石製灯籠用扉、石製灯籠用扉本体および石製灯籠
【課題】 ユーザフレンドリーで、しかも汎用性に優れた石製灯籠用扉および石製灯籠を提供する。
【解決手段】 扉本体12の左側および右側辺部にヒンジピン3L、3Rがそれぞれ設けられるとともに、各ヒンジピン3L、3Rに対応して固定部11に左側および右側扉着脱部4L,4Rが設けられている。左側扉着脱部4Lでは、左側ヒンジピン3Lが枢支部41で係合されて枢支された状態のまま左側ヒンジピン3Lを回動中心として扉本体12を回動させることで「左開き」が実行可能となっている。また、右側扉着脱部4Rでは、右側ヒンジピン3Rが枢支部41で係合されて枢支された係合枢支状態のまま右側ヒンジピン3Rを回動中心として扉本体12を回動させることで「右開き」が実行可能となっている。つまり、「左開き」および「右開き」を選択的に実行することができる。
【解決手段】 扉本体12の左側および右側辺部にヒンジピン3L、3Rがそれぞれ設けられるとともに、各ヒンジピン3L、3Rに対応して固定部11に左側および右側扉着脱部4L,4Rが設けられている。左側扉着脱部4Lでは、左側ヒンジピン3Lが枢支部41で係合されて枢支された状態のまま左側ヒンジピン3Lを回動中心として扉本体12を回動させることで「左開き」が実行可能となっている。また、右側扉着脱部4Rでは、右側ヒンジピン3Rが枢支部41で係合されて枢支された係合枢支状態のまま右側ヒンジピン3Rを回動中心として扉本体12を回動させることで「右開き」が実行可能となっている。つまり、「左開き」および「右開き」を選択的に実行することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、寺院の境内や墓前等に設置される石製灯籠、該灯籠に適した扉および扉本体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、寺院の境内や墓前等に設置される石製灯籠として、例えば特許文献1や特許文献2に記載されたものが知られている。これらの石製灯籠では、石柱内部を刳り貫くとともに、その石柱正面に開口部を設けることによって灯籠本体部が形成されている。そして、灯籠本体部の内部に位置するロウソク立てにロウソクを立てることで、ロウソクから放射される光が開口部を介して灯籠本体部の外部に導かれて灯籠本体部の正面側を照らすことが可能となっている。また、従来例では、灯籠本体部に対するロウソクの収容および取出しを容易とし、しかもロウソクの火が消えるのを防止するために、石製灯籠用扉が開口部に対して開閉可能に灯籠本体部に装着されている。
【0003】
【特許文献1】特許第3012200号公報
【特許文献2】特開2001−49904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の石製灯籠用扉では、開口部に対する開閉方向は一方向に固定されていた。すなわち、例えば特許文献1に記載の石製灯籠扉は、灯籠本体部に対して固定部が固定されるとともに、その固定部に対してガラスが嵌め込まれた金属製扉本体が蝶番によって水平方向に回動自在に設けられている。そして、ガラス付の扉本体を回動させることで扉本体が開口部に対して水平方向に開閉自在となっている。このため、扉本体の開閉方向は蝶番の取付位置により固定化されてしまう。つまり、固定部の左側に蝶番を取り付けた石製灯籠用扉は、いわゆる左開きとなる一方、固定部の右側に蝶番を取り付けた石製灯籠用扉は、いわゆる右開きとなる。なお、この明細書では、扉本体の左側部を回動中心として水平方向に開閉する動作を「左開き」と称する一方、扉本体の右側部を回動中心として水平方向に開閉する動作を「右開き」と称する。
【0005】
ところで、石製灯籠の設置場所は寺院の境内や墓前等であり、通常屋外である。そして、ロウソクを石製灯籠にセットする場面では、扉本体を回動させて開口部を開いた後、ロウソクに火をつける必要がある。このとき、屋外であるが故にロウソクの点火に際して風の影響を受けやすく、風向きによってはロウソクに火をつけるのに扉本体が有利に作用する場合と風の影響を直接的に受けて点火が困難となる場合がある。というのも、従来の石製灯籠用扉は右開きか左開きに限定されるためである。例えば右開きの扉では扉本体を開いた状態で扉本体が灯籠本体部の正面側から見て右側に位置して右側からの風を防ぐ風防として作用する。そのため、ロウソクへの点火が容易となる。これに対し、開放状態となっている左側から強風が吹き込むとロウソクへの点火が困難となる。ここで、石製灯籠用扉の開閉方向を右開きと左開きとを自由に切り替えることができる構成を採用すると、風向きに応じて扉本体を開くことが可能となり、常に扉本体を風防として作用させながらロウソクへの点火を行うことができ、好適である。
【0006】
また、ロウソクの点火に際しては、ライターやマッチなどの着火手段を用いるがユーザごとに着火手段を操作する手が相違している。例えば利き腕が右であるユーザの多くは右手で着火手段を操作するため、左手で扉本体の開閉を行うこととなり、右開きよりも左開きの方が操作しやすい。逆に利き腕が左であるユーザであれば、左開きよりも右開きの方が操作しやすい。このようにユーザごとに扉の開閉操作性は相違しているため、ユーザが扉の開閉方向を選択することができるのが望ましい。
【0007】
さらに、墓地の広さによる制限から石製灯籠の配置が限定されてしまうことがある。その結果、扉の開閉方向が制限されてしまうことがある。例えば墓石に右隣に霊標を配置することがあるが、狭い墓地では霊標と石製灯籠とが寄り添った形で配置せざるを得ない場合がある。このような場合には、扉の「右開き」が困難となることがあり、常に墓地内での配置関係を考慮しながら石製灯籠を選択する必要がある。
【0008】
しかしながら、このようなにユーザの立場に立って設計・製造された石製灯籠用扉および石製灯籠は従来存在しておらず、ユーザフレンドリーな石製灯籠用扉および石製灯籠の提供が望まれる。
【0009】
また、このような両開きの石製灯籠用扉は石製灯籠や扉を提供するサプライヤーにとっても好適である。すなわち、石製灯籠は墓前などにおいて左右一対で設置されることが多く、しかも観音開きとなるように左開きおよび右開きの石製灯籠用扉がそれぞれ取り付けられている。したがって、サプライヤーは常に左開きの扉と右開きの扉とを用意しておく必要があった。これに対し、石製灯籠用扉を左右のいずれにも開閉させることができるように構成した場合、単一の石製灯籠用扉でいずれの開閉方向にも対応することができ、石製灯籠用扉の汎用性を高めることができる。
【0010】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、ユーザフレンドリーで、しかも汎用性に優れた石製灯籠用扉および石製灯籠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明にかかる石製灯籠用扉は、その正面に開口部を有する石製灯籠に対して開口部の周縁部で固定される固定部と、固定部に対して回動自在に取り付けられた扉本体とを備え、扉本体の回動動作によって開口部を開閉する石製灯籠用扉であって、上記目的を達成するため、左側ヒンジピンと、左側ヒンジピンに係脱自在に係合することで左側ヒンジピンを枢支する左側枢支部および該左側枢支部への左側ヒンジピンの挿脱を案内する左側案内部を有する左側扉着脱部と、右側ヒンジピンと、右側ヒンジピンに係脱自在に係合することで右側ヒンジピンを枢支する右側枢支部および該右側枢支部への右側ヒンジピンの挿脱を案内する右側案内部を有する右側扉着脱部とを備え、扉本体の左側辺部および固定部の左側辺部のうちの一方に左側ヒンジピンが設けられるとともに、他方に左側扉着脱部が左側案内部を一方側に向けた状態で設けられ、扉本体の右側辺部および固定部の右側辺部のうちの一方に右側ヒンジピンが設けられるとともに、他方に右側扉着脱部が右側案内部を一方側に向けた状態で設けられたことを特徴としている。
【0012】
このように構成された発明では、扉本体の左側辺部および固定部の左側辺部のうちの一方に左側ヒンジピンが設けられるとともに、他方に左側扉着脱部が設けられている。この左側扉着脱部には、左側ヒンジピンに係脱自在に係合することで左側ヒンジピンを枢支する左側枢支部が設けられており、左側ヒンジピンが左側枢支部に係合枢支される。そして、この状態で左側ヒンジピンを回動中心として扉本体を回動させると、「左開き」が実行される。また、右側についても、左側と同様に構成されており、「右開き」を実行可能となっている。したがって、風向きやユーザの利き腕などに応じて「左開き」と「右開き」との切り替えを行うことができ、ユーザフレンドリーなものとなっている。また、単一構成で「左開き」と「右開き」とのいずれにも対応することができ、優れた汎用性を有している。
【0013】
また、この発明では、左側および右側扉着脱部の各々は、枢支部に対するヒンジピンの挿脱を案内する案内部を有しており、該案内部を一方側に向けた状態で固定部に設けられる。ここで、「一方側」とはヒンジピンが設けられた側を意味している。したがって、例えばヒンジピンが扉本体に設けられた場合には扉本体側が一方側に相当し、扉着脱部は固定部の表面に設けられ、しかも案内部が正面側を向いている。逆に、ヒンジピンが固定部に設けられた場合には固定部側が一方側であり、扉着脱部は扉本体の裏面側に設けられ、案内部が固定部を向いている。このため、「左開き」動作を行う際には、右側案内部が右側ヒンジピンを案内して扉本体の「左開き」動作を円滑なものとしている。また、「右開き」動作についても、「左開き」動作と同様に、左側案内部が左側ヒンジピンを案内して扉本体の「右開き」動作を円滑なものとしている。なお、ここでは、左側および右側ヒンジピンのいずれか一方を枢支部に枢支させて扉本体を回動させる構造について説明したが、この発明では左側および右側扉着脱部に対して左側および右側ヒンジピンがそれぞれ着脱自在となっているため、扉本体を固定部から完全に分離させることが可能となっている。この構造は蝶番などのヒンジ手段を用いて扉本体を開閉する石製灯籠用扉にはない特有のものであり、扉本体全体を固定部から取り外して固定部、扉本体や石製灯籠の清掃作業を容易なものとするという作用効果が得られる。
【0014】
また、この発明にかかる石製灯籠用扉本体は、その左側辺部に、固定部の左側辺部に左側ヒンジピンまたは左側扉着脱部が設けられるのに対応して左側扉着脱部または左側ヒンジピンが設けられるとともに、その右側辺部に、固定部の右側辺部に右側ヒンジピンまたは右側扉着脱部が設けられるのに対応して右側扉着脱部または右側ヒンジピンが設けられ、固定部に対して着脱自在に交換可能となっていることを特徴としている。
【0015】
このように構成された石製灯籠用扉本体では、固定部に対して着脱自在に交換可能となっているため、扉本体が破損したとしても、特別な工具などを用いることなく、新しい扉本体を固定部に装着することができる。
【0016】
