説明

短絡保護回路

【課題】リレー駆動出力回路に発生した短絡が解消した後、同回路を損傷させることなく速やかに出力動作状態に復帰させること。
【解決手段】ECU1は、入力されたリレー駆動信号Aに基づいてリレー2に駆動電流を出力するリレー駆動出力回路11と、該回路11の出力側で生じる短絡の有無を検知すると共に、当該短絡が発生した場合には前記リレー駆動出力回路11の出力動作を停止させる一方、短絡発生時より所定時間経過後からリレー駆動出力回路11に或る時間間隔で復帰信号を送信してその出力動作を復帰させる短絡検出回路12とを備えている。この時間間隔は、短絡が発生していた時間に対する、短絡が解消した時刻とリレー駆動出力回路11の出力動作が復帰した時刻の間の時間の時間比率が10%以下となるように、時間の経過に従い漸増されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された車載電子機器等に設けられたリレーに好適に適用される短絡保護回路に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載された車載電子機器に設けられ、入力された制御信号に基づいてリレー(負荷)に駆動電流を出力するリレー駆動出力回路において、その出力側で短絡が発生した場合、当該回路に過度の短絡電流が流れ、損傷することが考えられる。
【0003】
そこで、そのような短絡が発生した場合に、電源とリレー駆動出力回路の間に挿入した大電流ヒューズを溶断させたり、或いは、リレー駆動出力回路に流れる電流を監視し、該電流量を制限して同リレー駆動出力回路を短絡による損傷から保護する短絡保護回路が設けられている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
また、前記短絡保護回路としては、短絡が発生した場合にリレー駆動出力回路の出力動作を強制的に停止させ、リレー駆動出力回路に流れる短絡電流を阻止すると共に、短絡が発生した時より所定時間経過後からリレー駆動出力回路に所定の時間間隔で復帰信号を送信し、その出力動作を復帰させるものがある。
【0005】
このような短絡保護回路では、図7のタイミングチャートに示すように、予め設定した一定の時間間隔ΔTにて、短絡が発生した時より所定時間ΔTc3経過後からT1〜Tn(ΔT=Tk+1−Tk;kは自然数、1≦k≦n;nは自然数)のタイミングでそれぞれ送信される復帰信号Re1〜Ren(nは自然数)によってリレー駆動出力回路を出力動作状態に復帰させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−25150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、このような場合、復帰信号Re1〜Renの送信頻度(リレー駆動出力回路の復帰動作の頻度)が多くなりすぎると、該復帰信号Re1〜Renによってリレー駆動出力回路の動作が一時的に復帰している時には当該回路に過度の短絡電流が流れる。このため、この短絡電流による熱が時間の経過に従って蓄積し、同回路(トランジスタ等)を損傷させる虞がある。その一方で、そのような損傷を防止するため、復帰信号Re1〜Renの送信頻度を減らすと、リレー駆動出力回路において、前記短絡が継続している短絡状態からの復帰が遅れ、出力停止状態が長時間継続してしまう。
【0008】
図7においては、T1から2番目のT2のタイミングで復帰信号Re2がリレー駆動出力回路に送信された時刻(T2)にその出力動作が復帰しており、短絡状態の時間[min]に対する、短絡解消から出力復帰迄の所要時間[min]の時間比率が50%になっている。これでは、復帰信号Re1〜Renの送信頻度(送信回数)は2回と少なく、リレー駆動出力回路の損傷はないものの、前記時間比率は50%と長めであって、不満足な結果となっている。尚、本背景技術では、図7に示すように、リレー駆動出力回路に復帰信号が6回以上送信されることで、当該回路が短絡電流による熱の蓄積によって損傷することを想定している。
【0009】
