説明

硬化促進剤としての金属化ナノ構造化学物質

金属化ポリヘドラルオリゴメリックメタラセスキオキサン及び金属化ポリヘドラルオリゴメリックメタロシリケートが、ポリマーコイル、ドメ−ン、鎖及びセグメントを含むポリマーの微視的構造の補強のための硬化促進剤、触媒及びアロイ化剤として、分子レベルで組み込まれる。それらのポリマーとの目的に応じた適合性の理由で、ポリヘドラルオリゴメリックメタラセスキオキサン(POMS)は、通常の混合プロセスにより、ポリマー中に簡単に選択的に組み込むことができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2005年9月29日に出願された米国仮特許出願番号60/722,322の利益を主張するものである。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般的には、ポリマーの物理的、化学的及び電子的特性を向上するための、硬化促進剤、触媒及びアロイ化剤としての金属化ナノ構造化学物質を使用するための方法に関する。
【0003】
発明の背景
ポリマーの特性は、形態学、組成、熱力学及び加工条件のような変数によって、高度に制御できるものと長い間認識されてきた。同様に、ポリマーの形態学とその結果得られる物理的特性の双方をある程度制御するために、種々のサイズ及び形のフィラー(例、炭酸カルシウム、シリカ、カーボンブラック等)が、ポリマーへ挿入されることができることが知られている。更に、金属は、ポリマー鎖の硬化(連結性)を触媒するために使用されることが知られている。結果得られるポリマーの物理的特性は、触媒の性質、硬化の程度及び硬化メカニズムにより制御することができる。例えば、ポリウレタン、シリコ−ン、ビニルエステル及びポリジエンは、金属により触媒された化学的架橋の形成により通常硬化する。追加的に、ビスマレインイミド、フェノール、ノボラック、ジエン及びビニルポリマーは、金属触媒の助けにより硬化することができる。
【0004】
最近のナノ科学の発展は、その特定の正確な化学式、ハイブリッド(無機-有機)化学組成及び従来の化学分子のサイズ(0.3-0.5nm)に比べて、また、より大きなサイズの従来のフィラー(50nmより大)に比べて、大きな物理的サイズに基づいて、金属化ナノ構造化学物質として最も記載される材料を商業的な量で経済効率的に生産する能力をいまや可能とした。触媒的に活性な金属を含むナノ構造化学物質は、ポリマー鎖とそれ自身の間、ポリマー鎖とフィラー及び表面との並びにポリマー鎖とナノ構造化学物質との連結性を促進するためのフィラー及び触媒両方として作用する。
【0005】
ナノ構造化学物質は、低コストなポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサン(POSS)及びポリヘドラルオリゴメリックシリケート(POS)に基づくものにより最も代表される。図1は、全てのシリコン含有系がPOSSとして知られ、金属化系が、POMSとして知られる金属化ナノ構造化学物質のいくつかの代表的例を示す。POMS(ポリヘドラルオリゴメリックメタロセスキオキサン)は、中央の籠枠組の内部或いは外部に1以上の金属を含む籠である。ある例では、籠は、1以上の金属原子、或いは1以上のタイプの金属原子若しくは金属合金を含んでもよい。
【0006】
全てのシリコン含有POSS籠のように、POMSは、主として無機珪素-酸素結合から構成されるが、籠の境界或いは内部に1以上の金属原子をも含む内部枠組を含むハイブリッド(即ち、有機-無機)組成物を含む。(図2)金属及び珪素-酸素結合枠組に加えて、POMSナノ構造化学物質の外部は、反応性及び非反応性有機官能基(R)両方により覆われ、ナノ構造と、有機ポリマーとの適合性及び適応性を保証している。金属化ナノ構造POSS化学物質のこれらの及び他の特性は、米国特許第5589562号で詳細に考察されている。金属フィラー若しくは粒子とは異なり、これら金属化ナノ構造化学物質は、直径0.5nm〜5.0nmの範囲であることができ、低密度で(2.5g/ml未満)で、ポリマー及び溶媒に高度に分散可能であり、固有の難燃性を示し、独自の光学的及び電子的特性を有する。
