説明

石材擁壁

【課題】 裏込め砕石の重量を表面石材と一体化して、胴込めまたは裏込めコンクリートを不用にする。
【解決手段】 基礎コンクリート13の上に一段目の石板10を積む。隣同士の石板の間に継手金具15を挟み込む。継手金具15は上下に長い鋼板製のフラットバー15aにアイピース15bを溶接したものであり、アイピース15bは石板10の裏面に突出する。このアイピースに円弧状に曲げた帯金16の両端をボルト17で固定する。同時に、帯金16の内側に沿って金網19を支持する。こうして、帯金16と金網19でかご20を形成する。かごの中に砕石21をぎっしり詰める。かごの外側は土を埋め戻す。2段目の石板1は1段目と互い違いになるように積む。2段目の各石板にも同様に、帯金と金網からなるかご20を取り付ける。2段目のかごの下面レベルまで土を盛ってから、2段目のかごに砕石21を詰める。こうして、さらに3段、4段と積んでいく。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、土砂の崩壊や流失の防止を目的とする擁壁に関し、傾斜地における宅地造成の擁壁、道路の擁壁、湖沼河川の堤防の護岸などとして利用できるものである。
【0002】
【従来の技術】従来の擁壁は、大部分がコンクリート製であり、コンクリート製の擁壁は、強度は充分でも、周囲の景観と調和が保ちにくいという欠点がある。また、湖沼河川におけるコンクリート堤防は、生態系を寸断し、環境破壊を招いていると考えられるようになった。そこで最近は、自然にやさしく、周囲の景観に溶け込めるよう、自然石を用いたものが望まれるようになってきている。
【0003】自然石を使った擁壁として、古くから間知石積がよく知られている。間知石は、面(つら)はほぼ方形で、奥を次第に細くした角錐状台のものであり、間に胴込めコンクリートを充填しながら積んで行く。場合によってはさらには裏込めコンクリートを打つ。擁壁の裏側には砕石を詰め、水はけをよくする。
【0004】このように、従来の間知石積は、工事現場で石工の技術と多大の労力、さらにはコンクリート工事が不可欠であり、このため工事費が嵩み、工期も長くなるという問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】間知石積では、間知石および胴込めコンクリート、さらには裏込めコンクリートの合計重量で土圧力を支える。擁壁の裏側に詰めた砕石は、擁壁と一体性がないので、その重量は土圧を支えるのに直接的に役立っていない。
【0006】この発明は、裏込め砕石の重量を石材と一体化して有効に活用することにより、胴込めまたは裏込めコンクリートを不用にした擁壁を得ることを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】この発明は、擁壁の表面を形成する複数の面状の石材の各々の背面にかごを取り付け、かごの中に石塊(砕石)を詰める(請求項1)。こうすることにより、かごの中の石塊が擁壁の表面を形成する石材と一体になり、石塊の重量で擁壁が倒れるのを防ぐことができる。したがって、擁壁に重量を付加するための裏込めまたは胴込めコンクリートが不用であり、低コストで構築でき、工期も短縮することができる。また、かごの中に詰めた石塊は、擁壁の裏側の水はけを確保する役割を担う。
【0008】面状の石材は、単純には石板で構成することができる(請求項2)。石板は自然石でも、コンクリート製でもよい。
【0009】石板を用いる場合、石板の間に継手金具を挟み込み、これら継手金具と継手金具の間に、石板の背面から離して帯金を渡し、この帯金に金網を沿わせてかごを形成することができる(請求項3)。こうすれば、かごを、簡単、確実に石板に支持させることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】最初に宅地造成用の擁壁の例を説明する。図1で、符号10は天然石(花崗岩)を切り出した石板であり、大きさは縦500mm×横1000mm×厚み100mmである。石板10の両側には上から下まで溝11を形成する。石板10の上下面には位置決め用の穴12をあけておく。
【0011】基礎コンクリート13の上に一段目の石板10を積む。図3に示すように、基礎コンクリート13には予めアンカー22を埋め込んでおき、その先を一段目の石板10の下面の穴12に挿入するようにして位置決めする。
