説明

硝酸の製造でN2Oを除去する方法

触媒活性材料で被覆された三次元構造物を含む触媒を使用して、硝酸の製造でN2Oを除去した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元被覆物を使用して硝酸の製造でN2Oを除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばオストヴァルト法(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5th edition, vlume A17,293〜339頁(1991))により、硝酸を工業的に大規模で製造する場合、貴金属触媒上においてアンモニアを酸素で燃焼させると、一酸化窒素及び二酸化窒素(又は四酸化二窒素)を形成するだけでなく、通常、N2O(亜酸化窒素、一酸化二窒素)も副生成物として形成する。形成された他の窒素酸化物と異なり、N2Oは吸収工程において水に吸収されない。温室効果ガスであるN2Oを除去する工程がなければ、N2Oは排ガス中に流出する。
【0003】
特許文献1(US−A−5478549)には、オストヴァルト法により硝酸製品を製造する方法が開示されているが、この方法では、後酸化ガス流(post-oxidation gas stream)を600℃又はそれ以上の温度で、貴金属回収ネットの下側に配置された、円筒ペレットの形の酸化ジルコニウムの触媒床上を通過させることによりN2O含有量を低減させている。
【0004】
特許文献2(DE−A−19805202)及び特許文献3(DE−A−19819882)には、硝酸の製造においてN2Oを触媒分解(接触分解)するための、例えばペレット、シリンダー又はストランド等の幾何学的形状を有している触媒を開示している。
【0005】
【特許文献1】US−A−5478549
【特許文献2】DE−A−19805202
【特許文献3】DE−A−19819882
【発明の開示】
【0006】
これまで公知の触媒は、個々の触媒賦形体からなる密集した触媒床の形で存在し、この触媒のガスの透過性が適切に調整できないという不利な点を有していた(圧力降下及び高い機械的負荷及び静的負荷)。
【0007】
本発明の目的は、上記不利な点を改善することにある。
【0008】
発明者は、この目的は、触媒活性材料で被覆された立体構造物を含む触媒を使用することを含む、硝酸の製造でN2Oを除去する新規で改良された方法によって達成されることを見出した。
【0009】
有用な三次元物(立体構造物)は、成形物、ネット、織布、ループ−ドロンニット、ワイヤーパック、巣(comb)(すなわち、蜂の巣)構造物、セラミックモノリス、好ましくは、巣構造物、織布、ループ−ドロンニット、ネット、ワイヤーパック、より好ましくは織布、ループ−ドロンニット、ネットである。
【0010】
ワイヤー織布(wire woven)のために有用な材料は、特殊鋼、Hasteloy C、V2A、又はKanthal(Fe−Cr−Al合金、例えばドイツの構造材料、コード番号1.4767)等の高温度で安定な構造材料(高温度安定材料)であり、好ましくは、Kanthalである。
【0011】
ワイヤー織布は、所望の状態で使用可能であり、例えば、織布、織布層、又は織布パックとして使用可能である。織布パックは以下のように製造可能である。
【0012】
不織布、及びループ−ドロンニットパックは、例えば、反応器の断面に実質的に適合する三次元構造物として製造するのが簡単であり、この製造は、2種以上の互いに異なる構造長さの、織布及びループ−ドロンニットのウェブを巻くか、又は重ねることにより行われる。「実質的に」は本願発明において、カラムの断面に正確に適合する必要があるのではなく、製造技術上の許容差を容認することと理解される。
【0013】
パックは、2種か又は複数種の異なる構造の、織布及びループ−ドロンニットのウェブ(テープ)を巻くことにより得られるロールとして、主に形成される。しかしながら、他の幾何学的形状、特にウェブを重ね合わせて得られる直方形にすることも同様に可能である。
【0014】
織布又は織パックのワイヤーは、直径が、通常5〜5000μm、好ましくは50〜500μm、より好ましくは、60〜400μm、及び特に70〜250μmであり、及びメッシュサイズが、通常5〜5000μm、好ましくは50〜750μm、より好ましくは60〜600μm、及び特に70〜450μmである。
【0015】
