説明

砥石成形方法および研削盤

【課題】砥石成形工程中においても使用可能な砥粒突出し量測定方法を備えた砥石成形方法および研削盤を提供する。
【解決手段】メタルボンド砥石車のツルーイング後に、成形面fから鉛直方向にd離離れた静電容量センサと所定成形面間の静電容量である第1静電容量Ctと、成形面fから鉛直方向にd離れた静電容量測定装置と所定成形面f間の静電容量である第2静電容量Ctを測定する。ドレッシング後に、所定成形面fの位置から鉛直方向にd離れた静電容量測定装置と所定成形面f間の静電容量である第3静電容量Cdと、所定成形面fから鉛直方向にd離れた静電容量測定装置と所定成形面f間の静電容量である第4静電容量Cdを測定する。ドレッシング後の砥粒突出し量hを、式h=((Ct−Cd)・d−(Ct−Cd)・d)/((Ct−Cd)・d−(Ct−Cd)・d)で算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砥石車の砥石成形方法および研削盤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
研削においては、砥石車の砥粒のボンド層からの突出し量により研削性能が大きく変化する。このため、砥石成形工程において適正な砥粒の突出し量を設定するために砥粒の突出し量の測定が行われている。砥粒突出し量の測定方法として、触針式表面粗さ計により砥石車表面の複数の部位を走査して凹凸を測定し、その平均値から求めることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−302830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
触針式表面粗さ計を用いた砥粒突出し量測定方法では、複数の走査測定と平均値演算が必要で、測定に10分以上を要するため、砥石成形工程内で砥粒突出し量を実測しながら砥石成形することはサイクルタイムの観点から困難である。そのため、あらかじめ実測したドレッシング量と砥粒突出し量の関係を用いて、ドレッシング量から砥粒突出し量を推定して砥石成形を行っている。この場合、砥石車やドレッシング工具の品質のばらつきに起因する砥粒突出し量のばらつきが生じ、最適な研削が実現できない恐れがある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、短時間に砥石車の砥粒突出し量を測定可能とすることで、砥石成形工程中においても使用可能な砥粒突出し量測定方法を備えた砥石成形方法および研削盤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の特徴は、メタルボンド砥石車の成形面をツルーイングするツルーイング工程と、
前記ツルーイング工程の終了後に、前記成形面の所定部位である所定成形面から鉛直方向に第1の所定距離d離れた静電容量センサと前記所定成形面間の静電容量である第1静電容量Ctと、前記所定成形面から鉛直方向に第2の所定距離d離れた前記静電容量センサと前記所定成形面間の静電容量である第2静電容量Ctを測定するツルーイング後静電容量測定工程と、
前記成形面をドレッシングするドレッシング工程と、
前記ドレッシング工程の終了後に、前記所定成形面の位置から鉛直方向に第1の所定距離d離れた前記静電容量センサと前記所定成形面間の静電容量である第3静電容量Cdと、前記所定成形面の位置から鉛直方向に第2の所定距離d離れた前記静電容量センサと前記所定成形面間の静電容量である第4静電容量Cdを測定するドレッシング後静電容量測定工程と、
前記ドレッシング後の砥粒突出し量hを、式h=((Ct−Cd)・d−(Ct−Cd)・d)/((Ct−Cd)・d−(Ct−Cd)・d)で算出する砥粒突出し量算出工程と、
前記砥粒突出し量hが設定値を超えたか否かを判定する判定工程と、を備え
前記砥粒突出し量hが前記設定値を超えるまで前記ドレッシング工程と前記ドレッシング後静電容量測定工程と前記砥粒突出し量算出工程と前記判定工程を繰り返すことである。
【0006】
請求項2に係る発明の特徴は、回転駆動されるメタルボンド砥石車と、
ツルーイングロールを保持して回転するツルーイング装置と、
ドレッシング工具を保持するドレッシング装置と、
