説明

研磨テープ

【課題】捲回状態から波打つことなく捲き解くことができる研磨テープを提供する。
【解決手段】研磨テープ10は、被研磨物を研磨加工するための研磨面Pを有する帯状のウレタンシート2を備えている。ウレタンシート2は、湿式成膜法により形成されている。ウレタンシート2は、研磨面P側に、緻密な微多孔が形成されたスキン層2aを有している。ウレタンシート2のスキン層2aより内部側には、多数のセル3が略均等に分散した状態で形成されている。ウレタンシート2は連続状の発泡構造を有している。研磨テープ10は、ウレタンシート2の研磨面Pと反対側の面に、帯状の基材6が貼り合わされている。基材6は、裏面Sがサンドブラスト加工により粗面化されている。研磨面Pおよび裏面S間の局所的な粘着が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は研磨テープに係り、特に、帯状の樹脂製シートと樹脂製基材とが貼り合わされた研磨テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気ディスク用基板、フラットパネルディスプレイ(FPD)用ガラス基板等の材料(被研磨物)では、高精度な平坦性が要求されるため、研磨加工が行われている。研磨加工では、材料の特性や要求される研磨性能にあわせて様々な手法が採用されている。
【0003】
例えば、磁気ディスク装置に搭載される磁気ディスク用基板には、従来、アルミニウム系基板が用いられている。ところが、モバイル用のパソコンや音楽プレーヤ、さらには携帯電話やデジタルカメラ等の普及に伴い、耐衝撃性や平滑性向上の観点から、ガラス基板が多く用いられるようになっている。一方、このような磁気ディスクには、小型化と高記録密度化が求められている。すなわち、限られたスペースで記録可能な情報量を大きくするためには、基板の表面粗さの低減と面内平坦性の高度化とが求められており、例えば、表面粗さ(Ra)が0.5nm以下の鏡面にすることが望まれている。
【0004】
このような磁気ディスク用ガラス基板を平坦化する方法として、例えば、ガラス基板をスピンドルに固定して回転させると共に、一定方向に移動する研磨テープをゴムローラによりガラス基板の表面に押し付けて研磨加工する技術が開示されている(特許文献1参照)。特許文献1の技術では、研磨テープに発泡ポリウレタン樹脂が用いられており、研磨加工中に遊離砥粒を含む研磨液(スラリ)が供給されている。また、同様の研磨方法で用いる研磨テープに硬度が20〜50度の発泡ポリウレタン樹脂を用いる技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−71463号公報
【特許文献2】特許第3291701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、研磨テープに用いられる発泡ポリウレタン樹脂のアスカーC硬度が88以上の硬質なため、基板表面を平滑にする能力には優れるものの、供給されるスラリ中の遊離砥粒により基板表面に微細な傷を発生させてしまう、という問題がある。また、特許文献2の技術では、研磨テープに用いられる発泡ポリウレタン樹脂が独立発泡構造を有する硬質タイプのため、研磨屑やスラリがテープ表面に形成された開孔に詰まりやすく、その結果、研磨テープ表面の硬度が高くなり、基板表面にキズを発生させてしまう、という問題がある。
【0007】
これらの問題を解決するために、本発明者らは、軟質な研磨テープを使用することでキズの発生を抑制することを試み、湿式成膜法により形成された連続発泡構造を有する樹脂製シートを用いた研磨テープについて鋭意検討を重ねた。しかし、この過程で、湿式成膜法により作製したシートでは、研磨加工時の使用形態に合わせてロール状に捲回すると、いわゆる、ブロッキング現象が発生することが判明した。すなわち、捲回された研磨テープでは、内周から外周まで研磨テープが積層状態となることから、基材の裏面と軟質な表面層の表面とが接触することで引っ付いてしまうことがある。ブロッキング現象が生じると、研磨加工時に研磨テープが波打つように送り出され、被研磨物の表面に対する送り速度が不安定になり、一定の加工条件で研磨加工することができなくなる。このため、基板の品質にバラツキが生じ、表面粗さ等の要求品質を満たすことが難しくなる。
【0008】
本発明は上記事案に鑑み、捲回状態から波打つことなく捲き解くことができる研磨テープを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、湿式成膜法により表面層が形成され連続発泡構造を有する帯状の樹脂製シートと、前記シートの前記表面層と反対側の面に一面が貼り合わされ、他面が粗面化された帯状の樹脂製基材と、を備え、前記基材の他面側が前記シートの表面層の表面と当接するように捲回されたことを特徴とする研磨テープである。
