシ接着剤を使用すると接着時の温度を100度以下の低温に設定することができるので、接着時にファラデー回転子12内部で発生する応力歪みを抑制するという点において顕著な効果が現れる。
【0081】
以上のようにガーネット単結晶2と光透過板11とを接合することによって、単に光透過板11を前記光学面2osに接触させるだけの場合に比べ、より速やかにガーネット単結晶2で発生した熱を光透過板11に伝導させて拡散・放熱させることが可能となるため、ガーネット単結晶2の温度上昇をより効果的に抑えることが出来る。
【0082】
その他の接合方法としては、両者(ガーネット単結晶2と光透過板11)の熱膨張係数が近ければ熱拡散接合など高温での接合も可能であるが、熱膨張係数の整合がとれない場合にはガーネット単結晶2の使用温度(約25度〜30度)に近い状態で接合する必要がある。このような接合方法としては、常温真空接合(超高真空中で接合面をイオンビームなどで活性化させ、貼り合わせた後、加圧して接合する方法)、フッ酸接合(フッ酸溶液で密着接合する方法)、低融点ガラスによるガラス接合などがある。
【0083】
又、ガーネット単結晶2や光透過板11のような屈折率が異なる材料同士を接合する場合、その接合面では屈折率差によるフレネル反射が起こるため、ARコートをガーネット単結晶2に施すことでフレネル反射を抑える。ARコートの膜構成は接合する基板の材料や接合方法によって異なるため、条件にあわせて最適なARコートを設計する必要がある。なお、フレネル反射による損失が無視でき、かつ反射光の影響を除けるのであれば、ARコートは成膜しなくても良い。
【0084】
前述の光アイソレータ8の場合と同様、ガーネット単結晶2に光が入射するとガーネット単結晶2で光吸収により熱が発生する。しかしながら、前述のようにガーネット単結晶2の光吸収ピーク波長のシフトに伴い、吸収光から変換される熱量が減少するため、ガーネット単結晶2の温度上昇が抑制される。
【0085】
又、ガーネット単結晶2で吸収された光は、ガーネット単結晶2内部で熱に変換されるが、ガーネット単結晶2は、その光学面2osが光透過板11と接しているので、光学面2osから熱が光透過板11へと、立体的に且つ放射状に拡散され冷却素子で放熱される。よって、ガーネット単結晶2の温度上昇が抑えられ、図11に示す光アイソレータ13の光学特性の劣化防止や信頼性を確保することが可能となる。更に、短波長帯域の光源を使用する光学デバイスや装置に適用可能な光アイソレータ13が実現化される。
【0086】
<第2の実施の形態>
次に、本発明に係るファラデー回転子と、そのファラデー回転子を使用した光アイソレータの第2の実施の形態について、図12〜図16を用いて詳細に説明する。なお、第1の実施の形態と同一箇所には同一番号を付し、重複する説明は省略又は簡略化して記述する。
【0087】
第2の実施の形態が、前記第1の実施の形態と異なる点は、ガーネット単結晶を2個設
けた点である。図12に示すように、本実施形態に係るファラデー回転子14は、平板状で非磁性のガーネット基板3の両面に、1個ずつ計2個の平板状のガーネット単結晶2a、2b
が設けられることで構成される。ガーネット基板3の両面には、ガーネット単結晶2a、2bのそれぞれの光学面2os1、2os2が接する。
【0088】
又、そのファラデー回転子14を使用した光アイソレータは、図14に示すようにファラ
デー回転子14の、光の入射側及び出射側に、それぞれ1個ずつ計2個の偏光子4、5を配置してすることで構成されている。
【0089】
ガーネット基板3は、12.56Å以上かつ12.58Å以下の範囲に設定された格子定数を有する非磁性の基板であり、ガーネット単結晶2a、2bは、12.56Å以上かつ12.58Å以下の範囲に設定された格子定数を有する。
【0090】
ガーネット単結晶2a、2bは、LPE法により前記ガーネット基板3の両面上に育成される。白金坩堝内で加熱溶融した融剤を加熱溶融して十分に撹拌し、均一に混合した溶融液を作製する。この溶融液の液面に、直径2〜3インチ、厚みt2が1mm以上に設定された面方位{111}の前記ガーネット基板3の片面を浸し、基板を回転させながらLPE法によって前記{111}面上に、前記ガーネット単結晶2aを大気雰囲気中でエピタキシャル成長させて育成する。
【0091】
同じように、前記ガーネット基板3のもう一方の片面を溶融液の液面に浸してガーネット単結晶2bをエピタキシャル成長させることで、ガーネット基板3の両面にガーネット単結晶2a、2bを育成する。このガーネット単結晶2a、2bを研磨し、表面に波長1030nm以上1090nm以下の任意の波長帯域に対するARコートを蒸着する。育成するガーネット単結晶2a、2bの組成に特に制限は無い。2個のガーネット単結晶2a、2bの合計の厚み(t3+t4)は、2個合わせて45度のファラデー回転角を有する厚みに設定する。それぞれのファラデー回転角を22.5度に正確に分けることが困難な場合、若干ファラデー回転角に偏りが生じても構わない。従って、2個のガーネット単結晶2a、2bの厚みt3とt4は必ずしも等厚である必要は無い。このガーネット基板3を等mm角に切断して、図12に示すような2個のガーネット単結晶2a、2bと1個のガーネット基板3から構成される1〜2mm角のファラデー回転子14を得る。
