説明

硬化性シーリング材組成物

硬化性シーリング材組成物が提供される。前記組成物は、重合体のバックボーンに少なくとも共役ジエンが寄与するモノマー単位と、珪素を含む末端基とを有する重合体を含む。前記組成物は、また、可塑剤、充填剤、補強材、調整剤、硬化触媒/硬化剤、安定剤、及びそれらの混合物からなる群から選択される追加のシーリング材成分も含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、硬化性シーリング材組成物を対象にする。より詳細には、本発明は、共役ジエン重合体の硬化性シーリング材組成物を対象にする。
【背景技術】
【0002】
ポリイソブチレンなどの重合体は、固有の水分不浸透性のために建築シーリング材への適用が見出されている。シーリング材として機能するためには、通常は硬化可能な基がイソブチレン単位と結合し、例えば、アルコキシシランの官能性を持つポリイソブチレンが生じる。現在のポリイソブチレン建築シーリング材は、多くの場合、2段階の方法を用いて製造されている。重合体のバックボーンが反応性官能基によって形成され、エンドキャップされる。次に、反応性官能基を、多くの場合、金属触媒の存在下で反応させ、重合体のバックボーン上に硬化性の基を存在させる。一の具体的な例では、重合体がアリルトリメチルシランを用いることによってアリル基でエンドキャップされている。その後、アリル基を、白金触媒と適切なシランを用いてヒドロシリル化する。別の方法では、反応性官能基を重合体のバックボーンの全体に渡って分散させ、続いて官能基を反応させて、重合体のバックボーン内に硬化性のシロキサン基を形成する。この2段階の方法は高価であり、かつ扱いにくいものである。
【0003】
したがって、ポリイソブチレンベースのシーリング材にはいくつかの欠点がある。また、当該シーリング材は、(i)多くの場合調整するのが高価なものであり、(ii)イソブチレンモノマーの比較的高い費用によって強く影響される。さらに、該シーリング材は、多くの場合、2成分型建築シーリング材としての使用に制限され、使用前に速やかにシーリング材と触媒とを混合することを必要とする。触媒をシーリング材に添加するのが早すぎた場合、早すぎる硬化が生じ、シーリング材の塗布が困難で、ムラのあるものとなる。また、最終消費者が混合する必要があることによって、最終消費者側の不注意により建築シーリング材がムラのあるものとなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多分散性が低いアルコキシシランの官能性を持つシーリング材組成物を直接製造するのにより安価で、より効率の良い方法が利用できることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施態様では、硬化性シーリング剤組成物が提供される。該組成物は、重合体のバックボーンに少なくとも共役ジエンが寄与しているモノマー単位を有し、珪素を含む末端基を有する重合体を含む。組成物は、可塑剤、充填剤、補強材、調整剤、硬化触媒/硬化剤、安定剤、及びそれらの混合物からなる群から選択される追加の硬化性シーリング材成分をさらに含む。
【0006】
本発明の第2の実施態様では、硬化性シーリング材を製造する方法が提供される。該方法は、多官能基置換開始剤を用いて共役ジエンモノマー単位のリビング重合を開始することと、四置換珪素基で重合を停止することとを有する。
【0007】
本発明の別の実施態様では、硬化性シーリング材が提供される。該硬化性シーリング材は、約5,000〜60,000のMwを有する共役ジエン重合体のバックボーンと、少なくとも1つのアルコキシシラン末端基を含む。組成物は、可塑剤、充填材、補強材、調整剤、硬化触媒/硬化剤、安定剤、及びそれらの混合物からなる群から選択される追加の硬化性シーリング材成分をさらに含む。
【0008】
本発明は、共役ジエンモノマー単位と硬化基を有する重合体からなる硬化性シーリング材を対象にする。硬化基は末端基であって、テレケリック重合体組成物を生じてもよい。本発明の重合体組成物は、好ましくは約1.8以下、より好ましくは約1.7以下、最も好ましくは約1.6以下の多分散性の比を有する。多分散性の比は、MwとMnの比で表され、約1の比は、実質的に単分散である組成物を表す。多分散性が高すぎる場合、生じたシーリング材の引張強さと加工性が乏しい。“加工性”とは、硬化し始めた際にシーリング材の粘度が上昇する割合を指す。
【0009】
