説明

石綿含有物の除去方法

【課題】建造物内に鉛直に設けられた円筒部材の内壁に被装されている石綿含有物の層を、石綿の飛散を防止しつつ効率的に除去する方法を提供すること。
【解決手段】建造物内に鉛直に設けられた円筒部材の内壁に被装されている石綿含有物の層を、棒状回転粉砕具を用いて機械的に粉砕して除去する方法であって、該棒状回転粉砕具が、棒状部材にエロンゲーションピースを介して先端工具が具備されたものであり、円筒部材の上方から円筒部材の内部に処理水を散水させながら、円筒部材の上方から該棒状回転粉砕具を挿入し、該棒状回転粉砕具の回転により生じるハンマリング作用によって該石綿含有物の層を粉砕させて除去することを特徴とする石綿含有物の除去方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石綿含有物が使用されている建造物の解体工事時等における該石綿含有物の除去方法に関し、更に詳細には、棒状回転粉砕具の回転により生じるハンマリング作用によって、石綿含有物の層を粉砕させて除去する石綿含有物の除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石綿は、耐久性、耐熱性、電気絶縁性等の特性が非常に優れており、更に安価であるため、建設資材、電気製品、自動車部品等、様々な用途に広く使用されてきた。しかし、空気中に飛散した石綿が肺に吸収されると、約20〜40年の潜伏期間を経た後に、肺癌や中皮腫等の疾病を引き起こす可能性があることから、1975年以降においては、吹き付け石綿工法が禁止され、続いて2004年には石綿を1%以上含む製品の出荷が原則禁止されている。
【0003】
しかし、1970年以前に建築された建造物の多くは、主に断熱保熱を目的に石綿が大量に使用され、その石綿を使用した建造物の耐用期限が近年において本格的に到来することから、解体工事時等における現場や周辺地域に対して石綿公害が懸念されると共に、その撤去作業の工法が重要視されている。
【0004】
特に、建造物における暖房機、風呂釜等の加熱装置には、排熱管、煙突等、「該建造物内に鉛直に設けられた円筒部材」の内壁に、石綿含有物の層が存在する場合があり、その石綿含有物の層の安全な除去方法が望まれている。すなわち、建造物の解体に先立って石綿含有物の層を除去することが好ましいが、その安全で効率的な除去方法が望まれている。
【0005】
除去方法のうち、掻き出し工具を用いて手作業で行なう除去方法は、円筒部材の内部をスクレーパー、ケレン棒、ブラシ等を使用して人力で掻き落としながら除去するもので、除去作業時における現場や周辺地域における石綿の飛散が懸念されるとともに、その除去作業を行なう作業者の石綿の吸引による健康面の安全性が問題となるものであった。
【0006】
また、超高圧水を噴射して除去する方法としては、例えば、特許文献1記載の方法が提案されているが、超高圧水を送水するシャフトの継ぎ足し作業を必要としたり、屋上に、「シャフトの送り装置」、「シャフトの回転装置」、「噴射装置やシャフトを固定するガイド支柱」等を設置したり、現場での大掛かりな設備や準備作業を必要とするものであった。また、該シャフトが剛直で直線的であるため、段差やずれがあったり、折曲していたりする煙突等の円筒部材には適用できなかった。
【0007】
また、機械的に切削除去する方法としては、例えば、特許文献2記載の方法が提案されているが、該方法は、煙突の内壁を複雑な除去装置で切削していくため、煙突の内壁の直径と除去装置の外径を常に対応させておくべく、多種類の除去装置を準備しておく必要があった。また、切削した粉砕粉を回収する大掛かりな負圧集塵機を必要とし、また、その回収された粉砕物の飛散防止を図る必要があった。
【0008】
また、機械的に切削除去する方法ではあるが、負圧集塵機ではなく水を用いて飛散を防止する方法も提案されているが(例えば、特許文献3)、該方法も、現場である屋上での大掛かりな設備や準備作業を必要とするものであった。また、先端に切削式破砕機を有するシャフトが剛直で直線的であるため、煙突、石綿管等の既設パイプに段差やずれがあったり折曲していたりすると、該方法は適用ができなかった。また、既設パイプの内壁の直径と破砕機の外径を常に対応させておくべく、多種類の破砕機を準備しておく必要もあった。
【0009】
石綿管に代表される「建造物内に鉛直に設けられた円筒部材の内壁に被装されている石綿含有物の層」の除去の要求は、ますます高くなってきており、かかる公知技術では不十分であり、更なる改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第2991430号公報
【特許文献2】特開2009−144988号公報