また、車両のユーザ(運転者等)の手動操作によって、リレー駆動出力回路の損傷を防止しながら、短絡状態から短時間で出力動作状態に復帰させる方法も考えられるが、これではユーザの利便性が損なわれてしまう。
【0010】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、リレー駆動出力回路に発生した短絡が解消した後、同回路を損傷させることなく速やかに出力動作状態に復帰させることができる短絡保護回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、入力された制御信号に基づいて負荷に駆動電流を出力するリレー駆動出力回路と、該回路の出力側で生じる短絡の有無を検知すると共に、当該短絡が発生した場合には前記リレー駆動出力回路の出力動作を停止させる一方、前記短絡発生時より所定時間経過後から前記リレー駆動出力回路に或る時間間隔で復帰信号を送信してその出力動作を復帰させる短絡検出回路とを備えた短絡保護回路において、前記リレー駆動出力回路及び短絡検出回路からなる組を複数組備え、一の組の短絡検出回路からの復帰信号と、他の組の短絡検出回路からの復帰信号とが交互に対応するリレー駆動出力回路へ出力されていること、を要旨とする。
【0012】
同構成によれば、一の組の短絡検出回路からの復帰信号と、他の組の短絡検出回路からの復帰信号とが交互に対応するリレー駆動出力回路へ送信される。このため、単一のリレー駆動出力回路及び短絡検出回路の組のみを備えている場合と比較して、リレー駆動出力回路への復帰信号の送信頻度(負荷から観た復帰信号の送信頻度)が全体として増加するので、短絡状態が自然に解消した後、リレー駆動出力回路を出力停止状態から短時間で出力動作状態に復帰させることができると共に、各リレー駆動出力回路に送信される復帰信号の送信頻度(復帰動作の頻度)はその半分以下となるので、短絡電流によってリレー駆動出力回路に蓄積される熱量も抑えられ、同回路の損傷も効果的に防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の短絡保護回路によれば、リレー駆動出力回路に発生した短絡が解消した後、同回路を損傷させることなく速やかに出力動作状態に復帰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係るECU(短絡保護回路)及びリレーからなる電気的構成を示す回路図。
【図2】本発明の第1実施形態に係るECU及びリレーからなる電気的構成をさらに詳細に示す回路図。
【図3】本発明に係るECUの動作を示すフローチャート図。
【図4】本発明の第1実施形態に係るECUの特徴的動作を示すタイミングチャート図。
【図5】本発明の第2実施形態に係るECU及びリレーからなる電気的構成を示す回路図。
【図6】本発明の第2実施形態に係るECUの特徴的動作を示すタイミングチャート図。
【図7】従来例に係るECUの特徴的動作を示すタイミングチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。
[第1実施形態]
図1に示すように、本実施形態(参考例)において、短絡保護回路として機能するECU(コントローラ)1は、車両に搭載された車載電子機器に設けられ、入力された制御信号としてのリレー駆動信号Aに基づいてリレー2に駆動電流を出力するリレー駆動出力回路11と、該回路11の出力側で生じる短絡S(短絡電流I0)の有無を検出する短絡検出回路12と、前記リレー駆動出力回路11及び短絡検出回路12を制御すべく当該各回路11,12に接続された制御手段としてのCPU(マイクロコンピュータ)13とを備えている。
【0016】
詳しくは、図2に示すように、前記リレー駆動出力回路11は、直列配列された抵抗R1,R2を介してベース端子がCPU13に接続され、エミッタ端子が接地されたnpn形トランジスタTR1と、該トランジスタTR1のコレクタ端子に抵抗R3を介してベース端子が接続されると共にエミッタ端子が直流電源(+B)に接続され、且つ、コレクタ端子がリレー2に接続されると共に、抵抗R7及び抵抗R8を介して接地されたpnp形トランジスタTR2とを備えている。尚、前記リレー2は、トランジスタTR2のコレクタ端子に接続され、リレー駆動出力回路11から駆動電流が流れて励磁される負荷としてのリレーコイル3と、該リレーコイル3によって駆動され、車載電子機器(外部負荷)5と車載直流電源(+B)の間の接続をオン・オフするリレー接点4とから構成されている。
