説明

硬化性含フッ素樹脂組成物およびそれを硬化してなる光学部材

【課題】有機溶媒を用いずに液状組成物を形成し硬化物を得ることができ、しかも高いフッ素含有率の硬化物であっても、その硬化物の透明性や耐熱性を向上させる硬化性含フッ素樹脂組成物を提供する。
【解決手段】含フッ素アルキレンエーテル構造または含フッ素3級アルキル構造をエステル部に有する含フッ素アクリル系単量体およびフッ素含有率が25質量%以上の非晶性含フッ素ポリマー、さらに要すれば多官能性含フッ素単量体からなる均一な液状の硬化性含フッ素樹脂組成物、およびその硬化物、光学材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶剤を使用しなくても高耐熱性でかつ透明性の高い高フッ素含有率の光学材料、たとえば光導波路を与え得る硬化性含フッ素樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光導波路用材料として、回路作成における加工性が良く、大量生産が可能な有機系の材料が注目されている。
【0003】
なかでもフッ素系の材料は通信波長帯域である近赤外領域の光に対して透明であるため、種々のフッ素系の材料が提案されている。これらの材料を用いれば、光信号の損失の低い有機系の光導波路を作製することが可能となるが、さらなる低損失の有機系の光導波路を実現するために、透明性のさらに向上した材料が望まれている。
【0004】
光導波路用のフッ素系有機材料としては、含フッ素ポリイミド系の材料(特許文献1)や含フッ素アクリル系ポリマー類(特許文献2)が知られている。
【0005】
ところで光導波路に加工するためには、プレポリマーおよび/またはポリマーを有機溶剤に溶解させ、スピンコート、ディップ、キャスト法等の方法により、薄膜(コア層、クラッド層)を形成し、適宜硬化する加工法が一般的にとられている。
【0006】
しかしながら、このような有機溶剤を用いた成形では、コア層を形成する際に、有機溶剤により、先に形成したクラッド層の表面が溶解し、相互に混ざり合うというインターミキシングにより、コア/クラッドの界面が不均一となり光信号の損失が著しく増大するという問題がある。また、各層を形成後、乾燥等により層を形成する膜中の有機溶剤を揮発させる処理が必要であるが、それでも微量に膜中に残留している有機溶媒によって近赤外領域の光が吸収されたり散乱されるため、近赤外領域での透明性が低下するという問題もある。さらに膜中に残る有機溶媒が揮発した跡に起因するマイクロボイドが光散乱の原因となり、近赤外領域での透明性が低下する問題などもある。特に残留有機溶媒およびマイクロボイドは、著しく近赤外領域での透明性を低下させるため、光導波路の損失が大きく増加される。
【0007】
かかる問題を解決するために、アクリル単量体と含フッ素アクリル系ポリマー類とからなる硬化性組成物を用いることが提案されている(特許文献3)。
【0008】
上記特許文献3には、炭素数5以下のフッ素化アルキル基を含有するフッ素系硬化性単量体を必須成分として重合した含フッ素重合体と、フッ素化アルキル基を含有するフッ素系硬化性単量体と分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上含有する多官能単量体とからなる硬化性組成物が開示されており、またフッ素系硬化性単量体として(メタ)アクリレート系単量体が使用され、さらにフッ素含有率を向上させる目的で、そのエステル部にフッ素含有率の高い直鎖状のフルオロアルキル基を含有する単量体が用いられている。
【0009】
しかしこのようなフッ素系単量体は含フッ素重合体の溶解性が低く、液状組成物自体が白濁してしまうことがある。また、均一な液状組成物が形成できたとしても、得られる硬化物が白濁したり、さらにたとえ透明な硬化物が得られたとしても、加温により含フッ素重合体と直鎖状のフッ素含有率の高い直鎖状のフルオロアルキル基との相分離が生じ、白濁化などが発生して透明性が低下したりするといった問題点がある。さらにまた、硬化物中であっても、直鎖状のフルオロアルキル基同士の結晶化が進み、その結果、高温下で再結晶化による白濁を生じて硬化物の近赤外領域での透明性が低下する問題がある。
【0010】
【特許文献1】特開平2−281037号公報
【特許文献2】特開2000−81520号公報
【特許文献3】特開平5−9043号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで本発明は、有機溶媒を用いずに液状組成物を形成し硬化物を得ることができ、しかも高いフッ素含有率の硬化物であっても、その硬化物の透明性や耐熱性を向上させる硬化性含フッ素樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0012】
また、さらに、この組成物を用いた光導波路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の発明は、つぎの(A)および(B)からなる均一な液状組成物であって、(A)を5〜99質量%および(B)を1〜95質量%含む硬化性含フッ素樹脂組成物に関する。
(A)式(1):
【0014】
【化1】

【0015】
(式中、X1はH、CH3、F、ClおよびCF3よりなる群から選ばれる少なくとも1種;RはR1および/またはR2であり、
1は式(1−1):
【0016】
【化2】

【0017】
(式中、ZはFまたはCF3;m1、m2、m3、m4は0または1〜10の整数である。ただしm1+m2+m3+m4は1〜10の整数)で表わされる部位を含む含フッ素アルキル基、
2は式(1−2):
【0018】
【化3】

【0019】
(式中、Rf1およびRf2は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基;R3は水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜5の炭化水素基)で表わされる部位を含む含フッ素アルキル基)
で表される1種または2種以上の含フッ素単量体、
(B)本質的にはアクリル系単量体のみを重合してなる重合体であって、フッ素含有率が25質量%以上の含フッ素アクリル系ポリマー。
【0020】
なお、本発明の第1の発明において「均一な液状組成物」とは、含フッ素アクリル系ポリマー(B)が含フッ素単量体(A)からなる溶媒成分に完全に溶解しているかまたは分散していて組成物が透明であることをいい、たとえば光(550nm)透過率が80%以上であるものをいう。
【0021】
本発明の第2の発明は、つぎの(A−1)、(C)および(D)からなる均一な液状組成物であって、(A−1)を5〜98質量%、(C)を1〜94質量%および(D)を1〜94質量%含む硬化性含フッ素樹脂組成物に関する。
(A−1)式(1a):
【0022】
【化4】

【0023】
(式中、X1はH、CH3、F、ClおよびCF3よりなる群から選ばれる少なくとも1種;R1は式(1−1):
【0024】
【化5】

【0025】
(式中、ZはFまたはCF3;m1、m2、m3、m4は0または1〜10の整数である。ただしm1+m2+m3+m4は1〜10の整数)で表わされる部位を含む含フッ素アルキル基)で表わされる含フッ素単量体、
(C)式(2):
【0026】
【化6】

【0027】
(式中、X2およびX3は同じかまたは異なり、H、CH3、F、ClおよびCF3よりなる群から選ばれる少なくとも1種;nは1〜6、たとえば1〜3の整数;R4は炭素数1〜50、たとえば3〜50の水素原子の一部または全てがフッ素原子に置換されていても良い(n+1)価の有機基であって、当該R4中にヘテロ原子を有していても良い芳香族炭化水素構造の部位またはヘテロ原子を有していても良い脂肪族環状炭化水素構造の部位から選ばれる少なくとも1種の部位を含む有機基)で表される多官能性含フッ素単量体、
(D)フッ素含有率25質量%以上の非晶性の含フッ素ポリマー。
【0028】
なお、本発明の第2の発明において「均一な液状組成物」とは、非晶性含フッ素ポリマー(D)が含フッ素単量体(A−1)および多官能性含フッ素単量体(C)からなる溶媒成分に完全に溶解しているかまたは分散していて組成物が透明であることをいい、たとえば光(550nm)透過率が80%以上であるものをいう。
【0029】
本発明の第3の発明は、上記第1または第2の発明の硬化性含フッ素樹脂組成物を硬化してなり、ガラス転移温度が85℃以上である硬化物に関する。
【0030】
本発明の第4の発明は、第3の発明の硬化物からなる光学材料、およびコア部とクラッド部からなる光導波路であって、コア部およびクラッド部の少なくとも一方が、第3の発明の硬化物からなることを特徴とする光導波路に関する。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、溶剤を使用しなくても高耐熱性でかつ透明性の高い高フッ素含有率の光学材料、たとえば光導波路を与え得る硬化性含フッ素樹脂組成物を提供できるほか、後述する各種の効果が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
つぎの(A)および(B)からなる均一な液状組成物であって、(A)を5〜99質量%および(B)を1〜95質量%含む硬化性含フッ素樹脂組成物に関する。
(A)は含フッ素アクリル系単量体であり、式(1):
【0033】
【化7】

【0034】
(式中、X1はH、CH3、F、ClおよびCF3よりなる群から選ばれる少なくとも1種;RはR1および/またはR2であり、
1は式(1−1):
【0035】
【化8】

【0036】
(式中、ZはFまたはCF3;m1、m2、m3、m4は0または1〜10の整数である。ただしm1+m2+m3+m4は1〜10の整数)で表わされる部位を含む含フッ素アルキル基、
2は式(1−2):
【0037】
【化9】