【0010】
本発明では、シートが湿式成膜法により表面層が形成され連続発泡構造を有することで軟質なため、被研磨物の仕上げ加工に好適に使用することができ、シートに一面側が貼り合わされた基材の他面側が粗面化されたことで、捲回により軟質な表面層の表面と基材の他面とが接触しても局所的な粘着が抑制されるため、研磨加工時に波打つことなく円滑に捲き解くことができる。
【0011】
この場合において、基材の他面の表面粗さRaを0.3μm〜0.7μmの範囲とすることが好ましい。このとき、基材の他面をサンドブラスト加工で粗面化することができる。このような基材が少なくともポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートおよびポリビニルクロライドから選択される1種を材質としてもよい。また、シートを100%モジュラスが10MPa以下の材質とすることができる。シートをポリウレタン樹脂製としてもよい。また、シートのショアA硬度を3度〜20度の範囲とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、シートに一面側が貼り合わされた基材の他面側が粗面化されたことで、捲回により軟質な表面層の表面と基材の他面とが接触しても局所的な粘着が抑制されるため、研磨加工時に波打つことなく円滑に捲き解くことができる、という効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用した実施形態の研磨テープを模式的に示す断面図である。
【図2】研磨テープで被研磨物を研磨加工するときの研磨装置の概略を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明を適用した研磨テープの実施の形態について説明する。
【0015】
(構成)
図1に示すように、本実施形態の研磨テープ10は、被研磨物を研磨加工するための研磨面Pを有する帯状の樹脂製シートとしてのウレタンシート2を備えている。
【0016】
ウレタンシート2は、湿式成膜法により形成されている。ウレタンシート2の材質には、100%モジュラス(2倍伸長時のモジュラス)が10MPa以下のポリウレタン樹脂が用いられている。ウレタンシート2は、研磨面P側に、湿式成膜時に厚み数μmにわたり緻密な微多孔が形成されたスキン層(表面層)2aを有している。ウレタンシート2のスキン層2aより内部側には、厚み方向に沿って丸みを帯びた断面三角状の多数のセル3が略均等に分散した状態で形成されている。セル3は、研磨面P側の孔径が研磨面Pと反対の面側より小さく形成されている。すなわち、セル3は研磨面P側で縮径されている。セル3の間のポリウレタン樹脂中には、セル3より小さい孔径の図示しない発泡が形成されている。ウレタンシート2のセル3および図示しない発泡は、不図示の連通孔で網目状に連通されている。すなわち、ウレタンシート2は連続状の発泡構造を有している。このウレタンシート2では、ショアA硬度が3〜20度の範囲に調整されている。ショアA硬度は、湿式成膜時の樹脂濃度や凝固再生条件等により調整することができる。
【0017】
また、研磨テープ10は、ウレタンシート2の研磨面Pと反対側の面に、帯状の樹脂製基材としての基材6が貼り合わされている。基材6には、少なくともポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する。)およびポリビニルクロライド(PVC)から選択される1種を材質としたフィルムが用いられている。基材6は、一面側が接着剤層5を介してウレタンシート2と貼り合わされている。接着剤層5の接着剤には、アクリル系、ニトリル系、ニトリルゴム系、ポリアミド系、ポリウレタン系、エポキシ系等の接着剤が用いられている。基材6は、他面、すなわち、裏面Sがサンドブラスト加工により粗面化されている。基材6の裏面Sでは、粗面化されたことで表面粗さRaが0.3〜0.7μmの範囲に形成されている。なお、基材6の一面側にもサンドブラスト加工を施してもよく、このようにすれば、ウレタンシート2と基材6との接着強度を高めることができる。
【0018】
(製造)
研磨テープ10は、湿式成膜法により作製されたウレタンシート2とサンドブラスト加工が施された基材6とを貼り合わせることで製造される。ウレタンシート2は、ポリウレタン樹脂を溶解させた樹脂溶液を準備する準備工程、樹脂溶液を成膜基材に連続的に塗布し水系凝固液中でポリウレタン樹脂を凝固再生させる凝固再生工程、凝固再生したポリウレタン樹脂を洗浄・乾燥させる洗浄・乾燥工程を経て作製される。以下、工程順に説明する。
【0019】