前記砥石車の成形面と静電容量センサ間の静電容量を測定する静電容量測定装置と、
前記ツルーイング装置、前記ドレッシング装置および前記静電容量測定装置に対して前記メタルボンド砥石車を、前記メタルボンド砥石車の幅方向に相対的にトラバース送りするトラバース送り装置と、
前記ツルーイング装置、前記ドレッシング装置および前記静電容量測定装置に対して前記メタルボンド砥石車を、前記メタルボンド砥石車の径方向に相対的に切込み送りする切込み送り装置と、
ツルーイングを行い前記メタルボンド砥石車に成形面を成形するべく、前記ツルーイング装置と前記トラバース送り装置と前記切込み送り装置を制御し、
ツルーイング後の前記成形面の所定部位である所定成形面から鉛直方向に第1の所定距離d離れた静電容量センサと前記所定成形面間の静電容量である第1静電容量Ctと、前記所定成形面から鉛直方向に第2の所定距離d離れた前記静電容量センサと前記所定成形面間の静電容量である第2静電容量Ctを測定するべく、前記静電容量測定装置と前記トラバース送り装置と前記切込み送り装置を制御し、
前記メタルボンド砥石車をドレッシングするべく、前記ドレッシング装置と前記トラバース送り装置と前記切込み送り装置を制御し、
前記ドレッシング後の前記所定成形面の位置から鉛直方向に第1の所定距離d離れた静電容量センサと前記所定成形面間の静電容量である第3静電容量Cdと、前記所定成形面の位置から鉛直方向に第2の所定距離d離れた前記静電容量センサと前記所定成形面間の静電容量である第4静電容量Cdを測定するべく、前記静電容量測定装置と前記トラバース送り装置と前記切込み送り装置を制御し、
前記ドレッシング後の砥粒突出し量hを、式h=((Ct−Cd)・d−(Ct−Cd)・d)/((Ct−Cd)・d−(Ct−Cd)・d)で算出し、
前記砥粒突出し量が設定値を超えたか否かを判定し、
前記砥粒突出し量が前記設定値を超えるまで、前記ドレッシングと前記第3静電容量Cdと前記第4静電容量Cdの測定と、前記ドレッシング後の砥粒突出し量hの算出と、前記砥粒突出し量hが設定値を超えたか否かの判定とを繰り返すべく、前記ドレッシング装置と、前記トラバース送り装置と、前記切込み送り装置と、前記静電容量測定装置を制御する制御装置と、を備えることである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明によれば、ドレッシング後の砥粒の突き出し量を短時間に正確に測定することができ、正確な砥粒突き出し量を備えた砥石車を短時間に成形できる砥石成形方法を提供できる。
【0008】
請求項2に係る発明によれば、ドレッシング後の砥粒の突き出し量を短時間に正確に測定することができるので、砥石成形時間が短く稼働率の低下が少ない研削盤を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態の研削盤の全体構成を示す概略図である。
【図2】図1のA矢視図である。
【図3】図2のB矢視図である。
【図4】本実施形態の静電容量測定の概略図である。
【図5】本実施形態の砥石成形面の状態を示す図である。
【図6】本実施形態のツルーイング後の静電容量測定を示すモデル図である。
【図7】図6のC矢視図ある。
【図8】本実施形態のドレッシング後の静電容量測定を示すモデル図である。
【図9】本実施形態の砥石成形工程を示すフローチャート図である。
【図10】本実施形態のツルーイング工程を示すフローチャート図である。
【図11】本実施形態のツルーイング工程を示す図である。
【図12】本実施形態のツルーイング後静電容量を測定する工程を示すフローチャート図である。
【図13】本実施形態のドレッシング工程を示すフローチャート図である。
【図14】本実施形態のドレッシング工程を示す図である。
【図15】本実施形態のドレッシング後静電容量を測定する工程を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の砥石成形工程の実施形態を円筒研削盤の実施事例に基づき、図1〜図15を参照しつつ説明する。
