説明

研削装置

【課題】砥石軸スライドの案内中心線及び送り装置の駆動作用線が略同一直線上に配設され、かつ砥石軸回転中心をこれらの中心からわずかにオフセットさせて、スライダの微少傾きを防止する。
【解決手段】基台11の上部にはコラム13が立設され、該コラム13の上部には駆動モータ46を装着した上部ベース14が取り付けられている。コラム13に摺動自在に嵌挿されたスピンドルケース28の上部には駆動モータ46と一体になったボーネジ45が取り付けられている。スピンドルケース28には砥石スピンドル50がビルトインモータ49により回転自在に装着されている。砥石スピンドル50の中心は幅方向がボールネジ45の中心と同じで、前後方向の中心がボールネジ45の中心に対してわずかにオフセットさせている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は研削装置に関し、さらに詳細にはスライド部材の案内中心線及び送り装置の駆動作用中心線が略同一直線上に設けられ移動時にピッチング、ヨーイングによる砥石軸の傾きを防止する研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の研削装置は回転中心線、案内中心線及び駆動力作用中心線が略同一線上にあるため、対向する案内面がV字形状と静圧ポケットとなっており、それぞれ案内面の抵抗が異なることから、スライダの微少傾きが常に発生し、スティックスリップの原因となる。このため、スライダの上下動の反転時に摩擦の違いが主因となる傾き動作(ピッチング)の方向が無負荷(動作しない状態)の案内中心線に対して逆転する。そのため、加工終了時に工具と工作物の当接する位置と角度が急激に変化し、工作物にダメージを与えてしまう(例えば、特許文献1参照)。
さらに、特許文献2では、三角錐構造の骨格と上下動のガイド部を保持する箇所が構造上少なくなり、前記箇所での保持力低下による剛性低下で、加工時の反力に対しての工具と工作物間での剛性が低下し、加工時に工具と工作物の間での位置や角度が変化するため,
工作物にダメージを与えてしまう。また、工具スピンドルが三角錐構造の骨格の中に位置する構造になるため、消耗した工具に交換と工作物の脱着が困難となる。
【特許文献1】特開平8−276358号公報
【特許文献2】特開平6−155257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、前記の課題を解決するために成されたもので、スライド部材の案内中心線及び送り装置の駆動作用中心線が略同一直線上に配設され、かつ砥石軸の前後方向の中心線を前記スライド部材の案内中心線及び駆動作用中心線からわずかにオフセットさせることにより、スライダの微少傾きを防止する研削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、請求項1記載の発明は、基台に立設されたコラムと、前記コラムに摺動自在に嵌挿されたスライド部材と、
前記基台に設けられ被加工物を吸着して回転する回転テーブルと、前記回転テーブルに対向する砥石スピンドルに固定され前記被加工物を研削する砥石と、前記スライド部材に回転自在に嵌挿された砥石駆動部と、を備えた研削装置において、
前記スライド部材の案内面及び該スライド部材を移動させる駆動用ネジ軸の中心が同じで、前記砥石スピンドルの回転中心は幅方向が前記駆動用ネジ軸に一致し、前後方向が駆動用ネジ軸に対してオフセットさせたことを特徴とする。
本発明によれば、砥石スピンドルの回転中心を砥石軸案内中心線と送り装置の駆動力作用点の同一直線上から、わずかにオフセットして配置させることで、たえず砥石軸案内系に一方向の負荷を与えることで、上下動の反転時に加わるスライド部材への荷重変化に伴う該スライド部材の傾き方向の逆転を防止する。さらに、アッベの原理によりスライダの傾きが工具と工作物間距離の精度に与える影響は小さくなる。
【発明の効果】
【0005】
本発明は砥石スピンドルの回転中心を砥石軸案内中心線と送り装置の駆動力作用点の同一直線上から、わずかにオフセットして配置させることで、アッベの原理によりスライド部材の傾きが、工具と工作物間距離の精度に与える影響は小さくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明に係る傾き研削装置について、好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら、以下,詳細に説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る研削装置10の概略構造を表す要部断面図を示す。
