説明

硫酸基転移酵素阻害剤

下記式1で表されることを特徴とするヘキスロン酸誘導体又はその塩をヘパリン・ヘパラン硫酸硫酸基転移酵素阻害剤の有効成分として使用する。


式中R、R、及びRは各々独立にSO又はHを示し、少なくともいずれか一つはSOを示し、これらは置換基を有していても良く、XはOR、SR、N(R又はC(Rを示し、Rはそれぞれ独立にH、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基、又はアラルキル基を示し、R及びRは一方がCOOHであって他方はHを示し、波線はαグリコシド結合又はβグリコシド結合を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特定のヘパリン・ヘパラン硫酸硫酸基転移酵素の活性を特異的に阻害しうる阻害剤に関し、更に詳細にはグリコサミノグリカンの一種であるヘパリン・ヘパラン硫酸の基本骨格(以下「ヘパリン骨格」とも記載する)に含まれるグルコサミン残基の6位ヒドロキシル基に硫酸基を転移する活性を有する硫酸基転移酵素又はヘキスロン酸残基の2位ヒドロキシル基に硫酸基を転移する活性を有するヘパリン・ヘパラン硫酸硫酸基転移酵素の該活性を阻害する阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘパリン・ヘパラン硫酸は、ヘキスロン酸(D−グルクロン酸及びL−イズロン酸:2位及び/又は3位ヒドロキシル基が硫酸化されている場合がある)とグルコサミン(N−アセチルグルコサミン:アセチルアミノ基がスルファミノ基に置換及び/又は6位ヒドロキシル基が硫酸化されている場合がある)とが、ヘキスロン酸がD−グルクロン酸の場合はβ1−4グリコシド結合で結合した二糖、ヘキスロン酸がL−イズロン酸の場合はα1−4グリコシド結合で結合した二糖を形成し、かかる二糖がβ1−4グリコシド結合で連なった構造の基本骨格(本明細書中においては「ヘパリン骨格」とも記載する)を有し、硫酸基を有するグリコサミノグリカンの一種である。
【0003】
このようなヘパリン・ヘパラン硫酸等のグリコサミノグリカンをはじめ、プロテオグリカン、糖タンパク質及び糖脂質は硫酸基を有しているものが多く、その生合成には多くの硫酸基転移酵素が関与している。例えばヘパリン骨格に対して硫酸基を転移する酵素としては特開平9−28374号公報にヘパリン骨格中のヘキスロン酸の2位ヒドロキシル基に硫酸基を転移する活性を有する酵素(HS2ST)が開示されている。また、特開平8−33483号公報にはヘパリン骨格中のグルコサミン残基の6位ヒドロキシル基に硫酸基を転移する活性を有する酵素(HS6ST)が開示されている。また特開2000−60566号公報及びWO02/000889号パンフレットには、特開平8−33483号公報に開示されたHS6STの類縁酵素(HS6ST2、HS6ST3)及びバリアント(HS6STv)が開示されている。更に、J.Biol.Chem.,267(1992),pp.15744−15750;J.Biol.Chem.,269(1994),pp.2270−2276;J.Biol.Chem.,274(1999),pp.22458−22465;及びGlycoconj.J.,16(1999),S40には、ヘパリン骨格中のグルコサミン残基のアセチルアミノ基を脱アセチル化した後、硫酸化する活性を有する酵素(NDST−1、NDST−2、NDST−3、NDST−4)が開示されている。
【0004】
ところで、ヘパリンやヘパラン硫酸は成長因子との親和性が高いことが知られており、各種サイトカインや成長因子とのその親和性はヘパリンやヘパラン硫酸の硫酸化の位置及び程度によって変化することが知られている(Glycobiology,4(1994),451またはGlycobiology,4(1994),817)。
【0005】
従って、ヘパリンやヘパラン硫酸などの生合成に深く関与しているこれらヘパリン・ヘパラン硫酸硫酸基転移酵素の活性を阻害する阻害剤は、例えば血管新生阻害作用による抗癌剤、ECMへの接着阻害作用による癌転移阻害剤、結合組織型肥満細胞のヘパリン合成阻害作用による抗アレルギー剤、抗リウマチ剤などに応用できる可能性が高い。
【0006】
