石こう系土質安定処理材及び土質安定処理土の製造方法
【課題】土質安定処理土の透水性を低下させて再泥化を防止することができる石こう系土質安定処理材、及び透水性を低下させ再泥化を防止した土質安定処理土を製造することができる土質安定処理土の製造方法を提供する。
【解決手段】石こう系土質安定処理材は、主成分が半水石こうで構成される硬化材と、粉体状の乾燥粘土とを含有するようにした。また、土質安定処理土の製造方法は、主成分が半水石こうで構成される硬化材と粉体状の乾燥粘土とを含有する石こう系土質安定処理材と、水とを、被処理土に混合して製造するようにした。
【効果】上記石こう系土質安定処理材を用いて、或いは、上記土質安定処理土の製造方法を用いて製造した土質安定処理土について、その透水性を低下させて再泥化を防止することができる。
【解決手段】石こう系土質安定処理材は、主成分が半水石こうで構成される硬化材と、粉体状の乾燥粘土とを含有するようにした。また、土質安定処理土の製造方法は、主成分が半水石こうで構成される硬化材と粉体状の乾燥粘土とを含有する石こう系土質安定処理材と、水とを、被処理土に混合して製造するようにした。
【効果】上記石こう系土質安定処理材を用いて、或いは、上記土質安定処理土の製造方法を用いて製造した土質安定処理土について、その透水性を低下させて再泥化を防止することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築構造物とその周辺地盤との間の空間や地下空洞等への埋め戻し、又は裏込め等に用いる土の、土質を安定させるために用いる石こう系土質安定処理材、及び土質を安定させて製造するようにする土質安定処理土の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来においては、土質安定処理に用いる硬化材には、主としてセメントや石灰といった水硬性の硬化材が用いられていた。このような硬化材を用いて製造した土質安定処理土は、強アルカリ性を示すようになると共に、硬化材に六価クロムなどの有害物質が微量ながらも含まれていることから、一度打設した後に再掘削する場合などには再利用することができないので、産業廃棄物として廃棄しなければならないことが多かった。
【0003】
また、従来においては、土質安定処理の際のアルカリ化を防止するために、中性を示す石こうを主成分とする硬化材の開発が進められてきた。このような石こう系の硬化材は、その速硬性の点においても着目されており、軟弱土や泥土といった高含水比で液状をなす土のハンドリング性向上を目的とする土質の改良に用いられてきた(第1の従来技術)。
【0004】
また、石こう系の硬化材を用いて製造した土質安定処理土は、その硬化材の主成分である石こうのカルシウム(Ca)分が雨水や地下水に溶解することにより、再泥化してしまうことが懸念されていたが、硬化材中に、例えば、高分子剤を加えたり、又は特許文献1及び2に記載されているように、高炉スラグ、フライアッシュ(石炭灰)、又は酸化マグネシウム(MgO)等のアルカリ系の水硬性助剤などを加えたりすることにより、この硬化材中における石こうのカルシウム(Ca)分の溶解を抑制するようにした土質安定処理土があった(第2の従来技術)。
【0005】
ここで、この第2の従来技術に係る土質安定処理土においては、上述したように、この土質安定処理土を製造するのに用いる石こう系硬化材中に、高分子剤や水硬性助剤を加えることによりカルシウム分の溶解を抑制するようになっているが、これら高分子剤や水硬性助剤は、石こう成分との間で化学反応を生じることにより新たな化合物を生成しているというわけではなく、また、石こう成分の性状をそのカルシウム分の溶解度が低下するように変化させているというわけでもない。
【0006】
すなわち、これら高分子剤や水硬性助剤は、自身の溶解度が石こうよりも小さくなっていることにより、溶媒である水に溶けたときに、石こうが溶けるときよりも水を飽和状態に大きく近づけるように作用するので、これにより、この高分子剤や水硬性助剤が添加された石こう系硬化材の全体の溶解度を低下させるように作用しているだけに過ぎない。
【0007】
例えば、水硬性助剤としての酸化マグネシウム(MgO)は、水との化学反応により水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)を生じるが、この水酸化マグネシウムは、その水への溶解度が0.0012g/100gであることにより、水への溶解度が0.208g/100gである石こうを含む、石こう系硬化材の全体の溶解度を低下させるように作用している。これにより、酸化マグネシウム(MgO)は、石こう系硬化材中における石こうのカルシウム分の溶解を抑制するようになっている。
【特許文献1】特開2003−251321号公報
【特許文献2】特開2004−278133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記したような第1及び第2の従来技術に係る土質安定処理土は、粘性土地盤中に打設した後において、周辺地盤に比べて透水性が高いことにより、雨水や地下水がこの土質安定処理土内を集中的に流れるようになるので、再泥化を招くことになってしまうという問題があった。
【0009】
すなわち、上記したような第1及び第2の従来技術に係る土質安定処理土を製造するのに用いる、石こう系硬化材の主成分の半水石こう(CaSO4・1/2H2O)は、水との水和反応の結果、短時間でポーラス(porous)状の二水石こう(CaSO4・2H2O)の結晶構造を形成する。この二水石こうは、その透水係数が1×10−3〜1×10−4cm/s程度であって、土質安定処理の対象となる土よりも比較的高い透水性を有している。このため、石こう系硬化材を混合した土質安定処理土は、発生土を再利用する場合、周辺地盤よりも透水性が高くなる。
【0010】
ここで、石こうは、水との間で水和反応を生じる前の粉末状態と、水和反応を生じた後の固化した状態とを特に区別する必要がある場合には、上述したような水和反応前の「半水石こう(CaSO4・1/2H2O)」という呼び方と、水和反応後の「二水石こう(CaSO4・2H2O)」という呼び方により区別することができるが、本明細書においては、呼び分ける必要がない場合や、いずれの状態であるかが明確であるような場合には、特に呼び分けないこととする。
【0011】
例えば、粘性土に対して石こう系硬化材を混合することにより安定処理を施した土質安定処理土は、この石こう系硬化材を混合する前の状態の粘性土において透水係数が1×10−6〜1×10−7cm/s程度であったのに対して、透水係数が1×10−5cm/s程度にまで上昇する。
【0012】
したがって、このような石こう系硬化材を混合した土質安定処理土は、粘性土地盤中に打設すると、周辺地盤に比べて透水性が高くなることにより、雨水や地下水がこの土質安定処理土内を集中的に流れるようになってしまうという問題があった。
【0013】
このため、石こう系硬化材を混合した土質安定処理土は、このような高い透水性が原因となって、この土質安定処理土内を流れる多量の雨水や地下水に曝されるようになることにより、その石こう系硬化材の主成分である石こうのカルシウム分が、この土質安定処理土内を流れる多量の雨水や地下水に溶解し流出していくようになるので、最終的に、この土質安定処理土の再泥化を招くようになってしまうという問題があった。
【0014】
また、特に、上記した第2の従来技術に係る土質安定処理土においては、上述したように、この土質安定処理土を製造するのに用いる石こう系硬化材中に、高分子剤や水硬性助剤を加えることにより、その硬化結晶の難溶解性を利用してカルシウム分の溶解を抑制するようになっていたが、これらの助剤が少なからず水に溶解してしまうため、このような高分子剤や水硬性助剤によるカルシウム分の溶解の十分な抑制を維持しようとするならば、土質安定処理土は、この高分子剤または水硬性助剤を大量に含有した状態を維持し続けなければならないことになるのに、実際にはこのような状態を維持し続けていくことができないという問題があった。
【0015】
例えば、図19の表は、石こうと水とを混合して作製したペーストに、水硬性助剤としての酸化マグネシウムを添加し、固化させた後に、これを静水中に28日間だけ浸すことにより、その当初の体積に対する体積減少率を検証したものであって、石こうと酸化マグネシウムの総量に対する酸化マグネシウムの異なる比率ごとに検証したものである。また、図20は、これを線図化したものである。
【0016】
固化したペーストは静水中に浸されると、その石こうのカルシウム分と、酸化マグネシウムが溶解することにより、その分だけ体積が減少するようになる。酸化マグネシウムが水に溶解して生成される水酸化マグネシウムは、その溶解度が石こうよりも小さいので、ペースト中に混合される酸化マグネシウムの量を多くした場合には、溶解する石こうの量が少なくても溶液が飽和状態に達するようになるが、酸化マグネシウムの量を少なくした場合には、飽和状態に達するまでに溶解する石こうの量が多くなってしまう。
【0017】
図19及び図20に示す検証結果によると、酸化マグネシウムの混合量を33%にした場合には、その1日当たりの体積減少率が−0.368%であることから、計算上、約271日で−100%に達して体積全体を失ってしまうことになる。また、酸化マグネシウムの混合量を44%にした場合であっても、その1日当たりの体積減少率が−0.063%であることから、1年(365日)後には、計算上、約23%の体積を失ってしまうということになる。
【0018】
このような結果からは、酸化マグネシウムは、この酸化マグネシウムと石こうとを足し合わせた総量の50%を超えるように土質安定処理土中に含有されていなければ、カルシウム分の溶解を抑制する水硬性助剤としての機能を、十分に発揮することができないということになる。
【0019】
一方、土質安定処理土中の酸化マグネシウムは、土質安定処理土内を通る多量の雨水や地下水に曝されると溶解した分が徐々に流出していってしまうので、これにより、その水硬性助剤としての機能が十分に発揮されなくなっていくと、これに伴って石こうのカルシウム分の溶解する量が雪崩式に増大していき、結局、このカルシウム分が土質安定処理土内を通っていく雨水や地下水と一緒に流出していってしまうことになる。このようなことは、酸化マグネシウム以外の他の水硬性助剤や高分子剤を用いた場合でも、同様の傾向にあることが分かっている。すなわち、溶解度が小さい助剤が、溶解してしまうと、もはやカルシウム分の溶解を防止することができないのである。
【0020】
したがって、上記した第2の従来技術に係る土質安定処理土においては、高分子剤や水硬性助剤を用いるようになっていたが、この高分子剤や水硬性助剤が多量の雨水や地下水に曝されることにより溶解して流出していくと、結局、これに伴ってカルシウム分の溶解する量が雪崩式に増大し、このカルシウム分が土質安定処理土内を通っていく雨水や地下水と一緒に流出していくことになるので、最終的に、土質安定処理土の再泥化を招くようになってしまうという問題があった。
【0021】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みて、物理的作用により土質安定処理土の透水性を低下させて、長期的にカルシウム分の拡散を抑制し再泥化を防止することができる石こう系土質安定処理材、及び透水性を低下させ再泥化を防止した土質安定処理土を製造することができる土質安定処理土の製造方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題を解決するために、本発明による石こう系土質安定処理材は、主成分が半水石こうで構成される硬化材と、粉体状の乾燥粘土とを含有することを特徴とするものである。
【0023】
また、本発明による石こう系土質安定処理材は、前記乾燥粘土がベントナイトであることを特徴とするものである。
【0024】
また、本発明による石こう系土質安定処理材は、前記ベントナイトが前記硬化材に対する重量比として20%以上含有されることを特徴とするものである。
【0025】
また、本発明による石こう系土質安定処理材は、前記ベントナイトが前記硬化材に対する重量比として40%から100%含有されることを特徴とするものである。
【0026】
また、本発明による石こう系土質安定処理材は、前記乾燥粘土が、ベントナイトとベントナイト以外の他のスメクタイト族の粘土とを組合せたものであることを特徴とするものである。
【0027】
また、本発明による石こう系土質安定処理材は、前記硬化材の硬化速度を減速させる遅延剤を含有することを特徴とするものである。
【0028】
また、上記課題を解決するために、本発明による土質安定処理土の製造方法は、主成分が半水石こうで構成される硬化材と粉体状の乾燥粘土とを含有する石こう系土質安定処理材と、水とを、被処理土に混合撹拌して製造することを特徴とするものである。
【0029】
また、上記課題を解決するために、本発明による土質安定処理土の製造方法は、
主成分が半水石こうで構成される硬化材と、粉体状の乾燥粘土と、水とを混合撹拌することによりスラリー状の石こう系土質安定処理材を作製し、
前記スラリー状の石こう系土質安定処理材を被処理土に混合撹拌して製造することを特徴とするものである。
【0030】
また、上記課題を解決するために、本発明による土質安定処理土の製造方法は、主成分が半水石こうで構成される硬化材と、粉体状の乾燥粘土と、水とを被処理土に混合撹拌して製造することを特徴とするものである。
【0031】
また、上記課題を解決するために、本発明による土質安定処理土の製造方法は、
被処理土が粗粒土であって、
前記被処理土に、主成分が半水石こうで構成される硬化材と粉体状の乾燥粘土とを混合撹拌して途中安定処理土を作製し、
前記途中安定処理土の打設後に、この途中安定処理土に水を供給して硬化させることを特徴とするものである。
【0032】
また、本発明による土質安定処理土の製造方法は、前記乾燥粘土がベントナイトであることを特徴とするものである。
【0033】
また、本発明による土質安定処理土の製造方法は、前記ベントナイトの量が前記硬化材に対する重量比として20%以上であることを特徴とするものである。
なお、ベントナイトの含有量は、周辺地盤の透水性に応じて、適宜、選択する。
【0034】
また、本発明による土質安定処理土の製造方法は、前記ベントナイトの量が前記硬化材に対する重量比として40%から100%であることを特徴とするものである。
なお、ベントナイトの含有量は、周辺地盤の透水性に応じて、適宜、選択する。
【0035】
また、本発明による土質安定処理土の製造方法は、前記乾燥粘土が、ベントナイトとベントナイト以外の他のスメクタイト族の粘土とを組合せたものであることを特徴とするものである。
なお、ベントナイトとベントナイト以外の他のスメクタイト族の粘土のそれぞれの含有量は、周辺地盤の透水性に応じて、適宜、選択するようにし、また、ベントナイトとベントナイト以外の他のスメクタイト族の粘土との配合比率は、ほぼ中性(pH≒7)になるものであれば良い。
【0036】
また、本発明による土質安定処理土の製造方法は、前記硬化材の硬化速度を減速させる遅延剤を土質安定処理土に含有させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0037】
このような本発明の石こう系土質安定処理材によれば、
主成分が半水石こうで構成される硬化材と、粉体状の乾燥粘土とを含有することにより、
上記石こう系土質安定処理材を用いて製造した土質安定処理土について、その透水性を低下させて再泥化を防止することができる。
さらに、土質安定処理土の表面が溶解する状況になったとしても、溶解した粘土が周辺地盤との接触面に皮膜を形成し、溶解したカルシウム(Ca)分が、この粘土の皮膜に吸着され、外部拡散が抑制されることで、確実に再泥化を防止できる。
【0038】
また、本発明の石こう系土質安定処理材によれば、
前記乾燥粘土がベントナイトであることにより、
この石こう系土質安定処理材を用いて製造した土質安定処理土の透水性の低下量を増大させることができるので、土質安定処理土の再泥化を確実に防止することができる。
【0039】
また、本発明の石こう系土質安定処理材によれば、
前記ベントナイトが前記硬化材に対する重量比として20%以上含有されることにより、
上記ベントナイトの含有量を、周辺地盤の透水性に応じて、適宜、選択することで、
さらに確実に、前記土質安定処理土の透水性を低下させ、この土質安定処理土の再泥化を防止することができる。
【0040】
また、本発明の石こう系土質安定処理材によれば、
前記ベントナイトが前記硬化材に対する重量比として40%から100%含有されることにより、
上記ベントナイトの含有量を、周辺地盤の透水性に応じて、適宜、選択することで、