【0038】
(式中、Rf1およびRf2は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基;R3は水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜5の炭化水素基)で表わされる部位を含む含フッ素アルキル基)
で表される1種または2種以上の含フッ素単量体、
(B)本質的にはアクリル系単量体のみを重合してなる重合体であって、フッ素含有率が25質量%以上の含フッ素アクリル系ポリマー。
【0039】
すなわち含フッ素アクリル系単量体と含フッ素アクリル系ポリマーからなる組成物において、特定の含フッ素アクリル系単量体(式(1)の含フッ素アクリル系単量体)を選択し、硬化性含フッ素樹脂組成物とすることによって、硬化前の組成物において、種々の含フッ素アクリル系ポリマー(B)との溶解性が良好で均質な液状組成物が得られること、さらに硬化後の硬化物において、含フッ素アクリルポリマー(B)との相溶性に優れ、相溶性不足が原因で生じる白濁などによる透明性の低下を解消できることを見出した。また、硬化物中の部分的な結晶化も押さえられ、それによる白濁などの透明性の低下も解決できたものである。
【0040】
本発明の第1の発明の硬化性含フッ素樹脂組成物において含フッ素アクリル系単量体(A)の特徴は式(1)に示した特定のエステル部位を有する含フッ素アクリル系単量体を使用する点にある。つまり、エステル部位として式(1−1)の含フッ素アルキレンエーテル構造R1および/または式(1−2)の含フッ素第3級アルキル構造R2を含むエステル部位を用いることで、上述の硬化前の組成物における溶解性、均一性、硬化後の相溶性と透明性を確保できるものである。
【0041】
式(1)で示される含フッ素アクリル系単量体(A)の好ましい例の第1は、エステル部に含フッ素アルキレンエーテル構造R1を含むものである。これらの単量体は前述の特徴と効果に加えて、室温で液状であり、含フッ素アクリルポリマー(B)をより効果的に溶解させ、より多くの種々の含フッ素アクリル系ポリマーに対し均一な液状組成物を得やすい点で好ましい。また、これらの単量体は直鎖状のフルオロアルキル基をエステル部にもつ単量体に比べて低粘度であり、組成物を低粘度化することができるため、加工性にも優れる。また、これらの単量体は揮発性も低いため、成形加工の操作時に単量体成分の揮発により液状組成物の組成が変化し、硬化物の屈折率等の物性が変化するといった問題がない。また、硬化後も含フッ素アクリルポリマー(B)との相溶性が高いため、白濁を生じたり、加温による相分離するといった問題もない。また得られる硬化物は高フッ素含有率にもかかわらず非晶性を示すという特徴をもつ。
【0042】
式(1)のエステル部位を構成するR1としては、つぎに示すものが非限定的に例示できる。
(1−3):
【0043】
【化10】

【0044】
(1−4):
【0045】
【化11】

【0046】
(1−5):
【0047】
【化12】

【0048】
(1−6):
【0049】
【化13】

【0050】
(1−7):
【0051】
【化14】

【0052】
(1−8):
【0053】
【化15】

【0054】
これらの中でもフッ素含有率の高さ、含フッ素アクリルポリマー(B)の溶解性、硬化後の含フッ素アクリルポリマー(B)との相溶性、硬化物の近赤外領域での透明性が良好であるとの観点から、特に好ましい構造は式(1−3):
【0055】
【化16】

【0056】
(式中、m5は1〜5の整数)である。
【0057】
なかでも硬化物の耐熱性(高ガラス転移温度)、機械的強度の観点からm5は1〜3が、さらにm5は1がもっとも好ましい。
【0058】
式(1)におけるX1は含フッ素単量体(A)の重合反応性、硬化物の近赤外領域での透明性、耐熱性(高ガラス転移温度)が良好であるとの観点からフッ素原子がもっとも好ましい。
【0059】
1を含む非限定的な含フッ素アクリル系単量体(A)としては、つぎに示すものが例示できる。
(1a):
【0060】
【化17】

【0061】
(1b):
【0062】
【化18】

【0063】
(1c):
【0064】
【化19】

【0065】
(1d):
【0066】
【化20】

【0067】
(1e):
【0068】
【化21】

【0069】
(1f):
【0070】
【化22】

【0071】
これらのうち、式(1−3)で示されるR1、特にm5が1のR1を有する含フッ素単量体(1a−1):
【0072】
【化23】

【0073】
が、含フッ素アクリルポリマー(B)の溶解性、硬化後の含フッ素アクリルポリマー(B)との相溶性、硬化物の近赤外領域での透明性の観点でもっとも好ましい。
【0074】
式(1)で示される含フッ素アクリル系単量体(A)の好ましい例の第2は、エステル部に含フッ素第3級アルキル構造R2を含むものである。
【0075】
エステル部位にR2を含む単量体の特徴は分岐構造にあり、前述の効果に加え、特に硬化物に耐熱性(高ガラス転移温度)と適度な機械的強度や硬度を付与する。
【0076】
式(1)のエステル部位を構成するR2は、
式(1−2):
【0077】
【化24】

【0078】
(式中、Rf1およびRf2は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基;R3は水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜5の炭化水素基)で表される含フッ素第3級アルキル構造である。
【0079】
Rf1およびRf2は同じかまたは異なる炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基であり、具体的にはCF3、CF2CF3、CF2CF2CF3、CF2CF2CF2CF3、CF2CF2CF2CF2CF3であり、特に相溶性および硬化物の耐熱性(ガラス転移温度)が良好であるとの観点からCF3が好ましい。
【0080】
3はフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜5の炭化水素基であり、具体的にはCH3、CH2CH3、CH2CH2CH3、CH2CH2CH2CH3、CH2CH2CH2CH2CH3、CH2CF3、CH2CH2CF3、CH2CF2CF3であり、特に相溶性および硬化物の耐熱性(ガラス転移温度)が良好であるとの観点からCH3であるのが好ましい。Rf1、Rf2およびR3の各々の炭素数が6以上になると分岐鎖が結晶化しやすく、硬化物の透明性を低下させるため好ましくない。
【0081】
含フッ素第3級アルキル構造R2を有する具体的単量体としては、たとえばヘキサフルオロネオペンチルメタクリレート(6FNPM:X1=CH3、Rf1=Rf2=CF3、R3=CH3)、ヘキサフルオロネオペンチルα−フルオロアクリレート(6FNPF:X1=F、Rf1=Rf2=CF3、R3=CH3)、2,2−ビストリフルオロメチルブチルメタクリレート(X1=CH3、Rf1=Rf2=CF3、R3=CH2CH3)、2,2−ビストリフルオロメチルブチルα−フルオロアクリレート(X1=F、Rf1=Rf2=CF3、R3=CH2CH3)、
【0082】
【化25】

【0083】
などが例示できる。これらのうち、硬化物の耐熱性に優れ、合成が容易な点から
ヘキサフルオロネオペンチルメタクリレート(6FNPM)、
【0084】
【化26】

【0085】
ヘキサフルオロネオペンチルα−フルオロアクリレート(6FNPF)
【0086】
【化27】

【0087】
が好ましく、特に光導波路を用いた光デバイスを加工する際に耐熱性が必要な場合や、光導波路を用いた光デバイスが車内や、FA用途等で高温下で使用される場合においては、硬化物の耐熱性(高ガラス転移温度)、近赤外領域での透明性の高い6FNPFが好ましい。
【0088】
(B)成分である含フッ素アクリル系ポリマーは、フッ素含有率が25質量%以上の本質的にアクリル系単量体からなる重合体である。
【0089】
このポリマー(B)を用いることで、含フッ素アクリル系単量体(A)と均一な液状組成物である硬化性含フッ素樹脂組成物が形成される。ポリマー(B)は単量体(A)との組み合わせにおいて、硬化性含フッ素樹脂組成物の粘度を調整する機能と、硬化時の重合収縮を低下させる機能、硬化物のフッ素含有率を上げる機能を併せもつ。また、成形時に金型等で形状を付与し硬化させる場合においては、金型から硬化物の剥離性を向上させる機能をももつ。
【0090】
含フッ素アクリル系ポリマー(B)は、含フッ素アクリル系単量体の単独重合体または共重合体であってもよい。また、フッ素含有率が25質量%以上になるのであれば、含フッ素アクリル系単量体と非フッ素アクリル系単量体との共重合体としてもよい。また、2種類以上の含フッ素アクリル系ポリマー(B)をブレンドして使用してもよい。
【0091】
含フッ素アクリル系ポリマー(B)を形成する含フッ素アクリル系単量体の具体例としては、式(3−1):
【0092】
【化28】

