説明

研磨材

【課題】 高い研削速度を維持しつつ、研削条痕の発生を抑制する。
【解決手段】
金属酸化物を主成分とする対象体を研磨するための研磨材であって、シリカを主成分とする第1の粒状体と、熱可塑性樹脂を主成分とする第2の粒状体と、前記金属酸化物を構成する金属と同じ金属の水酸化物を主成分とする第3の粒状体とを含有し、前記第1の粒状体の平均粒径および前記第2の粒状体の平均粒径に比べて、前記第3の粒状体の平均粒径が大きいことを特徴とする研磨材を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体デバイスの材料基板である半導体ウェハ等の製造においては、基板の表面を高精度に平滑化する研磨工程が実施される。従来、一般的な研磨工程では、例えばシリカ等の砥粒と薬液とを供給しながら、研磨布を用いてポリッシングまたはラッピングを行う湿式研磨工程が実施されていた。かかる湿式研磨では、砥粒と薬液とからなるスラリーを大量に流し続ける必要があり、研磨工程にかかるコストが高く、また、砥粒や薬液など大量の排出物によって自然環境を悪化させてしまうといった課題があった。かかる課題を解決する研磨工程として、砥粒や薬液を用いない、例えば下記特許文献1に記載されているような乾式研磨工程が提案され、実用され始めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−343440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、乾式研磨工程に用いる乾式研磨材の一例が記載されている。特許文献1に記載されている研磨材は、二酸化珪素や酸化セリウムからなる砥粒を研磨布に含ませ、ワニス等の結合材によって、研磨布と砥粒とを結合している。上記特許文献1に記載の乾式研磨材では、砥粒が研磨布に結合されており、湿式研磨のように薬液が砥粒に遊離しておらず、砥粒によって対象体の表面に研削条痕が付き易いといった課題があった。また、薬液のような冷媒が存在していないので、研磨する対象体と研磨材との摩擦によって、対象体と研磨との温度が上昇し易く、安定した研磨状態を維持することが難しいといった課題もあった。本願発明は、かかる課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題を解決するため、本願では、金属酸化物を主成分とする対象体を研磨するための研磨材であって、シリカを主成分とする第1の粒状体と、熱可塑性樹脂を主成分とする第2の粒状体と、前記金属酸化物を構成する金属と同じ金属の水酸化物を主成分とする第3の粒状体とを含有し、前記第1の粒状体の平均粒径および前記第2の粒状体の平均粒径に比べて、前記第3の粒状体の平均粒径が大きいことを特徴とする研磨材を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本願発明によれば、高い研削速度を維持しつつ、研削条痕の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の研磨材の一実施形態を備えて構成された研磨の概略斜視図である。
【図2】(a)は図1に示す研磨材の概略斜視図、(b)は図1に示す研磨材の概略断面図である。
【図3】本発明の研磨ホイールが装着される研磨装置の一実施形態について説明する概略斜視図である。
【図4】図3に示す研磨装置を用いた研磨における、図1に示す研磨材による研磨の状態について説明する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の研磨材について詳細に説明する。図1は、本発明の研磨材11を備えて構成された研磨ホイール10の概略斜視図である。研磨ホイール10は、円環状の基台12と、基台12に貼着固定された研磨材11とを備えて構成されている。基台12は、金属製の円板状体であり、図示しないネジ穴を備えている。研磨材11は、円板形状の部材であり、基台12下側(図1における下側)の主面に貼着固定されている。
【0009】
図2(a)は、研磨材11の概略斜視図、図2(b)は研磨材11の概略断面図である。研磨ホイール10は、例えば図3に示す研磨装置20に装着されて、研磨する対象体である基板Wの研磨に用いられる。図3は、研磨ホイール10が装着された研磨装置20について説明する概略斜視図である。