さらに確実に、前記土質安定処理土の透水性を低下させ、この土質安定処理土の再泥化を防止することができる。
【0041】
また、本発明の石こう系土質安定処理材によれば、
前記乾燥粘土が、ベントナイトとベントナイト以外の他のスメクタイト族の粘土とを組合せたものであることにより、
土質安定処理材を中性にすることができ、
さらに確実に、前記土質安定処理土の透水性を低下させ、この土質安定処理土の再泥化を防止することができる。
【0042】
また、本発明の石こう系土質安定処理材によれば、
前記硬化材の硬化速度を減速させる遅延剤を含有することにより、
前記遅延剤が前記土質安定処理土の硬化を遅延させるように作用するので、この遅延剤の量を調整することにより硬化速度を制御することができる。
【0043】
また、本発明の土質安定処理土の製造方法によれば、
主成分が半水石こうで構成される硬化材と粉体状の乾燥粘土とを含有する石こう系土質安定処理材と、水とを、被処理土に混合撹拌して製造することにより、
硬化までの材料分離を防止し、
透水性を低下させ再泥化を防止した土質安定処理土を製造することができる。
【0044】
また、本発明の土質安定処理土の製造方法によれば、
主成分が半水石こうで構成される硬化材と、粉体状の乾燥粘土と、水とを混合撹拌することによりスラリー状の石こう系土質安定処理材を作製し、
前記スラリー状の石こう系土質安定処理材を被処理土に混合撹拌して製造することにより、
硬化までの材料分離を防止し、
透水性を低下させ再泥化を防止した土質安定処理土を製造することができる。
【0045】
また、本発明の土質安定処理土の製造方法によれば、
主成分が半水石こうで構成される硬化材と、粉体状の乾燥粘土と、水とを被処理土に混合撹拌して製造することにより、
硬化までの材料分離を防止し、
透水性を低下させ再泥化を防止した土質安定処理土を製造することができる。
【0046】
また、本発明の土質安定処理土の製造方法によれば、
被処理土が粗粒土であって、
前記被処理土に、主成分が半水石こうで構成される硬化材と粉体状の乾燥粘土とを混合撹拌して途中安定処理土を作製し、
前記途中安定処理土の打設後に、この途中安定処理土に水を供給して硬化させることにより、
長時間の運搬を可能にし、短時間での硬化もできるから、短時間で施工しなければならない即日復旧に適し、
透水性を低下させ再泥化を防止した土質安定処理土を製造することができる。
【0047】
また、本発明の土質安定処理土の製造方法によれば、
前記乾燥粘土がベントナイトであることにより、
この製造方法で製造した土質安定処理土の透水性の低下量を増大させることができるので、土質安定処理土の再泥化を確実に防止することができる。
【0048】
また、本発明の土質安定処理土の製造方法によれば、
前記ベントナイトの量が前記硬化材に対する重量比として20%以上であることにより、
上記ベントナイトの含有量を、周辺地盤の透水性に応じて、適宜、選択することで、
さらに確実に、前記土質安定処理土の透水性を低下させ、この土質安定処理土の再泥化を防止することができる。
【0049】
また、本発明の土質安定処理土の製造方法によれば、
前記ベントナイトの量が前記硬化材に対する重量比として40%から100%であることにより、
上記ベントナイトの含有量を、周辺地盤の透水性に応じて、適宜、選択することで、
さらに確実に、前記土質安定処理土の透水性を低下させ、この土質安定処理土の再泥化を防止することができる。
【0050】
また、本発明の土質安定処理土の製造方法によれば、
前記乾燥粘土が、ベントナイトとベントナイト以外の他のスメクタイト族の粘土とを組合せたものであることにより、
安定処理材を中性にすることができ、
さらに確実に、前記土質安定処理土の透水性を低下させ、この土質安定処理土の再泥化を防止することができる。
【0051】
また、本発明の土質安定処理土の製造方法によれば、
前記硬化材の硬化速度を減速させる遅延剤を土質安定処理土に含有させることにより、
前記遅延剤が前記土質安定処理土の硬化を遅延させるように作用するので、この遅延剤の量を調整することにより硬化速度を制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
以下、本発明に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法を実施するための最良の形態について、図面に基づいて具体的に説明する。
図1から図15は、本発明の第1の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法について説明するために参照する図である。
【0053】
本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材は、硬化材としての半水石こう(CaSO4・1/2H2O)と、粉体状の乾燥粘土とを混合して作製することとし、このような乾燥粘土としてベントナイトを用いるようにする。
【0054】
また、本実施の形態に係る土質安定処理土の製造方法では、このような石こう系土質安定処理材を用いるようにする。すなわち、この石こう系土質安定処理材と水とが被処理土に混合撹拌されるようにすることにより、土質安定処理土を製造するようにする。
【0055】
ここで、石こう系土質安定処理材の原料となるベントナイトは、モンモリロナイトを主成分とする粘土である。このベントナイトは、その5〜10倍の量の水を吸収する能力があり、水を吸収させ膨潤させることにより、増粘し、透水係数が小さくなる性質を有している。
【0056】
本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法は、これにより製造し打設した土質安定処理土が、その後において固化したときに、その膨潤したベントナイトが非透水性の機能を発揮するようになることを利用するものである。
【0057】
また、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法は、そのベントナイトが膨潤して粘性を発揮するまでに時間を要することに着目して、このような粘性の機能が発揮される前に土質安定処理土の打設作業を済ませることができるようにすることにより、ベントナイトの粘性が、打設時などに必要となる土質安定処理土の流動性等を阻害しないようにするものである。
【0058】
また、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法は、上述したように、これにより製造し打設した土質安定処理土の膨潤したベントナイトに、非透水性の機能を発揮させるようにするものであるから、この土質安定処理土内を通る水の量を減少させるようになるので、これにより、この土質安定処理土に含有される石こう成分に接触する水の量を減少させるようにするものである。
【0059】
また、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法は、上述したように、これにより製造し打設した土質安定処理土の内部を通っていく水の量を減少させ、この土質安定処理土の石こう成分に接触する水の量を減少させるようにするものであるから、この土質安定処理土が既に含有している水については、この土質安定処理土の内部に滞留させるように作用するので、このような滞留した水に石こう成分等が溶解して飽和状態になった後には、このような飽和状態を維持し、それ以上の石こう成分が溶解しないように作用するため、石こうの見掛け上の溶解度を低下させるようにするものである。
【0060】
したがって、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法は、これにより製造し打設した土質安定処理土について着目してみると共に、さらに上記した「背景技術」の欄の第2の従来技術と比較してみることとすると、上記第2の従来技術に係る土質安定処理土は、その高分子剤や水硬性助剤が、石こう系硬化材の全体の溶解度を低下させ、これに含まれる石こうの見掛け上の溶解度を低下させるだけに止まっているのに対して、本実施の形態における土質安定処理土は、その石こうの見掛け上の溶解度を低下させるだけでなく、さらに土質安定処理土の石こう成分に接触する水の量を減少させることにより、その流出を防止するようになっているので、より効果的に石こうが溶解する量を低減させるようになっているものである。
【0061】
また、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法は、上述したとおり、この石こう系土質安定処理材に乾燥粘土であるベントナイトを含有させるようにするものであるが、これにより土質安定処理土の強度を向上させるという本来的な機能を損なうことが無いようになっているものである。
【0062】
また、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法は、特に、この石こう系土質安定処理材に混合する乾燥粘土としてベントナイトを用いるようになっていることにより、水中に溶解した石こうのカルシウムイオンが、このベントナイトの膨潤を抑制し増粘速度を減速させるように作用するので、土質安定処理土における打設等の際に必要な流動性を低下させることなく、ベントナイトの混合量を増やすことができるようにしているものである。
【0063】
これにより、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法は、そのベントナイトが発揮する非透水性の機能を、このベントナイトの混合量を増分することにより向上させるようにするものである。
【0064】
次に、本実施の形態に係る土質安定処理土の製造方法の融通性について説明する。
【0065】
本実施の形態に係る土質安定処理土の製造方法は、上述したように、石こうと粉体状のベントナイトとを含有する石こう系土質安定処理材と水とを、被処理土に混合撹拌することにより、土質安定処理土が製造されるようにするものである。このような土質安定処理土を製造する際の手順は、融通が利くものであり、概略的なものとしても何通りかを考えることができる。
【0066】
すなわち、本実施の形態に係る土質安定処理土の製造方法としての、第1例としては、図1に示すように、最初に石こうと粉体状のベントナイトとを混合撹拌することにより石こう系土質安定処理材を作製した後に、この石こう系土質安定処理材と水のそれぞれを被処理土に混合撹拌して土質安定処理土を製造するようにする手順が考えられる。
【0067】
このように製造された土質安定処理土は、その石こう成分が固化したりベントナイト成分が粘性を発揮したりすることにより流動性を失う前に、施工現場まで運搬し、打設するようにする。打設後の土質安定処理土は、その後において固化することにより、強度を発揮するようになると共に、非透水性の機能をも発揮するようになる。
【0068】
また、本実施の形態に係る土質安定処理土の製造方法としての、第2例としては、図2に示すように、最初に石こうと粉体状のベントナイトとを混合撹拌することにより石こう系土質安定処理材を作製してから、この石こう系土質安定処理材に水を混合することによりスラリー状(泥漿状)にした後、このようなスラリー状の石こう系土質安定処理材を被処理土に混合撹拌して土質安定処理土を製造するようにする手順が考えられる。
【0069】
また、本実施の形態に係る土質安定処理土の製造方法としての、第3例としては、図3に示すように、石こうと粉体状のベントナイトと水とをほぼ同時にまとめて混合撹拌することによりスラリー状の石こう系土質安定処理材を作製した後、このようなスラリー状の石こう系土質安定処理材を被処理土に混合撹拌して土質安定処理土を製造するようにする手順が考えられる。
【0070】
また、本実施の形態に係る土質安定処理土の製造方法としての、第4例としては、図4に示すように、最初に石こうと粉体状のベントナイトとを混合撹拌することにより石こう系土質安定処理材を作製してから、この石こう系土質安定処理材を被処理土に混合撹拌することにより途中安定処理土を作製し、このような途中安定処理土を施工現場において打設した後、水を供給して硬化を開始させることにより、打設した状態で土質安定処理土として完成させるようにする手順が考えられる。
【0071】
また、本実施の形態に係る土質安定処理土の製造方法としての、第5例としては、図5に示すように、石こうと粉体状のベントナイトと水のそれぞれを、ほぼ同時にまとめて被処理土に混合撹拌することにより、土質安定処理土を製造するようにする手順が考えられる。
【0072】
また、本実施の形態に係る土質安定処理土の製造方法としての、第6例としては、図6に示すように、最初に石こうと粉体状のベントナイトのそれぞれをほぼ同時に被処理土に混合撹拌することにより途中安定処理土を作製し、このような途中安定処理土を施工現場において打設した後、水を供給して硬化を開始させることにより、打設した状態で土質安定処理土として完成させるようにする手順が考えられる。
【0073】
上述したように、本実施の形態に係る土質安定処理土の製造方法は、その手順に融通性を備えているため、これに伴って、このような土質安定処理土の製造方法に用いる石こう系土質安定処理材、すなわち、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材は、その実質的な概念を以下のように考えることができる。
【0074】
すなわち、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材は、上述したとおり、石こうとベントナイトを混合して作製するものであるが、この石こう系土質安定処理材の概念の中には、石こうとベントナイトと水とを混合してスラリー状(泥漿状)に作製したものを含めて考えることができる(図2,3参照)。このようなスラリー状の石こう系土質安定処理材は、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材を用いて土質安定処理土を製造する際に必要となる水を、手順を変えて加えたに過ぎないものだからである。
【0075】
また、このように作製するスラリー状の石こう系土質安定処理材は、最初に石こうとベントナイトとを混合することにより本来の石こう系土質安定処理材を作製した後に、これに水を混合することによりスラリー状に作製することとしても良いし(図2参照)、或いは、石こうとベントナイトと水とを最初から一緒に混合することにより、当初から石こう系土質安定処理材がスラリー状に作製されるようにすることとしてもよい(図3参照)。
【0076】
また、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材の概念の中には、石こうとベントナイトの組み合わせであって、これらを互いに混合することなくほぼ同時に被処理土に直接投入することにより、この被処理土と一緒に混合して用いるようにするものも含まれるものとして考えることができる(図5,6参照)。石こうとベントナイトをこのように用いる場合には、実質的に、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材を用いることと変わらないからである。
【0077】
また、このように石こうとベントナイトのそれぞれが、ほぼ同時に被処理土に直接投入して混合されるようにする場合には、これら石こうとベントナイトと一緒に水が同時に混合されるようになっていても良いし(図5参照)、或いは、これら石こうとベントナイトとを混合する段階とは異なる段階において水が混合されるようになっていても良い(図6参照)。
【0078】
次に、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材を用いて製造した土質安定処理土、すなわち、本実施の形態に係る土質安定処理土の製造方法により製造した土質安定処理土が、その透水性の低下により、再泥化を防止することができるようになっていることを検証した結果について説明する。
【0079】
図7は、石こうとベントナイトと水とを混合してスラリー状(泥漿状)に作製した石こう系土質安定処理材を固化させたものを、静水中に14日又は28日の期間だけ浸しておくことにより、このような固化物における当初の重量に対する14日又は28日の期間経過後の重量の比を、石こうとベントナイトの異なる配合比率ごとに示すようにした表である。
【0080】
石こう50gに対してベントナイトを0〜60gだけ混合して作製した石こう系土質安定処理材の固化物のそれぞれについて着目すると、14日経過したものよりも28日経過したものの方が軽くなっているので、水との接触時間が長いほど、その石こうのカルシウム分が多く流出して軽くなっていくことが分かる。
【0081】
