説明

石英ガラス成形体の製造装置

【課題】高収率、かつ、低コストで石英ガラス成形体を製造できるようにする。
【解決手段】厚さ1cm、直径50cmの円形のカーボン底板12の上に、下型52、石英ガラス母材16、押圧治具18、ガイド部材20、及び荷重板22を順次載置した。この外側に幅20cm、長さ30cm、厚さ3cmのカーボン板を6枚組み合わせて正六角柱の外筒14を組み上げ、カーボン治具で固定して製造装置を組み上げた。石英ガラス母材16を外筒の内部にセットして電気炉に入れ、1800℃において2時間加熱溶融したところ、上面中央にφ22cm、深さ5cm、また、その下面中央にφ20cm、深さ4cmの凹部を有する一辺20cm、平均高さ12cmの正六角柱の石英ガラス成形体16aを得た。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石英ガラス成形体、特にリング状あるいは円板状石英ガラス製品を得るための製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラス製品、特に、石英ガラスよりなる石英ガラス製品は、光学レンズなどの光学機器に限らず、その耐久性や化学的安定性などの利点を生かし、半導体製造用治具、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)パネル製造用フォトマスクあるいは光通信用の精密部品などに広く用いられている。一般に、こうした石英ガラス製品の製造プロセスとしては、エッチングや研削加工などのような、加工対象物から不要な領域を除去する除去工程を主に用いるプロセスが採用されていた。
【0003】
しかしながら、エッチングによる製造プロセスは、加工対象物の表面の比較的微細な加工に限定され、得られるガラス製品が限定されてしまうという問題点があった。また、研削加工による製造プロセスは、加工対象物を少量ずつ研削して所望の形状に加工するため、加工時間が多くかかると共に、加工対象物から不要な部分を全て研削してしまうため、最終的に加工された石英ガラス製品の重量に比べ、より大きな石英ガラス材の重量が必要となり、製造効率や製造コスト上で問題点があった。
【0004】
こうした問題点を解決するため、型材を用いて石英ガラス製品の概形を成形により製造し、その成形体に研削などの機械加工を施してガラス製品を作製する手法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3778250号公報
【特許文献2】特開2009−234858号公報
【0006】
その内容について図1に基づいて簡単に説明する。
【0007】
図1には石英ガラス母材16が載置された型材10の概略構成が示されており、図3には図1のA−A断面図が示されており、図4には型材10に石英ガラス母材16の加熱溶融後の石英ガラス材(成形体)と型材10のA−A断面図が示されている。
【0008】
この石英ガラス母材16の成形に用いる型材10は、底板12と、この底板12の上面12aに配置される所望の内径を有する円筒形状の外筒14と、外筒14の内側中央に載置される下型52と、外筒14の内周面14a内を上下方向に摺動自在に移動可能なガイド部材20と、ガイド部材20の上面20aに載置される溶融された石英ガラス母材16に荷重をかけて成形するための荷重板22と、ガイド部材20の下面20bに配置され、下型52の上面52aに載置された加工対象物の石英ガラス母材16を上方から押圧する略円柱形上の押圧治具18で構成されている。外筒14は、円周方向に2〜4分割の部材を組み立てた円筒形である。
【0009】
下型52、石英ガラス母材16、押圧治具18、ガイド部材20、及び荷重板22の中心軸は、外筒14の中心軸(X−X)上に位置するように配設される。また、これらの型材10の材料は熱的安定性、化学的安定性、加工性及びコストの面からカーボンが採用されており、更には、底板12の上面12a、外筒14の内周面14a、押圧治具18の下面18b、側面18c、下型52の上面52a、及び、側面52cには離型剤が被覆されている。
【0010】
この型材10を使用して石英ガラス母材16を石英ガラス製品の概形に溶融成形するには、石英ガラス母材16が載置された型材10を電気炉などの加熱装置(図示せず)を使用し、例えば、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下において、加熱温度1500℃ないし2000℃で加熱する。加熱溶融された石英ガラス母材16は、図4に示すように、外筒14の内径と同一寸法で上下面に凹部のある石英ガラス成形体として成形される。
【0011】