このような硫酸基転移酵素の阻害剤としては例えば、Biochem.Biophys.Res.Commun.,150(1988),pp.342−348に記載されたchlorateや、J.Biol.Chem.,267(1992),pp.8802−8806に記載されたbrefeldinA等が知られている。前者は硫酸基転移酵素に対して非特異的な拮抗阻害作用を示すことにより該酵素を阻害し、また後者は糖鎖合成の場であるゴルジ体を破壊することにより該酵素を阻害する。従って、これら従来の阻害剤は、ヘパリン・ヘパラン硫酸の生合成の特異的な阻害作用が低かったり、ヘパリン・ヘパラン硫酸のみならず他のグリコサミノグリカンやプロテオグリカン、糖タンパク質の生合成までも強力に阻害してしまい副作用に結びつく可能性を有するため、疾病の治療薬として利用できる可能性が極めて低かった。
【発明の開示】
【0007】
そこで、特定のヘパリン・ヘパラン硫酸硫酸基転移酵素に対して特異性の高い阻害活性を有すると共に生体に安全に投与できる化合物を用いた新たな硫酸基転移酵素阻害剤が求められていた。
【0008】
本発明者等は上記課題の解決のために鋭意検討した結果、「2位、3位、及び/又は4位ヒドロキシル基が硫酸化されたヘキスロン酸」のアノメリック炭素(1位炭素)にグリコシド結合で水素原子又はアグリコン分子が結合してなる「ヘキスロン酸誘導体」が優れたヘパリン・ヘパラン硫酸硫酸基転移酵素阻害活性を有することを見いだし、本発明を完成した。
【0009】
すなわち本発明は以下の通りである。
(1)下記式1で表されることを特徴とするヘキスロン酸誘導体又はその塩の酵素阻害有効量を含むことを特徴とするヘパリン・ヘパラン硫酸硫酸基転移酵素阻害剤。

式中R、R、及びRは各々独立にSO又はHを示し、少なくともいずれか一つはSOを示し、これらは置換基を有していても良く、XはOR、SR、N(R又はC(Rを示し、Rは独立にH、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基、又はアラルキル基を示し、R及びRは一方がCOOHであって他方はHを示し、波線はαグリコシド結合又はβグリコシド結合を示す。
(2)式1において、RはHを示し、R及びRの少なくともいずれか一方はSOで、他方はHを示すか、いずれもSOを示し、XはORを示し、Rは炭素数6以下のアルキル基を示し、RはCOOHを示し、RはHを示すことを特徴とする(1)記載のヘパリン・ヘパラン硫酸硫酸基転移酵素阻害剤。
(3)ヘパリン骨格中のグルコサミン残基の6位ヒドロキシル基へ硫酸基を転移する活性を有するヘパリン・ヘパラン硫酸硫酸基転移酵素の前記活性を阻害することを特徴とする(1)又は(2)記載のヘパリン・ヘパラン硫酸硫酸基転移酵素阻害剤。
(4)ヘパリン骨格中のヘキスロン酸残基の2位ヒドロキシル基へ硫酸基を転移する活性を有するヘパリン・ヘパラン硫酸硫酸基転移酵素の前記活性を阻害することを特徴とする(1)又は(2)記載のヘパリン・ヘパラン硫酸硫酸基転移酵素阻害剤。
(5)下記式1で表されるヘキスロン酸グリコシド誘導体又はその塩のヘパリン・ヘパラン硫酸硫酸基転移酵素阻害剤としての使用。

式中R、R、及びRは各々独立にSO又はHを示し、少なくともいずれか一つはSOを示し、これらは置換基を有していても良く、XはOR、SR、N(R又はC(Rを示し、Rは独立にH、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基、又はアラルキル基を示し、R及びRは一方がCOOHであって他方はHを示し、波線はαグリコシド結合又はβグリコシド結合を示す。
(6)(1)〜(4)のいずれかのヘパリン・ヘパラン硫酸硫酸基転移酵素阻害剤を有効成分として含有する医薬組成物。
(7)硫酸基受容体としてヘパリン骨格を有する糖鎖に硫酸基供与体から硫酸基を転移する活性を有する酵素の当該活性を、(1)〜(4)のいずれかのヘパリン・ヘパラン硫酸硫酸基転移酵素阻害剤によって阻害する当該酵素の硫酸基転移活性を阻害する方法。
【図面の簡単な説明】
【0010】
[図1]硫酸基受容体基質としてCDSNSヘパリンを用いた場合における、HS6STの活性に対するヘキスロン酸誘導体の阻害作用を示す図である。
[図2]硫酸基受容体基質としてヘパラン硫酸を用いた場合における、HS2STの活性に対するヘキスロン酸誘導体の阻害作用を示す図である。
[図3]硫酸基受容体基質としてヘパラン硫酸を用いた場合における、HS6STの活性に対するヘキスロン酸誘導体の阻害作用を示す図である。
[図4]HS2STの活性に対する誘導体2の阻害曲線を示す図である。白丸は誘導体2を添加しなかった場合のHS2STの酵素活性であり、黒丸は1mmol/l、クロスは3mmol/l、三角は10mmol/lの濃度の誘導体2を添加した場合のHS2STの酵素活性を示す。