図1において、研削装置10は据付面、例えば床面(図示しない)に設置された基台11の上部前方には、図示しないモータにより回転駆動される回転テーブル12が配設されている。前記基台11の上部後方には、コラム13が立設されている。前記コラム13の上部には上部ベース14が取り付けられている。
【0007】
図2及び図3に示すように前記コラム13には、前面15(図2で左面)に沿って横断面略十字形の溝16(図3参照)が該コラム13の縦方向(図1上下方向)に形成されている。前記溝16はコラム13の幅方向(図3で左右方向)に間隔が同じの案内面17、18及び案内面19、20を形成し、これらの案内面17乃至20に直交して摺動面21、22及び摺動面23、24を形成している。この場合、摺動面21、22及び摺動面23、24の幅方向(図3で上下方向)を規定する摺動面25、26の間隔は案内面17、18及び案内面19、20の間隔よりも広い。なお、前記案内面17、18はその一側が前面15に開口し、他側が摺動面21、23の一側に隣接している。案内面19、20は一側が摺動面22、24の一側に連接し、該案内面19、20の他側が案内面27の両端側に隣接している。一方、摺動面21、22及び摺動面23、24の他側はそれぞれ摺動面25及び26の両端側に隣接している。
また、コラム13において、中心線Yは対向する案内面21、22及び案内面23、24の間の前後方向(図3で左右方向)の中心を示し、中心線Zはコラム13の案内面25、26間の幅方向(図3で上下方向)の中心を示し、該中心線Y及びZの交点がスピンドルケース(スライド部材)28の案内面の中心であり、かつ後述するボールネジ45及び駆動モータ46の中心、すなわち駆動作用線の中心である。
【0008】
前記コラム13の溝16には、スピンドルケース28が摺動自在に嵌挿されている。図2及び図4に示すように、前記スピンドルケース28は溝16の案内面17乃至20及び、案内面27に係合する案内面30乃至33及び案内面40と、備える。この場合、スピンドルケース28の案内面30乃至33及び案内面40とコラム13の案内面17乃至20及び案内面27とは接触しないように、これらが対向する面は予めの隙間(図示しない)を備えている。一方、コラム13の摺動面21乃至26はスピンドルケース28の摺動面34乃至39に接触し、該摺動面34乃至39は摺動面21乃至26をガイドにして摺動するようになっている。
さらに、コラム13の摺動面21とスピンドルケース28の摺動面34との間には、コラム13の摺動面21、22間に摺動自在に嵌挿するスピンドルケース28の摺動面34、35間の隙間を調整する楔42が設けられている。
【0009】
同様に、コラム13の摺動面23とスピンドルケース28の摺動面36との間には、コラム13の摺動面23、24間に摺動自在に嵌挿するスピンドルケース28の摺動面36、37間の隙間を調整する楔43が設けられる。
また、コラム13の摺動面25とスピンドルケース28の摺動面38との間には、コラム13の案内面25、26間に摺動自在に嵌挿するスピンドルケース28の摺動面38、39間の隙間を調整する楔44が設けられる。前記楔42乃至44は図5(図5では楔44のみ表示する)示すようにスピンドルケース28に上下方向に対向して間隔を置いてそれぞれ一対設けられている。スピンドルケース28の案内面40はコラム13の案内面27に対して非接触の状態にあり、かつスピンドルケース28の前面41はコラム13の溝16より露出し、前面15より突出している。
【0010】
スピンドルケース28の縦方向(図1で上下方向)には後述する砥石スピンドル50を収納する収納穴29が設けられており、該砥石スピンドル50の幅方向(図3で上下方向)の中心は中心線Z上の収納穴29の幅方向(図3で上下方向)の中心は同じであるが、収納穴29の前後方向(図3で上下方向)の中心はスピンドルケース28の案内面の前後方向(図3で左右方向)の中心線Yよりもわずかにコラム13の前面15側にずらすことにより、絶えず砥石スピンドル50に一方向の負荷を与えることで、上下動の反転時に加わるスピンドルケース28への荷重変化に伴う該スピンドルケース28の傾きを防止している。