本発明の重合体組成物は、C4〜C8の共役ジエン及びそれらの混合物からなる群から選択されるモノマー単位を有する重合体のバックボーンを含む。好ましい共役ジエンとしては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、3,4−ジメチル−1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、フェニル−1,3−ブタジエン、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0010】
共役ジエンのバックボーンは、好ましくは約5,000〜60,000、より好ましくは約10,000〜35,000の重量平均分子量(Mw)を有する。バックボーンは好ましくは直線状であるが、架橋して分岐状構造を形成してもよい。
【0011】
重合体組成物は、重合体のバックボーンにおいて追加のモノマー単位も有してもよい。適した追加のモノマー単位としては、ビニル芳香族炭化水素モノマー、酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化スチレン、硫化エチレン、硫化プロピレン、硫化スチレン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−カプロアルデヒド、アセトチオアルデヒド、プロピオンチオアルデヒド、イソブチルチオアルデヒド、n−カプロチオアルデヒド、3−ジメチルオキシシクロブタン、3−ジエチルオキシシクロブタン、3−メチルエチル−オキシシクロブタン、3−ジメチルチオシクロブタン、3−ジエチルチオシクロブタン、3−メチルエチルチオシクロブタン、メチルエチルチオケトン、メチルイソプロピルチオケトン、及びジエチルチオケトン、複素環式窒素含有モノマー、及びそれらの混合物が挙げられる。本発明に使用するビニル芳香族炭化水素モノマーの例としては、1又は複数のスチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、1−α−メチルビニルナフタレン、2−α−メチルビニルナフタレンに加えて、結合した炭化水素における炭素原子の総数が約18以下であるそれらのアルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリル、及びアラルキル誘導体、及びそれらの混合物が挙げられる。複素環式窒素含有モノマーとしては、2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、3−エチル−5−ビニルピリジン、3−メチル−5−ビニルピリジン、3,5−ジエチル−4−ビニルピリジン、並びに同様の一置換及び二置換のアルケニルピリジン、並びに2−ビニルキノリン、3−ビニルキノリン、4−ビニルキノリンなどの同様のキノリンなどの少なくとも1つのビニル又はαメチルビニル基を含有するピリジン及びキノリンの誘導体並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0012】
追加のモノマー単位を使用する場合、重合体組成物は、好ましくは約1〜99重量%、より好ましくは約50〜99重量%、最も好ましくは70〜99重量%の共役ジエンが寄与するモノマー単位を含む。重合体組成物は、さらに、好ましくは約1〜99重量%、より好ましくは約1〜50重量%、最も好ましくは約1〜30重量%の、例えばビニル芳香族炭化水素が寄与する追加のモノマー単位を含む。
【0013】
シーリング材は、当業者に既知であるいずれの重合技術によっても形成することができる。好ましくは、本技術分野において、ジエンモノマーの重合及び/又はジエンモノマーとビニル芳香族炭化水素との共重合に有用であるとして知られているアニオン開始剤を添加することによって重合を開始する。多官能性リチウム開始剤を使用して好ましいリビング重合反応を開始してもよい。2又は3以上の活性開始部位を有するリチウム開始剤は、各リビング重合体鎖上の少なくとも2つのリビング重合部位でリビング重合を開始する。重合体のバックボーンは、開始部位に残存する多官能性又は二官能性のリチウム開始剤由来の開始剤の残基を有してもよい。特に好ましい開始剤としては、1,3−ビス(1−リチオ−1,3−ジメチルペンチル)ベンゼン、1,3−フェニレンビス(3−メチル−1−フェニルペンチリデン)ジリチウム、1,3−フェニレンビス[3−メチル−1−(メチルフェニル)ペンチリデン]ジリチウム、2モル当量のsec−ブチルリチウムと、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,3−ジ(1−フェニルエテニル)ベンゼン、1,3−ジ[1−(メチルフェニル)エテニル]ベンゼン、ビス[4−(1−フェニルエテニル)フェニル]エーテル、1,4−ビス(1−フェニルエテニル)−1,1’−ビフェニル、及び2,2’−ビス[4−(1−フェニルエテニル)フェニル]プロパンとの反応から得られた開始剤、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0014】
