説明

研削盤

【課題】ツルーイング回数を減少することにより、加工コストの低減と加工時間の短縮を可能にした研削盤を提供する。
【解決手段】複数の砥石を備え、工作物に対して粗研削加工と仕上げ研削加工とを行い得るようにされた研削盤において、砥石のうち仕上げ研削加工に用いる仕上げ研削加工用砥石の研削面の状態が限界状態であることを判断する閾値を記憶する閾値記憶部と、仕上げ研削加工用砥石の研削面の状態を検出する検出手段とを備えている。制御手段は、検出手段の検出結果が閾値に到達したときに、その時まで仕上げ研削加工に使用していた砥石の研削面にツルーイングを行うことなく、以後、当該砥石を粗研削加工用砥石として使用し、その時まで粗研削加工に使用していた砥石の研削面にツルーイングを行った後、当該砥石を仕上げ研削加工用砥石として使用するように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作物に対して粗研削加工と仕上げ研削加工とを行い得るようにされた研削盤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、研削盤による研削の加工段階は、大きく分けて二つ存在し、前段階で行う粗研削加工と、後段階で行う仕上げ研削(精研削)加工とに分けることができる。この場合、粗研削加工は粗研削加工用砥石を使用し、仕上げ研削加工は仕上げ研削加工用砥石を使用して行われる。そして、それぞれの砥石の研削面が偏磨耗や面荒れ、摩滅等により工作物を所望精度に研削加工できなくなると、研削面をツルーイングするようにしている。
【0003】
ところで、一つの工作物に対して粗研削加工と仕上げ研削加工の両方を行い得るようにした研削盤として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。この研削盤は、粗研削加工用と仕上げ研削加工用の2種類の砥石を備え、旋回機構により、粗研削加工時と仕上げ研削加工時とで使用する砥石を切り替えるようにしている。
【特許文献1】特開昭58−28459号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の研削盤において採用される仕上げ研削用砥石は、工作物の目標仕上げ精度を確保するために、所定時間使用後あるいは所定回数使用後において、定期的にツルーイングを行うようにしているが、ツルーイングによって砥石から削り取られる砥粒は多い。削り取られた砥粒の価格は製品の加工費の一部となるので、ツルーイングによって砥石が削り取られるツルーイング量が多いと総合的な加工コストが高くなる。特に、CBN砥石やダイヤモンド砥石は極めて高価であるため、これらの砥石が採用されている場合には、ツルーイングによって削り取られる砥粒が多くなると加工コストの上昇が顕著となる。また、ツルーイング時間は、加工サイクルタイムに上積みされることとなるので、ツルーイング回数が多くなると総合的な加工時間が長くなり、加工コストが上昇する。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、加工コストの低減化と加工時間の短縮化を図り得るようにした研削盤を提供することを解決すべき課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の構成上の特徴は、複数の砥石を備え、該複数の砥石の何れか一の砥石によって工作物を粗研削加工し、何れか他の砥石によって工作物を仕上げ研削加工するようにした研削盤において、前記砥石のうち仕上げ研削加工に用いる仕上げ研削加工用砥石の研削面の状態が限界状態であることを判断する閾値を記憶する閾値記憶部と、前記仕上げ研削加工用砥石の研削面の状態を検出する検出手段と、前記検出手段の検出結果が前記閾値に到達したときに、前記仕上げ研削加工に使用していた砥石の研削面にツルーイングを行うことなく、以後、当該砥石を粗研削加工用砥石として使用する制御手段と、を備えることである。
【0007】
なお、本発明において、仕上げ研削加工用砥石の研削面の状態を判断する閾値は、当該砥石の研削面の状態が偏磨耗や面荒れ、砥粒の摩耗などにより悪化して、仕上げ研削加工用砥石としての使用が不適切となる状態を基準に設定される。
【0008】
請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、前記制御手段は、前記検出手段の検出結果が前記閾値に到達したときに、前記粗研削加工に使用していた砥石の研削面にツルーイングを行った後、当該砥石を仕上げ研削加工用砥石として使用することである。
【0009】
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項1または請求項2において、前記閾値は、前記仕上げ研削加工に用いている砥石の研削面の状態が前記限界状態になるまでに研削加工可能な工作物の加工本数であり、前記検出手段は前記工作物の加工本数を計数するカウンタであることである。