触媒的に活性である有用な材料は、例えば、MgO、CoO、MoO3、NiO、ZnO、Cr23、WO3、SrO、CuO/Cu2O、MnO2等の酸化物、又はCuO−ZnO−Al23、CoO−MgO、CoO−La23、La2CuO4.Nd2CuO4、CoO−ZnO、又はNiO−MoO3等の混合酸化物、LaMnO3、CoTiO3、LaTiO3、CoNiO3等のペロブスカイト、及びCuAl24、ZnAl24、MgAl24、(Cu、Zn)Al24、(Cu、Zn、Mg)Al22、(Cu、Zn、Ba)Al24、(Cu、Zn、Ca)Al24、La2NiO4等のスパイナル(spainal)、好ましくはCuAl24、ZnAl24、MgAl24、(CuZn)Al24、(CuZnMg)Al24、(CuZnBa)−Al24、(CuZnCa)Al24等のスパイナル、より好ましくはCuAl24、(CuZn)Al24、(CuZnMg)Al24等のスパイナルである。
【0016】
好ましくは、触媒活性材料は、0.1質量%〜30質量%のCuO、0.1質量%〜40質量%の別の金属酸化物、特にZnO、及び50質量%〜80質量%のAl23を含む。
【0017】
特に好ましくは、約8質量%のCuO、30質量%のZnO、及び62質量%のAl23を含む触媒活性材料である。スパイナルと同様、非常に少量のCuO及び別の金属酸化物が同様に存在して良い。
【0018】
好ましくは、3.5質量%以上のCuO及び10質量%以上のZnOが存在する。
【0019】
触媒活性材料の製造は通常知られており、又はこれらの材料を製造するための公知の方法で行うことが可能である。
【0020】
織布又は織布パックのワイヤーは、以下のように被覆可能である。
【0021】
被覆の前に、織布又は織布パックのワイヤーを、例えば100〜1500℃、好ましくは200〜1400℃、及びより好ましくは300〜1300℃で熱処理することが可能である。
【0022】
被覆は、織布パックを形成するための成形の前、又は後、好ましくは後に行うことができる。
【0023】
触媒活性材料での被覆は、蒸気蒸着、スパッタリング、含浸、液浸、スプレーによって行うことができ、又は被覆は、粉末、好ましくは水性及び/又はアルコールの溶液又は懸濁液、好ましくは水性懸濁液で行うことができる。
【0024】
懸濁液の固体含有量は、通常2%〜95%の範囲、好ましくは3%〜75%の範囲であり、及びより好ましくは5%〜65%の範囲である。
【0025】
被覆の後、触媒パックは、通常、100〜1500℃、好ましくは200〜1300℃、及びより好ましくは300〜1100℃で熱処理される。
【0026】
被覆のワイヤーに対する質量割合は、広い領域で多様なものとなっており、及び、質量割合は、通常0.01:1〜10:1の範囲、好ましくは0.1:1〜2:1、及びより好ましくは0.3:1〜1:1の範囲である。
【0027】
本発明のワイヤー織布は、硝酸製造用の反応器において、酸化窒素の生成箇所から下流の所望の位置に配置可能であり、この位置は、好ましくは温度が500〜980℃の範囲、好ましくは600〜970℃の範囲、より好ましくは700〜960℃の範囲、特に、1〜15バールの圧力範囲での上述したアンモニアの酸化が行われる温度レベルの領域、より好ましくは、設けられた場合には貴金属回収ネットが与えられた貴金属ネット触媒と熱交換器との間である。
【0028】
ワイヤー織布は、通常、固定床パックとして使用される。触媒床は、深さが通常1〜150cm、好ましくは2〜50cm、及びより好ましくは5〜10cmである。触媒床上の滞留時間は、通常の操作において、通常1秒未満、好ましくは0.5秒未満及びより好ましくは0.3s未満である。
【0029】
本発明のワイヤー織布は、アンモニアの酸化窒素への触媒的酸化を行うための反応器内において、貴金属触媒/設けられた場合には貴金属回収ネットと、熱交換器との間に配置することが可能であり、反応器は、流れの方向に沿って貴金属触媒、所望により貴金属回収ネット、及び熱交換器の順番で含むものである。
【0030】
アンモニアから硝酸を製造するための装置は、
a)前項に従う反応器
b)水性媒体に酸化窒素を吸収させるための吸収装置、及び所望により
c)酸化窒素を接触還元するための還元装置、
をa)、b)、c)の順に含む。
【0031】
実施例
製造例1
カンタル金属織布バンド(長さ100cm、幅3.7cm)、ドイツ製材料 構造コード番号1.4767(Montz GmbHより、D−40705 Hilden)、を900℃で4時間、空気なましし、その後、鋸歯状のホイールローラ(モジュール、0.1mm)で波形をつけ、そして、97cmの平坦な金属織布バンドと巻きあげを行い、鉛直方向に通路(channel)を有する直径が4.1cmのパックを形成した。このように得られたパックを懸濁液、(懸濁液は、100gのDisperal(登録商標)Al25(Sasolより)、100gの水、及び25gの触媒的に活性な粉末で構成されており、粉末の組成は、20質量%のZnO、16質量%のCuO、64質量%のAl23である)に含浸し、120℃で2時間乾燥させ、空気中において、950℃で熱処理した。含浸による焼きなまし後のパックの質量増加は、11.6%であった。
【0032】
製造例2
