説明

硫黄化合物の分析方法及び分析装置

【課題】
試料ガス中に含まれているNOの干渉を排除して、硫黄化合物の濃度を測定することが可能であり、SO濃度とTSの濃度とTRSの濃度をそれぞれ測定することが可能な分析方法及び分析装置を提供する。
【解決手段】
試料ガスGに紫外線を照射し、それに伴い発光する蛍光を紫外線蛍光分析計2により検出して試料ガス中の硫黄化合物の濃度を測定するにあたり、紫外線蛍光分析計2のセル内21の途中で試料ガスG中にOを添加して、まず、NOは酸化してNOに変換したもののTRSは酸化していない段階で蛍光検出を行い、もともと試料ガス中に含まれていたSOのみの濃度を測定し、次いで、TRSも酸化した段階で再度蛍光検出を行い、TSの濃度を測定することができるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、紫外線蛍光法により硫黄化合物の濃度を測定する分析方法及び分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二酸化硫黄(以下、SOという)に紫外線を照射すると、下記の反応式(1)で示すように、SOが紫外線を吸収して励起され、励起状態のSO*が生じる。そして、下記の反応式(2)で示すように、このSO*が基底状態に戻るときに蛍光を発する。
【0003】
SO+hν(220nm)→SO*…(1)
SO*→SO+hν(330nm)…(2)
【0004】
この反応を利用して、自動車の排ガス等の試料ガス中の硫黄化合物を酸化させてSOに変換し、紫外線を照射して、発せられた蛍光の強度を検出して試料ガス中の硫黄化合物の濃度を測定する紫外線蛍光法(以下、UVF法という)を用いた排ガス中の硫黄化合物の濃度測定方法が従来より知られている。
【0005】
しかしながら、自動車の排ガス等の試料ガス中には一酸化窒素(以下、NOという)も含まれ、NOはSOと同様に紫外線を照射することにより蛍光を発する。このため、NOがSO測定の際の干渉成分となり、著しい干渉影響を受ける。
【0006】
即ち、紫外線蛍光法によりSOの濃度を測定する場合、220nm付近の波長をもつ紫外線を照射するが、試料ガス中に含まれているNOは波長214nm及び226nm付近にスポット状の狭い吸収波長域を持つ。NOの吸収波長はSOに照射する紫外線の波長と接近しており、かつ、両者の蛍光スペクトルも重なっているため、このままではSOの濃度を測定するとNOが発光する蛍光の強度も検出してしまい、その結果、NOがSOの測定に対して著しい干渉影響を及ぼして測定誤差を招くという問題がある。
【0007】
このため、紫外線を照射する前にNOをオゾン(以下、Oという)と反応させて二酸化窒素(以下、NOという)に変換し、その影響を排除することが試みられている(特許文献1、特許文献2)。
【特許文献1】特開2004−138466号公報
【特許文献2】特開2005−62013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、自動車の排ガス等の試料ガス中には硫化水素を始めとするSO以外の還元性硫黄(以下、TRS(Total Reduced Sulfur)という)も含まれており、このTRSの各成分はOと反応して、SOに変換される。このため、SO濃度を測定するに際し、NOの干渉影響を排除するために試料ガスにOを添加すると、TRSに由来するSOも生じ、もともと試料ガス中に含まれていたSOを正確に測定することができないという問題がある。
【0009】
そこで本発明は、NOの干渉影響を排除して、もともと試料ガス中に含まれていたSOのみの濃度を測定することが可能で、かつ、TRS濃度や、SOとTRSを合わせたSUM(Summation Sulfur)の濃度を測定することが可能な分析方法及び分析装置を提供すべく図ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち本発明に係る硫黄化合物の分析方法は、二酸化硫黄とそれ以外の硫黄化合物、及び一酸化窒素を含有する試料ガスに紫外線を照射し、この紫外線照射により励起された二酸化硫黄が発する蛍光を検出して前記試料ガス中の硫黄化合物の濃度を測定するものであって、一酸化窒素を酸化して二酸化窒素に変換した後であって、かつ、二酸化硫黄以外の硫黄化合物が酸化して二酸化硫黄に変換する前に、前記蛍光を検出することを特徴とする。
【0011】