【0010】
請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項1または請求項2において、前記閾値は、前記仕上げ研削加工に用いている砥石の研削面の状態が前記限界状態になったときの前記砥石の振れ量であり、前記検出手段は、前記砥石の変位量を測定する変位センサであることである。
【0011】
請求項5に係る発明の構成上の特徴は、請求項1または請求項2において、前記閾値は、前記仕上げ研削加工に用いている砥石の研削面の状態が前記限界状態になるまでに研削加工可能な前記砥石の累積加工時間であり、前記検出手段は、前記砥石の累積加工時間を計測する計時装置であることである。
【0012】
請求項6に係る発明の構成上の特徴は、請求項1または請求項2において、前記閾値は、前記仕上げ研削加工に用いている砥石の研削面の状態が前記限界状態になったときに当該砥石で前記工作物を研削加工するときに発生する研削抵抗であり、前記検出手段は、前記研削抵抗を測定する計測器であることである。
【0013】
請求項7に係る発明の構成上の特徴は、請求項1ないし請求項6の何れか1項において、前記砥石は、CBN砥石またはダイヤモンド砥石であることである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、砥石のうち仕上げ研削加工に用いる仕上げ研削加工用砥石の研削面の状態が限界状態であることを判断する閾値を閾値記憶部に記憶し、仕上げ研削加工用砥石の研削面の状態を検出手段で検出し、検出手段の検出結果が閾値に到達したときに、仕上げ研削加工に使用していた砥石の研削面にツルーイングを行うことなく、以後、当該砥石を粗研削加工用砥石として使用するようにされているので、仕上げ研削加工用砥石から粗研削加工用砥石に切り替えられる際に、その砥石に対するツルーイングを省略することができる。そのため、ツルーイング回数を低減することができ、ツルーイングを行う際に削り取られる砥粒の量を低減することができるので、総合的な加工コストを低減することができる。また、ツルーイング回数の低減に伴ってツルーイング時間を短縮することができるので、総合的な加工時間を短縮することができる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、測定手段の測定結果が閾値に到達したときに、粗研削加工に使用していた砥石の研削面にツルーイングを行った後、当該砥石を仕上げ研削加工用砥石として使用するので、粗研削加工用と仕上げ研削加工用の2種類の砥石が常に存在する状態を確保することができる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、仕上げ研削加工に用いている砥石の研削面の状態が限界状態になるまでに研削加工可能な工作物の加工本数を閾値とするので、カウンタによって工作物の加工本数を計測することにより研削面の状態が限界状態になったことを容易に検出することができる。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、仕上げ研削加工に用いている砥石の研削面の状態が限界状態になったときの砥石の振れ量を閾値とするので、変位センサによって砥石の振れ量を測定することにより研削面の状態が限界状態になったことを容易に検出することができる。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、仕上げ研削加工に用いている砥石の研削面の状態が限界状態になるまでに研削加工可能な砥石の累積加工時間を閾値とするので、計時装置によって砥石の累積加工時間を計測することにより研削面の状態が限界状態になったことを容易に検出することができる。
【0019】
請求項6に係る発明によれば、仕上げ研削加工に用いている砥石の研削面の状態が限界状態になったときに当該砥石で工作物を研削加工中に発生する研削抵抗を閾値とするので、計測器によって研削抵抗を計測することにより研削面の状態が限界状態になったことを容易に検出することができる。
【0020】
請求項7に係る発明によれば、極めて高価なCBN砥石またはダイヤモンド砥石のツルーイングによって削り取られる砥粒を低減することができるので、加工コストの低減化効果をより有利に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の第1の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、砥石旋回装置20を備えた研削盤10の全体を示すもので、当該研削盤10のベッド11上には、工作物テーブル12が水平なZ軸方向に移動可能に案内支持され、Z軸サーボモータ75により、Z軸方向に移動されるようになっている。工作物テーブル12上には主軸台13と心押台14とが対向して設置され、主軸台13および心押台14には工作物Wの両端を支持するセンタ15、16が設けられている。両センタ15、16にて支持された工作物Wは、主軸台13に設置された主軸駆動モータ17により図略の駆動金具を介して工作物テーブル12の移動方向(Z軸方向)と平行な軸線の回りに回転駆動されるようになっている。