【0007】
フィラー、可塑化剤、触媒及びポリマー形態学に関する先行技術は、ポリマー鎖、コイル及びセグメントの動き、硬化の程度或いは光学的及び電子的特性を分子レベルで適正に制御することができなかった。したがって、制御された直径(ナノ寸法)、分布を有し、目的に合わせることができる化学的官能性を有するポリマー系のための、適正なサイズの補強に対するニーズが存在する。
【0008】
本発明の概要
本発明は、ポリマー中に、ごく普通にPOMSと称される金属化ナノ構造化学物質を組み込むことによって、ポリマー組成物を調製する方法を記載する。得られたポリマーは、それ自体、また、積層体或いは相互貫入ネットワークを形成する他のポリマーと組み合わせて、または繊維、クレー、ガラスミネラル、ナノ金属化POSS籠、金属粒子及び他のフィラーのような巨視的補強と組み合わせると、全体として有益である。得られたポリマーは、ポリマー、複合材料及び金属表面、皮膚及び頭髪への接着性、改善された親水性及び表面特性のような所望の物理的特性を有するポリマー組成物を製造するために、特に有益である。POSS上のR基が全体的に有機基であると、それらは、撥水性、減少した溶融粘度、低誘電定数、磨耗抵抗性、耐火性、生物学的適合性及び光学的品質を提供する。
【0009】
ここに紹介される、好ましい組成物は、以下の2つの主な材料の組み合わせを含む。
【0010】
(1)ポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサン、ポリヘドラルオリゴメリックシリケート、ポリオキソメタレート、カルボラン、ボラン及び多形カーボンのような化学クラスからのナノ構造ポリマーを含む、金属化ナノ構造化学物質、金属化ナノ構造オリゴマー若しくは金属、及び (2)スチレン樹脂、アミド、ニトリル、オレフィン、芳香族オキシド、芳香族スルフィド、エステル、イオノマー、アクリル樹脂、カーボネート、エポキシ、エーテル、エステル、シリコ−ン、イミド、アミド、ウレタン、フェノール樹脂、シアネートエステル、尿素樹脂、レゾール、アナリン、フルオロポリマー及び合成並びに天然ゴムのような全ての架橋可能なポリマー系。ポリマーは、生物学的或いは天然プロセス由来の官能基及び半結晶質、結晶質、非晶質若しくはゴム状ポリマーを含む系を含めてである。
【0011】
金属化ナノ構造化学物質(POMS)のポリマー中への組み込みは、好ましくは、ポリマー、プレポリマー若しくはモノマー或いはオリゴマーの混合物と共にPOMSを配合し若しくは混合することにより、達成される。溶融ブレンド、乾式ブレンド、溶液ブレンド及び反応性及び非反応性ブレンドを含むあらゆるタイプの配合及び混合技術が有効である。
【0012】
均一な混合に加えて、ポリマーの特定領域へのナノ構造化学物質の選択的組み込みは、ポリマー内の領域の化学ポテンシャルと適合する化学ポテンシャルを有する(混和性)金属化ナノ構造化学物質を使用することにより、達成することができる。その化学的性質の故に、金属化ナノ構造化学物質は、殆どすべてのポリマー系と適合性若しくは不適合性を示すように適応させることができる。
【0013】
適応可能な適合性と組み合わせて、それらの物理的サイズは、金属化ナノ構造化学物質がプラスチックスに選択的に組み込まれ、コイル、ブロック、ドメーン及びセグメントの力学を制御し、よって、多くの物理的、熱的及び電子的特性に有利な作用を及ぼすことを可能にする。最も有利に改善された特性は、熱歪み、クリ−プ、圧縮歪、強度、靭性、視覚的外観、触感、質感、収縮、弾性、硬度、耐摩擦性、電気抵抗性、CTE、電気伝導性、放射吸収性、酸化的安定性、親水性、生物学的適合性及び生物学的機能のような時間依存性の機械的及び熱的特性である。機械的特性に加えて、他の有利に改善された物理的特性は、熱伝導性及び電気伝導性、耐火性、気体バリヤー及び気体並びに湿気透過及び、印刷、塗装、接着、フィルム特性を含む。