【0093】
(式中、X6はH、F、Cl、CH3またはCF3;R5は炭素数1〜30の水素原子の一部または全てがフッ素置換されてもよい飽和炭化水素基。ただし、X6およびR5の少なくとも一方はフッ素原子を含む)があげられる。含フッ素アクリル系ポリマー(B)のフッ素含有率、耐熱性(高ガラス転移温度)、近赤外領域での透明性が良好であるとの観点からX6はフッ素原子が好ましい。
【0094】
好ましいR5としては、
(1)アルキレンエーテル結合を含む水素原子の一部または全てがフッ素置換されていてもよい飽和炭化水素基、
(2)分岐構造を含む水素原子の一部または全てがフッ素置換されてもよい飽和炭化水素基、
(3)ヘテロ原子を有していてもよい水素原子の一部または全てがフッ素置換されていてもよい芳香族炭化水素基、
(4)ヘテロ原子を有していてもよい水素原子の一部または全てがフッ素置換されていてもよい脂肪族単環構造、
(5)ヘテロ原子を有していてもよい水素原子の一部または全てがフッ素置換されていてもよい脂肪族複環構造
である。これらの構造(1)〜(5)をエステル部に含む単量体成分がポリマー中にあると上記の効果が顕著に現れる。
【0095】
特に好ましくは、これらのR5がフッ素原子を含んでいること、さらにはより一層多くのフッ素原子を含む(フッ素含有率の高い)構造が好ましい。
【0096】
この観点から、水素原子の一部または全てがフッ素原子に置き換わった上記(1)〜(5)の含フッ素炭化水素基、特にパーフルオロアルキレンエーテル基、パーフルオロ芳香族炭化水素基、パーフルオロ脂肪族単環状構造、およびパーフルオロ脂肪族複環状構造を含むものが好ましい。具体例については後述する。
【0097】
含フッ素アルキル基、特にパーフルオロアルキル基を含むものとしては、炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基を含むものが好ましく、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を含むものが特に好ましい。炭素数が大きすぎるパーフルオロアルキル基は、得られる硬化物が結晶化しやすく、白濁化等によって透明性が低下しやすい点から好ましくない。
【0098】
非フッ素アクリル系単量体としては、式(3−1)においてX6およびR5がいずれもフッ素原子を含まない単量体があげられる。具体的には後述する。
【0099】
つぎにR5の具体例について個々に説明する。
【0100】
(1)アルキレンエーテル結合を含む一部または全てがフッ素置換されていてもよい飽和炭化水素基:
このアルキレンエーテル基は含フッ素アクリル系ポリマー(B)のフッ素含有率を高くすることができ、また含フッ素アクリル系単量体(A)に対する溶解性を高めることができ、均一な液状組成物を得やすくなる点で好ましい。
【0101】
アルキレンエーテル基の好ましい炭素数は、2以上で25以下、特に10以下である。炭素数があまり大きすぎると硬化物の硬度や機械的特性を低下させる場合があるので好ましくない。
【0102】
好ましい具体例は、前記式(1−1)で示される含フッ素アルキレンエーテル基R1である。このものは、高フッ素含有率で含フッ素アクリル系単量体(A)に対する溶解性が良好なため均一な液状組成物を得やすくなる点で好ましい。また、より具体的なR5の例示および単量体の例示としては、式(1−1)に関して例示した前記の具体例(1−3)〜(1−8)および(1a)〜(1f)がここでも例示できる。
【0103】
さらに、好ましいR5としては、前記式(1−3)で示されるものがあげられ、また同じく硬化物の耐熱性(高ガラス転移温度)、機械的強度が良好であるとの観点からm5は1〜3が、さらには1がもっとも好ましい。
【0104】
(2)分岐構造を含む一部または全てがフッ素置換されていてもよい飽和炭化水素基:
分岐構造を含むことにより、含フッ素単量体(A)に対する溶解性が向上し、均一な液状組成物を得やすく、また硬化物の耐熱性(高ガラス転移温度)を高めることができる。
【0105】
5の具体例としてはつぎのものが例示できる。
(B−2−1)
【0106】
【化29】

【0107】
(式中、Rf4およびRf5は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基;R6は水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜5の炭化水素基、HまたはF;nは1〜6の整数;mは1〜6の整数)
より具体的には、
【0108】
【化30】

【0109】
である。
(B−2−2)
【0110】
【化31】

【0111】
より具体的には、
【0112】
【化32】

【0113】
である。
(B−2−3)
【0114】
【化33】

【0115】
より具体的には、
【0116】
【化34】

【0117】
である。
【0118】
具体的な含フッ素単量体としてはつぎのものが例示できる。
(B−2a):
【0119】
【化35】

【0120】
具体的には、
【0121】
【化36】

【0122】
である。
(B−2b):
【0123】
【化37】

【0124】
具体的には、
6FNPF:
【0125】
【化38】

【0126】
または
6FNPM:
【0127】
【化39】

【0128】
である。
(B−2c):
【0129】
【化40】

【0130】
(式中、X6、Rf4、Rf5、R6は式(B−2a)と同じ)
具体的には、
ヘキサフルオロイソプロピルα−フルオロアクリレート(HFIPF)
【0131】
【化41】

【0132】
または
ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート(HFIPM)
【0133】
【化42】

【0134】
である。
【0135】
この中で6FNPM、6FNPF、ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート(HFIPM)、ヘキサフルオロイソプロピルα−フルオロアクリレート(HFIPF)が硬化物の耐熱性(高ガラス転移温度)、近赤外領域での透明性が良好であるとの観点で好ましい。中でも6FNPFとHFIPFは、含フッ素アクリル系単量体(A)に対する溶解性が良好なため均一な液状組成物を得やすくなる点、硬化物の耐熱性(高ガラス転移温度)、近赤外領域での透明性が良好であるとの観点で最も好ましい。
【0136】
(3)ヘテロ原子を有していてもよい一部または全てがフッ素置換されていてもよい芳香族炭化水素基:
この芳香族炭化水素基は、耐熱性(高ガラス転移温度)が良好な点で好ましい。特に、構造中の水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されているものは、さらに近赤外領域での透明性にも優れている。
【0137】
5の具体例としてはつぎのものが例示できる。
(B−3−1)
【0138】
【化43】

【0139】
(式中、R7は同じかまたは異なり、F、Clまたはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜14のアルキル基;R8は結合手、または分岐鎖を有していてもよい炭素数1〜6のアルキレン基;aは1〜5の整数;ただし、R7およびR8のいずれか1つはフッ素原子を有している)
【0140】
より具体的には、
【0141】
【化44】

【0142】
である。
【0143】
具体的な含フッ素単量体としてはつぎのものが好ましく例示できる。
【0144】
【化45】

【0145】
パーフルオロフェニルα−フルオロアクリレート
【0146】
【化46】

【0147】
パーフルオロフェニルメタクリレート
【0148】
【化47】

【0149】
が好ましくあげられる。
【0150】
これらのなかでも、パーフルオロフェニルメタクリレート、パーフルオロフェニルα−フルオロアクリレートが耐熱性(高ガラス転移温度)、近赤外領域での透明性を向上させる点で好ましい。
【0151】
(4)ヘテロ原子を有していてもよい一部または全てがフッ素置換されていてもよい脂肪族単環構造:
この脂肪族単環構造は、耐熱性(高ガラス転移温度)が良好な点で好ましい。特に、構造中の水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されているものは、さらに近赤外領域での透明性にも優れている。
【0152】
5の具体例としてはつぎのものが非限定的に例示できる。
(B−4−1)
【0153】
【化48】

【0154】
(式中、R9は同じかまたは異なり、F、Clまたはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜14のアルキル基;R10は結合手、または分岐鎖を有していてもよい炭素数1〜6のアルキレン基;bは1〜5の整数;ただし、R9およびR10のいずれか1つはフッ素原子を有している)
より具体的には、
【0155】
【化49】

【0156】
があげられる。
【0157】
(B−4−2)つぎの単環構造を1個または2個有する脂肪族環状炭化水素構造を含むものも好ましく例示できる。
【0158】
【化50】

【0159】
具体的な含フッ素単量体としてはつぎのものが好ましく例示できる。
【0160】
【化51】

【0161】
(5)ヘテロ原子を有していてもよい一部または全てがフッ素置換されていてもよい脂肪族複環構造:
この脂肪族複環構造は、耐熱性(高ガラス転移温度)が良好な点で好ましい。特に、構造中の水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されているものは、さらに近赤外領域での透明性にも優れている。
【0162】
5の具体例としてはつぎのものが例示できる。
(B−5−1)アダマンタンおよびその誘導体、
(B−5−2)ノルボルナンおよびその誘導体、
(B−5−3)パーヒドロアントラセンおよびその誘導体、
(B−5−4)パーヒドロナフタレンおよびその誘導体、
(B−5−5)トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカンおよびその誘導体
などがあげられ、それらの一部の例として、
【0163】
【化52】

【0164】
などがあげられる。
【0165】
これら例示のなかで、本発明では少なくとも炭化水素基の1つの水素原子を炭素数1〜5の含フッ素アルキル基やフッ素原子で置換したものである。
【0166】
さらにこれら複環構造の炭化水素部位を含む有機基のうち、アダマンタンおよびその誘導体、ノルボルナンおよびその誘導体を含むものが好ましく、これらは特に耐熱性(高ガラス転移温度)と近赤外領域での透明性を効果的に硬化物に付与できる。
【0167】
具体的な含フッ素単量体としてはつぎのものが好ましく例示できる。
(B−5−1a)つぎの式で示されるアダマンタンおよびその誘導体を側鎖に有する単量体:
【0168】
【化53】

【0169】
(式中、X5はH、F、Cl、CH3またはCF3;R1b、R2bは環に結合した置換基であり、CH3、C25またはOH;R4b、R5bは結合手または分岐鎖を有していてもよい炭素数1〜6のアルキレン基;R3bはH、CH3またはC25;nは0または1〜2の整数。ただし、いずれかの置換基にフッ素原子を含む)。
【0170】
より具体的には、
【0171】
【化54】

【0172】
などがあげられる。
【0173】
(B−5−2a)つぎの式で示されるノルボルナンおよびその誘導体を側鎖に有する単量体:
【0174】
【化55】

【0175】
(式中、X5はH、F、Cl、CH3またはCF3;R1a、R2a、R3a、R4a、R5a、R6a、R7a、R8a、R9aおよびR10aは同じかまたは異なり、H、F、Clまたは炭素数1〜14のハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基;R11aは結合手または分岐鎖を含んでいてもよい炭素数1〜6のアルキレン基;nは0または1〜2の整数。ただし、いずれかの置換基にフッ素原子を含む)。
【0176】
より具体的には、
【0177】
【化56】