【0092】
2個のガーネット単結晶2a、2bのそれぞれのファラデー回転方向は、光の伝搬方向(矢印P方向)から見たときに同一方向となるように設定する。
【0093】
このようにして得られたファラデー回転子14を、熱硬化性樹脂の接着剤、ハンダ、金の膜などによって冷却素子9に固定する(図13、図14(d)、図15(d)、図16(d)参照)。
【0094】
又は、ファラデー回転子14を直接、冷却素子9に接続するのではなく、図14(a)〜(c)のようにファラデー回転子14をホルダーに保持しても良い。図14(a)〜(c)に示すように、光アイソレータ15を構成する偏光子4、5及びファラデー回転子14を、ホルダー7a又は7b内部に収納、或いはホルダー7c上に載置する。次に、そのホルダー7a〜7cを図16(a)〜(c)に示すように、冷却素子9上に載置することによって、ホルダー7a〜7cを介して冷却素子9にガーネット単結晶2a、2bが接続される。
【0095】
ホルダー7a〜7cでファラデー回転子14を保持する際は、ファラデー回転子14を、熱硬化性樹脂の接着剤、ハンダ、金の膜などによってホルダー7a〜7cに固定する。更に、図15(a)〜(c)に示すような光アイソレータ用光学素子16(偏光子4、5及びファラデー回転子14)を保持したホルダー7a〜7cを、熱硬化性樹脂の接着剤、ハンダ、金の膜などによって冷却素子9に固定する。
【0096】
2個のガーネット単結晶2a、2bの厚みが等厚ではないファラデー回転子14を備えた光アイソレータ15を光センサなどの光学デバイスに搭載する際は、図示しない光源からの光の入射側に配列されるガーネット単結晶2aは薄く、出射側のガーネット単結晶2bはそれよりも厚くなるように配置する。即ち、光の入射側に配列するガーネット単結晶2aのファラデー回転角を、もう一個のガーネット単結晶2bのファラデー回転角よりも小さく設定する。それぞれのファラデー回転角は、例えばガーネット単結晶2aのファラデー回転角を18度又は21.6度、もう一方のガーネット単結晶2bのファラデー回転角を27度又は23.4度に設定すれば良い。
【0097】
次に、図16を参照して光アイソレータ15の光学的な動作について説明する。光アイソレータ15に矢印I方向に沿って1030nm以上1090nm以下の任意の波長の光が入射されると、まず偏光子4に光が入射されて直線偏光に変換され、次にファラデー回転子14の2個のガーネット単結晶2a、2bに入射されて、その偏光面が合計で45度回転される。その際、ガーネット単結晶2a、2bの光透過部分で光吸収が発生し、入射光の一部が吸収される。ガーネット単結晶2a、2bの厚みt3、t4は非常に薄型に形成されるため、この薄さと熱伝導率の悪さから、ガーネット単結晶2a、2b単体では十分に熱を拡散・放熱することは出来ない。
【0098】
しかしながら、前記のようにガーネット単結晶2a、2bの格子定数は、12.56Å以上且つ12.58Å以下の範囲に設定されている。従って図6に示すように、光吸収に伴う光の透過損失がピークとなる波長帯域が、従来の約12.50Å近辺の格子定数を有するガーネット単結晶のピーク波長帯域に比べて、より短波長帯域へとシフトされる。約12.50Å近辺の格子定数を有する従来のガーネット単結晶の光吸収ピーク波長が、900nm付近であったのに対し、本実施形態のガーネット単結晶2a、2bの光吸収ピーク波長は、格子定数の増大に伴い約890nm付近へとシフトする。
【0099】
このシフトに伴い、波長1030nm以上かつ1090nm以下の帯域でのガーネット単結晶2a、2bの光透過損失は、波長1064nmの光が45度回転する厚み(t3+t4):120μmの場合で1.0dBから0.7dBへと低減される。光透過損失が減少することにより、ガーネット単結晶2a、2bでの光吸収量も低減され、吸収光から変換される熱量が減少するため、ガーネット単結晶2a、2bの温度上昇が抑制される。
【0100】