【0011】
図1に示ように、スピンドルケース28の上部には駆動ネジであるボールネジ(駆動用ネジ軸)45が嵌挿されており、コラム13の上部ベース14に先端に装着されたギアボックス付上下駆動モータ(以下駆動モータという)46に一体に取り付けられており、該駆動モータ46の駆動によりスピンドルケース28の案内面35、37及び39、楔42乃至44がコラム13の案内面21乃至26をガイドにして上下動するようになる。よって、スピンドルケース28は、コラム13の溝16に摺動自在に嵌挿される際に、楔42乃至44により摺動時の隙間が調整され、かつスピンドルケース28の案内面の左右方向の中心線Yに対して収納穴29の左右方向の中心線Xがコラム13の前面15側にずれるようなりスピンドルケース28への荷重変化に伴う該スピンドルケース28の傾きを防止している。
【0012】
収納穴29には砥石駆動部47が装着されている。前記砥石駆動部47は、収納穴29に嵌挿されたハウジング48と、前記ハウジング48に取り付けられたビルトインモータ49と、前記ハウジング48に回転自在に支持され前記ビルトインモータ49に嵌挿された砥石スピンドル50と、前記砥石スピンドル50の先端に着脱自在に取り付けられた砥石51とを、備える。この場合、ボールネジ45及び駆動モータ46の中心はコラム13の案内面の前後方向(図3で左右方向)の中心線Yとコラム13の案内面の幅方向(図3で上下方向)の中心線Zとの交点に位置するようになる。
【0013】
本実施の形態に係る研削装置10は、基本的には以上のよう構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。
図示しない制御装置により回転テーブル12に被工作物52をチャック装置(図示しない)で吸引チャックし、回転テーブル12を電動機(図示しない)により回転させる。次いで駆動モータ46を回転させ、ボールネジ45を介してスピンドルケース28をコラム13の案内により図1で下方に所定位置まで移動させる。さらに、スピンドルケース28の移動と共にハウジング48に装着されているビルトインモータ49を駆動して砥石スピンドル50を回転させる。
制御装置によりスピンドルケース28をさらに下降させ、回転している砥石51を被加工物52に接触させ、該被加工物52の表面を研削加工する。被加工物52の表面が研削加工されたならば駆動モータ46及びボールネジ45を逆回転させでスピンドルケース28を所定位置まで上昇させる。
【0014】
本発明の実施の形態に係る砥石装置10は以上説明したように砥石軸スライドの機能を有するスピンドルケース28の案内中心線と、送り装置の駆動力作用中心線であるボールネジ45の中心とが同一位置、すなわち、スピンドルケース28の案内中心、ボールネジ45の中が幅方向(図3で上下方向)及び前後方向(左右方向)とも中心線Z上に位置している。
一方、砥石スピンドル50の中心は、幅方向(図3で上下方向)がスピンドルケース28の案内中心及びボールネジ45の幅方向(図3で上下方向)の中心上に位置し、前後方向(図3で左右方向)の中心、すなわち、中心線Xは前記スピンドルケース28の案内中心及びボールネジ5の中心、すなわち中心線Yから、わずか(例えばスピンドルケース28の案内面が対向するように挟まれた拘束面(案内面)間内で、反コラム側)にオフセットさせて配置している。
これにより、スピンドルケース28の案内面は、該案内面の拘束が点又は線接触となる転がり案内ではなく、面接触となる摺動での案内として接触部の平均化により移動時のピッチング,ヨーイング,ローリング等の傾き変化を抑制することができる。
【0015】
また、楔41〜43はコラム13及びスピンドルケース28と同種の材質、例えば鉄系でもよいが、異種材として一方は樹脂性の基材に潤滑材を含浸した材料を用いると、接触面が増加し、より高い接触面の平均化と摺動面の面圧を低下させ、且つ、傾き変化の発生原因となる摩擦抵抗を低下させる点から好ましい。
スピンドルケース28の摺動面の隙間調整、すなわちコラム13の摺動面21、23とスピンドルケース28の摺動面37、38との隙間調整及びコラム13の摺動面26とスピンドルケース28の摺動面39との隙間調整は、スピンドルケース28又は砥石スピンドル50の傾きを最小化にするために、その接触面の距離を長くする点から、スピンドルケース28の上下から個々に調整できるので好ましい。