さらに、この発明にかかる石製灯籠は、上記目的を達成するため、その正面に開口部が形成された灯籠本体部と、請求項1記載の石製灯籠用扉とを備え、固定部が灯籠本体部に対して固定され、左側ヒンジピンが左側扉着脱部の枢支部に枢支された状態で左側ヒンジピンを回動中心として扉本体を左側に回動させることで開口部を開閉可能となる一方、右側ヒンジピンが右側扉着脱部の枢支部に枢支された状態で右側ヒンジピンを回動中心として扉本体を右側に回動させることで開口部を開閉可能となっていることを特徴としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は本発明にかかる石製灯籠の一実施形態を示す斜視図であり、図2および図3は図1の石製灯籠に装着される石製灯籠用扉を示す斜視図である。この実施形態では、石製灯籠用扉1が石製灯籠2に対して着脱自在となっており、石製灯籠2に装着された状態で石製灯籠2の開口部に対して水平方向に開閉自在となっている。また、その開閉動作を「左開き」および「右開き」を選択的に切替可能となっている。すなわち、石製灯籠2は、図1に示すように、その下部が径大な基台部21と、この基台部21の上部に連設された灯籠本体部22とで構成されている。そして、灯籠本体部22の正面側(図2の右下側)に開口部23が設けられており、灯籠本体部22の内部に位置するロウソク立てに立てられたロウソク(図示省略)から放射される光を石製灯籠2の外部に導いて石製灯籠2の正面側を照らすことが可能となっている。また、この実施形態においても、灯籠本体部22に対するロウソクの収容および取出しを容易とし、しかもロウソクの火が消えるのを防止するために、開口部23に対して石製灯籠用扉1を装着可能で、しかも石製灯籠2への装着状態で石製灯籠2の開口部23に対して開閉可能となっている。以下、石製灯籠用扉1の構成について詳述する。
【0018】
石製灯籠用扉1は、灯籠本体部22に対して固定可能な固定部11と、扉本体12とを備えている。この扉本体12は例えばステンレス製などの金属製であり、その略中央部には、1つの窓部121が設けられている。そして、この窓部121にガラスなどの耐熱性透明部材14が取着されている。具体的には、扉本体12の上下部に固着された4つの係止爪部122によって、透明部材14は扉本体12に固定されている。また、扉本体12の下部中央にロウソク立て15が支持板16を介して取り付けられている。したがって、必要に応じて扉本体12を後述するように「左開き」や「右開き」に回動させることで、扉本体12および透明部材14が一体的に開口部23に対して開閉される。なお、この実施形態では、ロウソク立て15が支持板16の先端部に固着されているが、ロウソク立て15を支持板に対して着脱自在に構成してもよい。また、扉本体12の左右側部は灯籠本体部22に向けて折り曲げられており、各側辺部において上下2箇所で合計4本のヒンジピン3L,3Rが取り付けられている。すなわち、扉本体12の左側辺部に左側ヒンジピン3Lが設けられる一方、扉本体12の右側辺部に右側ヒンジピン3Rが設けられている。
【0019】
一方、固定部11は上下2つに分かれた固定帯11U、11Dを有している。これらのうち固定帯11Dは正面視で凹形状を有する一方、固定帯11Uは固定帯11Dを上下逆転させた形状に仕上げられ、いずれの固定帯11U、11Dも灯籠本体部22の表面曲率と同程度の曲率を有しており、灯籠本体部22の表面に密接可能となっている。また、固定帯11U、11Dの裏面側には、固定帯11U、11Dを灯籠本体部22に固定するための固定具115、116がそれぞれ取り付けられている。各固定具115、116は左右一対の取付バネ117R、117Lで構成されている。取付バネ117R、117Lは、先端が灯籠本体部22の内周面の曲率とほぼ同程度の曲率を有する略半環状となっているフック形状に仕上げられている。そして、これらの取付バネ117R、117Lは、装着前において略半環部の相互間隔W117が灯籠本体部22の内径W22(図4)よりも幅広となるように、固定帯11U、11Dに取り付けられている。
【0020】
また、固定帯11U、11Dの左側辺部には左側扉着脱部4Lが取り付けられるとともに、右側辺部には右側扉着脱部4Rが取り付けられている。各左側扉着脱部4Lは、左側ヒンジピン3Lに係脱自在に係合することで左側ヒンジピン3Lを枢支する枢支部41および該枢支部41に対する左側ヒンジピン3Lの挿脱を案内する案内部42を有し、該案内部42を正面側に向けた状態で固定帯11U、11Dの左側辺部に設けられている。この実施形態では、各左側扉着脱部4Lは次のようにして構成されている。すなわち、1枚の金属板の略中央部を2箇所内側に折り曲げて2つの片部を形成する。そして、こうして形成された各片部の略中央部に、互いに向き合う形で凹部を形成してヒンジピン3Lを挟み込み可能に構成する。このように対向する凹部により枢支部41が形成されている。また、各片部の先端については正面側に向かって末広がり形状に折り曲げられて案内部42を構成している。このように金属板を折り曲げて形成された左側扉着脱部4Lでは、案内部42に沿ってヒンジピン3Lが移動してくると、案内部42を構成する片部先端がヒンジピン3Lによって押し広げられながらヒンジピン3Lを枢支部41に案内する。そして、ヒンジピン3Lが枢支部41に挿入されると、片部の弾性力により枢支部41で係合枢支される。逆に、ヒンジピン3Lが正面側に移動すると、枢支部41による係合が解除された後、案内部42に案内されて左側扉着脱部4Lの外側に移動する。したがって、左側扉着脱部4Lでは、左側ヒンジピン3Lが枢支部41で係合されて枢支された状態のまま左側ヒンジピン3Lを回動中心として扉本体12を回動させることで「左開き」が実行可能となっている。
【0021】
一方、各右側扉着脱部4Rは、右側ヒンジピン3Rに係脱自在に係合することで右側ヒンジピン3Rを枢支する枢支部41および該枢支部41に対する右側ヒンジピン3Rの挿脱を案内する案内部42を有し、該案内部42を正面側に向けた状態で固定帯11U、11Dの右側辺部に設けられている。このように右側扉着脱部4Rでは、右側ヒンジピン3Rが枢支部41で係合されて枢支された係合枢支状態のまま右側ヒンジピン3Rを回動中心として扉本体12を回動させることで「右開き」が実行可能となっている。なお、各右側扉着脱部4Rの構成については上記した左側扉着脱部4Lと同一であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0022】
次に、上記のように構成された扉1を石製灯籠2に取り付ける手順について図4を参照しつつ詳述する。図4は石製灯籠への石製灯籠用扉の取付手順を模式的に示す図である。なお、ここでは、灯籠本体部22への固定部11の装着手順を中心に説明するため、固定部11と接続されている扉本体12、透明部材14およびロウソク立て15の図示は省略する。
【0023】
石製灯籠用扉1を準備した段階(装着前)では、取付バネ117R、117Lには外力は全く作用しておらず、上記したように取付バネ117R、117Lは、装着前において略半環部の相互間隔W117が灯籠本体部22の内径W22よりも幅広となっている(同図(a))。そこで、取付作業者は固定帯11U、11Dを順番に以下のようにして灯籠本体部22の開口部23近傍に固定する。
【0024】
まず、同図(b)の矢印ARに示すように、取付バネ117R、117Lの先端部を開口部23の内側に進入させながら取付バネ117R、117Lを灯籠本体部22の内部に圧入する。このとき、取付バネ117R、117Lを互いに近接させて強制的に変形させるとともに、その変形状態のまま取付バネ117R、117Lを開口部23を介して灯籠本体部22の内部に挿入するようにしてもよい。
【0025】
ここで、圧入時に取付バネ117R、117Lが開口部23で弾性変形するが、取付バネ117R、117Lを灯籠本体部22の内部に挿入した段階でバネ力により取付バネ117R、117Lは相互に広がり、灯籠本体部22の内周面に密着して固定帯の固定が完了する。このような固定作業を扉本体12の各ヒンジピン3R,3Lを扉着脱部4R、4Lにそれぞれ係合させない状態、つまり扉本体12を固定部11から取り外した状態で実行する。
【0026】
そして、2つの固定帯11U、11Dを灯籠本体部22に固定して固定部11の固定が完了すると、扉本体12の各ヒンジピン3R,3Lを扉着脱部4R、4Lの案内部42に沿って枢支部41に向けて挿入して扉本体12を固定部11に装着する。この状態では、扉本体12によって開口部23は閉じられた状態となっており、各ヒンジピン3R,3Lは枢支部41により係合枢支されている。なお、その後にユーザが必要に応じて扉本体12の右側辺部を操作すると「左開き」により開口部23が開放され、逆に扉本体12の左側辺部を操作すると「右開き」により開口部23が開放される。
【0027】
以上のように、この実施形態によれば、扉本体12の左側および右側辺部にヒンジピン3L、3Rを設けるとともに、各ヒンジピン3L、3Rに対応して固定部11に左側および右側扉着脱部4L,4Rを設けているため、「左開き」および「右開き」を選択的に実行することができる。このため、ユーザは風向きに応じて「左開き」と「右開き」とを切り替えて強風時にも確実に、しかも容易にロウソクに点火することができる。また、ユーザは利き腕や荷物の手持ち状況に応じて自分にとって操作しやすい方向に扉本体12を開閉することができ、優れた操作性が得られる。また、単一構成で「左開き」と「右開き」とのいずれにも対応することができ、優れた汎用性が得られる。
【0028】
また、汎用性の面からいうと、固定部11を上側固定帯11Uと下側固定帯11Dとに分けて構成しているため、開口部23の上下サイズに対して柔軟に対応することができる。すなわち、石製灯籠は一般的に規格化されているわけではないため、種々の開口サイズが存在するが、上側固定帯11Uおよび/または下側固定帯11Dの固定位置を調整することで種々の開口サイズの対応することができ、汎用性に優れている。
【0029】
また、この実施形態によれば、左側および右側扉着脱部4L,4Rの各々は、枢支部41に対するヒンジピン3L,3Rの挿脱を案内する案内部42を有し、しかも該案内部42を灯籠本体部22の正面側に向けた状態で固定部11に設けているため、扉本体12の開閉動作をスムーズに行うことができ、ユーザの操作性をさらに高めることができる。また、左側および右側扉着脱部4L,4Rに対して左側および右側ヒンジピン3L,3Rがそれぞれ着脱自在となっているため、扉本体12を固定部11から完全に分離させることが可能となっている。したがって、上記したように固定部11の取付作業を行う際に扉本体12を取り外しておくことができ、固定作業の作業性を高めることができる。また、固定部11に対する扉本体12の着脱が容易であるため、石製灯籠用扉や石製灯籠の清掃作業を行う際に扉本体12を固定部11から取り外した状態で行うことができるため、メンテナンス性においても優れている。さらに、上記のように構成された石製灯籠を使用している間に、扉本体12や透明部材14などが破損したり、透明部材14の透明度が極端に低下するなどの不具合が生じたとしても、扉本体12は上記したように固定部11に対して着脱自在に交換可能となっているため、特別な工具などを用いることなく、新しい扉本体12を固定部11に装着することができる。
【0030】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、固定部11を上側固定帯11Uと下側固定帯11Dとに分けて構成しているが、一体化した枠状の固定部を用いてもよい。また、固定部11の分割数や分割態様についても任意である。
【0031】
また、上記実施形態では、左右に2個ずつの扉着脱部を設けているが、左右の各々に少なくとも1個以上扉着脱部を設ければよい。また、ヒンジピンについても、扉着脱部と同様に、左右の各々に少なくとも1個以上ヒンジピンを設ければよい。
