説明

石化ラフィネートの高オクタン価化方法

【課題】 従来余剰とされてきた石化ラフィネートを高オクタン価の高品質のガソリン基材として有効利用するために、石化ラフィネートのオクタン価を高める方法を提供すること。
【解決手段】 沸点範囲が60〜150℃であり、主としてC6〜C8留分からなる石化ラフィネートの高オクタン価化方法であって、石化ラフィネートを軽質留分と重質留分の2つの留分に分割する蒸留工程と、該蒸留工程で得られた軽質留分を異性化処理する異性化工程と、該異性化工程で得られた異性化生成物と、前記蒸留工程で得られた重質留分とをブレンドする工程を順次含む石化ラフィネートの高オクタン価化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石化ラフィネートの高オクタン価化方法に関するものである。更に詳細には、従来、石油化学工業において、エチレン装置や接触改質装置などの石油化学装置の副生成物である石化ラフィネートは、オクタン価が低いためにガソリン基材として有効利用されていないが、そのオクタン価を向上させ、ガソリン基材としての品質を高めることによって、石化ラフィネートの高品質ガソリン基材としての有効利用を図る方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石油産業の国際化に伴い、石油会社は国際競争力の確保に向けて精製・物流・販売の各分野で徹底的な効率化・合理化を推進している。一方、自動車燃料分野では、ガソリン自動車からの排出ガスの抑制及びクリーン化が重要課題になってきており、それに対応すべく自動車ガソリンの品質は低硫黄分、低蒸気圧が求められている。また一方、石油化学分野では、エチレン、プロピレンなどの需要構造・需給バランスの変化により、エチレン装置から副生される石化ラフィネートの余剰が見込まれている。この様な状況の中で、エチレン装置や接触改質装置などの石油化学装置から副生される余剰の石化ラフィネート、特に主としてC6〜C8留分からなる石化ラフィネートは、低硫黄・低蒸気圧であるにもかかわらず、オクタン価が50〜60と低いために、自動車燃料分野においてガソリン基材として有効に使用されていなかった。また、石油化学分野においては、この余剰の石化ラフィネートをエチレン装置へ原料としてリサイクルして対応してきたが、このリサイクル方法では、その原料としての組成に起因して、特にナフテン含有量等が多いために、エチレンの収率の低下が認められており、エチレン装置の効率の面から石化ラフィネートの新たな別の有効利用方法が求められている。
【0003】
また、自動車燃料分野では、従来から、オクタン価の低い炭化水素類のオクタン価を向上させて、ガソリン基材として高品質な炭化水素類を得る技術として、軽質の炭化水素類を異性化処理する方法がある(例えば、特許文献1参照)。この方法は、例えば原油からの直留ライトナフサのような、主としてC5〜C6のノルマルパラフィン類からなる軽質留分を、異性化触媒と接触させて異性化し、その主成分のC5〜C6のノルマルパラフィン類をイソパラフィン類に変換して、該軽質留分のオクタン価を高めることを目的とした方法である。しかし、この従来の軽質炭化水素類の異性化処理方法を、C7〜C8のパラフィン類やナフテン類を含む比較的重質な石化ラフィネートに適用しても、C3〜C4の留分が生成する分解が起こったり、また、重合やコークス化が起こって異性化触媒が失活したりして、所期の異性化を好適に行うことが難しく、石化ラフィネートの高オクタン価化が難しい。そのため、未だ、石化ラフィネートの高オクタン価化は実証されていない。
【0004】
【特許文献1】特公平6−29199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、上記従来の状況に鑑み、従来余剰とされてきた石化ラフィネートを高オクタン価の高品質のガソリン基材として有効利用するために、石化ラフィネートのオクタン価を高める方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、次の石化ラフィネートの高オクタン価化方法で上記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、上記目的を達成するために、次の石化ラフィネートの高オクタン価化方法を提供する。
【0007】
(1)沸点範囲が60〜150℃であり、主としてC6〜C8留分からなる石化ラフィネートの高オクタン価化方法であって、石化ラフィネートを軽質留分と重質留分の2つの留分に分割する蒸留工程と、該蒸留工程で得られた軽質留分を異性化処理する異性化工程と、該異性化工程で得られた異性化生成物と、前記蒸留工程で得られた重質留分とをブレンドする工程を順次含むことを特徴とする石化ラフィネートの高オクタン価化方法。
