説明

硫黄固化体組成物

【課題】施工期間が短く、硫黄及び/又は改質硫黄が溶融状態の場合の流動性に優れ、硬化物とした際の強度、表面精度にも優れ、クラックの発生も抑制された、小ガス炎着火試験によって非危険物と検定されうる硫黄固化体組成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、硫黄及び/又は改質硫黄100質量部、フィラー20〜100質量部からなる硫黄中間資材18〜30質量%、粗骨材38質量%を超え47質量%以下、及び細骨材30〜38質量%未満を含み、当該細骨材が、粒径判定実績率(JIS A5005)が53%を超えることを特徴とし、特に、道路橋梁におけるアスファルト又はコンクリート舗装の間隙に設ける道路橋梁継目部等の道路ジョイント用硫黄固化体組成物として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫黄硬化体組成物に関し、特に、伸縮継手や補強鉄筋を配した道路橋梁継目等の道路ジョイント部への充填に適した流動性を示し、硬化後の強度及び表面精度に優れる道路ジョイント用等の硫黄固化体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
道路橋梁の継目部は、該橋梁の伸縮を許容しながら道路上の交通を円滑にするために、通常、伸縮継手を備える構造となっている。一般には、道路橋梁におけるアスファルト又はコンクリート舗装の間隙に、伸縮継手を配置し、該伸縮継手とアスファルト又はコンクリート舗装との間にセメントコンクリートを打設することにより伸縮継手を固定した構造となっている。
このようなセメントコンクリートを打設する場合には、該コンクリートの強度が発現するまでに、例えば、2〜3日間の養生期間が必要である。このため、該養生期間が経過するまでは、その道路の通行ができず、交通障害が避けられない。
そこで、早期の道路開放を可能にするために、セメントコンクリートに代えて速硬性コンクリートや、硫黄及び骨材を用いた硫黄固化体組成物の使用が考えられる。しかし、特に硫黄固化体組成物は、打設して冷却する際に収縮し窪む現象が生じ易いため、道路の表面精度を確保することが困難である。一般に、表面精度の確保は、自動車通過時の衝撃や騒音を防止するために非常に重要であって、レベル装置による測定で、周囲とのズレを2mmまでとする表面精度が要求されている。
ところで、硫黄固化体組成物における硫黄含有割合を減少し、骨材割合を多くすることで硫黄分の硬化時の収縮が抑制されることは知られている。しかし、このような硫黄含有割合を減少させると、硫黄固化体組成物の流動性が低下するため、伸縮継手等を備える構造の道路ジョイント部においては、その細部まで充填することが困難となり、打設不良が生じる。
また、道路ジョイント部は、硫黄固化体組成物を充填する層が薄く、周囲に拘束され、特にS字になっている場合も含めて、硫黄固化体にクラックが発生する可能性も高い。更に、硫黄は小ガス炎着火試験によって検定される危険物であるため、道路ジョイントに用いる場合には、非危険物とする必要がある。
【0003】
ところで、ジシクロペンタジエン等の硫黄改質剤により変性させた改質硫黄と骨材とを含む硫黄中間資材を利用した、各種土木・建設材料について、従来から多数提案がなされている。例えば、特許文献1には、小ガス炎着火試験によって検定される非危険物とする技術が開示されている。しかし、上述の道路ジョイントに要求される性能を充足する硫黄固化体組成物については知られていない。
【特許文献1】特開2005−82475号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、施工期間が短く、硫黄及び/又は改質硫黄が溶融状態の場合の流動性に優れ、硬化物とした際の強度、表面精度にも優れ、クラックの発生も抑制された、小ガス炎着火試験によって非危険物と検定されうる、道路ジョイント用等に適した硫黄固化体組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、骨材の種類、配合割合、骨材の粒度分布を制御することで、硫黄及び/又は改質硫黄の含有割合を少なくし、硬化時の収縮が抑制でき、かつ高い流動性をあわせ持った組成を見出し、本発明を完成した。