【特許文献3】特開2000−204611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、建造物内に鉛直に設けられた円筒部材の内壁に被装されている石綿含有物の層を、石綿の飛散を防止しつつ効率的に除去する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、棒状部材にエロンゲーションピースを介して先端工具が具備された棒状回転粉砕具を用い、円筒部材の上方から散水させながら該棒状回転粉砕具を挿入し、該棒状回転粉砕具の回転により生じるハンマリング作用によって該石綿含有物の層を粉砕させて除去することによって、石綿の飛散を防止しつつ効率的に円筒部材の内壁に被装されている石綿含有物の層を除去できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、建造物内に鉛直に設けられた円筒部材の内壁に被装されている石綿含有物の層を、棒状回転粉砕具を用いて機械的に粉砕して除去する方法であって、該棒状回転粉砕具が、棒状部材にエロンゲーションピースを介して先端工具が具備されたものであり、円筒部材の上方から円筒部材の内部に処理水を散水させながら、円筒部材の上方から該棒状回転粉砕具を挿入し、該棒状回転粉砕具の回転により生じるハンマリング作用によって該石綿含有物の層を粉砕させて除去することを特徴とする石綿含有物の除去方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の石綿含有物の除去方法によれば、棒状回転粉砕具の棒状部材に連結されているエロンゲーションピースによって、先端工具が円筒部材の内壁をハンマリングすることによって、円筒部材の内壁に被装されている石綿含有物の層を、完全に効率よく簡便に除去することができる。また、棒状部材にエロンゲーションピースを介して先端工具が具備された棒状回転粉砕具は軽量であるため、例えば手作業も可能であり、簡便に石綿含有物の層を粉砕させて除去することができる。
【0015】
また、本発明の石綿含有物の除去方法によれば、上記棒状回転粉砕具のみならず、処理水散水ノズル、処理水送付ホース等も軽量・小型にできるため、作業者による手作業が可能となり、大型の装置支持部材、ビニールシート等での粉塵飛散防止用の囲い、作業場となる単管足場等が必須ではなくなる。特に、超高圧水を噴射して除去する方法に比較して、装置、作業等が簡便である。すなわち、本発明の石綿含有物の除去方法によれば、大幅なコストダウンが可能である。
【0016】
また特に、棒状回転粉砕具を形成する棒状部材をフレキシブルにもできるので、円筒部材自体、その内壁に石綿が被装されてなる煙突、石綿管等に、段差、ずれ、折曲等があっても好適に適用できる。また、先端工具が円筒部材の内壁をハンマリングするので、種々の円筒部材の内径に対応でき、円筒部材の内径や石綿管の内径にその外径を合わせた切削装置や超高圧水噴射ヘッドを常に準備しておく必要がない。また、エロンゲーションピースによるハンマリング作用を利用しているので、棒状回転粉砕具の中心軸と円筒部材の中心位置を厳密に合わせる必要がないので、作業者による手作業も可能となり、能率的に確実に石綿含有物を除去することができる。
【0017】
また、円筒部材の上方から円筒部材の内部に処理水を散水させながら、石綿含有物の層を機械的に粉砕させて除去するので、石綿が飛散することがなく、作業者や周辺環境の安全性が保たれる。また、負圧集塵機等の大型の装置を必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明における石綿含有物の除去方法の全体概要を示す説明図である。
【図2】本発明に使用される棒状回転粉砕具の全体を示す説明側面図である。
【図3】本発明に使用される棒状回転粉砕具に具備される先端工具の具体例を示す説明斜視図である。
【図4】本発明における石綿含有物の除去方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の石綿含有物の除去方法は、建造物内に鉛直に設けられた円筒部材37の内壁に被装されている石綿含有物の層34を除去する方法である。かかる円筒部材37は、例えば図1に示したように、建造物内にほぼ鉛直に設けられている。「ほぼ鉛直に設けられ」とは、途中に段差、ずれが生じていてもよく、全体的に折曲があってもよい。前記したように、むしろ、そのような場合に、本発明の効果がより発揮できる。円筒部材37の内径は特に限定はなく、石綿含有物の除去方法は、細いものから太いものまで種々の内径に対応できる。円筒部材37の材質は特に限定はなく、モルタル、コンクリート、煉瓦等が用いられる。
【0020】