(2)前記蒸留工程において、石化ラフィネートの軽質留分と重質留分の分離が、該軽質留分中のC7含有量が10質量%未満になるように蒸留カットして行われることを特徴とする上記(1)に記載の石化ラフィネートの高オクタン価化方法。
(3)前記異性化工程において、石化ラフィネートの軽質留分の異性化処理方法が、固体超強酸触媒を用いる異性化処理方法であることを特徴とする上記(1)に記載の石化ラフィネートの高オクタン価化方法。
(4)前記固体超強酸触媒が、ケイ素、チタン、ジルコニウム、及びスズから選択された少なくとも1種類の周期律表IV族金属の水酸化物又は酸化物、及びアルミニウムの水酸化物又は酸化物から選択された少なくとも一種からなる担体に、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、及び白金から選択された少なくとも1種類の周期律表VIII族金属と、硫酸根又は硫酸根前駆物質とを含有させ、焼成、安定化してなる触媒であることを特徴とする上記(3)に記載の石化ラフィネートの高オクタン価化方法。
(5)前記担体が、ジルコニウムの水酸化物又は酸化物、及びアルミニウムの水酸化物又は酸化物から選択された少なくとも一種であって、前記周期律表VIII族金属が白金であることを特徴とする上記(4)に記載の石化ラフィネートの高オクタン価化方法。
(6)前記異性化処理工程において、石化ラフィネートの軽質留分に直留ライトナフサを混合せしめた後、該混合物を異性化処理することを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の石化ラフィネートの高オクタン価化方法。
(7)前記直留ライトナフサが、その沸点範囲が25〜110℃であることを特徴とする上記(6)に記載の石化ラフィネートの高オクタン価化方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明方法によれば、従来オクタン価が低くガソリン基材としての利用が難しかった石化ラフィネートを、そのオクタン価を8〜10向上させることができて、オクタン価が高く高品質のガソリン基材として有効利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で言う石化ラフィネートとは、エチレン装置や接触改質装置などの石油化学装置から副生される副生成物に当たるものである。詳しくは、接触改質装置では、一般に直留ナフサを原料として、それを接触改質反応せしめて改質ガソリンを得ており、この得られた改質ガソリンは、ガソリン基材として使用されているが、一般に環境規制により改質ガソリン中のベンゼンを除去して使用されている。このベンゼンの除去方法は、改質ガソリン中のベンゼンを蒸留等により除去しているが、この蒸留操作で得られた粗ベンゼン留分は、更に芳香族抽出装置でベンゼンのみが抽出されている。これらの操作を経て残った留分、即ち粗ベンゼン留分からベンゼンを抽出した後のラフィネートが接触改質装置由来の石化ラフィネートである。また、エチレン装置では、一般にライトナフサを原料とし、それを熱分解してエチレンを製造しているが、その際、分解ガソリン留分が副生される。この副生した分解ガソリンにはベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族化合物が含まれているため、石油化学工業においては、この副生した分解ガソリンから、芳香族抽出装置で芳香族分を抽出し、抽出された芳香族分を石油化学原料として有効利用している。この副生分解ガソリンから芳香族分を抽出した後のラフィネートがエチレン装置由来の石化ラフィネートである。
【0010】
本発明で処理対象とする石化ラフィネートとは、沸点範囲が60〜150℃であり、主としてC6〜C8留分からなる、ノルマルパラフィン類に富んでいる留分である。この本発明で処理対象とする石化ラフィネートの組成は、一般に、パラフィン分20〜85容量%、ナフテン分15〜65容量%、オレフィン分5容量%以下、芳香族分10容量%以下である。
【0011】
以下に、本発明の実施態様例を、図面を参照しつつ、具体的かつ詳細に説明する。図1は本発明の実施態様の一例を概念的に示す、プロセス・フローシートである。また、図2は本発明の実施態様の他の一例を概念的に示す、プロセス・フローシートである。
図1に示す実施態様においては、石化ラフィネート1が、蒸留工程の精密蒸留装置2で軽質留分3と重質留分4の2つの留分に分割され、軽質留分3は、異性化工程の異性化装置5で異性化処理される。異性化処理された異性化生成油6は、その後ブレンド工程において、精密蒸留装置2で分割された重質留分4とブレンドされて高オクタン価で高品質のガソリン基材6とされる。