こうして成形された石英ガラス母材16は、研削などの機械加工を経て所望のリング状石英ガラス製品となるのである。
【0012】
なお、上記の説明においては、下型52を使用して上下に凹部を形成する場合について説明したが、下型52を使用せずに上部にだけ凹部を形成する場合も同様な方法によって製造される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
図1に示すように、従来、石英ガラス成形体を製造する際の外筒には、所望とする石英ガラス成形体の形状がリング状あるいは円板状であるために、その外周形状に合わせて円筒形の2分割あるいはそれ以上に分割されたカーボン型材が用いられている。しかしながら、円筒形状の外筒は、その製作が難しく、加工のために大型の装置が必要であり、製作に時間がかかり、作製コストが負担になっていた。
【0014】
また、2分割あるいはそれ以上に分割したカーボン型材を組み合わせて円筒形になるようにしているために、一つの型材の破損により、外筒として機能しなくなるために、高価な予備品を過剰にストックしておかなければならないという問題もあった。
【0015】
本発明は、円筒形状の型材を用いず、容易に製作できる共通の部材によって外筒が得られるようにし、型材の部材が破損しても共通部材であるために補修が容易となり、型材の製造コスト及び石英ガラス成形体の製造コストを低減するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記問題点に鑑み、鋭意検討の結果、型材の構成要素である外筒の内面形状を、板材を組み合わせることによって得られる正多角柱とすることにより、課題を解決したものである。
【0017】
すなわち、本発明は石英ガラス材料を加熱溶融して筒型形状の石英ガラス製品の概形を成形する石英ガラス成形体の製造装置であって、底板と前記底板と一方の開口部を接して前記底板上に配設される外筒と、前記外筒を上下方向に摺動自在に移動可能なガイド部材と、前記ガイド部材の下面に配設されると共に、前記外筒内の底板上に載置される石英ガラス材料の上面を押圧する押圧治具と、前記押圧治具に荷重を付与する荷重板とからなり、前記外筒が板材を組み合わせた多角形柱状であることを特徴とする石英ガラス成形体製造装置である。
【発明の効果】
【0018】
石英ガラス成形体の製造の際に用いる型材の構成要素である外筒を正多角柱とすることにより、破損時に備えた予備品の過剰ストックが不要になり、外筒となる型材の加工時間を短縮でき、コストが減少される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来の型材の概略斜視図。
【図2】本発明の石英ガラス成形体製造装置の概略斜視図
【図3】石英ガラス成形体の製造工程図。
【図4】石英ガラス成形体の製造工程図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の石英ガラス成形体の製造装置を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
図2には、本発明の一例として、外筒14の内面形状が正八角柱状とした石英ガラス成形体の製造装置の概略斜視図を示すもので、外筒14は、板材を8枚組み合わせて作製されたものである。
【0022】
正多角柱の底面の正多角形の大きさは、その内接円の直径が、所望とする石英ガラス製品の外径及び製品化のための加工代よりも大きければ何ら問題ない。
【0023】
正多角形柱の角数としては、6ないし24であることが望ましい。当然、角数は、3以上であれば問題ないが、角数が少ないとその正多角形の面積に占める内接円の面積が小さくなり、材料の無駄が生じる。また、角数が大きくなれば、正多角形の面積と内接円の面積の比は1に近づくために、材料の無駄は減少するが、正多角柱を組み上げる際に多数の構成部品を組み立てて多角柱を作り上げるので作業効率が低下する。
【0024】
例えば、内接円の直径を40cmとする場合、正六角形では一辺を23.5cm、正十二角形では10.8cm、正二十四角形では5.3cmとすればよい。
【0025】
それぞれの場合の正多角形の面積と内接円の面積の比は正六角形では0.91、正十二角形では0.98、また、正二十四角形では0.99となる。
【0026】
すなわち、同じ内接円の直径を有する石英ガラス成形体を得る場合でも、辺の長さと辺の数の組み合わせで多くの場合が考えられ、組立てに要する手間や石英ガラス母材の損失量を考慮して最適な角数及び辺の長さを選択すればよい。
【0027】