本発明の除去対象は、円筒部材37の内壁に被装されている石綿含有物の層34である。「石綿含有物の層34」としては、例えば、円筒部材37の内壁に吹き付け塗装等された「石綿とセメント等の接着剤(バインダー)」が挙げられる。煙突の多くは、円筒部材37の内壁に「石綿と接着剤(バインダー)」が被装されてできている。また、「石綿含有物の層34」としては、例えば、石綿管が挙げられる。石綿管は石綿と接着剤(バインダー)の役目をするセメント等で形成されている。石綿管は通常は工場で生産され、それを現場で、モルタルと粗骨材(砂利等)で形成されるコンクリートによって周りを囲んで固定する。従って、石綿管は、通常はコンクリートで囲まれており、この場合、該コンクリート部分が円筒部材37に該当する。
【0021】
なお、円筒部材37及びその内壁に被装されている石綿含有物の層34の一般的な形態については、円筒部材37は100〜300mmの厚みを有し、石綿含有物の層34の一形態である石綿管の1本の長さは3m前後、厚みは5〜25mm、内径はおおよそ100〜200mmである。
【0022】
石綿管の直径は規格があり、内径がある程度固定されているが、一般の煙突は内径が一定でない。本発明は、種々の内径に適用可能であるので、本発明は、石綿管と一般の煙突の何れにも好適に適応が可能である。
【0023】
本発明の石綿含有物の除去方法に使用される棒状回転粉砕具11は、図2に示すように、棒状部材12にエロンゲーションピース13を介して先端工具14が具備されたものである。棒状部材12は、剛直なものでもよいし、フレキシブルなものでもよい。フレキシブルな棒状部材12は、特に限定はないが、スチールワイヤーを軸中心に近いところから外側に向かって重ねて左右交互に巻いたものが、柔軟性、強靭性等の点から好ましい。上記スチールワイヤーとしては、特に限定はないが、例えば、硬鋼線、ピアノ線等が挙げられる。
【0024】
棒状部材12の直径は特に限定はないが、5mm〜20mmが、柔軟性、強靭性等の点等から好ましく、7mm〜15mmが特に好ましい。細すぎる場合は、エロンゲーションピース13のハンマリング運動に機械的に耐えられない場合等があり、一方、太すぎる場合は、取り扱いが困難になる場合等がある。また、棒状部材12の長さは特に限定はないが、3m〜20mが好ましく、4m〜17mがより好ましく、5m〜15mが特に好ましい。短すぎる場合は、通常約3mある1階部分だけにすら対応できない場合があり、一方、長すぎる場合は、不必要であったり、回転が十分に伝わらなかったりする場合がある。
【0025】
上記棒状部材12は、回転する棒状部材12を保護するために、全体がチューブで覆われていることが好ましい。棒状部材12がフレキシブルである場合は、チューブもフレキシブルであることが好ましい。かかるフレキシブルチューブは、高速回転する棒状部材12を保護するようになっており、また、棒状部材12が、段差、ずれ、折曲等があってもスムースに通過できるようになっている。フレキシブルチューブは、一重山型であってもインターロック型であってもよい。材質は特に限定はないが、例えば、亜鉛めっき磨帯鋼、ステンレス、黄銅等が挙げられる。内面は高速回転に耐えられるように、炭素工具鋼がスパイラルにライナーとして巻かれていることが好ましい。
【0026】
図2に示したように、棒状回転粉砕具11の棒状部材12にはエロンゲーションピース13が接続されている。「エロンゲーション(elongation)」とは、材料が降伏点を過ぎて、変位に比例した応力に比べ、より小さい応力しかかからなくなった状態をいう。すなわち、小さい応力でその応力に比例した変位よりも大きな変位を起こす状態をいう。従って、エロンゲーションピース13は、棒状部材12がその軸を中心に回転すると、その先端に具備された先端工具14をスイングさせ、ハンマリング作用によって石綿含有物の層34を粉砕させることができる。
【0027】
エロンゲーションピース13は、スイングしてハンマリング作用を生じさせる効果以外に、先端工具14にかかる震動や衝撃を、緩衝作用によって棒状部材12に直接伝達させないようにし、棒状部材12の損傷を防いでその寿命を延ばす効果も有している。
【0028】
本発明の石綿含有物の除去方法におけるエロンゲーションピース13の長さは、特に限定はないが、100mm〜500mmが好ましく、130mm〜400mmがより好ましく、160mm〜300mmが特に好ましい。エロンゲーションピース13の長さが短すぎると、ハンマリング作用があまり生じない場合や、スイングの大きさが円筒部材37の内径に比べて小さすぎて(振れ幅が小さすぎて)、石綿含有物の層34を粉砕できない場合がある。一方、エロンゲーションピース13の長さが長すぎると、ハンマリング作用が効果的でない場合がある。
【0029】