【0178】
などがあげられる。
【0179】
含フッ素アクリル系単量体と共重合してもよい非フッ素アクリル系単量体としては、含フッ素アクリル系ポリマー(B)のフッ素含有率を25質量%以上とするものであれば特に限定されない。
【0180】
非フッ素アクリル系単量体の非限定的な具体例としては、たとえばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレ−ト、イソプロピル(メタ)アクリレ−ト、n−ブチル(メタ)アクリレ−ト、イソブチル(メタ)アクリレ−ト、t−ブチル(メタ)アクリレ−ト、などの脂肪族エステル(メタ)アクリレ−ト類;そのほかフェニル(メタ)アクリレ−ト、アダマンチル(メタ)アクリレ−ト、ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレ−トなどがあげられる。
【0181】
含フッ素アクリル系ポリマー(B)のフッ素含有率は25質量%以上であればよいが、多い方が得られる硬化物の近赤外領域での透明性に優れる点で好ましく、好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、特に好ましくは50質量%以上である。上限は、各重合体中の水素原子の全てがフッ素原子に置き換わったときのフッ素含有率である。
【0182】
含フッ素アクリル系ポリマー(B)は得られる硬化物の耐熱性を高める点から、ガラス転移温度(Tg)として85℃以上、好ましくは90℃以上、特に95℃以上のものが好ましい。
【0183】
含フッ素アクリル系ポリマー(B)の数平均分子量は、他の成分への溶解性、相溶性の観点からは、上限は500,000、好ましくは100,000、特に好ましくは50,000である。下限は特には制限はないが、同様の観点から数量体であるオリゴマーであることが好ましく、具体的には300、好ましくは500である。
【0184】
第1の発明の組成物における調製法、添加剤などについては、後述する。
【0185】
含フッ素アクリル系単量体(A)および含フッ素アクリル系ポリマー(B)の含有割合は、均一な液状組成物の必要な粘度、硬化物の耐熱性(ガラス転移温度)などによって適宜選択すればよいが、(A)が5質量%以上、好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上で99質量%以下、好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは75質量%以下であり、(B)が1質量%以上、好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上で95質量%以下、好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは75質量%以下である。含フッ素単量体(A)の量が少なすぎると均一な液状の組成物を得ることが難しくなる。含フッ素アクリル系ポリマー(B)が少なすぎると均一な液状組成物の粘度が低くなり、成形時の操作性が悪化したり、重合硬化収縮が大きくなって設計した光導波路の形状が変わることがあり好ましくない。
【0186】
均一な液状組成物の好ましい粘度範囲は10mPa・sから20000mPa・sの範囲であるが、作業性の観点から20〜10000mPa・sの範囲が、さらには50〜8000mPa・sの範囲がより好ましい。
【0187】
また、有機溶媒を実質的に含まないものが好ましいが、粘度を調整する目的などで硬化物の物性に悪影響を与えない範囲で溶剤などを添加してもよい。
【0188】
つぎに本発明の第2の発明を説明する。第2の発明は、つぎの(A−1)、(C)および(D)からなる均一な液状組成物であって、(A−1)を5〜98質量%、(C)を1〜94質量%および(D)を1〜94質量%含む硬化性含フッ素樹脂組成物に関する。
(A−1)式(1a):
【0189】
【化57】

【0190】
(式中、X1はH、CH3、F、ClおよびCF3よりなる群から選ばれる少なくとも1種;R1は式(1−1):
【0191】
【化58】

【0192】
(式中、ZはFまたはCF3;m1、m2、m3、m4は0または1〜10の整数である。ただしm1+m2+m3+m4は1〜10の整数)で表わされる部位を含む含フッ素アルキル基)で表わされる含フッ素単量体、
(C)式(2):
【0193】
【化59】

【0194】
(式中、X2およびX3は同じかまたは異なり、H、CH3、F、ClおよびCF3よりなる群から選ばれる少なくとも1種;nは1〜6、たとえば1〜3の整数;R4は炭素数1〜50、たとえば3〜50の水素原子の一部または全てがフッ素原子に置換されていても良い(n+1)価の有機基であって、当該R4中にヘテロ原子を有していても良い芳香族炭化水素構造の部位またはヘテロ原子を有していても良い脂肪族環状炭化水素構造の部位から選ばれる少なくとも1種の部位を含む有機基)で表される多官能性含フッ素単量体、
(D)フッ素含有率25質量%以上の非晶性の含フッ素ポリマー。
【0195】
第2の発明においては、含フッ素アクリル系単量体と多官能性含フッ素単量体と非晶性の含フッ素ポリマーとからなる組成物において特定の含フッ素アクリル系単量体(A−1)(式(1)においてRが含フッ素アルキレンエーテル構造R1である含フッ素アクリル系単量体)と特定の多官能性含フッ素単量体(式(2)の多官能性含フッ素単量体)を選択し、硬化性含フッ素樹脂組成物とすることによって、前述(第1の発明)と同様の特徴と効果を奏し、さらに硬化後の硬化物において、硬化物の耐熱性(高ガラス転移温度)、機械的強度、硬度が向上し、さらにまた多官能性含フッ素単量体(C)が架橋構造をとることで相分離が抑えられる結果、非晶性の含フッ素ポリマー(D)との相溶性が向上して相溶性不足が原因で生じる白濁などによる近赤外領域での透明性の低下を解消できる。
【0196】
また、硬化物中の部分的な結晶化も硬化物が架橋構造をとることで抑制され、結晶化による白濁などの近赤外領域での透明性の低下も解決できる。
【0197】
第2の発明の硬化性含フッ素樹脂組成物において、含フッ素アクリル系単量体(A−1)の特徴は一般式(1)においてRが含フッ素アルキレンエーテル構造R1である特定のエステル部位を有するものである。つまり、式(1−1)の含フッ素アルキレンエーテル構造を含むエステル部位から選ばれるものであり、これらのエステル部位を用いることで、上記で述べた硬化前の組成物の優れた溶解性、均一性、硬化後の良好な相溶性と透明性を確保できるものである。
【0198】
また、第2の発明の硬化性含フッ素樹脂組成物において、多官能性含フッ素単量体(C)の特徴は式(2)に示した特定のエステル部位R4を有するものである。つまり、ヘテロ原子を有していても良い芳香族炭化水素構造の部位またはヘテロ原子を有していても良い脂肪族環状炭化水素構造の部位から選ばれる少なくとも1種の部位を含む有機基であり、これらのエステル部位を用いることで、前述したような硬化物の良好な近赤外領域での透明性、耐熱性(高ガラス転移温度)、機械的強度、硬度を確保できるものである。
【0199】
つぎに、個々の成分に関して説明する。
【0200】
含フッ素アクリル系単量体(A−1)は式(1)においてRが含フッ素アルキレンエーテル構造R1である含フッ素アクリル系単量体である。3種類の成分の系(A、D、C)においては、含フッ素アクリル系単量体(A−1)は他成分をよく溶解させ、均一な液状組成物とする点が重要で、式(1−1)のような含フッ素アルキレンエーテル構造、好ましくは式(1−3)のような構造が前述と同様の特徴と効果を奏する点で好ましい。
【0201】
1は具体例を含めて前述と同一である。また、好ましいR1も式(1−3)で示されるものであり、前述と具体例を含めて同一である。
【0202】
多官能性含フッ素単量体(C)は式(2):
【0203】
【化60】

【0204】
(式中、X2およびX3は同じかまたは異なり、H、CH3、F、ClおよびCF3よりなる群から選ばれる少なくとも1種。nは1〜6、たとえば1〜3の整数;R4は炭素数1〜50、たとえば3〜50の水素原子の一部または全てがフッ素原子に置換されてもよい(n+1)価の有機基であって、該R4にヘテロ原子を有していてもよい芳香族炭化水素構造の部位またはヘテロ原子を有していてもよい脂肪族環状炭化水素構造の部位から選ばれる少なくとも1種の部位を含む有機基。ただし、X2、X3およびR4の少なくとも1つはフッ素原子を含む)で表される多官能性含フッ素単量体である。
【0205】
式(2)において、X2およびX3がフッ素原子であることが、多官能性含フッ素単量体の反応性が良好である点、得られる硬化物の耐熱性が向上する点から好ましい(高ガラス転移温度化)。また、フッ素含有率も高く、硬化物の近赤外領域での透明性も高くなる点で好ましい。
【0206】
式(2)において、R4は炭素数1〜50、たとえば3〜50の水素原子の一部または全てがフッ原子に置換されていてもよい(n+1)価の有機基である。水素原子の一部または全てがフッ原子に置換されていることで、得られる硬化物の近赤外領域での透明性が向上する。
【0207】
さらにこの有機基R4は、その構造中に、(C−1)ヘテロ原子を有していてもよい芳香族炭化水素構造の部位、(C−2)ヘテロ原子を有していてもよい脂肪族単環構造の部位、または(C−3)ヘテロ原子を有していてもよい脂肪族複環構造の部位から選ばれる少なくとも1種の部位を含む有機基である。これらの環状構造を含むことにより、得られる硬化物の耐熱性が向上する(高ガラス転移温度化)。
【0208】
この多官能含フッ素単量体(C)は硬化物の耐熱性を向上させる効果と硬化物の機械的強度を向上させる効果とを併せもつ。さらにはフッ素原子を含有させることにより、フッ素含有率の向上や硬化物の近赤外領域での透明性に寄与する。また、多官能部位に環状構造をもつことによる硬化物の耐熱性の向上は、単官能単量体部位に環状構造をもつ含フッ素アクリル系単量体の場合に比べて、少量の環状構造の導入で耐熱性(高ガラス転移温度)の向上が実現できる。また、理由は不明であるが、多官能部位に環状構造をもつことにより硬化収縮も低下できる。
【0209】
つぎに各部位について説明する。なお、説明の都合上、R4の具体例を−O−R4−O−の形で例示するが、これらに限定されるものではない。
【0210】
(C−1)ヘテロ原子を有していてもよい芳香族炭化水素構造の部位:
(C−1−1)式:
【0211】
【化61】