図1および図2に示すように、研削盤1は、ベッド2を備え、ベッド2上にX軸方向に往復可能な砥石台3と、X軸に直交するZ軸方向に往復可能なテーブル4を備えている。砥石台3は砥石車7を油静圧軸受(図示省略する)で回転自在に支持し、砥石車7を回転させる砥石軸モータ(図示省略する)と砥石車7の回転位相を計測する位相検出器13を備えている。砥石車7は金属製のコアの外周にメタルボンドの砥石層を備えた構造のコア型砥石車である。
テーブル4上には、工作物Wの一端を把持して回転自在に支持し主軸モータ(図示省略する)により回転駆動される主軸5と、工作物Wの他端を回転自在に支持する心押台6を備えており、工作物Wは主軸5と心押台6により支持されて、研削加工時に回転駆動される。砥石成形モータ11により回転駆動されるツルーイングロール8とドレッシングロール9を回転自在に支持したツルーイング・ドレッシング装置10が、主軸5に付設されている。心押台6の砥石車7に対向する側面には静電容量測定装置12が設置されている。
【0011】
この研削盤1は、制御装置30を備えており、制御装置30の機能的構成として、砥石台3の送りを制御するX軸制御手段301、テーブル4の送りを制御するZ軸制御手段302、ツルーイング・ドレッシング装置10を制御するツルーイング・ドレッシング制御手段303、砥石車7の回転を制御する砥石車制御手段304、静電容量測定装置12を制御する静電容量測定装置制御手段305、砥粒の突出し量を演算する突出し量演算手段306などを具備している。
【0012】
図2、図3に示すように、静電容量測定装置12は本体121、静電容量センサ122、砥石車7の側面に接触し通電する接触子123を備えている。静電容量の測定は図4に示すように、静電容量センサ122と砥石車7の表面で略平行平板を構成し、接触子123を砥石車7の側面に接触させることで静電容量測定装置制御手段305に内蔵したRC直列回路等の静電容量測定回路により砥石車7と静電容量センサ122間の静電容量を測定する。測定した静電容量の値を突出し量演算手段に出力する。ここで、砥石車7は電気的に絶縁されている必要があるが、本研削盤1では砥石車7の支持に油静圧軸受を用いることで絶縁をしている。
【0013】
研削盤1を用いたツルーイングとドレッシングにより砥石成形を行い、所望の砥粒突出し量を備えた砥石車7を成形する砥石成形方法について図5〜図15に基づき説明する。
はじめに、砥粒突出し量と、砥粒突出し量測定の原理を説明する。ツルーイング後の砥石車の表面は図5(a)に示すようにボンド層72と砥粒71が同一高さの成形面fとなっている。この成形面fをドレッシングすると図5(b)に示すようにボンド層72が除去されボンド層72の表面gが成形面fの位置から下がる。結果として、砥粒71がボンド層72の表面gから突出した形となり、この突出し量を砥粒突出し量と称し、研削性能に大きな影響を与えるので所望の量に成形することが重要である。
【0014】
次に、砥粒突出し量の測定方法について説明する。図6に示すように、砥石車7の成形面fと静電容量センサ122間の静電容量は、導体であるボンド層72と静電容量センサ122間に、誘電率の異なる空気と砥粒71が混在するモデルで算出できる。図6、図7に示すツルーイング後の成形面fと静電容量センサ122の簡略化したモデルにおいて、静電容量センサ122と成形面fを距離dを隔て平行に配置し、静電容量センサ122の成形面に対向する面の面積をAとする。成形面fにおける静電容量センサ122に対向する範囲に含まれ、成形面fに露出した砥粒を71a、71bとする。簡略化するため砥粒71a、71bは直方体であるとし、砥粒71aの成形面fにおける面積をAa、深さをLaとし、砥粒71bの成形面fにおける面積をAb、深さをLbとする。
【0015】
このモデルにおける静電容量Ctは空気を介した静電容量センサ122とボンド層72間の静電容量Cbtと、空気と砥粒を介した静電容量センサ122とボンド層72間の静電容量Cgtの和となる。Cbtは知られているように空気の誘電率をεaとすると、Cbt=εa・(A−Aa−Ab)/dとなる。砥粒を介した部分の静電容量Cgtは砥粒71aの部分の静電容量Cgtaと砥粒71bの部分の静電容量Cgtbの和となり、Cgt=Cgta+Cgtbとなる。以上より、ツルーイング後の静電容量CtはCt=Cbt+Cgt=εa・(A−Aa−Ab)/d+Cgtとなる。
【0016】