重合は、約23℃〜約70℃、最も好ましくは約40℃〜60℃などの中程度の温度で、N2又はArなどの不活性雰囲気下で実施するのが好ましい。開始剤、共役ジエンモノマー、及び含まれてもよい任意の追加のモノマーを重合容器に添加し、重合を開始する。リビング重合が好ましい重合方法であるが、本技術分野で既知である他の重合技術が考慮される。開始剤を、共役ジエン100グラム当たり約0.001〜0.1モルの開始剤の量で、より好ましくは共役ジエンモノマー100グラム当たり約0.0017〜0.02モルの開始剤の量で、最も好ましくは共役ジエンモノマー100グラム当たり約0.0029〜0.01モルの開始剤の量で添加する。実質的に100%のモノマーの転換が達成されるまで重合を続けてもよい。
【0015】
重合は、四置換珪素基の添加によって停止することができる。好ましい停止剤は、下記一般式:
【化1】


(式中、R1、R2、R3、及びR4は、独立して、炭化水素、アルコキシ基及びそれらの混合物からなる群より選択される)で表される。R1、R2、R3、及びR4のうち3つのみ炭化水素であってもよい。R1、R2、R3、及びR4のうち少なくとも1つは好ましくはアルコキシ基である。適したアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、約10までの炭素を有するアルコキシ基、及びそれらの混合物が挙げられる。適した炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル及びそれらの混合物が挙げられる。炭化水素基は直線状又は分岐状であってもよく、好ましくは飽和している。R1、R2、R3、及びR4の少なくとも1つは、共役ジエンモノマーのリビング重合を停止することができる。
【0016】
1,2−ミクロ構造調整剤又はランダム化重合調整剤を任意選択的に使用して、重合体組成物の、1,3−ブタジエンなどの共役ジエンが寄与するモノマー単位の1,2−ミクロ構造を調整する。適した調整剤としては、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ジエチルエーテル、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、p−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジ−n−オクチルエーテル、アニソール、ジベンジルエーテル、ジフェニルエーテル、ジメチルエチルアミン、ビス−オキソラニルプロパン、トリ−n−プロピルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N−エチルピペリジン、N−メチル−N−エチルアニリン、N−メチルモルホリン、テトラメチレンジアミン、オリゴマーのオキソラニルプロパン(OOPs)、2,2−ビス−(4−メチルジオキサン)、及びビステトラヒドロフリルプロパンが挙げられる。
【0017】
1又は複数のランダム化重合調整剤の混合物も使用することができる。重合調整剤とモノマーに対する重合調整剤の割合は、反応器に一般に装入されるモノマー100グラム当たり、重合調整剤の量で、最小で約0と同程度に低いところから最大で約4000ミリモルと同程度のところまで、好ましくは約0.01から3000ミリモルまで変化することができる。重合調整剤の装入量が増加するにつれて、重合体バックボーン中の共役ジエンが寄与するモノマー単位における1,2−ミクロ構造(ビニル含量)のパーセンテージが上昇する。共役ジエン単位の1,2−ミクロ構造含量は、好ましくは約10〜90%、より好ましくは約40〜70%である。
【0018】
重合体組成物は、好ましくは約10ポアズ〜200ポアズ、より好ましくは20ポアズ〜70ポアズの室温(約23℃)での粘度を有する。
【0019】
本技術分野で既知である追加の添加剤を本発明の硬化性シーリング材組成物に加えることが望ましい。
【0020】