【0212】
(式中、R11およびR12は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5の含フッ素アルキル基;Z1およびZ2は同じかまたは異なり、アルキル基、含フッ素アルキル基、官能基またはハロゲン原子;pおよびqは同じかまたは異なり、1〜4の整数)で表わされる部位、または
(C−1−2)式:
【0213】
【化62】

【0214】
(式中、R13、R14、R15およびR16は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5の含フッ素アルキル基;Z3はアルキル基、含フッ素アルキル基、官能基またはハロゲン原子;pは1〜4の整数)で表わされる部位があげられる。
【0215】
部位(C−1−1)の具体例としては、
−OBz−C(CH32−BzO−、
−OBz−C(CF32−BzO−、
−OCH2CH(OH)CH2O−Bz−C(CH32−Bz−O−CH2CH(OH)CH2O−、
−OCH2CH(OH)CH2O−Bz−C(CF32−Bz−O−CH2CH(OH)CH2O−、
−(OCH2CH2nO−Bz−C(CH32−Bz−O−(CH2CH2O)m−、
−(OCH2CH2nO−Bz−C(CF32−Bz−O−(CH2CH2O)m
などがあげられ、部位(C−1−2)の具体例としては、
−O−C(CF32−Bz−C(CF32−O−
などがあげられる。
【0216】
式中、Bzはアルキル基、含フッ素アルキル基、官能基またはハロゲン原子で置換されていてもよい2価のベンゼン環またはヘテロ芳香環、nおよびmはR4の炭素数を50、さらには30を超えないようにする0または1以上の整数である。
【0217】
(C−2)ヘテロ原子を有していてもよい脂肪族単環構造の部位:
(C−2−1)単環式炭化水素構造:
たとえば、
(C−2−1−1)式:
【0218】
【化63】

【0219】
(式中、R11およびR12は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5の含フッ素アルキル基;Z1およびZ2は同じかまたは異なり、アルキル基、含フッ素アルキル基、官能基またはハロゲン原子;pおよびqは同じかまたは異なり、1〜4の整数)で表わされる部位、または
(C−2−1−2)式:
【0220】
【化64】

【0221】
(式中、R13、R14、R15およびR16は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5の含フッ素アルキル基;Z3はアルキル基、含フッ素アルキル基、官能基またはハロゲン原子;pは1〜4の整数)で表わされる部位があげられる。
【0222】
部位(C−2−1−1)の具体例としては、
−O−cHx−C(CH32−cHx−O−、
−O−cHx−C(CF32−cHx−O−、
−OCH2CH(OH)CH2O−cHx−C(CH32−cHx−O−CH2CH(OH)CH2O−、
−OCH2CH(OH)CH2O−cHx−C(CF32−cHx−O−CH2CH(OH)CH2O−、
−(OCH2CH2nO−cHx−C(CH32−cHx−O−(CH2CH2O)m−、
−(OCH2CH2nO−cHx−C(CF32−cHx−O−(CH2CH2O)m
などがあげられ、部位(C−2−1−2)の具体例としては、
−O−C(CF32−cHx−C(CF32−O−
などがあげられる。
【0223】
式中、cHxはアルキル基、含フッ素アルキル基、官能基またはハロゲン原子で置換されていてもよい2価のシクロヘキサン環またはヘテロ脂環式単環化合物、nおよびmはR4の炭素数を50、さらには30を超えないようにする0または1以上の整数である。
【0224】
(C−3)ヘテロ原子を有していてもよい脂肪族複環構造の部位:
たとえば、
(C−3−1)式:
【0225】
【化65】

【0226】
(式中、R11およびR12は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5の含フッ素アルキル基;Z1およびZ2は同じかまたは異なり、アルキル基、含フッ素アルキル基、官能基またはハロゲン原子;pおよびqは同じかまたは異なり、1〜4の整数)で表わされる部位、または
(C−3−2)式:
【0227】
【化66】

【0228】
(式中、R13、R14、R15およびR16は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5の含フッ素アルキル基;Z3はアルキル基、含フッ素アルキル基、官能基またはハロゲン原子;pは1〜4の整数)で表わされる部位があげられる。
【0229】
部位(C−3−1)の具体例としては、
−O−NB−C(CH32−NB−O−、
−O−NB−C(CF32−NB−O−、
−OCH2CH(OH)CH2O−NB−C(CH32−NB−O−CH2CH(OH)CH2O−、
−OCH2CH(OH)CH2O−NB−C(CF32−NB−O−CH2CH(OH)CH2O−、
−(OCH2CH2nO−NB−C(CH32−NB−O−(CH2CH2O)m−、
−(OCH2CH2nO−NB−C(CF32−NB−O−(CH2CH2O)m
などがあげられ、部位(C−3−2)の具体例としては、
−O−C(CF32−NB−C(CF32−O−
などがあげられる。
【0230】
式中、NBはアルキル基、含フッ素アルキル基、官能基またはハロゲン原子で置換されていてもよい2価のノルボルネン環またはヘテロ脂環式複環化合物、nおよびmはR4の炭素数を50、さらには30を超えないようにする0または1以上の整数である。
【0231】
以上が、n=1の例であるが、n=2または3のときの具体例としては、つぎのものがあげられる。
【0232】
【化67】

【0233】
式(2)で示される多官能性含フッ素単量体(C)の具体例としてはつぎのものが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0234】
【化68】

【0235】
【化69】

【0236】
以上の例示のほかに、ヘテロ環を含む多官能性含フッ素単量体が例示できる。
【0237】
式(2)で表される多官能性含フッ素単量体(C)におけるR4を若干異なる観点から整理してみると、つぎのとおりとなる。なお、以下のR4の説明において、これまでの説明と重複する記載があるが、整理という面から、敢えて重複をいとわずに説明する。
【0238】
4は、炭素数1〜50の(n+1)価の有機基であり、具体的には、
(1)直鎖状または分枝状のエーテル結合を有していてもよい(n+1)価の有機基、
(2)芳香族環状構造を有する(n+1)価の有機基、
(3)脂肪族環状(単環または多環)構造を有する(n+1)価の有機基、
(4)ウレタン結合を含む(n+1)価の有機基
などが挙げられ、これら有機基において、炭素−水素結合を形成する水素原子の一部またはすべてがフッ素原子で置換されたものであってもよい。
【0239】
まず、上記R4のそれぞれの好ましい態様について、具体例を挙げて説明する。
【0240】
(1)直鎖状または分枝状のエーテル結合を有していてもよい(n+1)価の有機基:
前記多官能アクリレートを示す式(2)におけるn=1のもの(二官能アクリレート)としては、たとえば
式(R2−1):
−(CH2p1−(CF2p2−(C(CH3))p3− (R2−1)
(式中、p1+p2+p3=1〜30)で示される有機基が例示できる。
【0241】
具体例としては、
−CH2CH2−、
−CH2CH(CH3)−、
−CH2CH2CH(CH3)−、
−(CH24−、
−(CH26−、
−(CH22(CF22(CH22−、
−(CH22(CF24(CH22−、
−(CH22(CF26(CH22−、
−CH2C(CH32CH2
などがあげられる。
【0242】
また、式(R2−1−1):
【0243】
【化70】

【0244】
(式中、p1、p2、p3は前記式(R2−1)と同じ)も挙げられる。
【0245】
より具体的には、
【0246】
【化71】

【0247】
などが好ましく挙げられる。
【0248】
その他、式(R2−1−2)、(R2−1−3):
【0249】
【化72】

【0250】
(式中、p4は0または1〜20の整数、Z15、Z16、Z17は同じかまたは異なり、HまたはCH3)なども挙げられる。
【0251】
また、n=2以上(三官能以上)のものとしては、式(R2−2):
【0252】
【化73】

【0253】
(式中、p5は0または1〜5の整数)があげられる。
【0254】
具体的には、
【0255】
【化74】

【0256】
などが挙げられる。
【0257】
また、式(R2−2)以外のものとして、たとえば
【0258】
【化75】

【0259】
などが挙げられる。
【0260】
また、含フッ素アルキレン基を含むものとして、式(R2−3)、(R2−4):
【0261】
【化76】

【0262】
(式中、p6、p8は同じかまたは異なり、1〜10の整数;p7は1〜30の整数)などが挙げられる。
【0263】
具体的には、
【0264】
【化77】

【0265】
などが好ましく挙げられる。
【0266】
4としてこれら例示の直鎖または分枝状のアルキレン基からなる二価以上の有機基は、重合体に柔軟性や弾性を付与できる点で好ましい。さらにフッ素原子を導入する際、高含有率で導入でき、透明性、低屈折率の点で有利となるため好ましい。
【0267】
(2)芳香族環状構造を含む(n+1)価の有機基:
たとえば、式(R2−5):
【0268】
【化78】

【0269】
(式中、R21およびR22は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5の含フッ素アルキル基;Z21およびZ22は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5の含フッ素アルキル基、官能基、水素原子またはハロゲン原子;r1およびr2は同じかまたは異なり、1〜4の整数)で表わされる部位を含む二価の有機基、
または式(R2−6):
【0270】
【化79】

【0271】
(式中、R23、R24、R25およびR26は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5の含フッ素アルキル基;Z23は炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5の含フッ素アルキル基、官能基、水素原子またはハロゲン原子;r3は1〜4の整数)で表わされる部位を含む二価の有機基があげられる。
【0272】
そのほか、つぎの式(R2−7)〜(R2−11)で表わされる部位を含む二価の有機基もあげられる。
【0273】
式(R2−7):
【0274】
【化80】

