研削盤のレスト装置
【課題】ジャーナルの表面に凹凸のうねりが発生し難く、かつ発生したうねりを除去可能な研削盤のレスト装置を提供する。
【解決手段】クランクシャフト1を軸心5周りに回転させ、ジャーナル2を砥石車15により研削点Pで研削する研削盤のレスト装置である。ジャーナル2を砥石車15に押圧して支持する2個のレストシュー23、25を有しており、2個のレストシュー23、25は、研削点Pと軸心5とを結ぶ線分L1を基準として測定した第1設置角度θ1及び、第1設置角度θ1より大きな第2設置角度θ2で設置されている。第2設置角度θ2は、第1設置角度θ1の整数倍の角度から第1設置角度θ1の半分の角度を減じた角度である。
【解決手段】クランクシャフト1を軸心5周りに回転させ、ジャーナル2を砥石車15により研削点Pで研削する研削盤のレスト装置である。ジャーナル2を砥石車15に押圧して支持する2個のレストシュー23、25を有しており、2個のレストシュー23、25は、研削点Pと軸心5とを結ぶ線分L1を基準として測定した第1設置角度θ1及び、第1設置角度θ1より大きな第2設置角度θ2で設置されている。第2設置角度θ2は、第1設置角度θ1の整数倍の角度から第1設置角度θ1の半分の角度を減じた角度である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランクシャフトを軸心周りに回転させ、ジャーナルを砥石車で研削する研削盤のレスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、クランクシャフトのジャーナルの研削盤では、図11に示すように、クランクシャフト91を軸心98回りに矢印の方向に回転させて、ジャーナル92を砥石車90で研削している。この際、クランクシャフト91は、剛性が低く研削抵抗により撓みを発生し易い。そのため、レスト装置を用いて撓みの発生を防止しつつ、ジャーナル92を砥石車90で研削している。図11は、ジャーナル92を支持する2個のレストシュー95、96を有する2点レスト装置の例である。ここで、ジャーナル92と砥石車90との当接点を研削点Pとすると、レストシュー95は、研削点Pと軸心98とを結ぶ線分L1を基準として測定した設置角度θで設置される。このレストシュー95は、ジャーナル92を砥石車90に押圧して支持するため、ジャーナル92の外形を形成する働きをするものである。それに対し、レストシュー96は、ジャーナル92を下方から支持し、主に軸心98の高さを一定に保つ働きをするものである。また、ジャーナル92には、クランクピン(図示なし)に潤滑油を供給するための油穴93が貫設されている。
【0003】
ジャーナル92の研削にあたっては、クーラントノズル(図示なし)からジャーナル92の表面にクーラントCを供給し、研削熱の発生を防止している。図11に示すように、油穴93が研削点Pにくると、クーラントCが油穴93に流れ込み、クーラントCの動圧が低下する。これにより、レストシュー95によりジャーナル92が砥石車90側に押され過ぎて研削点Pにおけるジャーナル92の研削量が増大し、凹部a1が形成される。ジャーナル92が矢印の向きに回転し、図12に示すように、レストシュー95の位置に凹部a1がくると、レストシュー95が凹部a1のへこみに入り込む。これにより、クーラントCの動圧によりジャーナル92がレストシュー95側に押され過ぎて研削点Pにおけるジャーナル92の研削量が減少し、凹部a1のへこみに応じた凸部b1が形成される。
【0004】
ジャーナル92が矢印の向きに回転し、図13に示すように、レストシュー95の位置に凸部b1がくると、ジャーナル92が砥石車90側に押され過ぎて研削点Pにおけるジャーナル92の研削量が増大し、凹部a2が形成される。さらに、ジャーナル92が矢印の向きに回転し、図14に示すように、レストシュー95の位置に凹部a2がくると、ジャーナル92がレストシュー95側に押され過ぎて研削点Pにおけるジャーナル92の研削量が減少し、凸部b2が形成される。
【0005】
このようにして、図15に示すように、ジャーナル92の表面に凹部a1、凸部b1、凹部a2、凸部b2、凹部a3、凸部b3、凹部a4、凸部b4の順に凹凸が形成され、周期2θのうねりが発生することになる。
【0006】
これに対して、特許文献1記載の研削盤のレスト装置が提案されている。この研削盤のレスト装置では、2点レスト装置のレストシューのうちジャーナルを砥石車に押圧して支持するレストシューを2個に分割している。そして、2個のレストシューでジャーナルを砥石車に押圧して支持している。この研削盤のレスト装置によれば、一方のレストシューの位置に油穴がきても、他方のレストシューがジャーナルを押圧しているため、ジャーナルがレストシュー側に押され難くなり、研削点の位置に凸部が形成され難くなると考えられる。
【特許文献1】特開平9−277166号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1記載の研削盤のレスト装置では、2個のレストシューの位置関係について言及されていない。そのため、この研削盤のレスト装置では、一旦、凹凸が形成されて、うねりが発生すると、そのうねりを除去することができなくなるおそれがある。すなわち、例えば、図16に示すように、ジャーナル92を砥石車90に押圧して支持する2個のレストシュー95、97の設置角度θが等しく、線分L1に対して互いに反対側にある場合、一方のレストシュー95の位置に凹部がくると、他方のレストシュー97の位置にも凹部がくる。そのため、ジャーナル92がレストシュー95、97側に押され、研削点Pの位置の凸部が除去され難くなる。
【0008】