【0014】
ナノ構造表現式の定義
本発明の化学組成物を理解するために、ポリヘドラルオリゴメリックシルセスキオキサン(POSS)及びポリヘドラルオリゴメリックシリケート(POS)の表現式について、以下の定義がなされる。
【0015】
ポリシルセスキオキサンは、∞はモル重合度を表し、Rは有機置換基(H、シロキシ、環状或いは直鎖脂肪族若しくは芳香族基若しくはフッ化基であり、追加的に、アルコール、エステル、アミン、ケトン、オレフィン、エーテル或いはハライドの如き反応性官能基を含んでもよい。)を表す式[RSiO1.5により表される材料である。ポリシルセスキオキサンは、ホモレプティックかヘテロレプティックの何れかであってよい。ホモレプティック系はただ1つの型のR基を含み、一方、ヘテロレプティック系は1以上の型のR基を含む。
【0016】
POSS及びPOSナノ構造組成物は、以下の式により表される。
【0017】
ホモレプティック組成物に対しては[(RSiO1.5)Σ#
ヘテロレプティック組成物に対しては、[(RSiO1.5)(R´SiO1.5)Σ#(ここで、RとR´は、異なる。)
官能化ヘテロレプティック組成物に対しては、[(RSiO1.5)(RXSiO1.0)Σ#(ここで、R基は、同じか、同じでないかであり得る。)
ヘテロ官能化ヘテロレプティック組成物に対しては、[(RSiO1.5)(RSiO1.0)(M)Σ#
上記Rすべては、上記定義と同じであり、Xは、限定するものではないが、ONa、OLi、OK、OH、Cl、Br、I、アルコキシド(OR)、アセテート(OOCR)、パーオキサイド(OOR)、アミン(NR)、イソシアネート(NCO)及びRを包含する。記号Mは、s及びpブロック金属、d及びfブロック遷移、ランタニド及びアクチニド金属を含む高及び低Z金属を含む組成物内の金属元素を指す。特に、Al、B、Ga、Gd、Ce、W、Re、Ru、Nb、Fe、Co、Ni、Eu、Y、Zn、Mn、Os、Ir、Ta、Cd、Cu、Ag、V、As、Tb、In、Ba、Ti、Sm、Sr、、Pd、Pt、Pb、Lu、Cs、Tl、Teが含まれる。記号m、n及びjは、組成物の化学量論に関連する。記号Σは、組成物がナノ構造を形成することを示し、記号#は、ナノ構造内に含まれる珪素原子の数をいう。#の値は、通常はmとnの和であり、nの範囲は、典型的には1〜24であり、mの範囲は、典型的には1〜12である。Σ#は、化学量論を決定する乗数と混同されるべきではなく、単に、システムの全体のナノ構造特性(籠サイズとして知られる)を説明するものであることが留意されるべきである。
【0018】
発明の詳細な説明
本発明は、触媒、硬化促進剤及び硬化可能なポリマーのコイル、ドメーン、鎖及びセグメントの補強のためのアロイ化剤としての金属化ナノ構造化学物質の使用を教示する。
【0019】
POMSが、分子レベルでの補強剤及び硬化促進剤として機能することを可能とする鍵は、(1)ポリマー鎖寸法に対する独特なサイズ、(2)ポリマー鎖によるナノ補強剤の不適合性と排除を助長する反発力に打ち勝つためにポリマー系と適合化する能力、及び(3)触媒的に活性な金属原子及び合金を、ポリマー、オリゴマー及びモノマー中に均一に含みそして分散する能力である。
【0020】
金属化ナノ構造化学物質は、各籠上のR基の変化による、或いは金属原子とポリマー内に含まれる官能基との会合による、ポリマーの微視的構造と優先的な親和性/適合性を示すように適応することができる。(図2)同時に、金属化ナノ構造化学物質は、同じポリマー内で微視的構造と不適合化するように適応することができ、それゆえ特定のポリマーの微視的構造の選択的補強を可能にする。したがって、選択的ナノ補強をもたらすファクターは、特定の籠サイズ、サイズ分布及び金属化ナノ構造化学物質とポリマー系との間の適合性と不一致を含む。