【0032】
また、上記実施形態では、石製灯籠用扉1は左右対称に構成されているが、これに限定されるものではなく、例えば扉着脱部およびヒンジピンに関して右側と左側とで個数や配設位置などを相違させてもよく、要は左側ヒンジピンに係脱自在に係合することで左側ヒンジピンを枢支する左側枢支部および該左側枢支部に対する左側ヒンジピンの挿脱を案内する左側案内部を有する左側扉着脱部が左側案内部を正面側に向けた状態で固定部の左側辺部に設けられるとともに、右側ヒンジピンに係脱自在に係合することで右側ヒンジピンを枢支する右側枢支部および該右側枢支部に対する右側ヒンジピンの挿脱を案内する右側案内部を有する右側扉着脱部が右側案内部を正面側に向けた状態で固定部の右側辺部に設けられておればよい。
【0033】
また、上記実施形態では、扉本体12にヒンジピンを設けるとともに、固定部11に扉着脱部を設けているが、これらの配置関係に限定されるものではなく、表1に示すように、ヒンジピンと扉着脱部とは次のような相互関係で配置することができる。すなわち、扉の左側について、扉本体左側辺部および固定部の左側辺部のうちの一方に左側ヒンジピンを設けるとともに、他方に左側扉着脱部を左側案内部を一方側に向けた状態で設けることができる。また、扉の右側についても、左側と同様に、扉本体の右側辺部および固定部の右側辺部のうちの一方に右側ヒンジピンを設けるとともに、他方に右側扉着脱部を右側案内部を一方側に向けた状態で設けることができる。
【0034】
【表1】
【0035】
また、上記実施形態では、取付バネ117R、117Lのバネ力を利用して固定部11を石製灯籠2に対して開口部23の周縁部で固定しているが、固定部11の固定方式はこれに限定されるものではなく、石製灯籠への扉の固定方式として従来より提案されている種々の方式、例えば特許文献1や特許文献2に記載された固定方式を採用することができる。また、固定方式に対応して固定部11の分割数などを適宜組み合わせるように構成してもよい。また、固定方式として、本発明者により提案された固定方式(特願2004−144758)や次に説明する固定方式を採用してもよい。なお、次の実施形態では、上記した「左開き」および「右開き」を切り替えることができるものではないが、以下の実施形態は固定方式として優れた特徴を有している。また、後述する扉本体の左側辺部に左側ヒンジピンを、また右側辺部に右側ヒンジピンを設ける一方、固定部の一部を構成する垂直部位に上記したと同様の左側および右側扉着脱部を設けることで「左開き」および「右開き」を切り替えることができ、以下に説明する固定方式と容易に組み合わせることができる。
【0036】
ところで、石製灯籠用扉を灯籠本体部に装着固定するにあたって、従来例では石製灯籠用扉の固定部の全部または一部を灯籠本体部の内部に配置するとともに、ネジ等を操作して灯籠本体部への固定部の固定作業を行う必要がある。例えば特許文献1に記載の石製灯籠では、固定部全体が灯籠本体部の内底部側に配置されている。この固定部にはネジ部が設けられるとともに、該ネジ部の端部に回転操作部が取り付けられている。そして、回転操作部を操作することで、ネジ部の後端部と螺合されている角材部が灯籠本体部の内周面に押し付けられるとともに、ネジ部の先端が灯籠本体部の内周面に押し付けられて固定部全体が灯籠本体部に強固に固定される。
【0037】
また、特許文献2に記載の石製灯籠では、開口部の形状に対応した基枠が固定部として設けられている。この基枠の下部には略L字型の取付片が設けられるとともに、該取付片の先端にネジが螺着されている。そして、この取付片およびネジを灯籠本体部の内部に挿入した後、該ネジを回転操作することでネジの先端が灯籠本体部の内周面に押し付けられて基枠の下方部が灯籠本体部に挟持される。一方、基枠の上部にはネジが挿入されており、該ネジを回転操作することで同ネジに螺着された湾曲帯状片とで開口部の端部が挟持される。こうして基枠(固定部)が灯籠本体部に強固に固定される。
【0038】
このように、従来の石製灯籠では、灯籠本体部の内部でネジを操作する必要があり、取付作業者は開口部や別の開口部(例えば灯籠本体部の底部や頂上部等)から手を灯籠本体部の内部に差し入れる必要がある。したがって、灯籠本体部への石製灯籠用扉の装着作業が煩雑なものとなっていた。また、灯籠本体部から石製灯籠用扉を取り外す場合にも、灯籠本体部の内部に手を差し入れてネジの回転操作が必要となり、装着作業と同様に取外し作業も煩雑なものとなっていた。
【0039】
また、特許文献2に記載された石製灯籠に代表されるように、灯籠本体部への石製灯籠用扉の固定箇所が複数になると、すべての固定箇所を所望位置に位置決めする作業と、各固定箇所でのネジ操作などの固定作業とを順番に行う必要がある。例えば、特許文献2に記載の石製灯籠では、(1)灯籠本体部に対する基枠の位置決め作業、(2)基枠の下方部でのネジ操作、(3)基枠の上方部でのネジ操作の合計3つの作業を行なう必要があった。
【0040】
そこで、以下の実施形態では、以下のように構成することで優れた作業性で石製灯籠に対する石製灯籠用扉の着脱を行うことを可能としている。以下、図5ないし図11を参照しつつ詳述する。
【0041】
図5は本発明にかかる石製灯籠の一実施形態を示す斜視図であり、図6は図5の石製灯籠の断面図であり、図7は図5の石製灯籠に装着される石製灯籠用扉を示す斜視図である。この実施形態では、石製灯籠用扉1が石製灯籠2に対して着脱自在となっており、石製灯籠2に装着された状態で石製灯籠2の開口部に対して開閉自在となっている。すなわち、石製灯籠2は、図5および図6に示すように、その下部が径大な基台部21と、この基台部21の上部に連設された灯籠本体部22とで構成されている。そして、灯籠本体部22の正面側(図6の右手側)に開口部23が設けられており、灯籠本体部22の内部に位置するロウソク立てに立てられたロウソク(図示省略)から放射される光を石製灯籠2の外部に導いて石製灯籠2の正面側を照らすことが可能となっている。また、この実施形態においても、灯籠本体部22に対するロウソクの収容および取出しを容易とし、しかもロウソクの火が消えるのを防止するために、開口部23に対して石製灯籠用扉1を装着可能で、しかも石製灯籠2への装着状態で石製灯籠2の開口部23に対して開閉可能となっている。以下、石製灯籠用扉1の構成について詳述する。
【0042】
石製灯籠用扉1は、灯籠本体部22に対して固定可能な固定部11と、扉本体12と、ステンレス製の扉本体12を固定部11に対して回動自在に支持する支持部13とを備えている。この固定部11は、開口部23の左側端部23Lに当接可能に設けられた第1垂直部位111と、開口部23の右側端部23Rに当接可能に設けられた第2垂直部位112とを備えている。より詳しくは、各垂直部位111,112は上下方向において開口部23よりも若干短く、しかも水平断面形状が略レ状に仕上げられたステンレス製金属片で構成されている。そして、各垂直部位111,112の折り曲げ部分が開口部23の端部と当接可能となっている。
【0043】
また、この固定部11では、第1および第2垂直部位111,112は互いに対向配置された状態で2本の帯状片113で相互に連結されている。また、各帯状片113は石製灯籠2の内部に向けて湾曲した形状を有しており、例えば図7に示すように外力付与が全くない状態では単に垂直部位111,112の連結機能を発揮するのみであるが、後述するようにして強制湾曲させると、その強制湾曲状態に応じた付勢力が発生して垂直部位111,112を互いに離間する方向に付勢する。このように、この実施形態では2本の帯状片113によって連結部位が構成されているが、湾曲帯状片113の本数、形状や配置などについては任意である。また、この実施形態では、垂直部位111,112と帯状片113とをそれぞれ独立した部材により構成するとともに、スポット溶接や締結部材などの接続技術を用いて連結しているが、垂直部位111(または112)と帯状片113とを一体成形したり、垂直部位111,112と帯状片113とを一体成形するようにしてもよい。また、外力付与がない状態ではストレートに伸びる連結部位を採用してもよい。さらに、帯状片113などの連結部位を構成する材料の選定にあたっては、可撓性があり、バネ特性を有する材料であれば任意であるが、ロウソクによる変形を防止し、また後述するようにロウソクの光を効率的に開口部23から放射させるためにステンレス鋼やバネ鋼などの金属材料を用いるのが望ましい。
【0044】
また、各帯状片113には、垂直部位111,112の連結部近傍に係止部位114が形成されている。より具体的には、帯状片113の一部に各垂直部位側より切り込み部を設けるとともに、図7の破線箇所を折り曲げ箇所として切り込み片部を石製灯籠2の内部に折り曲げることで、合計4個の切り込み片部が係止部位114として形成されている。これらの係止部位114は、後述するようにして固定部11が灯籠本体部22に対して装着されると、灯籠本体部22の内周面と接触して帯状片113の変位を防止し、固定部11を灯籠本体部22に対して固定している。
【0045】
この固定部11の第2垂直部位112には、2つのヒンジ131と該ヒンジ131の間に配置されたバネ部材132を有する支持部13が取り付けられており、ヒンジ131によって扉本体12が第2垂直部位112に対して回動自在に支持されている。また、バネ部材132によって扉本体12が開口部23側に付勢されている。なお、この実施形態では、ヒンジ131によって扉本体12を固定部11に対して回動自在に取り付けているが、他の回動支持方式、例えば蝶番を用いてもよいことはいうまでもない。また、図2および図3に示す構造を設けて左右開きが可能となるように構成してもよい。
【0046】
扉本体12の略中央部には、1つの窓部121が設けられている。そして、この窓部121にガラスなどの耐熱性透明部材14が取着されている。具体的には、扉本体12の上下部に固着された4つの係止爪部122によって、透明部材14は扉本体12に固定されている。また、扉本体12の下部中央にロウソク立て15が支持板を介して取り付けられている。したがって、必要に応じて扉本体12の前面に取り付けられた取手部123を摘んで操作することで、扉本体12および透明部材14が一体的に開口部23に対して開閉される。なお、この実施形態では、ロウソク立て15が支持板の先端部に固着されているが、ロウソク立て15を支持板に対して着脱自在に構成してもよい。
【0047】
次に、上記のように構成された扉1を石製灯籠2に取り付ける手順について図8および図9を参照しつつ詳述する。図8は石製灯籠への石製灯籠用扉の取付手順を模式的に示す図である。なお、ここでは、灯籠本体部22への固定部11の装着手順を中心に説明するため、固定部11と接続されている扉本体12、支持部13、透明部材14およびロウソク立て15の図示は省略する。
【0048】