例えば、硬化剤(別名、硬化触媒ともいう)可塑剤、充填材、安定剤、本技術分野で既知である他の種々雑多の成分、及びそれらの混合物を好ましくは全組成の約60〜80重量%の量で添加してもよい。硬化剤/硬化触媒の例としては、例えば、テトラブチルチタネート又はテトラプロピルチタネートなどのチタネート;ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズジアセテート、オクチル酸スズ又はナフテン酸スズなどの有機スズ化合物;オクチル酸鉛;ブチルアミン、オクチルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、オレイルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、キシリレンジアミン、トリエチレンジアミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、モルホリン、N−メチルモルホリン又は1,3−ジアザビシクロ(5,4,6)ウンデセン−7(DBU)及びカルボキシル酸又はその同種のものとのその塩などのアミン化合物;過剰のポリアミンと多塩基酸との反応によって得られる低分子量を有するポリアミド;過剰のポリアミンとエポキシ化合物との反応生成物;並びにアミノ基を有するシランカップリング剤、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン又はN−(β−アミノエチル)アミノプロピル−メチル−ジメトキシシランなどのシラノール縮合触媒などが挙げられる。硬化触媒は単独で、又はそれらの混合物として使用してもよい。
【0021】
可塑剤の例としては、例えば、アルキルジフェニル又は一部水素化したテルフェニルなどの炭化水素のオイル;ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フタレート、ブチルベンジルフタレート又はブチルフタリルブチルグリコレートなどの塩素化パラフィン又はフタル酸エステル;ジオクチルアジペート又はジオクチルセバケートなどの非芳香族二塩基酸エステル;ジエチレングリコールジベンゾエート又はトリエチレングリコールジベンゾエートなどのポリアルキレングリコールのエステル;リン酸トリクレシル又はリン酸トリブチルなどのリン酸エステルなど、並びにそれらの混合物が挙げられる。可塑剤は単独で、又はそれらの混合物として使用してもよい。有機重合体を製造する時に可塑剤を混合することができる。可塑剤は、典型的には全組成の約10%〜40%を構成する。
【0022】
調整剤として、種々のシランカップリング剤を必要に応じて使用する。シランカップリング剤の例として、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジイソプロペノキシシラン、メチルトリイソプロペノキシシラン、及びγ−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシランなどのアルキルアルコキシシラン;γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどの官能基を有するアルコキシシラン;シリコーンワニス;ポリシロキサン;及びそれらの混合物がある。上記の調整剤を使用することによって、硬化した製品の硬度を上昇させるか、又は硬度を低減させてより良い伸張特性を与えることができる。調整剤は、典型的には、全組成の約0.5%〜2%を構成する。
【0023】
充填剤及び補強材の例として、例えば、重炭酸カルシウム、軽炭酸カルシウム;表面が脂肪酸、樹脂酸、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤で処理されている炭酸カルシウム;炭酸マグネシウム、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、アルミナ、アルミニウム粉末、亜鉛粉末又は鉄粉末などの金属粉末、ベントナイト、カオリンクレー、ヒュームドシリカ、石英粉末、カーボングラック、及びそれらの混合物がある。充填剤又は補強材は単独で使用するか、又はそれらを混合して使用する。ヒュームドシリカなどの組成物に透明性を与えることが可能な充填剤又は補強材を使用する場合、優れた透明度を有するシーリング材組成物を得ることができる。充填剤及び/又は補強材は、典型的には、全組成の約20%〜50%を構成する。
【0024】
本技術分野で既知である典型的な安定剤の例として、酸化防止剤、ラジカル連鎖停止剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、リン型過酸化物分解剤、及びそれらの混合物がある。安定剤は、典型的には、全組成の約0.5%〜2%を構成する。
【0025】
本技術分野で既知であるその他の成分の例としては、潤滑剤、顔料、膨張剤、光硬化樹脂、チキソトロープ剤、及びそれらの混合物があるが、これらに限定されない。その他の成分は、典型的には、全組成の約0.5%〜2%を構成する。
【0026】