【0021】
金属化ナノ構造化学物質の触媒活性及び硬化促進特性は、籠或いは籠近傍に付着する金属の性質或いは金属原子の数、籠の立体化学的及び電子的性質並びに籠の分散特性により制御することができる。R基の変化及びPOSS籠サイズ及びトポロジーにより、物理的特性を制御することができる。
【0022】
図1で図解される金属化POMSのようなナノ構造化学物質は、固体状及び油状の両方で入手可能である。両方の形態が、溶融ポリマー及び溶媒に溶解し、それゆえ従来の粒子フィラーと硬化促進剤に関する積年の分散問題を解決する。更に、POMSが、プラスチックスに分子レベルで溶解することから、溶媒化/混合からの力(即ち自由エネルギー)は、従来の及び他の有機官能化フィラーで起こるような凝集領域を形成することを、籠が充分に妨げる。粒子フィラー及び触媒の凝集は、配合業者、成形機及び樹脂製造業者を従来悩ませてきた問題であった。
【0023】
表1は、ポリマー寸法及びフィラーサイズに対するPOMSのサイズ範囲を挙げている。POMSのサイズは、大部分のポリマー寸法と大略同じであり、それゆえ、分子レベルで、籠は、ポリマー鎖の動きを効果的に変えることができる。
【表1】

【0024】
鎖の動きを制御し、硬化程度を促進するPOSS及びPOMS籠の能力は、それらがポリマー鎖にグラフトされるときに特に明らかである。すべて参照に組み込まれる米国特許第5412053号、米国特許第5484867号、米国特許第5589562号及び米国特許第5047492号参照。POMSナノ構造がポリマー鎖に関連付けられると、それらは硬化度を促進し、鎖の動きを抑制するように作用し、それにより、弾性率、硬度及び対磨耗性、及び耐久性に相関するT、HDT、クリ−プ性、弾性率、硬度及び硬化性のような時間依存性特性を大いに向上させる。
【0025】
本発明は、顕著な特性の向上が、触媒的に活性な金属化ナノ構造化学物質の、触媒、硬化促進剤及びアロイ化剤としてのプラスチックスへの組み込みにより実現することができることを実証する。これは、先行技術を非常に単純化する。先行技術の触媒は、ポリマー形態学内では、補強剤としてもアロイ化剤として機能していなかった。
【0026】
更に、金属化POSSナノ構造化学物質が、単一の化学物質であり、個別の溶融点を有し、溶媒、モノマー及びプラスチックスに溶解することから、それらは、ポリマー系の粘度を減少することにも効果的である。後者は、可塑化剤のポリマー中への組み込みにより生じるものと類似しているが、物質のナノスコピックな性質に基づく、ポリマーの硬化促進及び個々のポリマー鎖の補強の利点も追加する。したがって、加工し易さ及び補強作用が、金属化ナノ構造化学物質(例、POMS)の使用により得ることができるが、一方、先行技術は、可塑化剤及びフィラーの双方の使用あるいはポリマー鎖へのPOSS共有結合を必要とした。
【0027】

全プロセスに適用可能な一般的プロセス変数
化学的プロセスに典型的なように、純度、選択性、速度及び任意のプロセスメカニズムを制御するために使用される多くの変数がある。金属化ナノ構造化学物質(例、POMS)をプラスチックス中に組み込むためのプロセスに影響する変数は、サイズ、多分散性及びナノ構造化学物質の組成を含む。同様に、ポリマー系の分子量、多分散性及びその組成は、ナノ構造化学物質のそれとを調和もさせねばならない。最後に、配合プロセス中に使用される動力学、熱力学及び加工助剤もまた、使用量レベルとナノ構造化学物質のポリマー中への組み込みから生じる向上度に影響することのできるトレードツールでもある。溶融ブレンド、乾式ブレンド及び溶液混合ブレンドのような配合プロセスは、金属化ナノ構造化学物質をプラスチックス中に混合しアロイ化することに全て有効である。
【0028】
例1.POMS触媒の熱的安定性
POMSの熱的安定性が、分解をこうむることなく、ポリマー硬化を触媒的に促進する能力を維持することができるかどうかを決定するために調査された。POMSは、低温度により影響されないことが見出され、250℃(480°F)及び550℃(1022°F)までの熱的安定性を示した。(図3)