【0022】
また、ベッド11上には、砥石テーブル18が工作物テーブル12の移動方向と直交する水平なX軸方向に移動可能に案内支持され、X軸サーボモータ71によりX軸方向に進退移動されるようになっている。砥石テーブル18上には、砥石旋回装置20および砥石台40等が設置されている。
【0023】
砥石旋回装置20は、図2に示すように、砥石テーブル18上に固定された支持台21と、この支持台21に旋回軸22を中心にしてB軸(図1参照)の回りに水平面内で旋回可能に支持された旋回台23を有している。支持台21には、大径の円筒部21aが形成され、この大径円筒部21aの中心部に旋回軸22が鉛直軸線方向に立設されている。旋回軸22には、旋回台23に固定された小径円筒部21bが嵌装されている。
【0024】
支持台21の大径円筒部21aには、クロスローラベアリング51の外輪が旋回軸22と同心的に固定され、このクロスローラベアリング51の内輪に、旋回台23に連結された中間円筒部23aが連結され、旋回台23はクロスローラベアリング51を介して旋回軸22を中心にして旋回可能に支持台21に支持されている。支持台21の大径円筒部21aと旋回台23の中間円筒部23aとの間に形成された環状空間部には、ダイレクトドライブモータ52が配設され、このダイレクトドライブモータ52によって旋回台23が旋回駆動されるようになっている。
【0025】
ダイレクトドライブモータ52は、旋回台23の中間円筒部23aの外周に固着されたロータ53と、支持台21の大径円筒部21aの内周に固定されたステータ54とによって構成されている。ロータ53の外周には、平板状の永久磁石が複数接着され、これら永久磁石に対向してステータ54の内周には複数のコイルが巻回され、コイルへの通電によって発生する磁束を永久磁石に作用させることにより、ロータ53が回転され、旋回台23が旋回される。
【0026】
ダイレクトドライブモータ52のロータ53の回転によって旋回される旋回台23の旋回角度は、支持台21に設置されたエンコーダ55によって検出される。旋回台23はエンコーダ55の検出信号に基づいてダイレクトドライブモータ52により指令角度位置に割出し回転され、ブレーキ手段56によって指令角度位置に固定されるようになっている。
【0027】
ブレーキ手段56は、旋回台23に固定された中間円筒部23aと小径円筒部21bとの間に形成された環状空間部に配設され、支持台21側に形成されたブレーキ用シリンダ57と、このブレーキ用シリンダ57に上下方向に摺動可能に嵌装されたピストン58と、中間円筒部23aに固定された摩擦板59とによって構成されている。そして、ピストン58と大径円筒部21aの底面に固定されたフランジ部との間で、摩擦板59を挟持することにより、旋回台23を所定の角度位置に固定できるようになっている。
【0028】
砥石台40の前側部(工作物テーブル12側)には、両端部が砥石台40の左右両側から水平方向に突出した砥石軸41が回転自在に支持されており、砥石軸41両端の突出部には、第1砥石42および第2砥石43がそれぞれ取り付けられている。これら第1および第2砥石42、43は、CBN砥石が採用されている。第1および第2砥石42、43は、それぞれの研削面42a、43aの状態に応じて仕上げ研削加工と粗研削加工に兼用されるようになっており、一方の砥石が仕上げ研削加工用として使用されるときには、他方の砥石は粗研削加工用として使用される。
【0029】
なお、砥石軸41は、砥石台40の内部に設けられたビルトインモータ45により回転駆動されるようになっており、このビルトインモータ45を駆動させることによって、砥石軸41に取り付けられた第1および第2砥石42、43を回転駆動させるようになっている。
【0030】
図1に示すように、工作物テーブル12に設置された主軸台13には、第1および第2砥石42、43をツルーイングするためのツルーイング工具67を備えたツルーイング装置68が配設されている。ツルーイング装置68は、砥石軸41をZ軸と平行に位置決めした状態で、砥石テーブル18のX軸方向の切込み前進と、工作物テーブル12のZ軸方向のトラバースによって、第1および第2砥石42、43の各研削面42a、43aをツルーイングするようになっている。
【0031】
