説明

短絡機構付き組合せ端子台

【課題】各端子台の点数や寸法が異なる場合でも、短絡器具を用いずに耐電圧試験を行うことが可能な短絡機構付き端子台を提供する。
【解決手段】絶縁板4aに取り付けられた、複数の端子台ねじ5を有する端子台導電板6と、それに接離可能な短絡機構可動片1をそれぞれ有する複数の端子台と、その両端に接地機構部14と復帰機構部15とを同軸上に配した組合せ端子台で構成される。接地機構部14は、絶縁板4b、4cを固定金具8で固定し、接地線3を短絡機構調整ねじ7により固定する。短絡機構調整ねじ7の短絡機構可動片操作部9は導体11の一端と接触し、導体11の他端は絶縁板4bの一部から隣接する短絡機構可動片1と略同軸上で接するように配される。復帰機構部15は、絶縁板4dとそれに固定され隣接する端子台の短絡機構可動片1に接触しそれと略同軸上に配された短絡機構復帰ばね10を有して構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短絡機構を有する組合せ端子台に関する。特に、各種配電盤・制御盤等で配線用電線の接続に使用し、耐電圧試験のために用いる短絡機構を有する組合せ端子台に関する。
【背景技術】
【0002】
変電所の配電盤に設けられ電気配線に使用される端子台の耐電圧試験に用いられる簡易な耐電圧試験用短絡板が特許文献1に開示されている。
【0003】
この発明は、概ね長尺長方形の短絡板本体と、その一側に断面半円弧状に構成した弾性係止部及び他側に断面半円弧状に構成した4個の弾性係止片と、一側の弾性係止部から斜め下向きに突出させた26片の弾性接触片と、試験電圧電源に接続するための二つの端子片であって、各々短絡板本体の両端に斜め上向きに突設した端子片とで構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−273189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この短絡板は、端子台の各接続端子間に殆どワンタッチでセットして、それらの間を短絡することができるという点で作業性に優れるものである。しかし、この短絡板を用いるには、短絡板を各端子台の大きさや端子台数に合わせて作成しなければならないという問題がある。
【0006】
例えば、電気回路Aは12点端子台、電気回路Bは20点端子台のように電気回路毎に端子台の点数が異なる場合には、それぞれのケースに合わせて耐電圧試験用短絡板を作成する必要がある。
【0007】
また、一般に、電気回路の通電電流が大きいほど大きな寸法の端子台を必要とするので、組合せ端子台を構成する個々の端子台の寸法が異なる場合もある。このため、個々の端子台の異なる寸法に応じて耐電圧試験用短絡板を作成する必要があるという問題がある。
【0008】
つまり、実際には、電気回路の用途により必要な端子台の数や寸法が異なるので、個別のケースに応じて耐電圧試験用短絡板を製作しなければならない。このため、個別に短絡板を注文する必要があるため、手間がかかりコストがかさむという問題があった。
【0009】
また、短絡板は管理が悪いと紛失するケースも多い。短絡板を耐電圧試験用に使用したい時に見つからず、仮配線用の電線や、針金等の導体を用いて一つ一つの端子台の短絡作業をするのに多大な手間を要する場合もある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、絶縁板と、前記絶縁板に取り付けられた端子台導電板と、前記導電板を通じて電気的に接続された複数の端子台ねじと、前記導電板と接離可能に移動する短絡機構可動片とで構成される短絡機構付き端子台と、前記短絡機構付き端子台を複数個同軸上に連結し、その両端に接地機構部と復帰機構部とを同軸上に配した組合せ端子台で構成される。前記接地機構部は、2つの絶縁板を固定金具で固定し、前記固定金具に接地線を短絡機構調整ねじにより固定する。前記短絡機構調整ねじは先端に短絡機構可動片操作部を有し、前記短絡機構可動片操作部は導体の一端と接触し、前記導体の他端は前記絶縁板の一部から貫通し隣接する短絡機構可動片と略同軸上で接するように配される。前記復帰機構部は、絶縁板と、前記絶縁板に固定され隣接する端子台の前記短絡機構可動片に接触し前記短絡機構可動片と略同軸上に配された復帰手段を有して構成される。