又、ガーネット単結晶2a、2bで吸収された光は、ガーネット単結晶2a、2b内部で熱に変換される。しかしながらガーネット単結晶2a、2bは、その光学面がガーネット基板3と接しているので、光学面から熱がガーネット基板3へと、立体的に且つ放射状に拡散する。ガーネット基板3へと伝導された熱は、冷却素子9へと伝えられて放熱される。このようにガーネット単結晶2a、2bにガーネット基板3を設けることにより、ガーネット単結晶2a、2b内部で光吸収により発生した熱が効率良く速やかにガーネット単結晶2a、2b外部へと放熱される。よって、ガーネット単結晶2a、2bの温度上昇が抑えられ、光アイソレータ15の光学特性の劣化防止や信頼性を確保することが可能となる。更に、短波長帯域の光源を使用する光学デバイスや装置に適用可能な光アイソレータ15が実現化される。
【0101】
更に、本来45度のファラデー回転角が生じる厚みを、2個のガーネット単結晶2a、2bに分割することにより、光吸収によって発生する熱量を分散させることが可能となる。更に、1個当たりの厚さを薄くできるので、1個当たりのガーネット単結晶2a又は2bでの光吸収量が減少されて、それぞれのガーネット単結晶2a、2bの温度上昇を抑えることも可能となる。
【0102】
2個のガーネット単結晶2a、2bのうち、光が最初に透過する入射側のガーネット単結晶2aでの発熱量は、出射側のガーネット単結晶2bの発熱量よりも大きくなる。しかし、入射側のガーネット単結晶2aを、出射側のガーネット単結晶2bより薄くして、両方のガーネット単結晶2a、2bで発生する熱量を等しくすることで、入射側のガーネット単結晶2aでの発熱量が低減される。これにより2個のガーネット単結晶2a、2bの温度上昇値をほぼ等しくして、最適な熱分散を行うことが可能となるため、ガーネット単結晶全体としての温度上昇を最少とすることができる。
【0103】
ガーネット単結晶を複数設ける場合、その個数は2個が最適である。その理由は、組み立て易さとコストを抑えるためであり、3個以上に設定すると光学素子数が過度に増加することにより、光学素子間の組み立てが困難になると共に、製造コストも上昇するためである。
【0104】
最後に、光は偏光子5を通過していく。又、戻り光があった場合、前述の光アイソレー
タ8の動作により、戻り光は偏光子4を通過しない。
【0105】
なお、以上で説明したファラデー回転子14及び光アイソレータ15では、ガーネット基
板3に換えて光透過板11を使用することで、平板状の光透過板11の両面に、ガーネット単結晶2a、2bの光学面が接する様に設けて別形態のファラデー回転子を構成しても良い。
【0106】
このようなファラデー回転子は、ガーネット基板3上にガーネット単結晶2a、2bを育成した後、ガーネット基板3を研磨により除去し、光透過板11の両面にそれぞれのガーネット単結晶2a、2bの光学面2os1、2os2を面接触させ、光学面2os1、2os2と光透過板11とを接合固定することによって製作する。
【0107】
又、2個のガーネット単結晶の設置は図17及び図18に示すように、図1のファラデー回転子1を2個、光の伝搬方向(矢印P方向)に配列して新たにファラデー回転子17を構成することで実現しても良い。2個のガーネット単結晶2、2のそれぞれのファラデー回転方向は、光の伝搬方向から見たときに同一方向となるように設定する。
【0108】
2個のガーネット単結晶2、2の合計の厚み(t3+t4)は、2個合わせて45度のファラデー回転角を有する厚みに設定する(図17参照)。それぞれのファラデー回転角を22.5度に正確に分けることが困難な場合、若干ファラデー回転角に偏りが生じても構わない。従って2個のガーネット単結晶2、2の厚みt3とt4は必ずしも等厚である必要は無い。2個のガーネット単結晶2、2が非等厚なファラデー回転子を備えた光アイソレータを光学デバイスに搭載する際は、前述のように光源からの光の入射側に配列されるガーネット単結晶は薄く、出射側のガーネット単結晶はそれよりも厚くなるように配置することが望ましい。
【0109】
更に、光アイソレータを構成するときは、光源側にガーネット単結晶2、2を配置することが、前述の通り光アイソレータのアイソレーションの低下が防止されるという点で望ましい。
【0110】
このようなファラデー回転子の構成とすることにより、ガーネット基板3の両面にガーネット単結晶2a、2bを育成する必要が解消されるため製造工程が短縮される。又、ガーネット基板3、3を2個設けることにより、ガーネット単結晶2、2で発生した熱の伝導経路を図12のファラデー回転子に比べて2倍確保することができるため、放熱効率がより向上する。
【0111】
なお、図17及び図18で説明したファラデー回転子17及び光アイソレータでは、ガー
ネット基板3、3に換えて光透過板11、11を使用することで、光透過板11、11の片面にガーネット単結晶2、2の光学面2osが接する様に設けて、更に別形態のファラデー回転子を構成しても良い。
【0112】
なお、本発明の光アイソレータは一例として、図19に示すようにファラデー回転子1及びホルダー7cと接触するように、光アイソレータ用光学素子(偏光子4、5及びファラデー回転子1)と永久磁石6との間に形成される空隙部に充填材18を充填するように変更しても良い。