室温におけるNO及びTRSの1つであるHSの、Oとの2種分子反応速度定数は、例えばNASA(JPL)資料によると、それぞれNOがk298K=1.9×10−14であり、HSがk298K=2.0×10−20であり、HSよりNOのほうが著しく速く反応する。即ち、物質により反応速度差(時間差)があるので、図6に示すように、SO、NO及びHSを含有する試料ガスにOを添加すると、まず、NOが酸化されてNOに変換されるNOの酸化反応が始まり、その後に、HSのSOへの酸化が始まる。
【0012】
従って、SO、NO及びHSを含有する試料ガスにO添加を行うと、NOが酸化されてNOに変換する。一定時間経過してNOが完全に酸化された(反応時間をt1とする)後に、紫外線照射すると、もともと試料ガスに含まれるSOのみに由来する蛍光が検出される。更に時間が経過して酸化反応が進行すると試料ガスに含まれるHSが酸化してSOが生じる(反応時間をt2とする)。そして、t2以降はもともと試料ガスに含まれるSOにHSに由来するSOが加わり、観察される蛍光強度も増加する。
【0013】
本発明はこの反応速度差に着目し利用したものであり、NOがNOに変換した後であって、かつ、HSがSOに変換する前(t1−t2間)に、紫外線照射を行い蛍光を検出するので、もともと試料ガスに含まれるSOのみに由来する蛍光を検出することができ、高い精度でSO濃度を測定することができる。
【0014】
更に、酸化が進みTRSの所定の割合が二酸化硫黄に変換(変換係数は検量線として利用される)された後に、再び紫外線照射を行い前記蛍光を検出することにより、試料ガスに含まれるSUMの濃度を測定することができ、また、SUMの濃度とSO濃度との差をとり、検量線を用いることによりTRSの濃度を算出することもできる。
ガソリンエンジンやディーゼルエンジンの燃料に含まれる硫黄成分はエンジンの燃焼によって種々の化合物に変換されて、エンジンオイルや潤滑油に含まれる硫黄成分と共に排気系を通って排出されるが、排ガス中の硫黄成分を測定すれば燃料中の硫黄化合物含有量が推定できると共に排気系の硫黄成分対策の評価もできる。
【0015】
このような本発明に係る硫黄化合物の分析方法を実施するためには、前記試料ガスの導入管と、前記導入管を流通する前記試料ガスにオゾン等の酸化試薬を添加する手段と、前記酸化試薬が添加された前記試料ガスに、紫外線を照射し、この紫外線照射により励起された二酸化硫黄が発する蛍光を検出する紫外線蛍光分析計とを備えている分析装置であって、一酸化窒素が二酸化窒素に変換した後であって、かつ、二酸化硫黄以外の硫黄化合物が二酸化硫黄に変換する前に、前記蛍光を検出するように構成してあるものを用いることができる。
【0016】
このような分析装置によれば、NOの干渉影響を受けずに、もともと試料ガスに含まれるSOのみの発する蛍光を検出することができるので、SO濃度を高い精度で測定することができる。
【0017】
SUMの濃度及びTRSの濃度も測定する場合には、前記紫外線蛍光分析計が蛍光を検出する蛍光検出器を複数備えているものであって、TRSがSOに変換した後にも、前記蛍光を検出するように構成してあることが好ましい。蛍光検出器の個数としては特に限定されないが、各物質固有の反応速度が分かれば、試料ガスに含まれる物質の個数分の蛍光検出器を備えることにより、各物質をその反応速度差で分離して検出できる。
【0018】
このような分析装置において、NOやO及び硫黄化合物の濃度等によっては、上記で決めた所定の時間と蛍光検出器の設置場所とがずれて適切に測定ができなかったり、設計時においては、そのままでは紫外線蛍光分析計のセルが長く(又は短く)なったり実現が難しい場合がある。本発明の目的の1つはこのような困難を解決することであり、蛍光を検出する箇所での試料ガスの酸化反応の進行度合いを、一酸化窒素が二酸化窒素に変換した後であって、かつ、二酸化硫黄以外の硫黄化合物が二酸化硫黄に変換する前になるように調整するために、前記導入管を流通する前記試料ガスに酸化試薬を添加する際に、前記試料ガス(流量をQsとする)の流通方向に対する前記酸化試薬(流量をQoとする)の噴出角度を調整する手段や、前記試料ガスに添加する酸化試薬の量を調整する手段が好適に用いられる。これらの手段により、酸化試薬の流量を調整してセル内の流速を調整し、第1の蛍光検出時(一酸化窒素が二酸化窒素に変換した後であって、かつ、二酸化硫黄以外の硫黄化合物が二酸化硫黄に変換する前)と第2の蛍光検出時(二酸化硫黄以外の硫黄化合物が二酸化硫黄に変換した後)とを所定値に分離可能となる。
