説明

石膏ボード複合材の製造方法

【課題】石膏ボード同士、また石膏ボードと他材料の切断面を付き合せた状態で、短時間で複合することができる石膏ボード複合材の製造方法を提供すること。
【解決手段】石膏ボード1の切断面11と被接着物2を付き合わせて接着し、石膏ボード1の表面及び被接着物2の表面に表面材4を接着する石膏ボード複合材の製造方法であって、石膏ボード1と被接着物2を並べて、両方の表面端部を跨ぐように接着剤3を供給して接着することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石膏ボード複合材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の内壁面や天井面、床材、家具等に用いるボード類として、石膏ボードを材料の一部に使用した複合ボードが用いられている。石膏ボードは、安価で耐火性を有することから建築物に使用する複合ボードの材料として特に好適に用いられる。
【0003】
これまでにこのような複合ボードとして、石膏ボードと被接着物を石膏ボードの切断面で付き合わせて接着して、表面に化粧材を接着した複合ボードが提案されている(例えば、引用文献1参照)。
【0004】
通常、石膏ボードの表面は紙で覆われているが、切断面は石膏が露出している。そして、この石膏が露出している石膏ボードの切断面は、石膏が微粉末として切断面に介在している。
【0005】
そのため、石膏ボードの切断面と被接着物とを付き合わせて接着する場合には、接着剤表面が石膏の微粉末で覆われてしまい、十分な強度の接着ができないという問題があった。
【0006】
このような問題に対して、これまでに酢酸ビニル系接着剤等を用いて石膏ボードの切断面と被接着物を付き合わせて接着する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平7−43199号公報
【特許文献2】特開平8−13739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この方法によれば、酢酸ビニル系接着剤等が石膏ボード切断面から内部にまで入り込むことにより、比較的高強度の接着が可能となる。しかしながら、この方法であっても接着剤の塗布量の特定が困難であったり、接着強度の発現までに時間がかかる等の問題があった。
【0009】
なお、このような石膏ボードの切断面での接着においては、上記のような石膏ボードの切断面と石膏ボード以外の他材料よりなる被接着物とを付き合わせて接着する場合のみならず、石膏ボードの切断面と被接着物としての石膏ボードとを付き合わせて接着する場合においても同様の問題があった。
【0010】
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、石膏ボードの切断面と被接着物としての他材料、又は石膏ボードの切断面と、被接着物としての石膏ボードを付き合わせた状態で、短時間で複合することができる石膏ボード複合材の製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するために以下のことを特徴としている。
即ち、本発明の石膏ボード複合材の製造方法は、石膏ボードの切断面と被接着物を付き合わせて接着し、石膏ボードの表面及び被接着物の表面に表面材を接着する石膏ボード複合材の製造方法であって、石膏ボードと被接着物を並べて、両方の表面端部を跨ぐように接着剤を供給して接着することを特徴とする。
【0012】
この石膏ボード複合材の製造方法において、石膏ボードと被接着物の両方の表面端部を跨ぐように供給する接着剤が、再活性接着剤であることが好ましい。
【0013】
また、前記石膏ボード複合材の製造方法において、再活性接着剤が、ホットメルト接着剤であることが好ましい。
【0014】
また、前記石膏ボード複合材の製造方法において、接着剤を、螺旋状に表面端部を走査して供給することが好ましい。
【0015】
さらに、前記石膏ボード複合材の製造方法において、石膏ボードと被接着物の両方の表面に表面材をホットメルト接着剤で接着することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、石膏ボードの切断面と被接着物としての他材料、又は石膏ボードの切断面と、被接着物としての石膏ボードを付き合せた状態で、接着して短時間で複合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の石膏ボードと被接着物の表面端部を跨ぐように接着剤を供給して接着する状態を説明するための概略斜視図である。