【0012】隣同士の石板の間に継手金具15を挟み込む。継手金具15は上下に長い鋼板製のフラットバー15aにアイピース15b(この場合3個)を間隔をあけて溶接したものであり、フラットバー15aは2つの石板の溝11の中に収まり、アイピース15bは石板10の裏面に突出する。
【0013】図2に示すように、このアイピースに円弧状に曲げた帯金16の両端をボルト17で固定する。同時に、帯金16の内側に沿って金網19を支持する。金網は網目が40mmほどのものある。こうして、帯金16と金網19でかご20を形成する。かごには底がないが、この場合は基礎コンクリート13が底の役割をする。このかごの中に砕石21をぎっしり詰める。かごの外側には土を埋め戻す。
【0014】2段目の石板1は1段目と互い違いになるように積む。上下の石板の間には、該穴12に挿入するようにして位置決めピース23を噛ます。2段目の各石板にも同様に、帯金と金網からなるかご20を取り付ける。2段目のかごの下面レベルまで土を盛ってから、2段目のかごに砕石21を詰める。
【0015】こうして、3段、4段と積んで行く。この例では、4段積み、高さ4mの擁壁を築く(図3)。
【0016】このように築かれた擁壁では、かごの中の砕石21が石板10と一体になり、その合計重量は大きなものとなるので、従来のように裏込めコンクリートがなくても、土砂の崩壊に充分耐えることができる。地中の水は、砕石21の間を通って擁壁下部の水抜き穴(図示しない。)から排出される。
【0017】擁壁は少し傾斜を付けてもよく、その場合の断面構造を図4に示す。
【0018】次に、堤防の例を説明する。図5において、符号30は花崗岩の石柱であり、これを複数本(この例では5本)並列に連結して柵体31を構成する。柵の幅は1mである。石柱同士を連結するには、図6に示すように、石柱30に水平にあけた穴に鋼製の棒体32を通し、棒体の両端にナット33を螺合緊締する。棒体32は3段に渡って通してある。石柱と石柱の間には伸縮性材料(例えばゴム)で作ったスペーサ35(厚み25mm)を介在させる。各柵体31の両側に棒体32を利用して、連結金具36を取り付ける。
【0019】このようにして形成した柵体31を河岸に沿って立てる。実際には、河床を掘り下げて柵体の下部を土に埋めるようにして立てる。河川が直線でなくカーブしている場合は、棒体32を曲げるようにして、柵体を河川のカーブに合せるようにする(図8)。
【0020】柵体31を立てたら、図6に示すように、隣の柵体の連結金具同士をボルト37で連結する。この連結の際、円弧状に曲げた帯金16の両端をボルト37に固定し、帯金の内側に沿って金網19を支持してかご20を形成する。下側のかごには金網で底40を設ける。かごの内部、石柱側には吸出し防止マット39(透水マット)を当てがい、かご20の中に砕石21を詰める。こうして、柵体31の背後の土を埋め戻す(図7R>7)。
【0021】こうして築かれた堤防もまた、石柱とかごの中の砕石の重量が一体になって、土圧に抗する。そして、水流水圧による洗掘を阻止し、自然にやさしい優れた護岸が得られる。吸出し防止マット39は、石柱の隙間を通って河川の中に土が吸出されるのを防止する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 擁壁の後側から見た斜視図である。
【図2】 擁壁の要部水平断面図である。
【図3】 擁壁の垂直断面図である。
【図4】 傾斜した擁壁の下部垂直断面図である。
【図5】 柵式擁壁の後側から見た斜視図である。
【図6】 柵式擁壁の要部水平断面図である。
【図7】 柵式擁壁の垂直断面図である。
【図8】 柵式擁壁の要部平面図である。
【符号の説明】
10 石板
15 継手金具
16 帯金
19 金網
20 かご
21 砕石(石塊)
30 石柱
31 柵体
32 棒体
35 スペーサ
36 連結金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】 擁壁の表面を形成する複数の面状の石材の各々の背面にかごを取り付け、該かごの中に石塊を詰めた石材擁壁。
【請求項2】 該面状の石材が1枚の石板である請求項1の石材擁壁。
【請求項3】 隣同士の該石板の間に継手金具を挟み込み、これら継手金具と継手金具の間に、該石板の背面から離して帯金を渡し、該帯金に金網を沿わせて該かごを形成した請求項2の石材擁壁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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