例2.POMSの紫外線及び真空紫外線安定性
POMS籠は、その放射線吸収特性(図4)の故に、ポリマー中で追加的に有益である。吸収波長は、籠上のR基の性質及び金属原子のタイプに依存して広範囲にかつ高度に調製可能である。高度な熱安定性と結びついた吸収範囲は、全体として有機吸収体の性能を超えるものであり、UV損傷から、高温ポリマー、複合材料及び被覆の保護のための新しい機会を提供する。
【0029】
例3.ウレタン樹脂の硬化
POMSのための構造及び組成には大きな多様性が存在する。(図1)
これら系の多くは、異なる樹脂系で、触媒及び硬化促進剤として機能することができる。ポリウレタンのための好ましい組成は、図5に示された、[(RSiO1.5)(HOTiO1.5)]Σ8、[(RSiO1.5)(イソプロピルOTiO1.5)]Σ8及び[(RSiO1.5)(MeSiO)(イソプロピルO)TiO0.5)]Σ8である。ポリウレタン硬化に対するPOMSの活性は、0.001〜50重量%の使用量好ましくは0.1〜10%の使用量のPOMS範囲にわたり可能である。
【0030】
デスモフェンポリオール1150(100質量部)とデスモジュールポリイソシアネートN75MPA/X(70質量部)を含むバイエル2成分ポリウレタンの硬化が、1分間の混合と引き続くPOMSの添加及び2分間の混合、引き続く特定温度での硬化により実行された。ポリウレタンは、ガラス上への被覆若しくはモノリシック材料としての使用に適していた。全触媒は24−72時間以内に硬化を促進する一方、[(RSiO1.5)(MeSiO)(イソプロピルO)TiO0.5)]Σ8系は、光学的透明性と最小の色彩を有する好ましい滑らかな表面被覆を生み出した。
【0031】
有機金属錯体は、錫、アミン若しくはそれらの混合物のような既存のポリウレタン触媒系の可能な代替物とは殆どみなされていない。有機金属錯体が広範囲には使用されない主な理由は、その貧弱な加水分解安定性とそれによる短い使用時間である。これは、特に0.5重量%以上の水が存在することのある発泡ポリウレタン系で事実である。全ての[(RSiO1.5)(HOTiO1.5)]Σ8、[(RSiO1.5)(イソプロピルOTiO1.5)]Σ8、[(RSiO1.5)(MeSiO)(イソプロピルO)TiO0.5)]Σ8は、優秀な加水分解安定性を示した。籠上の嵩高い親水性R基は、高水準な触媒活性を維持しつつ、金属原子へ親水性を効果的に付与する。加えて、籠上のR基は、POMSの樹脂成分中への可溶化を与える。脂肪族樹脂系のためには、POMS上の脂肪族R基が好ましく、他方、芳香族樹脂系のためには、POMS上の芳香族R基が好ましい。Snを含むPOMS誘導体も、ポリウレタン硬化に高度に活性である。
【0032】
例4.2剤式エポキシ樹脂の硬化
エポキシ樹脂のための好ましいPOMSは、図5に示される[(RSiO1.5)14(AlO1.5)Σ18及び[(RSiO1.5)14(MeZn)(ZnO1.5)Σ18(R=フェニル)である。エポキシ硬化に対するPOMSの活性は、0.001〜50重量%の使用量好ましくは0.1〜10%の使用量のPOMS範囲にわたり可能である。
【0033】
アラルジットGY764BDビスデフェールAエポキシ樹脂(100質量部)とアラルジュール42脂環式アミン(23質量部)を含むバンチコ(Vantico)2剤式エポキシ樹脂の硬化は、成分を適正な比で混合し、引き続きPOMS成分を添加混合することにより実行される。
【0034】
エポキシ樹脂は、被覆、モノリシック、含浸、VARTMable樹脂若しくは繊維巻き取りとしての使用のために適していた。全触媒は24−120時間以内に硬化を促進する一方、[(フェニルSiO1.5)14(AlO1.5)Σ18系は、光学的透明性と最小の色彩を有する好ましい樹脂を生成した。
【0035】