前記一連の短絡機構可動片は、前記短絡機構調整ねじ又は前記復帰手段からの力により一体として軸方向に移動する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の短絡機構付き組合せ端子台によれば、短絡機構を端子台と一体構造にすることにより、短絡器具を紛失するおそれがなくなり作業効率が上がるという効果がある。また、端子台の点数や寸法が異なる組合せとなっても、短絡板を個別に注文する必要がなくなるため、作業を円滑に進めることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は本発明の組合せ端子台の短絡状態を示す断面図である。
【図2】図2は本発明の組合せ端子台の開放状態を示す断面図である。
【図3】図3は端子台単体の正面図である。
【図4】図4は端子台導電板6を示す詳細図である。
【図5】図5は端子台の短絡機構可動片1を示す詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る短絡機構付き組合せ端子台の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0014】
図3に示すように、本発明を構成する端子台単体は、配線を固定するための端子台ねじ5を2つ有する。この2つの端子台ねじ5は互いに端子台導電板6により電気的に接続されている。すなわち、各端子台の端子台導電板6と端子台ねじ5は導電性物質(主に金属)で構成される。
【0015】
端子台導電板6は、図4に示すように、その一端がかぎ型の形状をしたかぎ型部6aを有する。図3において、かぎ型部6aは、2つの端子台ねじ5の紙面後方で、かつ2つの端子台ねじ5のほぼ中央に位置する。
【0016】
かぎ型部6aの紙面手前には、短絡機構可動片1に設けられた短絡機構接点部2が位置する。図1に示すように、かぎ型部6aと短絡機構接点部2は、短絡時において、それぞれの先端が適度に接触して通電するように構成される。
【0017】
図1から図3に示すように、各端子台は、端子台固定板13上に、任意の端子台点数を組合せて固定される。この際、電気回路の用途に応じて異なる大きさの端子台を組合せることが可能である。図1に示すようにそれぞれの端子台は、絶縁材の仕切り板4aにより互いに絶縁される。
【0018】
図1に示すように、組合せ端子台の一端には接地機構部14が配され、他端には復帰機構部15が配される。
【0019】
図1に示すように接地機構部14は、仕切り板4b、と仕切り板4cを短絡機構調整ねじ固定金具8で固定して構成する。短絡機構調整ねじ固定金具8に接地線3を介して短絡機構調整ねじ7がねじ込み可能に保持され、短絡機構調整ねじ7の先端に短絡機構可動片操作部9が固定される。
【0020】
短絡機構可動片操作部9の先端は導体11と接触するように略円錐形状に構成される。導体11は、短絡機構可動片操作部9との接触面がテーパー状であって、短絡機構可動片操作部9の上下動に応じて軸方向に移動可能なように仕切り板4bに保持される。導体11はその右端が短絡機構可動片1の端部突起1aと接触し、導体11の水平方向の動きを一連の短絡機構可動片1に伝達するように構成する。
【0021】
一方、復帰機構部15は、仕切り板4d及び短絡機構復帰ばね10を有する。短絡機構復帰ばね10は、一連の短絡機構可動片1及び導体11とほぼ同軸上に配され、保持手段10aにより復帰機構部15内に保持される。なお、復帰ばねの代わりにゴム等の他の弾性体を適宜用いることができる。
【0022】
短絡機構調整ねじ固定金具8と端子台導電板6の間は仕切り板4bにより絶縁される。端子台導電板6と端子台ねじ5の間に、導線に圧着された圧着端子(不図示)を固定し、異なる配電盤や制御盤等とケーブル等を介して接続し電気回路を構成する。
【0023】
短絡機構可動片1は、各端子台の仕切り板4aの一部を貫通して隣接する端子台の短絡機構可動片1と接触するようにその両端を略直角に構成する(端部突起1a)。一連の隣接する短絡機構可動片1は、短絡機構可動片操作部9又は短絡機構復帰ばね10により、端子台の組合せ方向に押されることで軸方向に移動可能である。
【0024】
短絡機構可動片1は導電性物質(主に金属)で構成される。図5に示すように、短絡機構可動片1の中央付近を切曲げることで短絡機構接点部2を設ける。この短絡機構接点部2は弾性変形可能であることが望ましい。
