説明

石炭ガス化複合発電設備および石炭ガス化複合発電方法

【課題】空気分離装置を使用しないでガス化炉を加圧したり、ガス化炉へ微粉炭を搬送する際、効率良くシステムを起動させることが可能な石炭ガス化複合発電設備および石炭ガス化複合発電方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る石炭ガス化複合発電設備は、ガス化剤として空気を用いて石炭からなる微粉炭をガス化して石炭ガスを生成するガス化炉4と、二酸化炭素を貯蔵しており、ガス化炉4を起動する際に二酸化炭素を供給する二酸化炭素貯蔵装置14とを備え、二酸化炭素貯蔵装置14から供給された二酸化炭素が微粉炭をガス化炉4へ供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭を燃料として複合発電を行う石炭ガス化複合発電設備および石炭ガス化複合発電方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石炭ガス化複合発電設備(IGCC:Integrated coal Gasification Combined Cycle)は、燃料となる石炭をガス化してガスタービンを運転させ、ガスタービンの駆動力とガスタービンの排熱を利用して発電する。
【0003】
IGCCには、ガス化炉にて微粉炭をガス化して石炭ガスを生成するため、ガス化剤として酸素を使用する酸素燃焼方式(「酸素吹き」ともいう。)と、空気を使用する空気燃焼方式(「空気吹き」ともいう。)がある。酸素吹きIGCCは、ガス化剤として多量の酸素が必要である。そのため、大容量の空気分離装置(ASU: Air Separation Unit)が必要だった。一方、空気吹きIGCCは、ガス化剤としての酸素は必須ではないが、微粉炭を高圧のガス化炉に搬送する際、不活性な窒素を使用して加圧する必要があるため、小容量ながら空気分離装置が必要となっている。
【0004】
図4は、空気吹きIGCCについて、従来例を示す構成図である。
この空気吹きIGCCでは、最初に乾燥用ガスとともに原料となる石炭を微粉炭機1に導入し、石炭を乾燥粉砕することによって微粉炭が製造される。この微粉炭はサイクロン2に導かれ、排気と分離されてホッパ3に回収される。この後、ホッパ3内の微粉炭は、後述する空気分離装置12から供給される加圧搬送用の窒素ガスにより、ガス化炉4に搬送されてガス化される。こうしてガス化炉4でガス化された石炭ガスは、ガス冷却器5を通ってチャー回収装置6に供給される。なお、ガス化炉4で微粉炭をガス化する際には、後述するガスタービン9から昇圧機11を介して供給される圧縮空気と、空気分離装置12から供給される酸素とがガス化剤として使用される。
【0005】
チャー回収装置6では、微粉炭をガス化した石炭ガスとともに生成されたチャーを分離する。一方の石炭ガスは、脱硫装置7を通って脱硫した後、二酸化炭素回収装置(CCS: Carbon dioxide Capture and Storage)8に供給される。
【0006】
二酸化炭素回収装置8では、石炭ガス中の二酸化炭素が分離され、回収される。一方、二酸化炭素が分離された石炭ガスはガスタービン9の燃料ガスとなり、燃焼器に供給されて燃焼することで高温高圧の燃焼排ガスが生成される。この燃焼排ガスは、ガスタービン9のタービンを駆動した後、排ガスとして排出される。なお、ガスタービン9の主軸は発電機15と連結され、発電機15を駆動することにより発電が行われる。
【0007】
ガスタービン9から排出された高温の排ガスは、一部が排ガスボイラ10に供給されて蒸気生成に使用される。なお、排ガスボイラ10で蒸気生成に使用された排ガスは、必要な処理を施して大気に排気される。
【0008】