【図2】(A)は、接着剤を直線的な帯状に供給する状態を示す概略平面図であり、(B)は、接着剤を螺旋状に表面端部を走査するように供給する状態を示す概略平面図である。
【図3】石膏ボードと被接着物を接着した後、表面材を貼り付ける状態を説明するための概略斜視図である。
【図4】(A)は表面材を貼り付ける前の状態を示す正面図であり、(B)は再活性接着剤を再活性化せずに表面材を貼り付けた状態を示す正面図であり、(C)は再活性接着剤を再活性化して表面材を貼り付けた状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、実施形態に基づき本発明について説明する。
【0019】
本発明の石膏ボード複合材の製造方法は、図1に示すように、石膏ボード1と被接着物2を並べて、両方の表面端部を跨ぐように接着剤3を供給して接着するものであり、石膏ボード1と被接着物2を複合したときの接触面と、接着剤を供給する面が異なることを特徴としている。
【0020】
通常、被接着物同士の接触面に接着剤を供給するが、被接着物の少なくとも一方が石膏ボードで石膏が露出している切断面では、接着剤表面が石膏の微粉末で覆われてしまうために接着力が極端に低下してしまう。
【0021】
一方、通常石膏ボードの表面は紙が貼り付けてあり、この紙は接着剤との接着力が非常に良好であるため、図1に示すように、石膏ボード1と被接着物2の表面端部を跨ぐように接着剤3を供給することにより石膏ボード1の切断面11の影響を受けることなく複合することが可能となる。
【0022】
本発明の石膏ボード複合材の製造方法において、石膏ボード1の切断面11と付き合わせて接着する被接着物2としては特に制限はなく、例えば、無機材料、樹脂材料、木材の無垢材、合板、集成材、中密度繊維板(以下、単にMDFと略称する)、パーティクルボード、石膏ボード等を挙げることができる。
【0023】
合板としては、ラワン、ベニヤ等の南洋材の単板を貼り合わせた普通合板、針葉樹の単板を貼り合わせた針葉樹合板等や、ナラ、カバ、メープル、ウォールナット、ビーチ等の薄単板、紙、フィルム等を表面に貼り合わせた合板等を用いることができる。
【0024】
また、本発明の石膏ボード複合材の製造方法において、石膏ボード1と被接着物2の表面端部を跨ぐように供給する接着剤3としては、石膏ボード1表面の紙と、被接着物2表面の両方とに接着力を有し、ある程度の厚みの接着剤の固化層を形成する接着剤3であれば特に制限なく用いることができ、これらのものとしては、例えば合成ゴム、オレフィン樹脂等からなる接着剤等を挙げることができる。
【0025】
これらの中でも再活性化が可能な再活性接着剤が好ましく、例えば主成分がエチレン酢酸ビニル樹脂、合成ゴム、オレフィン樹脂等からなるホットメルト接着剤を好適に用いることができる。
【0026】
ホットメルト接着剤を用いて石膏ボード1と被接着物2の表面端部を跨ぐように接着することにより、石膏ボード1の切断面11で接着することなく石膏ボード1と被接着物2を強力に繋ぎ合せることができる。
【0027】
なお、本発明で用いる再活性接着剤とは、供給した後一旦固化し、その後必要な時に溶剤や熱等により接着力を再活性化することが可能な接着剤を意味する。
【0028】
この石膏ボード1と被接着物2の表面端部を跨ぐように接着するための接着剤3の供給方法は、両部材の表面端部を跨ぐように供給されれば特に制限されるものではないが、例えば、図2(A)の31に示すような直線的な帯状に供給する方法や、図2(B)の32に示すような螺旋状に表面端部を走査するように供給する方法が挙げられる。
【0029】
図2(B)の32に示す螺旋状に表面端部を走査する供給方法によれば、同じ供給範囲について擦り付けるように接着剤3を供給するため、接着剤3の厚みを比較的薄くでき、少ない接着剤3の供給量で効果的に接着強度が得られるので特に好ましい。
【0030】
次に、本発明の石膏ボード複合材の製造方法では、図3に示すように石膏ボード1と被接着物2とを接着した後、両部材の表面に表面材4を接着する。
【0031】
本発明で用いられる表面材4としては、石膏ボード複合材の使用用途等により適宜選択することができる。
【0032】
これらの表面材4としては、例えば、各種模様が施された合成樹脂シート(フィルム)、天然銘木をスライスして形成された突板、合板、集成材、MDF、パーティクルボード等を挙げることができ、これらの中でも石膏ボード複合材の強度等の観点から、MDFを好適に用いることができる。