また、このような石こう系土質安定処理材は、そのベントナイトの配合量が多いほどカルシウム分の流出が抑制されるようになることがわかる。石こう50gに対してベントナイトを80g混合して作製した石こう系土質安定処理材に至っては、そのカルシウム分の流出をほぼ完全に防げるようになっていることが分かる。
【0082】
次に、図8は、石こうとベントナイトと水とを混合してスラリー状に作製した石こう系土質安定処理材を固化させたものについて、その透水係数を、石こうとベントナイトの異なる配合比率ごとに示すようにした表である。また、図9は、これを線図化したものである。これら図8及び図9に示すように、石こう系土質安定処理材は、そのベントナイトの配合量が多いほど透水性が低くなっていくことが分かる。
【0083】
次に、図10は、石こうとベントナイトと水とを混合してスラリー状に作製した石こう系土質安定処理材について、そのフロー値を、石こうとベントナイトの異なる配合比率ごとに示すようにした表である。また、図11は、これを線図化したものである。
【0084】
ここで、フロー値とは、旧日本道路公団規格(シリンダー法 JHS A−313)を準用するものであり、内径80mm、高さ80mmであって、両端面が開放された筒体を板上に載置して、この筒体内にスラリー状の測定物を充填した後に、筒体を静かに上方に引上げることにより板上に広がった測定物について、その最大の径の長さと、この最大の径の方向と直角方向の径の長さとを測定し、両者を平均して求めた数値をいう。このフロー値は、流動性の指標となるものであり、その数値が大きいほど、測定物が流動性を有していることを表す。
【0085】
また、図10の表中におけるフロー値の欄の中の、「膨潤」と記載されている欄の数値は、ベントナイトを最初に水と混合して膨潤させてから石こうと混合することにより作製したペーストのフロー値を指す。このように作製したペーストは、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材に該当するものではなく、単に、石こう系土質安定処理材との比較対象になるだけのものである。
【0086】
また、図10の表中におけるフロー値の欄の中の、「粉体」と記載されている欄の数値は(図11中においては「未膨潤」と表記)、石こうと粉体状のベントナイトと水とを同時に混合して作製した、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材のフロー値を指すものである。
【0087】
図10及び図11に示すように、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材は、ベントナイトを膨潤させて作製したペーストよりも、その流動性が優れていて粘性が低くなっていることが分かる。
【0088】
次に、図12は、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材を用いて、その湿潤密度が1.8g/cm3となるように製造した土質安定処理土について、そのフロー値を、石こうとベントナイトの異なる配合比率ごとに示すようにした表である。
【0089】
ここで、土質安定処理土の原料となる被処理土としては、粗粒土に分類される砂を用いるようにした。また、表中におけるフロー値の欄の記載方式は、図10の表の記載方式とほぼ同様であって、「膨潤」と記載されている欄の数値が、石こうと予め膨潤させたベントナイトとを混合して作製したペーストを砂に混合したもののフロー値を指し、「粉体」と記載されている欄の数値が、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材を砂に混合することにより作製した土質安定処理土のフロー値を指す。
【0090】
図12に示すように、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材を用いて製造した土質安定処理土は、ベントナイトを膨潤させて作製したペーストを砂に混合したものよりも、その流動性が優れていて粘性が低くなっていることが分かる。
【0091】
また、図12に示す結果によると、例えば、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材を用いて土質安定処理土を製造する際に、そのフロー値を175mm程度に設定する場合には、このようなフロー値に対応するベントナイトの配合量が石こう50gに対し40gであるのに対して、ベントナイトを予め膨潤させて作製したペーストを被処理土に混合したものは、そのフロー値を175mmの近傍の178mmにするときのベントナイトの配合量が20gになっていることから、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材を用いて製造する土質安定処理土は、約2倍のベントナイトを含有させることができるようになっていることが分かる。
【0092】
次に、図13は、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材を用いて製造した土質安定処理土の品質を示すものである。この土質安定処理土は、同図中に示すように、その石こう系土質安定処理材におけるベントナイトと石こうの配合比率が156/260=0.6に設定されると共に、水と石こうの配合比率が520/260=2に設定されているものである。これにより、この土質安定処理土は、その透水係数が3.40×10−6cm/sにまで低減されている。
【0093】
一方、図8に示すように、石こう50gとベントナイト30gと水100gを混合して作製した石こう系土質安定処理材は、図13に示す土質安定処理土を製造するのに用いた石こう系土質安定処理材と比較すると分かるように、そのベントナイトと石こうの配合比率(30/50=0.6)、及び水と石こうの配合比率(100/50=2)のそれぞれが互いに等しくなるように作製されているものである。この石こう系土質安定処理材は、その透水係数が、図13に示す土質安定処理土の透水係数に非常に近い数値である3.31×10−6cm/sになっている。
【0094】
これにより、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材を用いて製造した土質安定処理土の透水性は、この石こう系土質安定処理材の透水性に基づいてほぼ定まるようになっていることが分かる。
【0095】
次に、図14は、石こうと水とを混合して作製したペーストについて、その一軸圧縮強さを、異なる水と石こうの配合比率ごとに示すようにした表である。また、図15は、このようなペーストにおける水と石こうとの配合比率と、このペーストを砂に混合したものが発揮する一軸圧縮強さとの間の相関を表すようにした線図である。
【0096】
これら図14及び図15に示すように、石こうと水とを混合して作製したペーストは、その一軸圧縮強さが、水と石こうとの配合比率に依存しており、このようなペーストを砂と混合し、その湿潤密度が異なるようにした場合であっても、その一軸圧縮強さがほとんど変化しないようになっていることが分かる。
【0097】
したがって、このような結果からは、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材を用いて製造した土質安定処理土は、その一軸圧縮強さが、石こう系土質安定処理材における水と石こうとの配合比率に依存するようになっていることが分かる。
【0098】
これにより、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材を用いて製造した土質安定処理土は、その強度が被処理土の土質には依存しないということが分かると共に、石こう系土質安定処理材に含有させるベントナイトが、この石こう系土質安定処理材による土質安定処理土の強度向上の機能を損なわせるようには作用しないということが分かる。
【0099】
次に、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材を作製するのに必要となる石こうとベントナイトのそれぞれの混合量の求め方について説明する。
【0100】
石こう系土質安定処理材を作製するのに必要となる石こうとベントナイトのそれぞれの量を求めるには、まず、この石こう系土質安定処理材を用いて製造する土質安定処理土が、その打設時に十分な流動性を有するようになるのに必要な水の量を求め、この水の量と土質安定処理土に要求される強度(一軸圧縮強さ)とから、図14に基づいて石こうの量を求めるようにする。そして、この石こうの量に対するベントナイトの量は、土質安定処理土に要求される非透水性を勘案して、図8及び図9から求めるようにする。
【0101】
また、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材を用いて土質安定処理土を製造する際の手順として、石こう系土質安定処理材を被処理土に混合撹拌することにより途中安定処理土を作製し、この途中安定処理土を打設してから水を供給して硬化させるようにする場合、すなわち、被処理土が最終的に打設後に土質安定処理土として完成されるようにする場合には、このような完成後の土質安定処理土における被処理土の土粒子間の間隙部分の総和が、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材の体積総量、すなわち、石こうとベントナイトと水との混合物の体積総量に相当するもとして考えれば良い。
【0102】
したがって、このような完成後の土質安定処理土における被処理土の土粒子間の間隙部分の総体積に対して、石こう系土質安定処理材を作製するのに必要な石こうとベントナイトと打設後に供給する水との間の質量比から換算して求めた、これらの体積比を乗じるようにすれば、これら石こうとベントナイトと水のそれぞれの混合量をその体積の量として求めることができる。
【0103】
さらに、このような石こうとベントナイトと水のそれぞれの混合量の体積に対して、それぞれの密度を乗じるようにすれば、これらのそれぞれの混合量をその質量として求めることができる。
【0104】
例えば、完成後の土質安定処理土の強度(一軸圧縮強さ)を400kN/m2に設定する場合には、図14の表により、水と石こうの間の質量比(水/石こう)を約2にすれば良いことが分かり、さらに、ベントナイトと石こうの間の質量比(ベントナイト/石こう)を0.8にすることとすれば、結局、石こうとベントナイトと水との間の質量比は、1:0.8:2になることが分かる。
【0105】
また、このような石こうとベントナイトと水との間の質量比の値のそれぞれを、その密度で除することにより体積比を求め、これを製造する土質安定処理土における被処理土の土粒子間の間隙部分の総体積に乗じれば、石こうとベントナイトと水のそれぞれの混合量をその体積の量として求めることができる。また、これら石こうとベントナイトと水のそれぞれの体積の量に対し、その密度を乗じれば、これらのそれぞれの混合量をその質量として求めることができる。
【0106】
このような第1の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材によれば、この石こう系土質安定処理材を用いて製造する土質安定処理土について、その透水性を低下させて再泥化を防止することができる。
【0107】
また、第1の実施の形態に係る土質安定処理土の製造方法によれば、透水性を低下させ再泥化を防止した土質安定処理土を製造することができる。
【0108】
また、第1の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法によれば、この石こう系土質安定処理材に含有される乾燥粘土としてベントナイトを用いるようになっていることにより、この石こう系土質安定処理材を用いて製造した土質安定処理土の透水性の低下量を増大させることができるので、確実に土質安定処理土の再泥化を防止することができる。
【0109】
また、第1の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法によれば、図9に示すように、特に、この石こう系土質安定処理材の中におけるベントナイトの成分を、石こうに対する重量比として20%以上含有させるようにした場合に、透水性の低下が顕著に現れてくるようになるので、再泥化抑制としての助剤を含有している石こう系土質安定処理材であれば、このような配合比率にする場合には、確実に土質安定処理土の透水性を低下させ、この土質安定処理土の再泥化を防止することができる。
【0110】
また、第1の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法によれば、特に、この石こう系土質安定処理材の中におけるベントナイトの成分を、石こうに対する重量比として40%から100%含有させるようにした場合に、その透水性を、従来技術では達成することができなかった程度にまで低下させるようにすることができるので、このような配合比率にする場合には、やはり、確実に土質安定処理土の透水性を低下させ、この土質安定処理土の再泥化を防止することができる。
【0111】
すなわち、上記した「背景技術」の欄の特許文献2に記載されているように、石こう系の硬化材に酸化マグネシウムを添加する場合であって、この酸化マグネシウムの石こうに対する配合比率を実用上の範囲内で調整する場合には、このような石こう系の硬化材を用いた土質安定処理土の透水係数は、せいぜい2×10−5cm/s程度にしかならないが、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材において、そのベントナイトの成分を、石こうに対する重量比として40%から100%含有させるようにした場合には、図9に示すように、その透水係数を2×10−5cm/sよりも小さくすることができる。
【0112】
したがって、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法によれば、特に、この石こう系土質安定処理材の中におけるベントナイトの成分を、石こうに対する重量比として40%から100%含有させるようにした場合には、従来技術以上に、確実に土質安定処理土の透水性を低下させ、この土質安定処理土の再泥化を防止することができる。
【0113】
また、第1の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法によれば、特に、この石こう系土質安定処理材に用いる粉体状のベントナイトを被処理土に直接混合せず、最初に石こうと混合してから被処理土に投入するようにした場合には、ベントナイトが少量であっても石こうが増量剤の役割を果たすようになることにより、ベントナイトの成分が被処理土に対して均一に混合されるようになるので、土質安定処理土の再泥化の防止の確実性を顕著に向上させることができる。
【0114】
すなわち、上記した「背景技術」の欄の、第2の従来技術に係る土質安定処理土においては、上述したように、その石こう系硬化材中に高分子剤や水硬性助剤が加えられていたが、これら高分子剤や水硬性助剤の含有量は、実際には、石こうの長所である速硬性を損なわないようにするために少量に抑えられるので、このような少量の高分子剤や水硬性助剤を土質安定処理土中に均一に分散させることが非常に難しい。
【0115】
このため、上記した第2の従来技術に係る土質安定処理土は、その石こう系硬化材中における石こうのカルシウム(Ca)分が、比較的溶解し易い部分と溶解しにくい部分とを生じるようになるので、溶解し易い部分に雨水や地下水が集中し易くなってしまう。したがって、上記した第2の従来技術に係る土質安定処理土は、その土質の劣化の潜在的要因を抱えるようになっていた。
【0116】
また、上記した第2の従来技術に係る土質安定処理土において、仮に、その高分子剤や水硬性助剤を増量したような場合には、この土質安定処理土の強度向上が、土質への依存度が高いポゾラン反応によっても生じるようになることにより、強度安定までに一定期間の養生を必要とするようになるので、本来的に石こうが発揮する速硬性や、これにより短時間で強度を評価することができる状態になるといった、元々の長所が損なわれるようになるという問題があったため、結局、石こう系硬化材の長所を損なわないようにしながら、その土質の劣化の潜在的要因を解消するということができていなかった。
【0117】
これに対して、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法は、この石こう系土質安定処理材に用いる粉体状のベントナイトを石こうと混合してから被処理土に投入するようにした場合には、上記した第2の従来技術が抱えていた問題を根本解決することができるので、土質安定処理土の再泥化の防止の確実性を顕著に向上させることができる。
【0118】