次に、図8に示すように、静電容量センサ122と砥石車7の相対位置を静電容量Ct測定時と同一とした(静電容量センサ122と成形面fの位置との距離がdである)ドレッシング後の砥石車7の同一部位の静電容量を測定する。ドレッシングにより除去されたボンド層72の深さをhとすると、空気を介した静電容量センサ122とボンド層72間の静電容量CbdはCbd=εa・(A−Aa−Ab)/(d+h)となる。砥粒を介した部分の静電容量Cgdは砥粒がほとんど消耗しないためツルーイング後と同一の値となり、Cgd=Cgtとなる。ドレッシング後の静電容量CdはCd=Cbd+Cgt=εa・(A−Aa−Ab)/(d+h)+Cgtとなる。
ここで、CtからCdを差し引くとCt−Cd=εa・(A−Aa−Ab)・(1/d−1/(d+h))となる。
静電容量センサ122と成形面fの距離をdとして同様の操作を行えば式Ct−Cd=εa・(A−Aa−Ab)・(1/d−1/(d+h))が成り立つ。
【0017】
式Ct−Cd=εa・(A−Aa−Ab)・(1/d−1/(d+h))と式Ct−Cd=εa・(A−Aa−Ab)・(1/d−1/(d+h))をhについて連立方程式として解くと、h=((Ct−Cd)・d−(Ct−Cd)・d)/((Ct−Cd)・d)−(Ct−Cd)・d)となる。ここで、Ct、Cd、Ct、Cdの値は砥石車7の成形面fと静電容量センサ122間の静電容量として測定可能で、d、dは静電容量測定時に任意の距離を設定可能である。以上によりドレッシングによるボンド層の除去深さ(砥粒のボンド層からの突出し量)hを測定することが可能となる。
【0018】
具体的な砥石成形方法を図9のメイン工程のフローチャートに基づき説明する。
はじめに、砥石車7を回転させる(S1)。テーブル4をツルーイング開始位置Zへ移動させる(S2)。ツルーイングのサブプログラムに基づきツルーイングサイクル(後で詳細を説明)を実施する(S3)。砥石車7を所定の回転位相で停止させる(S4)。テーブル4を静電容量測定位置Zへ移動させる(S5)。ツルーイング後静電容量測定のサブプログラムに基づきツルーイング後静電容量測定サイクル(後で詳細を説明)を実施し、静電容量センサ122と成形面fの距離d、dにおけるツルーイング後静電容量Ct、Ctを測定し、突出し量演算手段306に記録する(S6)。砥石車7を回転させる(S7)。テーブル4をドレッシング開始位置Zへ移動させる(S8)。ドレッシングのサブプログラムに基づきドレッシングサイクル(後で詳細を説明)を実施する(S9)。砥石車7を所定の回転位相で停止させる(S10)。テーブル4を静電容量測定位置Zへ移動させる(S11)。ドレッシング後静電容量測定のサブプログラムに基づきドレッシング後静電容量測定サイクル(後で詳細を説明)を実施し、静電容量センサ122と成形面fの位置の距離d、dにおけるドレッシング後静電容量Cd、Cdを測定し、突出し量演算手段306に記録する(S12)。砥粒突出し量hを式h=((Ct−Cd)・d−(Ct−Cd)・d)/((Ct−Cd)・d−(Ct−Cd)・d)を用いて突出し量演算手段306で演算する(S13)。砥粒突出し量hが所望値k以上か否かを判定する。h≧kであれば砥石成形を終了し、そうでなければステップS7へ移動しドレッシングを繰り返す(S14)。
【0019】
ツルーイングサイクルは従来から行われている方法を用いればよい、回転するツルーイングロール8をトラバースしてツルーイングする例について図10のフローチャートと図11に基づき説明する。
はじめに、ツルーイングロール8を回転させる(S20)。砥石台3を速送りで砥石車7がツルーイングロールに接近するまで前進させる(S21)。図11に示すように、砥石台3をXだけ前進させる(S22)。砥石車7がツルーイングロール8に接触したか否かを判定する。接触検知していればステップS24へ移動し、していなければステップS22へ移動する。接触検知は接触時にツルーイングロール8に発生する振動をAEセンサ(図示せず)で検出することで行う(S23)。図11に示すように、テーブル4を左進しツルーイングロール8と砥石車7が離れる位置Zbに位置決めする。図11では砥石車7とツルーイングロール8の相対運動を、ツルーイングロール8が静止して砥石車7のみが運動すると仮定して示してある(S24)。砥石台3をXだけ前進させツルーイングロール8を砥石車7に切込む(S25)。図11に示すように、テーブル4を右進しツルーイングをしながらツルーイングロール8と砥石車7が離れる位置Zcに位置決めする(S26)。砥石台3をXだけ前進させツルーイングロール8を砥石車7に切込む(S27)。テーブル4を左進しツルーイングをしながらZbに位置決めする(S28)。砥石台3の砥石成形源位置Xを変更する。X=X−2X−nXを実施する。ここで、nは接触検知送りの実施回数である(S29)。砥石台3を速送りで砥石成形源位置Xへ後退させる(S30)。ツルーイングロール8の回転を停止させる(S31)。