籠上の嵩高い親水性R基は、高水準な触媒活性を維持しつつ、金属原子へ疎水性を効果的に付与する。[(RSiO1.5)14(AlO1.5)Σ18(R=フェニル)は、最良の総安定性と触媒活性を示した。これは、籠上の芳香族R=フェニル基と樹脂系の芳香族ビスフェノールA成分との間の高水準の適合性に基づくものであるらしい。
【0036】
例5.芳香族エポキシ樹脂のホモポリマー硬化
無水物硬化若しくはアミン硬化エポキシ樹脂とは対照的に、POMSは、通常の硬化系と類似の熱的機械的特性を有するネットワークポリマー中に、エポキシ樹脂をホモポリマー化するために使用することができる。加えて、得られたポリマーは優れた湿潤性能を与えるポリエーテル結合を含む。
【0037】
2つの通常のエポキシ樹脂モノマー、ビスフェノールAのジグリシダルエーテル(DGEBA)とテトラグリシダルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)が、[(RSiO1.5)14(AlO1.5)Σ18(R=フェニル)と、150℃で16時間ホモポリマー化され、生成物の熱的機械的特性が、芳香族アミンで硬化された樹脂系に対して比較された。表2の熱的機械的データは、POMS硬化系が、向上した疎水性の追加的利益と共にアミン硬化で得られた特性と同等であることを示している。データは、POMS濃度が増加すると、特性が改善することを示してもいる。これは、約0.75モル%のPOMS使用水準が、80%の有効なエポキシ基変換を生じるという知見に相互に関連している。DGEBAのポリマー化速度は、TGDDMの速度より迅速であった。POMSは、DGEBAに対して1時間以内の室温でのゲル化を促進することが見出され、他方TGDDMは、ゲル化を促進するために110℃で2時間の加熱が必要とされた。全ての系に対して、最適な熱的機械的特性は、150℃に加熱することにより得られた。機械的特性は、高度に組成に依存することが見出された。一般的に、高温(240℃)での弾性率(E‘)の保持が、POMSでの硬化により有利に改善することが見出された。[(フェニルSiO1.5)14(MeZn)(ZnO1.5)Σ18POMSもポリマー化に対して活性であった。
【表2】

【0038】
例6.脂肪族エポキシ樹脂のホモポリマー硬化
通常の無水物硬化若しくはアミン硬化エポキシ樹脂とは対照的に、[(フェニルSiO1.5)14(AlO1.5)Σ18POMSは、脂環式エポキシ樹脂の硬化に極度に活性である。全ての脂環式エポキシ樹脂が硬化されることができる。好ましい組成物は、[(エポキシシクロヘキシエチルSiO1.5)Σ8、[(エポキシシクロヘキシエチルSiO1.5)10Σ10、[(エポキシシクロヘキシエチルSiO1.5)12Σ12、[(エポキシシクロヘキシエチルSiO1.5)を含むシェルERL4221及びハイブリッドプラスチックスEP0408である。有効なPOMS使用量は、0.01〜10重量%、好ましくは、0.1〜3重量%の範囲である。POMSは、優秀な熱的性質及び優秀な湿気及び水蒸気、オゾン、過酸化水素のような酸化剤に対する抵抗性を持つ光学的に透明で硬い樹脂にするために、脂環式樹脂に混合添加され、室温で、重合を促進する。POMS及び脂環式エポキシ樹脂の使用は、殺菌を必要とする医用素子用或いはアンダーフィル(underfills)及びカプセル剤のような電子接着剤用に理想的である。[(フェニルSiO1.5)14(MeZn)(ZnO1.5)Σ18POMSもこれら樹脂系に対して効果的である。
【0039】
例7.ビスマレイミド樹脂の硬化
アルミニウムのような金属は、いずれもBMI樹脂の硬化を生じるエン及びディールス・アルダー反応を触媒することができることが知られている。歴史的に、BMI樹脂の触媒としての有機アルミニウム金属化合物及び無機アルミニウム化合物の使用は、このような系の湿気及び空気感受性に妨害されてきた。[(RSiO1.5)14(AlO1.5)Σ18POMS(R=フェニル)は、ビスマレイミド樹脂(BMI)において最高の総合安定性及び触媒活性を示す。これは、籠上の芳香族R=フェニル基と樹脂系の芳香族ビスフェノールA成分との間の高水準の適合性に基づくものであるらしい。更に、[(フェニルSiO1.5)14(AlO1.5)Σ18は、空気及び湿気に対して安定である。