本発明は係る従来の問題点に鑑みてなされたものであり、ジャーナルの表面に凹凸のうねりが発生し難く、かつ発生したうねりを除去可能な研削盤のレスト装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る研削盤のレスト装置の特徴は、クランクシャフトを軸心周りに回転させ、ジャーナルを砥石車により研削点で研削する研削盤のレスト装置において、前記ジャーナルを前記砥石車に押圧して支持する2個のレストシューを有し、2個の該レストシューは、前記研削点と前記軸心とを結ぶ線分を基準として測定した第1設置角度及び、該第1設置角度より大きな第2設置角度で設置され、該第2設置角度は、該第1設置角度の整数倍の角度ではないことである。
【0010】
請求項2に係る研削盤のレスト装置の特徴は、請求項1において、前記第2設置角度は、前記第1設置角度の整数倍の角度から前記第1設置角度の半分の角度を減じた角度であることである。
【0011】
請求項3に係る研削盤のレスト装置の特徴は、請求項1又は2において、2個の前記レストシューは、前記研削点と前記軸心とを結ぶ線分より下方にあることである。
【0012】
請求項4に係る研削盤のレスト装置の特徴は、請求項1乃至3のいずれか1項において、前記第1設置角度及び前記第2設置角度を調整可能な調整機構を有していることである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る研削盤のレスト装置においては、2個のレストシューは研削点と軸心とを結ぶ線分を基準として測定した第1設置角度及び、第1設置角度より大きな第2設置角度で設置され、第2設置角度は第1設置角度の整数倍の角度ではないため、一方のレストシューの位置に凹部がきた場合、他方のレストシューがジャーナルを確実に押圧する。そのため、研削点に凸部ができ難くなり、ジャーナルの表面に凹凸のうねりが発生し難い。また、ジャーナルの表面に凹凸のうねりが発生したとしても、一方のレストシューの位置に凹部がきた場合、研削点の凸部を除去することができる。したがって、この研削盤のレスト装置によれば、ジャーナルの表面に凹凸のうねりが発生し難く、かつ発生したうねりを除去可能である。
【0014】
請求項2に係る研削盤のレスト装置においては、第2設置角度が第1設置角度の整数倍の角度から第1設置角度の半分の角度を減じた角度であるために、一方のレストシューの影響により生じる凹凸のうねりの中間位置、すなわち凹凸のうねりの影響が一番少ない位置に他方のレストシューを配置できるので、凹凸のうねりが最も発生し難く、かつ発生したうねりを確実に除去可能である。
【0015】
請求項3に係る研削盤のレスト装置においては、2個のレストシューが研削点と軸心とを結ぶ線分より下方にあるため、ジャーナルを研削盤に設置するに際し、レストシューを後方へ移動する必要がほとんどない。また、クーラントノズル等は研削点と軸心とを結ぶ線分より上方にあるため、レストシューの位置調整をするに際し、クーラントノズル等との干渉を防止することができる。
【0016】
請求項4に係る研削盤のレスト装置においては、第1設置角度及び第2設置角度を調整可能な調整機構を有しているため、異なる径のジャーナルであっても第1設置角度及び第2設置角度を一定に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係る研削盤のレスト装置を具体化した実施形態1、2を図面に基づいて以下に説明する。図1は、実施形態1のレスト装置を用いた研削盤で研削されるクランクシャフト1の正面図である。クランクシャフト1は、軸心5に位置しベアリング(図示なし)に支持される複数のジャーナル2と、コネクティングロッド(図示なし)が装着されてピストン(図示なし)の線分運動を回転運動に変換する複数のクランクピン4と、クランクシャフト1の回転時にクランクシャフト1自体の振動を最小にするバランスウエイト6を備えている。クランクシャフト1は高速回転しており、長時間運転の焼付けの防止のため、潤滑油が循環するようにジャーナル2とクランクピン4には油穴3が形成されている。この油穴3は、ジャーナル2の径方向に貫設されている。
【0018】
図2は、実施形態1のレスト装置が用いられる研削盤の平面図である。研削盤のベッド10上には、主軸台11及び心押台12が設置され、その間にクランクシャフト1が軸心5回りに回転可能に支持されている。また、ベッド10上には、Z軸テーブル13がサーボモータ(図示なし)によりZ方向に移動可能に設けられている。Z軸テーブル13上には、砥石台14がサーボモータ(図示なし)によりX方向に移動可能に載置されている。砥石台14には、モータが内蔵され、このモータにより砥石車15が回転駆動されるようになっている。
【0019】
また、ベッド10上には、レストベース16がクランクシャフト1を挟んで砥石台14と反対側に設置されている。レストベース16上には、レスト装置20がサーボモータ(図示なし)によりZ方向及びX方向に移動可能に載置されている。このレスト装置20は、クランクシャフト1の剛性が低く研削抵抗により撓みを発生し易いため、ジャーナル2の研削に際し、撓みの発生を防止するものである。
【0020】
レスト装置20は、図3に示すように、ハウジング21、レストシュー23、25、27を備えている。レストシュー23、25は、ジャーナル2を砥石車15に押圧し、レストシュー27は、ジャーナル2を下方から支持している。そのため、レストシュー23、25はジャーナル2の外形を形成する働きをし、レストシュー27は主に軸心5の高さを一定に保つ働きをするものである。すなわち、このレスト装置20は、2点レスト装置のレストシューのうち、ジャーナル2を砥石車15に押圧して支持するレストシューを2個のレストシュー23、25に分割したものである。
【0021】