本発明の硬化性組成物自体は、ガラス、セラミックス又は金属に対し優れた接着力を有するが、本発明の組成物は、下塗剤を使用することによって様々な金属に幅広く接着することができる。種々の金属に対する硬化性組成物の接着特性を、エポキシレジン、フェノールレジン、種々のシランカップリング剤、アルキルチタネート、又は芳香族ポリイソシアネートなどの接着促進剤を加えることによってさらに向上させることができる。促進剤は単独で又はそれらを混合して使用してもよい。
【0027】
本発明に従って形成される硬化性組成物は、1成分型建築シーリング材として使用するのに適している。生じたシーリング材を建築現場で用いて、湿気の浸透を防いでもよい。重合体組成物のアルコキシシラン基は、湿気に曝されることにより架橋を形成し、硬化した建築シーリング材を生じる。重合体を空気中の湿気に曝すことによって約1日〜7日の硬化時間を達成してもよい。
【0028】
本発明を実施例を参照することによって説明するが、以下の実施例及び表は例示のためのものであって、本発明を制限する意図のものではない。
【実施例】
【0029】
予め、正の窒素パージ下で、抜き取られた(extracted)セプタムライナーと穴あきクラウンキャップで密封した乾燥した795mL(28oz)又は199mL(7oz)のガラス瓶を総ての製造に使用した。提供時の、ブタジエンのヘキサン溶液(21.9重量%ブタジエン混合物B-31)と、環状オリゴマーのオキソラニル重合調整剤(OOPSと略す。1.6Mヘキサン溶液、水素化カルシウム上で保存)と、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール(BHTと略す。ヘキサン溶液)を使用した。BHTを酸化防止剤として使用する。市販されている試薬(Aldrich Chem. Co.又はFisher Scientific)としては、1,3−ジイソプロペニルベンゼン(水素化カルシウムから蒸留し、水素化カルシウム上で保存)、sec−ブチルリチウム(1.3Mシクロヘキサン溶液)、リチウムイソプロポキシド(1.0Mヘキサン溶液)、メチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オルソ珪酸テトラエチル、2−エチルヘキサン酸(EHAと略す)、及びソルビタントリオレエート(STOと略す。モレキュラーシーブ上で乾燥したもの)がある。
【0030】
例1
1,3−ジイソプロペニルベンゼン(2.57mL、15mmol)とトリエチルアミン(4.18mL、30mmol)との溶液にsec-BuLi(23.1mL、1.3Mのシクロヘキサン溶液)をシリンジを介して室温で添加した。溶液を攪拌し、50℃で2時間加熱した。ディープレッド・リチウム・ジ付加体(deep red Li diadduct、DiLiと略す。0.5M)をブタジエンを重合する開始剤として使用した。
【0031】
例2
ヘキサン163g、ブタジエン混合物B-31 137g、DiLi 2.5mL(例1より)をシリンジを介して瓶に装入し、次に0.15mLのOOPS溶液(1.6M、ヘキサン溶液)を装入した。瓶を50℃で1.5時間、攪拌し、加熱した。次に、4.2mLのオルソ珪酸テトラエチル溶液(TEOSと略す。0.5M、ヘキサン溶液)をシリンジによってリビングポリマーのセメントに導入し、50℃でさらに10分間、攪拌し、加熱した。混合物に4mLのBHT溶液、2.25mLの2−エチルヘキサン酸溶液(EHA、1.0M、ヘキサン溶液)及び18mLのパラフィンオイル(PAOと略す)を添加した。溶媒をハウスバキューム下で除去し、残留物を回収した。
【0032】
例3
ヘキサン163g、ブタジエン混合物B-31 137g、DiLi 2.5mLをシリンジによって瓶に装入し、次に0.15mLのOOPS溶液(1.6M、ヘキサン溶液)を装入した。瓶を50℃で1.5時間、攪拌し、加熱した。次に、4.2mLのオクチルトリメトキシシラン溶液(OTMOSと略す。0.5M、ヘキサン溶液)をシリンジによってリビングポリマーのセメントに導入し、50℃でさらに10分間、攪拌し、加熱した。混合物に4mLのBHT溶液、4.5mLのソルビタントリオレエート(STO、1M、そのままで)及び18mLのPAOを添加した。溶媒をハウスバキューム下で除去し、残留物を回収した。
【0033】
例4
ソルビタントリオレエートを添加しなかったこと以外は、例3で使用した調整及び手順を繰り返した。
【0034】
例5
2−エチルヘキサン酸溶液(EHA)の代わりにソルビタントリオレエートを添加したこと以外は、例2で使用した調整及び手順を繰り返した。
【0035】
例6