【0019】
試料ガスとOの反応の遅速は、O濃度及び試料ガス濃度で決まる。NOの酸化を速く行おうしてO濃度を高くすると、TRSのSOへの酸化も速くなり、図6におけるt1−t2間が短くなり、所定時間及び所定位置の蛍光検出器では正確な測定ができなくなる。逆に、O濃度を低くすると、NOが酸化されるのも遅く、TRSのSOへの酸化も遅くなり所定長のセル内では酸化が終了しない、という事態も生じる。そこで、一旦、所定O濃度に固定した場合、測定対象の試料ガス濃度が変動しても、セル内でのガス流通方向における流速((Qs+Qo)/A、A:セル断面積)を変えることによって、紫外線蛍光分析計のセル長や蛍光検出器の設置位置等を変えずに、適切な測定を行うことができる。
【0020】
更に、試料中に含まれるSO、TRS及び粒子状物質(以下、PM(Particulate Matter)という)を含めた全硫黄化合物(以下、TS(Total Sulfur)という)の濃度を測定するには、第1のガスラインと、第2のガスラインと、第1及び第2のガスラインへの前記試料ガスの流れを切り替える弁とを有する前処理部を備えており、前記第1のガスラインには、前記試料ガス中の二酸化硫黄以外の硫黄化合物を二酸化硫黄に変換する手段が設けられていることが好ましい。
【0021】
このようなものであれば、試料ガスが第1のガスラインを流通するように切り替え弁を切り替えることにより、TSの濃度を測定することができ、試料ガスが第2のガスラインを流通するように切り替えることにより、上述のとおり、もともと試料ガスに含まれるSOのみの濃度、SUMの濃度を測定することができる。
【発明の効果】
【0022】
このような本発明によれば、試料ガスに含まれるNOの干渉を受けずに、もともと試料ガスに含まれるSOのみに由来する蛍光を検出することができ、高い精度でSO濃度を測定できる。試料ガスの酸化反応が進行した後で、再び蛍光を検出することによりSUMの濃度及びTRSの濃度を測定することもできる。更に、試料ガスに前処理を行うことによりTSの濃度を測定することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係る分析装置を図面を参照して説明する。
本分析装置は、図1に示すように、測定対象のSOとTRS、及び干渉成分であるNOを含む自動車の排ガス等の試料ガスGを流通させる流路系と、その流路系を流通する試料ガスGに添加するオゾンを生成するオゾンジェネレータ5と、前記流路系上に設けられて試料ガスG中のSOの濃度を測定する紫外線蛍光分析計2とを備えている。
【0024】
流路系は、試料ガスGを通過させる導入管1を備えており、導入管1の途中には試料ガスG中に混入している異物を除去する物理的なフィルタ3及び流量調整弁4が設けられている。また、導入管1には余剰の試料ガスGを外部に排出するバイパス管7が分岐接続されている。
【0025】
オゾンジェネレータ5は、純酸素(以下、Oという)からOを生成すものである。オゾンジェネレータ5には、O供給管6が接続されており、Oの供給管6の途中には、O供給流量を調整可能な流量調整弁8が介在している。Oの流量は、流量調整弁8の開度を調節させることによって制御される。
【0026】
供給管6の他端は、紫外線蛍光分析計2のセル21内であって蛍光検出器231より上流側に連通接続されており、O供給管6の先端に設けられたO供給管ノズル9がセル21内に挿入されている。
【0027】
オゾンジェネレータ5で生成したOは、O供給管6を流通して、その先端に設けられたO供給管ノズル9を介して紫外線蛍光分析計2のセル21内に供給される。
【0028】
供給ノズル9は、図2に示すように、複数のO供給孔が設けられた円筒形状を有するものであり、軸を中心として回転可能なように構成されている。O供給ノズル9を回転することにより、試料ガスGの流通方向に対するOの噴出角度を調整することができる。
【0029】
紫外線蛍光分析計2は、図3に示すように、試料ガスGが導入される試料室(セル)21、このセル21内部に向けて220nm付近の波長をもつ紫外線を照射する光源22、その紫外線照射により励起されて330nm付近に発光する蛍光を光学フィルタを通して選択して検出する蛍光検出器231、232を備えているものであり、O供給ノズル9が蛍光検出器231の上流側のセル21内に挿入されている。
紫外線蛍光分析計2に導入された試料ガスGには、O供給ノズル9から噴出したOが添加・混合され、これにより試料ガスG中のNO及びTRSの酸化反応が開始する。