【0275】
式(R2−8):
【0276】
【化81】

【0277】
式(R2−9)
【0278】
【化82】

【0279】
式(R2−10):
【0280】
【化83】

【0281】
式(R2−11):
【0282】
【化84】

【0283】
上記式中、R27、R28、R29およびR30は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5の含フッ素アルキル基;R31およびR32は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5の含フッ素アルキル基、水素原子;Z24、Z25およびZ26は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5の含フッ素アルキル基、官能基、水素原子またはハロゲン原子;r4およびr5は同じかまたは異なり、1〜4の整数;r6は1〜2の整数;r7およびr8は同じかまたは異なり、1〜3の整数であり、同じ符号であっても式が異なれば別異の基や整数をとりうる。
【0284】
式(R2−5)の具体例としては、
【0285】
【化85】

【0286】
【化86】

【0287】
(式中、r4、r5は同じかまたは異なり、1〜10の整数;Z21、Z22、r1、r2は前記式(R2−5)と同じ)などが好ましく挙げられる。
【0288】
(R2−6)の具体例としては、
【0289】
【化87】

【0290】
(式中、Z23、r3は前記式(R2−6)と同じ)などが好ましく挙げられる。
【0291】
式(R2−7)の具体例としては、
【0292】
【化88】

【0293】
(式中、Z24、Z25、r4およびr5は前記式(R2−7)と同じ)などが好ましく挙げられる。
【0294】
式(R2−8)の具体例としては、
【0295】
【化89】

【0296】
などが好ましく挙げられる。
【0297】
式(R2−9)の具体例としては、
【0298】
【化90】

【0299】
(式中、Z24、Z25、r4およびr5は前記式(R2−9)と同じ)などが好ましく挙げられる。
【0300】
式(R2−10)の具体例としては、
【0301】
【化91】

【0302】
【化92】

【0303】
(式中、Z24、Z25、r7およびr8は前記式(R2−10)と同じ)などが好ましく挙げられる。
【0304】
式(R2−11)の具体例としては、
【0305】
【化93】

【0306】
【化94】

【0307】
(式中、Z24、Z25、Z26、r6、r7およびr8は前記式(R2−11)と同じ)などが好ましく挙げられる。
【0308】
21、Z22、Z23、Z24、Z25およびZ26の具体例としては、たとえば水素原子、フッ素原子、メチル基などが例示できる。
【0309】
これらの芳香族環状構造を有する二価以上の有機基は、耐熱性と機械的特性に優れる点で好ましく、ガラス転移点を高く設定でき、その結果、耐熱性の高い光学材料が得られる点で好ましい。
【0310】
なかでもフッ素原子を有するものが、近赤外領域の光も含めて広い波長帯域で透明性が高い点で好ましい。また、フッ素原子の導入は、さらに屈折率の低減化において効果的に作用するため好ましい。
【0311】
(3)脂肪族環状(単環または多環)構造を有する(n+1)価の有機基:
具体的には、式(R2−12):
【0312】
【化95】

【0313】
(式中、R33およびR34は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5の含フッ素アルキル基;Z27およびZ28は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5の含フッ素アルキル基、官能基、水素原子またはハロゲン原子;s1およびs2は同じかまたは異なり、1〜4の整数)で表わされる部位を含む二価の有機基、または式(R2−13):
【0314】
【化96】

【0315】
(式中、R35、R36、R37およびR38は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5の含フッ素アルキル基;Z29は炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5の含フッ素アルキル基、官能基、水素原子またはハロゲン原子;s3は1〜4の整数)で表わされる部位を含む二価の有機基があげられる。
【0316】
そのほか、つぎの式(R2−14)〜(R2−18)で表わされる部位を含む二価の有機基もあげられる。
【0317】
式(R2−14):
【0318】
【化97】

【0319】
式(R2−15):
【0320】
【化98】

【0321】
式(R2−16):
【0322】
【化99】

【0323】
式(R2−17):
【0324】
【化100】

【0325】
式(R2−18):
【0326】
【化101】

【0327】
上記式中、R39、R40、R41およびR42は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5の含フッ素アルキル基;R43およびR44は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5の含フッ素アルキル基、水素原子;Z30、Z31およびZ32は同じかまたは異なり、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5の含フッ素アルキル基、官能基、水素原子またはハロゲン原子;s4およびs5は同じかまたは異なり、1〜4の整数;s6は1〜2の整数;s7およびs8は同じかまたは異なり、1〜3の整数であり、同じ符号であっても式が異なれば別異の基や整数をとりうる。
【0328】
式(R2−12)の具体例としては、
【0329】
【化102】

【0330】
【化103】

【0331】
(式中、s4、s5は同じかまたは異なり、1〜10の整数;Z27、Z28、s1、s2は前記式(R2−12)と同じ)
などが好ましく挙げられる。
【0332】
(R2−13)の具体例としては、
【0333】
【化104】

【0334】
(式中、Z29、s3は前記式(R2−13)と同じ)などが好ましく挙げられる。
【0335】
式(R2−14)の具体例としては、
【0336】
【化105】

【0337】
(式中、Z30、Z31、s4およびs5は前記式(R2−14)と同じ)などが好ましく挙げられる。
【0338】
式(R2−15)の具体例としては、
【0339】
【化106】

【0340】
などが好ましく挙げられる。
【0341】
式(R2−16)の具体例としては、
【0342】
【化107】

【0343】
(式中、Z30、Z31、s4およびs5は前記式(R2−16)と同じ)などが好ましく挙げられる。
【0344】
式(R2−17)の具体例としては、
【0345】
【化108】

【0346】
【化109】

【0347】
(式中、Z30、Z31、s7およびs8は前記式(R2−17)と同じ)などが好ましく挙げられる。
【0348】
式(R2−18)の具体例としては、
【0349】
【化110】

【0350】
【化111】

【0351】
(式中、Z30、Z31、Z32、s6、s7およびs8は前記式(R2−18)と同じ)などが好ましく挙げられる。
【0352】
27、Z28、Z29、Z30、Z31およびZ32の具体例としては、たとえば水素原子、フッ素原子、メチル基などが例示できる。
【0353】
これらの脂肪族環状構造を有する二価以上の有機基は、ガラス転移温度を高く設定でき、耐熱性、機械的特性に優れる点で好ましい。また、紫外光に対して透明性が高い点で好ましく、耐紫外線性にも優れる点でも好ましい。
【0354】
なかでもフッ素原子を有するものが、近赤外領域の光に対して透明性が高く、広い波長帯域にわたって透明性が高いため好ましい。また、フッ素原子の導入は、さらに屈折率の低減化において効果的に作用するため好ましい。
【0355】
(4)ウレタン結合を含む(n+1)価の有機基
具体的には、
【0356】
【化112】

【0357】
などの有機基が挙げられる。
【0358】
以上にR4を中心に説明したが、式(2)で示される多官能アクリレートの具体例としては次のものが例示できる。
【0359】
【化113】