【0017】
前記短絡検出回路12は、直列の抵抗R4を介してベース端子がCPU13に接続され、エミッタ端子が接地されたnpn形トランジスタTR3と、該トランジスタTR3のコレクタ端子に抵抗R5を介してベース端子が接続されると共にエミッタ端子がCPU13及び前記抵抗R1,R2の間に接続され、且つ、コレクタ端子が抵抗R6を介して接地されたpnp形トランジスタTR4とを備えている。ここでトランジスタTR3のコレクタ端子は、抵抗R5を介してトランジスタTR4のベース端子に接続されている。
【0018】
また、前記短絡検出回路12は、さらに、一端が接地されると共に他端がトランジスタTR2のコレクタ端子とリレーコイル3の間に接続された前記抵抗R7,R8の間の電位と、基準電圧Vrefの電位とを比較し、その結果に応じ、高(VH)及び低(VL)の2種の電圧を出力するコンパレータCMP1を備えている。
【0019】
詳しくは、リレー駆動出力回路11の出力側、即ち、トランジスタTR2のコレクタ端子とリレーコイル3との接続箇所で短絡が発生し、前記抵抗R7,R8の間の電位(コンパレータCMP1の入力端子電圧Vi)が前記基準電圧Vref未満となった場合には、前記コンパレータCMP1は、出力端子電圧Voとして、トランジスタTR4と抵抗R6の間に低(VL)の電圧を出力する(Vo=VL)。一方、トランジスタTR2のコレクタ端子とリレーコイル3との接続箇所で短絡が解消し、前記抵抗R7,R8の間の電位(コンパレータCMP1の入力端子電圧Vi)が前記基準電圧Vref以上となった場合には、前記コンパレータCMP1は、出力端子電圧Voとして、高(VH)の電圧を出力する(Vo=VH)。
【0020】
本実施形態の短絡検出回路12は、前記トランジスタTR2のコレクタ端子とリレーコイル3との接続箇所での短絡の有無、即ち、リレー駆動出力回路11の出力側で生じる短絡の有無を前記コンパレータCMP1を用いて検出すると共に、該検出結果に基づいて、前記CPU13からリレー駆動出力回路11に送信される制御信号としてのリレー駆動信号Aの送信・停止を制御するように構成されている。ここで、リレー駆動信号Aは、トランジスタTR1,TR2によって増幅されて前記リレー2を駆動する駆動電流となる。
【0021】
詳しくは、コンパレータCMP1の出力端子電圧Voが低電圧VLである(Vo=VL)と、該低電圧VLは、所定の条件の下、前記短絡検出回路12によって短絡(短絡状態)が検出された場合にリレー駆動出力回路11の駆動電流の出力を強制的に停止されるための強制停止信号Dとして前記抵抗R1,R2の間(トランジスタTR1のベース端子)とCPU13とに送信される。
【0022】
この強制停止信号DがCPU13に送信されると、同CPU13において、前記リレー駆動信号Aの停止を許可するために短絡検出回路12(トランジスタTR3)に伝送される停止許可信号Cの送信が制御可能な状態となる。即ち、例えば、CPU13によって停止許可信号Cの送信が制御され、所定の時間間隔で送信・停止されるようになる。
【0023】
そして、前記CPU13から前記短絡検出回路12に前記したリレー駆動信号Aの停止許可信号C(以下、単に「停止許可信号C」という。)が送信されている場合では、コンパレータCMP1の出力端子電圧Vo(強制停止信号D)がトランジスタTR4を介してトランジスタTR1のベース端子に印加可能な状態となる。この場合、リレー駆動出力回路11において、前記短絡が発生し、同短絡が短絡検出回路12により検出される短絡状態では、Vo=VLとなるので、該低電圧VLが強制停止信号Dとして機能し、前記抵抗R1,R2の間が低電圧となり、リレー駆動信号Aが遮断(強制停止)される。他方、リレー駆動出力回路11において、前記短絡が自然に解消し、短絡検出回路12により短絡が検出されない正常状態では、Vo=VHとなるので、前記強制停止信号Dは消滅し、前記抵抗R1,R2の間は高電圧となり、リレー駆動信号AがCPU13から送信されることとなる。