[図5]HS6STの活性に対する誘導体2の阻害曲線を示す図である。白丸は誘導体2を添加しなかった場合のHS6STの酵素活性であり、黒丸は1mmol/l、クロスは3mmol/l、三角は10mmol/lの濃度の誘導体2を添加した場合のHS6STの酵素活性を示す。
[図6]HS2STの活性に対するヘパラン硫酸濃度及び誘導体2の濃度が与える影響を示す図である。三角はヘパラン硫酸濃度が400μmol/l、正方形は300μmol/l、菱形は200μmol/lの場合のHS2STの酵素活性を示す。
[図7]HS6STの活性に対するヘパラン硫酸濃度及び誘導体2の濃度が与える影響を示す図である。丸はヘパラン硫酸濃度が400μmol/l、三角は300μmol/l、正方形は200μmol/l、菱形は150μmol/lの場合のHS6STの酵素活性を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、発明の実施の形態により本発明を詳説する。
(1)本発明阻害剤
本発明阻害剤は下記式1で表されることを特徴とするヘキスロン酸誘導体又はその塩の酵素阻害有効量を含むことを特徴とするヘパリン・ヘパラン硫酸硫酸基転移酵素阻害剤である。
【0012】

【0013】
式中R、R、及びRは各々独立にSO又はHを示し、少なくともいずれか一つはSOを示し、XはOR、SR、N(R、又はC(Rを示し、Rはそれぞれ独立にH、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基、又はアラルキル基を示し、R及びRは一方がCOOHであって他方はHを示し、波線はαグリコシド結合又はβグリコシド結合を示す。
【0014】
本発明阻害剤の有効成分である式1で示されるヘキスロン酸誘導体を形成する硫酸化ヘキスロン酸残基(上記式中「硫酸化ヘキスロン酸残基部分」と示した部分)は、Rがカルボキシル基(COOH)であっても良く(この場合Rは水素原子(H)であり「硫酸化ヘキスロン酸残基」は「硫酸化グルクロン酸残基」となる)、またRがカルボキシル基(COOH)であっても良い(この場合Rは水素原子(H)であり「硫酸化ヘキスロン酸残基」は「硫酸化イズロン酸残基」となる)が、「硫酸化ヘキスロン酸残基」は特にRがカルボキシル基となっていることが好ましい(すなわち硫酸化ヘキスロン酸残基が硫酸化グルクロン酸残基であることが好ましい)。
【0015】
また、硫酸化ヘキスロン酸残基の2位、3位及び4位ヒドロキシル基における水素原子は、各々独立に硫酸基に置換されていても良く、これらの少なくとも一つが硫酸基に置換されていることが必要である。すなわち、上記式中R、R及びRは各々独立にSO又はHを示し、少なくともいずれか一つはSOであることが必要である。好ましくは、R、R及びRのいずれか1つのみがSOであり、他はHであるヘキスロン酸誘導体が挙げられる。特にR及びRの一方がSOで、他方がHであり、RはHであることが好ましい。
【0016】
上記式1における、XはOR、SR、N(R、C(Rと表記することができる。すなわちR((R、(R)はO−グリコシル結合(グリコシド結合)、S−グリコシル結合、N−グリコシル結合(一方のRがHの場合にはイミノ基となる)、C−グリコシル結合で式1の硫酸化ヘキスロン酸部分と結合している。この中でも特にO−グリコシル結合が好ましい。なお、N(R及びC(Rにおいて、Nに結合した二つのR、Cに結合した三つのRはそれぞれ独立であり、異なる構造を有していても良い。
【0017】
上記グリコシル結合は、αグリコシル結合であってもβグリコシル結合であっても良く(式1中波線で表記した結合)、とりわけβグリコシル結合の方が好ましい。ここで「α」及び「β」は糖環1位のグリコシル結合のアノマーを示し、5位炭素原子に結合したCOOH(前述のR又はR)との位置関係がトランスのものを「α」、シスのものを「β」で示す。
【0018】
は水素原子(H)又は糖の修飾や保護に一般に用いられるアグリコンを示し、アグリコンの方が水素原子よりも好ましい。そのようなアグリコンとしてはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基、又はアラルキル基が挙げられるが、これらの中でもアルキル基が好ましい。
【0019】
上記アルキル基は、炭素数20以下の直鎖状、又は分枝を有するアルキル基が好ましい(但しこれらは置換基を除いた炭素数)。アルキル基は、他の置換基で修飾されていても良く、例えば下記式2で示すようなアルキルグリセロール由来の骨格を有するアルコキシアルキル基又はアシルグリセロール由来の骨格を有するアシルオキシアルキル基でも良い(下記構造式中l、mは各々独立に0〜18の整数を示し、Zは各々独立にメチレン基又はカルボニル基を示す)。