準備工程では、ポリウレタン樹脂、ポリウレタン樹脂を溶解可能な水混和性の有機溶媒のN,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記する。)および添加剤を混合してポリウレタン樹脂を溶解させる。ポリウレタン樹脂には、100%モジュラスが10MPa以下のポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系等の樹脂から選択して用い、例えば、ポリウレタン樹脂が30重量%となるようにDMFに溶解させる。添加剤としては、セル3の大きさや数量(個数)を制御するため、カーボンブラック等の顔料、気孔形成を促進させる親水性活性剤およびポリウレタン樹脂の凝固再生を安定化させる疎水性活性剤等を用いることができる。得られた溶液を減圧下で脱泡してウレタン樹脂溶液を得る。
【0020】
塗布工程では、準備工程で調製されたウレタン樹脂溶液を常温下でナイフコータ等の塗布装置により帯状の成膜基材に略均一に塗布する。このとき、ナイフコータと成膜基材との間隙を調整することで、ウレタン樹脂溶液の塗布厚み(塗布量)を調整する。成膜基材には、可撓性フィルム、不織布、織布等を用いることができるが、本例では、液体の浸透性を有していないPET製フィルムを用いる。
【0021】
凝固再生工程では、塗布工程で成膜基材に塗布されたウレタン樹脂溶液を、ポリウレタン樹脂に対して貧溶媒である水を主成分とする凝固液(水系凝固液)に案内し浸漬する。凝固液中では、まず、塗布されたウレタン樹脂溶液の(成膜基材と反対の)表面側に厚さ数μm程度のスキン層2aが形成される。その後、ウレタン樹脂溶液中のDMFと凝固液との置換の進行によりポリウレタン樹脂がシート状に凝固再生する。DMFがウレタン樹脂溶液から脱溶媒し、DMFと凝固液とが置換することにより、スキン層2aより内部側(ポリウレタン樹脂中)にセル3および図示しない発泡が形成され、セル3および図示しない発泡を網目状に連通する不図示の連通孔が形成される。このとき、成膜基材のPET製フィルムが水を浸透させないため、ウレタン樹脂溶液の表面側(スキン層2a側)で脱溶媒が生じて成膜基材側が表面側より大きなセル3が形成される。
【0022】
洗浄・乾燥工程では、凝固再生工程で凝固再生したシート状のポリウレタン樹脂(以下、成膜樹脂という。)を成膜基材から剥離し、水等の洗浄液中で洗浄して成膜樹脂中に残留するDMFを除去する。洗浄後、成膜樹脂をシリンダ乾燥機で乾燥させる。シリンダ乾燥機は内部に熱源を有するシリンダを備えている。成膜樹脂がシリンダの周面に沿って通過することで乾燥しウレタンシート2を得る。得られたウレタンシート2をロール状に巻き取る。
【0023】
ウレタンシート2と貼り合わせる基材6には、本例では、PETフィルムを用いる。基材6の裏面Sには、サンドブラスト加工を施す。サンドブラスト加工では、粒径が0.1〜0.5μmの範囲のアルミナやガラスの粒子(砂)を圧縮空気の圧力0.5〜10kg/cm程度で吐出し裏面Sに吹き付け微細な凹凸を形成させる(粗面化する)。得られた基材6をロール状に巻き取る。なお、このようなサンドブラスト加工されたPETフィルムが市販されていることから、市販のものをそのまま使用してもよい。
【0024】
ウレタンシート2のスキン層2aと反対側の面に、接着フィルム5を介して基材6を貼り合わせる。基材6の一面側に接着剤層5を構成する接着剤を塗布し、接着剤の塗布面側とウレタンシート2とを貼着する。このとき、ウレタンシート2および基材6を、表面が平坦な治具を用いて押圧する。これにより、接着剤層5を介してウレタンシート2と基材6とがほぼ一定の間隔で貼り合わされる。
【0025】
貼り合わされたウレタンシート2と基材6とを、例えば、幅35mmの長尺状、すなわち、帯状に裁断する。そして、スキン層2aの表面にキズや汚れ、異物等の付着が無いことを確認する等の検査を行った後、捲回することでロール状にパッケージして研磨テープ10を完成させる。ロール状にパッケージされた研磨テープ10では、外周側に捲かれた部分の裏面Sと、その内側に捲かれた部分の研磨面Pとが接触することとなる。
【0026】
得られた研磨テープ10で被研磨物、例えば、磁気ディスクの研磨加工を行うときは、テープ研磨装置が用いられる。図2に示すように、テープ研磨装置50は、被研磨物30の加工面と対向するように、研磨テープ10を被研磨物30に圧接させるための押圧ローラ46を備えている。押圧ローラ46は、少なくとも表層が弾性を有するゴム等の材質で形成されている。押圧ローラ46の上流側には、研磨テープ10を送り出す送出スプール42が配置されている。押圧ローラ46の下流側には、研磨加工に使用後の研磨テープ10を巻き取る巻取スプール43が配置されている。研磨テープ10は、送出スプール42および巻取スプール43間に押圧ローラ46を介して張架されている。被研磨物30の押圧ローラ46と反対側には、被研磨物30を回転させるための図示を省略した回転駆動軸が配されている。被研磨物30は、回転駆動軸に回転可能に軸支されている。研磨加工時には、研磨テープ10が送出スプール42から押圧ローラ46の方向(矢印A方向)に一定速度で送り出され、押圧ローラ46から巻取ローラ43の方向(矢印B方向)に搬送され巻き取られる。被研磨物30を回転させながら、研磨粒子を含む研磨液(スラリ)を供給すると共に、押圧ローラ46を図示しない押圧機構で被研磨物30側に押圧して研磨面Pを被研磨物30の加工面に圧接させる。被研磨物30自体の回転および研磨テープ10の移動により被研磨物30が研磨加工される。