【0040】
POMS[(フェニルSiO1.5)14(AlO1.5)Σ18は、0.001〜50%好ましくは0.1〜5%の使用量の範囲の量で、サイテック(Cytec)BMI樹脂52504に配合された。POMSは、予め混合されたBMI樹脂に撹拌により添加され、2成分形としての使用が想像されもしたが、1成分系として使用された。標準的な硬化手順により、BMI樹脂に改善された熱的機械的特性が生じた。POMSの添加から生じた特別な利点は、より低い温度での硬化の触媒的促進と直接走査熱量計(図6)により示されたような樹脂系のより完全な硬化であった。より迅速でより低い温度と、樹脂のより完全な硬化を可能とするPOMSの使用は、より廉価な加工と改善された高温特性を実現するために有益である。
【0041】
ある代表的具体例と詳細な説明が、本発明を説明するために示されてきたが、請求項で規定された発明の範囲を変更せずに、ここに開示された方法及び装置に種々な改変がなされ得ることは、当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1−1】ポリヘドラルオリゴメリックメタラセスキオキサン(POMS)系の金属化ナノ構造化学物質の例を図解する。
【図1−2】ポリヘドラルオリゴメリックメタラセスキオキサン(POMS)系の金属化ナノ構造化学物質の例を図解する。
【図1−3】ポリヘドラルオリゴメリックメタラセスキオキサン(POMS)系の金属化ナノ構造化学物質の例を図解する。
【図2】金属化ナノ構造化学物質の構造例を示す。
【図3】種々のPOMSの熱重量プロットを示す。
【図4】POMSの吸収範囲を示す紫外-可視光プロットを提供する。
【図5】ポリウレタン触媒及び硬化促進剤のための好ましいPOMS組成物を示す。
【図6】POMS及び非POMS BMIのための硬化の始まりを比較するDSCプロットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリヘドラルオリゴメリックメタラセスキオキサン及びポリヘドラルオリゴメリックメタロシリケートから成る群より選ばれる金属化ナノ構造化学物質及び
(b)アクリル樹脂、カーボネート、エポキシ、エステル、シリコ−ン、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリイミド、スチレン樹脂、アミド、ニトリル、オレフィン、芳香族オキシド、芳香族スルフィド、エステル及び炭化水素並びにシリコ−ン由来のイオノマー或いはゴム状ポリマーから成る群より選ばれるポリマー
を含み、金属化ナノ構造化学物質が、反応性若しくは非反応性ブレンドによって、ポリマー中に配合される複合材料。
【請求項2】
反応性若しくは非反応性ブレンドによって、ポリマー中に配合されるPOSS及びPOSから成る群より選ばれる非金属化ナノ構造化学物質を更に含む、請求項1記載の材料。
【請求項3】
複数の金属化ナノ構造化学物質がポリマー中に配合される、請求項1記載の材料。
【請求項4】
複数の金属化ナノ構造化学物質がポリマー中に配合される、請求項2記載の材料。
【請求項5】
複数の非金属化ナノ構造化学物質がポリマー中に配合される、請求項4記載の材料。
【請求項6】
ポリヘドラルオリゴメリックメタラセスキオキサン及びポリヘドラルオリゴメリックメタロシリケートから成る群より選ばれる金属化ナノ構造化学物質を、アクリル樹脂、カーボネート、エポキシ、エステル、シリコ−ン、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリイミド、スチレン樹脂、アミド、ニトリル、オレフィン、芳香族オキシド、芳香族スルフィド、エステル及び炭化水素並びにシリコ−ン由来のイオノマー或いはゴム状ポリマーから成る群より選ばれるポリマー中にアロイ化する方法であって、金属化ナノ構造化学物質が、反応性若しくは非反応性ブレンドによって、ポリマー中に配合される工程を含む方法。