【0020】

【0021】
上記(2)のアルキル基は、特に前記のアルコキシ基、アシルオキシ基等のアルキル基以外の置換基を除いたアルキル骨格部分のみの炭素数が1〜6、好ましくは炭素数1〜4の直鎖状の低級アルキル基であり、その中でも特に炭素数1のアルキル基であるメチル基が最も好ましい(但し、これらは置換基を除いた炭素数)。
【0022】
上記アルケニル基及びアルキニル基は、前記の置換基を除いたアルケニル骨格又はアルキニル骨格部分の炭素数が2〜10、好ましくは2〜6であることが好ましく、2〜4であることが最も好ましい(但しこれらは置換基を除いた炭素数)。アルケニル基やアルキニル記の場合には、炭素原子同士の二重結合、三重結合を複数有していても良い。
【0023】
上記アシル基とは、一般に−CO−Rで表される基であれば何れでも良いが、Rで表される部分のうち、前記の置換基を除いた部分の炭素数は1〜10、好ましくは1〜6、最も好ましくは1〜4である。尚、上記一般式においてRは上述したものと同様のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、後述のアリール基、アラルキル基から選択されるいずれかの基であり、これらは置換基を有していても良い。上記「炭素数」はかかる置換基を除いた炭素数である。
【0024】
上記アリール基とは炭素数6〜22の芳香族炭化水素残基が好ましく、例えばフェニル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素残基が挙げられ、又はこれらの芳香族炭化水素残基において更に置換基が芳香環の水素原子に置換している芳香族残基(例えばトリル基等)が例示され、この中でも特に置換基を有しないフェニル基及びナフチル基が好ましく、特にフェニル基が好ましい。
【0025】
上記アラルキル基とは、アルキル基における水素原子が一又は二以上のアリール基(Ar)に置換した残基であり、アリール基を除いたアルキル基部分の炭素原子数は1〜10が好ましく、1〜6がより好ましい。またこれらは置換基を有していても良い。このようなアラルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基等が例示される。
【0026】
上記ヘキスロン酸誘導体における「置換基」は、アルキル基、アシル基、アルコキシル基、ヒドロキシル基(OH)、ハロゲン原子(フッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、ヨウ素原子(l)等)、ニトロ基(NO)、硫酸基(SO)、オキソ基、カルボキシル基(COOH)、アミノ基(NH、NH)等が挙げられる。但し、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基、アラルキル基における置換基は、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、硫酸基、オキソ基、カルボキシル基、アミノ基が挙げられる。
【0027】
なお、糖を構成する六員環はフネ型とイス型が存在し、いずれであっても良いが、本発明阻害剤の有効成分となるヘキスロン酸誘導体においては安定性の面からイス型が好ましい。
従って、最も好ましいヘキスロン酸誘導体の例示としては、下記式3、及び式4で各々示される物質が挙げられる。
【0028】

【0029】

【0030】
これらの式中、波線は、硫酸化ヘキスロン酸残基部分へのグリコシド結合がα又はβの何れかであることを示す。また炭素原子に結合した水素原子は表記上省略する。
【0031】
なお、上記ヘキスロン酸誘導体は対イオン(カウンターイオン)と塩となった形態でも本発明阻害剤の有効成分として使用することができる。かかる対イオンの例としては、例えば上記式中のカルボキシル基又は硫酸基と塩を形成しうるカチオン(ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオンなどの金属イオンやトリエチルアミン、ピリジンなどのオニウムカチオン)や、ヘキスロン酸の1位炭素原子に結合したN−グリコシドなどのイミノ基等と酸付加塩(塩酸塩、硫酸塩、メシル酸塩、p−トルエンスルホン酸塩等)を形成する酸イオン(塩酸イオン、硫酸イオン、メシル酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン等)を例示することができる。上記ヘキスロン酸誘導体は金属イオン又は酸イオン単独と塩を形成していても良く、また双方と結合した塩(複塩)となっていても良い。なお、かかる塩は、本発明阻害剤を医薬として使用する場合には特に薬理学的に許容されうる塩であることが好ましい。このような塩としてカチオンとの塩としては例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、酸付加塩としては塩酸イオンが好ましくは挙げられる。