【0360】
【化114】

【0361】
【化115】

【0362】
【化116】

【0363】
【化117】

【0364】
【化118】

【0365】
【化119】

【0366】
【化120】

【0367】
【化121】

【0368】
【化122】

【0369】
【化123】

【0370】
【化124】

【0371】
【化125】

【0372】
【化126】

【0373】
などの多官能アクリレート化合物が好ましく挙げられる。
【0374】
(D)成分はフッ素含有率25質量%以上の非晶性の含フッ素ポリマーである。
【0375】
ここで、非晶性とは前述のDSC分析において、2nd runで昇温速度10℃/分の条件で測定した際に実質的に融解に基づく吸熱ピークが観測されないか、もしくは融解熱量が1J/g以下である性質を示す。
【0376】
フッ素含有率が25質量%以上であることにより、得られる硬化物の近赤外領域での透明性の向上という特性を付与することができる。また、非晶性であることにより、含フッ素単量体(A−1)に対する溶解性が高く、均一な液状組成物が得られやすい。また、結晶成分による散乱がないため硬化物の近赤外領域での透明性の向上という特性を付与することができる。フッ素含有率は近赤外領域での透明性が良好であるとの観点からより好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、特に好ましくは50質量%以上である。
【0377】
含フッ素ポリマー(D)の数平均分子量は、他の成分への溶解性、相溶性の観点からは、上限は500,000、好ましくは100,000、特に好ましくは50,000である。下限は特には制限はないが、同様の観点から数量体であるオリゴマーであることが好ましく、具体的には300、好ましくは500である。
【0378】
つぎに具体的なフッ素含有率25質量%以上の非晶性の含フッ素ポリマーの好ましいものを例示するがこれらのみに限定されるものではない。
【0379】
(D−1)アクリル系単量体のみを重合してなる重合体であって、フッ素含有率が25質量%以上の非晶性の含フッ素アクリル系ポリマー
(D−2)含フッ素アリルエーテル系単量体を重合してなる重合体であって、フッ素含有率が25質量%以上の非晶性の含フッ素アリルエーテル系ポリマー
(D−3)主鎖中に環状構造を有するフッ素含有率が25質量%以上の非晶性の含フッ素環状ポリマー
(D−4)含フッ素オレフィンと炭化水素系ビニルエーテルからなる共重合体でフッ素含有率が25質量%以上の非晶性の含フッ素コポリマー
(D−5)含フッ素ポリスチレン系単量体を重合してなる重合体であって、フッ素含有率が25質量%以上の非晶性の含フッ素ポリスチレン系ポリマー
(D−6)ビニリデンフルオライド系共重合体であって、フッ素含有率が25質量%以上の非晶性のビニリデンフルオライド系コポリマー。
【0380】
これらのうちで含フッ素単量体(A−1)への溶解性、硬化物の相溶性の観点から好ましい構造は(D−1)および(D−2)であり、もっとも好ましい構造は(D−1)である。非晶性含フッ素ポリマー(D)としては、これらの2種以上のポリマーのブレンドであってもかまわない。
【0381】
つぎに(D)の構造である(D−1)〜(D−3)および(D−6)について説明する。
(D−1)アクリル系単量体のみを重合してなる重合体であって、フッ素含有率が25質量%以上の非晶性の含フッ素アクリル系ポリマー:
ポリマー(D−1)はアクリル系単量体のホモポリマーでも、構造の異なるアクリル系単量体との共重合体であってもかまわない。前述の(B)と同一で、具体例を含めてそのまま採用できる。
【0382】
また、ポリマー(D−1)のガラス転移温度は、85℃以上のものが硬化物の耐熱性向上の観点からより好ましい。より好ましくは90℃以上。さらに好ましくは95℃以上である。これらの構造をもつポリマーはポリマー骨格がアクリルであるため、本質的に含フッ素単量体成分(A−1)によく溶解し、均一な液状組成物となり、硬化物の相溶性も高いため、白濁化することなく、近赤外領域での透明性も高い。
【0383】
(D−2)フッ素アリルエーテル系単量体を重合してなる重合体であって、フッ素含有率が25質量%以上の非晶性の含フッ素アリルエーテル系ポリマー:
ポリマー(D−2)はWO95/33782、WO02/18457、WO02/73255各パンフレット等に開示されている。
【0384】
ポリマー(D−2)は高フッ素含有率にもかかわらず、非晶性を示し、かつ含フッ素単量体(A)に対する溶解性が非常に高い。また、たとえば炭素-炭素二重結合のような、含フッ素アクリル系単量体(A−1)と反応し得る硬化部位を容易に側鎖末端にもたせることが可能で、このような、含フッ素アクリル系単量体(A−1)と反応し得る硬化部位があれば、硬化物が全体として相互ネットワークを形成するため、耐溶剤性、低線膨張係数、耐熱性等、さらに優れた硬化物性能を発現する。
【0385】
(D−3)主鎖中に環状構造を有するフッ素含有率が25質量%以上の非晶性の含フッ素環状ポリマー:
ポリマー(D−3)はガラス転移温度が非常に高く、硬化物の耐熱性が高くなる点で好ましい。このようなポリマー(D−3)としては、好ましくはフッ素を有する脂肪族環状の構造単位をもつポリマーと非フッ素系の脂環式単量体構造単位をもつポリマーが例示できる。
【0386】
(D−3−1)フッ素を有する脂肪族環状の構造単位:
この構造単位を導入すると、近赤外領域での透明性をより高くでき、さらに高ガラス転移温度の非晶性の含フッ素環状ポリマー(D−3)が得られ、硬化物のさらなる高硬度化が期待できる点で好ましい。
【0387】
含フッ素脂肪族環状の構造単位(D−3−1)としては式(5):
【0388】
【化127】

【0389】
(式中、X7、X8、X11、X12、X13およびX14は同じかまたは異なり、HまたはF;X9およびX10は同じかまたは異なり、H、F、ClまたはCF3;Rf6は炭素数1〜10の含フッ素アルキレン基または炭素数2〜10のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基;n2は0〜3の整数;n1、n3、n4およびn5は同じかまたは異なり、0または1の整数)で示されるものが好ましい。
【0390】
たとえば、
【0391】
【化128】

【0392】
(式中、Rf6、X9およびX10は前記と同じ)で示される構造単位があげられる。
【0393】
具体的には、
【0394】
【化129】

【0395】
(式中、X7、X8、X11およびX12は前記と同じ)などがあげられる。
【0396】
そのほかの含フッ素脂肪族環状構造単位としては、たとえば
【0397】
【化130】

【0398】
などがあげられる。
【0399】
(D−3−2)非フッ素系の脂環式単量体構造単位:
また、非フッ素系の脂環式単量体構造単位(D−3−2)を含有した非晶性の含フッ素ポリマーは硬化物の高ガラス転移温度化やさらなる高硬度化が図られる。
【0400】
非フッ素系の脂環式単量体構造単位(D−3−2)の具体例としては、
【0401】
【化131】

【0402】
(mは0〜3の整数;A、B、CおよびDは同じかまたは異なり、H、F、Cl、COOH、CH2OHまたは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基など)で示されるノルボルネン誘導体、
【0403】
【化132】