【0006】
本発明によれば、上記構成を採用することにより、硫黄及び/又は改質硫黄100質量部、フィラー20〜100質量部からなる硫黄中間資材18〜30質量%、粗骨材38質量%を超え47質量%以下、及び細骨材30〜38質量%未満を含み、当該細骨材が、粒径判定実績率(JIS A5005)が53%を超えることを特徴とする硫黄固化体組成物が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の硫黄固化体組成物は、上記構成を採用することで、特に、各成分の配合割合と、特定の細骨材を用いることにより、硫黄及び/又は改質硫黄が溶融状態の場合の流動性に優れ、硬化物とした際の強度、表面精度にも優れ、クラックの発生も抑制された、小ガス炎着火試験によって非危険物と検定されうる、道路橋梁継目部等の道路ジョイント部の充填材等として適した性能を発揮する。従って、例えば、道路ジョイント用として用いることにより、従来の道路ジョイント部に使用されているコンクリート組成物に比べて短期間に施工することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の組成物は、硫黄及び/又は改質硫黄とフィラーとからなる硫黄中間資材、粗骨材、並びに特定の細骨材を特定割合で含む。
本発明の組成物は、任意の構造に硬化させることができるので、例えば、パネル材、床材、壁材、瓦、水中構造物、下水管、マンホール、ボックスカルバートに利用することができ、特に、道路橋梁等の道路ジョイントにおけるアスファルト又はコンクリート舗装の間隙への充填に適している。
前記硫黄は、例えば、天然産又は、石油や天然ガスの脱硫によって生成した硫黄が使用できる。また、改質硫黄は、上記硫黄を硫黄改質剤により重合したものであって、硫黄と硫黄改質剤との反応物である。
【0009】
硫黄改質剤としては、例えば、炭素数4〜20のオレフィン系炭化水素又はジオレフィン系炭化水素、具体的には、リモネン、ピネン等の環状オレフィン系炭化水素、スチレン、ビニルトルエン、メチルスチレン等の芳香族炭化水素、ジシクロペンタジエン及びそのオリゴマー、シクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、ビニルシクロヘキセン、ビニルノルボルネン、エチリデンノルボルネン、シクロオクタジエン等のジエン系炭化水素等の1種又は2種以上の混合物が挙げられる。
改質硫黄は、硫黄と硫黄改質剤とを溶融混合することにより得ることができる。この際、硫黄改質剤の使用割合は、硫黄と硫黄改質剤との合計量に対して、通常0.1〜20質量%、特に、1.0〜10質量%の割合が好ましい。改質硫黄を用いることにより、得られる硫黄固化体の機械的強度等を改善することができる。
【0010】
前記フィラーは、75μmの篩を大半が通過する無機微粉末であって、好ましくは75μmの篩算分が50%以下、特に好ましくは20%以下、更に好ましくは10%以下である。
フィラーは、得られる硫黄固化体に、優れた耐酸性を付与するために、少なくともCa及びSiを含み、微粉末中のCa、Si、Alを酸化物換算したCaO/(SiO2+Al2O3)の割合が、質量比で0.2以下が好ましい。前記フィラー中のCaO/(SiO2+Al2O3)の割合は、Ca量をCaOに換算し、Si量をSiO2に換算して、Al量をAl2O3に換算してそれぞれ質量比により決定できる。この際、Alは必ずしも含まれなくて良い。
このようなフィラーとしては、例えば、石炭灰、珪砂、シリカヒューム、石英粉、砂、ガラス粉末、電気集塵灰等のシリカ成分を主体とする微粉末の1種又は2種以上が挙げられる。また、石炭灰としては、発電用、加熱用等の各種石炭焚燃焼炉から排出される、例えば、フライアッシュ、クリンカアッシュ、ボトムアッシュが使用できる。
フィラーの表面積は、1000m2/以上である。
【0011】
前記硫黄中間資材において、フィラーの含有割合は、硫黄及び/又は改質硫黄100質量部に対して、20〜100質量部、特に25〜35質量部が好ましい。フィラーの含有割合が20質量部未満では、所望の機械的強度が発揮されない恐れがあり、また、100質量部を超える場合には、フィラーの分散性が低下し、着火し易くなる恐れがある。
【0012】