【0032】
便宜上αグリコシド結合している上記式3で表されるヘキスロン酸誘導体を「誘導体1」と、βグリコシド結合している上記式3で表されるヘキスロン酸誘導体を「誘導体2」と記載する。また同様にαグリコシド結合している上記式4で表されるヘキスロン酸誘導体を「誘導体3」と、βグリコシド結合している上記式4で表されるヘキスロン酸誘導体を「誘導体4」と記載する。
【0033】
これらの誘導体(誘導体1〜4)は例えばCarbohyd.Res.,198(1990),pp133−140に記載された方法に従って調製することができる。
【0034】
ヘキスロン酸誘導体が有するヘパリン・ヘパラン硫酸硫酸基転移酵素阻害作用は、該誘導体をヘパリン・ヘパラン硫酸硫酸基転移酵素(特に特開平8−33483号公報又は特開平9−28374号公報記載の硫酸基転移酵素)及び当該酵素の基質(硫酸基供与体及び硫酸基受容体)と共存させて、ヘパリン・ヘパラン硫酸硫酸基転移酵素の酵素活性を測定し、該誘導体非存在下の場合と比較することにより確認することができる。
【0035】
本発明阻害剤によって酵素活性が阻害されるヘパリン・ヘパラン硫酸硫酸基転移酵素は、硫酸基受容体としてヘパリン・ヘパラン硫酸を初めとするヘパリン骨格を有する糖鎖に対し硫酸基供与体から硫酸基を転移する活性を有する酵素であり、ヘパリン骨格に存在するグルコサミン残基の6位ヒドロキシル基に硫酸基を転移する作用を有する酵素(ヘパラン硫酸6硫酸基転移酵素:HS6ST、HS6ST2、HS6ST2v、HS6ST3)、ヘパリン骨格に存在するヘキスロン酸残基の2位ヒドロキシル基に硫酸基を転移する作用を有する酵素(ヘパラン硫酸2硫酸基転移酵素:HS2ST)、又はヘパリン骨格に存在するグルコサミン残基の2位アミノ基に硫酸基を転移する作用を有する酵素(ヘパラン硫酸N脱アセチル化硫酸基転移酵素:NDST−1、NDST−2、NDST−3、NDST−4)であることが好ましい。その中でもHS2ST、HS6ST、HS6ST2、HS6ST3、HS6ST2vが好ましく、特にHS2ST及びHS6STが好ましく、最も好ましくはHS6STが例示される。
【0036】
本発明阻害剤が有する酵素活性の阻害活性は、本発明阻害剤を添加しない反応系(対照)での酵素活性を100%、酵素を添加しない系(陰性対照)での酵素活性を0とした場合に、対照と比べて酵素活性が5%以上低下する活性を指称する。本発明阻害剤は特に後述の実施例1記載の阻害活性の測定方法に従って阻害活性を測定した際に、2.5mmol/lの阻害剤濃度での反応時において5%以上、好ましくは10%以上、最も好ましくは15%以上の阻害活性を示す。
【0037】
本発明阻害剤は、本発明阻害剤が有する上記ヘパリン・ヘパラン硫酸硫酸基転移酵素に対する阻害作用を利用することにより、研究用試薬としてや医薬組成物として用いることができる。
【0038】
本発明の医薬組成物は上記ヘキスロン酸誘導体を有効量含むものであれば、他の成分を含んでいてもよい。本発明の医薬組成物は、例えば、上記ヘキスロン酸誘導体を製剤学的に許容される担体と組み合わせて製造することができる。製剤担体としては特に制限されないが、例えば、医薬に通常使用される賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤、界面活性剤、注射剤用溶剤等の担体が挙げられる。尚、本発明の医薬組成物において、上記ヘキスロン酸誘導体を医薬に許容される塩にすることもできる。医薬に許容可能な塩として、金属塩(無機塩)と有機塩との両方が含まれ、例えば、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、臭化水素酸塩および硫酸塩などの無機酸塩や、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、パモ酸塩、サリチル酸塩及びステアリン酸塩などの有機酸塩が挙げられる。また、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム等の金属の塩、リジン等のアミノ酸との塩とすることもできる。また、上記ヘキスロン酸誘導体もしくはその医薬上許容される塩の水和物等の溶媒和物も本発明の医薬組成物に含まれる。