第1および第2砥石42、43に対するツルーイングは、第1および第2砥石42、43のうち仕上げ研削加工に用いる仕上げ研削加工用砥石の研削面の状態を検出する検出手段の検出結果が、当該仕上げ研削加工用砥石の研削面の状態が限界状態になったことを判断する閾値になると行われる。仕上げ研削加工用砥石の研削面の状態が限界状態になったことを判断する閾値は、本実施の形態では工作物Wの加工本数に基づいて設定されている。即ち、工作物Wの加工本数が増加するのに伴って、仕上げ研削加工用の砥石に偏磨耗や面荒れ、摩滅等が発生し、仕上げ研削加工用砥石としての使用が不適切となる判断基準が、工作物Wの加工本数に基づいている。この閾値を記憶する閾値記憶部91は、後述の数値制御装置60のメモリ62内に設けられている。また、検出手段としては、工作物Wの加工本数を計数するカウンタ92が採用されており、このカウンタ92は、後述の数値制御装置60のメモリ62内に設けられている。
【0032】
本実施の形態の場合、カウンタ92の計数結果が閾値に到達したときに、その時まで仕上げ研削加工に使用していた砥石の研削面にツルーイングを行うことなく、以後、当該砥石を粗研削加工用砥石として使用し、また、その時まで粗研削加工に使用していた砥石の研削面にツルーイング装置68によるツルーイングを行った後、当該砥石を仕上げ研削加工用砥石として使用するように制御する制御プログラム93(制御手段)がメモリ62に記憶されている。即ち、第1および第2砥石42、43に対するツルーイング装置68によるツルーイングは、粗研削加工に使用していた砥石に対してのみ行われ、仕上げ研削加工に使用していた砥石に対しては行われない。
【0033】
研削盤10を制御する数値制御装置60は、図3に示すように、中央処理装置61と、種々の制御値およびプログラムを記憶するメモリ62と、インターフェイス63、64とによって主に構成されている。メモリ62には、研削加工プログラム、ツルーイングプログラム、制御プログラム93等の研削加工サイクルおよびツルーイングサイクルを実行するのに必要な種々のデータが記憶されている。このメモリ62には、仕上げ研削加工用砥石の研削面の状態を判断する閾値を記憶する閾値記憶部91が設けられている。数値制御装置60には、入力装置65を介して各種のデータが入力されるようになっており、入力装置65は、データの入力を行うためのキーボード、データの表示を行う表示装置を備えている。
【0034】
数値制御装置60は、X軸モータ駆動ユニット70を介して砥石テーブル18をX軸方向へ移動させるX軸サーボモータ71に駆動信号を与えるようになっており、X軸サーボモータ71に取り付けられたエンコーダ72がX軸サーボモータ71の回転位置、即ち、砥石テーブル18のX軸方向位置をX軸モータ駆動ユニット70および数値制御装置60へ送出するように構成されている。
【0035】
また、数値制御装置60は、Z軸モータ駆動ユニット74を介して工作物テーブル12をZ軸方向へ移動させるZ軸サーボモータ75に駆動信号を与えるようになっており、Z軸サーボモータ75に取り付けられたエンコーダ76がZ軸サーボモータ75の回転位置、即ち、工作物テーブル12のZ軸方向位置をZ軸モータ駆動ユニット74および数値制御装置60へ送出するように構成されている。
【0036】
さらに、数値制御装置60は、B軸モータ駆動ユニット78を介して旋回台23をB軸の回りに旋回させるダイレクトドライブモータ52に駆動信号を与えるようになっており、ダイレクトドライブモータ52に連結されたエンコーダ55がダイレクトドライブモータ52の回転位置、即ち、旋回台23の旋回位置をB軸モータ駆動ユニット78および数値制御装置60へ送出するように構成されている。
【0037】
また、数値制御装置60のメモリ91には、第1および第2砥石42、43による工作物Wの加工本数を計数するカウンタ92(計数プログラム)が記憶されており、工作物Wの加工本数が閾値記憶部91に記憶された閾値に到達したときにツルーイング動作の開始を指令するように構成されている。
【0038】
次に、上記のように構成された研削盤の研削加工動作を説明する。本実施の形態では、図1に示すように、工作物テーブル12上で主軸台13と心押台14とにより両端が支持された工作物Wに対して、第1および第2砥石42、43により粗研削加工と仕上げ研削(精研削)加工を行う。なお、現時点においては、第1砥石42が仕上げ研削加工用とされ、第2砥石43が粗研削加工用とされている。
【0039】
最初に、工作物Wに対して粗研削加工を行うに際して、第1および第2砥石42、43が砥石軸駆動用モータ45により回転駆動される。研削加工サイクルの開始が指令されると、主軸台13と心押台14のセンタ15、16にて両端を支持された工作物Wが主軸駆動モータ17によって回転駆動され、工作物W上の加工部Waが粗研削加工用の第2砥石43に対応するZ軸方向位置に位置するように工作物テーブル12が位置決めされる。
【0040】