また、図2に示す実施態様においては、蒸留工程で分割された軽質留分3が、直留ライトナフサ7と混合された後異性化装置5に供給される。この軽質留分3が直留ライトナフサ7と混合された後異性化装置5に供給されること以外は、図1に示す実施態様と同様である。
【0012】
以下工程毎に詳説する。
(蒸留工程)
石化ラフィネートの軽質留分と重質留分の分離は、従来の蒸留塔を用いて行うことができる。この蒸留塔としては精密蒸留塔が好ましい。また、この石化ラフィネートの分離は、軽質留分中のC7留分が10質量%未満、好ましくは7質量%未満、更に好ましくは3質量%未満になるように蒸留カットして行うことが望ましい。
この石化ラフィネートの分離の蒸留は、一般に圧力0.1〜2MPa、好ましくは0.2〜1MPaで行われ、蒸留塔の理論段数が10〜100段、好ましくは30〜70段であることが望ましい。塔内の液体流量と仕込み原料流量との比によって表される還流比は、1〜20が好ましく、更に好ましくは1〜10である。
軽質留分においては、メチルシクロペンタン(沸点71.8℃)と2,2−ジメチルペンタン(沸点79.2℃)の沸点の間でカットすることが好ましい。これは本異性化反応においては、C7含有量が多いと触媒上へのコーク析出や液収率の低下を抑制するものである。このため好ましいカット温度は、精密蒸留条件にもよるが、70〜80℃である。
本発明においては、C5およびC6ナフテンは軽質留分中に含まれることになるが、軽質留分中のC5ナフテンおよびC6ナフテンの合計量は、15〜65質量%になる。
【0013】
(異性化工程)
蒸留工程で分離された石化ラフィネートの軽質留分は、異性化装置に導入され、異性化処理される。異性化反応条件は一般に以下の通りであることが望ましい。
反応温度:150〜250℃、好ましくは170〜220℃
反応圧力:1〜5MPa、好ましくは2〜4MPa
水素/オイル比:1〜4mol/mol、好ましくは1.5〜3mol/mol
WHSV:0.1〜5/h、好ましくは0.5〜2/h
反応温度を150℃より高くすることが、異性化触媒の触媒寿命が短くなることを防止できるので好ましい。また、250℃以下にすることが、軽質留分の分解が進んで、液収率が低下することを防止できるので好ましい。また、原料炭化水素中の水分含有量は30質量ppm以下にすることが、触媒の活性低下が大きくならず好ましい。
【0014】
本発明においては、上記図1のような実施態様では、石化ラフィネートの軽質留分がそのまま異性化装置に導入されて異性化処理されるが、上記図2のような実施態様では、石化ラフィネートの軽質留分に直留ライトナフサを混合し、その混合物が異性化装置に導入されて異性化処理される。石化ラフィネートの軽質留分と直留ライトナフサとの混合割合は、適宜任意に設定することができるが、軽質留分中のナフテンの開環反応を抑制するという観点から、石化ラフィネートの軽質留分/直留ライトナフサ比(質量比)は1:0〜1:4が適当である。
石化ラフィネートの軽質留分に混合する直留ライトナフサとしては、原油の常圧蒸留装置から留出したライトナフサに脱硫処理を施したものが好ましい。特に、好適な直留ライトナフサは、その沸点範囲が25〜110℃のライトナフサである。また、硫黄分は1質量ppm以下、好ましくは0.5質量ppm以下であることが望ましい。硫黄分1質量ppm以下であれば、異性化触媒の活性劣化の懸念がない。
【0015】
(異性化工程で用いる異性化反応触媒)
本発明の異性化工程では、異性化反応触媒として、各種の異性化反応触媒を適宜使用することができるが、Pt/SO4 /ZrO2 系固体超強酸触媒を始めとする固体超強酸触媒が好適に使用される。ここで言う固体超強酸触媒とは、超強酸として定義される100%硫酸より強い酸の性質を有し、熱力学的平衡上有利な低温でのパラフィン類の骨格異性化反応を室温においてさえ進行させるような性質を有する超強酸を担持させた触媒であって、酸強度が100%硫酸以上の強さを有し、通常、ハメット酸度関数で100%硫酸のH0 =−11.93以下の固体触媒を言う。例えば、SbF5 、BF3 等の超強酸性を有する化合物を担持させた触媒、ZrO2 、Fe23 等の酸化物を硫酸処理して得た触媒、フッ素化スルフォン酸樹脂等を固体超強酸触媒の例として挙げることができる。
【0016】