【0024】
一方、前記CPU13から前記短絡検出回路12に停止許可信号Cの送信が停止されている場合(停止許可信号Cが送信されていない場合)では、コンパレータCMP1の出力端子電圧VoはトランジスタTR1のベース端子に印加されず、該出力端子電圧Voの高低によらず(強制停止信号Dの有無によらず)、リレー駆動信号AはCPU13からリレー駆動出力回路11に送信される。
【0025】
以下、図3のフローチャート及び図4のタイミングチャートを参照しつつ、本実施形態のECU1(短絡保護回路)の動作についてさらに具体的に説明する。
まず、図3を参照して、リレー駆動信号Aの送信が停止した状態(停止許可信号Cの送信も停止している。)において、車載電子機器5(図2参照)を作動させるべく、車両のユーザ(運転者等)のスイッチ操作が行われると、CPU13においてリレー駆動出力条件が成立する。
【0026】
すると、ステップS1において、CPU13からリレー駆動出力回路11にリレー駆動信号Aが送信され、該信号Aは、トランジスタTR1及びトランジスタTR2によって所定レベルに増幅されて駆動電流となり、リレー2(リレーコイル3)に出力される。
【0027】
次に、ステップS2において、CPU13から短絡検出回路12に停止許可信号Cが送信され、同短絡検出回路12がその作動を開始する。
続いて、ステップS3において、短絡検出回路12によって、前記短絡の有無が判断される。即ち、コンパレータCMP1ではその入力端子電圧Viと基準電圧Vref(例えば、Vref=3[V])の大小関係が継続して判断されている。そして、前記短絡状態が継続し、リレー駆動出力回路11が短絡状態である場合、前述したように、Vi<Vref(コンパレータCMP1の出力端子電圧Vo=VL)となるので、強制停止信号Dがリレー駆動出力回路11に送信され、前記抵抗R1,R2の間が低電圧となり、リレー駆動信号Aが遮断(強制停止)される。そしてこの場合(YESの場合)は、ステップS4に進む。他方、前記短絡が自然に解消してリレー駆動出力回路11が正常状態となった場合は、Vi≧Vref(コンパレータCMP1の出力端子電圧Vo=VH)となるので、前記強制停止信号Dは消滅し、リレー駆動信号AはCPU13からリレー駆動出力回路11に再び送信されるようになり、該回路11の出力動作が復帰する。そしてこの場合(Noの場合)は、ステップS5に進む。
【0028】
ステップS4では、前記低電圧VLが強制停止信号DとしてCPU13にも送信され、同強制停止信号Dの受信をトリガとしてCPU13によって停止許可信号Cの送信が制御される。そして、この停止許可信号Cの送信が一時的に停止されると、前述したように、コンパレータCMP1の出力端子電圧Voが前記抵抗R1,R2の間に印加されず、前記短絡状態が継続していても、リレー駆動信号AはCPU13からリレー駆動出力回路11に送信されるようになり、該回路11の動作が一時的に復帰される。
【0029】
即ち、該強制停止信号DがCPU13へ送信されると、それをトリガとして、前記短絡検出回路12への停止許可信号Cの送信が所定の時間間隔をおいて一時的(瞬時)に停止され、これによりリレー駆動出力回路11の動作が一時的に復帰されることで、同回路11の復帰動作が行われることになる。つまり、前記短絡検出回路12においては、CPU13からの停止許可信号Cの送信の一時的な停止により、CPU13からリレー駆動出力回路11にその動作を一時的に復帰させる復帰信号(後述する復帰信号Re1〜Ren)が送信され、さらに同回路12が当該復帰信号をリレー駆動出力回路11に送信することと同じことになる。また、この復帰信号がリレー駆動出力回路11に送信されることで、リレー駆動出力回路11に直流電源(+B)から電流が流れ込み(図2参照)、リレー駆動出力回路11の出力側で短絡が発生しているか否かの判断が行われることにもなる。
【0030】