また、レストシュー23、25は、研削点Pと軸心5とを結ぶ線分L1を基準として測定した第1設置角度θ1及び、第1設置角度θ1より大きな第2設置角度θ2で設置されている。この第2設置角度θ2は、第1設置角度θ1の1.5倍の大きさの角度(第1設置角度θ1の2倍の角度から第1設置角度θ1の半分の角度を減じた角度)である。このレストシュー23、25は調整機構22、24により調整可能にされている。また、レストシュー27は、ジャーナル2の真下に設置され、支持軸26a回りに回動可能なレストアーム26により支持されている。なお、ジャーナル2の研削にあたっては、クーラントノズル(図示なし)からジャーナル2の表面にクーラントCを供給し、研削熱の発生を防止している。
【0022】
レストシュー23、25が調整機構22、24により調整されている様子を図4に示す。図4(A)はジャーナル2の径R1が大きい場合であり、図4(B)はジャーナル2の径R2が小さい場合である。図4(A)、(B)に示すように、調整機構22、24の調整ねじ22a、24aを調整することにより、ジャーナル2の径R1、R2にかかわらず設置角度θ1、θ2を一定に保つことができる。また、レストアーム26を支持軸26a回りに回動させることにより、レストシュー27は軸心5の高さを一定に保つことができる。
【0023】
以上の構成をした研削盤でジャーナル2の研削をする場合について説明する。まず、クランクシャフト1を主軸台11と心押台12との間に支持する。次に、砥石車15が研削するジャーナル2の位置にくるように、Z軸テーブル13をサーボモータにより割り出すとともに、レスト装置20を砥石車15と同じジャーナル2の位置にくるように割り出す。そして、レスト装置20を前進させ、レストシュー23、25をジャーナル2に押圧するとともに、レストアーム26を支持軸26a回りに回動させてレストシュー27をジャーナル2に押圧する。次に、主軸台11のサーボモータによりクランクシャフト1を軸心5回りに回転する。そして、砥石車15を回転し、クーラントノズルからジャーナル2の表面にクーラントCを供給しつつ、砥石台14をサーボモータにより前進させてジャーナル2を研削する。
【0024】
研削が開始され、図5に示すように、油穴3が研削点Pにくると、クーラントCが油穴3に流れ込みクーラントCの動圧が低下する。これにより、レストシュー23、25によりジャーナル2が砥石車15側に押され過ぎて研削点Pにおけるジャーナル2の研削量が増大し、凹部a1が形成される。
【0025】
ジャーナル2が矢印の向きに回転し、図6に示すように、レストシュー25の位置に凹部a1がきた場合、ジャーナル2がレストシュー23に押される。そのため、レストシュー25が凹部a1のへこみに入り込むことがなく、クーラントCの動圧によりジャーナル2がレストシュー23、25側に押され過ぎるのを防止することができる。これにより、研削点Pに凸部が形成されるのを抑制することができる。さらにジャーナル2が矢印の向きに回転し、レストシュー23の位置に凹部a1がきた場合、ジャーナル2がレストシュー25に押されるため、研削点Pに凸部が形成されるのを抑制することができる。
【0026】
これに対し、レストシュー23の位置に凹部a1がきた場合に、何らかの原因で、ジャーナル2がレストシュー23、25側に押され過ぎて研削点Pにおけるジャーナル2の研削量が減少し、凹部a1のへこみに応じた凸部b1が形成されたとする。そして、図7に示すように、レストシュー23によりジャーナル2の表面に凹部a1、凸部b1、凹部a2、凸部b2、凹部a3、凸部b3、凹部a4、凸部b4、凹部a5、凸部b5、凹部a6、凸部b6の順に凹凸が形成され、周期2・θ1のうねりが発生したと仮定する。
【0027】
このような場合であっても、図8に示すように、例えば、レストシュー23の位置に凹部a1がきた場合、ジャーナル2がレストシュー25に押されるため、研削点Pに形成された凸部b1が除去される。そして、凸部b1が除去されると、凸部b1が原因で形成された凹部a2が研削点Pにきた場合、ジャーナル2がレストシュー23に押され過ぎることがなく、凹部a2が徐々に除去されていく。このように、何らかの原因でジャーナル2の表面にうねりが発生したとしても、凸部b1、b2、b3、b4、b5、b6を除去することができ、その結果、凹部a1、凹部a2、凹部a3、凹部a4、凹部a5、凹部a6も除去される。
【0028】
実施形態1の研削盤のレスト装置においては、2個のレストシュー23、25は研削点Pと軸心5とを結ぶ線分L1を基準として測定した第1設置角度θ1及び、第1設置角度θ1より大きな第2設置角度θ2で設置され、第2設置角度θ2は第1設置角度θ1の整数倍の角度ではないため、一方のレストシュー23(25)の位置に凹部がきた場合、他方のレストシュー25(23)がジャーナル2を確実に押圧する。そのため、研削点Pに凸部ができ難くなり、ジャーナル2の表面に凹凸のうねりが発生し難い。また、ジャーナル2の表面に凹凸のうねりが発生したとしても、一方のレストシュー23(25)の位置に凹部がきた場合、研削点Pの凸部を除去することができる。したがって、この研削盤のレスト装置によれば、ジャーナル2の表面に凹凸のうねりが発生し難く、かつ発生したうねりを除去可能である。特に、第2設置角度θ2が第1設置角度θ1の整数倍の角度から第1設置角度θ1の半分の角度を減じた角度であるために、一方のレストシュー23(25)の影響により生じる凹凸のうねりの中間位置、すなわち凹凸のうねりの影響が一番少ない位置に他方のレストシュー25(23)を配置できるので、凹凸のうねりが最も発生し難く、かつ発生したうねりを確実に除去可能である。
【0029】
また、この研削盤のレスト装置においては、2個のレストシュー23、25が研削点Pと軸心5とを結ぶ線分L1より下方にあるため、ジャーナル2を研削盤に設置するに際し、レストシュー23、25を後方へ移動する必要がほとんどない。また、ジャーナル2の表面にクーラントCを供給するクーラントノズル等は研削点と軸心とを結ぶ線分より上方にあるため、レストシュー23、25の位置調整をするに際し、クーラントノズル等との干渉を防止することができる。