石製灯籠用扉1を準備した段階(装着前)では、上記したように帯状片(連結部位)113には外力は全く作用しておらず、左右方向における固定部11の幅は開口部23の幅よりも広がっている(同図(a))。そこで、取付作業者は、同図(b)の矢印AR1に示すように垂直部位111,112を互いに近接させて帯状片113を強制的に湾曲変形させるとともに、矢印AR2に示すように湾曲変形状態のまま帯状片113を開口部23を介して灯籠本体部22の内部に挿入して第1および第2垂直部位111,112を開口部23の左側端部23Lおよび右側端部23Rにそれぞれ当接させる。このとき、垂直部位111,112は図8および図9に示すように左側端部23Lおよび右側端部23Rの正面領域231L,231Rに当接しており、固定部11は専ら係止部位114により固定されている。つまり、係止部位114が灯籠本体部22の内周面と接触して帯状片113の変位を防止し、これによって固定部11を灯籠本体部22に対して固定している。そして、取付作業者は、固定部11が係止部位114により確実に固定されていることを確認してから垂直部位111,112から手を離して取付作業を終了する(同図(c))。
【0049】
なお、上記においては図8を参照しつつ装着手順について説明したが、灯籠本体部22から石製灯籠用扉1を取り外す場合には、装着手順と逆の手順を行うことができる。
【0050】
以上のように、この実施形態によれば、第1および第2垂直部位111、112を帯状片(連結部位)113によって相互に連結してなる固定部11を用いているので、上記したようにして取付作業者は石製灯籠2の内部での作業を行なうことなく、石製灯籠2に対する石製灯籠用扉1の着脱作業を行なうことができる。また、着脱作業も強制湾曲させた状態で帯状片(連結部位)113を開口部23から挿脱する、つまりワンタッチ方式で行うことができる。したがって、石製灯籠2に対する石製灯籠用扉1の着脱作業性を大幅に向上させることができる。
【0051】
また、帯状片113が開口部23から灯籠本体部22の内部に挿入されると、図8(c)に示すように、切り込み片部114が灯籠本体部22の内周面に係止され、固定部11の固定強度を高めている。すなわち、この実施形態では、強制湾曲された帯状片113を開口部23を介して灯籠本体部22の内部に挿入しているが、このような構成を採用した場合には、固定部11全体を正面側に付勢する力も発生する。しかしながら、この実施形態では、4本の切り込み片部114を設け、該切り込み片部114が灯籠本体部22の内周面に当接することによって正面側への固定部11の移動を防止しながら固定部11を固定している。その結果、石製灯籠用扉1をより強固に石製灯籠2に固定することができる。しかも、上記のように構成された切り込み片部114は強制湾曲挿入時(図8(b))には開口部23および灯籠本体部22の内周面に沿って摺動可能となる一方、装着後に逆方向に固定部11が移動しようとした場合、切り込み片部114は釣り針の「戻り」のごとく作用して固定部11の移動を確実に防止することができる。したがって、この実施形態にかかる石製灯籠用扉1は取付作業性と固定強度とを兼ね備えた構成といえる。ここでは、切り込み片部114が内周面に当接して係止されているが、灯籠本体部22との摩擦力により係止されるように構成してもよい。
【0052】
さらに、上記実施形態によれば、固定部11が灯籠本体部22に装着されると、固定部11を構成する帯状片(連結部位)113が図5および図6に示すようにロウソク立て15の背面側(図6の左手側)に位置することとなり、ロウソク立て15に立てられたロウソクを背面側で取り巻くように配置される。したがって、帯状片113をステンレス鋼やばね鋼などの金属材料により構成すると、帯状片113が反射板としても機能し、背面側に放射された光を正面側に導いて開口部23から正面側に放射される光量を増大させることができる。
【0053】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、切り込み片部114を灯籠本体部22の内周面に当接させることによって固定部11を石製灯籠に固定しているが、切り込み片部114の代わりに垂直部位111,112を開口部23の端面に当接させて固定してもよい。すなわち、帯状片(連結部位)113が灯籠本体部22の内部に向けて強制湾曲された状態で開口部23を介して灯籠本体部22の内部に挿入されると、帯状片113により開口部23において固定部11の垂直部位111側および垂直部位112側が互いに離間する方向に付勢されて、垂直部位111,112がそれぞれ左側端部23Lおよび右側端部23Rの端面23Sにそれぞれ押し付けられる。これによって灯籠本体部22に固定部11が固定される(図10(a)では右側端部23Rのみが図示されているが、左側端部23Lにおいても同様である)。以下、その石製灯籠2への取付手順について図11を参照しつつ詳述する。
【0054】
図11は石製灯籠への石製灯籠用扉の取付手順を模式的に示す図である。なお、ここでは、灯籠本体部22への固定部11の装着手順を中心に説明するため、固定部11と接続されている扉本体12、支持部13、透明部材14およびロウソク立て15の図示は省略する。
【0055】
石製灯籠用扉1を準備した段階(装着前)では、上記したように帯状片(連結部位)113には外力は全く作用しておらず、左右方向における固定部11の幅は開口部23の幅よりも広がっている(同図(a))。そこで、取付作業者は、同図(b)の矢印AR1に示すように垂直部位111,112を互いに近接させて帯状片113を強制的に湾曲変形させるとともに、矢印AR2に示すように湾曲変形状態のまま帯状片113を開口部23を介して灯籠本体部22の内部に挿入して第1および第2垂直部位111,112を開口部23の左側端部23Lおよび右側端部23Rにそれぞれ当接させる。そして、取付作業者は垂直部位111,112から手を離して取付作業を終了する(同図(c))。
【0056】
なお、上記においては図11を参照しつつ装着手順について説明したが、灯籠本体部22から石製灯籠用扉1を取り外す場合には、装着手順と逆の手順を行うことができる。
【0057】
以上のように、この実施形態によれば、第1および第2垂直部位111、112を帯状片(連結部位)113によって相互に連結してなる固定部11を用いているので、上記したようにして取付作業者は石製灯籠2の内部での作業を行なうことなく、石製灯籠2に対する石製灯籠用扉1の着脱作業を行なうことができる。また、着脱作業も強制湾曲させた状態で帯状片(連結部位)113を開口部23から挿脱する、つまりワンタッチ方式で行うことができる。したがって、石製灯籠2に対する石製灯籠用扉1の着脱作業性を大幅に向上させることができる。
【0058】
ただし、このように垂直部位111,112がそれぞれ左側端部23Lおよび右側端部23Rの端面23Sに押し付けられて固定部11を固定するためには、図10(b)に示すように、開口部23を望む開口端面23Sが強制湾曲された帯状片113により発生する付勢力Fと直交する、つまり付勢力Fと開口端面23Sとのなす角度αが90゜である、あるいは90゜を超えて開口端面23Sが灯籠本体部22の内部を臨むように開口部23が形成された場合に限定される。これは強制湾曲された帯状片113による離間付勢力F以外に固定部11全体を正面側に付勢する力も発生するからであり、これに打ち勝って固定部11を灯籠本体部22に固定するためには
α≧90゜
を満足させる必要がある。
【0059】
また、固定部11の他の部位を係止部位として設けてもよい。例えば、固定部11を灯籠本体部22に装着した状態(図11(c))で垂直部位111,112の一部が灯籠本体部22の内周面と係合するように各垂直部位111,112を構成したり、垂直部位111,112や連結部位113から係止部材を灯籠本体部22の内周面に向けて突設させて装着状態で該係止部材が灯籠本体部22と係合するように構成したり、連結部位113から灯籠本体部22の背面側に係止部材を延設させて灯籠本体部22の切欠部221に係合させるようにしてもよい。要は、開口部23よりも石製灯籠2の背面側において石製灯籠2の一部に係止される係止部位をさらに設けるようにすればよい。
【0060】
また、上記実施形態では、固定部11に対して扉本体12が取り付けられた状態のまま、石製灯籠用扉1を石製灯籠2に対して着脱しているが、固定部11に対して扉本体12が着脱自在となっているため、まず固定部11のみを灯籠本体部22に装着固定した後、扉本体12を固定部11に取り付けるようにしてもよい。また、取り外しも同様に、扉本体12を取り外した後に固定部11を灯籠本体部22から取り外すようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明にかかる石製灯籠の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】石製灯籠の開口部と扉との対応関係を示す斜視図である。
【図3】石製灯籠用扉の左開き状態と右開き状態を示す斜視図である。
【図4】図1の実施形態における石製灯籠への石製灯籠用扉の取付手順を模式的に示す図である。
【図5】本発明にかかる石製灯籠の他の実施形態を示す斜視図である。
【図6】図5の石製灯籠の断面図である。
【図7】図5の石製灯籠に装着される石製灯籠用扉を示す斜視図である。
【図8】石製灯籠への石製灯籠用扉の取付手順を模式的に示す図である。
【図9】固定部の灯籠本体部への固定態様を示す拡大図である。
【図10】本発明にかかる石製灯籠の別の実施形態を示す斜視図である。
【図11】図10の実施形態における石製灯籠への石製灯籠用扉の取付手順を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0062】
1…石製灯籠用扉
2…石製灯籠
3L…左側ヒンジピン
3R…右側ヒンジピン
4L…左側扉着脱部
4R…右側扉着脱部
11…固定部
11U、11D…固定帯
12…扉本体
22…灯籠本体部
23…開口部
41…枢支部
42…案内部
【技術分野】
【0001】
この発明は、寺院の境内や墓前等に設置される石製灯籠、該灯籠に適した扉および扉本体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、寺院の境内や墓前等に設置される石製灯籠として、例えば特許文献1や特許文献2に記載されたものが知られている。これらの石製灯籠では、石柱内部を刳り貫くとともに、その石柱正面に開口部を設けることによって灯籠本体部が形成されている。そして、灯籠本体部の内部に位置するロウソク立てにロウソクを立てることで、ロウソクから放射される光が開口部を介して灯籠本体部の外部に導かれて灯籠本体部の正面側を照らすことが可能となっている。また、従来例では、灯籠本体部に対するロウソクの収容および取出しを容易とし、しかもロウソクの火が消えるのを防止するために、石製灯籠用扉が開口部に対して開閉可能に灯籠本体部に装着されている。
【0003】
【特許文献1】特許第3012200号公報
【特許文献2】特開2001−49904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の石製灯籠用扉では、開口部に対する開閉方向は一方向に固定されていた。すなわち、例えば特許文献1に記載の石製灯籠扉は、灯籠本体部に対して固定部が固定されるとともに、その固定部に対してガラスが嵌め込まれた金属製扉本体が蝶番によって水平方向に回動自在に設けられている。そして、ガラス付の扉本体を回動させることで扉本体が開口部に対して水平方向に開閉自在となっている。このため、扉本体の開閉方向は蝶番の取付位置により固定化されてしまう。つまり、固定部の左側に蝶番を取り付けた石製灯籠用扉は、いわゆる左開きとなる一方、固定部の右側に蝶番を取り付けた石製灯籠用扉は、いわゆる右開きとなる。なお、この明細書では、扉本体の左側部を回動中心として水平方向に開閉する動作を「左開き」と称する一方、扉本体の右側部を回動中心として水平方向に開閉する動作を「右開き」と称する。