したがって、リレー駆動出力回路11において、短絡状態が継続している場合に復帰動作が行われると、同回路11のトランジスタTR2には、短絡箇所に向けて直流電源(+B)から過度の短絡電流I0(図1参照)が流れて当該トランジスタTR2が発熱することになる。そして、この復帰動作が繰り返されることでトランジスタTR2に前記短絡電流I0による熱の蓄積が起こり、同回路11が損傷を受けることにつながる。尚、本実施形態では、図4に示すように、背景技術と同様、リレー駆動出力回路11に復帰信号が6回以上送信されることで、当該回路11が短絡電流I0による熱の蓄積によって損傷することを想定している。
【0031】
ここで、図4のタイミングチャートを参照して、本実施形態のECU1における特徴的な動作について詳細に説明する。
即ち、リレー駆動出力回路11が正常状態から短絡状態となると、前記強制停止信号DがコンパレータCMP1からトランジスタTR4を介して前記抵抗R1,R2の間(リレー駆動出力回路11)及びCPU13に送信される。
【0032】
すると、CPU13によって、リレー駆動信号Aが停止され、リレー2への駆動電流の出力が停止すると共に、停止許可信号Cの短絡検出回路12への送信がCPU13により制御され、前記短絡が発生した時刻T0(強制停止信号DがCPU13で受信された時刻)より所定時間経過ΔTc1後の時刻T1を起点として、該短絡検出回路12から或る時間間隔ΔTn(nは自然数)にて、T1〜Tnのタイミングでそれぞれ復帰信号Re1〜Ren(nは自然数)がリレー駆動出力回路11に送信されるようになる(CPU13により、停止許可信号Cの送信の一時的な停止がT1〜Tnのタイミングで行われるようになる)。ここでは、CPU13によって、前記短絡が発生していた時間(短絡状態の時間[min])に対する、前記短絡が解消した時刻と前記リレー駆動出力回路11の出力動作が復帰した時刻の間の時間(短絡解消から出力復帰迄の所要時間[min])の時間比率が10%(所定値)以下となるように、前記復帰信号Re1〜Renが送信される時間間隔ΔT1〜ΔTn(ΔTk=Tk+1−Tk、ΔTk+1−ΔTk>0;kは自然数、1≦k≦n)が時間の経過に従い漸増するべく設定されている。ここでは、前記時間比率が10%以下となるように、例えば、ΔTk+1=a・ΔTk(aは定数であって、a>1)と設定できる。尚、ΔTc1、ΔT1、及び定数a は、想定される短絡状態の時間に応じて適宜決定することができる。
【0033】
そして、図4に示すように、短絡が自然に解消し、リレー駆動出力回路11が短絡状態から正常状態に復帰した後、T1から4番目のT4のタイミングで復帰信号Re4が短絡検出回路12からリレー駆動出力回路11に送信され、その時刻(T4)で同回路11の出力動作が復帰している。ここで、リレー駆動出力回路11の復帰動作の頻度は4回と6回未満であって少なく、該回路11の損傷はなく、しかも、短絡状態の時間[min]に対する、短絡解消から出力復帰迄の所要時間[min]の時間比率が10%以下であって短く、満足な結果が得られている。
【0034】
図3に戻り、その後のステップS5においては、CPU13からリレー駆動信号A及び停止許可信号Cが送信され、リレー駆動出力回路11によってリレー2が駆動されている状態において、車載電子機器5(図2参照)の作動を停止させるべく、車両のユーザのスイッチ操作が行われると、CPU13においてリレー駆動停止条件が成立する。このステップS5において、リレー駆動停止条件が成立しない場合は、ステップS3に戻り、リレー駆動出力回路11によってリレー2が駆動されている状態のまま、短絡検出回路12によって前記短絡の有無の判断が継続される。他方、ステップS5において、リレー駆動停止条件が成立した場合は、ステップS6において、CPU13によってリレー駆動信号Aの送信が停止され、さらに、ステップS7において、リレー駆動信号Aの停止許可信号Cの送信が停止され、ECU1の一連の動作が終了する。
【0035】
本実施形態のECU1(短絡保護回路)によれば、以下のような作用・効果を得ることができる。