固体超強酸触媒の組成物は、周期律表IV族又はIII族から選択された少なくとも1種類の金属の水酸化物又は酸化物からなる担体に、周期律表VIII族、VIIA族、VIA族、及びIB族から選択された少なくとも1種類の金属(以下、特定金属と言う)と、硫酸根又は硫酸根の前駆物質とを含有させ、焼成、安定化してなるものである。ここで特定金属又は金属化合物は、いずれも通常の含浸法、イオン交換法等の手法にて担体上に担持させることが可能である。特定金属の好ましい具体例としては、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金、鉄、マンガン、クロム、銀、及び銅を挙げることができる。特定金属の含有量は、担体100質量部に対して0.01〜10質量部が好ましい。この理由は、0.01質量部以上にすれば、上記金属の触媒活性効果が小さく、触媒活性の安定性が不十分となることを防止でき、また、10質量部以内であれば、酸強度が低下し、異性化反応の異性化率が低下することを防止できるからである。また、硫酸根としては、例えば0.005〜5モル/リットル、好ましくは0.05〜2.5モル/リットルの硫酸、0.1〜10モル/リットルの硫酸アンモニウム等を、硫酸根の前駆物質としては、例えば硫化水素、亜硫酸ガス等の触媒焼成処理後に硫酸根を生成する物質を、それぞれ使用できる。
【0017】
上記固体超強酸触媒の中でも、更に好適なる固体超強酸触媒は、ケイ素、チタン、ジルコニウム、スズから選択された少なくとも1種類の周期律表IV族金属の水酸化物又は酸化物、及びアルミニウムの水酸化物又は酸化物から選択された少なくとも一種からなる担体に、特定金属としてニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金から選択された少なくとも1種類の周期律表VIII族金属と、硫酸根又は硫酸根の前駆物質とを含有させ、焼成、安定化してなる触媒である。なお更に好適なる固体超強酸触媒は、担体がジルコニウムの水酸化物又は酸化物であって、周期律表VIII族金属が白金である触媒である。
【0018】
本発明方法で使用する固体超強酸触媒の調製法については、特に限定はされない。即ち、特定金属及び硫酸根の担持方法は、いかなる方法で行ってもよく、一例を挙げれば、担体上にVIII族金属を導入した後に硫酸根を含有する処理剤にて処理を行い、焼成安定化することによって固体超強酸触媒を調製することができる。特定金属として白金を例に挙げれば、塩化白金酸、テトラアンミン白金錯体などの水溶液に担体を浸漬することにより担持させることができ、担持後は硫酸根含有処理剤等による処理を行う。その際、硫酸根を含有する処理剤として、0.005〜5モル/リットル、好ましくは0.05〜2.5モル/リットルの硫酸、0.1〜10モル/リットルの硫酸アンモニウム等を触媒質量に対して1〜10倍の量を使用する。また、これに限らず、硫化水素、亜硫酸ガス等の触媒焼成処理の後に硫酸根を生成するような処理剤を用いても、同様の効果をあげることができる。また、硫酸根含有処理剤等による処理を施した後、450〜800℃、好ましくは500〜700℃の温度の酸化雰囲気下で、0.5〜10時間、焼成安定化処理する。以上の処理により、異性化反応触媒として、強酸性を示す固体超強酸触媒を得ることができる。なお、触媒の焼成安定化処理を酸化雰囲気下で行うのは、特定金属又は特定金属の化合物上で、硫酸根の結合状態の変化或いは還元分解等と思われる現象によって、触媒活性が低下するのを防止するためである。
【0019】
固体超強酸触媒は、異性化反応に使用する前に、その触媒活性の安定化、即ち、担持金属化合物の金属への還元、強酸点の活性化のために、前処理を施すことが好ましい。前処理の条件は、固体超強酸触媒の通常の前処理条件であって、例えば、固体超強酸触媒を100〜500℃の温度で1〜5時間維持して乾燥し、次いで100〜400℃の温度で還元処理を行う。
【0020】
(ブレンド工程)
上記異性化工程で石化ラフィネートの軽質留分を異性化処理して得られた異性化生成油、あるいは、石化ラフィネートの軽質留分に直留ライトナフサを混合した混合物を異性化処理して得られた異性化生成油と、上記蒸留工程で得られた石化ラフィネートの重質留分とをブレンドして、目的のオクタン価が高く高品質のガソリン基材が得られる。
【実施例】
【0021】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0022】
実施例1
図1に示す実施態様に対応するベンチ装置により、表1に示す性状を有する接触改質装置由来の石化ラフィネートを用いて以下のように操作して高オクタン価化され、ガソリン基材として高品質の石化ラフィネートを作製した。
表1に示す性状を有する石化ラフィネートをオルダーショウ型蒸留装置で軽質留分と重質留分の2つに分割した。精密蒸留時の軽質留分の抜き出し量は蒸留塔塔頂部の温度見合いとし、メチルシクロペンタンの沸点71.8℃を目安として行い、軽質留分中のC7ヘビア留分が1質量%以下になるように蒸留を行った。その時の蒸留条件を下記に示す。
なお、表中の計算オクタン価は、生成油中(C5以上)の各成分固有のオクタン価に容積比を乗じて得られた値の積算値である。
【0023】
タイプ オルダーショウ型
理論段数 50段
還流比 5
処理量 10L
【0024】
【表1】