【0039】
本発明の医薬組成物の剤型は特に限定されず、治療目的に応じて適宜選択でき、具体的には、錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、坐剤、注射剤、軟膏剤、貼付剤、点眼剤、点鼻剤等を例示できる。
【0040】
本発明の医薬組成物は、ヘパリン・ヘパラン硫酸硫酸基転移酵素の活性亢進が関与する疾患の治療または予防に好適に使用することができる。このような疾患としては、癌、アレルギーリウマチなどが挙げられる。本発明阻害剤が有すると推察される血管新生阻害作用による抗癌剤、ECMへの接着阻害作用による癌転移阻害剤、結合組織型肥満細胞におけるヘパリン合成阻害作用による抗アレルギー剤、抗リウマチ剤などとして使用できる。
【0041】
本発明の医薬組成物は、経口的、又は非経口的にヒトを含む哺乳動物に投与することができる。投与時期は特に限定されず、対象となる疾患の治療方法に従って、適宜投与時期を選択することが可能である。また、投与形態は製剤形態、患者の年齢、性別、その他の条件、患者の症状の程度等に応じて決定されることが好ましい。
【0042】
本発明の医薬組成物の有効成分の投与量は、用法、患者の年齢、性別、疾患の程度、その他の条件等により適宜選択される。通常、有効成分であるヘキスロン酸誘導体の量は、好ましくは0.01〜100mg/kg/日、より好ましくは、0.1〜10mg/kg/日での範囲となる量を目安とするのが良い。1日1回又は複数回に分けて投与することができる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。
なお、実施例で使用したヘキスロン酸誘導体(誘導体1〜4)は、全てCarbohyd.Res.,198(1990),pp133−140の記載に従って調製したものである。また実施例で使用したHS2ST及びHS6STは特開平9−28374号及び特開平8−98684号に従って調製したものである。
【0044】
(実施例1)HS6STによる完全脱硫酸化N再硫酸化ヘパリンへの硫酸基転移作用に対するヘキスロン酸誘導体の阻害作用
硫酸基受容体基質である完全脱硫酸化N再硫酸化ヘパリン(生化学工業株式会社製:以下「CDSNSヘパリン」とも記載する)を500μmol/l、35Sで標識した3’−ホスホアデノシン−5’−ホスホ硫酸(Anal.Biocham.,148(1985),pp.303−310記載の方法により、アデノシン三リン酸(ATP)と[35S]硫酸より酵素的に合成したもの:以下3’−ホスホアデノシン−5’−ホスホ硫酸を「PAPS」とも記載する)を1μmol/l、HS6STを0.4unit、プロタミン塩酸塩(シグマ社製)を3.75μg、NaClを0.15mol/l、ヘキスロン酸誘導体(誘導体1〜4何れか一つ)を10mmol/lで含む0.05mol/lのイミダゾール緩衝液(pH6.8)を含む50μlの反応液を調製し、37℃で20分間インキュベートして反応させた。対照としてはヘキスロン酸誘導体を添加しない実験群を使用した。
【0045】
反応後、反応液をFast Desalting Column HR10/10カラム(アマシャム バイオサイエンス株式会社製)を用いた高速液体クロマトグラフィー(以下「HPLC」とも記載する)(分析条件:流速2.0ml/分、温度:20℃)で分離し、CDSNSヘパリンのピークを回収した後、その画分に含まれる放射能を液体シンチレーションカウンターにより定量して、CDSNSヘパリンへの放射能の取り込みを測定した(図1)。
【0046】
その結果、誘導体1〜4の何れもがHS6STに対して阻害作用を示し、特にβグリコシド結合を有する誘導体2及び誘導体4が強い阻害作用を示すことが明かとなった。
【0047】
(実施例2)HS2ST及びHS6STによるヘパラン硫酸への硫酸基転移作用に対するヘキスロン酸誘導体の阻害作用
硫酸基受容体基質であるヘパラン硫酸(ブタ大動脈由来:生化学工業株式会社製)を500μmol/l、35Sで標識したPAPSを1μmol/l、HS2ST又はHS6STを0.4unit、プロタミン塩酸塩(シグマ社製)を3.75μg、NaClを0.15mol/l、ヘキスロン酸誘導体(誘導体1〜4何れか一つ)を10mmol/lで含む0.05mol/lのイミダゾール緩衝液(pH6.8)を含む50μlの反応液を調製し、37℃で20分間インキュベートして反応させた。対照としてはヘキスロン酸誘導体を添加しない実験群を使用した。
【0048】