(1)短絡発生時より所定時間ΔTc1経過後からリレー駆動出力回路11に或る時間間隔で送信される復帰信号Re1〜Ren(nは自然数)の当該時間間隔ΔT1〜ΔTn(nは自然数)が、短絡状態の時間[min]に対する、短絡解消から出力復帰迄の所要時間[min]の時間比率が10%以下となるように、時間の経過に従い漸増されている。これにより、短絡の発生当初は復帰信号Re1〜Renの送信頻度が多くなり、リレー駆動出力回路11を出力停止状態から短時間で出力動作状態に復帰させることができると共に、時間の経過に従って復帰信号Re1〜Renの送信頻度が次第に少なくなる。このため、短絡電流I0によってリレー駆動出力回路11に蓄積される熱量も抑えられ、同回路11の損傷も効果的に防止することができる。
【0036】
(2)リレー駆動出力回路11及び短絡検出回路12からなるシンプルなハードウェア構成により、CPU13のメモリ等に格納されたソフトウェアに拠らずにリレー駆動出力回路11の短絡の検出及び該短絡状態からの出力動作状態への復帰が迅速、確実、且つ自動的に行われる。これにより、車両のユーザ(運転者等)の利便性が高められる。
【0037】
[第2実施形態]
図5に示すように、本実施形態において、短絡保護回路として機能するECU(コントローラ)1aは、車両に搭載された車載電子機器に設けられ、入力された制御信号に基づいてリレー2に駆動電流を出力する一対のリレー駆動出力回路11a及びリレー駆動出力回路11bと、該各回路11a,11bの出力側で生じる短絡S(短絡電流I0)の有無を検出する一対の短絡検出回路12a及び短絡検出回路12bと、前記リレー駆動出力回路11a,11b及び短絡検出回路12a,12bを制御すべく当該各回路11a,12a,11b,12bに接続された制御手段としてのCPU(マイクロコンピュータ)113とを備えている。つまり、本実施形態のECU1aでは、リレー駆動出力回路11a,11b及び短絡検出回路12b,12bからなる組を2組(複数組)備えていることになる。
【0038】
以下、本実施形態のECU1aにおいて、前記各回路11a,12a,11b,12bの構成及び基本的な動作については、第1実施形態のリレー駆動出力回路11及び短絡検出回路12のそれと同様であるので、トランジスタや抵抗等、対応する電気素子には同一又は対応する符号が付されたものとし、説明を省略する。
【0039】
図6のタイミングチャートを参照して、本実施形態のECU1aにおける特徴的な動作について詳細に説明する。
即ち、リレー駆動出力回路11a,11bが正常状態から短絡状態となると、前記強制停止信号Dが、各短絡検出回路12a,12bにそれぞれ設けられたコンパレータCMP1a,CMP1bからトランジスタTR4a,TR4bを介して前記抵抗R1,R2の間(リレー駆動出力回路11a,11b)及びCPU113に送信される。
【0040】
すると、CPU113によって、各リレー駆動信号Aが停止され、リレー2への駆動電流の出力が停止すると共に、停止許可信号Cの短絡検出回路12a,12bへの送信がCPU113により制御され、前記短絡が発生した時刻T0(強制停止信号DがCPU113で受信された時刻)より所定時間経過ΔTc2後の時刻Ta1を起点として、各短絡検出回路12a,12bから一定の時間間隔ΔTabにて、Ta1〜Tan,Tb1〜Tbnのタイミングでそれぞれ復帰信号Ra1〜Ran,Rb1〜Rbn(nは自然数)が交互に各リレー駆動出力回路11a,11bに送信されるようになる(CPU113により、停止許可信号Cの送信の一時的な停止がTa1〜Tan,Tb1〜Tbnのタイミングで行われるようになる)。ここでは、CPU113によって、前記復帰信号Ra1〜Ran,Rb1〜Rbnが交互に送信される時間間隔ΔTabが時間の経過によらず一定になるように制御されている。つまり、前記復帰信号Ra1〜Ran,Rb1〜Rbnがそれぞれ単独でCPU113から送信される場合の時間間隔ΔTa,ΔTbと比較すれば、ΔTab=ΔTa/2=ΔTb/2となるように設定されている。
【0041】
そして、図6に示すように、短絡が自然に解消し、リレー駆動出力回路11a,11bが短絡状態から正常状態に復帰した後、Ta1から2番目のTa2のタイミングで復帰信号Ra2が短絡検出回路12aからリレー駆動出力回路11aに送信され、その時刻(Ta2)で同回路11aの出力動作が復帰している。ここで、リレー駆動出力回路11aの復帰動作の頻度は2回と6回未満であって少なく、該回路11aの損傷はなく、しかも、短絡状態の時間[min]に対する、短絡解消から出力復帰迄の所要時間[min]の時間比率が10%以下であって短く、満足な結果が得られている。