前記硫黄中間資材の調製は、例えば、硫黄及び/又は改質硫黄の溶融物と、前記フィラーとを120〜160℃で混合することにより得ることができる。硫黄中間資材を固形物とし、後述する粗骨材や細骨材と混合する際に加熱溶融させる場合の固形物を得るには、所望形態の型枠等に導入し、振動等を与えながら冷却固化する方法により得ることができる。
前記改質硫黄の溶融物は、硫黄と硫黄改質剤とを公知の各種加温可能なミキサー等を用いて、120〜160℃の範囲で溶融混合し、例えば、硫黄を充分に改質させるために、140℃における粘度が通常0.05〜1.0Pa・s、好ましくは0.05〜0.5Pa・s程度となるように混合することにより得ることができる。
硫黄及び/又は改質硫黄の溶融物及びフィラーの混合は、フィラーを予め120〜155℃程度に加熱し、流動状態を維持する所望温度で混合することにより行うことができる。
【0013】
本発明の組成物において硫黄中間資材の含有割合は、組成物全量基準で18〜30質量%、好ましくは20〜25質量%である。18質量%未満では、骨材料が多くなり、硫黄及び/又は改質硫黄が溶融状態の際に、所望の流動性が得られ難くなり、例えば、道路ジョイントに用いた場合、該ジョイント部への細部にわたる充填が困難になる。一方、30質量%を超える場合には、道路ジョイント部等の所望箇所へ充填後、硬化させた際に、収縮率が高くなり、表面精度が低下し、更にはクラックが発生する恐れがある。
【0014】
本発明に用いる粗骨材は、JIS A 5005(コンクリート用砕石及び砕砂)の表4に規定される砕石2505、2005、1505、2515、2015における40mm篩、25mm篩や20mm篩を通過し、5mm篩に80%以上残存する粒度分布を有する砂利等の砕石を好ましく使用することができる。
粗骨材の密度は、JIS A 1110により測定することができ、絶対乾燥状態における密度は2.2g/cm3以上である。
粗骨材の形態は、表面が滑らかな球形に近い場合、得られる硫黄固形物の強度が低下する傾向にある。
【0015】
本発明の組成物において粗骨材の含有割合は、組成物全量基準で38質量%を超え47質量%以下、好ましくは40〜45質量%である。38質量%以下の場合には、例えば、道路ジョイントに用いた場合、該ジョイント部への細部にわたる充填を可能にする流動性を確保できない恐れがある。一方、47質量%を超える場合には、分散性に劣り、所望の強度が得られない恐れがある。
【0016】
本発明に用いる細骨材は、JIS A 5005(コンクリート砕石及び砕砂)の表4に規定される「砕砂」の粒度分布を有する無機細骨材や、JIS A 5011-2(コンクリート用スラグ骨材第2部フェロニッケルスラグ(FNS))の表5に規定される5mmFNS細骨材、2.5mmFNS細骨材、1.2mmFNS細骨材、5〜0.3mmFNS細骨材の粒度分布を有する細骨材であって、JIS A 5005に規定される粒径判定実績率(球状のものを表すパラメータであって、数値の大きい方がより割合的に球状に近いものを示す)が53%を超える細骨材が好ましく挙げられる。
粒径判定実績率が53%以下では、得られる組成物の流動性が低下し、道路ジョイント部等への充填が困難である。粒径判定実績率の上限は、組成物の流動性等を考慮した場合、高い方が好ましいが、上記細骨材の場合その上限値は67〜68%程度である。
上記粒径判定実績率を示す細骨材としては、川砂、風砕FNSが好ましく挙げられる。ここで、風砕とは、空気等の気体によって溶融FNSを粉砕、急冷することである。この風砕により、より球形に近い形状のFNSが得られる。また、FNS細骨材としては、徐冷FNS細骨材も知られているが、この細骨材は、通常、粒径判定実績率が52〜53%であって、本発明の組成物に用いる細骨材としては不向きであることがわかった。更に、細骨材として一般的な製鋼スラグは、通常、粒径判定実績率が49%以下であって、本発明の組成物に用いる細骨材としては不向きであることがわかった。
【0017】
細骨材の密度は、JIS A 1109により測定することができ、絶対乾燥状態における密度が2.5g/m3程度である。
細骨材の表面積は、1〜10m2/g程度である。
【0018】