【請求項7】
反応性若しくは非反応性ブレンドによって、ポリマー中に配合されるPOSS及びPOSから成る群より選ばれる非金属化ナノ構造化学物質を配合することを更に含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
複数の金属化ナノ構造化学物質がポリマー中に配合される、請求項6記載の方法。
【請求項9】
複数の金属化ナノ構造化学物質がポリマー中に配合される、請求項7記載の方法。
【請求項10】
複数の非金属化ナノ構造化学物質がポリマー中に配合される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
ポリマーが、非晶質、半結晶、結晶質、エラストマー状及びゴム状からなる群より選択される物理的状態である、請求項6記載の方法。
【請求項12】
ポリマーが、化学的配列及び関連するポリマー微細構造を含む請求項6記載の方法。
【請求項13】
ポリマーが、ポリマーコイル、ポリマードメーン、ポリマー鎖及びポリマーセグメントから成る群より選ばれる、請求項6記載の方法。
【請求項14】
金属化ナノ構造化学物質が、ポリマーを分子レベルで補強する、請求項6記載の方法。
【請求項15】
配合が、非反応的である、請求項1記載の方法。
【請求項16】
配合が、反応的である、請求項1記載の方法。
【請求項17】
ポリマーの物理的特性が、ポリマー中への金属化ナノ構造化学物質の組み込みの結果として改善される、請求項6記載の方法。
【請求項18】
物理的特性が、ポリマー表面への接着性、複合材料表面への接着性、金属表面への接着性、撥水性、密度、低誘電定数、熱伝導性、ガラス転移、粘度、融解転移、貯蔵弾性率、緩和性、応力転移、磨耗抵抗性、耐火性、生物学的適合性、ガス透過性、多孔性、光学的品質及び放射線遮蔽性から成る群より選ばれる、請求項17記載の方法。
【請求項19】
配合が、金属化ナノ構造化学物質をポリマー中に配合することによりなされる、請求項6記載の方法。
【請求項20】
配合が、溶融ブレンド、乾式ブレンド及び溶液ブレンドから成る群より選ばれる配合プロセスによりなされる、請求項19記載の方法。
【請求項21】
金属化ナノ構造化学物質が、可塑剤、フィラー、相溶化剤、抗酸化剤及び安定化剤から選ばれる少なくとも1つの機能を果たす、請求項6記載の方法。
【請求項22】
金属化及び非金属化ナノ構造化学物質が、相溶化剤として機能する、請求項7記載の方法。
【請求項23】
金属化ナノ構造化学物質が、金属化ナノ構造化学物質がポリマーの予め決められた領域に組み込まれるようにポリマー中へ選択的に配合される、請求項6記載の方法。
【請求項24】
金属化ナノ構造化学物質のポリマー中への配合の結果として、物理的特性が向上する、請求項23記載の方法。
【請求項25】
特性が、Tg、HDT、弾性率、クリ−プ性、硬化性及び透過性から成る群より選ばれる、請求項24記載の方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−510229(P2009−510229A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−533686(P2008−533686)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/038137
【国際公開番号】WO2007/041344
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(506207473)ハイブリッド・プラスティックス・インコーポレイテッド (16)
【Fターム(参考)】