続いて、砥石テーブル18がX軸サーボモ−タ71によりX軸方向に前進され、粗研削加工用の第2砥石43によって工作物Wの加工部Waを粗研削加工する。加工部Waの粗研削加工が終了すると、砥石テーブル18がX軸サーボモータ71によりX軸方向に後退され、次いで、数値制御装置60の指令に基づいて、砥石テーブル18上の旋回台23がダイレクトドライブモータ52によりB軸(旋回軸22)の回りに180°旋回され、砥石台40は仕上げ研削加工用の第1砥石42が工作物Wの加工部Waと対向する角度位置に位置決めされる。
【0041】
続いて、砥石テーブル18がX軸サーボモ−タ71によりX軸方向に前進され、仕上げ研削加工用の第1砥石42によって工作物Wの加工部Waを仕上げ研削加工し、工作物Wの研削加工が終了する。加工部Waの仕上げ研削加工が終了すると、砥石テーブル18がX軸サーボモータ71によりX軸方向に後退され、旋回台23がダイレクトドライブモータ52によりB軸(旋回軸22)の回りに180°旋回され、砥石台40は粗研削加工用の第2砥石43が工作物Wの加工部Waと対向する角度位置に位置決めされる。
【0042】
その後、研削加工が終了した工作物Wを主軸台13および心押台14から取り外して、次ぎに研削加工を行う工作物Wを主軸台13と心押台14の間に両端を支持させてセットする。この工作物Wに対しても上記と同様に、第2砥石43による粗研削加工と、第1砥石42による仕上げ研削加工とを行う。
【0043】
このようにして、第1および第2砥石42、43による研削加工が多数の工作物Wに対して順次行われる。このとき、数値制御装置60に設けられたカウンタ92(計数プログラム)によって工作物Wの加工本数が計数されており、仕上げ研削加工用の第1砥石42による加工本数が閾値記憶部91に記憶された閾値に到達したときに、数値制御装置60によりツルーイング動作の開始が指令される。以下、第1および第2砥石42、43のツルーイング動作を、図4に示すフローチャートおよび図5に示すタイミングチャートに基づいて説明する。
【0044】
工作物Wの加工本数が閾値に到達すると、制御プログラム93によりその時まで仕上げ研削加工に使用していた第1砥石42は、ツルーイングを行うことなく、以後、そのまま粗研削加工用砥石として使用される。一方、その時まで粗研削加工に使用していた第2砥石43は、ツルーイング装置68によりツルーイングを行った後、仕上げ研削加工用砥石として使用される。
【0045】
第2砥石43のツルーイングを行うに際して、ツルーイング装置68のツルーイング工具67が第2砥石43の研削面43aに対応するZ軸方向位置に位置するように工作物テーブル12が位置決めされ、この状態でツルーイングの開始が指令される。
【0046】
かかるツルーイング開始指令に基づいて、砥石テーブル18がX軸サーボモ−タ71によりX軸方向に前進され、ツルーイング工具67によって第2砥石43の研削面43aのツルーイングを行う。このとき、第2砥石43の研削面43aは、仕上げ研削加工用となるように所定の細かい目の粗さにツルーイングされ、ツルーイング終了後の第2砥石43は、その後の研削加工サイクルにおいて、仕上げ研削加工用の第1砥石42による工作物Wの加工本数が閾値記憶部91に記憶された閾値に到達するまで、仕上げ研削加工用砥石として使用される。
【0047】
即ち、今回(1回目)の仕上げ研削加工用の第1砥石42による工作物Wの加工本数の閾値到達によって、第1砥石42は、仕上げ研削加工用からそのままの状態で粗研削加工用に切り替えられ、第2砥石43は、粗研削加工用から、ツルーイングを行った後、仕上げ研削加工用に切り替えられる(図5参照)。
【0048】
その後、数値制御装置60による研削加工サイクルの開始指令に基づいて、上記と同様の研削加工サイクルが再開され、多数の工作物Wに対する第1および第2砥石42、43による研削加工が順次行われる。そして、仕上げ研削加工用の第2砥石43による工作物Wの加工本数が閾値記憶部91に記憶された閾値に到達したときに再度ツルーイング動作の開始が指令される。この場合、工作物Wの加工本数が閾値に到達した時まで仕上げ研削加工に使用していた第2砥石43は、ツルーイングを行うことなく、以後、そのまま粗研削加工用砥石として使用されるので、その時まで粗研削加工に使用していた第1砥石42の研削面42aに対してのみツルーイング装置68によりツルーイングを行う。
【0049】
第1砥石42に対するツルーイングは、数値制御装置60によるツルーイング動作の開始指令に基づいて上記と同様に行われ、ツルーイング終了後の第1砥石42は、その後の研削加工サイクルにおいて、仕上げ研削加工用の第1砥石42による工作物Wの加工本数が閾値記憶部91に記憶された閾値に到達するまで、仕上げ研削加工用砥石として使用される。即ち、今回(2回目)の仕上げ研削加工用の第2砥石43による工作物Wの加工本数の閾値到達によって、第2砥石43は、仕上げ研削加工用からそのままの状態で粗研削加工用に切り替えられ、第1砥石42は、粗研削加工用から、ツルーイングした後、仕上げ研削加工用に切り替えられる(図5参照)。