【0005】
ところで、石製灯籠の設置場所は寺院の境内や墓前等であり、通常屋外である。そして、ロウソクを石製灯籠にセットする場面では、扉本体を回動させて開口部を開いた後、ロウソクに火をつける必要がある。このとき、屋外であるが故にロウソクの点火に際して風の影響を受けやすく、風向きによってはロウソクに火をつけるのに扉本体が有利に作用する場合と風の影響を直接的に受けて点火が困難となる場合がある。というのも、従来の石製灯籠用扉は右開きか左開きに限定されるためである。例えば右開きの扉では扉本体を開いた状態で扉本体が灯籠本体部の正面側から見て右側に位置して右側からの風を防ぐ風防として作用する。そのため、ロウソクへの点火が容易となる。これに対し、開放状態となっている左側から強風が吹き込むとロウソクへの点火が困難となる。ここで、石製灯籠用扉の開閉方向を右開きと左開きとを自由に切り替えることができる構成を採用すると、風向きに応じて扉本体を開くことが可能となり、常に扉本体を風防として作用させながらロウソクへの点火を行うことができ、好適である。
【0006】
また、ロウソクの点火に際しては、ライターやマッチなどの着火手段を用いるがユーザごとに着火手段を操作する手が相違している。例えば利き腕が右であるユーザの多くは右手で着火手段を操作するため、左手で扉本体の開閉を行うこととなり、右開きよりも左開きの方が操作しやすい。逆に利き腕が左であるユーザであれば、左開きよりも右開きの方が操作しやすい。このようにユーザごとに扉の開閉操作性は相違しているため、ユーザが扉の開閉方向を選択することができるのが望ましい。
【0007】
さらに、墓地の広さによる制限から石製灯籠の配置が限定されてしまうことがある。その結果、扉の開閉方向が制限されてしまうことがある。例えば墓石に右隣に霊標を配置することがあるが、狭い墓地では霊標と石製灯籠とが寄り添った形で配置せざるを得ない場合がある。このような場合には、扉の「右開き」が困難となることがあり、常に墓地内での配置関係を考慮しながら石製灯籠を選択する必要がある。
【0008】
しかしながら、このようなにユーザの立場に立って設計・製造された石製灯籠用扉および石製灯籠は従来存在しておらず、ユーザフレンドリーな石製灯籠用扉および石製灯籠の提供が望まれる。
【0009】
また、このような両開きの石製灯籠用扉は石製灯籠や扉を提供するサプライヤーにとっても好適である。すなわち、石製灯籠は墓前などにおいて左右一対で設置されることが多く、しかも観音開きとなるように左開きおよび右開きの石製灯籠用扉がそれぞれ取り付けられている。したがって、サプライヤーは常に左開きの扉と右開きの扉とを用意しておく必要があった。これに対し、石製灯籠用扉を左右のいずれにも開閉させることができるように構成した場合、単一の石製灯籠用扉でいずれの開閉方向にも対応することができ、石製灯籠用扉の汎用性を高めることができる。
【0010】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、ユーザフレンドリーで、しかも汎用性に優れた石製灯籠用扉および石製灯籠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明にかかる石製灯籠用扉は、その正面に開口部を有する石製灯籠に対して開口部の周縁部で固定される固定部と、固定部に対して回動自在に取り付けられた扉本体とを備え、扉本体の回動動作によって開口部を開閉する石製灯籠用扉であって、上記目的を達成するため、左側ヒンジピンと、左側ヒンジピンに係脱自在に係合することで左側ヒンジピンを枢支する左側枢支部および該左側枢支部への左側ヒンジピンの挿脱を案内する左側案内部を有する左側扉着脱部と、右側ヒンジピンと、右側ヒンジピンに係脱自在に係合することで右側ヒンジピンを枢支する右側枢支部および該右側枢支部への右側ヒンジピンの挿脱を案内する右側案内部を有する右側扉着脱部とを備え、扉本体の左側辺部および固定部の左側辺部のうちの一方に左側ヒンジピンが設けられるとともに、他方に左側扉着脱部が左側案内部を一方側に向けた状態で設けられ、扉本体の右側辺部および固定部の右側辺部のうちの一方に右側ヒンジピンが設けられるとともに、他方に右側扉着脱部が右側案内部を一方側に向けた状態で設けられたことを特徴としている。
【0012】
このように構成された発明では、扉本体の左側辺部および固定部の左側辺部のうちの一方に左側ヒンジピンが設けられるとともに、他方に左側扉着脱部が設けられている。この左側扉着脱部には、左側ヒンジピンに係脱自在に係合することで左側ヒンジピンを枢支する左側枢支部が設けられており、左側ヒンジピンが左側枢支部に係合枢支される。そして、この状態で左側ヒンジピンを回動中心として扉本体を回動させると、「左開き」が実行される。また、右側についても、左側と同様に構成されており、「右開き」を実行可能となっている。したがって、風向きやユーザの利き腕などに応じて「左開き」と「右開き」との切り替えを行うことができ、ユーザフレンドリーなものとなっている。また、単一構成で「左開き」と「右開き」とのいずれにも対応することができ、優れた汎用性を有している。
【0013】
また、この発明では、左側および右側扉着脱部の各々は、枢支部に対するヒンジピンの挿脱を案内する案内部を有しており、該案内部を一方側に向けた状態で固定部に設けられる。ここで、「一方側」とはヒンジピンが設けられた側を意味している。したがって、例えばヒンジピンが扉本体に設けられた場合には扉本体側が一方側に相当し、扉着脱部は固定部の表面に設けられ、しかも案内部が正面側を向いている。逆に、ヒンジピンが固定部に設けられた場合には固定部側が一方側であり、扉着脱部は扉本体の裏面側に設けられ、案内部が固定部を向いている。このため、「左開き」動作を行う際には、右側案内部が右側ヒンジピンを案内して扉本体の「左開き」動作を円滑なものとしている。また、「右開き」動作についても、「左開き」動作と同様に、左側案内部が左側ヒンジピンを案内して扉本体の「右開き」動作を円滑なものとしている。なお、ここでは、左側および右側ヒンジピンのいずれか一方を枢支部に枢支させて扉本体を回動させる構造について説明したが、この発明では左側および右側扉着脱部に対して左側および右側ヒンジピンがそれぞれ着脱自在となっているため、扉本体を固定部から完全に分離させることが可能となっている。この構造は蝶番などのヒンジ手段を用いて扉本体を開閉する石製灯籠用扉にはない特有のものであり、扉本体全体を固定部から取り外して固定部、扉本体や石製灯籠の清掃作業を容易なものとするという作用効果が得られる。
【0014】
また、この発明にかかる石製灯籠用扉本体は、その左側辺部に、固定部の左側辺部に左側ヒンジピンまたは左側扉着脱部が設けられるのに対応して左側扉着脱部または左側ヒンジピンが設けられるとともに、その右側辺部に、固定部の右側辺部に右側ヒンジピンまたは右側扉着脱部が設けられるのに対応して右側扉着脱部または右側ヒンジピンが設けられ、固定部に対して着脱自在に交換可能となっていることを特徴としている。
【0015】
このように構成された石製灯籠用扉本体では、固定部に対して着脱自在に交換可能となっているため、扉本体が破損したとしても、特別な工具などを用いることなく、新しい扉本体を固定部に装着することができる。
【0016】
さらに、この発明にかかる石製灯籠は、上記目的を達成するため、その正面に開口部が形成された灯籠本体部と、請求項1記載の石製灯籠用扉とを備え、固定部が灯籠本体部に対して固定され、左側ヒンジピンが左側扉着脱部の枢支部に枢支された状態で左側ヒンジピンを回動中心として扉本体を左側に回動させることで開口部を開閉可能となる一方、右側ヒンジピンが右側扉着脱部の枢支部に枢支された状態で右側ヒンジピンを回動中心として扉本体を右側に回動させることで開口部を開閉可能となっていることを特徴としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は本発明にかかる石製灯籠の一実施形態を示す斜視図であり、図2および図3は図1の石製灯籠に装着される石製灯籠用扉を示す斜視図である。この実施形態では、石製灯籠用扉1が石製灯籠2に対して着脱自在となっており、石製灯籠2に装着された状態で石製灯籠2の開口部に対して水平方向に開閉自在となっている。また、その開閉動作を「左開き」および「右開き」を選択的に切替可能となっている。すなわち、石製灯籠2は、図1に示すように、その下部が径大な基台部21と、この基台部21の上部に連設された灯籠本体部22とで構成されている。そして、灯籠本体部22の正面側(図2の右下側)に開口部23が設けられており、灯籠本体部22の内部に位置するロウソク立てに立てられたロウソク(図示省略)から放射される光を石製灯籠2の外部に導いて石製灯籠2の正面側を照らすことが可能となっている。また、この実施形態においても、灯籠本体部22に対するロウソクの収容および取出しを容易とし、しかもロウソクの火が消えるのを防止するために、開口部23に対して石製灯籠用扉1を装着可能で、しかも石製灯籠2への装着状態で石製灯籠2の開口部23に対して開閉可能となっている。以下、石製灯籠用扉1の構成について詳述する。
【0018】
石製灯籠用扉1は、灯籠本体部22に対して固定可能な固定部11と、扉本体12とを備えている。この扉本体12は例えばステンレス製などの金属製であり、その略中央部には、1つの窓部121が設けられている。そして、この窓部121にガラスなどの耐熱性透明部材14が取着されている。具体的には、扉本体12の上下部に固着された4つの係止爪部122によって、透明部材14は扉本体12に固定されている。また、扉本体12の下部中央にロウソク立て15が支持板16を介して取り付けられている。したがって、必要に応じて扉本体12を後述するように「左開き」や「右開き」に回動させることで、扉本体12および透明部材14が一体的に開口部23に対して開閉される。なお、この実施形態では、ロウソク立て15が支持板16の先端部に固着されているが、ロウソク立て15を支持板に対して着脱自在に構成してもよい。また、扉本体12の左右側部は灯籠本体部22に向けて折り曲げられており、各側辺部において上下2箇所で合計4本のヒンジピン3L,3Rが取り付けられている。すなわち、扉本体12の左側辺部に左側ヒンジピン3Lが設けられる一方、扉本体12の右側辺部に右側ヒンジピン3Rが設けられている。
【0019】
一方、固定部11は上下2つに分かれた固定帯11U、11Dを有している。これらのうち固定帯11Dは正面視で凹形状を有する一方、固定帯11Uは固定帯11Dを上下逆転させた形状に仕上げられ、いずれの固定帯11U、11Dも灯籠本体部22の表面曲率と同程度の曲率を有しており、灯籠本体部22の表面に密接可能となっている。また、固定帯11U、11Dの裏面側には、固定帯11U、11Dを灯籠本体部22に固定するための固定具115、116がそれぞれ取り付けられている。各固定具115、116は左右一対の取付バネ117R、117Lで構成されている。取付バネ117R、117Lは、先端が灯籠本体部22の内周面の曲率とほぼ同程度の曲率を有する略半環状となっているフック形状に仕上げられている。そして、これらの取付バネ117R、117Lは、装着前において略半環部の相互間隔W117が灯籠本体部22の内径W22(図4)よりも幅広となるように、固定帯11U、11Dに取り付けられている。