排ガスボイラ10で生成された蒸気は、発電用の蒸気タービン16等に供給される。図1では、蒸気タービン16は、ガスタービン9と連結され、発電機15を駆動している。ここで、空気分離装置12は、大気から空気を導入して窒素及び酸素のガスに分離する装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−59940号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0225382号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
酸素吹きIGCCは、ガス化剤として多量の酸素が必要である。そのため、大容量の空気分離装置が必要だった。一方、空気吹きIGCCは、ガス化剤としての酸素は必須ではないが、微粉炭を高圧のガス化炉に搬送する際、不活性な窒素を使用して加圧する必要があるため、小容量ながら空気分離装置が必要となっている。
【0011】
しかし、空気分離装置は、設備費が高くかつ運転動力が大きく、さらに設備点数が多いためプラントの信頼性を下げる要因となっている。したがって、空気分離装置は、極力容量を低減するか、可能であれば無くすことが望ましいが、前述のとおり、空気吹きIGCCであっても小容量ながら、空気分離装置の設置は不可欠であった。したがって、IGCCにおいて、空気分離装置が経済性や信頼性への大きな制限要因となっている。
【0012】
IGCCの二酸化炭素回収装置にて回収される二酸化炭素は、環境影響の側面から高純度に精製されており、不活性ガスとして窒素の代替に利用できる。IGCCには、特許文献1及び2のように、回収された二酸化炭素をガス化炉の加圧や、ガス化炉への微粉炭の搬送に使用するものがある。
【0013】
しかし、二酸化炭素回収装置にて微粉炭の搬送に必要な二酸化炭素を供給できるようになるまでの間は、二酸化炭素をガス化炉へ供給できないため、空気分離装置を使用しないIGCCでは、システムを適切に起動させることができないという問題があった。
【0014】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、空気分離装置を使用しないでガス化炉を加圧したり、ガス化炉へ微粉炭を搬送する際、効率良くシステムを起動させることが可能な石炭ガス化複合発電設備および石炭ガス化複合発電方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の石炭ガス化複合発電設備および石炭ガス化複合発電方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係る石炭ガス化複合発電設備は、ガス化剤として空気を用いて石炭からなる微粉炭をガス化して石炭ガスを生成するガス化炉と、二酸化炭素を貯蔵しており、ガス化炉を起動する際に二酸化炭素を供給する二酸化炭素貯蔵装置とを備え、二酸化炭素貯蔵装置から供給された二酸化炭素が微粉炭をガス化炉へ供給する。
【0016】
この発明によれば、ガス化炉では、石炭からなる微粉炭が、ガス化剤としての空気によってガス化されて、石炭ガスが生成される。また、二酸化炭素が二酸化炭素貯蔵装置において貯蔵されており、ガス化炉を起動する際に二酸化炭素貯蔵装置から供給される。そして、二酸化炭素貯蔵装置から供給された二酸化炭素は、例えば微粉炭が貯蔵されたホッパからガス化炉へ微粉炭を供給する。したがって、ガス化炉が起動する前に、二酸化炭素によって微粉炭をガス化炉へ供給できるため、起動時の供給用ガスを生成する空気分離装置の容量を低減したり、別途空気分離装置を設置する必要がなくなる。
【0017】
上記発明において、ガス化炉で生成された石炭ガスから二酸化炭素を分離して回収する二酸化炭素回収装置を備え、二酸化炭素貯蔵装置は、二酸化炭素回収装置にて回収された二酸化炭素を貯蔵し、ガス化炉を次回起動する際に、貯蔵した二酸化炭素をガス化炉へ供給してもよい。