本発明の組成物において細骨材の含有割合は、組成物全量基準で30〜38質量%未満、好ましくは32〜36質量%である。30質量%未満では、硬化させた際に所望の機械的強度が得られない恐れがあり、38質量%以上の場合には、分散性が低下する恐れがある。
【0019】
本発明の組成物においては、上記硫黄中間資材、粗骨材、特定の細骨材に加えて、本願発明の所望の効果が損なわれない範囲で、例えば、軽石、パーライト等の軽量骨材、繊維質充填材、薄片状粒子を含有させることもできる。
繊維質充填材としては、例えば、カーボンファイバー、グラスファイバー、鋼繊維、アモルファス繊維、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、アラミド繊維又はこれらの混合物が挙げられる。これらの含有割合も適宜決定することができる。
【0020】
本発明の組成物を道路ジョイントに用いる場合、該組成物は、道路ジョイント部におけるアスファルトとコンクリートの間隙であって、伸縮継手や補強鉄筋等が配設された凹部の隅々まで行き渡る流動性を有する必要がある。このため、硫黄中間資材が溶融状態である場合の組成物のスランプ値は、6〜12cm(高さ15cmのモルタル用スランプコーンを使用して測定)であることが好ましい。
本発明の組成物を硬化させた際の表面精度は、例えば、道路ジョイント部に用いる場合、該道路ジョイント部に要求される、レベル装置によって測定される周囲とのズレが2mmまでであることが好ましい。
本発明の硫黄固化体は、JIS A 1108に従って測定した圧縮強度が、25N/mm2以上、好ましくは40〜100N/mm2である。
【0021】
本発明の組成物を施工するには、例えば、130〜150℃に加熱溶融した硫黄中間資材と、130〜155℃程度に予熱した細骨材及び粗骨材等とを、130〜160℃で混合し、該混合物を、所望箇所に充填し、冷却固化させることにより行うことができる。例えば、道路ジョイント部におけるアスファルトとコンクリートの間隙に充填する場合には、伸縮継手や補強鉄筋等が配設された凹部に組成物を導入し、締め固めながら冷却固化させることにより行うことができる。該凹部への導入は、内部クラックや硬化時の硫黄や改質硫黄の収縮等をより抑制するために複数回に分けて行うことも可能である。
道路ジョイント部における充填箇所の高さは、通常、15cm程度と浅いので、本発明の組成物における骨材が極端に沈澱等する前に速やかに硬化させ、所望の強度を発揮させることができる。
本発明の組成物を上記凹部に導入するにあたっては、例えば、公知の振動装置や超音波照射装置を用いて導入することもできる。
【0022】
本発明の組成物を道路ジョイントに適用して施工するにあたっては、組成物充填箇所の長手方向の距離、即ち、道路橋梁継目部等の道路ジョイント部の長手方向の距離が長い場合には、組成物の導入、硬化時における管理を容易にするために、該長手方向を横切るように1又は2以上の仕切り板を配設し、複数に区分けして施工することもできる。
このような施工は、通常、現場において実施するが、工場内等により実施し、道路ジョイント部のプレキャストを製造した後、現場において組込むことも可能である。
【実施例】
【0023】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが本発明はこれらに限定されない。
実施例1
道路幅3m、アスファルト舗装間隙の継目部長さ約75cm、深さ15cmの道路橋梁継目部を想定し、概略同じ大きさとなるように金属製型枠により凹部を作製し、該凹部内に常法により、伸縮継手及び補強鉄筋を配設した。
硫黄100質量部及び硫黄改質剤5質量部を130〜140℃で加熱溶融し、溶融改質硫黄を調製し、該溶融改質硫黄に、予熱したフライアッシュ50質量部を混合して、硫黄中間資材とした。該硫黄中間資材155質量部(24質量%)に、予熱した風砕スラグであるフェロニッケルスラグ(JIS A 5011-2に規定する5mmFNS細骨材)200質量部(32質量%)及び予熱した砂利(JIS A 5005、砕石2005)275質量部(44質量%)を混合し、溶融改質硫黄含有組成物を調製した。ここで使用したフェロニッケルスラグ(風砕スラグ)はJIS A 5005に基づき粒径判定実績を測定したところ54%であった。