【0020】
ツルーイング後静電容量測定サイクルについて図12のフローチャートと図6に基づき説明する。
はじめに、図6に示すように、砥石台3を速送りで砥石車7の成形面fと静電容量センサ122の距離がdとなるまで前進させる。ここで、テーブル4は静電容量センサ122の全幅が砥石車7に対向する静電容量測定位置Zへ位置決めされている(S40)。ツルーイング後第1静電容量Ctを静電容量センサ制御手段305で測定し、突出し量演算手段306に記録する(S41)。砥石台3をX3後退させ、図6に示すように成形面fと静電容量センサ122の距離をdとする(S42)。ツルーイング後第2静電容量Ctを静電容量センサ制御手段305で測定し、突出し量演算手段306に記録する(S43)。砥石台3を速送りで砥石成形源位置Xへ後退させる(S44)。
【0021】
ドレッシングサイクルも従来から行われている方法を用いればよい、砥石車7より幅の広い回転するドレッシングロール9に砥石車7を切込みドレッシングする例について図13のフローチャートと図14に基づき説明する。
はじめに、ドレッシングロール9を回転させる(S50)。図14に示すように、砥石台3を速送りで砥石車7がドレッシングロール9に接近するまでX前進させる。ここで、テーブル4は砥石車7の全幅がドレッシングロール9に接触するドレッシング開始位置Zへ位置決めされている(S51)。砥石台3を速度VでXだけ前進させる(S52)。砥石台前進量XをX=X+Xにより変更する(S53)。砥石台3を速送りで砥石成形源位置Xへ後退させる(S55)。ドレッシングロール9の回転を停止させる(S56)。
【0022】
ドレッシング後静電容量測定サイクルについて図15のフローチャートと図8に基づき説明する。
はじめに、図8に示すように、砥石台3を速送りで砥石車7の成形面fの位置と静電容量センサ122の距離がdとなるまで前進させる。ここで、テーブル4は静電容量センサ122の全幅が砥石車7に対向する静電容量測定位置Zへ位置決めされている(S60)。ドレッシング後第1静電容量Cdを静電容量センサ制御手段305で測定し、突出し量演算手段306に記録する(S61)。砥石台3をX3後退させ、図8に示すように成形面fの位置と静電容量センサ122の距離をdとする(S62)。ドレッシング後第2静電容量Cdを静電容量センサ制御手段305で測定し、突出し量演算手段306に記録する(S63)。砥石台3を速送りで砥石成形源位置Xへ後退させる(S64)。
【0023】
以上のように、本発明によれば砥石成形工程中に砥粒突出し量を短時間に測定しながら所望の最適な砥粒突出し量に到達したときに砥石成形を終了することができる。最短時間で最適な砥粒突出し量を備えた砥石車7を成形できるので、研削能率の高い研削盤1を実現できる。
【0024】
上記の事例では、砥石車7の絶縁保持を油静圧軸受により実現したが、転がり軸受を用いる場合は砥石車7の装着部に絶縁性のブッシュを備えてもよい。
また、静電容量の測定を1箇所のみで行って砥粒突出し量を算出した事例で説明したが、複数の箇所において静電容量を測定して砥粒突出し量を算出しそれを平均した値を用いてドレッシング量を制御してもよい。
【符号の説明】
【0025】
W:工作物 4:テーブル 7:砥石車 8:ツルーイングロール 9:ドレッシングロール 10:ツルーイング・ドレッシング装置 12:静電容量センサ 13:位相検出器 30:制御装置 301:X軸制御手段 302:Z軸制御手段 303:ツルーイング・ドレッシング制御手段 304:砥石車制御手段 305:静電容量センサ制御手段 306:突出し量演算手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタルボンド砥石車の成形面をツルーイングするツルーイング工程と、