【0027】
(作用)
次に、本実施形態の研磨テープ10の作用等について説明する。
【0028】
本実施形態の研磨テープ10では、基材6の裏面Sが粗面化されている。研磨テープ10がロール状にパッケージされた状態では、研磨面Pと裏面Sとが接触している。スキン層2aが緻密な微多孔状に形成されているため、研磨面Pが平坦性に優れるものの、裏面Sが粗面化されたことで、研磨面Pおよび裏面S間の局所的な粘着が抑制される。このため、研磨加工時には、研磨テープ10がロール状のパッケージから円滑に捲き解かれることで、いわゆる、ブロッキング現象が抑制され、送出スプール42から円滑に送り出される。これにより、押圧ローラ46で研磨テープ10が被研磨物30の加工面に略均等、略均一に押圧されるので、研磨加工を安定化させることができ、被研磨物30の平坦性向上を図ることができる。
【0029】
また、本実施形態の研磨テープ10では、湿式成膜法によりスキン層2aが形成され、セル3が形成された連続発泡構造を有している。このため、スキン層2aの表面、すなわち、研磨面Pが平坦性に優れると共に、セル3によるクッション性が発揮されるので、被研磨物30の鏡面仕上げ加工に好適に使用することができる。
【0030】
更に、本実施形態の研磨テープ10では、基材6の裏面Sがサンドブラスト加工により粗面化されており、その表面粗さRaが0.3〜0.7μmの範囲に調整されている。このため、粒径が0.1〜0.5μmの範囲の砂を吹き付けることで、煩雑な工程を要することなく容易に裏面Sを粗面化することができる。裏面Sの表面粗さRaが0.3μmに満たないと、ロール状にパッケージしたときに研磨面Pとの局所的な粘着を抑制することが難しくなり、反対に、0.7μmを超えると研磨加工時に押圧ローラ46で押圧されることで裏面Sの粗さが研磨面Pに転写されるため好ましくない。すなわち、裏面Sの表面粗さRaを上述した範囲とすることで、研磨加工の安定化と被研磨物の平坦性向上とを両立させることができる。
【0031】
また更に、本実施形態の研磨テープ10では、材質に100%モジュラスが10MPa以下のポリウレタン樹脂が用いられており、湿式成膜法により作製されることで、ウレタンシート2のショアA硬度を3〜20度の範囲とすることができる。従来ショアA硬度が20〜50度の硬質なシートを用いた場合に被研磨物に対するキズ発生等の可能性があったことと比べて、軟質なウレタンシート2を用いることで、被研磨物に対するキズ発生を抑制することができる。これにより、被研磨物、とりわけ、磁気ディスク基板等の鏡面仕上げ加工における高精度な要求品質、つまり平坦性向上を満たすことができる。
【0032】
従来研磨テープでは、例えば、アスカーC硬度が88以上の硬質な発泡ポリウレタン樹脂が用いられている。このため、被研磨物の加工面を平滑にする能力には優れるものの、スラリ中の砥粒(研磨粒子)により加工面に微細なキズを発生させることがある。また、硬質タイプの発泡ポリウレタン樹脂では、独立発泡構造のため、研磨屑やスラリが研磨面に形成された開孔に詰まりやすく、キズ発生を増大させる可能性がある。これに対して、湿式成膜法により形成された連続発泡構造を有するウレタンシートでは、従来の研磨テープと比べて軟質なため、加工面に発生するキズを抑制することができる。しかし、ロール状にパッケージしたときに、基材の裏面とスキン層の表面とが引っ付いてしまうブロッキング現象が発生する。ブロッキング現象が生じると、研磨加工時に研磨テープが波打つように送り出され、送り速度が不安定になるため、研磨加工が安定せず、被研磨物の品質にバラツキが生じ、平坦性等の要求品質を満たすことが難しくなる。本実施形態は、これらの問題を解決することができる研磨テープである。
【0033】
なお、本実施形態では、基材6の裏面Sをサンドブラスト加工で粗面化する例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。裏面Sの表面粗さRaを上述した範囲にすることができる方法であれば、いかなる方法で粗面化するようにしてもよい。また、本実施形態では、基材6の材質として、PETフィルムを例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、PET以外にPE、PP、PVCを用いてもよい。