【0020】
また、固定帯11U、11Dの左側辺部には左側扉着脱部4Lが取り付けられるとともに、右側辺部には右側扉着脱部4Rが取り付けられている。各左側扉着脱部4Lは、左側ヒンジピン3Lに係脱自在に係合することで左側ヒンジピン3Lを枢支する枢支部41および該枢支部41に対する左側ヒンジピン3Lの挿脱を案内する案内部42を有し、該案内部42を正面側に向けた状態で固定帯11U、11Dの左側辺部に設けられている。この実施形態では、各左側扉着脱部4Lは次のようにして構成されている。すなわち、1枚の金属板の略中央部を2箇所内側に折り曲げて2つの片部を形成する。そして、こうして形成された各片部の略中央部に、互いに向き合う形で凹部を形成してヒンジピン3Lを挟み込み可能に構成する。このように対向する凹部により枢支部41が形成されている。また、各片部の先端については正面側に向かって末広がり形状に折り曲げられて案内部42を構成している。このように金属板を折り曲げて形成された左側扉着脱部4Lでは、案内部42に沿ってヒンジピン3Lが移動してくると、案内部42を構成する片部先端がヒンジピン3Lによって押し広げられながらヒンジピン3Lを枢支部41に案内する。そして、ヒンジピン3Lが枢支部41に挿入されると、片部の弾性力により枢支部41で係合枢支される。逆に、ヒンジピン3Lが正面側に移動すると、枢支部41による係合が解除された後、案内部42に案内されて左側扉着脱部4Lの外側に移動する。したがって、左側扉着脱部4Lでは、左側ヒンジピン3Lが枢支部41で係合されて枢支された状態のまま左側ヒンジピン3Lを回動中心として扉本体12を回動させることで「左開き」が実行可能となっている。
【0021】
一方、各右側扉着脱部4Rは、右側ヒンジピン3Rに係脱自在に係合することで右側ヒンジピン3Rを枢支する枢支部41および該枢支部41に対する右側ヒンジピン3Rの挿脱を案内する案内部42を有し、該案内部42を正面側に向けた状態で固定帯11U、11Dの右側辺部に設けられている。このように右側扉着脱部4Rでは、右側ヒンジピン3Rが枢支部41で係合されて枢支された係合枢支状態のまま右側ヒンジピン3Rを回動中心として扉本体12を回動させることで「右開き」が実行可能となっている。なお、各右側扉着脱部4Rの構成については上記した左側扉着脱部4Lと同一であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0022】
次に、上記のように構成された扉1を石製灯籠2に取り付ける手順について図4を参照しつつ詳述する。図4は石製灯籠への石製灯籠用扉の取付手順を模式的に示す図である。なお、ここでは、灯籠本体部22への固定部11の装着手順を中心に説明するため、固定部11と接続されている扉本体12、透明部材14およびロウソク立て15の図示は省略する。
【0023】
石製灯籠用扉1を準備した段階(装着前)では、取付バネ117R、117Lには外力は全く作用しておらず、上記したように取付バネ117R、117Lは、装着前において略半環部の相互間隔W117が灯籠本体部22の内径W22よりも幅広となっている(同図(a))。そこで、取付作業者は固定帯11U、11Dを順番に以下のようにして灯籠本体部22の開口部23近傍に固定する。
【0024】
まず、同図(b)の矢印ARに示すように、取付バネ117R、117Lの先端部を開口部23の内側に進入させながら取付バネ117R、117Lを灯籠本体部22の内部に圧入する。このとき、取付バネ117R、117Lを互いに近接させて強制的に変形させるとともに、その変形状態のまま取付バネ117R、117Lを開口部23を介して灯籠本体部22の内部に挿入するようにしてもよい。
【0025】
ここで、圧入時に取付バネ117R、117Lが開口部23で弾性変形するが、取付バネ117R、117Lを灯籠本体部22の内部に挿入した段階でバネ力により取付バネ117R、117Lは相互に広がり、灯籠本体部22の内周面に密着して固定帯の固定が完了する。このような固定作業を扉本体12の各ヒンジピン3R,3Lを扉着脱部4R、4Lにそれぞれ係合させない状態、つまり扉本体12を固定部11から取り外した状態で実行する。
【0026】
そして、2つの固定帯11U、11Dを灯籠本体部22に固定して固定部11の固定が完了すると、扉本体12の各ヒンジピン3R,3Lを扉着脱部4R、4Lの案内部42に沿って枢支部41に向けて挿入して扉本体12を固定部11に装着する。この状態では、扉本体12によって開口部23は閉じられた状態となっており、各ヒンジピン3R,3Lは枢支部41により係合枢支されている。なお、その後にユーザが必要に応じて扉本体12の右側辺部を操作すると「左開き」により開口部23が開放され、逆に扉本体12の左側辺部を操作すると「右開き」により開口部23が開放される。
【0027】
以上のように、この実施形態によれば、扉本体12の左側および右側辺部にヒンジピン3L、3Rを設けるとともに、各ヒンジピン3L、3Rに対応して固定部11に左側および右側扉着脱部4L,4Rを設けているため、「左開き」および「右開き」を選択的に実行することができる。このため、ユーザは風向きに応じて「左開き」と「右開き」とを切り替えて強風時にも確実に、しかも容易にロウソクに点火することができる。また、ユーザは利き腕や荷物の手持ち状況に応じて自分にとって操作しやすい方向に扉本体12を開閉することができ、優れた操作性が得られる。また、単一構成で「左開き」と「右開き」とのいずれにも対応することができ、優れた汎用性が得られる。
【0028】
また、汎用性の面からいうと、固定部11を上側固定帯11Uと下側固定帯11Dとに分けて構成しているため、開口部23の上下サイズに対して柔軟に対応することができる。すなわち、石製灯籠は一般的に規格化されているわけではないため、種々の開口サイズが存在するが、上側固定帯11Uおよび/または下側固定帯11Dの固定位置を調整することで種々の開口サイズの対応することができ、汎用性に優れている。
【0029】
また、この実施形態によれば、左側および右側扉着脱部4L,4Rの各々は、枢支部41に対するヒンジピン3L,3Rの挿脱を案内する案内部42を有し、しかも該案内部42を灯籠本体部22の正面側に向けた状態で固定部11に設けているため、扉本体12の開閉動作をスムーズに行うことができ、ユーザの操作性をさらに高めることができる。また、左側および右側扉着脱部4L,4Rに対して左側および右側ヒンジピン3L,3Rがそれぞれ着脱自在となっているため、扉本体12を固定部11から完全に分離させることが可能となっている。したがって、上記したように固定部11の取付作業を行う際に扉本体12を取り外しておくことができ、固定作業の作業性を高めることができる。また、固定部11に対する扉本体12の着脱が容易であるため、石製灯籠用扉や石製灯籠の清掃作業を行う際に扉本体12を固定部11から取り外した状態で行うことができるため、メンテナンス性においても優れている。さらに、上記のように構成された石製灯籠を使用している間に、扉本体12や透明部材14などが破損したり、透明部材14の透明度が極端に低下するなどの不具合が生じたとしても、扉本体12は上記したように固定部11に対して着脱自在に交換可能となっているため、特別な工具などを用いることなく、新しい扉本体12を固定部11に装着することができる。
【0030】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、固定部11を上側固定帯11Uと下側固定帯11Dとに分けて構成しているが、一体化した枠状の固定部を用いてもよい。また、固定部11の分割数や分割態様についても任意である。
【0031】
また、上記実施形態では、左右に2個ずつの扉着脱部を設けているが、左右の各々に少なくとも1個以上扉着脱部を設ければよい。また、ヒンジピンについても、扉着脱部と同様に、左右の各々に少なくとも1個以上ヒンジピンを設ければよい。
【0032】
また、上記実施形態では、石製灯籠用扉1は左右対称に構成されているが、これに限定されるものではなく、例えば扉着脱部およびヒンジピンに関して右側と左側とで個数や配設位置などを相違させてもよく、要は左側ヒンジピンに係脱自在に係合することで左側ヒンジピンを枢支する左側枢支部および該左側枢支部に対する左側ヒンジピンの挿脱を案内する左側案内部を有する左側扉着脱部が左側案内部を正面側に向けた状態で固定部の左側辺部に設けられるとともに、右側ヒンジピンに係脱自在に係合することで右側ヒンジピンを枢支する右側枢支部および該右側枢支部に対する右側ヒンジピンの挿脱を案内する右側案内部を有する右側扉着脱部が右側案内部を正面側に向けた状態で固定部の右側辺部に設けられておればよい。
【0033】
また、上記実施形態では、扉本体12にヒンジピンを設けるとともに、固定部11に扉着脱部を設けているが、これらの配置関係に限定されるものではなく、表1に示すように、ヒンジピンと扉着脱部とは次のような相互関係で配置することができる。すなわち、扉の左側について、扉本体左側辺部および固定部の左側辺部のうちの一方に左側ヒンジピンを設けるとともに、他方に左側扉着脱部を左側案内部を一方側に向けた状態で設けることができる。また、扉の右側についても、左側と同様に、扉本体の右側辺部および固定部の右側辺部のうちの一方に右側ヒンジピンを設けるとともに、他方に右側扉着脱部を右側案内部を一方側に向けた状態で設けることができる。
【0034】
【表1】
【0035】
また、上記実施形態では、取付バネ117R、117Lのバネ力を利用して固定部11を石製灯籠2に対して開口部23の周縁部で固定しているが、固定部11の固定方式はこれに限定されるものではなく、石製灯籠への扉の固定方式として従来より提案されている種々の方式、例えば特許文献1や特許文献2に記載された固定方式を採用することができる。また、固定方式に対応して固定部11の分割数などを適宜組み合わせるように構成してもよい。また、固定方式として、本発明者により提案された固定方式(特願2004−144758)や次に説明する固定方式を採用してもよい。なお、次の実施形態では、上記した「左開き」および「右開き」を切り替えることができるものではないが、以下の実施形態は固定方式として優れた特徴を有している。また、後述する扉本体の左側辺部に左側ヒンジピンを、また右側辺部に右側ヒンジピンを設ける一方、固定部の一部を構成する垂直部位に上記したと同様の左側および右側扉着脱部を設けることで「左開き」および「右開き」を切り替えることができ、以下に説明する固定方式と容易に組み合わせることができる。
【0036】
ところで、石製灯籠用扉を灯籠本体部に装着固定するにあたって、従来例では石製灯籠用扉の固定部の全部または一部を灯籠本体部の内部に配置するとともに、ネジ等を操作して灯籠本体部への固定部の固定作業を行う必要がある。例えば特許文献1に記載の石製灯籠では、固定部全体が灯籠本体部の内底部側に配置されている。この固定部にはネジ部が設けられるとともに、該ネジ部の端部に回転操作部が取り付けられている。そして、回転操作部を操作することで、ネジ部の後端部と螺合されている角材部が灯籠本体部の内周面に押し付けられるとともに、ネジ部の先端が灯籠本体部の内周面に押し付けられて固定部全体が灯籠本体部に強固に固定される。
【0037】