なお、この研削盤のレスト装置では、2個のレストシュー23、25を線分L1より下方に配置しているが、図9に示すように、2個のレストシュー23、25を線分L1に対して互いに反対側に配置することもできる。
【0030】
さらに、この研削盤のレスト装置においては、第1設置角度θ1及び第2設置角度θ2を調整可能な調整機構22、24を有しているため、異なる径のジャーナル2であっても第1設置角度θ1及び第2設置角度θ2を一定に保つことができる。
【0031】
また、この研削盤のレスト装置では、レスト装置20を砥石車15と同じジャーナル2の位置にくるように割り出しているが、複数のレスト装置20を所定のジャーナル2の位置に固定することもできる。
【0032】
次に、図10に実施形態2のレスト装置30を示す。このレスト装置30は、実施形態1と同様、図2に示す研削盤に用いられ、図1に示すクランクシャフト1のジャーナル2を研削するためのものである。このレスト装置30は、ハウジング31、レストシュー23、25、33、35を備えている。レストシュー23、25は、ジャーナル2を砥石車15に押圧し、レストシュー33、35は、ジャーナル2を上方及び下方から支持している。そのため、レストシュー23、25はジャーナル2の外形を形成する働きをし、レストシュー33、35は主に軸心5の高さを一定に保つ働きをするものである。すなわち、このレスト装置30は、3点レスト装置のレストシューのうち、ジャーナル2を砥石車15に押圧して支持するレストシューを2個のレストシュー23、25に分割したものである。
【0033】
レストシュー23、25の設置角度は、実施形態1と同様、調整機構22、24により調整可能にされている。また、レストシュー33、35は、ジャーナル2の上方及び下方に設置され、支持軸32a、34a回りに回動可能なレストアーム32、34により支持されている。なお、ジャーナル2の研削にあたっては、クーラントノズル(図示なし)からジャーナル2の表面にクーラントCを供給し、研削熱の発生を防止している。実施形態2の研削盤のレスト装置においても、実施形態1と同様の作用、効果を得ることができる。
【0034】
以上において、本発明の研削盤のレスト装置を実施形態1、2に即して説明したが、本発明はこれらに制限されるものではなく、本発明の技術的思想に反しない限り、適宜変更して適用できることはいうまでもない。例えば、本実施形態では、第2設置角度θ2を第1設置角度θ1の整数倍の角度から第1設置角度θ1の半分の角度を減じた角度(第1設置角度θ1の2倍の角度から第1設置角度θ1の半分の角度を減じた角度)としているが、これに限ったものではなく、第2設置角度θ2は第1設置角度θ1の整数倍ではない角度(例えば、素数度等)であればよい。また、第2設置角度θ2の定義としては、第2設置角度θ2から第1設置角度θ1を減じた角度が素数度であるとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施形態1、2のレスト装置に係り、クランクシャフトの正面図。
【図2】実施形態1、2のレスト装置に係り、研削盤の平面図。
【図3】実施形態1のレスト装置に係り、図2におけるIII−III矢視断面図。
【図4】実施形態1のレスト装置に係り、レストシューの調整を示す図。
【図5】実施形態1のレスト装置に係り、ジャーナルの研削点に凹部が形成される様子を示す図。
【図6】実施形態1のレスト装置に係り、レストシューに凹部が当接している様子を示す図。
【図7】実施形態1のレスト装置に係り、ジャーナルの表面に凹凸のうねりが発生した様子を示す図。
【図8】実施形態1のレスト装置に係り、ジャーナルの研削点に形成された凸部が除去される様子を示す図。
【図9】実施形態1のレスト装置に係り、レストシューの別の配置を示す図。
【図10】実施形態2のレスト装置に係り、図2におけるX−X矢視断面図。
【図11】従来のレスト装置に係り、ジャーナルの研削点に凹部が形成される様子を示す図。
【図12】従来のレスト装置に係り、ジャーナルの研削点に凸部が形成される様子を示す図。
【図13】従来のレスト装置に係り、ジャーナルの研削点に凹部が形成される様子を示す図。
【図14】従来のレスト装置に係り、ジャーナルの研削点に凸部が形成される様子を示す図。
【図15】従来のレスト装置に係り、ジャーナルの表面に凹凸のうねりが発生した様子を示す図。
【図16】従来のレスト装置に係り、レストシューとジャーナルの表面に発生したうねりとの関係を示す図。
【符号の説明】
【0036】
1…クランクシャフト、2…ジャーナル、5…軸心、15…砥石車、20、30…レスト装置、23、25、27、33、35…レストシュー、P…研削点、L1…線分、θ1…第1設置角度、θ2…第2設置角度、22、24…調整機構。
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランクシャフトを軸心周りに回転させ、ジャーナルを砥石車で研削する研削盤のレスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、クランクシャフトのジャーナルの研削盤では、図11に示すように、クランクシャフト91を軸心98回りに矢印の方向に回転させて、ジャーナル92を砥石車90で研削している。この際、クランクシャフト91は、剛性が低く研削抵抗により撓みを発生し易い。そのため、レスト装置を用いて撓みの発生を防止しつつ、ジャーナル92を砥石車90で研削している。図11は、ジャーナル92を支持する2個のレストシュー95、96を有する2点レスト装置の例である。ここで、ジャーナル92と砥石車90との当接点を研削点Pとすると、レストシュー95は、研削点Pと軸心98とを結ぶ線分L1を基準として測定した設置角度θで設置される。このレストシュー95は、ジャーナル92を砥石車90に押圧して支持するため、ジャーナル92の外形を形成する働きをするものである。それに対し、レストシュー96は、ジャーナル92を下方から支持し、主に軸心98の高さを一定に保つ働きをするものである。また、ジャーナル92には、クランクピン(図示なし)に潤滑油を供給するための油穴93が貫設されている。