【0050】
なお、図6は、本実施の形態における第1砥石42の使用に伴う研削面42aの変化を示す説明図である。図6(a)に示すように最初に仕上げ研削加工に使用していた第1砥石42は、第1砥石42による工作物Wの加工本数が閾値に到達すると、図6(b)に示すように研削面42aの状態が偏磨耗や面荒れ、砥粒の摩耗などにより悪化して、仕上げ研削加工用砥石としての使用が不適切と判断され、以後、図6(b)(c)に示すように粗研削加工用砥石として使用される。その後、粗研削加工に使用された第1砥石42は、仕上げ研削加工用の第2砥石による工作物Wの加工本数が閾値に到達したときに、偏磨耗や面荒れ、砥粒の摩耗などにより更に悪化した研削面42aがツルーイングにより修復された後、図6(d)に示すように仕上げ研削加工用砥石として使用される。
【0051】
以上のように、本実施の形態によれば、検出手段の検出結果が閾値に到達したときに、仕上げ研削加工に使用していた砥石の研削面にツルーイングを行うことなく、以後、当該砥石を粗研削加工用砥石として使用するようにされているので、仕上げ研削加工用砥石から粗研削加工用砥石に切り替えられる際に、その砥石に対するツルーイングを省略することができる。そのため、上記実施の形態では、ツルーイング回数を1/2に低減することができ、その結果としてツルーイングを行う際に削り取られる砥粒の量を低減することができるので、総合的な加工コストを低減することができる。また、本実施の形態では、第1および第2砥石42、43のツルーイングは同時に行われるのではなく、順次行われるので、ツルーイング回数の低減に伴ってツルーイング時間を短縮し、総合的な加工時間を短くすることができる。特に、本実施の形態においては、第1および第2砥石42、43は、極めて高価なCBN砥石が採用されているので、加工コストの低減化効果をより有利に得ることができる。
【0052】
また、検出手段(カウンタ92である計数プログラム)の検出結果(計数結果)が閾値に到達したときに、粗研削加工に使用していた砥石の研削面にツルーイングを行った後、当該砥石を仕上げ研削加工用砥石として使用するようにされているので、粗研削加工用と仕上げ研削加工用の2種類の砥石が常に存在する状態を確保することができる。これにより、第1および第2砥石42、43による粗研削加工、仕上げ研削加工を、円滑に且つ効率良く行うことができる。
【0053】
さらに、閾値記憶部91に記憶される閾値は、粗研削加工に使用されていた砥石が仕上げ研削加工用にツルーイングされてから研削面の状態が仕上げ研削加工用の研削面として限界状態になるまでの間に、仕上げ研削用砥石として使用される砥石が研削加工可能な工作物の加工本数であり、検出手段として工作物Wの加工本数を計数するカウンタ92(計数プログラム)が採用されているので、閾値を容易に設定することができるとともに、カウンタ92を安価に作製して、大幅なコスト上昇を回避することができる。
【0054】
次に本発明の第2の実施の形態を図7に基づいて説明する。第2の実施の形態に係る研削盤100は、第1および第2砥石42、43が2つの砥石軸111、112にそれぞれ取り付けられている点と、仕上げ研削加工用砥石の研削面の状態を判断する閾値が第1および第2砥石42、43の振れ量に基づいて設定され、第1および第2砥石42、43の変位量(振れ量)を検出する検出手段として非接触型の変位センサ142、143が採用されている点で、第1の実施の形態に係る研削盤10と相違しており、他の点は同じであるので、以下相違する点を中心に説明する。なお、図7において第1の実施の形態と共通する部材については、同じ符号を付して詳しい説明は省略する。
【0055】
図7に示すように、旋回台23には、2つの砥石軸111、112が互いに平行な水平軸線の回りに回転可能に支持され、これら砥石軸111、112の軸方向略中央部に第1および第2砥石42、43がそれぞれ取り付けられている。第1および第2砥石42、43は、砥石軸111、112に平行な研削面42a、43aを有し、これら研削面42a、43aに直交して2等分する面Sに旋回軸22の垂直な回転中心が含まれるように、第1および第2砥石42、43が位置されている。
【0056】
旋回台23は、平面から見て矩形状を呈している。旋回台23の4つの側面のうち、対向する2つの側面121、122(以下、第1側面121、第2側面122という)には、第1および第2砥石保持手段123、124がそれぞれ設けられている。第1および第2砥石保持手段123、124は構成が同じであるので、以下、第1側面121に設けられた第1砥石保持手段123の構成について説明する。
【0057】