【0025】
また、精密蒸留によって分割された軽質留分と重質留分の性状及び回収率を表1に示す。軽質留分の収率は43.2質量%、重質留分の収率は53.2質量%でとなり、回収率は96.4質量%であった。また、それぞれの留分のオクタン価は、51.4と61.3であった。
【0026】
得られた石化ラフィネート軽質留分の異性化処理を、触媒充填量7mlのベンチプラントで行った。異性化反応に用いた触媒は、Pt/SO4/ZrO2系触媒であり、異性化原料を導入する前に触媒前処理として、in−situでの還元処理を行った。還元条件は水素流量9L/H、150℃で3時間の予備乾燥後、220℃にて14時間処理して触媒を活性化させた。前処理後に下記に示す反応条件で異性化処理を実施した。
【0027】
水素分圧 3.1MPa
空間速度(WHSV) 1.5/h
水素/炭化水素比 2mol/mol
反応温度 160,170,180,190,200℃
【0028】
上記石化ラフィネート軽質留分の異性化処理の結果(異性化生成油の性状)を表2に示す。異性化反応の結果、生成油のオクタン価は70.4〜76.0であり、その時の液収率は98.8〜93.1%であった。
【0029】
【表2】

【0030】
上記異性化処理を行った石化ラフィネート軽質留分(異性化生成油)と、上記精密蒸留で得られた石化ラフィネート重質留分をブレンドして、目的の高オクタン価化され、ガソリン基材として高品質の石化ラフィネートを得た。その結果(目的の高オクタン価化石化ラフィネートの性状)を表3に示す(表3では、「目的の高オクタン価化石化ラフィネート」を「異性化ガソリン」と表示)。
その結果より、目的の石化ラフィネートのオクタン価は、石化ラフィネート原料のオクタン価56.8から67.4〜65.4へと約10.8〜8.5上昇していることが分かった。
【0031】
【表3】

【0032】
実施例2
図2に示す実施態様に対応するベンチ装置により、実施例1で用いたと同様の石化ラフィネートを使用して以下のように操作して高オクタン価化され、ガソリン基材として高品質の石化ラフィネートを作製した。
実施例1と同様にしてC7含有量が3質量%以下になるように石化ラフィネートを軽質留分と重質留分の2つに分割し、軽質留分と重質留分を得た。軽質留分の性状を表4に示す。この得られた軽質留分に、表4に示す性状を有する脱硫処理された直留ライトナフサを、軽質留分/直留ライトナフサ比(質量比)を35/65と50/50の比率で混合して、石化ラフィネート軽質留分と直留ライトナフサの混合物を得た。この得られた混合物の性状を、原料(石化ラフィネート軽質留分と直留ライトナフサ)の性状と共に、表5に示す。
【0033】
【表4】