反応後、反応液をFast Desalting Column HR10/10カラム(アマシャム バイオサイエンス株式会社製)を用いたHPLC(分析条件:流速2.0ml/分、温度:20℃)で分離し、ヘパラン硫酸のピークを回収した後、その画分に含まれる放射能を液体シンチレーションカウンターにより定量して、ヘパラン硫酸への放射能の取り込みを測定した(HS2ST:図2、HS6ST:図3)。
【0049】
その結果、誘導体1〜4の何れもがHS2ST及びHS6STに対して阻害作用を示し、特にβグリコシド結合を有する誘導体2及び誘導体4がHS2STに対して強い阻害作用を示すことが明かとなった。
【0050】
(実施例3)誘導体2のHS2ST及びHS6STに対する阻害曲線
実施例2の条件下で、ヘパラン硫酸の濃度を0から400μmol/l、誘導体2の濃度を0から10mmol/lで変化させて、ヘパラン硫酸への放射能の取り込みを測定して、誘導体2の阻害曲線を作成した(HS2ST:図4、HS6ST:図5)。
その結果、HS2ST及びHS6STの両者に対して誘導体2は濃度依存的に阻害作用を示すことが明かとなった。
【0051】
(実施例4)HS2ST及びHS6ST濃度、ヘパラン硫酸濃度、及びヘキスロン酸誘導体濃度と硫酸基転移作用の関係
硫酸基受容体基質であるヘパラン硫酸(ブタ大動脈由来:生化学工業株式会社製)を150〜400μmol/l、35Sで標識したPAPSを1μmol/l、HS2ST又はHS6STを0.4unit、プロタミン塩酸塩(シグマ社製)を3.75μg、NaClを0.15mol/l、誘導体2を0〜10mmol/lで調製した0.05mol/lのイミダゾール緩衝液(pH6.8)を含む50μlの反応液を調製し、37℃で20分間インキュベートして反応させた。
【0052】
反応後、反応液をFast Desalting Column HR10/10カラム(アマシャム バイオサイエンス株式会社製)を用いたHPLC(分析条件:流速2.0ml/分、温度:20℃)で分離し、ヘパラン硫酸のピークを回収した後、その画分に含まれる放射能を液体シンチレーションカウンターにより定量して、ヘパラン硫酸への放射能の取り込みを測定した(HS2ST:図6、HS6ST:図7)。
【0053】
その結果、HS2ST及びHS6STに対して誘導体2は濃度依存的に阻害作用を示すことが明かとなった。
【0054】
(実施例5)培養細胞におけるヘパラン硫酸合成への誘導体2の影響
チャイニーズハムスターの卵巣由来の培養細胞(CHO細胞)のk1株(以下「CHOk1」とも記載する:JCRB9018)及びこの株に特開平11−69983の記載に従ってHS6STをコードするDNAを安定的にトランスフェクトした株(以下「CHO−k(t)」とも記載する)の培養液(10牛胎児血清を含むダルベッコの調整イーグル培地(DMEM−F12:pH7.2))に誘導体2を10mmol/lとなるように添加し、48時間培養を行なった。
【0055】
培養後、DEAE−セファロースカラムを用いて、培養細胞からグリコサミノグリカンを回収し、新生化学実験講座3 糖質II 54−59頁に記載の方法により、回収したグリコサミノグリカン1.0mgを2mmol/l酢酸カルシウムを含む20mmol/l酢酸ナトリウム(pH7.0)220μlに溶解して、グリコサミノグリカン分解酵素(20mUのヘパリチナーゼ、20mUのヘパリチナーゼI及びII(全て生化学工業株式会社製))を加えて、37℃で2時間反応させた。反応度、反応液20μlをHPLCで分析した。HPLCはJ.Biol.Chem.,275(2000),pp.2269−2275に記載された逆相、イオンペアクロマトグラフィーに従って分離した後、ポストカラム法で蛍光標識して定量した。分析はセンシュー科学製Senshu PAK Docosilカラム(商標名:4.6×150mm)を用い、流速1.1ml/分で行い、検出は励起波長346nmで励起し、放射波長410nmでの吸光度を測定して行った。