このため、実際の製造の場においては、正多角形の辺の長さや辺の数については、石英ガラス母材からの石英ガラス製品を得るときの収率、溶融成形の際の作業効率、石英ガラス製品を製造する際の作業効率などから、総合的に判断すればよい。
【0028】
内接円の直径は、正多角柱を構成する板材の長さを変えて正多角形の一辺の長さを変更することや板材の枚数を変えて正多角形の角数を変更することにより、任意に調整することができる。
【0029】
多角柱を構成する板の厚さは、溶融成形の際に充分な強度を有していれば特に限定されず、5mmないし50mmの範囲内であれば必要強度が得られる。望ましくは10mmないし30mmである。板材の厚さが10mmより薄くなると、板材材質やその製造方法にもよるが、機械的強度が小さくなること、及び耐久性に問題が生じる可能性が大きい。板材の厚さが30mmより厚くなると板材を加熱するための熱量の増加やそれに伴う冷却時間の増大、また、板材の重量増による作業性の低下などの問題が生じるので好ましくない。
【0030】
板材を組み合わせて外筒として使用するためには、正多角柱に組み上げた後に、板材と同じ材質からなる固定治具を用いて固定する方法、カーボン繊維の糸条体を巻きつけて緊締して外筒を固定する方法などがある。
【0031】
押圧治具18は、石英ガラス母材16の中央部を押圧して凹みを付与することにより周辺部の厚みを増大させ、リング状石英ガラス製品となる部分の厚みを増すために使用されるものであり、押圧治具18を使用することによって所望とするリング状石英ガラス製品を石英ガラス成形体16aから効率よく取得することができる。
【0032】
押圧治具18は、石英ガラス母材16中央部に、略円柱状の押圧治具18をその中心軸を合わせて載置する。当然、その外径は所望とするリング状石英ガラス製品の内径よりも小さくなくてはならず、加工代や溶融成形の際の不純物の混入を考慮すると6mm以上小さいことが望ましい。押圧治具18の高さに関しては特に限定はなく、作業性、製作コスト等から任意に決定できる。
【0033】
溶融成形後には、押圧治具18は石英ガラス成形体16aの中央部に食い込んだ状態になっているために、石英ガラス成形体16aから押圧治具18を容易に取り出せないことがある。これを防止するために、押圧治具下面18b端部にC面を付与させたり、押圧治具側面18cにテーパーをつけ、押圧治具18上面の直径が押圧治具18下面の直径よりも大きくするなどの工夫をすることが望ましい。
【0034】
ガイド部材20は、溶融成形の際に石英ガラス母材16の上面に傾斜が発生しても、石英ガラス成形体上面の中央の凹部の中心軸がずれないようにするためのものであり、ガイド部材20を押圧治具18の上に設置する。
【0035】
ガイド部材20の形状は、正多角柱外筒10と同じ正多角形であっても円形であってもよい。その大きさは正多角柱状の外筒の内壁面に引っ掛からずに、石英ガラス母材16の溶融と共に下方に摺動できるものであればよいが、小さすぎるとガイド部材20と外筒内周面14aの間の遊びが大きくなり、石英ガラス成形体16a上面の中央の凹みの中心軸がずれてしまい、所望とする大きさの石英ガラス製品を得ることができなくなる。このため、ガイド部材20の大きさとしては、正多角形のガイド部材を用いるのであれば正多角柱の一辺よりも2mmないし10mm小さいものを、円形のガイド部材を用いるのであれば正多角柱の内接円の直径よりも2mmないし10mm小さいものを用いることが望ましい。ガイド部材20の厚みは、大きくても何ら問題はなく、治具組み上げの作業性やガイド部材20の上に荷重板22を載置させることを考慮して、決定されればよい。ただし、ガイド部材20の厚みが小さすぎると中心軸をずれないようにする効果が小さいために10mm以上であることが望ましい。
【0036】
荷重板22は、ガイド部材20の上に必要に応じて設置するものである。荷重板22を設置することにより、溶融成形時の石英ガラス成形体16aへの押圧治具18の食い込み量が大きくなり、石英ガラス製品となる部分の厚みが増大することになり、収率が向上する。
【0037】
下型52は、必要に応じて外筒内に設置するものである。下型52を設置することにより、石英ガラス成形体16aの中央部下面に凹みを形成するものであり、押圧治具18と下型52を使用することにより、石英ガラス成形体16aの上下面に凹みを作製することができるので、リング状石英ガラス製品の歩留まりの向上が期待できる。特に、石英ガラス成形体16aの高さが大きくなると、この効果が顕著になるだけでなく、下型52を設置することにより押圧治具18の石英ガラス成形体16aへの食い込み量が減少し、押圧治具18の取出しが容易になる。
【0038】
下型52の高さは、石英ガラス母材16の大きさにもよるが、10cm以下であることが望ましい。
【0039】