【0113】
充填材18は熱伝導性を有する材料で構成し、熱伝導樹脂、熱伝導接着剤・低融点合金など固化する充填材や、放熱用シリコーンペーストのように固化しない充填材など、良好な熱伝導性を有する材料が好適である。
【0114】
このような光アイソレータ19に矢印I方向に沿って1030nm以上1090nm以下の任意の波長の光が入射されると、前述のようにガーネット単結晶2の光透過部分で光吸収による熱が発生し、その熱はガーネット基板3からホルダー7cを経て、図示しない冷却素子9へと伝えられて放熱される。光アイソレータ19ではこの放熱経路に加えて、ファラデー回転子1及びホルダー7cと接触する充填材18が熱を伝導するため、ガーネット単結晶2の熱は充填材18からも伝導されて冷却素子9から放熱される。
【0115】
従って、ガーネット単結晶2で発生した熱が、ガーネット基板3だけでなく充填材18からも冷却素子9へと伝導されるので、前記各実施の形態の光アイソレータに比べて、ガーネット単結晶2の放熱効率を向上させることが可能となる。
【0116】
又、ガーネット単結晶2、2a、2bは自己保磁型ガーネット単結晶に変更しても良い。このようなガーネット単結晶でファラデー回転子を構成すれば永久磁石が不要になり、ファラデー回転子や光アイソレータの小型化が図れる。
【0117】
<実施例>
白金坩堝内で加熱溶融した融剤を加熱溶融して十分に撹拌し、均一に混合した溶融液を作製する。この溶融液の液面に、直径2〜3インチ、厚みt2が1mmに設定された面方位{111}のガーネット基板を浸し、基板を回転させながらLPE法によって前記{111}面上に、ガーネット単結晶を大気雰囲気中でエピタキシャル成長させる。
【0118】
育成したガーネット単結晶の厚みは100μmであった。又、育成されたガーネット単結晶の結晶格子定数は、ガーネット基板の格子定数と溶融液の組成に依存し、12.57Åであった。
【0119】
次に、ガーネット基板のもう一方の面を溶融液の液面に浸して、同様に100μmの厚みまでガーネット単結晶をLPE法で育成させた。そのガーネット単結晶の格子定数も12.57Åであった。本実施例のガーネット単結晶の組成はGdBi2Fe5O12である。
【0120】
この格子定数を有するガーネット単結晶を、これを夫々約60μmまで研削、研磨して、ガーネット結晶の飽和磁界300(Oe)を厚み方向に沿ってかけた時に、板厚方向を透過する波長1064nmの直線偏光が2個のガーネット単結晶を透過したときに45度回転するように形成した。
【0121】
更に、ガーネット単結晶の表面に波長1064nmに対するARコートを蒸着した。
【0122】
次に、ガーネット単結晶を育成したガーネット基板を、等mm角に切断し、ガーネット単結晶とガーネット基板から構成される1mm角のファラデー回転子を得た。
【0123】
このファラデー回転子を2個の偏光子と共に、熱硬化性樹脂の接着剤で、冷却能力10Wのペルチェ素子(冷却面8×5mm)に接着して、連続入力20Wで波長1064nmのYAGレーザ光を入射させ、光透過損失を測定した。
【0124】
その結果、ガーネット単結晶の光吸収ピーク波長は890nmになり、光透過損失は0.7dBでアイソレーションは30dB以上であった。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明のファラデー回転子及び光アイソレータを、光センサ等のパッシブ光学デバイス
に利用することにより、反射による光源への戻り光を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るファラデー回転子の斜視図。
【図2】図1のファラデー回転子を冷却素子上に載置した状態を示す斜視図。
【図3】(a) 角形ホルダー内に図1のファラデー回転子及び偏光子を搭載する組み立て斜視図。(b) 凹形ホルダー内に図1のファラデー回転子及び偏光子を搭載する組み立て斜視図。(c) 平板形ホルダー内に図1のファラデー回転子及び偏光子を搭載する組み立て斜視図。(d) 冷却素子上に図1のファラデー回転子及び偏光子を載置する組み立て斜視図。
【図4】(a) 図3(a)の光アイソレータ用光学素子に永久磁石を搭載する組み立て斜視図。(b) 図3(b)の光アイソレータ用光学素子に永久磁石を搭載する組み立て斜視図。(c) 図3(c)の光アイソレータ用光学素子に永久磁石を搭載する組み立て斜視図。(d) 図3(d)の光アイソレータ用光学素子に永久磁石を搭載する組み立て斜視図。
【図5】(a) 図4(a)の光アイソレータを冷却素子上に載置した状態を示す斜視図。(b) 図4(b)の光アイソレータを冷却素子上に載置した状態を示す斜視図。(c) 図4(c)の光アイソレータを冷却素子上に載置した状態を示す斜視図。(d) 図4(d)の光アイソレータを冷却素子上に載置した状態を示す斜視図。