【0003】
ジャーナル92の研削にあたっては、クーラントノズル(図示なし)からジャーナル92の表面にクーラントCを供給し、研削熱の発生を防止している。図11に示すように、油穴93が研削点Pにくると、クーラントCが油穴93に流れ込み、クーラントCの動圧が低下する。これにより、レストシュー95によりジャーナル92が砥石車90側に押され過ぎて研削点Pにおけるジャーナル92の研削量が増大し、凹部a1が形成される。ジャーナル92が矢印の向きに回転し、図12に示すように、レストシュー95の位置に凹部a1がくると、レストシュー95が凹部a1のへこみに入り込む。これにより、クーラントCの動圧によりジャーナル92がレストシュー95側に押され過ぎて研削点Pにおけるジャーナル92の研削量が減少し、凹部a1のへこみに応じた凸部b1が形成される。
【0004】
ジャーナル92が矢印の向きに回転し、図13に示すように、レストシュー95の位置に凸部b1がくると、ジャーナル92が砥石車90側に押され過ぎて研削点Pにおけるジャーナル92の研削量が増大し、凹部a2が形成される。さらに、ジャーナル92が矢印の向きに回転し、図14に示すように、レストシュー95の位置に凹部a2がくると、ジャーナル92がレストシュー95側に押され過ぎて研削点Pにおけるジャーナル92の研削量が減少し、凸部b2が形成される。
【0005】
このようにして、図15に示すように、ジャーナル92の表面に凹部a1、凸部b1、凹部a2、凸部b2、凹部a3、凸部b3、凹部a4、凸部b4の順に凹凸が形成され、周期2θのうねりが発生することになる。
【0006】
これに対して、特許文献1記載の研削盤のレスト装置が提案されている。この研削盤のレスト装置では、2点レスト装置のレストシューのうちジャーナルを砥石車に押圧して支持するレストシューを2個に分割している。そして、2個のレストシューでジャーナルを砥石車に押圧して支持している。この研削盤のレスト装置によれば、一方のレストシューの位置に油穴がきても、他方のレストシューがジャーナルを押圧しているため、ジャーナルがレストシュー側に押され難くなり、研削点の位置に凸部が形成され難くなると考えられる。
【特許文献1】特開平9−277166号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1記載の研削盤のレスト装置では、2個のレストシューの位置関係について言及されていない。そのため、この研削盤のレスト装置では、一旦、凹凸が形成されて、うねりが発生すると、そのうねりを除去することができなくなるおそれがある。すなわち、例えば、図16に示すように、ジャーナル92を砥石車90に押圧して支持する2個のレストシュー95、97の設置角度θが等しく、線分L1に対して互いに反対側にある場合、一方のレストシュー95の位置に凹部がくると、他方のレストシュー97の位置にも凹部がくる。そのため、ジャーナル92がレストシュー95、97側に押され、研削点Pの位置の凸部が除去され難くなる。
【0008】
本発明は係る従来の問題点に鑑みてなされたものであり、ジャーナルの表面に凹凸のうねりが発生し難く、かつ発生したうねりを除去可能な研削盤のレスト装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る研削盤のレスト装置の特徴は、クランクシャフトを軸心周りに回転させ、ジャーナルを砥石車により研削点で研削する研削盤のレスト装置において、前記ジャーナルを前記砥石車に押圧して支持する2個のレストシューを有し、2個の該レストシューは、前記研削点と前記軸心とを結ぶ線分を基準として測定した第1設置角度及び、該第1設置角度より大きな第2設置角度で設置され、該第2設置角度は、該第1設置角度の整数倍の角度ではないことである。
【0010】
請求項2に係る研削盤のレスト装置の特徴は、請求項1において、前記第2設置角度は、前記第1設置角度の整数倍の角度から前記第1設置角度の半分の角度を減じた角度であることである。
【0011】
請求項3に係る研削盤のレスト装置の特徴は、請求項1又は2において、2個の前記レストシューは、前記研削点と前記軸心とを結ぶ線分より下方にあることである。
【0012】
請求項4に係る研削盤のレスト装置の特徴は、請求項1乃至3のいずれか1項において、前記第1設置角度及び前記第2設置角度を調整可能な調整機構を有していることである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る研削盤のレスト装置においては、2個のレストシューは研削点と軸心とを結ぶ線分を基準として測定した第1設置角度及び、第1設置角度より大きな第2設置角度で設置され、第2設置角度は第1設置角度の整数倍の角度ではないため、一方のレストシューの位置に凹部がきた場合、他方のレストシューがジャーナルを確実に押圧する。そのため、研削点に凸部ができ難くなり、ジャーナルの表面に凹凸のうねりが発生し難い。また、ジャーナルの表面に凹凸のうねりが発生したとしても、一方のレストシューの位置に凹部がきた場合、研削点の凸部を除去することができる。したがって、この研削盤のレスト装置によれば、ジャーナルの表面に凹凸のうねりが発生し難く、かつ発生したうねりを除去可能である。
【0014】