【0016】
一般に移動体の微少速度送り時には、制御系の最小指令単位によって、移動できる最小送り量が決定されるために、ステップ状の階段送りにて、擬似的な微少送りが発生する。その際、フルクローズループ制御では、外部スケールの読み取りによって位置制御するために、正しい位置に停止するまでにオーバーシュートを繰り返しながら正しい位置に収束していく。一方、セミクローズドループ制御(オープンループ制御)では、モータの送り指令に対して駆動の各伝達系の遅れのため、なまった階段状に擬似的な微少送りが発生する。
そこで、本発明の実施の形態に係る研削装置10において、スピンドルケース28の移動には、移動動作が滑らかなオープンループ制御または、セミクローズドループ制御が好ましい。よって、移動の際に細かな位置制御を行い、低速でのスピンドルケース28の送りがなされてしまうフルクローズドループ制御では、移動時のオーバーシュート現象や極短時間でのステップ移動の実速さが高速なため、本発明の研削装置10の制御には好ましくない。
【0017】
さらに、本発明では、砥石軸案内中心線と送り装置の駆動力作用中心線が、同一直線上に配置され、残された砥石軸の回転中心も同直線上に近接して配置されるため、アッベの原理によりスライダの傾きが、工具と工作物間距離の精度に与える影響は小さくなる。
また、上下個別に隙間と締め代を調節することで砥石軸スライド案内面の支持距離を大きくし、初期傾きを抑制することで、砥石軸スライドの上下動時の傾き発生を抑制する。
又、砥石軸スライド案内面の支持距離の長さを大きくすることで、摺動部に加わる面圧を抑制することが可能となり、摺動部の磨耗を低減し、且つ、摺動部の変形も小さくなるため砥石軸スライドの傾きも少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る研削装置の概略構造を示す側面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図2のコラムに形成した溝に詳細図である。
【図4】図2のスピンドルケースの外形詳細図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る研削装置の概略構造を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る研削装置の概略構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0019】
10 研削装置 11 基台
12 回転テーブル 13 コラム
16 溝 17〜20 案内面
21〜26 摺動面 28 スピンドルケース
29 収納穴 30〜33 案内面
34〜39 摺動面 42〜44 楔
45 ボールネジ 46 ギアボックス付上下駆動モータ
47 砥石駆動部 48 ハウジング
49 ビルトインモータ 50 砥石スピンドル
51 砥石 52 被加工物








【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台に立設されたコラムと、前記コラムに摺動自在に嵌挿されたスライド部材と、
前記基台に設けられ被加工物を吸着して回転する回転テーブルと、前記回転テーブルに対向する砥石スピンドルに固定され前記被加工物を研削する砥石と、前記スライド部材に回転自在に嵌挿された砥石駆動部と、を備えた研削装置において、
前記スライド部材の案内面及び該スライド部材を移動させる駆動用ネジ軸の中心が同じで、前記砥石スピンドルの回転中心は幅方向が前記駆動用ネジ軸に一致し、前後方向が駆動用ネジ軸に対してオフセットさせたことを特徴とする研削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−114352(P2008−114352A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−302370(P2006−302370)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(000005197)株式会社不二越 (625)
【Fターム(参考)】