【図6】ガーネット単結晶の格子定数別ごとの、波長−光透過損失グラフ。
【図7】(a) 第1の実施形態の別形態であるファラデー回転子の組み立て斜視図。(b) 同図(a)の組み立てが完了したファラデー回転子を示す斜視図。
【図8】図7(b)のファラデー回転子を冷却素子上に載置した状態を示す斜視図。
【図9】(a) 角形ホルダー内に図7(b)のファラデー回転子及び偏光子を搭載する組み立て斜視図。(b) 凹形ホルダー内に図7(b)のファラデー回転子及び偏光子を搭載する組み立て斜視図。(c) 平板形ホルダー内に図7(b)のファラデー回転子及び偏光子を搭載する組み立て斜視図。(d) 冷却素子上に図7(b)のファラデー回転子及び偏光子を載置する組み立て斜視図。
【図10】(a) 図9(a)の光アイソレータ用光学素子に永久磁石を搭載する組み立て斜視図。(b) 図9(b)の光アイソレータ用光学素子に永久磁石を搭載する組み立て斜視図。(c) 図9(c)の光アイソレータ用光学素子に永久磁石を搭載する組み立て斜視図。(d) 図9(d)の光アイソレータ用光学素子に永久磁石を搭載する組み立て斜視図。
【図11】(a) 図10(a)の光アイソレータを冷却素子上に載置した状態を示す斜視図。(b) 図10(b)の光アイソレータを冷却素子上に載置した状態を示す斜視図。(c) 図10(c)の光アイソレータを冷却素子上に載置した状態を示す斜視図。(d) 図10(d)の光アイソレータを冷却素子上に載置した状態を示す斜視図。
【図12】本発明の第2の実施形態に係るファラデー回転子の斜視図。
【図13】図12のファラデー回転子を冷却素子上に載置した状態を示す斜視図。
【図14】(a) 角形ホルダー内に図12のファラデー回転子及び偏光子を搭載する組み立て斜視図。(b) 凹形ホルダー内に図12のファラデー回転子及び偏光子を搭載する組み立て斜視図。(c) 平板形ホルダー内に図12のファラデー回転子及び偏光子を搭載する組み立て斜視図。(d) 冷却素子上に図12のファラデー回転子及び偏光子を載置する組み立て斜視図。
【図15】(a) 図14(a)の光アイソレータ用光学素子に永久磁石を搭載する組み立て斜視図。(b) 図14(b)の光アイソレータ用光学素子に永久磁石を搭載する組み立て斜視図。(c) 図14(c)の光アイソレータ用光学素子に永久磁石を搭載する組み立て斜視図。(d) 図14(d)の光アイソレータ用光学素子に永久磁石を搭載する組み立て斜視図。
【図16】(a) 図15(a)の光アイソレータを冷却素子上に載置した状態を示す斜視図。(b) 図15(b)の光アイソレータを冷却素子上に載置した状態を示す斜視図。(c) 図15(c)の光アイソレータを冷却素子上に載置した状態を示す斜視図。(d) 図15(d)の光アイソレータを冷却素子上に載置した状態を示す斜視図。
【図17】第2の実施形態の別形態であるファラデー回転子の斜視図。
【図18】(a) 角形ホルダー内に図17のファラデー回転子及び偏光子を搭載する組み立て斜視図。(b) 凹形ホルダー内に図17のファラデー回転子及び偏光子を搭載する組み立て斜視図。(c) 平板形ホルダー内に図17のファラデー回転子及び偏光子を搭載する組み立て斜視図。(d) 冷却素子上に図17のファラデー回転子及び偏光子を載置する組み立て斜視図。
【図19】本発明の別形態の光アイソレータを示す斜視図。
【図20】従来の光アイソレータの構成を示す模式図。
【符号の説明】
【0127】
1、12、14、17 ファラデー回転子
2、2a、2b ガーネット単結晶
3 ガーネット基板
4、5 偏光子
6 永久磁石
7a、7b、7c ホルダー
8、13、15、19 光アイソレータ
9 ペルチェ素子又はヒートシンク
10、16 光アイソレータ用光学素子
11 光透過板
18 充填材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
短波長光用ファラデー回転子は、
ガーネット基板とビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶を含み、
前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶は光を入射して、前記光の偏光面を回転させると共に、格子定数が12.56Å以上かつ12.58Å以下に設定され、
前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶に入射される前記光の波長をλ(nm)とした時に、前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶の使用環境は、λ=1030nm以上かつ1090nm以下の波長条件に設定され、