【0018】
この発明によれば、二酸化炭素回収装置にて、ガス化炉で生成された石炭ガスから二酸化炭素が分離されて、回収される。そして、二酸化炭素回収装置にて回収された二酸化炭素は、二酸化炭素貯蔵装置にて貯蔵され、貯蔵された二酸化炭素は、ガス化炉を次回起動する際に、二酸化炭素貯蔵装置からガス化炉へ供給される。そのため、石炭ガス化複合発電設備のシステム内で生成された二酸化炭素が、起動時の微粉炭供給用ガスとして使用される。また、二酸化炭素回収装置にて回収された二酸化炭素を貯蔵するため、石炭ガス化複合発電設備の外から別途二酸化炭素を搬入してくる必要がない。
【0019】
上記発明において、二酸化炭素回収装置にて回収された二酸化炭素は、ガス化炉及び二酸化炭素貯蔵装置に供給され、ガス化炉の起動後、二酸化炭素回収装置にて回収された二酸化炭素のみによって、微粉炭をガス化炉へ供給できるようになったとき、二酸化炭素貯蔵装置からの二酸化炭素の供給を停止してもよい。
【0020】
この発明によれば、起動後、二酸化炭素回収装置は、二酸化炭素を回収し、回収した二酸化炭素をガス化炉及び二酸化炭素貯蔵装置へ供給する。そして、ガス化炉が起動されて石炭ガスを生成できるようになり、二酸化炭素回収装置が所定流量の二酸化炭素を供給できるようになると、二酸化炭素回収装置にて回収された二酸化炭素のみによって、微粉炭をガス化炉へ供給できるようになる。このとき、本発明によれば、二酸化炭素貯蔵装置からの二酸化炭素の供給が停止されるため、二酸化炭素貯蔵装置に貯蔵された二酸化炭素は、起動時以外に使用されることはない。したがって、二酸化炭素貯蔵装置は、ガス化炉の起動に必要な二酸化炭素を貯蔵しておけばよい。
【0021】
また、本発明に係る石炭ガス化複合発電方法は、ガス化炉にて、ガス化剤として空気を用いて石炭からなる微粉炭をガス化して石炭ガスを生成するステップと、二酸化炭素を貯蔵した二酸化炭素貯蔵装置が、ガス化炉を起動する際に二酸化炭素を供給するステップと、二酸化炭素貯蔵装置から供給された二酸化炭素が、微粉炭をガス化炉へ供給するステップとを含む。
【0022】
この発明によれば、ガス化炉では、石炭からなる微粉炭が、ガス化剤としての空気によってガス化されて、石炭ガスが生成される。また、二酸化炭素が二酸化炭素貯蔵装置において貯蔵されており、ガス化炉を起動する際に二酸化炭素貯蔵装置から供給される。そして、二酸化炭素貯蔵装置から供給された二酸化炭素は、例えば微粉炭が貯蔵されたホッパからガス化炉へ微粉炭を供給する。したがって、ガス化炉が起動する前に、二酸化炭素によって微粉炭をガス化炉へ供給できるため、起動時の供給用ガスを生成する空気分離装置の容量を低減したり、別途空気分離装置を設置する必要がなくなる。
【発明の効果】
【0023】
空気分離装置を使用しないでガス化炉を加圧したり、ガス化炉へ微粉炭を搬送する際、効率良くシステムを起動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る空気吹きIGCCを示す構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る空気吹きIGCCの動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の一実施形態に係る空気吹きIGCCの動作を示すフローチャートである。
【図4】従来の空気吹きIGCCを示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態に係る石炭ガス化複合発電設備を図面に基づいて説明する。
図1に示す本実施形態の石炭ガス化複合発電設備は、空気をガス化剤としてガス化炉4で石炭ガスを生成する空気燃焼方式を採用し、かつ、二酸化炭素回収装置8で石炭ガス中から二酸化炭素を分離・回収して、二酸化炭素が分離された石炭ガスをガスタービン9へ供給する。すなわち、図1に示す石炭ガス化複合発電設備は、空気燃焼方式(空気吹き)の二酸化炭素回収石炭ガス化複合発電設備(以下、「空気吹きIGCC」という。)である。