【0042】
また、リレー駆動出力回路11bについても、Tb1から2番目のTb2のタイミングで復帰信号Rb2が該回路11bに送信された時刻(Tb2)にその出力動作が復帰しており、同回路11bの復帰動作の頻度は2回と6回未満であって少なく、該回路11bの損傷はなく、前述したように短絡状態は既に復帰されていることから、満足な結果となっている。尚、本実施形態では、図6に示すように、第1実施形態と同様、リレー駆動出力回路11a又は11bにそれぞれ復帰信号が6回以上送信されることで、当該各回路11a,11bが短絡電流I0による熱の蓄積によって損傷することを想定している。
【0043】
本実施形態のECU1a(短絡保護回路)によれば、以下のような作用・効果を得ることができる。
(1)一の組の短絡検出回路12aからの復帰信号Ra1〜Ranと、他の組の短絡検出回路12bからの復帰信号Rb1〜Rbn(nは自然数)とが交互に対応するリレー駆動出力回路へ送信される。これにより、第1実施形態のように、単一のリレー駆動出力回路11及び短絡検出回路12の組のみを備えている場合と比較して、リレー駆動出力回路11a,11bへの復帰信号Ra1〜Ran,Rb1〜Rbn(nは自然数)の送信頻度、換言すれば、リレーコイル3から観た復帰信号Ra1〜Ran,Rb1〜Rbnの送信頻度、が全体として増加する。このため、短絡状態が自然に解消した後、リレー駆動出力回路11a(又は11b)を出力停止状態から短時間で出力動作状態に復帰させることができると共に、各リレー駆動出力回路11a,11bに送信される復帰信号Ra1〜Ran,Rb1〜Rbnの送信頻度(復帰動作の頻度)はその半分以下となるので、短絡電流I0によってリレー駆動出力回路11a,11bに蓄積される熱量も抑えられ、各リレー駆動出力回路11a,11bの損傷も効果的に防止することができる。
【0044】
(2)2組のリレー駆動出力回路11a及び短絡検出回路12a,並びに、リレー駆動出力回路11b及び短絡検出回路12bからなるシンプルなハードウェア構成により、CPU113のメモリ等に格納されたソフトウェアに拠らずにリレー駆動出力回路11a,11bの短絡の検出及び該短絡状態から出力動作状態への復帰が迅速、確実、且つ自動的に行われる。これにより、車両のユーザ(運転者等)の利便性が高められる。
【0045】
尚、上記実施形態は以下のように変形してもよい。
・上記第2実施形態では、復帰信号Ra1〜Ran,Rb1〜Rbnが交互に送信される時間間隔ΔTabが時間の経過によらず一定になるように設定した。しかし、本発明の技術的思想はこれに限られず、例えば、第1実施形態のように、前記時間間隔ΔTabは、短絡が発生していた時間に対する、短絡が解消した時刻[min]とリレー駆動出力回路11a(又は11b)の出力動作が復帰した時刻[min]の間の時間の時間比率が所定値以下(例えば、10%以下)となるように、時間の経過に従い漸増されていてもよい。
【0046】
これによれば、一の組の短絡検出回路12aからの復帰信号Ra1〜Ranと、他の組の短絡検出回路12bからの復帰信号Rb1〜Rbn(nは自然数)とが交互に対応するリレー駆動出力回路へ送信される。これにより、第1実施形態のように、単一のリレー駆動出力回路11及び短絡検出回路12の組のみを備えている場合と比較して、リレー駆動出力回路11a,11bへの復帰信号Ra1〜Ran,Rb1〜Rbn(nは自然数)の送信頻度、換言すれば、リレーコイル3から観た復帰信号Ra1〜Ran,Rb1〜Rbnの送信頻度、が全体として増加する。このため、短絡状態が自然に解消した後、リレー駆動出力回路11a(又は11b)を出力停止状態から短時間で出力動作状態に復帰させることができると共に、各リレー駆動出力回路11a,11bに送信される復帰信号Ra1〜Ran,Rb1〜Rbnの送信頻度(復帰動作の頻度)はその半分以下となるので、短絡電流I0によってリレー駆動出力回路11a,11bに蓄積される熱量も抑えられ、各リレー駆動出力回路11a,11bの損傷も効果的に防止することができる。