次に、図16から図18は、本発明の第2の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法について説明するために参照する図である。前記第1の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法と同様の構成についての重複する説明は省略するものとする。
【0119】
本発明の第2の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法においては、この石こう系土質安定処理材に遅延剤を含有させるようになっている。この遅延剤は、石こうの硬化速度を減速させるように作用するものである。このような遅延剤としては、例えば、グルタミン酸ソーダ、石こうプラスター、及びクエン酸等を用いることができる。
【0120】
図16から図18のそれぞれは、石こうに水和反応を生じさせる際に、グルタミン酸ソーダ、石こうプラスター、及びクエン酸のそれぞれを添加した場合の、硬化時間の変化を線図にしたものである。
【0121】
ここで、図16から図18のそれぞれの線図において、その縦軸の硬化時間は、石こうが水和反応により硬化する際に生じる熱によって、その温度がピークに達するときまでの時間を、この水和反応による硬化時間の指標として採用するようにしたものである。
【0122】
このような第2の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材によれば、前記第1の実施の形態と同様に、この石こう系土質安定処理材を用いて製造する土質安定処理土について、その透水性を低下させて再泥化を防止することができる。
【0123】
また、第2の実施の形態に係る土質安定処理土の製造方法によれば、前記第1の実施の形態と同様に、透水性を低下させ再泥化を防止した土質安定処理土を製造することができる。
【0124】
また、第2の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法によれば、前記第1の実施の形態と同様に、この石こう系土質安定処理材に含有される乾燥粘土としてベントナイトを用いるようになっていることにより、この石こう系土質安定処理材を用いて製造した土質安定処理土の透水性の低下量を増大させることができるので、確実に土質安定処理土の再泥化を防止することができる。
【0125】
また、第2の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法によれば、前記第1の実施の形態と同様に、特に、この石こう系土質安定処理材の中におけるベントナイトの成分を、石こうに対する重量比として20%以上含有させるようにした場合には、確実に土質安定処理土の透水性を低下させ、この土質安定処理土の再泥化を防止することができる。
【0126】
また、第2の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法によれば、前記第1の実施の形態と同様に、特に、この石こう系土質安定処理材の中におけるベントナイトの成分を、石こうに対する重量比として40%から100%含有させるようにした場合には、やはり、確実に土質安定処理土の透水性を低下させ、この土質安定処理土の再泥化を防止することができる。
【0127】
また、第2の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法によれば、前記第1の実施の形態と同様に、特に、この石こう系土質安定処理材に用いる粉体状のベントナイトを被処理土に直接混合せず、最初に石こうと混合してから被処理土に投入するようにした場合に、ベントナイトが少量であっても石こうが増量剤の役割を果たすようになることにより、ベントナイトの成分が被処理土に対して均一に混合されるようになるので、土質安定処理土の再泥化の防止の確実性を顕著に向上させることができる。
【0128】
また、第2の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法によれば、この石こう系土質安定処理材に遅延剤を含有させるようになっているので、この遅延剤の量を調整することにより土質安定処理土の硬化速度を制御することができる。
【0129】
例えば、遅延剤としてグルタミン酸ソーダを用いる場合には、図16に示すように、このグルタミン酸ソーダを石こうに対して0〜0.3%の範囲で添加するようにした検証範囲内において、添加量の増大と共に、一様に硬化時間が長くなっているので、少なくともこのような範囲でグルタミン酸ソーダの量を調整することにより土質安定処理土の硬化速度を制御することができる。
【0130】
また、遅延剤として石こうプラスターを用いる場合には、図17に示すように、この石こうプラスターを石こうに対して0〜20%の範囲で添加するようにした検証範囲内において、添加量の増大と共に、一様に硬化時間が長くなっているので、少なくともこのような範囲で石こうプラスターの量を調整することにより土質安定処理土の硬化速度を制御することができる。
【0131】
また、遅延剤としてクエン酸を用いる場合には、図18に示すように、検証した範囲内ではクエン酸を石こうに対して約1%添加した場合に最も硬化時間が長くなるので、クエン酸の量を石こうに対して0〜1%の範囲で、又は1〜5%の範囲で調整することにより土質安定処理土の硬化速度を制御することができる。
【0132】
なお、前記第1及び第2の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法においては、土質安定処理土の原料となる被処理土として用いることができるものを特定していなかったが、このような被処理土としては、粗粒土(土粒子径が0.075mm以上である粗粒分を50%以上含有する土)が好ましく、とりわけ砂質土(粗粒土のうち、土粒子径が0.075〜2mmである砂分を、土粒子径が2〜75mmである礫分よりも多く含有する土)が好ましい。
【0133】
一方、被処理土として細粒土(土粒子径が0.075mm以下である細粒分を50%以上含有する土)を用いる場合には、被処理土の粘度が高すぎることにより、水を混合せずに石こう系土質安定処理材だけを被処理土に混合すること(図4及び図6参照)は難しいので、石こう系土質安定処理材を水と一緒に被処理土に混合するようにすることが好ましい(図1から3、及び図5参照)。
【0134】
また、被処理土として細粒土を用いる場合には、被処理土として粗粒土を用いるようにした場合と比べて、その透水性を低下させるのに石こう系土質安定処理材と水の両方を多く必要とするようになるので、施工性や経済性等の観点からは、やはり、粗粒土を被処理土として用いるようにすることが好ましい。
【0135】
また、前記第1及び第2の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法においては、この石こう系土質安定処理材に含有させる乾燥粘土としてベントナイトを用いるようになっていたが、このベントナイトはモンモリロナイトを質量比で50%以上含有するものが好ましい。
【0136】
また、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法においては、乾燥粘土としてベントナイトを用いるようになっていたが、ベントナイト以外の他の乾燥粘土を用いるようになっていてもよい。このようなベントナイト以外の他の乾燥粘土としては、粒径が5μm以下の土粒子で構成される粘土であって、膨潤度が2以上かつpHが10以下であるような粘土を、乾燥させ粉砕することにより粉体状にしたものを用いることができる。
【0137】
このような乾燥粘土のうち具体的なものとしては、例えば、結晶構造の層間に水を取り込むことができる、酸性白土(pH5〜6程度、膨潤度2〜3程度)等のスメクタイト族の粘土等を用いることができる。なお、前記第1及び第2の実施の形態で用いたベントナイト(pH7〜8.5程度、膨潤度5〜10程度)もスメクタイト族に属するものである。また、乾燥粘土は、ベントナイトとベントナイト以外の他のスメクタイト族の粘土同士を任意に組合せて用いても良い。
【0138】
また、前記第1及び第2の実施の形態におけるベントナイトの代わりに、雲母を主成分とするイライト質土を用いるようにしてもよい。或いは、ベントナイトや酸性白土等のスメクタイト族の粘土、イライト質土、又はこれら以外の粘土であってベントナイトの代用品として用いることができる粘土のいずれか同士を任意に組合せて用いるようにしてもよい。
【0139】
また、前記第1及び第2の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法においては、この石こう系土質安定処理材の硬化材が石こうのみで構成されるようになっていたが、硬化材はこのようなものに限定されずに、石こうを主成分として含有するものであればよい。このような硬化材としては、特に、石こうの成分を質量比で50%以上含有するものが好ましい。
【0140】
また、前記第2の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法においては、遅延剤は、石こう系土質安定処理材に含有されるようになっていたが、他の実施の形態として、例えば被処理土に直接投入するようにしても良く、最終的に、土質安定処理土に含有されるようになっていれば良い。
【0141】
また、前記第1及び第2の実施の形態では、石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法について説明したが、土質安定処理土の製造の際に、石こう系土質安定処理材を用いることに拘らないのであれば、セメントやセメント系の土質安定処理材に粉体状のベントナイトを添加するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る石こう系土質安定処理土の製造方法であって、その第1例の手順を示す工程図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る石こう系土質安定処理土の製造方法であって、その第2例の手順を示す工程図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る石こう系土質安定処理土の製造方法であって、その第3例の手順を示す工程図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る石こう系土質安定処理土の製造方法であって、その第4例の手順を示す工程図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る石こう系土質安定処理土の製造方法であって、その第5例の手順を示す工程図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る石こう系土質安定処理土の製造方法であって、その第6例の手順を示す工程図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材を固化させたものを静水中に一定期間だけ浸したものの、当初重量に対する重量比を、石こうとベントナイトの異なる配合比率ごとに示すようにした表である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材を固化させたものの透水係数を、石こうとベントナイトの異なる配合比率ごとに示すようにした表である。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材を固化させたものにおける、その石こうとベントナイトの配合比率と透水係数との相関を示す線図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及びこの石こう系土質安定処理材との比較対象になる混合物のそれぞれのフロー値を、石こうとベントナイトの異なる配合比率ごとに示すようにした表である。
【図11】本発明の第1の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及びこの石こう系土質安定処理材との比較対象になる混合物のそれぞれにおける、そのベントナイトと石こうの配合比率とフロー値との相関を示す線図である。
【図12】本発明の第1の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材を用いて製造した土質安定処理土、及びこの土質安定処理土との比較対象になる混合物のそれぞれのフロー値を、石こうとベントナイトの異なる配合比率ごとに示すようにした表である。
【図13】本発明の第1の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材を用いて製造した土質安定処理土の品質を示す表である。
【図14】石こうと水とを混合して作製したペーストについて、その一軸圧縮強さを、異なる水と石こうの配合比率ごとに示すようにした表である。
【図15】石こうと水とを混合して作製したペーストを砂に混合したものにおける、その水と石こうとの配合比率と、一軸圧縮強さとの間の相関を示す線図である。
【図16】本発明の第2の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材に用いる遅延剤としてのグルタミン酸ソーダを、石こうに水和反応を生じさせる際に添加したときの、硬化時間の変化を示す線図である。
【図17】本発明の第2の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材に用いる遅延剤としての石こうプラスターを、石こうに水和反応を生じさせる際に添加したときの、硬化時間の変化を示す線図である。
【図18】本発明の第2の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材に用いる遅延剤としてのクエン酸を、石こうに水和反応を生じさせる際に添加したときの、硬化時間の変化を示す線図である。
【図19】第2の従来技術に係る土質安定処理土に関連して、石こうと水とを混合して作製したペーストに酸化マグネシウムを添加し固化させたものについて、当初の体積に対する一定期間浸水後の体積減少率を、酸化マグネシウムの混合率ごとに示すようにした表である。
【図20】図19に示す表についての線図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築構造物とその周辺地盤との間の空間や地下空洞等への埋め戻し、又は裏込め等に用いる土の、土質を安定させるために用いる石こう系土質安定処理材、及び土質を安定させて製造するようにする土質安定処理土の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来においては、土質安定処理に用いる硬化材には、主としてセメントや石灰といった水硬性の硬化材が用いられていた。このような硬化材を用いて製造した土質安定処理土は、強アルカリ性を示すようになると共に、硬化材に六価クロムなどの有害物質が微量ながらも含まれていることから、一度打設した後に再掘削する場合などには再利用することができないので、産業廃棄物として廃棄しなければならないことが多かった。
【0003】
また、従来においては、土質安定処理の際のアルカリ化を防止するために、中性を示す石こうを主成分とする硬化材の開発が進められてきた。このような石こう系の硬化材は、その速硬性の点においても着目されており、軟弱土や泥土といった高含水比で液状をなす土のハンドリング性向上を目的とする土質の改良に用いられてきた(第1の従来技術)。
【0004】
また、石こう系の硬化材を用いて製造した土質安定処理土は、その硬化材の主成分である石こうのカルシウム(Ca)分が雨水や地下水に溶解することにより、再泥化してしまうことが懸念されていたが、硬化材中に、例えば、高分子剤を加えたり、又は特許文献1及び2に記載されているように、高炉スラグ、フライアッシュ(石炭灰)、又は酸化マグネシウム(MgO)等のアルカリ系の水硬性助剤などを加えたりすることにより、この硬化材中における石こうのカルシウム(Ca)分の溶解を抑制するようにした土質安定処理土があった(第2の従来技術)。
【0005】
ここで、この第2の従来技術に係る土質安定処理土においては、上述したように、この土質安定処理土を製造するのに用いる石こう系硬化材中に、高分子剤や水硬性助剤を加えることによりカルシウム分の溶解を抑制するようになっているが、これら高分子剤や水硬性助剤は、石こう成分との間で化学反応を生じることにより新たな化合物を生成しているというわけではなく、また、石こう成分の性状をそのカルシウム分の溶解度が低下するように変化させているというわけでもない。
【0006】