ヘキサン1.223kgと、21.8重量%ブタジエン・ヘキサン溶液(B-39)2.809kgを攪拌機を備え付けた2ガロンの窒素パージした反応器に添加した。81.6mLのDiLi(0.5M、例1と同様の手順で調整した)と、5.1mLのOOPS(1.6Mヘキサン溶液)を反応器に装入し、反応器のジャケットを50℃に加熱した。26分後、バッチの温度が68℃に達した。さらに15分後、生きたセメント(live cement)をオルソ珪酸テトラエチル(4.48M)の30mlヘキサン溶液22.5mlで停止し、重合体を反応器から乾燥した795mL(28oz)のガラス瓶に移した。重合体は以下の特性を有していた:Mn=31.4x103g/mol、Mw=69.1x103g/mol、多分散性=2.20、%結合=70.6。
【0036】
例7
ヘキサン1.223kgと、21.8重量%ブタジエン・ヘキサン溶液(B-39)2.809kgを攪拌機を備え付けた2ガロンの窒素パージした反応器に添加した。49mLのDiLi(0.5M、例1と同様の手順で調整した)と、4.1mLのOOPS(1.6Mヘキサン溶液)を反応器に装入し、反応器のジャケットを50℃に加熱した。18分後、バッチの温度が81.5℃に達した。さらに15分後、生きたセメント(live cement)をメチルトリメトキシシラン(6.97M)の20mlヘキサン溶液7.9mlで停止し、重合体を反応器から乾燥した795mL(28oz)のガラス瓶に移した。重合体は以下の特性を与えた:Mn=34.8x103g/mol、Mw=49.9x103g/mol、多分散性=1.43、%結合=48。
【0037】
シーリング材への応用
例8〜13
6種類のシーリング材組成物を表1〜3に示す処方及び手順に従って製造した。組成物(重合体、炭酸カルシウム)をプラネタリーミキサーで30分間混合した。次に、可塑剤をミキサーに添加し、圧力を0.1Paに下げた。サンプルを可塑剤添加後さらに30分間混合した。
【0038】
硬化したゴム化合物の引張強度及び硬化安定性を測定したところ、表4に示す結果が得られた。引張強度の測定はJIS A 5758の条件に基づく。
【0039】
共役ジエンのシーリング材はポリイソブチレンのシーリング材よりもわずかに速い劣化速度を有しているが、表4に示すように、例9〜13のゴム組成物は非常に良くバランスのとれた物理特性を示した。引張強度は、市販されているシーリング材の材料であるコントロール化合物(例8)のものよりも優れていた。例10〜13(EHA又はSTOが添加されている)の硬化安定性は、安定剤が全く添加されていない例9のものよりも優れていた。例13は、また、1成分シーリング材として使用した場合にもこれらの重合体が示す優れた特性を示した。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
【表3】

【0043】
【表4】

【0044】
表5は、シリコンゴム(SR)、ポリイソブチレン(PIB)、シリル変性ポリプロピレングリコール(modified silyl polypropylene glycol、MS-PPG)、ポリスルフィド(PS)、及びポリウレタン(PU)などのシーリング材業界においてよく使用される他の重合体と比較したポリブタジエンから作られたシーリング材のメリットを示す。下表において、ランキングの“A”が最も望ましく、“C”が最も望ましくない。シーリング材の用途に使用される他の一般的な重合体と比較した本重合体の主要な利益は染色の向上、コストが潜在的により低い、及び1成分のシーリング材処方での使用の可能性である。
【0045】
【表5】

【0046】
本発明を実施例を参照して説明したが、明細書を読み、理解することにより修正及び改変を行うことができる。本発明は、ここで開示する範囲内及び特許請求の範囲内で行う限り、そのような修正及び改変も含むものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a. 重合体のバックボーンに共役ジエンが寄与するモノマー単位を少なくとも含み、珪素を含む末端基をさらに有する前記重合体と、
b. 可塑剤、充填剤、補強材、調整剤、硬化触媒/硬化剤、安定剤、及びそれらの混合物からなる群から選択されるその他の必要な硬化性シーリング材成分とを含む硬化性シーリング材組成物において、前記重合体は、40〜70%の1,2−ミクロ構造含量、10,000〜60,000の重量平均分子量(Mw)、及び約1.8以下の多分散性を有する硬化性シーリング材組成物。
【請求項2】
a. 1)共役ジエンモノマーと多官能性開始剤とのリビング重合を開始し、
2)前記重合を四置換珪素基で停止することによって、
40〜70%の範囲内の1,2−ミクロ構造含量、10,000〜60,000の範囲内の重量平均分子量(Mw)、及び1.8以下の多分散性を有する重合体を形成することと、
b. 前記重合体を、可塑剤、充填剤、補強材、調整剤、硬化触媒/硬化剤、安定剤、及びそれらの混合物からなる群から選択される必要なシーリング材成分と混合することとを有する硬化性シーリング材を製造する方法。