また、特許文献2に記載の石製灯籠では、開口部の形状に対応した基枠が固定部として設けられている。この基枠の下部には略L字型の取付片が設けられるとともに、該取付片の先端にネジが螺着されている。そして、この取付片およびネジを灯籠本体部の内部に挿入した後、該ネジを回転操作することでネジの先端が灯籠本体部の内周面に押し付けられて基枠の下方部が灯籠本体部に挟持される。一方、基枠の上部にはネジが挿入されており、該ネジを回転操作することで同ネジに螺着された湾曲帯状片とで開口部の端部が挟持される。こうして基枠(固定部)が灯籠本体部に強固に固定される。
【0038】
このように、従来の石製灯籠では、灯籠本体部の内部でネジを操作する必要があり、取付作業者は開口部や別の開口部(例えば灯籠本体部の底部や頂上部等)から手を灯籠本体部の内部に差し入れる必要がある。したがって、灯籠本体部への石製灯籠用扉の装着作業が煩雑なものとなっていた。また、灯籠本体部から石製灯籠用扉を取り外す場合にも、灯籠本体部の内部に手を差し入れてネジの回転操作が必要となり、装着作業と同様に取外し作業も煩雑なものとなっていた。
【0039】
また、特許文献2に記載された石製灯籠に代表されるように、灯籠本体部への石製灯籠用扉の固定箇所が複数になると、すべての固定箇所を所望位置に位置決めする作業と、各固定箇所でのネジ操作などの固定作業とを順番に行う必要がある。例えば、特許文献2に記載の石製灯籠では、(1)灯籠本体部に対する基枠の位置決め作業、(2)基枠の下方部でのネジ操作、(3)基枠の上方部でのネジ操作の合計3つの作業を行なう必要があった。
【0040】
そこで、以下の実施形態では、以下のように構成することで優れた作業性で石製灯籠に対する石製灯籠用扉の着脱を行うことを可能としている。以下、図5ないし図11を参照しつつ詳述する。
【0041】
図5は本発明にかかる石製灯籠の一実施形態を示す斜視図であり、図6は図5の石製灯籠の断面図であり、図7は図5の石製灯籠に装着される石製灯籠用扉を示す斜視図である。この実施形態では、石製灯籠用扉1が石製灯籠2に対して着脱自在となっており、石製灯籠2に装着された状態で石製灯籠2の開口部に対して開閉自在となっている。すなわち、石製灯籠2は、図5および図6に示すように、その下部が径大な基台部21と、この基台部21の上部に連設された灯籠本体部22とで構成されている。そして、灯籠本体部22の正面側(図6の右手側)に開口部23が設けられており、灯籠本体部22の内部に位置するロウソク立てに立てられたロウソク(図示省略)から放射される光を石製灯籠2の外部に導いて石製灯籠2の正面側を照らすことが可能となっている。また、この実施形態においても、灯籠本体部22に対するロウソクの収容および取出しを容易とし、しかもロウソクの火が消えるのを防止するために、開口部23に対して石製灯籠用扉1を装着可能で、しかも石製灯籠2への装着状態で石製灯籠2の開口部23に対して開閉可能となっている。以下、石製灯籠用扉1の構成について詳述する。
【0042】
石製灯籠用扉1は、灯籠本体部22に対して固定可能な固定部11と、扉本体12と、ステンレス製の扉本体12を固定部11に対して回動自在に支持する支持部13とを備えている。この固定部11は、開口部23の左側端部23Lに当接可能に設けられた第1垂直部位111と、開口部23の右側端部23Rに当接可能に設けられた第2垂直部位112とを備えている。より詳しくは、各垂直部位111,112は上下方向において開口部23よりも若干短く、しかも水平断面形状が略レ状に仕上げられたステンレス製金属片で構成されている。そして、各垂直部位111,112の折り曲げ部分が開口部23の端部と当接可能となっている。
【0043】
また、この固定部11では、第1および第2垂直部位111,112は互いに対向配置された状態で2本の帯状片113で相互に連結されている。また、各帯状片113は石製灯籠2の内部に向けて湾曲した形状を有しており、例えば図7に示すように外力付与が全くない状態では単に垂直部位111,112の連結機能を発揮するのみであるが、後述するようにして強制湾曲させると、その強制湾曲状態に応じた付勢力が発生して垂直部位111,112を互いに離間する方向に付勢する。このように、この実施形態では2本の帯状片113によって連結部位が構成されているが、湾曲帯状片113の本数、形状や配置などについては任意である。また、この実施形態では、垂直部位111,112と帯状片113とをそれぞれ独立した部材により構成するとともに、スポット溶接や締結部材などの接続技術を用いて連結しているが、垂直部位111(または112)と帯状片113とを一体成形したり、垂直部位111,112と帯状片113とを一体成形するようにしてもよい。また、外力付与がない状態ではストレートに伸びる連結部位を採用してもよい。さらに、帯状片113などの連結部位を構成する材料の選定にあたっては、可撓性があり、バネ特性を有する材料であれば任意であるが、ロウソクによる変形を防止し、また後述するようにロウソクの光を効率的に開口部23から放射させるためにステンレス鋼やバネ鋼などの金属材料を用いるのが望ましい。
【0044】
また、各帯状片113には、垂直部位111,112の連結部近傍に係止部位114が形成されている。より具体的には、帯状片113の一部に各垂直部位側より切り込み部を設けるとともに、図7の破線箇所を折り曲げ箇所として切り込み片部を石製灯籠2の内部に折り曲げることで、合計4個の切り込み片部が係止部位114として形成されている。これらの係止部位114は、後述するようにして固定部11が灯籠本体部22に対して装着されると、灯籠本体部22の内周面と接触して帯状片113の変位を防止し、固定部11を灯籠本体部22に対して固定している。
【0045】
この固定部11の第2垂直部位112には、2つのヒンジ131と該ヒンジ131の間に配置されたバネ部材132を有する支持部13が取り付けられており、ヒンジ131によって扉本体12が第2垂直部位112に対して回動自在に支持されている。また、バネ部材132によって扉本体12が開口部23側に付勢されている。なお、この実施形態では、ヒンジ131によって扉本体12を固定部11に対して回動自在に取り付けているが、他の回動支持方式、例えば蝶番を用いてもよいことはいうまでもない。また、図2および図3に示す構造を設けて左右開きが可能となるように構成してもよい。
【0046】
扉本体12の略中央部には、1つの窓部121が設けられている。そして、この窓部121にガラスなどの耐熱性透明部材14が取着されている。具体的には、扉本体12の上下部に固着された4つの係止爪部122によって、透明部材14は扉本体12に固定されている。また、扉本体12の下部中央にロウソク立て15が支持板を介して取り付けられている。したがって、必要に応じて扉本体12の前面に取り付けられた取手部123を摘んで操作することで、扉本体12および透明部材14が一体的に開口部23に対して開閉される。なお、この実施形態では、ロウソク立て15が支持板の先端部に固着されているが、ロウソク立て15を支持板に対して着脱自在に構成してもよい。
【0047】
次に、上記のように構成された扉1を石製灯籠2に取り付ける手順について図8および図9を参照しつつ詳述する。図8は石製灯籠への石製灯籠用扉の取付手順を模式的に示す図である。なお、ここでは、灯籠本体部22への固定部11の装着手順を中心に説明するため、固定部11と接続されている扉本体12、支持部13、透明部材14およびロウソク立て15の図示は省略する。
【0048】
石製灯籠用扉1を準備した段階(装着前)では、上記したように帯状片(連結部位)113には外力は全く作用しておらず、左右方向における固定部11の幅は開口部23の幅よりも広がっている(同図(a))。そこで、取付作業者は、同図(b)の矢印AR1に示すように垂直部位111,112を互いに近接させて帯状片113を強制的に湾曲変形させるとともに、矢印AR2に示すように湾曲変形状態のまま帯状片113を開口部23を介して灯籠本体部22の内部に挿入して第1および第2垂直部位111,112を開口部23の左側端部23Lおよび右側端部23Rにそれぞれ当接させる。このとき、垂直部位111,112は図8および図9に示すように左側端部23Lおよび右側端部23Rの正面領域231L,231Rに当接しており、固定部11は専ら係止部位114により固定されている。つまり、係止部位114が灯籠本体部22の内周面と接触して帯状片113の変位を防止し、これによって固定部11を灯籠本体部22に対して固定している。そして、取付作業者は、固定部11が係止部位114により確実に固定されていることを確認してから垂直部位111,112から手を離して取付作業を終了する(同図(c))。
【0049】
なお、上記においては図8を参照しつつ装着手順について説明したが、灯籠本体部22から石製灯籠用扉1を取り外す場合には、装着手順と逆の手順を行うことができる。
【0050】
以上のように、この実施形態によれば、第1および第2垂直部位111、112を帯状片(連結部位)113によって相互に連結してなる固定部11を用いているので、上記したようにして取付作業者は石製灯籠2の内部での作業を行なうことなく、石製灯籠2に対する石製灯籠用扉1の着脱作業を行なうことができる。また、着脱作業も強制湾曲させた状態で帯状片(連結部位)113を開口部23から挿脱する、つまりワンタッチ方式で行うことができる。したがって、石製灯籠2に対する石製灯籠用扉1の着脱作業性を大幅に向上させることができる。
【0051】
また、帯状片113が開口部23から灯籠本体部22の内部に挿入されると、図8(c)に示すように、切り込み片部114が灯籠本体部22の内周面に係止され、固定部11の固定強度を高めている。すなわち、この実施形態では、強制湾曲された帯状片113を開口部23を介して灯籠本体部22の内部に挿入しているが、このような構成を採用した場合には、固定部11全体を正面側に付勢する力も発生する。しかしながら、この実施形態では、4本の切り込み片部114を設け、該切り込み片部114が灯籠本体部22の内周面に当接することによって正面側への固定部11の移動を防止しながら固定部11を固定している。その結果、石製灯籠用扉1をより強固に石製灯籠2に固定することができる。しかも、上記のように構成された切り込み片部114は強制湾曲挿入時(図8(b))には開口部23および灯籠本体部22の内周面に沿って摺動可能となる一方、装着後に逆方向に固定部11が移動しようとした場合、切り込み片部114は釣り針の「戻り」のごとく作用して固定部11の移動を確実に防止することができる。したがって、この実施形態にかかる石製灯籠用扉1は取付作業性と固定強度とを兼ね備えた構成といえる。ここでは、切り込み片部114が内周面に当接して係止されているが、灯籠本体部22との摩擦力により係止されるように構成してもよい。
【0052】
さらに、上記実施形態によれば、固定部11が灯籠本体部22に装着されると、固定部11を構成する帯状片(連結部位)113が図5および図6に示すようにロウソク立て15の背面側(図6の左手側)に位置することとなり、ロウソク立て15に立てられたロウソクを背面側で取り巻くように配置される。したがって、帯状片113をステンレス鋼やばね鋼などの金属材料により構成すると、帯状片113が反射板としても機能し、背面側に放射された光を正面側に導いて開口部23から正面側に放射される光量を増大させることができる。