旋回台23の第1側面121には、一対の軸受部125、126が水平方向に所定の間隔を有して設置され、これら軸受部125、126によって砥石軸111が水平な軸線の回りに回転可能に両持ち支持されている。砥石軸111は、旋回台23が旋回軸22を中心にて180度旋回された際に、工作物Wの回転軸線と平行となる角度位置で位置決めされるようになっている。
【0058】
砥石軸111の一端部(図7の左側端)にはプーリ134が取り付けられ、このプーリ134は旋回台23上に設置された砥石軸駆動モータ145のモータ軸に取り付けられたプーリ146とベルト147を介して回転連結されている。
【0059】
旋回台23の第1側面121には、第1砥石42に対応して凹部121aが形成され、この凹部121aに第1砥石42の外周の一部が侵入するようになっている。第1砥石42の外周の一部を旋回台23の凹部121aに侵入させることにより、第1砥石42の径が大きい場合でも、旋回台23の第1側面121から砥石軸111の中心位置までの距離、即ち、オーバハング量が大きくなるのを抑制し、砥石軸111の支持剛性の低下を防止するようにされている。
【0060】
上記した一対の軸受部125、126、砥石軸111、第1砥石42等によって、第1砥石保持手段123が構成されている。
【0061】
旋回台23の第2側面122に設けられる第2砥石保持手段124も上記した第1砥石保持手段123と同様に構成され、第2砥石保持手段124に保持される第2砥石43は、その研削面43aに直交する面Sに旋回台23の旋回中心(旋回軸22の回転中心)が一致する位置に保持されている。言い換えれば、第1および第2砥石42、43は、これら第1および第2砥石42、43によって工作物Wを研削加工する際に発生する研削抵抗F1、F2の方向が旋回軸22の中心を向くように配置され、研削抵抗F1、F2によって旋回台23に旋回軸22回りの旋回モーメントが発生しないようにされている。
【0062】
なお、第2砥石保持手段124に保持された砥石軸112は、旋回台23上に設置された砥石軸駆動モータ155により、ベルト伝達装置156を介して回転されるようになっている。
【0063】
そして、本実施の形態において、第1および第2砥石42、43に対するツルーイング装置68によるツルーイングは、第1および第2砥石42、43のうち仕上げ研削加工に用いる仕上げ研削加工用砥石の研削面の状態を検出する検出手段の検出結果が、当該仕上げ研削加工用砥石の研削面の状態が限界状態になったことを判断する閾値になると行われる。仕上げ研削加工用砥石の研削面の状態が限界状態になったことを判断する閾値は、第2の実施形態では仕上げ研削加工に用いている砥石の研削面の状態が限界状態になったときの砥石の振れ量に基づいて設定されている。即ち、第1および第2砥石42、43による工作物Wの研削加工が進行するのに伴って、仕上げ研削加工用の砥石に偏磨耗や面荒れ、摩滅等が発生し、仕上げ研削加工用砥石としての使用が不適切となる判断基準が、仕上げ研削加工用砥石の研削面の変位量(振れ量)に基づいている。
【0064】
この閾値を記憶する閾値記憶部91は、第1の実施の形態と同様に数値制御装置60の
【0065】
メモリ62に設けられている。また、第1および第2砥石42、43の研削面42a、43aの変位量(振れ量)を測定する変位センサ142、143は、旋回台23上面に第1および第2砥石42、43の研削面と対向してそれぞれ設置されている。
【0066】
以上のように構成された第2の実施形態の研削盤は、変位センサ142、143の測定結果が閾値に到達したときに、その時まで仕上げ研削加工に使用していた砥石の研削面にツルーイングを行うことなく、以後、当該砥石を粗研削加工用砥石として使用し、その時まで粗研削加工に使用していた砥石の研削面にツルーイング装置68によるツルーイングを行った後、当該砥石を仕上げ研削加工用砥石として使用するようにされている。
【0067】
これにより、第2の実施形態の研削盤100の場合にも、ツルーイング回数やツルーイングを行う際に削り取られる砥粒の量を大幅に低減することができるので、総合的な加工コストを低減することができ、且つ総合的な加工時間を短縮することができるなど、第1の実施の形態と同様の作用および効果を奏する。
【0068】
なお、上記した実施の形態においては、仕上げ研削加工用砥石の研削面の状態が限界状態であることを判断する閾値を、工作物Wの加工本数や砥石の振れ量に基づいて設定する例を説明したが、その他に、例えば、仕上げ研削加工に用いている砥石の研削面の状態が限界状態になるまでに研削加工可能な当該砥石の累積加工時間、又は仕上げ研削加工に用いている砥石の研削面の状態が限界状態になったときに当該砥石で工作物を研削加工するときに発生する研削抵抗に基づいて閾値を設定するようにしてもよい。仕上げ研削加工に用いている砥石の累積加工時間に基づいて閾値を設定する場合には、検出手段として、累積加工時間を計時する例えばタイマなどの計時装置を採用することができる。また、砥石軸または工作物に掛かる研削抵抗に基づいて閾値を設定する場合には、検出手段として、例えば砥石軸または工作物を回転駆動するモータの電流変化を測定する電流計などの計測器を採用することができる。