すなわち、これら高分子剤や水硬性助剤は、自身の溶解度が石こうよりも小さくなっていることにより、溶媒である水に溶けたときに、石こうが溶けるときよりも水を飽和状態に大きく近づけるように作用するので、これにより、この高分子剤や水硬性助剤が添加された石こう系硬化材の全体の溶解度を低下させるように作用しているだけに過ぎない。
【0007】
例えば、水硬性助剤としての酸化マグネシウム(MgO)は、水との化学反応により水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)を生じるが、この水酸化マグネシウムは、その水への溶解度が0.0012g/100gであることにより、水への溶解度が0.208g/100gである石こうを含む、石こう系硬化材の全体の溶解度を低下させるように作用している。これにより、酸化マグネシウム(MgO)は、石こう系硬化材中における石こうのカルシウム分の溶解を抑制するようになっている。
【特許文献1】特開2003−251321号公報
【特許文献2】特開2004−278133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記したような第1及び第2の従来技術に係る土質安定処理土は、粘性土地盤中に打設した後において、周辺地盤に比べて透水性が高いことにより、雨水や地下水がこの土質安定処理土内を集中的に流れるようになるので、再泥化を招くことになってしまうという問題があった。
【0009】
すなわち、上記したような第1及び第2の従来技術に係る土質安定処理土を製造するのに用いる、石こう系硬化材の主成分の半水石こう(CaSO4・1/2H2O)は、水との水和反応の結果、短時間でポーラス(porous)状の二水石こう(CaSO4・2H2O)の結晶構造を形成する。この二水石こうは、その透水係数が1×10−3〜1×10−4cm/s程度であって、土質安定処理の対象となる土よりも比較的高い透水性を有している。このため、石こう系硬化材を混合した土質安定処理土は、発生土を再利用する場合、周辺地盤よりも透水性が高くなる。
【0010】
ここで、石こうは、水との間で水和反応を生じる前の粉末状態と、水和反応を生じた後の固化した状態とを特に区別する必要がある場合には、上述したような水和反応前の「半水石こう(CaSO4・1/2H2O)」という呼び方と、水和反応後の「二水石こう(CaSO4・2H2O)」という呼び方により区別することができるが、本明細書においては、呼び分ける必要がない場合や、いずれの状態であるかが明確であるような場合には、特に呼び分けないこととする。
【0011】
例えば、粘性土に対して石こう系硬化材を混合することにより安定処理を施した土質安定処理土は、この石こう系硬化材を混合する前の状態の粘性土において透水係数が1×10−6〜1×10−7cm/s程度であったのに対して、透水係数が1×10−5cm/s程度にまで上昇する。
【0012】
したがって、このような石こう系硬化材を混合した土質安定処理土は、粘性土地盤中に打設すると、周辺地盤に比べて透水性が高くなることにより、雨水や地下水がこの土質安定処理土内を集中的に流れるようになってしまうという問題があった。
【0013】
このため、石こう系硬化材を混合した土質安定処理土は、このような高い透水性が原因となって、この土質安定処理土内を流れる多量の雨水や地下水に曝されるようになることにより、その石こう系硬化材の主成分である石こうのカルシウム分が、この土質安定処理土内を流れる多量の雨水や地下水に溶解し流出していくようになるので、最終的に、この土質安定処理土の再泥化を招くようになってしまうという問題があった。
【0014】
また、特に、上記した第2の従来技術に係る土質安定処理土においては、上述したように、この土質安定処理土を製造するのに用いる石こう系硬化材中に、高分子剤や水硬性助剤を加えることにより、その硬化結晶の難溶解性を利用してカルシウム分の溶解を抑制するようになっていたが、これらの助剤が少なからず水に溶解してしまうため、このような高分子剤や水硬性助剤によるカルシウム分の溶解の十分な抑制を維持しようとするならば、土質安定処理土は、この高分子剤または水硬性助剤を大量に含有した状態を維持し続けなければならないことになるのに、実際にはこのような状態を維持し続けていくことができないという問題があった。
【0015】
例えば、図19の表は、石こうと水とを混合して作製したペーストに、水硬性助剤としての酸化マグネシウムを添加し、固化させた後に、これを静水中に28日間だけ浸すことにより、その当初の体積に対する体積減少率を検証したものであって、石こうと酸化マグネシウムの総量に対する酸化マグネシウムの異なる比率ごとに検証したものである。また、図20は、これを線図化したものである。
【0016】
固化したペーストは静水中に浸されると、その石こうのカルシウム分と、酸化マグネシウムが溶解することにより、その分だけ体積が減少するようになる。酸化マグネシウムが水に溶解して生成される水酸化マグネシウムは、その溶解度が石こうよりも小さいので、ペースト中に混合される酸化マグネシウムの量を多くした場合には、溶解する石こうの量が少なくても溶液が飽和状態に達するようになるが、酸化マグネシウムの量を少なくした場合には、飽和状態に達するまでに溶解する石こうの量が多くなってしまう。
【0017】
図19及び図20に示す検証結果によると、酸化マグネシウムの混合量を33%にした場合には、その1日当たりの体積減少率が−0.368%であることから、計算上、約271日で−100%に達して体積全体を失ってしまうことになる。また、酸化マグネシウムの混合量を44%にした場合であっても、その1日当たりの体積減少率が−0.063%であることから、1年(365日)後には、計算上、約23%の体積を失ってしまうということになる。
【0018】
このような結果からは、酸化マグネシウムは、この酸化マグネシウムと石こうとを足し合わせた総量の50%を超えるように土質安定処理土中に含有されていなければ、カルシウム分の溶解を抑制する水硬性助剤としての機能を、十分に発揮することができないということになる。
【0019】
一方、土質安定処理土中の酸化マグネシウムは、土質安定処理土内を通る多量の雨水や地下水に曝されると溶解した分が徐々に流出していってしまうので、これにより、その水硬性助剤としての機能が十分に発揮されなくなっていくと、これに伴って石こうのカルシウム分の溶解する量が雪崩式に増大していき、結局、このカルシウム分が土質安定処理土内を通っていく雨水や地下水と一緒に流出していってしまうことになる。このようなことは、酸化マグネシウム以外の他の水硬性助剤や高分子剤を用いた場合でも、同様の傾向にあることが分かっている。すなわち、溶解度が小さい助剤が、溶解してしまうと、もはやカルシウム分の溶解を防止することができないのである。
【0020】
したがって、上記した第2の従来技術に係る土質安定処理土においては、高分子剤や水硬性助剤を用いるようになっていたが、この高分子剤や水硬性助剤が多量の雨水や地下水に曝されることにより溶解して流出していくと、結局、これに伴ってカルシウム分の溶解する量が雪崩式に増大し、このカルシウム分が土質安定処理土内を通っていく雨水や地下水と一緒に流出していくことになるので、最終的に、土質安定処理土の再泥化を招くようになってしまうという問題があった。
【0021】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みて、物理的作用により土質安定処理土の透水性を低下させて、長期的にカルシウム分の拡散を抑制し再泥化を防止することができる石こう系土質安定処理材、及び透水性を低下させ再泥化を防止した土質安定処理土を製造することができる土質安定処理土の製造方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題を解決するために、本発明による石こう系土質安定処理材は、主成分が半水石こうで構成される硬化材と、粉体状の乾燥粘土とを含有することを特徴とするものである。
【0023】
また、本発明による石こう系土質安定処理材は、前記乾燥粘土がベントナイトであることを特徴とするものである。
【0024】
また、本発明による石こう系土質安定処理材は、前記ベントナイトが前記硬化材に対する重量比として20%以上含有されることを特徴とするものである。
【0025】
また、本発明による石こう系土質安定処理材は、前記ベントナイトが前記硬化材に対する重量比として40%から100%含有されることを特徴とするものである。
【0026】
また、本発明による石こう系土質安定処理材は、前記乾燥粘土が、ベントナイトとベントナイト以外の他のスメクタイト族の粘土とを組合せたものであることを特徴とするものである。
【0027】
また、本発明による石こう系土質安定処理材は、前記硬化材の硬化速度を減速させる遅延剤を含有することを特徴とするものである。
【0028】
また、上記課題を解決するために、本発明による土質安定処理土の製造方法は、主成分が半水石こうで構成される硬化材と粉体状の乾燥粘土とを含有する石こう系土質安定処理材と、水とを、被処理土に混合撹拌して製造することを特徴とするものである。
【0029】
また、上記課題を解決するために、本発明による土質安定処理土の製造方法は、
主成分が半水石こうで構成される硬化材と、粉体状の乾燥粘土と、水とを混合撹拌することによりスラリー状の石こう系土質安定処理材を作製し、
前記スラリー状の石こう系土質安定処理材を被処理土に混合撹拌して製造することを特徴とするものである。
【0030】
また、上記課題を解決するために、本発明による土質安定処理土の製造方法は、主成分が半水石こうで構成される硬化材と、粉体状の乾燥粘土と、水とを被処理土に混合撹拌して製造することを特徴とするものである。
【0031】
また、上記課題を解決するために、本発明による土質安定処理土の製造方法は、
被処理土が粗粒土であって、
前記被処理土に、主成分が半水石こうで構成される硬化材と粉体状の乾燥粘土とを混合撹拌して途中安定処理土を作製し、
前記途中安定処理土の打設後に、この途中安定処理土に水を供給して硬化させることを特徴とするものである。
【0032】
また、本発明による土質安定処理土の製造方法は、前記乾燥粘土がベントナイトであることを特徴とするものである。
【0033】
また、本発明による土質安定処理土の製造方法は、前記ベントナイトの量が前記硬化材に対する重量比として20%以上であることを特徴とするものである。
なお、ベントナイトの含有量は、周辺地盤の透水性に応じて、適宜、選択する。
【0034】
また、本発明による土質安定処理土の製造方法は、前記ベントナイトの量が前記硬化材に対する重量比として40%から100%であることを特徴とするものである。
なお、ベントナイトの含有量は、周辺地盤の透水性に応じて、適宜、選択する。
【0035】
また、本発明による土質安定処理土の製造方法は、前記乾燥粘土が、ベントナイトとベントナイト以外の他のスメクタイト族の粘土とを組合せたものであることを特徴とするものである。
なお、ベントナイトとベントナイト以外の他のスメクタイト族の粘土のそれぞれの含有量は、周辺地盤の透水性に応じて、適宜、選択するようにし、また、ベントナイトとベントナイト以外の他のスメクタイト族の粘土との配合比率は、ほぼ中性(pH≒7)になるものであれば良い。
【0036】
また、本発明による土質安定処理土の製造方法は、前記硬化材の硬化速度を減速させる遅延剤を土質安定処理土に含有させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0037】
このような本発明の石こう系土質安定処理材によれば、
主成分が半水石こうで構成される硬化材と、粉体状の乾燥粘土とを含有することにより、
上記石こう系土質安定処理材を用いて製造した土質安定処理土について、その透水性を低下させて再泥化を防止することができる。
さらに、土質安定処理土の表面が溶解する状況になったとしても、溶解した粘土が周辺地盤との接触面に皮膜を形成し、溶解したカルシウム(Ca)分が、この粘土の皮膜に吸着され、外部拡散が抑制されることで、確実に再泥化を防止できる。
【0038】
また、本発明の石こう系土質安定処理材によれば、
前記乾燥粘土がベントナイトであることにより、
この石こう系土質安定処理材を用いて製造した土質安定処理土の透水性の低下量を増大させることができるので、土質安定処理土の再泥化を確実に防止することができる。
【0039】
また、本発明の石こう系土質安定処理材によれば、
前記ベントナイトが前記硬化材に対する重量比として20%以上含有されることにより、
上記ベントナイトの含有量を、周辺地盤の透水性に応じて、適宜、選択することで、
さらに確実に、前記土質安定処理土の透水性を低下させ、この土質安定処理土の再泥化を防止することができる。
【0040】
また、本発明の石こう系土質安定処理材によれば、
前記ベントナイトが前記硬化材に対する重量比として40%から100%含有されることにより、
上記ベントナイトの含有量を、周辺地盤の透水性に応じて、適宜、選択することで、
さらに確実に、前記土質安定処理土の透水性を低下させ、この土質安定処理土の再泥化を防止することができる。
【0041】
また、本発明の石こう系土質安定処理材によれば、
前記乾燥粘土が、ベントナイトとベントナイト以外の他のスメクタイト族の粘土とを組合せたものであることにより、
土質安定処理材を中性にすることができ、
さらに確実に、前記土質安定処理土の透水性を低下させ、この土質安定処理土の再泥化を防止することができる。
【0042】
また、本発明の石こう系土質安定処理材によれば、
前記硬化材の硬化速度を減速させる遅延剤を含有することにより、
前記遅延剤が前記土質安定処理土の硬化を遅延させるように作用するので、この遅延剤の量を調整することにより硬化速度を制御することができる。
【0043】
また、本発明の土質安定処理土の製造方法によれば、
主成分が半水石こうで構成される硬化材と粉体状の乾燥粘土とを含有する石こう系土質安定処理材と、水とを、被処理土に混合撹拌して製造することにより、
硬化までの材料分離を防止し、
透水性を低下させ再泥化を防止した土質安定処理土を製造することができる。
【0044】
また、本発明の土質安定処理土の製造方法によれば、
主成分が半水石こうで構成される硬化材と、粉体状の乾燥粘土と、水とを混合撹拌することによりスラリー状の石こう系土質安定処理材を作製し、
前記スラリー状の石こう系土質安定処理材を被処理土に混合撹拌して製造することにより、
硬化までの材料分離を防止し、
透水性を低下させ再泥化を防止した土質安定処理土を製造することができる。
【0045】
また、本発明の土質安定処理土の製造方法によれば、
主成分が半水石こうで構成される硬化材と、粉体状の乾燥粘土と、水とを被処理土に混合撹拌して製造することにより、
硬化までの材料分離を防止し、
透水性を低下させ再泥化を防止した土質安定処理土を製造することができる。
【0046】
また、本発明の土質安定処理土の製造方法によれば、
被処理土が粗粒土であって、
前記被処理土に、主成分が半水石こうで構成される硬化材と粉体状の乾燥粘土とを混合撹拌して途中安定処理土を作製し、
前記途中安定処理土の打設後に、この途中安定処理土に水を供給して硬化させることにより、
長時間の運搬を可能にし、短時間での硬化もできるから、短時間で施工しなければならない即日復旧に適し、
透水性を低下させ再泥化を防止した土質安定処理土を製造することができる。
【0047】
また、本発明の土質安定処理土の製造方法によれば、
前記乾燥粘土がベントナイトであることにより、
この製造方法で製造した土質安定処理土の透水性の低下量を増大させることができるので、土質安定処理土の再泥化を確実に防止することができる。
【0048】
また、本発明の土質安定処理土の製造方法によれば、
前記ベントナイトの量が前記硬化材に対する重量比として20%以上であることにより、
上記ベントナイトの含有量を、周辺地盤の透水性に応じて、適宜、選択することで、
さらに確実に、前記土質安定処理土の透水性を低下させ、この土質安定処理土の再泥化を防止することができる。
【0049】
また、本発明の土質安定処理土の製造方法によれば、
前記ベントナイトの量が前記硬化材に対する重量比として40%から100%であることにより、
上記ベントナイトの含有量を、周辺地盤の透水性に応じて、適宜、選択することで、
さらに確実に、前記土質安定処理土の透水性を低下させ、この土質安定処理土の再泥化を防止することができる。
【0050】
また、本発明の土質安定処理土の製造方法によれば、
前記乾燥粘土が、ベントナイトとベントナイト以外の他のスメクタイト族の粘土とを組合せたものであることにより、
安定処理材を中性にすることができ、
さらに確実に、前記土質安定処理土の透水性を低下させ、この土質安定処理土の再泥化を防止することができる。
【0051】
また、本発明の土質安定処理土の製造方法によれば、
前記硬化材の硬化速度を減速させる遅延剤を土質安定処理土に含有させることにより、