得られた溶融改質硫黄含有組成物の流動性を計る測定法するために、床に敷いた加熱済みの鉄板の上に150℃に加熱した高さ15cmのモルタル用スランプコーンを載置し、2段階に分けて該溶融物を充填した。1段階充填するごとに突き棒を用いて25回ずつ突いて締め固めてからコーンをゆっくりと上部に引き抜いた。溶融改質硫黄含有組成物は流れるように崩れ、その高さの減少分をスランプ値とした。この際のスランプ値は9.6cmであり十分な流動性を示した。
この溶融改質硫黄含有組成物を、上記伸縮継手及び補強鉄筋を配設した凹部へ導入し、120分間で冷却硬化させて、道路橋梁継目部を製造した。
得られた道路橋梁継目部における改質硫黄固化体の表面精度を、硬化3日後にレベル装置(株式会社トプコン製)を用いて測定したところ約2mm程度と良好であった。また3日後に目視にて確認したところ、クラックは見られなかった。
該改質硫黄固化体のJIS A 1108に準じて測定した圧縮強度は、82N/mm2であり、消防法危険物第2類可燃性固体類の判定試験における小ガス炎着火試験検定の結果は、非危険物であった。
組成及び各測定結果を表1に示す。
【0024】
実施例2
硫黄100質量部及び硫黄改質剤5質量部を130〜140℃で加熱溶融し、溶融改質硫黄を調製し、該溶融改質硫黄に、予熱したフライアッシュ50質量部を混合して、硫黄中間資材とした。該硫黄中間資材155質量部(24質量%)に、予熱した川砂(JIS A 5005、表4の砕砂)200質量部(32質量%)及び予熱した砂利275質量部(44質量%)を混合し、溶融改質硫黄含有組成物を調製した。ここで使用した川砂はJIS A 5005に基づき粒径判定実績を測定したところ57%であった。
得られた溶融改質硫黄含有組成物の流動性を実施例1と同様に測定したところ、スランプ値は9.8cmであり十分な流動性を示した。
この溶融改質硫黄含有組成物を、実施例1と同様に、伸縮継手及び補強鉄筋を配設した凹部へ導入し、120分間で冷却硬化させて、道路橋梁継目部を製造した。
得られた道路橋梁継目部における改質硫黄固化体の表面精度を、実施例1と同様に測定したところ約2mm程度と良好であった。また3日後に目視にて確認したところ、クラックは見られなかった。
該改質硫黄固化体の強度は、75N/mm2であり、小ガス炎着火試験検定の結果は、非危険物であった。
組成及び各測定結果を表1に示す。
【0025】
比較例1
硫黄100質量部及び硫黄改質剤5質量部を130〜140℃で加熱溶融し、溶融改質硫黄を調製し、該溶融改質硫黄に、予熱したフライアッシュ50質量部を混合して、硫黄中間資材とした。該硫黄中間資材155質量部(24質量%)に、予熱した製鋼スラグ200質量部(32質量%)及び予熱した砂利(JIS A 5005、砕石2005)275質量部(44質量%)を混合し、溶融改質硫黄含有組成物を調製した。ここで使用した製鋼スラグはJIS A 5005に基づき粒径判定実績を測定したところ50%であった。
得られた溶融改質硫黄含有組成物の流動性を実施例1と同様に測定したところ、スランプ値は2.1cmであり、ほとんど流動性が得られなかった。
この溶融改質硫黄含有組成物を、実施例1と同様に、伸縮継手及び補強鉄筋を配設した凹部へ導入したところ、流動性がほとんど無いため鉄筋間に該溶融物が導入されず打設不良となった。
組成及び各測定結果を表1に示す。
【0026】
比較例2
硫黄100質量部及び硫黄改質剤5質量部を130〜140℃で加熱溶融し、溶融改質硫黄を調製し、該溶融改質硫黄に、予熱したフライアッシュ50質量部を混合して、硫黄中間資材とした。該硫黄中間資材155質量部(24質量%)に、予熱した風砕スラグであるフェロニッケルスラグ(JIS A 5011-2に規定する5mmFNS細骨材)240質量部(38質量%)及び予熱した砂利(JIS A 5005、砕石2005)240質量部(38質量%)を混合し、溶融改質硫黄含有組成物を調製した。ここで使用したフェロニッケルスラグ(風砕スラグ)はJIS A 5005に基づき粒径判定実績を測定したところ54%であった。
得られた溶融改質硫黄含有組成物の流動性を実施例1と同様に測定したところ、スランプ値は3.2cmであり、ほとんど流動性が得られなかった。
この溶融改質硫黄含有組成物を、実施例1と同様に、伸縮継手及び補強鉄筋を配設した凹部へ導入したところ、流動性がほとんど無いため鉄筋間に該溶融物が導入されず打設不良となった。