【0010】
研磨材11は、アルミナ(Al)を主成分とする対象体Wを研磨するための研磨材であって、シリカを主成分とする第1の粒状体31と、ポリスチレンからなる第2の粒状体32と、水酸化アルミニウム(Al(OH))を主成分とする第3の粒状体33とを含有している。
【0011】
第2の粒状体32は、熱可塑性樹脂であれば特に限定されず、ナイロン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等、特に限定されない。第3の粒状体33は、研磨する対象である対象体Wの主成分である金属酸化物を構成する金属と、同じ金属の水酸化物を主成分としていればよく、本実施形態では、第3の粒状体33は、アルミナ(Al)を構成するアルミニウム(Al)の水酸化物である、水酸化アルミニウム(Al(OH))を主成分とする。本発明においては、第3の粒状体は、研磨する対象体の材質に応じて選択すればよい。
【0012】
本実施形態の研磨材11では、第1の粒状体31の平均粒径は2μm、第2の粒状体32の平均粒径は6μm、第3の粒状体33の平均粒径は23μmであり、第1の粒状体31および第2の粒状体32に比べて、第3の粒状体33の平均粒径が最も大きくなっている。本実施形態では、第3の粒状体33の平均粒径は、第1の粒状体31の平均粒径の10倍以上、第2の粒状体32の平均粒径の3倍以上の大きさを有している。第3の粒状体の平均粒径は、第1の粒状体の平均粒径の5倍以上かつ50倍以下であることが好ましい。
【0013】
また、研磨材11では、第1の粒状体31と第2の粒状体32と第3の粒状体33の他に、ポリビニルアルコールからなる結合材を含有している。結合材は、第1の粒状体31、第2の粒状体32、第3の粒状体33のそれぞれの間隙に位置し、第1の粒状体31、第2の粒状体32、第3の粒状体33それぞれと接合している。本実施形態では、結合材としてポリビニルアルコールを用いたが、結合材の材質については、特に限定されない。
【0014】
研磨材11は、不可避不純物以外の含有物として、第1の粒状体31を57質量%、第2の粒状体32を25質量%、第3の粒状体33を5質量%、上述の結合材を13質量%含有している。結合材を除いた、第1の粒状体31と第2の粒状体32と第3の粒状体33とでは、第1の粒状体31と第2の粒状体32と第3の粒状体33との合計の質量(合計質量ともいう)に対する、第1の粒状体31の質量の割合が約65.5質量%、第2の粒状体32の質量の割合が約29質量、第の粒状体33の質量の割合が約6%となっている。
【0015】
また、第1の粒状体は、表面積当たりのシラノール基含有量の平均値が約4μmol/mとなっている。シラノール基の含有量は、第1粒状体の粉末について、カールフィッ
シャー法による測定を行うことで求めることができる。測定は、後述する成型前の第1の粒状体を用いて行うことができる。カールフィッシャー法にてシラノール基濃度を測定するには、水分気化装置に、第1の粒状体31の粉末をセットし、電気ヒーターで加熱しながら脱水処理されたアルゴンガスをキャリアガスとして供給し、微細球状シリカ粉末表面に付着したシラノール基が縮合して揮発した水蒸気を測定器に導き、その水分を測定することによって行われる。
【0016】
研磨ホイール10は、例えば図3に示す研磨装置20に装着されて、研磨する対象体である基板Wの研磨に用いられる。図3は、研磨ホイール10が装着された研磨装置20について説明する概略斜視図である。研磨装置20は、基台22と、基台22の端部に設けられた壁部23と、この壁部23の内側の面に配設された一対のレール24と、レール24に沿って上下動するスライド板25とを備える。スライド25には、駆動手段26が固定されている。また、基台22上には、研磨する対象体を保持するチャックテーブル27が配設されている。
【0017】
駆動手段26は、垂直方向の軸芯を有するスピンドル21と、スピンドル21の先端に装着されたマウンタ28とを備えている。研磨ホイール10は、マウンタ28に装着されており、スピンドル21の回転にともなって研磨ホイール10も回転する構成となっている。
【0018】