【0034】
【表5】

【0035】
上記得られた石化ラフィネート軽質留分と直留ライトナフサの混合物を、実施例1と同様の異性化触媒を用い、実施例1と同様の反応条件で水素化処理した。その結果(異性化生成油の性状)を、石化ラフィネート軽質留分/直留ライトナフサ混合比率が50/50の場合については表6に、当該混合比率が35/65の場合については表7にそれぞれ示す。
【0036】
【表6】

【0037】
【表7】

【0038】
上記異性化処理を行った石化ラフィネート軽質留分と直留ライトナフサの混合物(異性化生成油)と、上記精密蒸留で得られた石化ラフィネート重質留分をブレンドして、目的の高オクタン価化され、ガソリン基材として高品質の石化ラフィネートを得た。その結果(目的の高オクタン価化石化ラフィネートの性状)を、石化ラフィネート軽質留分/直留ライトナフサ混合比率が50/50の場合については表8に、当該混合比率が35/65の場合については表9にそれぞれ示す(表8、9では、「目的の高オクタン価化石化ラフィネート」を「異性化ガソリン」と表示)。
その結果より、石化ラフィネート軽質留分/直留ライトナフサ混合比率が50/50の場合では、オクタン価が4〜7向上することが分かった。また、当該混合比率が35/65の場合では、オクタン価が6〜2向上することが分かった。
【0039】
【表8】

【0040】
【表9】

【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施態様の一例を概念的に示すプロセス・フローシートである。
【図2】本発明の実施態様の他の一例を概念的に示すプロセス・フローシートである。
【符号の説明】
【0042】
1:石化ラフィネート
2:精密蒸留装置
3:軽質留分
4:重質留分
5:異性化装置
6:異性化生成油
7:直留ライトナフサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
沸点範囲が60〜150℃であり、主としてC6〜C8留分からなる石化ラフィネートの高オクタン価化方法であって、石化ラフィネートを軽質留分と重質留分の2つの留分に分割する蒸留工程と、該蒸留工程で得られた軽質留分を異性化処理する異性化工程と、該異性化工程で得られた異性化生成物と、前記蒸留工程で得られた重質留分とをブレンドする工程を順次含むことを特徴とする石化ラフィネートの高オクタン価化方法。
【請求項2】
前記蒸留工程において、石化ラフィネートの軽質留分と重質留分の分離が、該軽質留分中のC7含有量が10質量%未満になるように蒸留カットして行われることを特徴とする請求項1に記載の石化ラフィネートの高オクタン価化方法。
【請求項3】
前記異性化工程において、石化ラフィネートの軽質留分の異性化処理方法が、固体超強酸触媒を用いる異性化処理方法であることを特徴とする請求項1に記載の石化ラフィネートの高オクタン価化方法。
【請求項4】
前記固体超強酸触媒が、ケイ素、チタン、ジルコニウム、及びスズから選択された少なくとも1種類の周期律表IV族金属の水酸化物又は酸化物、及びアルミニウムの水酸化物又は酸化物から選択された少なくとも一種からなる担体に、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、及び白金から選択された少なくとも1種類の周期律表VIII族金属と、硫酸根又は硫酸根前駆物質とを含有させ、焼成、安定化してなる触媒であることを特徴とする請求項3に記載の石化ラフィネートの高オクタン価化方法。
【請求項5】
前記担体が、ジルコニウムの水酸化物又は酸化物、及びアルミニウムの水酸化物又は酸化物から選択された少なくとも一種であって、前記周期律表VIII族金属が白金であることを特徴とする請求項4に記載の石化ラフィネートの高オクタン価化方法。
【請求項6】
前記異性化処理工程において、石化ラフィネートの軽質留分に直留ライトナフサを混合せしめた後、該混合物を異性化処理することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の石化ラフィネートの高オクタン価化方法。
【請求項7】
前記直留ライトナフサが、その沸点範囲が25〜110℃であることを特徴とする請求項6に記載の石化ラフィネートの高オクタン価化方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−111754(P2006−111754A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−301467(P2004−301467)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(502053100)石油コンビナート高度統合運営技術研究組合 (72)
【出願人】(000105567)コスモ石油株式会社 (443)
【Fターム(参考)】