【請求項3】
a. 重合体のバックボーンに共役ジエンが寄与するモノマー単位を少なくとも含み、
b. 珪素を含む末端基をさらに有し、
c. 40〜70%の1,2−ミクロ構造含量、10,000〜60,000の重量平均分子量(Mw)、及び1.8以下の多分散性を有する重合体。
【請求項4】
1)多官能性開始剤を用いて共役ジエンモノマーのリビング重合を開始することと、
2)前記重合を四置換珪素基で停止することとを有する重合体を製造する方法において、
前記重合体は、40〜70%の範囲内の1,2−ミクロ構造含量、10,000〜60,000の範囲内の重量平均分子量(Mw)、及び1.8以下の多分散性を有する重合体を製造する方法。
【請求項5】
前記共役ジエンが寄与するモノマー単位は、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、3,4−ジメチル−1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、フェニル−1,3−ブタジエン、及びそれらの混合物からなる群から選択される請求項1〜4のいずれか1項に記載の重合体。
【請求項6】
前記重合体のバックボーンは、さらに、ビニル芳香族炭化水素モノマー、酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化スチレン、硫化エチレン、硫化プロピレン、硫化スチレン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−カプロアルデヒド、アセトチオアルデヒド、プロピオンチオアルデヒド、イソブチルチオアルデヒド、n−カプロチオアルデヒド、3−ジメチルオキシシクロブタン、3−ジエチルオキシシクロブタン、3−メチルエチル−オキシシクロブタン、3−ジメチルチオシクロブタン、3−ジエチルチオシクロブタン、3−メチルエチルチオシクロブタン、メチルエチルチオケトン、メチルイソプロピルチオケトン、及びジエチルチオケトン、複素環式窒素含有モノマー、及びそれらの混合物からなる群から選択される追加のモノマー単位を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の重合体。
【請求項7】
前記重合体のバックボーンは、少なくとも1つの開始剤の残基を含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の重合体。
【請求項8】
前記開始剤の残基は多官能性開始剤に由来する請求項1〜7項のいずれか1項に記載の重合体。
【請求項9】
前記末端基は、重合体のバックボーンと、下記一般構造式:
【化1】


(式中、R1、R2、R3、及びR4は、独立して、炭化水素、アルコキシ基及びそれらの混合物からなる群より選択される)の停止する基との反応生成物である請求項1〜8項のいずれか1項に記載の重合体。
【請求項10】
R1、R2、R3、及びR4のうち3つのみ炭化水素である請求項9又は10記載の重合体。
【請求項11】
R1、R2、R3、及びR4のうち少なくとも1つはアルコキシ基を含む請求項9記載の重合体。
【請求項12】
前記アルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、約10までの炭素を有するアルコキシ基、及びそれらの混合物からなる群から選択される請求項11記載の重合体。
【請求項13】
前記炭化水素基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル及びそれらの混合物からなる群から選択される請求項9記載の重合体。
【請求項14】
a. 5,000〜60,000のMwを有する共役ジエン重合体のバックボーンと、少なくとも1つのアルコキシシラン末端基と、
b. 可塑剤、充填剤、補強材、調整剤、硬化触媒/硬化剤、安定剤、及びそれらの混合物からなる群から選択されるその他の必要なシーリング材成分とを含む硬化性シーリング材。

【公表番号】特表2006−522211(P2006−522211A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509731(P2006−509731)
【出願日】平成16年4月2日(2004.4.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/010532
【国際公開番号】WO2004/090060
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】