本発明者の試験結果によると、下型52の高さが10cmを超えると、石英ガラス成形体16a下部に、折りたたみと呼ばれる、石英ガラスの面と面が合わされたようなスジが入ることがあり、収率を低下させるためである。
【0040】
また、下型52の外径は所望とする石英ガラス製品16aの内径よりも小さいことに加え、石英ガラス母材16の大きさ及び正多角柱の内部の大きさを考慮する必要がある。
【0041】
具体的には、型材10からの不純物の混入を防ぐために、石英ガラス製品の内径より、5ないし20mm小さいことが望ましく、更に下型外周から外筒内周までの距離は、折りたたみを防ぐために、20mm以上であることが望ましい。
【0042】
型材10の材質は、石英ガラスの溶融条件において何ら反応しないものであれば特に限定されるものではなく、また、全ての構成部材が同一の材質である必要もない。しかしながら、その加工の容易さ、物理的・化学的安定性、不純物含有量の少なさ、及び材料価格の面から、カーボンを用いることが望ましい。
【0043】
部材の溶融石英ガラスと接触する面に、部材と溶融石英ガラスとの反応を防止するために、カーボン製フェルトを介在させたり、アルミナ(A123)、窒化珪素(Si34)、あるいは炭化珪素(SiC)などからなる保護膜を被覆する。これらの保護膜は、湿式法や乾式法により形成することができる。例えば、湿式法では、それぞれの粉末に水を加え、スラリー化した後に、スプレーを用いて被覆したり、刷毛等を用いてスラリーを塗布した後に乾燥して形成することができる。また、乾式法では、アルミナターゲットなどを用いたスパッタ法や珪素ターゲットを用いた反応性イオンプレーティング法などにより形成することができる。
【0044】
以下、本発明装置を使用して石英ガラス成形体を製造する工程を説明する。
【0045】
石英ガラス母材16の溶融成形は、外筒14内に、必要により下型52、石英ガラス母材16、押圧治具18、ガイド部材20及び荷重板22を各々の中心軸を揃えて設置した後に、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で、1500℃ないし2000℃に加熱することにより行われる。この時の好ましい加熱温度は1700℃ないし1900℃である。
【0046】
1700℃より低いと石英ガラスの溶融粘度が大きいために、溶融成形に時間がかかるためであり、1900℃を超えると石英ガラスと治具部材との反応が起きやすくなって好ましくない。
【0047】
なお、本明細書において、正多角柱や正多角形という表現をしているが、幾何学的に厳密な意味ではなく、概念的に用いたものである。すなわち、加工精度、使用による変形、あるいは作業効率等の観点から、各辺の長さがまったく等しいことは現実的に不可能であり、実務的な範囲内においての正多角柱あるいは正多角形という意味である。
【0048】
製作例1
厚さ1cm、直径50cmの円形のカーボン板の底板12の上面12aにカーボンフェルトを載置した後、その中心を合わせて直径20cm、高さ4cmの、カーボンフェルトでその側面を巻いた下型52を載置した。下型52の上に、その上下面に直径23cmのカーボンフェルトを貼り付けた直径26cm、高さ18cmの円筒状の石英ガラス母材16を置いた。石英ガラス母材16の上に、その下面18bエッジ部にC面をつけた直径22cm、高さ15cmの、カーボンフェルトでその側面を巻いた押圧治具18を載置した。更に、押圧治具18の上にガイド部材20及び荷重板22を載置した。
【0049】
続いて、底板12の上に、幅20cm、長さ30cm、厚さ3cmのカーボン板を6枚組み合わせて正六角柱の外筒14を組み上げ、外筒14の外側を専用のカーボン治具で固定した。その後、外筒14の内側面にカーボンフェルトを設置した。このようにして組み上げた石英ガラス成形体治具及び石英ガラス母材を電気炉に入れ、1800℃において、2時間加熱溶融した。
【0050】
その結果、その上面中央にφ22cm、深さ5cm、またその下面中央にφ20cm、深さ4cmの凹みが形成された一辺20cmで平均高さ12cmの正六角柱の石英ガラス成形体16aが得られた。
【0051】
製作例2
厚さ1cm、直径50cmの円形のカーボン板の底板12の上面12aにカーボンフェルトを載置した後、その中心を合わせて直径26cm、高さ18cmの円筒状の石英ガラス母材16を置いた。石英ガラス母材16の上に、直径23cmのカーボンフェルト及びその下面18bエッジ部にC面をつけた直径22cm、高さ15cmの、カーボンフェルトでその側面を巻いた押圧治具18を載置した。更に押圧治具18の上にガイド部材20及び荷重板22を載置した。
【0052】