しかも、各組においては、短絡発生時より所定時間経過後からリレー駆動出力回路11a,11bに或る時間間隔で送信される復帰信号Ra1〜Ran,Rb1〜Rbnの当該時間間隔ΔTabが時間の経過に従い漸増されている。このため、短絡の発生当初は復帰信号Ra1〜Ran,Rb1〜Rbnの送信頻度が多くなるので、短絡状態が自然に解消した後、リレー駆動出力回路11a,11bを出力停止状態からさらに短時間で出力動作状態に復帰させることができると共に、時間の経過に従って復帰信号Ra1〜Ran,Rb1〜Rbnの送信頻度が次第に少なくなるので、短絡電流I0によってリレー駆動出力回路11a,11bに蓄積される熱量もより効果的に抑えられる。
【0047】
・上記第2実施形態では、復帰信号Ra1〜Ran,Rb1〜Rbnの送信タイミングを1:1としたが、これに限られず、同送信タイミングは、例えば、1:2や1:3、それ以外の比率としてもよい。
【0048】
・上記第2実施形態では、リレー駆動出力回路11a,11b及び短絡検出回路12a,12bからなる組を2組としたが、これに限られず、同組は3組以上としてもよい。
・上記第2実施形態では、一対の短絡検出回路12a,12bを用いたが、リレー駆動出力回路11a,11bに復帰信号Ra1〜Ran,Rb1〜Rbnを直接送信する回路部分(トランジスタTR3及びトランジスタTR4)を各々個別のもので構成する限り、短絡状態を直接検出する回路部分(コンパレータCMP1)については共用することも可能である。
【0049】
さらに、前記した実施形態および変形例より把握できる技術的思想について以下に記載する。
○短絡保護回路において、前記時間比率が10%以下に設定されていること。同構成によれば、短絡状態が自然に解消した後、リレー駆動出力回路を、短絡が発生していた時間に対する、短絡が解消した時刻とリレー駆動出力回路の出力動作が復帰した時刻の間の時間の時間比率が10%以下となる短時間で出力動作状態に復帰させることができる。
【0050】
○短絡保護回路において、前記リレー駆動出力回路及び短絡検出回路からなる組を2組備えること。同構成によれば、リレー駆動出力回路及び短絡検出回路からなる組を2組のみ備えるシンプルな構成によって、リレー駆動出力回路に発生した短絡が解消した後、同回路を損傷させることなく短時間で出力動作状態に復帰させることができる。
【符号の説明】
【0051】
1…ECU(短絡保護回路)、11…リレー駆動出力回路、12…短絡検出回路、13…CPU(マイクロコンピュータ)、2…リレー、3…リレーコイル、5…車載電子機器、CMP1…コンパレータ、Vref…基準電圧。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された制御信号に基づいて負荷に駆動電流を出力するリレー駆動出力回路と、該回路の出力側で生じる短絡の有無を検知すると共に、当該短絡が発生した場合には前記リレー駆動出力回路の出力動作を停止させる一方、前記短絡発生時より所定時間経過後から前記リレー駆動出力回路に或る時間間隔で復帰信号を送信してその出力動作を復帰させる短絡検出回路とを備えた短絡保護回路において、
前記リレー駆動出力回路及び短絡検出回路からなる組を複数組備え、
一の組の短絡検出回路からの復帰信号と、他の組の短絡検出回路からの復帰信号とが交互に対応するリレー駆動出力回路へ出力されていることを特徴とする短絡保護回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−34381(P2013−34381A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−245117(P2012−245117)
【出願日】平成24年11月7日(2012.11.7)
【分割の表示】特願2008−101630(P2008−101630)の分割
【原出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】