【0026】
この空気吹きIGCCは、乾燥用ガスとともに原料となる石炭を微粉炭機1に供給する。微粉炭機1では、乾燥用ガスにより供給された石炭を加熱し、石炭中の水分を除去しながら細かい粒子状に粉砕して微粉炭を製造する。
こうして製造された微粉炭は、乾燥用ガスによりサイクロン2へ搬送される。サイクロン2の内部では、乾燥用ガス等のガス成分と微粉炭(粒子成分)とが分離され、ガス成分は排気される。一方、粒子成分の微粉炭は、重力により落下してホッパ3に回収される。
【0027】
ホッパ3内に回収された微粉炭は、後述する二酸化炭素回収装置8から加圧搬送用のガス(搬送用ガス)として導入した二酸化炭素により、ガス化炉4内へ搬送される。
ガス化炉4には、石炭ガスの原料として微粉炭が供給され、ガスタービン9から昇圧機11を介して供給される圧縮空気をガス化剤として、微粉炭をガス化した石炭ガスが製造される。
こうしてガス化炉4で生成された石炭ガスは、ガス化炉4の上部からガス冷却器5へ導かれて冷却される。この石炭ガスは、ガス冷却器5で冷却された後にチャー回収装置6へ供給される。
【0028】
チャー回収装置6では、微粉炭をガス化した石炭ガスとともに生成されたチャーが分離される。石炭ガスは、チャー回収装置6の上部から流出し、脱硫装置7を通って脱硫された後に二酸化炭素回収装置8へ供給される。
二酸化炭素回収装置8では、石炭ガス中の二酸化炭素が分離され、回収される。ここで回収された二酸化炭素は、微粉炭の搬送用ガスとして一部が二酸化炭素供給ラインを通って圧縮機13によって、ホッパ3へ圧送され、残りは適切に回収処理される。
【0029】
こうして二酸化炭素が分離された石炭ガスは、ガスタービン9の燃料ガスとして使用される。この燃料ガスをガスタービン9の燃焼器に供給して燃焼させることにより、高温高圧の燃焼排ガスが生成される。
この燃焼排ガスは、ガスタービン9のタービンを駆動した後、高温の排ガスとして排出される。こうして駆動されたガスタービン9は、タービンとともに回転する主軸が発電機15と連結されているので、発電機15を駆動して発電を行うことができる。
【0030】
ガスタービン9から排出された高温の排ガスは、一部が排ガスボイラ10に供給されて蒸気を生成する熱源として使用される。なお、排ガスボイラ10で蒸気生成に使用された排ガスは、必要な処理を施した後に大気へ排気される。
排ガスボイラ10で生成された蒸気は、発電用の蒸気タービン16等に供給される。本実施形態では、蒸気タービン16は、ガスタービン9と連結され、発電機15を駆動して発電を行う。
【0031】
石炭を粉砕して得られる微粉炭は、空気をガス化剤とするガス化炉4でガス化することによって石炭ガス及びチャーが生成され、石炭ガスはガスタービン9の燃料ガスとして使用される。このとき、二酸化炭素回収装置8で分離・回収した二酸化炭素の一部が圧縮機13に導入して昇圧され、この二酸化炭素が微粉炭用のホッパ3に供給されて微粉炭の搬送用ガスとして使用される。
【0032】
二酸化炭素貯蔵装置14は、二酸化炭素を貯蔵している。二酸化炭素貯蔵装置14は、例えば空気吹きIGCCの完成直後は、外部から搬入された二酸化炭素によって、二酸化炭素が貯蔵されるが、通常のサイクルで空気吹きIGCCが運用されるときは、二酸化炭素回収装置8にて分離され回収された二酸化炭素が貯蔵される。二酸化炭素貯蔵装置14は、冷却器を使用して液化した二酸化炭素を内部に貯蔵する。
【0033】