続いて、底板12の上に、幅16cm、長さ30cm、厚さ2cmのカーボン板を8枚組み合わせて正八角柱の外筒14を組み上げ、外筒14の外側を専用のカーボン治具で固定した。その後、外筒14の中側面にカーボンフェルトを設置した。このようにして組み上げた石英ガラス成形体治具及び石英ガラス母材を電気炉に入れ、1850℃において、1時間加熱溶融した。
【0053】
その結果、その上面中央にφ22cm、深さ7cmの凹みがある一辺16cmで平均高さ10cmの正八角柱の石英ガラス成形体16aが得られた。
【0054】
製作例3
厚さ1cm、直径50cmの円形のカーボン板の底板12の上面12aにカーボンフェルトを載置した後、その中心を合わせて直径26cm、高さ3cmの、カーボンフェルトでその側面を巻いた下型52を載置した。下型52の上に、その上下面に直径29cmのカーボンフェルトを貼り付けた、直径30cm、高さ20cmの円筒状の石英ガラス母材16を置いた。石英ガラス母材16の上に、その下面18bエッジ部にC面をつけた直径28cm、高さ13cmの、カーボンフェルトでその側面を巻いた押圧治具18を載置した。更に押圧治具18の上にガイド部材20及び荷重板22を載置した。
【0055】
続いて、底板12の上に、幅12cm、長さ30cm、厚さ2cmのカーボン板を12枚組み合わせて正十二角柱の外筒14を組み上げ、外筒14の外側を専用のカーボン治具で固定した。その後、外筒14の内側面にカーボンフェルトを設置した。このようにして組み上げた石英ガラス成形体治具及び石英ガラス母材を電気炉に入れ、1850℃において、2時間加熱溶融した。
【0056】
その結果、その上面中央にφ28cm、深さ6cm、またその下面中央にφ26cm、深さ3cmの凹みがある、一辺12cmで平均高さ12cmの正十二角柱の石英ガラス成形体16aが得られた。
【0057】
製作例4
厚さ1cm、直径50cmの円形のカーボン板の底板12の上面12aにカーボンフェルトを載置した後、その中心を合わせて直径30cm、高さ20cmの円筒状の石英ガラス母材16を置いた。石英ガラス母材16の上に、直径30cmのカーボンフェルト及びその下面18bエッジ部にC面をつけた直径28cm、高さ13cmの、カーボンフェルトでその側面を巻いた押圧治具18を載置した。更に押圧治具18の上にガイド部材20及び荷重板22を載置した。
【0058】
続いて、底板12の上に、幅6cm、長さ30cm、厚さ1cmのカーボン板を24枚組み合わせて正二十四角柱の外筒14を組み上げ、外筒14の外側を専用のカーボン治具で固定した。その後、外筒14の内側面にカーボンフェルトを設置した。このようにして組み上げた石英ガラス成形体治具及び石英ガラス母材を電気炉に入れ、1800℃において、3時間加熱溶融した。
【0059】
その結果、その上面中央にφ28cm、深さ9cmの凹みがある、一辺6cmで平均高さ12cmの正二十四角柱の石英ガラス成形体16aが得られた。
【0060】
製作例5
厚さ1cm、直径50cmの円形のカーボン板の底板12の上面12aにカーボンフェルトを載置した後、その中心を合わせて直径20cm、高さ4cmの、カーボンフェルトでその側面を巻いた下型52を載置した。下型52の上に、その上下面に直径23cmのカーボンフェルトを貼り付けた、直径26cm、高さ18cmの円筒状の石英ガラス母材16を置いた。石英ガラス母材16の上に、その下面18bエッジ部にC面をつけた直径22cm、高さ15cmの、カーボンフェルトでその側面を巻いた押圧治具18を載置した。更に押圧治具18の上にガイド部材20及び荷重板22を載置した。
【0061】
続いて、底板12の上に、幅20cm、長さ30cm、厚さ1cmの炭化珪素膜被覆カーボン板を6枚組み合わせて正六角柱の外筒14を組み上げ、外筒14の外側を専用のカーボン治具で固定した。このようにして組み上げた石英ガラス成形体治具及び石英ガラス母材を電気炉に入れ、1800℃において、2時間加熱溶融した。
【0062】
その結果、その上面中央にφ22cm、深さ5cm、またその下面中央にφ20cm、深さ4cmの凹みがある、一辺20cmで平均高さ12cmの正六角柱の石英ガラス成形体16aが得られた。
【0063】
なお、炭化珪素被覆カーボン板は、平均粒径0.7ミクロンの高純度炭化珪素粉末100gを100gの純水に分散させた後3時間撹拌することによって得た炭化珪素スラリーを刷毛を用いて片面に塗布・乾燥させることにより作製した。
【0064】
製作例6