セル21内を流通するO添加後の試料ガスGに紫外線が照射されると、蛍光検出器231においては、もともと試料ガスG中に存在したSOのみに由来する蛍光が検出され、蛍光検出器232においては、試料ガスGに含まれるSUMに由来する蛍光が検出される。
【0030】
NO干渉低減のためのO添加は、硫黄成分を酸化させる際には有効だが、SO測定の際にはTRSの一部をSOに酸化してしまうため、測定の障害となりうる。これを回避するため、本装置ではサンプルガスにOを添加するポイントをできるだけ検出部分に近づけて、入口付近の最適の位置に設けている。TRSはNOに比べてOによる酸化速度が遅いため、分析計内でのSOへの変換量を抑えることができる。
【0031】
紫外線蛍光分析計2のセル21に接続された排出管10には、Oを分解するデ・オゾネータ11、ドレンセパレータ12が接続されており、更にドレンセパレータ12にはドレンポット13及び開閉弁14付きのドレン管15が接続されている。
【0032】
なお、試料ガス導入管1及び紫外線蛍光分析計2のセル21は、例えば、図示しない電熱ヒータ等の加熱手段により常時加熱保持されている。この加熱手段は、試料ガス導入管1やセル21の内部で、試料ガスG中の水分が凝縮したり硫黄化合物が吸着したりしないように、サーモカップル(TC)による検出温度に基づく電流制御等によって、例えば90℃の温度に制御されるように構成されている。
【0033】
次に、本実施形態の分析装置を用いて試料ガスG中に含まれる硫黄化合物の濃度を紫外線蛍光法により測定し分析する方法について説明する。導入管1内に導入され流通している試料ガスG中に、オゾンジェネレータ5により生成されたOを、供給管6を経て添加混合すると、まず、試料ガスG中のNOがOと反応してNOに酸化される。
【0034】
このとき、試料ガスGとOの混合速度が速すぎたり、O濃度が濃すぎたりすると、NOがNOに酸化するだけではなく、TRSのSOへの酸化も進行してしまう。このため、O供給ノズル9を回転して試料ガスGにOを噴き込む角度を調整したり、流量調整弁8の開度調節によって、試料ガスGとOの流量及び流速を調整する。
【0035】
なお、紫外線蛍光分析計2のセル21内の所定位置で、O供給ノズル9を回転してOの噴射角度を変えて、NO及びHSによる干渉影響を紫外線蛍光分析計で測定した結果を図5に示す。図5に示すとおり、NOによる干渉影響はOの噴射角度に依存するが、HSの反応は遅いのでOの噴射角度に依存しないことが判る。なお、図5に示す角度は、図2(b)に示すように、試料ガスGの導入方向が0度であり、導出方向が180度である。
【0036】
紫外線蛍光分析計2のセル21内において、試料ガスGに対して、光源22から220nm付近の波長をもつ紫外線を照射すると、O供給ノズル9から所定距離離れた蛍光検出器231近傍のセル21内では、NOは酸化されてNOに変換しており、TRSは未酸化であるので、試料ガスG中にもともと存在したSOのみが励起する。この励起SOは直ちに緩和され330nm付近の蛍光を発する。この330nm付近の蛍光を光学フィルタを通して選択して蛍光検出器231により検出し、これを予め作成している検量線を用いて定量化することにより、試料ガスGに含まれるSOの濃度を、NOによる干渉影響を受けずに高精度に測定し分析することができる。
【0037】
蛍光検出器231から所定距離離れた蛍光検出器232近傍のセル21内では、酸化反応が進行し、試料ガスGに含まれるTRSも酸化してSOに変換しているので、試料ガスG中にはもともと存在したSOとTRSに由来するSOとが並存し、その両方が励起し、330nm付近の蛍光を発する。この330nm付近の蛍光を蛍光検出器232により検出し、上記のとおりのデータ処理を行うことにより、試料ガスG中に含まれるSOとTRSとを合わせたSUMの濃度を測定することができる。
【0038】
そして、SOとTRSとを合わせたSUMの濃度と、SOの濃度との差をとることにより、TRSのみの濃度を算出することができる。
【0039】
以上の動作は、全てオペレータが手動で行っても構わないし、一部を自動、一部を手動にしてもよい。
【0040】