前記遅延剤が前記土質安定処理土の硬化を遅延させるように作用するので、この遅延剤の量を調整することにより硬化速度を制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
以下、本発明に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法を実施するための最良の形態について、図面に基づいて具体的に説明する。
図1から図15は、本発明の第1の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法について説明するために参照する図である。
【0053】
本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材は、硬化材としての半水石こう(CaSO4・1/2H2O)と、粉体状の乾燥粘土とを混合して作製することとし、このような乾燥粘土としてベントナイトを用いるようにする。
【0054】
また、本実施の形態に係る土質安定処理土の製造方法では、このような石こう系土質安定処理材を用いるようにする。すなわち、この石こう系土質安定処理材と水とが被処理土に混合撹拌されるようにすることにより、土質安定処理土を製造するようにする。
【0055】
ここで、石こう系土質安定処理材の原料となるベントナイトは、モンモリロナイトを主成分とする粘土である。このベントナイトは、その5〜10倍の量の水を吸収する能力があり、水を吸収させ膨潤させることにより、増粘し、透水係数が小さくなる性質を有している。
【0056】
本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法は、これにより製造し打設した土質安定処理土が、その後において固化したときに、その膨潤したベントナイトが非透水性の機能を発揮するようになることを利用するものである。
【0057】
また、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法は、そのベントナイトが膨潤して粘性を発揮するまでに時間を要することに着目して、このような粘性の機能が発揮される前に土質安定処理土の打設作業を済ませることができるようにすることにより、ベントナイトの粘性が、打設時などに必要となる土質安定処理土の流動性等を阻害しないようにするものである。
【0058】
また、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法は、上述したように、これにより製造し打設した土質安定処理土の膨潤したベントナイトに、非透水性の機能を発揮させるようにするものであるから、この土質安定処理土内を通る水の量を減少させるようになるので、これにより、この土質安定処理土に含有される石こう成分に接触する水の量を減少させるようにするものである。
【0059】
また、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法は、上述したように、これにより製造し打設した土質安定処理土の内部を通っていく水の量を減少させ、この土質安定処理土の石こう成分に接触する水の量を減少させるようにするものであるから、この土質安定処理土が既に含有している水については、この土質安定処理土の内部に滞留させるように作用するので、このような滞留した水に石こう成分等が溶解して飽和状態になった後には、このような飽和状態を維持し、それ以上の石こう成分が溶解しないように作用するため、石こうの見掛け上の溶解度を低下させるようにするものである。
【0060】
したがって、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法は、これにより製造し打設した土質安定処理土について着目してみると共に、さらに上記した「背景技術」の欄の第2の従来技術と比較してみることとすると、上記第2の従来技術に係る土質安定処理土は、その高分子剤や水硬性助剤が、石こう系硬化材の全体の溶解度を低下させ、これに含まれる石こうの見掛け上の溶解度を低下させるだけに止まっているのに対して、本実施の形態における土質安定処理土は、その石こうの見掛け上の溶解度を低下させるだけでなく、さらに土質安定処理土の石こう成分に接触する水の量を減少させることにより、その流出を防止するようになっているので、より効果的に石こうが溶解する量を低減させるようになっているものである。
【0061】
また、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法は、上述したとおり、この石こう系土質安定処理材に乾燥粘土であるベントナイトを含有させるようにするものであるが、これにより土質安定処理土の強度を向上させるという本来的な機能を損なうことが無いようになっているものである。
【0062】
また、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法は、特に、この石こう系土質安定処理材に混合する乾燥粘土としてベントナイトを用いるようになっていることにより、水中に溶解した石こうのカルシウムイオンが、このベントナイトの膨潤を抑制し増粘速度を減速させるように作用するので、土質安定処理土における打設等の際に必要な流動性を低下させることなく、ベントナイトの混合量を増やすことができるようにしているものである。
【0063】
これにより、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法は、そのベントナイトが発揮する非透水性の機能を、このベントナイトの混合量を増分することにより向上させるようにするものである。
【0064】
次に、本実施の形態に係る土質安定処理土の製造方法の融通性について説明する。
【0065】
本実施の形態に係る土質安定処理土の製造方法は、上述したように、石こうと粉体状のベントナイトとを含有する石こう系土質安定処理材と水とを、被処理土に混合撹拌することにより、土質安定処理土が製造されるようにするものである。このような土質安定処理土を製造する際の手順は、融通が利くものであり、概略的なものとしても何通りかを考えることができる。
【0066】
すなわち、本実施の形態に係る土質安定処理土の製造方法としての、第1例としては、図1に示すように、最初に石こうと粉体状のベントナイトとを混合撹拌することにより石こう系土質安定処理材を作製した後に、この石こう系土質安定処理材と水のそれぞれを被処理土に混合撹拌して土質安定処理土を製造するようにする手順が考えられる。
【0067】
このように製造された土質安定処理土は、その石こう成分が固化したりベントナイト成分が粘性を発揮したりすることにより流動性を失う前に、施工現場まで運搬し、打設するようにする。打設後の土質安定処理土は、その後において固化することにより、強度を発揮するようになると共に、非透水性の機能をも発揮するようになる。
【0068】
また、本実施の形態に係る土質安定処理土の製造方法としての、第2例としては、図2に示すように、最初に石こうと粉体状のベントナイトとを混合撹拌することにより石こう系土質安定処理材を作製してから、この石こう系土質安定処理材に水を混合することによりスラリー状(泥漿状)にした後、このようなスラリー状の石こう系土質安定処理材を被処理土に混合撹拌して土質安定処理土を製造するようにする手順が考えられる。
【0069】
また、本実施の形態に係る土質安定処理土の製造方法としての、第3例としては、図3に示すように、石こうと粉体状のベントナイトと水とをほぼ同時にまとめて混合撹拌することによりスラリー状の石こう系土質安定処理材を作製した後、このようなスラリー状の石こう系土質安定処理材を被処理土に混合撹拌して土質安定処理土を製造するようにする手順が考えられる。
【0070】
また、本実施の形態に係る土質安定処理土の製造方法としての、第4例としては、図4に示すように、最初に石こうと粉体状のベントナイトとを混合撹拌することにより石こう系土質安定処理材を作製してから、この石こう系土質安定処理材を被処理土に混合撹拌することにより途中安定処理土を作製し、このような途中安定処理土を施工現場において打設した後、水を供給して硬化を開始させることにより、打設した状態で土質安定処理土として完成させるようにする手順が考えられる。
【0071】
また、本実施の形態に係る土質安定処理土の製造方法としての、第5例としては、図5に示すように、石こうと粉体状のベントナイトと水のそれぞれを、ほぼ同時にまとめて被処理土に混合撹拌することにより、土質安定処理土を製造するようにする手順が考えられる。
【0072】
また、本実施の形態に係る土質安定処理土の製造方法としての、第6例としては、図6に示すように、最初に石こうと粉体状のベントナイトのそれぞれをほぼ同時に被処理土に混合撹拌することにより途中安定処理土を作製し、このような途中安定処理土を施工現場において打設した後、水を供給して硬化を開始させることにより、打設した状態で土質安定処理土として完成させるようにする手順が考えられる。
【0073】
上述したように、本実施の形態に係る土質安定処理土の製造方法は、その手順に融通性を備えているため、これに伴って、このような土質安定処理土の製造方法に用いる石こう系土質安定処理材、すなわち、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材は、その実質的な概念を以下のように考えることができる。
【0074】
すなわち、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材は、上述したとおり、石こうとベントナイトを混合して作製するものであるが、この石こう系土質安定処理材の概念の中には、石こうとベントナイトと水とを混合してスラリー状(泥漿状)に作製したものを含めて考えることができる(図2,3参照)。このようなスラリー状の石こう系土質安定処理材は、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材を用いて土質安定処理土を製造する際に必要となる水を、手順を変えて加えたに過ぎないものだからである。
【0075】
また、このように作製するスラリー状の石こう系土質安定処理材は、最初に石こうとベントナイトとを混合することにより本来の石こう系土質安定処理材を作製した後に、これに水を混合することによりスラリー状に作製することとしても良いし(図2参照)、或いは、石こうとベントナイトと水とを最初から一緒に混合することにより、当初から石こう系土質安定処理材がスラリー状に作製されるようにすることとしてもよい(図3参照)。
【0076】
また、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材の概念の中には、石こうとベントナイトの組み合わせであって、これらを互いに混合することなくほぼ同時に被処理土に直接投入することにより、この被処理土と一緒に混合して用いるようにするものも含まれるものとして考えることができる(図5,6参照)。石こうとベントナイトをこのように用いる場合には、実質的に、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材を用いることと変わらないからである。
【0077】
また、このように石こうとベントナイトのそれぞれが、ほぼ同時に被処理土に直接投入して混合されるようにする場合には、これら石こうとベントナイトと一緒に水が同時に混合されるようになっていても良いし(図5参照)、或いは、これら石こうとベントナイトとを混合する段階とは異なる段階において水が混合されるようになっていても良い(図6参照)。
【0078】
次に、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材を用いて製造した土質安定処理土、すなわち、本実施の形態に係る土質安定処理土の製造方法により製造した土質安定処理土が、その透水性の低下により、再泥化を防止することができるようになっていることを検証した結果について説明する。
【0079】
図7は、石こうとベントナイトと水とを混合してスラリー状(泥漿状)に作製した石こう系土質安定処理材を固化させたものを、静水中に14日又は28日の期間だけ浸しておくことにより、このような固化物における当初の重量に対する14日又は28日の期間経過後の重量の比を、石こうとベントナイトの異なる配合比率ごとに示すようにした表である。
【0080】
石こう50gに対してベントナイトを0〜60gだけ混合して作製した石こう系土質安定処理材の固化物のそれぞれについて着目すると、14日経過したものよりも28日経過したものの方が軽くなっているので、水との接触時間が長いほど、その石こうのカルシウム分が多く流出して軽くなっていくことが分かる。
【0081】
また、このような石こう系土質安定処理材は、そのベントナイトの配合量が多いほどカルシウム分の流出が抑制されるようになることがわかる。石こう50gに対してベントナイトを80g混合して作製した石こう系土質安定処理材に至っては、そのカルシウム分の流出をほぼ完全に防げるようになっていることが分かる。
【0082】
次に、図8は、石こうとベントナイトと水とを混合してスラリー状に作製した石こう系土質安定処理材を固化させたものについて、その透水係数を、石こうとベントナイトの異なる配合比率ごとに示すようにした表である。また、図9は、これを線図化したものである。これら図8及び図9に示すように、石こう系土質安定処理材は、そのベントナイトの配合量が多いほど透水性が低くなっていくことが分かる。
【0083】
次に、図10は、石こうとベントナイトと水とを混合してスラリー状に作製した石こう系土質安定処理材について、そのフロー値を、石こうとベントナイトの異なる配合比率ごとに示すようにした表である。また、図11は、これを線図化したものである。
【0084】
ここで、フロー値とは、旧日本道路公団規格(シリンダー法 JHS A−313)を準用するものであり、内径80mm、高さ80mmであって、両端面が開放された筒体を板上に載置して、この筒体内にスラリー状の測定物を充填した後に、筒体を静かに上方に引上げることにより板上に広がった測定物について、その最大の径の長さと、この最大の径の方向と直角方向の径の長さとを測定し、両者を平均して求めた数値をいう。このフロー値は、流動性の指標となるものであり、その数値が大きいほど、測定物が流動性を有していることを表す。
【0085】
また、図10の表中におけるフロー値の欄の中の、「膨潤」と記載されている欄の数値は、ベントナイトを最初に水と混合して膨潤させてから石こうと混合することにより作製したペーストのフロー値を指す。このように作製したペーストは、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材に該当するものではなく、単に、石こう系土質安定処理材との比較対象になるだけのものである。
【0086】
また、図10の表中におけるフロー値の欄の中の、「粉体」と記載されている欄の数値は(図11中においては「未膨潤」と表記)、石こうと粉体状のベントナイトと水とを同時に混合して作製した、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材のフロー値を指すものである。
【0087】
図10及び図11に示すように、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材は、ベントナイトを膨潤させて作製したペーストよりも、その流動性が優れていて粘性が低くなっていることが分かる。
【0088】
次に、図12は、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材を用いて、その湿潤密度が1.8g/cm3となるように製造した土質安定処理土について、そのフロー値を、石こうとベントナイトの異なる配合比率ごとに示すようにした表である。
【0089】
ここで、土質安定処理土の原料となる被処理土としては、粗粒土に分類される砂を用いるようにした。また、表中におけるフロー値の欄の記載方式は、図10の表の記載方式とほぼ同様であって、「膨潤」と記載されている欄の数値が、石こうと予め膨潤させたベントナイトとを混合して作製したペーストを砂に混合したもののフロー値を指し、「粉体」と記載されている欄の数値が、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材を砂に混合することにより作製した土質安定処理土のフロー値を指す。
【0090】
図12に示すように、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材を用いて製造した土質安定処理土は、ベントナイトを膨潤させて作製したペーストを砂に混合したものよりも、その流動性が優れていて粘性が低くなっていることが分かる。