請求項2に係る研削盤のレスト装置においては、第2設置角度が第1設置角度の整数倍の角度から第1設置角度の半分の角度を減じた角度であるために、一方のレストシューの影響により生じる凹凸のうねりの中間位置、すなわち凹凸のうねりの影響が一番少ない位置に他方のレストシューを配置できるので、凹凸のうねりが最も発生し難く、かつ発生したうねりを確実に除去可能である。
【0015】
請求項3に係る研削盤のレスト装置においては、2個のレストシューが研削点と軸心とを結ぶ線分より下方にあるため、ジャーナルを研削盤に設置するに際し、レストシューを後方へ移動する必要がほとんどない。また、クーラントノズル等は研削点と軸心とを結ぶ線分より上方にあるため、レストシューの位置調整をするに際し、クーラントノズル等との干渉を防止することができる。
【0016】
請求項4に係る研削盤のレスト装置においては、第1設置角度及び第2設置角度を調整可能な調整機構を有しているため、異なる径のジャーナルであっても第1設置角度及び第2設置角度を一定に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係る研削盤のレスト装置を具体化した実施形態1、2を図面に基づいて以下に説明する。図1は、実施形態1のレスト装置を用いた研削盤で研削されるクランクシャフト1の正面図である。クランクシャフト1は、軸心5に位置しベアリング(図示なし)に支持される複数のジャーナル2と、コネクティングロッド(図示なし)が装着されてピストン(図示なし)の線分運動を回転運動に変換する複数のクランクピン4と、クランクシャフト1の回転時にクランクシャフト1自体の振動を最小にするバランスウエイト6を備えている。クランクシャフト1は高速回転しており、長時間運転の焼付けの防止のため、潤滑油が循環するようにジャーナル2とクランクピン4には油穴3が形成されている。この油穴3は、ジャーナル2の径方向に貫設されている。
【0018】
図2は、実施形態1のレスト装置が用いられる研削盤の平面図である。研削盤のベッド10上には、主軸台11及び心押台12が設置され、その間にクランクシャフト1が軸心5回りに回転可能に支持されている。また、ベッド10上には、Z軸テーブル13がサーボモータ(図示なし)によりZ方向に移動可能に設けられている。Z軸テーブル13上には、砥石台14がサーボモータ(図示なし)によりX方向に移動可能に載置されている。砥石台14には、モータが内蔵され、このモータにより砥石車15が回転駆動されるようになっている。
【0019】
また、ベッド10上には、レストベース16がクランクシャフト1を挟んで砥石台14と反対側に設置されている。レストベース16上には、レスト装置20がサーボモータ(図示なし)によりZ方向及びX方向に移動可能に載置されている。このレスト装置20は、クランクシャフト1の剛性が低く研削抵抗により撓みを発生し易いため、ジャーナル2の研削に際し、撓みの発生を防止するものである。
【0020】
レスト装置20は、図3に示すように、ハウジング21、レストシュー23、25、27を備えている。レストシュー23、25は、ジャーナル2を砥石車15に押圧し、レストシュー27は、ジャーナル2を下方から支持している。そのため、レストシュー23、25はジャーナル2の外形を形成する働きをし、レストシュー27は主に軸心5の高さを一定に保つ働きをするものである。すなわち、このレスト装置20は、2点レスト装置のレストシューのうち、ジャーナル2を砥石車15に押圧して支持するレストシューを2個のレストシュー23、25に分割したものである。
【0021】
また、レストシュー23、25は、研削点Pと軸心5とを結ぶ線分L1を基準として測定した第1設置角度θ1及び、第1設置角度θ1より大きな第2設置角度θ2で設置されている。この第2設置角度θ2は、第1設置角度θ1の1.5倍の大きさの角度(第1設置角度θ1の2倍の角度から第1設置角度θ1の半分の角度を減じた角度)である。このレストシュー23、25は調整機構22、24により調整可能にされている。また、レストシュー27は、ジャーナル2の真下に設置され、支持軸26a回りに回動可能なレストアーム26により支持されている。なお、ジャーナル2の研削にあたっては、クーラントノズル(図示なし)からジャーナル2の表面にクーラントCを供給し、研削熱の発生を防止している。
【0022】
レストシュー23、25が調整機構22、24により調整されている様子を図4に示す。図4(A)はジャーナル2の径R1が大きい場合であり、図4(B)はジャーナル2の径R2が小さい場合である。図4(A)、(B)に示すように、調整機構22、24の調整ねじ22a、24aを調整することにより、ジャーナル2の径R1、R2にかかわらず設置角度θ1、θ2を一定に保つことができる。また、レストアーム26を支持軸26a回りに回動させることにより、レストシュー27は軸心5の高さを一定に保つことができる。
【0023】
以上の構成をした研削盤でジャーナル2の研削をする場合について説明する。まず、クランクシャフト1を主軸台11と心押台12との間に支持する。次に、砥石車15が研削するジャーナル2の位置にくるように、Z軸テーブル13をサーボモータにより割り出すとともに、レスト装置20を砥石車15と同じジャーナル2の位置にくるように割り出す。そして、レスト装置20を前進させ、レストシュー23、25をジャーナル2に押圧するとともに、レストアーム26を支持軸26a回りに回動させてレストシュー27をジャーナル2に押圧する。次に、主軸台11のサーボモータによりクランクシャフト1を軸心5回りに回転する。そして、砥石車15を回転し、クーラントノズルからジャーナル2の表面にクーラントCを供給しつつ、砥石台14をサーボモータにより前進させてジャーナル2を研削する。
【0024】