研磨装置20によって対象体である基板Wの表面を研磨する際は、基板Wをチャックテーブル27に保持させて駆動手段26の直下に位置付け、スピンドル21を回転させるとともに駆動手段26を下降させて、研磨材11を基板Wの表面に当接させる。スピンドル21の高速回転に伴って研磨ホイール10を構成する研磨材11が基板Wに摺接され、基板Wの表面が研磨材11によって研磨される。研磨装置20は、薬液等を供給する機構は特に備えておらず、研磨の最中、研磨材11と基板Wとの摺接面に薬液を供給しない、いわゆる乾式研磨が行われる。
【0019】
図4は、研磨装置20を用いた研磨における、研磨材11によるウエハW表面の研磨の状態について説明する図である。研磨においては、研磨材11が、スピンドル21によって回転している状態で、ウエハWの表面に摺接される。ウエハWと研磨材11との接触部分では、研磨材11を構成する各粒状体が、ウエハWの表面を機械的に剥ぎ取ることで、ウエハWの表面が削られていく。本実施形態の研磨材11を用いた研磨では、上述の機械的研磨作用のみでなく、ウエハW表面が化学的に変質される。すなわち、研磨材11を用いた研磨では、化学的に変質されたウエハWの表面が、機械的に削られていく、いわゆる化学的機械研磨が行われる。通常、今までの化学的機械研磨は、研磨する対象体の表面に薬液を供給しつつ研磨を行う、湿式研磨によって行われてきた。本実施形態では、研磨の最中に、ウエハWの表面に研磨用の薬液を供給しない乾式研磨でありながら、研磨対象の表面を化学的に変質させながら、対象体の表面を削っていく。
【0020】
研磨材11によって対象体が研磨されるメカニズム次のように推測される。ウエハWの化学的変質は、第1の粒状体31のシリカ(SiO)と、基板Wのアルミナ(Al)とが反応して、ガラス化することで進行していく。研磨の際、研磨材11と基板Wとの摩擦によって多くの熱が発生し、基板Wは比較的高温となる。この熱によってシリカとアルミナとが化学的に活性化され、シリカとアルミナとが反応し、ケイ素原子(Si)とアルミニウム(Al)原子とが酸素原子(O)を共有する、アルミナシリケートガラスからなる変質層41が基板Wの表面に形成されていく。この変質層41は、通常のアルミナ(Al)に比べて、各構成原子同士の結合力が弱く、研磨材11による機械的作用によって比較的容易に削り取られやすい。金属酸化物を含む対象体を、シリカからなる第1の粒子を含んで構成された研磨体を用いて研磨することで、金属原子を取り込んだシリ
ケートガラス層が形成され、高い研磨速度で効率よく研磨することが可能となっている。
【0021】
研磨の際に発生するこの熱によって、基板Wとの接触部分に位置する、熱可塑性樹脂からなる第2の粒状体32は溶融し、基板Wとの接触部分に拡がる。この第2の粒状体32の溶融物が、研磨材11と基板Wとの接触部分に拡がることで、研磨材11の基板Wとの滑り抵抗が低減され、早い研磨速度で効率的に研磨を実行することが可能となる。第2の粒状体32の、溶融した後の樹脂成分は基板Wの表面で更に加熱されて最終的に蒸発し、基板Wの表面に殆ど残留することはない。また、基板W表面に僅かに残留した第2の粒状体32の成分も、最終的には、研磨材11の主に第1の粒状体31によって削り取られる。また、第2の粒状体32が、研磨材11と基板Wとの接触部分において、溶融・蒸発にともなって熱エネルギーを吸収することで、研磨材11と基板Wの温度とが必要以上に上昇することが抑制される。研磨材11と基板Wとの接触部分の温度が上昇し過ぎると、接触部分で、シリカからなる第1の粒子31の成分の焼け付き等の不具合が起こる場合があるが、本実施形態では、このような過度の温度上昇に起因した不具合が抑制されている。
【0022】
第3の粒子33は、摩擦によって温度が上昇した基板Wの表面と接触し、基板Wの酸化アルミニウムと反応する。具体的に、第3の粒子33のOH基と、基板Wの酸化アルミニウムの酸素(O)とが重合して水分子となる、水和反応が生じる。この水和反応にともなう吸熱、および、水分子が気化することによる吸熱によって、研磨材11と基板Wとの接触部分における、過度の温度上昇が抑制される。また、この水和反応によって、酸化アルミニウムから酸素原子が脱離されるので、基板Wのアルミニウム(Al)原子が、第1の粒状体31のシリカに取り込まれ易い。第3の粒状体33を備えることで、基板Wを研磨材11によって効率的に研磨することができる。第3の粒状体33を含有することで、上述のように基板Wを効率的に研磨することができる。
【0023】