組成及び各測定結果を表1に示す。
【0027】
比較例3
硫黄100質量部及び硫黄改質剤5質量部を130〜140℃で加熱溶融し、溶融改質硫黄を調製し、該溶融改質硫黄に、予熱したフライアッシュ50質量部を混合して、硫黄中間資材とした。該硫黄中間資材155質量部(34質量%)に、予熱した砂利(JIS A 5005、砕石2005)300質量部(66質量%)を混合し、溶融改質硫黄含有組成物を調製した。
得られた溶融改質硫黄含有組成物の流動性を実施例1と同様に測定したところ、スランプ値は9.2cmであった。
この溶融改質硫黄含有組成物を、実施例1と同様に、伸縮継手及び補強鉄筋を配設した凹部へ導入したところ、時間経過により微細なクラックが生じた。
該改質硫黄固化体の強度は、55N/mm2であり、小ガス炎着火性試験検定の結果は、非危険物であった。
組成及び各測定結果を表1に示す。
【0028】
比較例4
硫黄100質量部及び硫黄改質剤5質量部を130〜140℃で加熱溶融し、溶融改質硫黄を調製し、該溶融改質硫黄に、予熱したフライアッシュ50質量部を混合して、硫黄中間資材とした。該硫黄中間資材155質量部(20質量%)に、予熱した風砕スラグであるフェロニッケルスラグ(JIS A 5011-2に規定する5mmFNS細骨材)630質量部(80質量%)を混合し、溶融改質硫黄含有組成物を調製した。ここで使用したフェロニッケルスラグ(風砕スラグ)はJIS A 5005に基づき粒径判定実績を測定したところ54%であった。
得られた溶融改質硫黄含有組成物の流動性を実施例1と同様に測定したところ、スランプ値は1.5cmであり、ほとんど流動性が得られなかった。
この溶融改質硫黄含有組成物を、実施例1と同様に、伸縮継手及び補強鉄筋を配設した凹部へ導入したところ、流動性がほとんど無いため鉄筋間に該溶融物が導入されず打設不良となった。
組成及び各測定結果を表1に示す。
【0029】
比較例5
硫黄100質量部及び硫黄改質剤5質量部を130〜140℃で加熱溶融し、溶融改質硫黄を調製し、該溶融改質硫黄に、予熱したフライアッシュ50質量部を混合して、硫黄中間資材とした。該硫黄中間資材155質量部(24質量%)に、予熱した徐冷スラグであるフェロニッケルスラグ(JIS A 5011-2に規定する5mmFNS細骨材と同様の粒度へ調整したもの)200質量部(32質量%)及び予熱した砂利(JIS A 5005、砕石2005)275質量部(44質量%)を混合し、溶融改質硫黄含有組成物を調製した。ここで使用したフェロニッケルスラグ(徐冷スラグ)はJIS A 5005に基づき粒径判定実績を測定したところ53%であった。
得られた溶融改質硫黄含有組成物の流動性を実施例1と同様に測定したところ、スランプ値は4.2cmであり、ほとんど流動性が得られなかった。
この溶融改質硫黄含有組成物を、実施例1と同様に、伸縮継手及び補強鉄筋を配設した凹部へ導入したところ、流動性がほとんど無いため鉄筋間に該溶融物が導入されず打設不良となった。
組成及び各測定結果を表1に示す。
【0030】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄及び/又は改質硫黄100質量部、フィラー20〜100質量部からなる硫黄中間資材18〜30質量%、粗骨材38質量%を超え47質量%以下、及び細骨材30〜38質量%未満を含み、当該細骨材が、粒径判定実績率(JIS A5005)が53%を超えることを特徴とする硫黄固化体組成物。
【請求項2】
前記細骨材が、川砂及び/又は風砕したフェロニッケルスラグであることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項3】
道路ジョイント用である請求項1又は2記載の組成物。

【公開番号】特開2009−203122(P2009−203122A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−47704(P2008−47704)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【出願人】(594094124)財団法人阪神高速道路管理技術センター (7)
【出願人】(508061549)阪神高速技術株式会社 (20)
【Fターム(参考)】