【0033】
図4(A)に示すように、石膏ボード1と被接着物2の表面に表面材4を接着するための接着剤41としては、石膏ボード1と被接着物2が表面材4と強固に接着できるものであれば特に制限なく用いることができ、これらのものとしては、ホットメルト接着剤、酢酸ビニル系接着剤等を挙げることができる。
【0034】
本発明において、表面材4としてMDFを用いる場合には、上記の接着剤41の中でもホットメルト接着剤を用いるのが好ましく、特にPUR(Poly Urethane Reactive)系接着剤を好適に用いることができる。
【0035】
PUR系接着剤は、反応型ホットメルト樹脂であり、ポリウレタン系の未硬化樹脂(プレポリマー)を主成分とし加熱溶解の後、水、例えばMDF中の水分と反応し硬化する特性を有するものである。
【0036】
なお、石膏ボード1と被接着物2の表面端部を跨ぐように接着する接着剤3により接着部に大きな厚みが出た場合には、この上にそのまま表面材4を貼り付けると、図4(B)に示すようなホットメルト接着剤3の段差による非接着部30が生じる場合がある。
【0037】
このような場合を考慮して、再活性接着剤のホットメルト接着剤を用いて、加熱等の再活性化を行うことにより、図4(C)に示すように、ホットメルト接着剤3が軟化して延びて段差が少なくなり、図4(B)に見られる非接着部30の発生を解消することが可能となる。
【実施例】
【0038】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0039】
<実施例1>
石膏ボードと、被接着物としての合板、共に縦500mm、横50mm、厚み9.5mmのものを用意し、石膏ボードの切断面と合板の端面を付き合わせて、図2(A)31に示すように、石膏ボードと被接着物の表面端部を跨ぐようにホットメルト接着剤(PUR:DIC(株)製、MK200Y)を直線的な帯状に塗布した。
【0040】
ホットメルト接着剤は、石膏ボードと被接着物の表面端部を跨ぐように巾5mmで、表1に示す条件で塗布して石膏ボードと合板の複合材を作製した。
【0041】
<実施例2>
ホットメルト接着剤の塗布を図2(B)32に示すような螺旋状の巾10mmの塗布とした以外は実施例1と同様にして石膏ボードと合板の複合材を作製した。なお、接着剤の塗布条件は表1の通りとした。
【0042】
<比較例1>
石膏ボードと合板、共に縦500mm、横50mm、厚み9.5mmのものを用意し、石膏ボード切断面と合板の端面に、酢酸ビニル系接着剤を塗布して石膏ボードと合板の複合材を作製した。なお、接着剤の塗布条件は表1の通りとした。
【0043】
<比較例2>
接着剤にホットメルト接着剤(PUR:DIC(株)製、MK200Y)を用いた以外は比較例1と同様にして石膏ボードと合板の複合材を作製した。なお、接着剤の塗布条件は表1の通りとした。
【0044】
実施例1、2、比較例1、2の石膏ボードと合板の複合材について作業性、接着強度の評価及び総合評価を行った。
【0045】
[作業性]
石膏ボードと合板の接合の作業性を次の基準により評価した。
◎:作業性が非常に良い。
○:作業性が良い。
△:作業性が悪い。
×:作業性が非常に悪い。
【0046】
[接着強度]
石膏ボードと合板の接合箇所の接着強度は、JISA5905(繊維板)の、剥離強さ試験に準じて、石膏ボードと合板の付き合わせた端面と直交する方向に引っ張って測定した。
【0047】
[総合評価]
作業性及び接着強度から総合評価を次の基準により評価した。
◎:作業性及び接着強度を総合して非常に良い。
○:作業性及び接着強度を総合して良い。
△:作業性及び接着強度のいずれかが悪い。
×:作業性及び接着強度を総合して非常に悪い。
【0048】
評価結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
これらの結果から、石膏ボードの切断面を酢酸ビニル系接着剤で接着した比較例1は、接着強度は良好であったものの、石膏ボードと被接着物の表面端部を跨ぐように接着した実施例1、2に比べて、接着剤の硬化時間が長く、接着剤塗布量も多かった。
【0051】
また、石膏ボードと被接着物の表面端部を跨ぐように接着する方法として、接着剤を螺旋状に塗布した実施例2は、直線的な帯状に塗布した実施例1に比べて接着強度は劣るものの、硬化時間、接着剤塗布量及び作業性の点で優れおり、表面材の接着までの仮接着と考えた場合には十分であることが確認された。