前記ツルーイング工程の終了後に、前記成形面の所定部位である所定成形面から鉛直方向に第1の所定距離d離れた静電容量センサと前記所定成形面間の静電容量である第1静電容量Ctと、前記所定成形面から鉛直方向に第2の所定距離d離れた前記静電容量センサと前記所定成形面間の静電容量である第2静電容量Ctを測定するツルーイング後静電容量測定工程と、
前記成形面をドレッシングするドレッシング工程と、
前記ドレッシング工程の終了後に、前記所定成形面の位置から鉛直方向に第1の所定距離d離れた前記静電容量センサと前記所定成形面間の静電容量である第3静電容量Cdと、前記所定成形面の位置から鉛直方向に第2の所定距離d離れた前記静電容量センサと前記所定成形面間の静電容量である第4静電容量Cdを測定するドレッシング後静電容量測定工程と、
前記ドレッシング後の砥粒突出し量hを、式h=((Ct−Cd)・d−(Ct−Cd)・d)/((Ct−Cd)・d−(Ct−Cd)・d)で算出する砥粒突出し量算出工程と、
前記砥粒突出し量hが設定値を超えたか否かを判定する判定工程と、を備え
前記砥粒突出し量hが前記設定値を超えるまで前記ドレッシング工程と前記ドレッシング後静電容量測定工程と前記砥粒突出し量算出工程と前記判定工程を繰り返す砥石成形方法。
【請求項2】
回転駆動されるメタルボンド砥石車と、
ツルーイングロールを保持して回転するツルーイング装置と、
ドレッシング工具を保持するドレッシング装置と、
前記砥石車の成形面と静電容量センサ間の静電容量を測定する静電容量測定装置と、
前記ツルーイング装置、前記ドレッシング装置および前記静電容量測定装置に対して前記メタルボンド砥石車を、前記メタルボンド砥石車の幅方向に相対的にトラバース送りするトラバース送り装置と、
前記ツルーイング装置、前記ドレッシング装置および前記静電容量測定装置に対して前記メタルボンド砥石車を、前記メタルボンド砥石車の径方向に相対的に切込み送りする切込み送り装置と、
ツルーイングを行い前記メタルボンド砥石車に成形面を成形するべく、前記ツルーイング装置と前記トラバース送り装置と前記切込み送り装置を制御し、
ツルーイング後の前記成形面の所定部位である所定成形面から鉛直方向に第1の所定距離d離れた静電容量センサと前記所定成形面間の静電容量である第1静電容量Ctと、前記所定成形面から鉛直方向に第2の所定距離d離れた前記静電容量センサと前記所定成形面間の静電容量である第2静電容量Ctを測定するべく、前記静電容量測定装置と前記トラバース送り装置と前記切込み送り装置を制御し、
前記メタルボンド砥石車をドレッシングするべく、前記ドレッシング装置と前記トラバース送り装置と前記切込み送り装置を制御し、
前記ドレッシング後の前記所定成形面の位置から鉛直方向に第1の所定距離d離れた静電容量センサと前記所定成形面間の静電容量である第3静電容量Cdと、前記所定成形面の位置から鉛直方向に第2の所定距離d離れた前記静電容量センサと前記所定成形面間の静電容量である第4静電容量Cdを測定するべく、前記静電容量測定装置と前記トラバース送り装置と前記切込み送り装置を制御し、
前記ドレッシング後の砥粒突出し量hを、式h=((Ct−Cd)・d−(Ct−Cd)・d)/((Ct−Cd)・d−(Ct−Cd)・d)で算出し、
前記砥粒突出し量が設定値を超えたか否かを判定し、
前記砥粒突出し量が前記設定値を超えるまで、前記ドレッシングと前記第3静電容量Cdと前記第4静電容量Cdの測定と、前記ドレッシング後の砥粒突出し量hの算出と、前記砥粒突出し量hが設定値を超えたか否かの判定とを繰り返すべく、前記ドレッシング装置と、前記トラバース送り装置と、前記切込み送り装置と、前記静電容量測定装置を制御する制御装置と、を備える研削盤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2013−71205(P2013−71205A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212358(P2011−212358)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】