先端工具14は、図2に示したように、エロンゲーションピース13の先端に具備されている。該先端工具14の形状は、ハンマリング作用によって石綿含有物の層34を粉砕できれば特に限定はないが、図3に示したような三角柱15又は四角柱16であることが、効率的で良好な石綿含有物の層34の粉砕のために好ましい。中でも、先端工具14の形状は三角柱15が、上記点から特に好ましい。形状が三角柱の先端工具14(図3(a))は、三角カッター15とも呼ばれているものである。
【0030】
本発明の石綿含有物の除去方法においては、円筒部材37の上方から円筒部材37の内部に処理水Hを散水させながら、円筒部材37の上方から棒状回転粉砕具11を挿入して石綿含有物の層34を粉砕させて除去することを特徴とする。処理水Hを散水させながら石綿含有物の層34を粉砕させることによって、石綿が周囲に飛散することを防止することができる。また、石綿又は粉砕された石綿含有物35を処理水Hに分散させて、廃棄処理をし易くする効果も有している。また、超高圧水による石綿含有物の層34の粉砕方法と比較して、大量の水を必要としない。
【0031】
以下、本発明の石綿含有物の除去方法についての作業操作を、順を追って説明するが、本発明はその技術的思想の範囲内であれば、以下の具体的方法、手順等に限定されるものではない。
【0032】
<各装置の配置手順>
図1は、本発明における石綿含有物の除去方法の全体概要を示す説明図である。
(1)石綿含有物の層34が内壁に被装されている円筒部材37が設けられた建造物Kの屋上に、棒状回転粉砕具11が接続された棒状回転粉砕装置10を搬入する。
(2)建造物Kの途中階の給排気口を封鎖板等で封鎖する。
(3)処理水送付ホース47を水道水蛇口48に接続する。
(4)棒状回転粉砕装置10に電源を接続する。
(5)建造物Kに埋設されている円筒部材37の最下端部と吸引装置40とを、引き込みホース42及び/又は吸引処理ホース43で接続する。
【0033】
配置手順(5)では、以下のようにすることも好ましい。
(5−1)円筒部材37の最下端部と、貯留ドラム缶41とを、引き込みホース42を用いて接続する。
(5−2)貯留ドラム缶41と、車両に搭載されている吸引装置40とを、吸引処理ホース43を用いて接続する。
【0034】
<除去作業の手順>
(1)棒状回転粉砕装置10の始動スイッチを入れて、モーター21を回転させる。
(2)石綿含有物の層34を有する円筒部材37の上方から、要すれば、目視、CCDカメラ等で粉砕状況を確認しながら、棒状回転粉砕具11を「石綿含有物の層34が内壁に被装されている円筒部材37」に沿って降下させつつ、上方から下方に向かって、石綿含有物の層34を粉砕除去していく。
このとき、棒状回転粉砕具11を、一旦、円筒部材37の下部まで下ろし、下方から上方に粉砕除去してもよい。
(3)処理水散水ノズル46から処理水Hを散水して石綿の飛散を防ぐ。
(4)棒状回転粉砕具11の回転数、降下(上昇)速度等を、石綿含有物の層34の粉砕状況に合わせて選択又は調整する。
石綿含有物の層34が除去されて先端工具14が、コンクリート等で形成された円筒部材37に当たると音が変わるので、その部分の石綿含有物の層34が除去されたことが作業者に分かり、棒状回転粉砕具11の降下(上昇)速度等を適切に調整できる。
(5)処理水Hに分散された「粉砕された石綿含有物35」を、吸引装置40により吸引し、引き込みホース42及び/又は吸引処理ホース43を通して、排水回収装置45に回収する。
【0035】
除去作業の手順(5)では、以下のようにすることも好ましい。
(5−1)処理水Hに分散された「粉砕された石綿含有物35」を、引き込みホース42を通して貯留ドラム缶41に貯留する。
(5−2)貯留ドラム缶41内の上澄みPを、汲み上げポンプで汲み上げて下水に放水する。
(5−3)貯留ドラム缶41の底に沈殿している「粉砕された石綿含有物35」は、要すればセメント固化処理し、特別産業廃棄物として廃棄する。
【0036】
以上のように、本発明における石綿含有物の除去方法は、超高圧水を噴射して除去する方法や、従来の機械的切削除去方法と比べ、各装置の配置や除去作業の手順に要する工程が格段に簡単・効率的で、人件費や設置費用が低いもので、特に石綿含有物の除去方法として有効な工法と言えるものである。
【0037】
図2は、本発明における石綿含有物の除去方法における棒状回転粉砕具11の全体を示す説明図である。棒状回転粉砕具11は、少なくとも、直管又はフレキシブルに形成される棒状部材12、円筒部材37の内面をスイングしてハンマリング作用を生じさせるエロンゲーションピース13、及び、石綿含有物の層34を切削除去する先端工具14で構成されている。棒状回転粉砕装置10は、棒状回転粉砕具11、モーター21、該モーター21に内蔵される変速機構22とで構成されている。
【0038】