このような本実施形態の分析装置によれば、NOをNOに酸化してNOの干渉を排除しつつ、TRSは未酸化の状態で、蛍光検出器231によりSO濃度を測定することにより、もともと試料ガス中に存在したSOのみの濃度を高い精度で測定することが可能になる。更に、TRSがSOに酸化してから蛍光検出器232によって再度SO濃度を測定することにより、試料ガスGに含まれるSUMの濃度を測定することができ、また、SUMの濃度ともともと試料ガスに含まれていたSOの濃度との差を計算することにより、TRSの濃度を算出することもできる。
【0041】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。例えば、流量調整弁8がなく、O供給管6の先端に設けられたO供給ノズル9の回転角度を調整することのみよって、OとNO及びTRSの反応速度を調整するように構成してもよく、逆に、O供給ノズル9が回転不能なものであって、流量調整弁8の開度調節のみによって流速を調整し、OとNO及びTRSの応答時間を調整するように構成してもよい。
【0042】
また、OとNO及びHSの反応速度を調整する手段としては、Oの圧力、温度を変化させて調整するものであってもよい。
【0043】
また、蛍光検出器の設置数を1個とし、もともと試料ガス中に存在したSOのみを検出するようにしてもよい。
【0044】
更に、蛍光検出器231、232付近のセル21内径をその上流及び下流の内径より大きくしてもよい。これによって、セル21内後方に設置した蛍光検出器232は高次の応答をするのでより効果的となる。
【0045】
また、図4に示すように、導入管1の上流に電気加熱炉18を有する前処理部を備えていてもよい。前処理部は、切り替え弁16と、その切り替え弁16において切り替え可能な第1のガスライン17と第2のガスライン19とを備えており、第1のガスライン17上には電気加熱炉18が設けられている。第1のガスライン17と第2のガスライン19は、フィルタ3の上流で合流して導入管1に接続されるように構成してある。電気加熱炉18には流量調整弁8b付きのO供給管6bが連通接続されており、このO供給管6bを経由してオゾンジェネレータ5で生成されたOが電気加熱炉18に供給される。
【0046】
図4に示す実施形態の分析装置を用いて試料ガスの分析を行う場合、切り替え弁16を切り替えて、前処理部に導入された試料ガスGが第1のガスライン17に流通するようにすると、試料ガスGは電気加熱炉18において1000℃程度の温度で燃焼され、試料ガスGに含まれるPM中の硫黄化合物も含むSO2以外の硫黄化合物(SO、TRS、CS2等)がSO2に変換される。更に、試料ガスG中に残存した未酸化のTRSも、紫外線蛍光分析計2においてOにより酸化されるので、蛍光検出器232によって検出される蛍光は、試料ガスGに含まれるTSに由来するものである。
【0047】
一方、前処理部に導入された試料ガスGが第2のガスライン19を流通するように切り替え弁16を切り替えると、図1に示す実施形態の分析装置を用いた場合と同様に分析が行われるので、紫外線蛍光分析計2において、蛍光検出器231ではもともと試料ガスGに含まれていたSO2のみに由来する蛍光が検出され、蛍光検出器232ではSUMに由来する蛍光が検出される。
【0048】
従って、切り替え弁16により試料ガスGの流路を第1のガスライン17と第2のガスライン19の間で切り替えることにより、SOのみの濃度、SUMの濃度、TRSの濃度、TSの濃度、更にTSの濃度とSUMの濃度の差を計算することによりPM中の硫黄化合物の濃度を測定することができる。
【0049】
なお、図7に示すように、2個の蛍光検出器231,232を並列に設けた従来型の分析装置においても、前記実施形態における紫外線蛍光分析計2のように、蛍光検出器231、232(なお、図7に示す実施形態では蛍光検出器に紫外線の光源が備わっている)に直接Oを吹き込むことによって、従来は残存TRSのための炉を加えて(符号18で示す点線部)2個の電気加熱炉18を設けていたところ、残存TRSの酸化は蛍光検出器内で行えることより、電気加熱炉18は1個ですむこととなる。そして、試料ガスGを第1のガスライン17に導入した場合は、蛍光検出器231ではTSから残存TRSを除いた硫黄化合物の濃度が測定でき、蛍光検出器232ではTSの濃度が測定できる。一方、試料ガスGを第2のガスライン19に導入した場合は、蛍光検出器231ではもともと存在したSOのみの濃度が測定でき、蛍光検出器232ではSUMの濃度が測定できる。
【0050】