前記ガーネット基板の少なくとも片面に、前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶が設けられることを特徴とする短波長光用ファラデー回転子。
【請求項2】
短波長光用ファラデー回転子は、
光透過板とビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶を含み、
前記光透過板は前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶の熱伝導率の4倍以上の熱伝導率を有する材料で形成され、
前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶は光を入射して、前記光の偏光面を回転させると共に、格子定数が12.56Å以上かつ12.58Å以下に設定され、
前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶に入射される前記光の波長をλ(nm)とした時に、前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶の使用環境は、λ=1030nm以上かつ1090nm以下の波長条件に設定され、
前記光透過板の少なくとも片面に、前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶が設けられることを特徴とする短波長光用ファラデー回転子。
【請求項3】
前記光透過板が単結晶から成り、その単結晶の光学的等方軸が前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶の光学面に対して垂直となるように、前記光透過板が前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶の少なくとも片面に設けられていることを特徴とする請求項2記載の短波長光用ファラデー回転子。
【請求項4】
前記ガーネット基板の厚みが1mm以上に設定されることを特徴とする請求項1に記載の短波長光用ファラデー回転子。
【請求項5】
2個の前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶が前記ガーネット基板の両面に設けられると共に、
2個の前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶のそれぞれのファラデー回転方向は前記光の伝搬方向から見たときに同一方向に設定され、
更に、2個の前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶のファラデー回転角の合計が45度であることを特徴とする請求項1又は4に記載の短波長光用ファラデー回転子。
【請求項6】
2個の前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶が前記光透過板の両面に設けられると共に、
2個の前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶のそれぞれのファラデー回転方向は前記光の伝搬方向から見たときに同一方向に設定され、
更に、2個の前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶のファラデー回転角の合計が45度であることを特徴とする請求項2又は3に記載の短波長光用ファラデー回転子。
【請求項7】
前記ガーネット基板の片面に、前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶が設けられ
て構成される前記短波長光用ファラデー回転子を2個、前記光の伝搬方向に配列し、
2個の前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶のそれぞれのファラデー回転方向が前記光の伝搬方向から見たときに同一方向に設定され、
更に、2個の前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶のファラデー回転角の合計が45度であることを特徴とする請求項1又は4に記載の短波長光用ファラデー回転子。
【請求項8】
前記光透過板の片面に、前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶が設けられて構成される前記短波長光用ファラデー回転子を2個、前記光の伝搬方向に配列し、
2個の前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶のそれぞれのファラデー回転方向が前記光の伝搬方向から見たときに同一方向に設定され、