研削が開始され、図5に示すように、油穴3が研削点Pにくると、クーラントCが油穴3に流れ込みクーラントCの動圧が低下する。これにより、レストシュー23、25によりジャーナル2が砥石車15側に押され過ぎて研削点Pにおけるジャーナル2の研削量が増大し、凹部a1が形成される。
【0025】
ジャーナル2が矢印の向きに回転し、図6に示すように、レストシュー25の位置に凹部a1がきた場合、ジャーナル2がレストシュー23に押される。そのため、レストシュー25が凹部a1のへこみに入り込むことがなく、クーラントCの動圧によりジャーナル2がレストシュー23、25側に押され過ぎるのを防止することができる。これにより、研削点Pに凸部が形成されるのを抑制することができる。さらにジャーナル2が矢印の向きに回転し、レストシュー23の位置に凹部a1がきた場合、ジャーナル2がレストシュー25に押されるため、研削点Pに凸部が形成されるのを抑制することができる。
【0026】
これに対し、レストシュー23の位置に凹部a1がきた場合に、何らかの原因で、ジャーナル2がレストシュー23、25側に押され過ぎて研削点Pにおけるジャーナル2の研削量が減少し、凹部a1のへこみに応じた凸部b1が形成されたとする。そして、図7に示すように、レストシュー23によりジャーナル2の表面に凹部a1、凸部b1、凹部a2、凸部b2、凹部a3、凸部b3、凹部a4、凸部b4、凹部a5、凸部b5、凹部a6、凸部b6の順に凹凸が形成され、周期2・θ1のうねりが発生したと仮定する。
【0027】
このような場合であっても、図8に示すように、例えば、レストシュー23の位置に凹部a1がきた場合、ジャーナル2がレストシュー25に押されるため、研削点Pに形成された凸部b1が除去される。そして、凸部b1が除去されると、凸部b1が原因で形成された凹部a2が研削点Pにきた場合、ジャーナル2がレストシュー23に押され過ぎることがなく、凹部a2が徐々に除去されていく。このように、何らかの原因でジャーナル2の表面にうねりが発生したとしても、凸部b1、b2、b3、b4、b5、b6を除去することができ、その結果、凹部a1、凹部a2、凹部a3、凹部a4、凹部a5、凹部a6も除去される。
【0028】
実施形態1の研削盤のレスト装置においては、2個のレストシュー23、25は研削点Pと軸心5とを結ぶ線分L1を基準として測定した第1設置角度θ1及び、第1設置角度θ1より大きな第2設置角度θ2で設置され、第2設置角度θ2は第1設置角度θ1の整数倍の角度ではないため、一方のレストシュー23(25)の位置に凹部がきた場合、他方のレストシュー25(23)がジャーナル2を確実に押圧する。そのため、研削点Pに凸部ができ難くなり、ジャーナル2の表面に凹凸のうねりが発生し難い。また、ジャーナル2の表面に凹凸のうねりが発生したとしても、一方のレストシュー23(25)の位置に凹部がきた場合、研削点Pの凸部を除去することができる。したがって、この研削盤のレスト装置によれば、ジャーナル2の表面に凹凸のうねりが発生し難く、かつ発生したうねりを除去可能である。特に、第2設置角度θ2が第1設置角度θ1の整数倍の角度から第1設置角度θ1の半分の角度を減じた角度であるために、一方のレストシュー23(25)の影響により生じる凹凸のうねりの中間位置、すなわち凹凸のうねりの影響が一番少ない位置に他方のレストシュー25(23)を配置できるので、凹凸のうねりが最も発生し難く、かつ発生したうねりを確実に除去可能である。
【0029】
また、この研削盤のレスト装置においては、2個のレストシュー23、25が研削点Pと軸心5とを結ぶ線分L1より下方にあるため、ジャーナル2を研削盤に設置するに際し、レストシュー23、25を後方へ移動する必要がほとんどない。また、ジャーナル2の表面にクーラントCを供給するクーラントノズル等は研削点と軸心とを結ぶ線分より上方にあるため、レストシュー23、25の位置調整をするに際し、クーラントノズル等との干渉を防止することができる。
なお、この研削盤のレスト装置では、2個のレストシュー23、25を線分L1より下方に配置しているが、図9に示すように、2個のレストシュー23、25を線分L1に対して互いに反対側に配置することもできる。
【0030】
さらに、この研削盤のレスト装置においては、第1設置角度θ1及び第2設置角度θ2を調整可能な調整機構22、24を有しているため、異なる径のジャーナル2であっても第1設置角度θ1及び第2設置角度θ2を一定に保つことができる。
【0031】
また、この研削盤のレスト装置では、レスト装置20を砥石車15と同じジャーナル2の位置にくるように割り出しているが、複数のレスト装置20を所定のジャーナル2の位置に固定することもできる。
【0032】
次に、図10に実施形態2のレスト装置30を示す。このレスト装置30は、実施形態1と同様、図2に示す研削盤に用いられ、図1に示すクランクシャフト1のジャーナル2を研削するためのものである。このレスト装置30は、ハウジング31、レストシュー23、25、33、35を備えている。レストシュー23、25は、ジャーナル2を砥石車15に押圧し、レストシュー33、35は、ジャーナル2を上方及び下方から支持している。そのため、レストシュー23、25はジャーナル2の外形を形成する働きをし、レストシュー33、35は主に軸心5の高さを一定に保つ働きをするものである。すなわち、このレスト装置30は、3点レスト装置のレストシューのうち、ジャーナル2を砥石車15に押圧して支持するレストシューを2個のレストシュー23、25に分割したものである。
【0033】
レストシュー23、25の設置角度は、実施形態1と同様、調整機構22、24により調整可能にされている。また、レストシュー33、35は、ジャーナル2の上方及び下方に設置され、支持軸32a、34a回りに回動可能なレストアーム32、34により支持されている。なお、ジャーナル2の研削にあたっては、クーラントノズル(図示なし)からジャーナル2の表面にクーラントCを供給し、研削熱の発生を防止している。実施形態2の研削盤のレスト装置においても、実施形態1と同様の作用、効果を得ることができる。