棒状回転粉砕具11を回転させて石綿含有物の層34を粉砕させる際の上記棒状回転粉砕具11の回転速度は、特に限定はないが、200〜1200回転/分が好ましく、250〜1000回転/分がより好ましく、300〜750回転/分が特に好ましい。変速機構22は、モーター21の回転を、例えばVベルトとVベルト車により変速し、適正回転で石綿含有物の層34の除去ができるように調整する。
【0039】
図3は、本発明における石綿含有物の除去方法に使用される先端工具14の種類を示す説明図である。前記したように、三角柱(三角カッター)15、四角柱16が好ましい。
【0040】
図4は、本発明における石綿含有物の除去方法の作業状態を示す説明図である。建造物K内に鉛直に設けられた円筒部材37の内壁に被装されている石綿含有物の層34の内側に、棒状回転粉砕具11を挿入し、モーター21の電源を入れることによって、円筒部材37内で棒状回転粉砕具11を回転させて、エロンゲーションピース13と先端工具14のハンマリング作用によって、石綿含有物の層34を粉砕させて除去する。また、石綿の飛散防止を図るため、切削付近には水道水蛇口48にビニールホースを接続した処理水送付ホース47が配置され、粉砕された石綿含有物35を有する処理水Hは、吸引装置40により吸引され排水回収装置45に回収される。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の石綿含有物の除去方法は、除去効率、円筒部材の内径に対する適応性、段差・ずれ・屈曲・折曲に対する適応性、石綿の飛散に対する安全性、作業開始までの時間短縮、装置の簡便性等に優れているため、石綿管等の石綿含有物の層を有するあらゆる建造物に対して広く利用されるものである。
【符号の説明】
【0042】
10 棒状回転粉砕装置
11 棒状回転粉砕具
12 棒状部材
13 エロンゲーションピース
14 先端工具
15 三角柱(三角カッター)
16 四角柱
21 モーター
22 変速機構
31 内壁
34 石綿含有物の層(例:石綿管)
35 粉砕された石綿含有物
37 円筒部材
40 吸引装置
41 貯留ドラム缶
42 引き込みホース
43 吸引処理ホース
45 排水回収装置
46 処理水散水ノズル
47 処理水送付ホース
48 水道水蛇口
K 建造物
H 処理水
P 上澄み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物内に鉛直に設けられた円筒部材の内壁に被装されている石綿含有物の層を、棒状回転粉砕具を用いて機械的に粉砕して除去する方法であって、該棒状回転粉砕具が、棒状部材にエロンゲーションピースを介して先端工具が具備されたものであり、円筒部材の上方から円筒部材の内部に処理水を散水させながら、円筒部材の上方から該棒状回転粉砕具を挿入し、該棒状回転粉砕具の回転により生じるハンマリング作用によって該石綿含有物の層を粉砕させて除去することを特徴とする石綿含有物の除去方法。
【請求項2】
上記先端工具の形状が三角柱又は四角柱である請求項1記載の石綿含有物の除去方法。
【請求項3】
上記先端工具が三角カッターである請求項2記載の石綿含有物の除去方法。
【請求項4】
上記棒状部材がフレキシブル部材であることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載の石綿含有物の除去方法。
【請求項5】
円筒部材の内壁に沿って被装されている石綿含有物の層を形成するものが石綿管である請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載の石綿含有物の除去方法。
【請求項6】
棒状回転粉砕具を回転させて石綿含有物の層を粉砕させる際の上記棒状回転粉砕具の回転速度が、200〜1000回転/分である請求項1ないし請求項5の何れかの請求項に記載の石綿含有物の除去方法。
【請求項7】
石綿含有物の粉砕物が含有された処理水を、円筒部材の下端付近から吸引装置を用いて吸引回収する請求項1ないし請求項6の何れかの請求項に記載の石綿含有物の除去方法。
【請求項8】
上記円筒部材の下端付近から上記吸引装置までの間に貯留ドラム缶を設け、該貯留ドラム缶に石綿含有物の粉砕物が含有された処理水が一定量貯まった時点で、該処理水を回収する請求項7に記載の石綿含有物の除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−226141(P2011−226141A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96600(P2010−96600)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(390020422)日進機工株式会社 (7)
【Fターム(参考)】