更に、2個の前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶のファラデー回転角の合計が45度であることを特徴とする請求項2又は3に記載の短波長光用ファラデー回転子。
【請求項9】
前記光の入射側に配列される前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶が、もう一個の前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶よりも前記ファラデー回転角が小さく設定されることを特徴とする請求項5乃至8の何れかに記載の短波長光用ファラデー回転子。
【請求項10】
非光透過面である前記短波長光用ファラデー回転子の側面に熱硬化性樹脂を塗布し、ペルチェ素子又はヒートシンクに前記短波長光用ファラデー回転子が接着されることを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載の短波長光用ファラデー回転子。
【請求項11】
非光透過面である前記短波長光用ファラデー回転子の側面に金属層を成膜し、ペルチェ素子又はヒートシンクにハンダによって前記短波長光用ファラデー回転子が接合されることを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載の短波長光用ファラデー回転子。
【請求項12】
非光透過面である前記短波長光用ファラデー回転子の側面に金の膜を設け、前記金の膜を熱圧着することによりペルチェ素子又はヒートシンクに前記短波長光用ファラデー回転子が圧着されることを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載の短波長高パワー用ファラデー回転子。
【請求項13】
請求項1乃至9の何れかに記載の前記短波長光用ファラデー回転子の、前記光の入射側及び出射側に偏光子を配置してなる光アイソレータ。
【請求項14】
請求項10乃至12の何れかに記載の前記短波長光用ファラデー回転子の、前記光の入射側及び出射側に偏光子を配置してなる光アイソレータ。
【請求項15】
前記短波長光用ファラデー回転子及び前記偏光子の非光透過面である各側面が、熱伝導率15W/m・K以上の材料から形成されるホルダーによって保持されると共に、
前記ホルダーを介してペルチェ素子又はヒートシンクに前記ビスマス置換型希土類鉄ガーネットが接続されることを特徴とする請求項13に記載の光アイソレータ。
【請求項16】
非光透過面である前記短波長光用ファラデー回転子の側面に熱硬化性樹脂を塗布し、前記ホルダーに前記短波長光用ファラデー回転子が接着されることを特徴とする請求項15に記載の光アイソレータ。
【請求項17】
非光透過面である前記短波長光用ファラデー回転子の側面に金属層を成膜し、前記ホルダーにハンダによって前記短波長光用ファラデー回転子が接合されることを特徴とする請求項15に記載の光アイソレータ。
【請求項18】
非光透過面である前記短波長光用ファラデー回転子の側面に金の膜を設け、前記金の膜を熱圧着することにより前記ホルダーに前記短波長光用ファラデー回転子が圧着されることを特徴とする請求項15に記載の光アイソレータ。
【請求項19】
前記ホルダーに熱硬化性樹脂を塗布し、前記ペルチェ素子又はヒートシンクに前記ホルダーが接着されることを特徴とする請求項15乃至18の何れかに記載の光アイソレータ。
【請求項20】
前記ホルダーに金属層を成膜し、前記ペルチェ素子又はヒートシンクにハンダによって前記ホルダーが接合されることを特徴とする請求項15乃至18の何れかに記載の光アイソレータ。
【請求項21】
前記ホルダーに金の膜を設け、前記金の膜を熱圧着することにより前記ペルチェ素子又はヒートシンクに前記ホルダーが圧着されることを特徴とする請求項15乃至18の何れかに記載の光アイソレータ。
【請求項22】
前記光の伝搬方向に垂直な方向における前記ホルダーの断面形状が、角形、凹形、平板形の何れかであることを特徴とする請求項15乃至21の何れかに記載の光アイソレータ。
【請求項23】
熱伝導性を有する材料から構成される充填材を、前記短波長光用ファラデー回転子及び前記ホルダーと接触するように充填したことを特徴とする請求項15乃至22の何れかに記載の光アイソレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2008−134595(P2008−134595A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−179354(P2007−179354)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(000240477)並木精密宝石株式会社 (210)
【Fターム(参考)】