【0034】
以上において、本発明の研削盤のレスト装置を実施形態1、2に即して説明したが、本発明はこれらに制限されるものではなく、本発明の技術的思想に反しない限り、適宜変更して適用できることはいうまでもない。例えば、本実施形態では、第2設置角度θ2を第1設置角度θ1の整数倍の角度から第1設置角度θ1の半分の角度を減じた角度(第1設置角度θ1の2倍の角度から第1設置角度θ1の半分の角度を減じた角度)としているが、これに限ったものではなく、第2設置角度θ2は第1設置角度θ1の整数倍ではない角度(例えば、素数度等)であればよい。また、第2設置角度θ2の定義としては、第2設置角度θ2から第1設置角度θ1を減じた角度が素数度であるとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施形態1、2のレスト装置に係り、クランクシャフトの正面図。
【図2】実施形態1、2のレスト装置に係り、研削盤の平面図。
【図3】実施形態1のレスト装置に係り、図2におけるIII−III矢視断面図。
【図4】実施形態1のレスト装置に係り、レストシューの調整を示す図。
【図5】実施形態1のレスト装置に係り、ジャーナルの研削点に凹部が形成される様子を示す図。
【図6】実施形態1のレスト装置に係り、レストシューに凹部が当接している様子を示す図。
【図7】実施形態1のレスト装置に係り、ジャーナルの表面に凹凸のうねりが発生した様子を示す図。
【図8】実施形態1のレスト装置に係り、ジャーナルの研削点に形成された凸部が除去される様子を示す図。
【図9】実施形態1のレスト装置に係り、レストシューの別の配置を示す図。
【図10】実施形態2のレスト装置に係り、図2におけるX−X矢視断面図。
【図11】従来のレスト装置に係り、ジャーナルの研削点に凹部が形成される様子を示す図。
【図12】従来のレスト装置に係り、ジャーナルの研削点に凸部が形成される様子を示す図。
【図13】従来のレスト装置に係り、ジャーナルの研削点に凹部が形成される様子を示す図。
【図14】従来のレスト装置に係り、ジャーナルの研削点に凸部が形成される様子を示す図。
【図15】従来のレスト装置に係り、ジャーナルの表面に凹凸のうねりが発生した様子を示す図。
【図16】従来のレスト装置に係り、レストシューとジャーナルの表面に発生したうねりとの関係を示す図。
【符号の説明】
【0036】
1…クランクシャフト、2…ジャーナル、5…軸心、15…砥石車、20、30…レスト装置、23、25、27、33、35…レストシュー、P…研削点、L1…線分、θ1…第1設置角度、θ2…第2設置角度、22、24…調整機構。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクシャフトを軸心周りに回転させ、ジャーナルを砥石車により研削点で研削する研削盤のレスト装置において、
前記ジャーナルを前記砥石車に押圧して支持する2個のレストシューを有し、
2個の該レストシューは、前記研削点と前記軸心とを結ぶ線分を基準として測定した第1設置角度及び、該第1設置角度より大きな第2設置角度で設置され、
該第2設置角度は、該第1設置角度の整数倍の角度ではないことを特徴とする研削盤のレスト装置。
【請求項2】
請求項1において、前記第2設置角度は、前記第1設置角度の整数倍の角度から前記第1設置角度の半分の角度を減じた角度であることを特徴とする研削盤のレスト装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、2個の前記レストシューは、前記研削点と前記軸心とを結ぶ線分より下方にあることを特徴とする研削盤のレスト装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、前記第1設置角度及び前記第2設置角度を調整可能な調整機構を有していることを特徴とする研削盤のレスト装置。
【請求項1】
クランクシャフトを軸心周りに回転させ、ジャーナルを砥石車により研削点で研削する研削盤のレスト装置において、
前記ジャーナルを前記砥石車に押圧して支持する2個のレストシューを有し、
2個の該レストシューは、前記研削点と前記軸心とを結ぶ線分を基準として測定した第1設置角度及び、該第1設置角度より大きな第2設置角度で設置され、
該第2設置角度は、該第1設置角度の整数倍の角度ではないことを特徴とする研削盤のレスト装置。
【請求項2】
請求項1において、前記第2設置角度は、前記第1設置角度の整数倍の角度から前記第1設置角度の半分の角度を減じた角度であることを特徴とする研削盤のレスト装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、2個の前記レストシューは、前記研削点と前記軸心とを結ぶ線分より下方にあることを特徴とする研削盤のレスト装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、前記第1設置角度及び前記第2設置角度を調整可能な調整機構を有していることを特徴とする研削盤のレスト装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−56519(P2009−56519A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−223516(P2007−223516)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
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