二酸化炭素は、ガス化炉を起動する際に二酸化炭素貯蔵装置14から供給される。そして、二酸化炭素貯蔵装置14から供給された二酸化炭素は、例えば微粉炭が貯蔵されたホッパ3からガス化炉4へ微粉炭を供給し、ガス化炉4を加圧する。したがって、ガス化炉4が起動する前に、二酸化炭素によって微粉炭をガス化炉4へ供給できるため、起動時の搬送用ガス(供給用ガス)を生成する空気分離装置の容量を低減したり、別途空気分離装置を設置する必要がなくなる。
【0034】
二酸化炭素回収装置8にて回収された二酸化炭素は、二酸化炭素貯蔵装置14にて貯蔵され、貯蔵された二酸化炭素は、ガス化炉4を次回起動する際に、二酸化炭素貯蔵装置14から供給される。そのため、空気吹きIGCCのシステム内で生成された二酸化炭素が、起動時の微粉炭供給用ガスとして使用される。また、二酸化炭素貯蔵装置14は、二酸化炭素回収装置8にて回収された二酸化炭素を貯蔵することになるため、通常の運用時には、空気吹きIGCCの外から別途二酸化炭素を搬入してくる必要がない。
【0035】
次に、本実施形態に係る空気吹きIGCCにおける微粉炭の搬送方法について説明する。図2は、本実施形態に係る空気吹きIGCCの動作を示すフローチャートである。
【0036】
まず、空気吹きIGCCが停止した状態、すなわち起動前の状態において、空気吹きIGCCのシステム全体が起動されたか否かが判断される(ステップS1)。システムが起動されると、まず、ガス化炉4を起動するため、二酸化炭素貯蔵装置14から二酸化炭素が供給される(ステップS2)。二酸化炭素貯蔵装置14から供給された二酸化炭素は、微粉炭が貯蔵されたホッパ3からガス化炉5へ微粉炭を搬送する(ステップS3)。
【0037】
ガス化炉4では、微粉炭がガス化剤としての空気によってガス化されて、石炭ガスが生成される(ステップS4)。ガス化炉4で生成された石炭ガスは、ガス化炉4の上部からガス冷却器5へ導かれて冷却され、チャー回収装置6へ供給される。石炭ガスは、さらに、チャー回収装置6の上部から流出し、脱硫装置7を通って脱硫された後に二酸化炭素回収装置8へ供給される。二酸化炭素回収装置8では、石炭ガスから二酸化炭素が分離され、回収される(ステップS5)。
【0038】
次に、二酸化炭素回収装置8が所定流量の二酸化炭素を供給でき、回収した二酸化炭素によって微粉炭をホッパ3からガス化炉4へ搬送できるかどうかを判断する(ステップS6)。二酸化炭素回収装置8が所定流量の二酸化炭素を供給できないときは、二酸化炭素貯蔵装置14からの二酸化炭素の供給を継続する。一方、ガス化炉4が起動されて石炭ガスを生成できるようになり、二酸化炭素回収装置8が所定流量の二酸化炭素を供給できるようになると、二酸化炭素回収装置8にて回収された二酸化炭素が微粉炭をガス化炉4へ供給し、ガス化炉4を加圧する(ステップS7)。
【0039】
このとき、二酸化炭素貯蔵装置14からの二酸化炭素の供給は停止してよいため、二酸化炭素貯蔵装置14に貯蔵された二酸化炭素は、起動時以外に使用されることはない。したがって、二酸化炭素貯蔵装置14は、ガス化炉の起動に必要な二酸化炭素を貯蔵しておけばよい。
【0040】
次に、二酸化炭素貯蔵装置14における二酸化炭素の貯蔵動作について図3を用いて説明する。二酸化炭素の二酸化炭素貯蔵装置14への貯蔵は、本実施形態の空気吹きIGCCが通常サイクルで運転されているときに行われる。
【0041】
まず、二酸化炭素貯蔵装置14に、空気吹きIGCCの起動に必要な容量の二酸化炭素が貯蔵されているかどうかが判断される(ステップS11)。空気吹きIGCCを起動するために必要な二酸化炭素が二酸化炭素貯蔵装置14に貯蔵されている場合は、二酸化炭素の貯蔵動作は行われない。
【0042】
一方、空気吹きIGCCを起動するために必要な二酸化炭素が二酸化炭素貯蔵装置14に貯蔵されていない場合、二酸化炭素回収装置8にて回収された二酸化炭素を二酸化炭素貯蔵装置14に貯蔵させる(ステップS12)。但し、二酸化炭素回収装置8にて回収された二酸化炭素が、微粉炭をガス化炉4へ供給できる流量を確保できるように、二酸化炭素貯蔵装置14へ供給する二酸化炭素の流量を調整する必要がある。
