説明

石英ガラス部材のエッチング方法

【課題】任意の位置に不透明部と透明部とを表面に有する石英ガラス部材を簡便に製造するためのエッチング方法を提供する。
【解決手段】石英ガラス部材のエッチング方法において、石英ガラス部材の外表面の少なくとも一部にポリ塩化ビニル塗布液を塗布し、乾燥したのち、フッ化水素を主成分とするエッチング液で処理する。フッ化水素を主成分とするエッチング液がフッ化アンモニウム,酢酸を含有する。含有量を調節することで任意の大きさの凹凸を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部分的に不透明部を有する半導体処理用部材のエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、凹凸が表面に形成された不透明石英ガラスは、半導体熱処理治具の把持部の形成材料として、また半導体ウエーハの気相成長膜生成処理(Chemical Vapor Deposition)時のポリシリコン膜や炭化珪素膜の付着を防止する部材としても用いられてきた。前記不透明石英ガラスの製造方法としては、サンドブラスト法や化学的エッチング法などが挙げられるが、サンドブラスト法では石英ガラス部材に結晶質二酸化珪素粉等の無機粒子を吹き付け機械的に削り取ることから、形成した表面の凹凸の下にマイクロクラック層が発生し、部材の機械的強度を低下させる上に、CVD工程等で使用を継続するに従ってパーティクルを発生する場合があり、それがパーティクルが発生し半導体ウエーハを汚染する問題があった。その一方、化学的エッチング法による不透明化ではマイクロクラック層は発生しないが、部材全体がエッチング液に浸漬されることから部材全体が不透明化されガスシール性が要求される部分が損なわれ、例えばCVD工程で使用すると真空吸引時やガス反応時に影響を受け、プロセスが一定化しない問題があった。
【0003】
その一方、石英ガラスを初めとするガラス基板の表面に部分的に凹凸を形成する方法として、部材表面にマスク材を被覆し、露出部をエッチング処理する方法が例えば特許文献1などで提案されている。そして、前記マスク材として、ポリエチレンなどの耐薬品性に優れた樹脂シートの使用も特許文献2などで提案されている。しかし、この樹脂シートを用いる処理方法では部材とシート間の密着性が十分でなくエッチング液がその隙間から浸み込み不規則な凹凸を形成される問題があった。
【特許文献1】特開2005−231919号公報
【特許文献2】特開2005−187274号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした現状に鑑み、本発明者は鋭意研究した結果、石英ガラス部材の透明で平滑さを要する部分をポリ塩化ビニル塗布液で塗布し、乾燥した後、エッチング処理すると、ポリ塩化ビニルの塗布膜が耐酸性である上に、有機酸にも殆ど侵食されることがなく、しかもエッチング処理後の塗布膜の剥離において、剥離残留物が部材に残らず、例え残っても溶剤で容易に除去でき、半導体素子を汚染することがないことを見出して本発明を完成したものです。すなわち
本発明は、任意の位置に不透明部と透明平滑部とを有する石英ガラス部材を簡便に製造するためのエッチング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成する本発明は、石英ガラス部材のエッチング方法において、石英ガラス部材の外表面の少なくとも一部にポリ塩化ビニル塗布液を塗布し、乾燥させたのち、フッ化水素を主成分とするエッチング液で処理することを特徴とする石英ガラス部材のエッチング方法に係る。
【0006】
本発明の石英ガラス部材のエッチング方法では、上述のとおり耐薬品性に優れたポリ塩化ビニル塗布液を石英ガラス部材の一部に塗布し、乾燥させたのち、フッ化水素を主成分とするエッチング液で処理し、洗浄し、次いで溶剤で塗布膜を剥離することで部分的に不透明部分を有する部材が簡便に製造できる。前記石英ガラス部材としては、半導体ウエーハの製造に用いられる半導体熱処理装置用部材、ガス反応を行うためのベルジャー等の容器などが挙げられ、また、ポリ塩化ビニルの塗布膜は、厚さが50μm以上が好ましい。この厚さの塗布膜は、1回の塗布、乾燥であっても、また、乾燥塗布膜の上にさらに1回以上重ねて塗布することで形成できる。好ましくは重ねて塗布するのがよい。