【0069】
なお、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の形態を採り得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る研削盤の平面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る研削盤の旋回装置周辺部を示す正面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る研削盤の制御装置を示す制御ブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態において第1砥石および第2砥石のツルーイングを行う場合のフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施の形態において第1砥石および第2砥石のツルーイングを行うタイミングチャートである。
【図6】本発明の第1の実施の形態における第1砥石の使用に伴う研削面の変化を示す説明図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る研削盤の平面図である。
【符号の説明】
【0071】
10…研削盤、12…工作物テーブル、18…砥石テーブル、20…砥石旋回装置、21…支持台、22…旋回軸、23…旋回台、40…砥石台、 41、111、112…砥石軸、42…第1砥石、42a…研削面、43…第2砥石、43a…研削面、45…砥石軸駆動用モータ、60…数値制御装置、67…ツルーイング工具、68…ツルーイング装置、71…X軸サーボモータ、75…Z軸サーボモータ、91…閾値記憶部、92…カウンタ(検出手段)、93…制御プログラム(制御手段)、125、126…軸受部、142、143…変位センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の砥石を備え、該複数の砥石の何れか一の砥石によって工作物を粗研削加工し、何れか他の砥石によって工作物を仕上げ研削加工するようにした研削盤において、
前記砥石のうち仕上げ研削加工に用いる仕上げ研削加工用砥石の研削面の状態が限界状態であることを判断する閾値を記憶する閾値記憶部と、
前記仕上げ研削加工用砥石の研削面の状態を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果が前記閾値に到達したときに、前記仕上げ研削加工に使用していた砥石の研削面にツルーイングを行うことなく、以後、当該砥石を粗研削加工用砥石として使用する制御手段と、
を備えることを特徴とする研削盤。
【請求項2】
請求項1において、前記制御手段は、前記検出手段の検出結果が前記閾値に到達したときに、前記粗研削加工に使用していた砥石の研削面にツルーイングを行った後、当該砥石を仕上げ研削加工用砥石として使用することを特徴とする研削盤。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記閾値は、前記仕上げ研削加工に用いている砥石の研削面の状態が前記限界状態になるまでに研削加工可能な工作物の加工本数であり、
前記検出手段は前記工作物の加工本数を計数するカウンタであることを特徴とする研削盤。
【請求項4】
請求項1または請求項2において、前記閾値は、前記仕上げ研削加工に用いている砥石の研削面の状態が前記限界状態になったときの前記砥石の振れ量であり、
前記検出手段は、前記砥石の変位量を測定する変位センサであることを特徴とする研削盤。
【請求項5】
請求項1または請求項2において、前記閾値は、前記仕上げ研削加工に用いている砥石の研削面の状態が前記限界状態になるまでに研削加工可能な前記砥石の累積加工時間であり、
前記検出手段は、前記砥石の累積加工時間を計測する計時装置であることを特徴とする研削盤。
【請求項6】
請求項1または請求項2において、前記閾値は、前記仕上げ研削加工に用いている砥石の研削面の状態が前記限界状態になったときに当該砥石で前記工作物を研削加工するときに発生する研削抵抗であり、
前記検出手段は、前記研削抵抗を測定する計測器であることを特徴とする研削盤。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6の何れか1項において、前記砥石は、CBN砥石またはダイヤモンド砥石であることを特徴とする研削盤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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