【0052】
さらに、実施例1、2は、比較例1、2に比べて作業性が良好であることが確認された。そして総合評価として、比較例1、2に比べて実施例1、2が優れていることが確認された。
【0053】
次に、以下実施例3、4及び比較例3に示す石膏ボードと合板及び表面材の複合材を作製した。
【0054】
<実施例3>
実施例2で作製した石膏ボードと合板の複合材の表面に、表面材として縦500mm、横100mm、厚み2.7mmのMDF(エヌ・アンド・イー(株)製)をPUR接着剤(DIC(株)製、MK200Y)を用いて張り合わせて石膏ボードと合板及び表面材の複合材を作製した。接着剤塗布時温度は130℃とした。
【0055】
<実施例4>
接着剤塗布時温度を90℃とした以外は、実施例3と同様にして石膏ボードと合板及び表面材の複合材を作製した。
【0056】
<比較例3>
接着剤に水性ビニルウレタン接着剤(株式会社オーシカ製、NS−5)を用いた以外は実施例3と同様にして石膏ボードと合板及び表面材の複合材を作製した。
【0057】
実施例3、4、比較例3の石膏ボードと合板及び表面材の複合材について接着強度、表面材の接着剤とホットメルト接着剤との接着性評価及び総合評価を行った。
【0058】
[表面材の接着剤とホットメルト接着剤との接着性]
表面材の接着剤とホットメルト接着剤との接着性を次の基準により評価した。
◎:接着性が非常に良い。
○:接着性が良い。(該当するものなし)
×:接着性が悪い。
【0059】
[接着強度]
石膏ボードと合板の接合箇所の接着強度は、JISA5905(繊維板)の、剥離強さ試験に準じて測定した。
【0060】
[総合評価]
接着強度及び表面材の接着剤とホットメルト接着剤との接着強度から総合評価を次の基準により評価した。
◎:接着強度及び表面材の接着剤とホットメルト接着剤との接着性を総合して非常に良い。
○:接着強度及び表面材の接着剤とホットメルト接着剤との接着性を総合して良い。
×:接着強度及び表面材の接着剤とホットメルト接着剤との接着性のいずれかが悪い。
【0061】
評価結果を表2に示す。
【0062】
【表2】

【0063】
これらの結果から、石膏ボードと被接着物の表面端部をホットメルト接着剤を用いて跨ぐように接着した上に、ホットメルト接着剤の再活性化を発現させる温度で加熱したPUR接着剤により表面材のMDFを接着した実施例3、4は、ホットメルト接着剤の再活性化を発現させずに接着した比較例3に比べて接着強度及び表面材の接着剤とホットメルト接着剤との接着性が優れていることが確認された。
【符号の説明】
【0064】
1 石膏ボード
11 切断面
2 被接着物
3 接着剤
30 非接着部
31 直線的な帯状の接着剤供給
32 螺旋状の接着剤供給
4 表面材
41 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石膏ボードの切断面と被接着物を付き合わせて接着し、石膏ボードの表面及び被接着物の表面に表面材を接着する石膏ボード複合材の製造方法であって、石膏ボードと被接着物を並べて、両方の表面端部を跨ぐように接着剤を供給して接着することを特徴とする石膏ボード複合材の製造方法。
【請求項2】
石膏ボードと被接着物の両方の表面端部を跨ぐように供給する接着剤が、再活性接着剤であることを特徴とする請求項1に記載の石膏ボード複合材の製造方法。
【請求項3】
再活性接着剤が、ホットメルト接着剤であることを特徴とする請求項2に記載の石膏ボード複合材の製造方法。
【請求項4】
接着剤を、螺旋状に表面端部を走査して供給することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の石膏ボード複合材の製造方法。
【請求項5】
石膏ボードと被接着物の両方の表面に表面材をホットメルト接着剤で接着することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の石膏ボード複合材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−67946(P2013−67946A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205154(P2011−205154)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】