【0025】
図1に示すように、短絡機構可動片1が紙面右向きに移動することにより、短絡機構接点部2が端子台導電板6のかぎ型部6aと接触し通電可能となる。また短絡機構可動片1の移動範囲を制限するためガイド12を設ける。
【0026】
ガイド12は図1及び図3に示すように、短絡機構可動片1を端部突起1aと短絡機構接点部2の間で軸方向に移動自在に保持する。これにより、短絡機構可動片1が軸方向に動く際に上方向にずれるのを抑制する。また、短絡機構可動片1の軸方向の可動範囲を制限することで、短絡機構接点部2がかぎ型部6aと接触した場合の変形を防ぐ。
【0027】
以下、本発明の動作について説明する。まず、本発明の端子台が図2に示す通常の状態から図1に示す短絡状態に至るまでの動作を説明する。
【0028】
短絡機構調整ねじ7をねじ込むことにより短絡機構可動片操作部9が紙面下方向に移動する。この下方向への移動が導体11の軸方向紙面右側への移動に変換される。この紙面右側への移動が隣接する短絡機構可動片1に伝わり、隣接して連なる短絡機構可動片1全体を紙面右側に移動させる。
【0029】
この短絡機構可動片1全体の変位により、図1に示すように短絡機構復帰ばね10が圧縮される。この状態において、短絡機構可動片1の短絡機構接点部2が端子台導電板6のかぎ型部6aに係止する。これにより、接地線3と圧着端子(不図示)とを結ぶ電気回路が形成されることで短絡状態となる。
【0030】
次に、本発明の端子台が図1に示す短絡状態から図2に示す通常の状態に至るまでの動作を説明する。この短絡解除に至る動作は、上記短絡状態に至るまでの動作と逆の動作となる。
【0031】
まず、短絡機構調整ねじ7を緩めることで短絡機構可動片操作部9を上方に移動させる。短絡機構可動片操作部9が上方に移動すると、短絡機構復帰ばね10の復帰ばね力により、隣接して連なる短絡機構可動片1及び導体11が軸方向紙面左側に移動する。
【0032】
こうすることで、短絡機構可動片1に設けられた短絡機構接点部2と端子台導電板6のかぎ型部6aの係止が外れる。これにより、接地線3と圧着端子(不図示)とを結ぶ電気回路が開放され、短絡状態が解除される。
【0033】
以上より、本実施例の短絡機構付き組合せ端子台によれば、短絡機構を端子台と一体構造にすることで、短絡器具を紛失するおそれがなくなり作業効率が上がる。また、端子台の点数や寸法が異なる組合せとなっても、短絡板を個別に注文する必要がなくなるため、作業を円滑に進めることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 短絡機構可動片
1a 端部突起
2 短絡機構接点部
3 接地線
4a〜4d 仕切り板
5 端子台ねじ
6 端子台導電板
6a かぎ型部
7 短絡機構調整ねじ
8 短絡機構調整ねじ固定金具
9 短絡機構可動片操作部
10 短絡機構復帰ばね
11 導体
12 ガイド
13 端子台固定板
14 接地機構部
15 復帰機構部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁板と、
前記絶縁板に取り付けられた端子台導電板と、
前記導電板を通じて電気的に接続された複数の端子台ねじと、
前記導電板と接離可能に移動する短絡機構可動片とで構成される短絡機構付き端子台と、
前記短絡機構付き端子台を複数個同軸上に連結し、その両端に接地機構部と復帰機構部とを同軸上に配した組合せ端子台において、
前記接地機構部は、2つの絶縁板を固定金具で固定し、前記固定金具に接地線を短絡機構調整ねじにより固定し、前記短絡機構調整ねじは先端に短絡機構可動片操作部を有し、前記短絡機構可動片操作部は導体の一端と接触し、前記導体の他端は前記絶縁板の一部から貫通し隣接する短絡機構可動片と略同軸上で接するように配され、
前記復帰機構部は、絶縁板と、前記絶縁板に固定され隣接する端子台の前記短絡機構可動片に接触し前記短絡機構可動片と略同軸上に配された復帰手段を有し、
前記一連の短絡機構可動片は、前記短絡機構調整ねじ又は前記復帰手段からの力により一体として軸方向に移動することを特徴とする組合せ端子台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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