【0091】
また、図12に示す結果によると、例えば、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材を用いて土質安定処理土を製造する際に、そのフロー値を175mm程度に設定する場合には、このようなフロー値に対応するベントナイトの配合量が石こう50gに対し40gであるのに対して、ベントナイトを予め膨潤させて作製したペーストを被処理土に混合したものは、そのフロー値を175mmの近傍の178mmにするときのベントナイトの配合量が20gになっていることから、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材を用いて製造する土質安定処理土は、約2倍のベントナイトを含有させることができるようになっていることが分かる。
【0092】
次に、図13は、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材を用いて製造した土質安定処理土の品質を示すものである。この土質安定処理土は、同図中に示すように、その石こう系土質安定処理材におけるベントナイトと石こうの配合比率が156/260=0.6に設定されると共に、水と石こうの配合比率が520/260=2に設定されているものである。これにより、この土質安定処理土は、その透水係数が3.40×10−6cm/sにまで低減されている。
【0093】
一方、図8に示すように、石こう50gとベントナイト30gと水100gを混合して作製した石こう系土質安定処理材は、図13に示す土質安定処理土を製造するのに用いた石こう系土質安定処理材と比較すると分かるように、そのベントナイトと石こうの配合比率(30/50=0.6)、及び水と石こうの配合比率(100/50=2)のそれぞれが互いに等しくなるように作製されているものである。この石こう系土質安定処理材は、その透水係数が、図13に示す土質安定処理土の透水係数に非常に近い数値である3.31×10−6cm/sになっている。
【0094】
これにより、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材を用いて製造した土質安定処理土の透水性は、この石こう系土質安定処理材の透水性に基づいてほぼ定まるようになっていることが分かる。
【0095】
次に、図14は、石こうと水とを混合して作製したペーストについて、その一軸圧縮強さを、異なる水と石こうの配合比率ごとに示すようにした表である。また、図15は、このようなペーストにおける水と石こうとの配合比率と、このペーストを砂に混合したものが発揮する一軸圧縮強さとの間の相関を表すようにした線図である。
【0096】
これら図14及び図15に示すように、石こうと水とを混合して作製したペーストは、その一軸圧縮強さが、水と石こうとの配合比率に依存しており、このようなペーストを砂と混合し、その湿潤密度が異なるようにした場合であっても、その一軸圧縮強さがほとんど変化しないようになっていることが分かる。
【0097】
したがって、このような結果からは、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材を用いて製造した土質安定処理土は、その一軸圧縮強さが、石こう系土質安定処理材における水と石こうとの配合比率に依存するようになっていることが分かる。
【0098】
これにより、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材を用いて製造した土質安定処理土は、その強度が被処理土の土質には依存しないということが分かると共に、石こう系土質安定処理材に含有させるベントナイトが、この石こう系土質安定処理材による土質安定処理土の強度向上の機能を損なわせるようには作用しないということが分かる。
【0099】
次に、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材を作製するのに必要となる石こうとベントナイトのそれぞれの混合量の求め方について説明する。
【0100】
石こう系土質安定処理材を作製するのに必要となる石こうとベントナイトのそれぞれの量を求めるには、まず、この石こう系土質安定処理材を用いて製造する土質安定処理土が、その打設時に十分な流動性を有するようになるのに必要な水の量を求め、この水の量と土質安定処理土に要求される強度(一軸圧縮強さ)とから、図14に基づいて石こうの量を求めるようにする。そして、この石こうの量に対するベントナイトの量は、土質安定処理土に要求される非透水性を勘案して、図8及び図9から求めるようにする。
【0101】
また、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材を用いて土質安定処理土を製造する際の手順として、石こう系土質安定処理材を被処理土に混合撹拌することにより途中安定処理土を作製し、この途中安定処理土を打設してから水を供給して硬化させるようにする場合、すなわち、被処理土が最終的に打設後に土質安定処理土として完成されるようにする場合には、このような完成後の土質安定処理土における被処理土の土粒子間の間隙部分の総和が、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材の体積総量、すなわち、石こうとベントナイトと水との混合物の体積総量に相当するもとして考えれば良い。
【0102】
したがって、このような完成後の土質安定処理土における被処理土の土粒子間の間隙部分の総体積に対して、石こう系土質安定処理材を作製するのに必要な石こうとベントナイトと打設後に供給する水との間の質量比から換算して求めた、これらの体積比を乗じるようにすれば、これら石こうとベントナイトと水のそれぞれの混合量をその体積の量として求めることができる。
【0103】
さらに、このような石こうとベントナイトと水のそれぞれの混合量の体積に対して、それぞれの密度を乗じるようにすれば、これらのそれぞれの混合量をその質量として求めることができる。
【0104】
例えば、完成後の土質安定処理土の強度(一軸圧縮強さ)を400kN/m2に設定する場合には、図14の表により、水と石こうの間の質量比(水/石こう)を約2にすれば良いことが分かり、さらに、ベントナイトと石こうの間の質量比(ベントナイト/石こう)を0.8にすることとすれば、結局、石こうとベントナイトと水との間の質量比は、1:0.8:2になることが分かる。
【0105】
また、このような石こうとベントナイトと水との間の質量比の値のそれぞれを、その密度で除することにより体積比を求め、これを製造する土質安定処理土における被処理土の土粒子間の間隙部分の総体積に乗じれば、石こうとベントナイトと水のそれぞれの混合量をその体積の量として求めることができる。また、これら石こうとベントナイトと水のそれぞれの体積の量に対し、その密度を乗じれば、これらのそれぞれの混合量をその質量として求めることができる。
【0106】
このような第1の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材によれば、この石こう系土質安定処理材を用いて製造する土質安定処理土について、その透水性を低下させて再泥化を防止することができる。
【0107】
また、第1の実施の形態に係る土質安定処理土の製造方法によれば、透水性を低下させ再泥化を防止した土質安定処理土を製造することができる。
【0108】
また、第1の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法によれば、この石こう系土質安定処理材に含有される乾燥粘土としてベントナイトを用いるようになっていることにより、この石こう系土質安定処理材を用いて製造した土質安定処理土の透水性の低下量を増大させることができるので、確実に土質安定処理土の再泥化を防止することができる。
【0109】
また、第1の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法によれば、図9に示すように、特に、この石こう系土質安定処理材の中におけるベントナイトの成分を、石こうに対する重量比として20%以上含有させるようにした場合に、透水性の低下が顕著に現れてくるようになるので、再泥化抑制としての助剤を含有している石こう系土質安定処理材であれば、このような配合比率にする場合には、確実に土質安定処理土の透水性を低下させ、この土質安定処理土の再泥化を防止することができる。
【0110】
また、第1の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法によれば、特に、この石こう系土質安定処理材の中におけるベントナイトの成分を、石こうに対する重量比として40%から100%含有させるようにした場合に、その透水性を、従来技術では達成することができなかった程度にまで低下させるようにすることができるので、このような配合比率にする場合には、やはり、確実に土質安定処理土の透水性を低下させ、この土質安定処理土の再泥化を防止することができる。
【0111】
すなわち、上記した「背景技術」の欄の特許文献2に記載されているように、石こう系の硬化材に酸化マグネシウムを添加する場合であって、この酸化マグネシウムの石こうに対する配合比率を実用上の範囲内で調整する場合には、このような石こう系の硬化材を用いた土質安定処理土の透水係数は、せいぜい2×10−5cm/s程度にしかならないが、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材において、そのベントナイトの成分を、石こうに対する重量比として40%から100%含有させるようにした場合には、図9に示すように、その透水係数を2×10−5cm/sよりも小さくすることができる。
【0112】
したがって、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法によれば、特に、この石こう系土質安定処理材の中におけるベントナイトの成分を、石こうに対する重量比として40%から100%含有させるようにした場合には、従来技術以上に、確実に土質安定処理土の透水性を低下させ、この土質安定処理土の再泥化を防止することができる。
【0113】
また、第1の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法によれば、特に、この石こう系土質安定処理材に用いる粉体状のベントナイトを被処理土に直接混合せず、最初に石こうと混合してから被処理土に投入するようにした場合には、ベントナイトが少量であっても石こうが増量剤の役割を果たすようになることにより、ベントナイトの成分が被処理土に対して均一に混合されるようになるので、土質安定処理土の再泥化の防止の確実性を顕著に向上させることができる。
【0114】
すなわち、上記した「背景技術」の欄の、第2の従来技術に係る土質安定処理土においては、上述したように、その石こう系硬化材中に高分子剤や水硬性助剤が加えられていたが、これら高分子剤や水硬性助剤の含有量は、実際には、石こうの長所である速硬性を損なわないようにするために少量に抑えられるので、このような少量の高分子剤や水硬性助剤を土質安定処理土中に均一に分散させることが非常に難しい。
【0115】
このため、上記した第2の従来技術に係る土質安定処理土は、その石こう系硬化材中における石こうのカルシウム(Ca)分が、比較的溶解し易い部分と溶解しにくい部分とを生じるようになるので、溶解し易い部分に雨水や地下水が集中し易くなってしまう。したがって、上記した第2の従来技術に係る土質安定処理土は、その土質の劣化の潜在的要因を抱えるようになっていた。
【0116】
また、上記した第2の従来技術に係る土質安定処理土において、仮に、その高分子剤や水硬性助剤を増量したような場合には、この土質安定処理土の強度向上が、土質への依存度が高いポゾラン反応によっても生じるようになることにより、強度安定までに一定期間の養生を必要とするようになるので、本来的に石こうが発揮する速硬性や、これにより短時間で強度を評価することができる状態になるといった、元々の長所が損なわれるようになるという問題があったため、結局、石こう系硬化材の長所を損なわないようにしながら、その土質の劣化の潜在的要因を解消するということができていなかった。
【0117】
これに対して、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法は、この石こう系土質安定処理材に用いる粉体状のベントナイトを石こうと混合してから被処理土に投入するようにした場合には、上記した第2の従来技術が抱えていた問題を根本解決することができるので、土質安定処理土の再泥化の防止の確実性を顕著に向上させることができる。
【0118】
次に、図16から図18は、本発明の第2の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法について説明するために参照する図である。前記第1の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法と同様の構成についての重複する説明は省略するものとする。
【0119】
本発明の第2の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法においては、この石こう系土質安定処理材に遅延剤を含有させるようになっている。この遅延剤は、石こうの硬化速度を減速させるように作用するものである。このような遅延剤としては、例えば、グルタミン酸ソーダ、石こうプラスター、及びクエン酸等を用いることができる。
【0120】
図16から図18のそれぞれは、石こうに水和反応を生じさせる際に、グルタミン酸ソーダ、石こうプラスター、及びクエン酸のそれぞれを添加した場合の、硬化時間の変化を線図にしたものである。
【0121】
ここで、図16から図18のそれぞれの線図において、その縦軸の硬化時間は、石こうが水和反応により硬化する際に生じる熱によって、その温度がピークに達するときまでの時間を、この水和反応による硬化時間の指標として採用するようにしたものである。
【0122】
このような第2の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材によれば、前記第1の実施の形態と同様に、この石こう系土質安定処理材を用いて製造する土質安定処理土について、その透水性を低下させて再泥化を防止することができる。
【0123】
また、第2の実施の形態に係る土質安定処理土の製造方法によれば、前記第1の実施の形態と同様に、透水性を低下させ再泥化を防止した土質安定処理土を製造することができる。
【0124】
また、第2の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法によれば、前記第1の実施の形態と同様に、この石こう系土質安定処理材に含有される乾燥粘土としてベントナイトを用いるようになっていることにより、この石こう系土質安定処理材を用いて製造した土質安定処理土の透水性の低下量を増大させることができるので、確実に土質安定処理土の再泥化を防止することができる。
【0125】
また、第2の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法によれば、前記第1の実施の形態と同様に、特に、この石こう系土質安定処理材の中におけるベントナイトの成分を、石こうに対する重量比として20%以上含有させるようにした場合には、確実に土質安定処理土の透水性を低下させ、この土質安定処理土の再泥化を防止することができる。
【0126】
また、第2の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法によれば、前記第1の実施の形態と同様に、特に、この石こう系土質安定処理材の中におけるベントナイトの成分を、石こうに対する重量比として40%から100%含有させるようにした場合には、やはり、確実に土質安定処理土の透水性を低下させ、この土質安定処理土の再泥化を防止することができる。
【0127】
また、第2の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法によれば、前記第1の実施の形態と同様に、特に、この石こう系土質安定処理材に用いる粉体状のベントナイトを被処理土に直接混合せず、最初に石こうと混合してから被処理土に投入するようにした場合に、ベントナイトが少量であっても石こうが増量剤の役割を果たすようになることにより、ベントナイトの成分が被処理土に対して均一に混合されるようになるので、土質安定処理土の再泥化の防止の確実性を顕著に向上させることができる。
【0128】