なお、水酸化アルミニウムからなる第3の粒状体33は硬度が比較的高いので、第1の粒状体31および第2の粒状体32が充分な密度で配置された状態で、仮に、第3の粒状体33のみが研磨材11から脱落した場合、研磨材11と基板Wとの間隙にこぼれた第3の粒状体33が、研磨材11によって基板11に擦り付けられる状態となる。この場合、第3の粒状体33によって、基板Wの表面に傷が付いてしまうこともある。本実施形態では第1の粒状体31の平均粒径は2μm、第2の粒状体32の平均粒径は6μm、第3の粒状体33の平均粒径は23μmであり、第1の粒状体31および第2の粒状体32に比べて、第3の粒状体33の平均粒径が最も大きくなっている。このため、第3の粒状体33の周囲は、比較的径が小さい第1の粒状体31と第2の粒状体32とによって全体的に囲まれて比較的強固に保持される。第1の粒状体31と第2の粒状体32とに比べて第3の粒状体33が大きいことで、第3の粒状体による基板W表面の脱酸素反応が効率的に進行するとともに、第3の粒状体33の研磨材11からの脱落が抑制され、研磨における傷の発生を低減することができる。
【0024】
本実施形態では、第3の粒状体33の平均粒径は、第1の粒状体31の平均粒径の10倍以上、第2の粒状体32の平均粒径の3倍以上の大きさを有している。第1の粒状体31が充分に小さいので、図4(a)に示すように、第3の粒状体33の基板W側の表面部分の全体にわたって、第1の粒状体31が覆うことができる。基体W側を覆った第1の粒状体31によって、第3の粒状体33の研磨材11からの脱落は、より確実に抑制される。なお、研磨の進行とともに、図4(a)から図4(b)に示すように、第3の粒状体33の摩耗が進行して第3の粒状体33が小さく、かつ薄くなると、最終的に図4(c)に示すように第3の粒状体33が脱落する。充分に小さくかつ薄くなった第3の粒状体33は、研磨材11と基板Wとの間隙に挟まった場合でも、比較的容易に研磨材11から脱落していく第1の粒状体31等とともに研磨屑として、研磨材11と基板Wとの間隙から容易に排除される。また、すぐに排除されなかった場合でも、充分に小さくかつ薄くなった第3
の粒状体33は、短時間のうちに基板Wと反応し間隙から消失してしまう。本実施形態では、第3の粒状体33に起因した大きな傷が、基板Wに発生し難くされている。
【0025】
また、本実施形態では、第1の粒状体33の表面積当たりシラノール基含有量の平均値が、約4μmol/mとされている。シリカ粒子の集合体において、シリカ粒子を比較的強固に結合させるには、通常、シリカ粒子に圧力をかけて成型した後、全体を比較的高い温度に昇温させるアニール工程を実施している。このアニール工程では、シリカ粒子の表面のシラノール基が重合した後に、重合で生成された水分が蒸発するので、シリカ粒子の表面には、シラノール基は殆ど残っていない。本実施形態では、シリカ粒子の表面に比較的多くのシラノール基が存在しており、研磨における摩擦熱によって、これらシラノール基が重合して蒸発する。この重合におけるエネルギーの吸収と、重合によって生成した水分の気化エネルギーの吸収により、基板Wと研磨材11との摺接部分における温度上昇が抑制される。また、シラノール基におけるOH基と、基板Wの酸化アルミニウムの酸素(O)とが重合して水分子となる、水和反応が生じる。この水和反応にともなう吸熱、および、水分子が気化することによる吸熱によって、研磨材11と基板Wとの接触部分における過度の温度上昇が、さらに抑制される。第1の粒状体の、表面積当たりのシラノール基含有量の平均値は、2μmol/m以上かつ5μmol/m以下であることが好ましい。
【0026】
本実施形態の研磨材11は、第1の粒状体31と第2の粒状体32と第3の粒状体33との合計の質量(合計質量ともいう)に対する、第2の粒状体32の質量の割合が約29質量%とされている。第2の粒状体の質量の割合がより大きいほど、研磨材11の耐摩耗性は向上し、研磨における研磨材11の減少量は小さくなるので、長い期間にわたって安定した研磨特性を維持することができる。一方、第2の粒状体の質量の割合がより小さいほど、研磨材11を構成する粒状体同士の結合力は小さくなり、研磨材の粒状体による対象体の表面の損傷が少なくなる。対象体の表面の損傷を、充分に小さいレベルに抑制しつつ、複数回にわたって使用可能な十分な対摩耗性を維持するには、第1の粒状体と第2の粒状体と第3の粒状体との合計質量に対する、第2の粒状体の質量の割合は、10質量%以上かつ40質量%以下であることが好ましい。