グリコサミノグリカン分解酵素による消化で生じた不飽和二糖のうち2−アセトアミド−2−デオキシ−4−O−(4−デオキシ−α−L−threo−hex−エノピラノシルウロン酸)−D−グルコース(以下「ΔDi−OS」と記載する)、2−デオキシ−2−スルファミノ−4−O−(4−デオキシ−α−L−threo−hex−4−エノピラノシルウロン酸)−D−グルコース(以下「ΔDi−NS」と記載する)、2−アセトアミド−2−デオキシ−4−O−(4−デオキシ−α−L−threo−hex−4−エノピラノシルウロン酸)−6−O−スルホ−D−グルコース(以下「Di−6S」と記載する)、2−デオキシ−2−スルファミノ−4−O−(4−デオキシ−α−L−threo−hex−4−エノピラノシルウロン酸)−6−O−スルホ−D−グルコース(以下「Di−(N,6)diS」と記載する)、2−アセトアミド−2−デオキシ−4−O−(4−デオキシ−2−O−スルホ−α−L−threo−hex−4−エノピラノシルウロン酸)−6−O−スルホ−D−グルコース(以下ΔDi−(U,6)diSと記載する)、及び2−デオキシ−2−スルファミノ−4−O−(4−デオキシ−2−O−スルホ−α−L−threo−hex−4−エノピラノシルウロン酸)−6−O−スルホ−D−グルコース(以下ΔDi−(N,6,U)triSと記載する)の組成を算出した(表1:表中「CHO−k(t)/C」及び「CHOk1/C」は誘導体2を添加しなかった対照群を示す)。
【0056】

【0057】
その結果、CHO−k(t)群においても、CHOk1群においても、対照と比して6位に硫酸基が入っている不飽和二糖の量が大幅に減少していることが明かとなった。この結果は、ヘパラン硫酸のグルコサミン残基へのHS6STによる6位硫酸基転移作用が阻害されたことを示している。
【産業上の利用の可能性】
【0058】
本発明によりヘキスロン酸誘導体を用いる新たなヘパリン・ヘパラン硫酸硫酸基転移酵素阻害剤が提供される。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式1で表されることを特徴とするヘキスロン酸誘導体又はその塩の酵素阻害有効量を含むことを特徴とするヘパリン・ヘパラン硫酸硫酸基転移酵素阻害剤。

式中R、R、及びR各々独立にSO又はHを示し、少なくともいずれか一つはSOを示し、これらは置換基を有していても良く、XはOR、SR、N(R又はC(Rを示し、Rは独立にH、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基、又はアラルキル基を示し、R及びRは一方がCOOHであって他方はHを示し、波線はαグリコシド結合又はβグリコシド結合を示す。
【請求項2】
式1において、RはHを示し、R及びRの少なくともいずれか一方はSOで、他方はHを示すか、いずれもSOを示し、XはORを示し、Rは炭素数6以下のアルキル基を示し、RはCOOHを示し、RはHを示すことを特徴とする請求項1記載のヘパリン・ヘパラン硫酸硫酸基転移酵素阻害剤。
【請求項3】
ヘパリン骨格中のグルコサミン残基の6位ヒドロキシル基へ硫酸基を転移する活性を有するヘパリン・ヘパラン硫酸硫酸基転移酵素の前記活性を阻害することを特徴とする請求項1又は2記載のヘパリン・ヘパラン硫酸硫酸基転移酵素阻害剤。
【請求項4】
ヘパリン骨格中のヘキスロン酸残基の2位ヒドロキシル基へ硫酸基を転移する活性を有するヘパリン・ヘパラン硫酸硫酸基転移酵素の前記活性を阻害することを特徴とする請求項1又は2記載のヘパリン・ヘパラン硫酸硫酸基転移酵素阻害剤。
【請求項5】
下記式1で表されるヘキスロン酸グリコシド誘導体又はその塩のヘパリン・ヘパラン硫酸硫酸基転移酵素阻害剤としての使用。


式中R、R、及びRは各々独立にSO又はHを示し、少なくともいずれか一つはSOを示し、これらは置換基を有していても良く、XはOR、SR、N(R又はC(Rを示し、Rは独立にH、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基、又はアラルキル基を示し、R及びRは一方がCOOHであって他方はHを示し、波線はαグリコシド結合又はβグリコシド結合を示す。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のヘパリン・ヘパラン硫酸硫酸基転移酵素阻害剤を有効成分として含有する医薬組成物。
【請求項7】
硫酸基受容体としてヘパリン骨格を有する糖鎖に硫酸基供与体から硫酸基を転移する活性を有する酵素の当該活性を、請求項1〜4のいずれか一項に記載のヘパリン・ヘパラン硫酸硫酸基転移酵素阻害剤によって阻害する当該酵素の硫酸基転移活性を阻害する方法。

【国際公開番号】WO2004/100961
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【発行日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506231(P2005−506231)
【国際出願番号】PCT/JP2004/006750
【国際出願日】平成16年5月19日(2004.5.19)
【出願人】(000195524)生化学工業株式会社 (143)
【Fターム(参考)】