カンタル金属織布バンドを製造例1と類似の方法で処理した。この金属織布バンドの、長さが16.7cm、幅が2cmの部分に、鋸歯状のホイールローラ(モジュール、0.1mm)で波形をつけ、そして重ね合わせ、長さが7cmの直方形のモノリスを形成したが、モノリスは、鉛直方向に通路を有し、及び高さと幅が2cmで、3V2Aワイヤーで束ねたものである。このようにして得られたパックを懸濁液(懸濁液は、100gのDisperal(登録商標)Al25(Sasolより)、100gの水、及び25gの触媒的に活性な粉末で構成されており、粉末の組成は、20質量%のZnO、16質量%のCuO、64質量%のAl23である)に含浸し、120℃で2時間乾燥させ、空気中で900℃で12時間熱処理した。含浸による、焼きなまし後のパックの質量増加は、13.4%であった。
【0033】
実施例1
アンモニア濃度が12体積%であり、空気濃度が88体積%であるアンモニア−空気混合物中のアンモニアを、実験室装置においてPt/Rhネット上で反応させ、一酸化窒素を形成したが、この反応は、900℃で、ネットの領域1cm3当たりアンモニアの空間速度が36g/hのものであった。深さが10cmの製造例1の触媒層を、プラチナネットの近傍の下流に配置し、そして、反応ガスを、上述した触媒層を通し、800℃で約0.03sの滞留時間で流した。N2Oは、92体積%減少した。触媒床を横切っての圧力損失は、250mbarであった。
【0034】
実施例2
製造例2の触媒で、実施例1を繰り返した。N2Oは、90体積%減少した。触媒床を横切っての圧力損失は、192mbarであった。
【0035】
比較例1(DE−A−19819882の実施例1に類似)
プラチナネットの近傍の下流に配置した触媒の深さ10cmの層が、3mmの押し出し成形物の状態で、18質量%のCuO、20質量%のZnO、及び62質量%のAl23で構成されていること以外は、実施例1に類似した反応を行った。N2Oは、85体積%減少した。触媒床を横切っての圧力損失は、1450mbarであった。
【0036】
比較例2(DE−A−19819882の実施例1に類似)
6mmの押し出し成形物を使用して比較例1を繰り返した。N2Oは、80体積%減少した。触媒床を横切っての圧力損失は、1345mbarであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒活性材料で被覆された三次元構造物を含む触媒を使用することを特徴とする硝酸の製造でN2Oを除去する方法。
【請求項2】
触媒活性材料で被覆されたワイヤー織布、及び/又はループ−ドロンニットを含む触媒を利用することを特徴とする硝酸の製造でN2Oを除去する方法。
【請求項3】
触媒活性材料で被覆されたワイヤー織布、及び/又はループ−ドロンニットが深さ1〜150cmの触媒床を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の硝酸の製造でN2Oを除去する方法。
【請求項4】
触媒活性材料で被覆されたワイヤー織布、及び/又はループ−ドロンニットの温度が、500〜980℃の範囲であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の硝酸の製造でN2Oを除去する方法。
【請求項5】
触媒活性材料で被覆されたワイヤー織布、及び/又はループ−ドロンニットでの滞留時間が1秒未満である請求項1〜4の何れかに記載の硝酸の製造でN2Oを除去する方法。
【請求項6】
触媒活性材料で被覆されたワイヤー織布、及び/又はループ−ドロンニットから構成されたことを特徴とする硝酸の製造でN2Oを除去するための触媒。
【請求項7】
流れの方向に沿って、貴金属触媒、所望により貴金属回収ネット、及び熱交換器の順番で含み、アンモニアを酸化窒素に触媒作用によって酸化するための反応器であって、触媒活性材料で被覆されたワイヤー織布、及び/又はループ−ドロンニットが、貴金属触媒/設けられた場合には貴金属回収ネットと熱交換器との間に配置されることを特徴とするアンモニアを酸化窒素に触媒的に酸化するための反応器。
【請求項8】
a)請求項7に記載の反応器、
b)酸化窒素を水性媒体に吸収させるための吸収装置、及び所望により
c)酸化窒素を選択的に接触還元するための還元装置、
を、a)、b)、c)の順に含む、アンモニアから硝酸を製造する装置。

【公表番号】特表2007−508224(P2007−508224A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515847(P2006−515847)
【出願日】平成16年6月8日(2004.6.8)
【国際出願番号】PCT/EP2004/006162
【国際公開番号】WO2005/000738
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】