【0034】
また、本実施形態では、ウレタンシート2の材質として、100%モジュラスが10MPa以下のポリウレタン樹脂製を用いる例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。ポリウレタン樹脂に代えて、例えば、ポリエチレン等の樹脂を用いた研磨テープにも適用することができる。
【0035】
更に、本実施形態では、研磨テープ10の幅を35mmとする例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、被研磨物の大きさにあわせて幅を調整すればよい。また、本実施形態では、研磨テープ10による研磨加工に研磨装置50を用い、被研磨物30の片面を研磨加工する例を示したが、本発明はこれに制限されるものではない。研磨テープを用いる研磨装置であれば本発明を適用した研磨テープ10を使用することができ、例えば、被研磨物30の両面を同時に研磨加工する研磨装置に適用することも可能である。
【実施例】
【0036】
以下、本実施形態に従い製造した研磨テープ10の実施例について説明する。なお、比較のために製造した比較例の研磨テープについても併記する。
【0037】
(実施例1)
実施例1では、ウレタンシート2の作製にポリエステルMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)ポリウレタン樹脂を用いた。得られたウレタンシート2を、表面粗さRaが0.45μmの裏面Sを有するPET製フィルムの基材6の表面と接着剤層5を介して貼り合わせ、幅35mmの長尺状に裁断し研磨テープ10を製造した。接着剤層5の接着剤には、ウレタン系(イソシアネート系)接着剤を使用した。
【0038】
(比較例1)
比較例1では、表面粗さRaが0.21μmの裏面を有するPET基材を使用する以外は実施例1と同様にして研磨テープを製造した。
【0039】
(評価)
得られた実施例1および比較例1の研磨テープをそれぞれ捲芯に捲き重ねてロール状に成形した後、研磨機に取り付け、送り出し動作を比較した。この結果、実施例1の研磨テープ10では一定速度で送り出すことができたのに対し、比較例1の研磨テープではブロッキング現象が発生し、送り出し速度にムラが生じた。このことから、研磨テープ10を用いることで、研磨加工の安定化、被研磨物の平坦性向上が期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は捲回状態から波打つことなく捲き解くことができる研磨テープを提供するものであるため、研磨テープの製造、販売に寄与するので、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0041】
P 研磨面
S 裏面
2 ウレタンシート(樹脂製シート)
2a スキン層(表面層)
3 セル
10 研磨テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿式成膜法により表面層が形成され連続発泡構造を有する帯状の樹脂製シートと、
前記シートの前記表面層と反対側の面に一面が貼り合わされ、他面が粗面化された帯状の樹脂製基材と、
を備え、前記基材の他面側が前記シートの表面層の表面に当接するように捲回されたことを特徴とする研磨テープ。
【請求項2】
前記基材は、前記他面の表面粗さRaが0.3μm〜0.7μmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の研磨テープ。
【請求項3】
前記基材は、前記他面がサンドブラスト加工で粗面化されたことを特徴とする請求項2に記載の研磨テープ。
【請求項4】
前記基材は、少なくともポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートおよびポリビニルクロライドから選択される1種を材質としたことを特徴とする請求項3に記載の研磨テープ。
【請求項5】
前記シートは、100%モジュラスが10MPa以下の材質であることを特徴とする請求項1に記載の研磨テープ。
【請求項6】
前記シートは、ポリウレタン樹脂製であることを特徴とする請求項5に記載の研磨テープ。
【請求項7】
前記シートは、ショアA硬度が3度〜20度の範囲であることを特徴とする請求項6に記載の研磨テープ。

【図1】
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【図2】
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