【0043】
以上、本実施形態によれば、ガス化炉4が起動する前に、二酸化炭素によって微粉炭をガス化炉4へ供給し、ガス化炉4を加圧できるため、起動時の供給用ガスを生成する空気分離装置の容量を低減したり、別途空気分離装置を設置する必要がなくなる。
【0044】
空気吹きIGCCにおいて、ガス化炉4で生成された石炭ガスから二酸化炭素を分離する二酸化炭素回収装置8を用いて、回収された二酸化炭素が微粉炭をガス化炉4へ搬送するシステムが提案されているものがあった。しかし、ガス化炉4が起動しない限り、二酸化炭素による微粉炭の搬送を実施できない。そのため、二酸化炭素回収装置8にて微粉炭の搬送に必要な二酸化炭素を供給できるようになるまでの間は、二酸化炭素をガス化炉4へ供給できないため、空気分離装置を使用しないIGCCでは、システムを適切に起動させることができないという問題があった。
【0045】
一方、本実施形態では、起動時の観点からも、空気分離装置の容量を低減したり、別途空気分離装置を設置する必要がなくなる。そのため、本実施形態は、設備費を下げ、プラント効率を向上することができ、かつ機器点数を減らして信頼性を向上させることができることから、プラントの経済性を改善できる。その結果、本実施形態によれば、空気吹きIGCCの利点を最大限に発揮できることになる。
【符号の説明】
【0046】
1 微粉炭機
2 サイクロン
3 ホッパ
4 ガス化炉
5 ガス冷却器
6 チャー回収装置
7 脱硫装置
8 二酸化炭素回収装置
9 ガスタービン
10 排ガスボイラ
11 昇圧機
12 空気分離装置
13 圧縮機
14 二酸化炭素貯蔵装置
15 発電機
16 蒸気タービン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス化剤として空気を用いて石炭からなる微粉炭をガス化して石炭ガスを生成するガス化炉と、
二酸化炭素を貯蔵しており、該ガス化炉を起動する際に該二酸化炭素を供給する二酸化炭素貯蔵装置と、
を備え、
該二酸化炭素貯蔵装置から供給された前記二酸化炭素が前記微粉炭を前記ガス化炉へ供給する石炭ガス化複合発電設備。
【請求項2】
前記ガス化炉で生成された前記石炭ガスから二酸化炭素を分離して回収する二酸化炭素回収装置を備え、
前記二酸化炭素貯蔵装置は、該二酸化炭素回収装置にて回収された前記二酸化炭素を貯蔵し、前記ガス化炉を次回起動する際に、貯蔵した前記二酸化炭素を前記ガス化炉へ供給する請求項1に記載の石炭ガス化複合発電設備。
【請求項3】
前記二酸化炭素回収装置にて回収された前記二酸化炭素は、前記ガス化炉及び前記二酸化炭素貯蔵装置に供給され、前記ガス化炉の起動後、前記二酸化炭素回収装置にて回収された前記二酸化炭素のみによって、前記微粉炭を前記ガス化炉へ供給できるようになったとき、前記二酸化炭素貯蔵装置からの前記二酸化炭素の供給を停止する請求項2に記載の石炭ガス化複合発電設備。
【請求項4】
ガス化炉にて、ガス化剤として空気を用いて石炭からなる微粉炭をガス化して石炭ガスを生成するステップと、
二酸化炭素を貯蔵した二酸化炭素貯蔵装置が、該ガス化炉を起動する際に該二酸化炭素を供給するステップと、
該二酸化炭素貯蔵装置から供給された前記二酸化炭素が、前記微粉炭を前記ガス化炉へ供給するステップと、
を含む石炭ガス化複合発電方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−180426(P2012−180426A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43190(P2011−43190)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】