【0007】
上記エッチング液としては、フッ化水素を主成分とするが、さらに、フッ化アンモニウム及び有機カルボン酸、好ましくは酢酸を含有してもよい。前記エッチング液がフッ化水素及びフッ化アンモニウムを含有する場合、その合計含有量は10〜40重量%、フッ化水素とフッ化アンモニウムのモル比は、フッ化水素:フッ化アンモニウム=0.5:1〜2:1の範囲がよい。また、有機カルボン酸を含有する場合には、その含有量は20〜75重量%の範囲がよい。有機カルボン酸を含有することでエッチング液は安定する上に、含有量を調節することで任意の大きさの凹凸を形成することができる。有機カルボン酸としては、蟻酸、安息香酸などのモノカルボン酸、蓚酸のようなジカルボン酸などが挙げられるが、酢酸が好適である。エッチング処理液の調整方法としては、フッ化水素、フッ化アンモニウム、水、必要に応じて有機カルボン酸を均一に混合する方法、フッ化水素、フッ化アンモニウム及び水に混合した主液にその使用時に有機カルボン酸からなる補助剤を混合する方法などが挙げられる。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、石英ガラス部材の外表面の少なくとも一部にポリ塩化ビニル塗布膜を形成したのち、フッ化水素を主成分とするエッチング液で処理するという簡便な方法で、任意の位置に凹凸が形成された不透明石英ガラス部材が製造できる。
【実施例】
【0009】
以下に本発明の実施例をあげて説明するが、これらの実施例は例示的に示されるもので限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。
【0010】
実施例1
直径250mm石英ガラス円板の両面を火炎研磨し、その表面の半分に円盤状にポリ塩化ビニル液(古藤工業製、商品名フロンマスク)を塗布し乾燥させて、厚さ130μmのポリ塩化ビニル塗布膜を有する石英ガラス円板を得た。その石英ガラス円板をフッ化水素15重量%、フッ化アンモニウム15重量%、酢酸35重量%を含むエッチング処理液に常温で30分浸漬しエッチング処理をした。処理後部材を純水で洗浄し、溶剤でポリ塩化ビニル塗布膜を剥がした。エッチング処理液はポリ塩化ビニル塗布膜の端部から1mm以内に浸み込むにとどまった。
【0011】
比較例1
実施例1の石英ガラス円板に光硬化性レジストを塗布し、加熱炉で硬化させたのち、実施例1と同じエッチング処理液に浸漬したところ、暫くして光硬化性レジストが剥がれ、エッチング処理で部材全体が不透明化した。
【0012】
比較例2
比較例1において光硬化性レジストの代わりに加熱し溶解したワックスを塗布し、冷却固化した以外、比較例1と同様にしてエッチング処理を行った。塗布したワックスは溶解し、エッチング処理液がワックスの色を呈した。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明のエッチング方法では部材に不透明部と透明部とが任意の位置に形成でき、半導体ウエーハの熱処理用部材や気相反応用部材として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石英ガラス部材のエッチング方法において、石英ガラス部材の外表面の少なくとも一部にポリ塩化ビニル塗布液を塗布し、乾燥したのち、フッ化水素を主成分とするエッチング液で処理することを特徴とする石英ガラス部材のエッチング方法。
【請求項2】
フッ化水素を主成分とするエッチング液がフッ化水素に加えてフッ化アンモニウム及び有機カルボン酸を含有することを特徴とする請求項1記載の石英ガラス部材のエッチング方法。
【請求項3】
有機カルボン酸が酢酸であることを特徴とする請求項2記載の石英ガラス部材のエッチング方法。