その他、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によって、自動車の排ガス等の試料ガス中のSO濃度を高い精度で測定することができ、更に、SUMの濃度、及び、TRSの濃度を測定することも可能である。また、前処理を行うことにより、TSの濃度、PM中の硫黄化合物の濃度を測定することも可能となる。これによりエンジン及び排気系の種々の評価を適正に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態に係る分析装置全体の概要を示す構成図。
【図2】同実施形態におけるO供給ノズルの概要図であって、(a)はO供給ノズルの部分斜視図であり、(b)はX方向から見たO供給ノズル近傍の紫外線蛍光分析計のセルの概念図である。
【図3】同実施形態における紫外線蛍光分析計のX方向から見た模式的断面図。
【図4】他の実施形態に係る分析装置全体の概要を示す構成図。
【図5】NO及びHSによる干渉影響を紫外線蛍光分析計で測定した結果を示す表。
【図6】NO及びHSのOによる酸化反応の進行状況を示すグラフ。
【図7】他の実施形態に係る分析装置の概要を示す構成図。
【符号の説明】
【0053】
1…試料ガス導入管
2…紫外線蛍光分析計
231、232…蛍光検出器
5…オゾンジェネレータ
6…O供給管
8…流量調整弁
9…O供給ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化硫黄とそれ以外の硫黄化合物、及び一酸化窒素を含有する試料ガスに紫外線を照射し、この紫外線照射により励起された二酸化硫黄が発する蛍光を検出して前記試料ガス中の硫黄化合物の濃度を測定する分析方法であって、
一酸化窒素を酸化して二酸化窒素に変換した後であって、かつ、二酸化硫黄以外の硫黄化合物が酸化して二酸化硫黄に変換する前に、前記蛍光を検出することを特徴とする分析方法。
【請求項2】
更に、二酸化硫黄以外の硫黄化合物を酸化して二酸化硫黄に変換した後に、前記蛍光を検出する請求項1記載の分析方法。
【請求項3】
一酸化窒素及び二酸化硫黄以外の硫黄化合物の酸化が、オゾンと反応することによる請求項1又は2記載の分析方法。
【請求項4】
二酸化硫黄とそれ以外の硫黄化合物、及び一酸化窒素を含有する試料ガス中の硫黄化合物の濃度を測定する分析装置であって、
前記試料ガスの導入管と、
前記導入管を流通する前記試料ガスに酸化試薬を添加する手段と、
前記酸化試薬が添加された前記試料ガスに、紫外線を照射し、この紫外線照射により励起された二酸化硫黄が発する蛍光を検出する蛍光検出器とを備えているものであり、
一酸化窒素が二酸化窒素に変換した後であって、かつ、二酸化硫黄以外の硫黄化合物が二酸化硫黄に変換する前に、前記蛍光を検出するように構成してあることを特徴とする分析装置。
【請求項5】
前記蛍光を検出する蛍光検出器を一つ又は複数備えているものであって、二酸化硫黄以外の硫黄化合物が二酸化硫黄に変換した後にも、前記蛍光を検出するように構成してある請求項4記載の分析装置。
【請求項6】
前記導入管を流通する前記試料ガスに酸化試薬を添加する際に、前記試料ガスの流通方向に対する前記酸化試薬の噴出角度を調整する手段を備えている請求項4又は5記載の分析装置。
【請求項7】
前記試料ガスに添加する酸化試薬の流量を調整する手段を備えている請求項4、5又は6記載の分析装置。
【請求項8】
前記酸化試薬が、オゾンである請求項4、5、6又は7記載の分析装置。
【請求項9】
前記試料ガス流量と前記酸化試薬流量の比が一定である請求項4、5、6、7又は8記載の分析装置。
【請求項10】
第1のガスラインと、第2のガスラインと、第1及び第2のガスラインへの前記試料ガスの流れを切り替える弁とを有する前処理部を備えており、
前記第1のガスラインには、前記試料ガス中の二酸化硫黄以外の硫黄化合物を二酸化硫黄に変換する手段が設けられている4、5、6、7、8又は9記載の分析装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−322863(P2006−322863A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−147494(P2005−147494)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2005年5月18日 社団法人自動車技術会発行の「学術講演会前刷集 No.59−05 2005年春季大会」に発表
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】