【0027】
また、本実施形態の研磨材11は、第1の粒状体31と第2の粒状体32と第3の粒状体33との合計の質量(合計質量ともいう)に対する、第3の粒状体33の質量の割合が約6質量%とされている。第3の粒状体の質量の割合がより大きいほど、水和反応および水分の気化にともなう温度低減の効果が小さくなる。一方、第3の粒状体33の質量の割合がより小さいほど、硬度が比較的高い粒状体33による基板W表面での傷の発生が少なくなる。対象体の表面の損傷を、充分に小さいレベルに抑制しつつ、充分な基板冷却の効果を得るためには、第1の粒状体と第2の粒状体と第3の粒状体との合計質量に対する、第3の粒状体の質量の割合は、3質量%以上かつ10質量%以下であることが好ましい。
【0028】
本実施形態の研磨材11は、各粒状体の粉末を混合し、圧力をかけて成型することで作製することができる。具体的には、まず、平均結晶粒径が約2μmのシリカからなる第1粉体と、平均結晶粒径が約6μmのポリスチレンからなる第2粉体と、平均結晶粒径が約23μmの水酸化アルミニウムからなる第3粉体と、結合材であるポリビニルアルコール(PVA)粒子とを混合する。各粉体を混合させる際、第1粉体と第2粉体と第3粉体と結合材とからなる合計の質量に対し、第1粉体が57質量%、第2粉体が25%、第3粉体が5質量%、結合材が13質量%となるよう、各粉体は混合されている。混合体において、結合材を除いた、第1粉体と第2粉体と第3粉体との合計の質量(合計質量ともいう)に対する、第1粉体の質量の割合が約67質量%、第2粉体の質量の割合が約29質量、第3粉体の質量の割合が約6%となっている。
【0029】
この混合体を、冷間プレス機に配置し、対象体Wとの摺接面に対応する面と垂直な方向に、約1000kg重の荷重をかけて加圧成型する。加圧の直前および加圧直後においては、特別なアニールを実施せず、機械的な圧力のみによって、各粉体を構成する粒状体同士が結合する。このようにして、例えば直径25mmかつ厚さ7mmの円板状の、本実施形態の研磨材11を得ることができる。
【0030】
本実施形態の研磨材11を備える研磨ホイール10を用い、研磨装置20において、アルミナからなる対象基板Wの研磨を行えば、比較的高い研削速度で、研削条痕の発生を抑制しながら、対象基板Wを研磨することができる。
【0031】
以上、本発明の研磨材について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良および変更を行ってもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0032】
10 研磨ホイール
11 研磨材
12 基台
20 研磨装置
31 第1の粒状体
32 第2の粒状体
33 第3の粒状体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物を主成分とする対象体を研磨するための研磨材であって、
シリカを主成分とする第1の粒状体と、熱可塑性樹脂を主成分とする第2の粒状体と、前記金属酸化物を構成する金属と同じ金属の水酸化物を主成分とする第3の粒状体とを含有し、
前記第1の粒状体の平均粒径および前記第2の粒状体の平均粒径に比べて、前記第3の粒状体の平均粒径が大きいことを特徴とする研磨材。
【請求項2】
前記金属酸化物を構成する金属が、アルミニウムであることを特徴とする請求項1に記載の研磨材
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂が、ポリスチレンであることを特徴とする請求項1または2に記載の研磨材。
【請求項4】
シリカを主成分とする第1の粒状体と、熱可塑性樹脂を主成分とする第2の粒状体と、水酸化アルミニウムを主成分とする第3の粒状体とを含有し、
前記第1の粒状体の平均粒径および前記第2の粒状体の平均粒径に比べて、前記第3の粒状体の平均粒径が大きいことを特徴とする研磨材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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