【0053】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、切り込み片部114を灯籠本体部22の内周面に当接させることによって固定部11を石製灯籠に固定しているが、切り込み片部114の代わりに垂直部位111,112を開口部23の端面に当接させて固定してもよい。すなわち、帯状片(連結部位)113が灯籠本体部22の内部に向けて強制湾曲された状態で開口部23を介して灯籠本体部22の内部に挿入されると、帯状片113により開口部23において固定部11の垂直部位111側および垂直部位112側が互いに離間する方向に付勢されて、垂直部位111,112がそれぞれ左側端部23Lおよび右側端部23Rの端面23Sにそれぞれ押し付けられる。これによって灯籠本体部22に固定部11が固定される(図10(a)では右側端部23Rのみが図示されているが、左側端部23Lにおいても同様である)。以下、その石製灯籠2への取付手順について図11を参照しつつ詳述する。
【0054】
図11は石製灯籠への石製灯籠用扉の取付手順を模式的に示す図である。なお、ここでは、灯籠本体部22への固定部11の装着手順を中心に説明するため、固定部11と接続されている扉本体12、支持部13、透明部材14およびロウソク立て15の図示は省略する。
【0055】
石製灯籠用扉1を準備した段階(装着前)では、上記したように帯状片(連結部位)113には外力は全く作用しておらず、左右方向における固定部11の幅は開口部23の幅よりも広がっている(同図(a))。そこで、取付作業者は、同図(b)の矢印AR1に示すように垂直部位111,112を互いに近接させて帯状片113を強制的に湾曲変形させるとともに、矢印AR2に示すように湾曲変形状態のまま帯状片113を開口部23を介して灯籠本体部22の内部に挿入して第1および第2垂直部位111,112を開口部23の左側端部23Lおよび右側端部23Rにそれぞれ当接させる。そして、取付作業者は垂直部位111,112から手を離して取付作業を終了する(同図(c))。
【0056】
なお、上記においては図11を参照しつつ装着手順について説明したが、灯籠本体部22から石製灯籠用扉1を取り外す場合には、装着手順と逆の手順を行うことができる。
【0057】
以上のように、この実施形態によれば、第1および第2垂直部位111、112を帯状片(連結部位)113によって相互に連結してなる固定部11を用いているので、上記したようにして取付作業者は石製灯籠2の内部での作業を行なうことなく、石製灯籠2に対する石製灯籠用扉1の着脱作業を行なうことができる。また、着脱作業も強制湾曲させた状態で帯状片(連結部位)113を開口部23から挿脱する、つまりワンタッチ方式で行うことができる。したがって、石製灯籠2に対する石製灯籠用扉1の着脱作業性を大幅に向上させることができる。
【0058】
ただし、このように垂直部位111,112がそれぞれ左側端部23Lおよび右側端部23Rの端面23Sに押し付けられて固定部11を固定するためには、図10(b)に示すように、開口部23を望む開口端面23Sが強制湾曲された帯状片113により発生する付勢力Fと直交する、つまり付勢力Fと開口端面23Sとのなす角度αが90゜である、あるいは90゜を超えて開口端面23Sが灯籠本体部22の内部を臨むように開口部23が形成された場合に限定される。これは強制湾曲された帯状片113による離間付勢力F以外に固定部11全体を正面側に付勢する力も発生するからであり、これに打ち勝って固定部11を灯籠本体部22に固定するためには
α≧90゜
を満足させる必要がある。
【0059】
また、固定部11の他の部位を係止部位として設けてもよい。例えば、固定部11を灯籠本体部22に装着した状態(図11(c))で垂直部位111,112の一部が灯籠本体部22の内周面と係合するように各垂直部位111,112を構成したり、垂直部位111,112や連結部位113から係止部材を灯籠本体部22の内周面に向けて突設させて装着状態で該係止部材が灯籠本体部22と係合するように構成したり、連結部位113から灯籠本体部22の背面側に係止部材を延設させて灯籠本体部22の切欠部221に係合させるようにしてもよい。要は、開口部23よりも石製灯籠2の背面側において石製灯籠2の一部に係止される係止部位をさらに設けるようにすればよい。
【0060】
また、上記実施形態では、固定部11に対して扉本体12が取り付けられた状態のまま、石製灯籠用扉1を石製灯籠2に対して着脱しているが、固定部11に対して扉本体12が着脱自在となっているため、まず固定部11のみを灯籠本体部22に装着固定した後、扉本体12を固定部11に取り付けるようにしてもよい。また、取り外しも同様に、扉本体12を取り外した後に固定部11を灯籠本体部22から取り外すようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明にかかる石製灯籠の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】石製灯籠の開口部と扉との対応関係を示す斜視図である。
【図3】石製灯籠用扉の左開き状態と右開き状態を示す斜視図である。
【図4】図1の実施形態における石製灯籠への石製灯籠用扉の取付手順を模式的に示す図である。
【図5】本発明にかかる石製灯籠の他の実施形態を示す斜視図である。
【図6】図5の石製灯籠の断面図である。
【図7】図5の石製灯籠に装着される石製灯籠用扉を示す斜視図である。
【図8】石製灯籠への石製灯籠用扉の取付手順を模式的に示す図である。
【図9】固定部の灯籠本体部への固定態様を示す拡大図である。
【図10】本発明にかかる石製灯籠の別の実施形態を示す斜視図である。
【図11】図10の実施形態における石製灯籠への石製灯籠用扉の取付手順を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0062】
1…石製灯籠用扉
2…石製灯籠
3L…左側ヒンジピン
3R…右側ヒンジピン
4L…左側扉着脱部
4R…右側扉着脱部
11…固定部
11U、11D…固定帯
12…扉本体
22…灯籠本体部
23…開口部
41…枢支部
42…案内部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その正面に開口部を有する石製灯籠に対して前記開口部の周縁部で固定される固定部と、前記固定部に対して回動自在に取り付けられた扉本体とを備え、前記扉本体の回動動作によって前記開口部を開閉する石製灯籠用扉において、
左側ヒンジピンと、
前記左側ヒンジピンに係脱自在に係合することで前記左側ヒンジピンを枢支する左側枢支部および該左側枢支部への前記左側ヒンジピンの挿脱を案内する左側案内部を有する左側扉着脱部と、
右側ヒンジピンと、
前記右側ヒンジピンに係脱自在に係合することで前記右側ヒンジピンを枢支する右側枢支部および該右側枢支部への前記右側ヒンジピンの挿脱を案内する右側案内部を有する右側扉着脱部と
を備え、
前記扉本体の左側辺部および前記固定部の左側辺部のうちの一方に前記左側ヒンジピンが設けられるとともに、他方に前記左側扉着脱部が前記左側案内部を前記一方側に向けた状態で設けられ、
前記扉本体の右側辺部および前記固定部の右側辺部のうちの一方に前記右側ヒンジピンが設けられるとともに、他方に前記右側扉着脱部が前記右側案内部を前記一方側に向けた状態で設けられたことを特徴とする石製灯籠用扉。
【請求項2】
請求項1記載の石製灯籠用扉に用いられる石製灯籠用扉本体であって、
その左側辺部に、前記固定部の左側辺部に左側ヒンジピンまたは左側扉着脱部が設けられるのに対応して左側扉着脱部または左側ヒンジピンが設けられるとともに、
その右側辺部に、前記固定部の右側辺部に右側ヒンジピンまたは右側扉着脱部が設けられるのに対応して右側扉着脱部または右側ヒンジピンが設けられ、
前記固定部に対して着脱自在に交換可能となっていることを特徴とする石製灯籠用扉本体。
【請求項3】
その正面に開口部が形成された灯籠本体部と、
請求項1記載の石製灯籠用扉とを備え、
前記固定部が前記灯籠本体部に対して固定され、前記左側ヒンジピンが前記左側扉着脱部の枢支部に枢支された状態で前記左側ヒンジピンを回動中心として前記扉本体を回動させることで前記開口部を開閉可能となる一方、前記右側ヒンジピンが前記右側扉着脱部の枢支部に枢支された状態で前記右側ヒンジピンを回動中心として前記扉本体を回動させることで前記開口部を開閉可能となっていることを特徴とする石製灯籠。
【請求項1】
その正面に開口部を有する石製灯籠に対して前記開口部の周縁部で固定される固定部と、前記固定部に対して回動自在に取り付けられた扉本体とを備え、前記扉本体の回動動作によって前記開口部を開閉する石製灯籠用扉において、
左側ヒンジピンと、
前記左側ヒンジピンに係脱自在に係合することで前記左側ヒンジピンを枢支する左側枢支部および該左側枢支部への前記左側ヒンジピンの挿脱を案内する左側案内部を有する左側扉着脱部と、
右側ヒンジピンと、
前記右側ヒンジピンに係脱自在に係合することで前記右側ヒンジピンを枢支する右側枢支部および該右側枢支部への前記右側ヒンジピンの挿脱を案内する右側案内部を有する右側扉着脱部と
を備え、
前記扉本体の左側辺部および前記固定部の左側辺部のうちの一方に前記左側ヒンジピンが設けられるとともに、他方に前記左側扉着脱部が前記左側案内部を前記一方側に向けた状態で設けられ、
前記扉本体の右側辺部および前記固定部の右側辺部のうちの一方に前記右側ヒンジピンが設けられるとともに、他方に前記右側扉着脱部が前記右側案内部を前記一方側に向けた状態で設けられたことを特徴とする石製灯籠用扉。
【請求項2】
請求項1記載の石製灯籠用扉に用いられる石製灯籠用扉本体であって、
その左側辺部に、前記固定部の左側辺部に左側ヒンジピンまたは左側扉着脱部が設けられるのに対応して左側扉着脱部または左側ヒンジピンが設けられるとともに、
その右側辺部に、前記固定部の右側辺部に右側ヒンジピンまたは右側扉着脱部が設けられるのに対応して右側扉着脱部または右側ヒンジピンが設けられ、
前記固定部に対して着脱自在に交換可能となっていることを特徴とする石製灯籠用扉本体。
【請求項3】
その正面に開口部が形成された灯籠本体部と、
請求項1記載の石製灯籠用扉とを備え、
前記固定部が前記灯籠本体部に対して固定され、前記左側ヒンジピンが前記左側扉着脱部の枢支部に枢支された状態で前記左側ヒンジピンを回動中心として前記扉本体を回動させることで前記開口部を開閉可能となる一方、前記右側ヒンジピンが前記右側扉着脱部の枢支部に枢支された状態で前記右側ヒンジピンを回動中心として前記扉本体を回動させることで前記開口部を開閉可能となっていることを特徴とする石製灯籠。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−228445(P2006−228445A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−37312(P2005−37312)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(504260416)精和電機産業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(504260416)精和電機産業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】
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