厚さ1cm、直径50cmの円形のカーボン板の底板12の上面12aにカーボンフェルトを載置した後、その中心を合わせて直径26cm、高さ18cmの円筒状の石英ガラス母材16を置いた。石英ガラス母材16の上に、直径23cmのカーボンフェルトを載せた後、その下面18bエッジ部にC面をつけた直径22cm、高さ15cmの、カーボンフェルトでその側面を巻いた押圧治具18を載置した。更に押圧治具18の上にガイド部材20及び荷重板22を載置した。
【0065】
続いて、底板12の上に、幅20cm、長さ30cm、厚さ1cmのアルミナ膜被覆カーボン板を6枚組み合わせて正六角柱の外筒14を組み上げ、外筒14の外側を専用のカーボン治具で固定した。このようにして組み上げた石英ガラス成形体治具及び石英ガラス母材を電気炉に入れ、1850℃において2時間加熱溶融した。
【0066】
その結果、その上面中央にφ22cm、深さ10cmの凹みがある、一辺20cmで平均高さ13cmの正六角柱の石英ガラス成形体16aが得られた。
【0067】
なお、アルミナ膜被覆カーボン板は、0.3ミクロンの高純度アルミナ粉末100gをポリビニルアルコール1gと100gの純水に分散させた後3時間撹拌することによって得たアルミナスラリーを刷毛を用いてカーボン板6枚の片面に塗布・乾燥させることにより作製したものである。
【0068】
製作例7
厚さ1cm、直径50cmの円形のカーボン板の底板12の上面12aにカーボンフェルトを載置した後、その中心を合わせて直径13cm、高さ10cmの円筒状の石英ガラス母材16を置いた。石英ガラス母材16の上に、直径2.3cmのカーボンフェルトを載せた後、その下面18bエッジ部にC面をつけた直径22cm、高さ15cmの、カーボンフェルトでその側面を巻いた押圧治具18を載置した。更に押圧治具18の上にガイド部材20及び荷重板22を載置した。
【0069】
続いて、底板12の上に、幅6cm、長さ20cm、厚さ1cmの窒化珪素膜被覆カーボン板を12枚組み合わせて正十二角柱の外筒14を組み上げ、外筒14の外側を専用のカーボン治具で固定した。このようにして組み上げた石英ガラス成形体治具及び石英ガラス母材を電気炉に入れ、1850℃において1時間加熱溶融した。
【0070】
その結果、その上面中央にφ22cm、深さ5cmの凹みがある、一辺6cmで平均高さ8cmの正十二角柱の石英ガラス成形体16aが得られた。
【0071】
なお、窒化珪素膜被覆カーボン板は、カーボン板表面に反応性スパッタ法によりアンモニア(NH3)雰囲気下で珪素をターゲットとして作製したものである。
【符号の説明】
【0072】
10 型材
12 底板
12a 底板上面
14 外筒
14a 外筒内周面
16 石英ガラス母材
16a 石英ガラス成形体
18 押圧治具
18b 押圧治具下面
18c 押圧治具側面
20 ガイド部材
20a ガイド部材上面
20b ガイド部材下面
22 荷重板
52 下型
52a 下型上面
52c 下型側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石英ガラス材料を加熱溶融して筒型形状の石英ガラス製品の概形を成形する石英ガラス成形体の製造装置であって、底板と前記底板と一方の開口部を接して前記底板上に配設される外筒と、前記外筒の内周面上を上下方向に摺動自在に移動可能なガイド部材と、前記ガイド部材の下面に配設されると共に、前記外筒内の前記底板上に載置される石英ガラス材料の上面を押圧する押圧治具と、前記押圧治具に荷重を付与する荷重板とからなり、前記外筒が板材を組み合わせて固定してあって内面形状を正多角柱としたことを特徴とする石英ガラス成形体製造装置。
【請求項2】
更に、前記外筒内の前記底板上に配設される下型を有することを特徴とする請求項1記載の石英ガラス成形体製造装置。
【請求項3】
正多角柱を構成する板材の数が6〜24枚のいずれかでああることを特徴とする請求項1または2に記載の石英ガラス成形体製造装置。
【請求項4】
板材がカーボンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の石英ガラス成形体製造装置。
【請求項5】
石英ガラス成形体と接する板材の面に保護膜を被覆したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の石英ガラス成形体製造装置。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−153586(P2012−153586A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15800(P2011−15800)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(390005072)東ソー・クォーツ株式会社 (46)
【Fターム(参考)】