また、第2の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法によれば、この石こう系土質安定処理材に遅延剤を含有させるようになっているので、この遅延剤の量を調整することにより土質安定処理土の硬化速度を制御することができる。
【0129】
例えば、遅延剤としてグルタミン酸ソーダを用いる場合には、図16に示すように、このグルタミン酸ソーダを石こうに対して0〜0.3%の範囲で添加するようにした検証範囲内において、添加量の増大と共に、一様に硬化時間が長くなっているので、少なくともこのような範囲でグルタミン酸ソーダの量を調整することにより土質安定処理土の硬化速度を制御することができる。
【0130】
また、遅延剤として石こうプラスターを用いる場合には、図17に示すように、この石こうプラスターを石こうに対して0〜20%の範囲で添加するようにした検証範囲内において、添加量の増大と共に、一様に硬化時間が長くなっているので、少なくともこのような範囲で石こうプラスターの量を調整することにより土質安定処理土の硬化速度を制御することができる。
【0131】
また、遅延剤としてクエン酸を用いる場合には、図18に示すように、検証した範囲内ではクエン酸を石こうに対して約1%添加した場合に最も硬化時間が長くなるので、クエン酸の量を石こうに対して0〜1%の範囲で、又は1〜5%の範囲で調整することにより土質安定処理土の硬化速度を制御することができる。
【0132】
なお、前記第1及び第2の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法においては、土質安定処理土の原料となる被処理土として用いることができるものを特定していなかったが、このような被処理土としては、粗粒土(土粒子径が0.075mm以上である粗粒分を50%以上含有する土)が好ましく、とりわけ砂質土(粗粒土のうち、土粒子径が0.075〜2mmである砂分を、土粒子径が2〜75mmである礫分よりも多く含有する土)が好ましい。
【0133】
一方、被処理土として細粒土(土粒子径が0.075mm以下である細粒分を50%以上含有する土)を用いる場合には、被処理土の粘度が高すぎることにより、水を混合せずに石こう系土質安定処理材だけを被処理土に混合すること(図4及び図6参照)は難しいので、石こう系土質安定処理材を水と一緒に被処理土に混合するようにすることが好ましい(図1から3、及び図5参照)。
【0134】
また、被処理土として細粒土を用いる場合には、被処理土として粗粒土を用いるようにした場合と比べて、その透水性を低下させるのに石こう系土質安定処理材と水の両方を多く必要とするようになるので、施工性や経済性等の観点からは、やはり、粗粒土を被処理土として用いるようにすることが好ましい。
【0135】
また、前記第1及び第2の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法においては、この石こう系土質安定処理材に含有させる乾燥粘土としてベントナイトを用いるようになっていたが、このベントナイトはモンモリロナイトを質量比で50%以上含有するものが好ましい。
【0136】
また、本実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法においては、乾燥粘土としてベントナイトを用いるようになっていたが、ベントナイト以外の他の乾燥粘土を用いるようになっていてもよい。このようなベントナイト以外の他の乾燥粘土としては、粒径が5μm以下の土粒子で構成される粘土であって、膨潤度が2以上かつpHが10以下であるような粘土を、乾燥させ粉砕することにより粉体状にしたものを用いることができる。
【0137】
このような乾燥粘土のうち具体的なものとしては、例えば、結晶構造の層間に水を取り込むことができる、酸性白土(pH5〜6程度、膨潤度2〜3程度)等のスメクタイト族の粘土等を用いることができる。なお、前記第1及び第2の実施の形態で用いたベントナイト(pH7〜8.5程度、膨潤度5〜10程度)もスメクタイト族に属するものである。また、乾燥粘土は、ベントナイトとベントナイト以外の他のスメクタイト族の粘土同士を任意に組合せて用いても良い。
【0138】
また、前記第1及び第2の実施の形態におけるベントナイトの代わりに、雲母を主成分とするイライト質土を用いるようにしてもよい。或いは、ベントナイトや酸性白土等のスメクタイト族の粘土、イライト質土、又はこれら以外の粘土であってベントナイトの代用品として用いることができる粘土のいずれか同士を任意に組合せて用いるようにしてもよい。
【0139】
また、前記第1及び第2の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法においては、この石こう系土質安定処理材の硬化材が石こうのみで構成されるようになっていたが、硬化材はこのようなものに限定されずに、石こうを主成分として含有するものであればよい。このような硬化材としては、特に、石こうの成分を質量比で50%以上含有するものが好ましい。
【0140】
また、前記第2の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法においては、遅延剤は、石こう系土質安定処理材に含有されるようになっていたが、他の実施の形態として、例えば被処理土に直接投入するようにしても良く、最終的に、土質安定処理土に含有されるようになっていれば良い。
【0141】
また、前記第1及び第2の実施の形態では、石こう系土質安定処理材、及び土質安定処理土の製造方法について説明したが、土質安定処理土の製造の際に、石こう系土質安定処理材を用いることに拘らないのであれば、セメントやセメント系の土質安定処理材に粉体状のベントナイトを添加するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る石こう系土質安定処理土の製造方法であって、その第1例の手順を示す工程図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る石こう系土質安定処理土の製造方法であって、その第2例の手順を示す工程図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る石こう系土質安定処理土の製造方法であって、その第3例の手順を示す工程図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る石こう系土質安定処理土の製造方法であって、その第4例の手順を示す工程図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る石こう系土質安定処理土の製造方法であって、その第5例の手順を示す工程図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る石こう系土質安定処理土の製造方法であって、その第6例の手順を示す工程図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材を固化させたものを静水中に一定期間だけ浸したものの、当初重量に対する重量比を、石こうとベントナイトの異なる配合比率ごとに示すようにした表である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材を固化させたものの透水係数を、石こうとベントナイトの異なる配合比率ごとに示すようにした表である。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材を固化させたものにおける、その石こうとベントナイトの配合比率と透水係数との相関を示す線図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及びこの石こう系土質安定処理材との比較対象になる混合物のそれぞれのフロー値を、石こうとベントナイトの異なる配合比率ごとに示すようにした表である。
【図11】本発明の第1の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材、及びこの石こう系土質安定処理材との比較対象になる混合物のそれぞれにおける、そのベントナイトと石こうの配合比率とフロー値との相関を示す線図である。
【図12】本発明の第1の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材を用いて製造した土質安定処理土、及びこの土質安定処理土との比較対象になる混合物のそれぞれのフロー値を、石こうとベントナイトの異なる配合比率ごとに示すようにした表である。
【図13】本発明の第1の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材を用いて製造した土質安定処理土の品質を示す表である。
【図14】石こうと水とを混合して作製したペーストについて、その一軸圧縮強さを、異なる水と石こうの配合比率ごとに示すようにした表である。
【図15】石こうと水とを混合して作製したペーストを砂に混合したものにおける、その水と石こうとの配合比率と、一軸圧縮強さとの間の相関を示す線図である。
【図16】本発明の第2の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材に用いる遅延剤としてのグルタミン酸ソーダを、石こうに水和反応を生じさせる際に添加したときの、硬化時間の変化を示す線図である。
【図17】本発明の第2の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材に用いる遅延剤としての石こうプラスターを、石こうに水和反応を生じさせる際に添加したときの、硬化時間の変化を示す線図である。
【図18】本発明の第2の実施の形態に係る石こう系土質安定処理材に用いる遅延剤としてのクエン酸を、石こうに水和反応を生じさせる際に添加したときの、硬化時間の変化を示す線図である。
【図19】第2の従来技術に係る土質安定処理土に関連して、石こうと水とを混合して作製したペーストに酸化マグネシウムを添加し固化させたものについて、当初の体積に対する一定期間浸水後の体積減少率を、酸化マグネシウムの混合率ごとに示すようにした表である。
【図20】図19に示す表についての線図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主成分が半水石こうで構成される硬化材と、粉体状の乾燥粘土とを含有することを特徴とする石こう系土質安定処理材。
【請求項2】
前記乾燥粘土がベントナイトであることを特徴とする請求項1に記載の石こう系土質安定処理材。
【請求項3】
前記ベントナイトが前記硬化材に対する重量比として20%以上含有されることを特徴とする請求項2に記載の石こう系土質安定処理材。
【請求項4】
前記ベントナイトが前記硬化材に対する重量比として40%から100%含有されることを特徴とする請求項2に記載の石こう系土質安定処理材。
【請求項5】
前記乾燥粘土が、ベントナイトとベントナイト以外の他のスメクタイト族の粘土とを組合せたものであることを特徴とする請求項1に記載の石こう系土質安定処理材。
【請求項6】
前記硬化材の硬化速度を減速させる遅延剤を含有することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の石こう系土質安定処理材。
【請求項7】
主成分が半水石こうで構成される硬化材と粉体状の乾燥粘土とを含有する石こう系土質安定処理材と、水とを、被処理土に混合撹拌して製造することを特徴とする土質安定処理土の製造方法。
【請求項8】
主成分が半水石こうで構成される硬化材と、粉体状の乾燥粘土と、水とを混合撹拌することによりスラリー状の石こう系土質安定処理材を作製し、
前記スラリー状の石こう系土質安定処理材を被処理土に混合撹拌して製造する
ことを特徴とする土質安定処理土の製造方法。
【請求項9】
主成分が半水石こうで構成される硬化材と、粉体状の乾燥粘土と、水とを被処理土に混合撹拌して製造することを特徴とする土質安定処理土の製造方法。
【請求項10】
被処理土が粗粒土であって、
前記被処理土に、主成分が半水石こうで構成される硬化材と粉体状の乾燥粘土とを混合撹拌して途中安定処理土を作製し、
前記途中安定処理土の打設後に、この途中安定処理土に水を供給して硬化させる
ことを特徴とする土質安定処理土の製造方法。
【請求項11】
前記乾燥粘土がベントナイトであることを特徴とする請求項7から10のいずれかに記載の土質安定処理土の製造方法。
【請求項12】
前記ベントナイトの量が前記硬化材に対する重量比として20%以上であることを特徴とする請求項11に記載の土質安定処理土の製造方法。
【請求項13】
前記ベントナイトの量が前記硬化材に対する重量比として40%から100%であることを特徴とする請求項11に記載の土質安定処理土の製造方法。
【請求項14】
前記乾燥粘土が、ベントナイトとベントナイト以外の他のスメクタイト族の粘土とを組合せたものであることを特徴とする請求項7から10のいずれかに記載の土質安定処理土の製造方法。
【請求項15】
前記硬化材の硬化速度を減速させる遅延剤を土質安定処理土に含有させることを特徴とする請求項7から14のいずれかに記載の土質安定処理土の製造方法。
【請求項1】
主成分が半水石こうで構成される硬化材と、粉体状の乾燥粘土とを含有することを特徴とする石こう系土質安定処理材。
【請求項2】
前記乾燥粘土がベントナイトであることを特徴とする請求項1に記載の石こう系土質安定処理材。
【請求項3】
前記ベントナイトが前記硬化材に対する重量比として20%以上含有されることを特徴とする請求項2に記載の石こう系土質安定処理材。
【請求項4】
前記ベントナイトが前記硬化材に対する重量比として40%から100%含有されることを特徴とする請求項2に記載の石こう系土質安定処理材。
【請求項5】
前記乾燥粘土が、ベントナイトとベントナイト以外の他のスメクタイト族の粘土とを組合せたものであることを特徴とする請求項1に記載の石こう系土質安定処理材。
【請求項6】
前記硬化材の硬化速度を減速させる遅延剤を含有することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の石こう系土質安定処理材。
【請求項7】
主成分が半水石こうで構成される硬化材と粉体状の乾燥粘土とを含有する石こう系土質安定処理材と、水とを、被処理土に混合撹拌して製造することを特徴とする土質安定処理土の製造方法。
【請求項8】
主成分が半水石こうで構成される硬化材と、粉体状の乾燥粘土と、水とを混合撹拌することによりスラリー状の石こう系土質安定処理材を作製し、
前記スラリー状の石こう系土質安定処理材を被処理土に混合撹拌して製造する
ことを特徴とする土質安定処理土の製造方法。
【請求項9】
主成分が半水石こうで構成される硬化材と、粉体状の乾燥粘土と、水とを被処理土に混合撹拌して製造することを特徴とする土質安定処理土の製造方法。
【請求項10】
被処理土が粗粒土であって、
前記被処理土に、主成分が半水石こうで構成される硬化材と粉体状の乾燥粘土とを混合撹拌して途中安定処理土を作製し、
前記途中安定処理土の打設後に、この途中安定処理土に水を供給して硬化させる
ことを特徴とする土質安定処理土の製造方法。
【請求項11】
前記乾燥粘土がベントナイトであることを特徴とする請求項7から10のいずれかに記載の土質安定処理土の製造方法。
【請求項12】
前記ベントナイトの量が前記硬化材に対する重量比として20%以上であることを特徴とする請求項11に記載の土質安定処理土の製造方法。
【請求項13】
前記ベントナイトの量が前記硬化材に対する重量比として40%から100%であることを特徴とする請求項11に記載の土質安定処理土の製造方法。
【請求項14】
前記乾燥粘土が、ベントナイトとベントナイト以外の他のスメクタイト族の粘土とを組合せたものであることを特徴とする請求項7から10のいずれかに記載の土質安定処理土の製造方法。
【請求項15】
前記硬化材の硬化速度を減速させる遅延剤を土質安定処理土に含有させることを特徴とする請求項7から14のいずれかに記載の土質安定処理土の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2010−77264(P2010−77264A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246857(P2008−246857)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(500173734)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(500173734)
【Fターム(参考)】
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