【0404】
などの脂環式単量体や、これらに置換基を導入した誘導体などがあげられる。
【0405】
(D−6)ビニリデンフルオライド系共重合体であって、フッ素含有率が25質量%以上の非晶性のビニリデンフルオライド系コポリマー:
非晶性のビニリデンフルオライド系コポリマーは、ビニリデンフルオライドにこれと共重合可能な他のモノマーの1種または2種以上を共重合したものが好ましい。
【0406】
他モノマーの代表的な例としては、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ビニルフルオライド、ヘキサフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブテン、パーフルオロシクロブテン、パーフルオロ(メチルシクロプロピレン)、パーフルオロアレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル類(例えばパーフルオロメチルビニルエーテル、パーフルオロプロピルビニルエーテルなど)、パーフルオロビニル酢酸またはそのエステル、パーフルオロビニルエーテルスルホン酸、パーフルオロジエン類、エチレン、プロピレン、ビニル酢酸またはそのエステルなどがあげられる。他のモノマーの含有量は特に制限されないが、フッ素含有率が25質量%以上を示す範囲、通常10〜60質量%となるように共重合することが好ましい。
【0407】
非晶性のビニリデンフルオライド系コポリマーとしては特に、ビニリデンフルオライド/ヘキサフルオロプロピレン(85〜60/15〜40モル%比)コポリマー、ビニリデンフルオライド/ヘキサフルオロプロピレン/テトラフルオロエチレン(84〜20/15〜40/1〜40モル%比)コポリマーが、含フッ素単量体(A−1)への溶解性、硬化物の相溶性に優れる点から好ましい。
【0408】
ポリマー(D−6)は特に可視域の透明性に優れ、また、硬化物に耐衝撃性をあたえる点で好ましい。硬化物にゴム弾性が要求される場合、ポリマー(D−6)のガラス転移温度は通常室温より低いため、ポリマー(D−6)を用いることにより硬化物全体のガラス転移温度も室温以下にすることができ、好ましい。
【0409】
また、フッ素含有率25質量%以上の非晶性の含フッ素ポリマー(D)としては、硬化部位をもつものであってもよい。たとえば前述の炭素-炭素二重結合のような、含フッ素アクリル系単量体(A−1)と反応し得る硬化部位とか、エポキシやオキセタンのような架橋性環状エーテル構造があれば、硬化物が全体として相互ネットワークを形成するため、耐溶剤性、低線膨張係数、耐熱性等のさらに優れた硬化物性能を発現する。
【0410】
第2の発明において、含フッ素単量体(A−1)、多官能性含フッ素単量体(C)および非晶性含フッ素ポリマー(D)の含有割合は、均一な液状組成物の必要な粘度、硬化物の耐熱性などによって適宜選択すればよいが、(A−1)が5質量%以上、好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上で98質量%以下、好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下であり、(C)が1質量%以上、好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上で94質量%以下、好ましくは89質量%以下、さらに好ましくは74質量%以下であり、(D)が1質量%以上、好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上で94質量%以下、好ましくは89質量%以下、さらに好ましくは74質量%以下である。含フッ素単量体(A−1)の量が少なすぎると均一な液状の組成物を得ることが難しくなる。多官能性含フッ素単量体(C)が少ないと硬化物の耐熱性が低下し、多すぎると硬化物がもろくなる。非晶性含フッ素ポリマー(D)が少なすぎると均一な液状組成物の粘度が低くなり、重合硬化収縮が大きくなる。
【0411】
本発明の均一な液状組成物の好ましい粘度範囲は、10mPa・sから20000mPa・sの範囲であるが、作業性の観点から20〜10000mPa・sの範囲が、さらには50〜8000mPa・sの範囲がより好ましい。
【0412】
また、有機溶媒を実質的に含まないものが好ましいが、粘度を調整する目的などで硬化物の物性に悪影響を与えない範囲で溶剤などを添加してもよい。
【0413】
また、他の化合物を単なる粘度調整剤として別途加えてもよい。ただしその添加量は、本発明が目的としている効果を損なわない範囲である。
【0414】
たとえば塗布により光学材料を形成する場合は、作業性および膜厚を薄く均一にするためには、塗布用の組成物の粘度を50〜8000mPa・sとすることが望ましい。粘度を高くする場合は、含フッ素アクリル系ポリマー(B)、非晶性含フッ素ポリマー(D)、多官能性含フッ素単量体(C)の比率を上げればよい。
【0415】
また、本発明の組成物から得られる硬化物の屈折率を含フッ素単量体(A)、含フッ素アクリル系ポリマー(B)、(D)および/または多官能性含フッ素単量体(C)の種類や量を適宜選定することにより調整できる。そのほかに屈折率調整成分として、必要に応じて低分子量化合物を添加してもかまわない。これらの具体例としては、フタル酸ベンジル−n−ブチル(屈折率:1.575)、1−メトキシフェニル−1−フェニルエタン(屈折率:1.571)、安息香酸ベンジル(屈折率:1.568)、ブロモベンゼン(屈折率:1.557)、o−ジクロロベンゼン(屈折率:1.551)、m−ジクロロベンゼン(屈折率:1.543)、1,2’−ジブロモエタン(屈折率:1.538)、3−フェニル−1−プロパノール(屈折率:1.532)、ジフェニルフタル酸(C64(COOC652)、トリフェニルフォスフィン((C65)3P)、ジベンジルフォスフェート((C65CH2O)2PHO2)、4,4’−ジブロモベンジル、4,4’−ジブロモビフェニル、2,4’−ジブロモアセトフェノン、3’,4’−ジクロロアセトフェノン、3,4−ジクロロアニリン、2,4−ジブロモアニリン、2,6−ジブロモアニリン1,4−ジブロモベンゼンなどの化合物などがあげられる。
【0416】
本発明の組成物には用途や要求特性に応じて適宜公知の添加剤を使用してもよい。他の添加剤の代表例としては、たとえばレベリング剤、酸化防止剤などがあげられる。
【0417】
本発明の第1および第2の硬化性含フッ素樹脂組成物は、活性エネルギー線を照射する方法、ラジカル重合を開始させる化合物(ラジカル重合開始剤など)を添加し、たとえば加熱する方法などの公知の方法により硬化させ、硬化物とすることができる。
【0418】
まず、活性エネルギー線を照射するタイプの組成物について説明する。
【0419】
活性エネルギー線としては、350nm以下の波長領域の電磁波、つまり紫外光線、X線、γ線などのほか電子線があげられ、好ましくは紫外光線が用いられる。活性エネルギー線の照射のみでも硬化反応は生起するが、効率よく単量体を硬化させるためには、通常、活性エネルギー線硬化開始剤が用いられる。
【0420】
活性エネルギー線硬化開始剤は、活性エネルギー線に曝されることによって初めてラジカルやカチオンなどを発生し、単量体の重合性炭素−炭素二重結合の重合(硬化反応)を開始させる触媒として働くものであり、通常、紫外光線でラジカルやカチオンを発生させるもの、特にラジカルを発生するものが汎用される。
【0421】
本発明における活性エネルギー線硬化開始剤は、該単量体の炭素−炭素二重結合の種類(ラジカル反応性か、カチオン反応性か)、使用する活性エネルギー線の種類(波長領域など)、照射強度などによって適宜選択されるが、一般に紫外線領域の活性エネルギー線を用いてラジカル反応性の炭素−炭素二重結合を有する該単量体を硬化させる開始剤としては、たとえばつぎのものが例示できる。
【0422】
アセトフェノン系
アセトフェノン、クロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、α−アミノアセトフェノンなど
【0423】
ベンゾイン系
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタールなど
【0424】
ベンゾフェノン系
ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシ−プロピルベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、ミヒラーケトンなど
【0425】
チオキサンソン類
チオキサンソン、クロロチオキサンソン、メチルチオキサンソン、ジエチルチオキサンソン、ジメチルチオキサンソンなど
【0426】
その他
ベンジル、α−アシルオキシムエステル、アシルホスフィンオキサイド、グリオキシエステル、3−ケトクマリン、2−エチルアンスラキノン、カンファーキノン、アンスラキノンなど
【0427】
また、必要に応じてアミン類、スルホン類、スルフィン類などの公知の光開始助剤を添加してもよい。
【0428】
また、カチオン反応性の炭素−炭素二重結合を有する該単量体を硬化させる開始剤としては、つぎのものが例示できる。
【0429】
オニウム塩
ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩など
【0430】
スルホン化合物
β−ケトエステル、β−スルホニルスルホンとこれらのα−ジアゾ化合物など
【0431】
スルホン酸エステル類
アルキルスルホン酸エステル、ハロアルキルスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステル、イミノスルホネートなど
【0432】
その他
スルホンイミド化合物類、ジアゾメタン化合物類など
【0433】
活性エネルギー線硬化開始剤の量は単量体の全量に対して通常、下限は0.1質量%、好ましくは0.2質量%、より好ましくは0.3質量%、特に好ましくは0.5質量%であり、上限は15質量%、好ましくは10質量%、より好ましくは8質量%、特に好ましくは7質量%である。
【0434】
つぎに、たとえば加熱によりラジカル重合を開始させるタイプの組成物について説明する。
【0435】
ラジカル重合を開始させる方法としては、たとえば公知のラジカル重合開始剤を使用してラジカルを発生させる方法が好ましい。
【0436】
ラジカル重合開始剤としては、パーオキサイド類、アゾ系開始剤などが利用できる。
【0437】
本発明の第3の発明は、第1または第2の硬化性含フッ素樹脂組成物を硬化して得られる硬化物に関する。
【0438】
硬化は、第1または第2の硬化性含フッ素樹脂組成物に必要に応じて重合開始剤や各種添加剤を加えた後、たとえば成形または基材に塗布し、活性エネルギー線を照射したりまたは加熱して硬化させることにより製造することができる。
【0439】
活性エネルギー線の照射線量は使用する活性エネルギー線硬化剤の種類、硬化膜の膜厚などによって適宜選定すればよい。加熱温度も使用するラジカル重合開始剤の種類などによって適宜選定すればよい。
【0440】
本発明の硬化物は、耐熱性および透明性、さらには低屈折率性に優れている。さらには溶剤を使用せずに調製した硬化性含フッ素樹脂組成物を用いて得られる硬化物は、残留溶媒の影響がなく、またマクロボイドの発生が大きく低減化でき、光学材料として使用する場合、光損失を少なくすることができる。
【0441】
以下、本発明の硬化物の物性および特性を説明する。
【0442】
分子量は、多官能性含フッ素単量体(C)を用いた場合、含フッ素アクリル系ポリマー(B)、(D)と含フッ素単量体(A)および多官能性含フッ素単量体(C)とが複雑に反応(架橋、グラフト、IPN構造)しているため、特定できない。
【0443】
ガラス転移温度Tgは、その組成により幅広い範囲で選択できる。Tgとしては85℃以上にすることが好ましい。さらに、各単量体や重合体を選択することにより、Tgを90℃以上、さらには95℃以上、またさらに100℃以上、特に120℃以上にすることも可能である。Tgを高くするには、多官能性含フッ素単量体(C)成分を増やしたり、含フッ素ポリマー(B)、(D)成分に環構造を導入すればよい。
【0444】
熱分解温度Tdは180℃以上であり優れた耐熱性を有している。さらに、各単量体や重合体を選択することにより、Tdを200℃以上、さらには230℃以上にすることも可能である。
【0445】
本発明の硬化物は、各成分の割合や選定にもよるが、エーテル結合を含む含フッ素単量体(A)を使用し、含フッ素ポリマー(B)、(D)が非晶性である場合は、全体として非晶性となり得るし、特に多官能性含フッ素単量体(C)を配合する場合は、全体として非晶性となる。硬化物が非晶性の場合は、透明性に優れ、光導波路、光ファイバーなどの光伝送媒体における伝送損失を低減できる点で有利である。
【0446】
本発明の硬化物は、その屈折率を1.44以下にすることが可能である。屈折率をさらに下げる、たとえば1.42以下にすることは全体のフッ素含率を増加させることで実現できる。こういった低屈折率性は光導波路、光ファイバー用のクラッド材、反射防止材として有利である。
【0447】
また本発明の硬化物は可視領域の光に対して透明性が高いものであり、特に650nm(さらには850nm)の波長の光に対して透明性が高い。この観点から、本発明の硬化物を光学材料として用いる場合、650nm(または850nm)波長光の光透過率が90%以上、さらには92%以上、特に94%以上のものを提供できる。
【0448】
またさらに、本発明の硬化物は近赤外領域の光に対して透明性が高いものであり、特に1310nm(さらには1550nm)の波長の光に対して透明性が高い。この観点から、本発明の硬化物を光学材料として用いる場合は、1310nm(または1550nm)波長光の光透過率が90%以上、さらには92%以上、特に94%以上のものを提供できる。
【0449】
本発明の第4は、硬化性含フッ素樹脂組成物の硬化物からなる光学材料に関する。また、コア部とクラッド部からなる光導波路であって、コア部およびクラッド部の少なくとも一方が、第1または第2の硬化性含フッ素樹脂組成物の硬化物からなることを特徴とする光導波路にも関する。
【0450】
まず、光学材料に関して説明する。
【0451】
本発明の硬化物は透明で耐熱性が高く、またフッ素含有率が高い。そのため低屈折率の光学材料になる。たとえば光伝送用媒体として有用である。特にコア材が石英、もしくは光学ガラスであるプラスチッククラッド光学ファイバーのクラッド材料、コア材がプラスチックである全プラスチック光学ファイバーのクラッド材料、反射防止コーテイング材料、レンズ材料、光導波路材料、プリズム材料、光学窓材料、光記憶ディスク材料、非線形型光素子、ホログラム材料、フォトリソグラティブ材料などといった光学材料、また、封止部材用材料、さらにはそれらの材料を硬化して得られる硬化物を含む光デバイスなどに使用可能である。
【0452】
封止部材用材料としては、たとえば発光ダイオード(LED)、EL素子、非線形光学素子、フォトリフラクティブ素子、フォトニクス結晶などの発光素子や受光素子や波長変換素子、光分岐挿入素子、光クロスコネクト素子、モジュレーターなどの光機能素子のパッケージ(封入)、表面実装などに用いられる材料などがあげられる。
【0453】
本発明の材料で封止された光デバイスは、封止部分が含フッ素ポリマーに由来する優れた耐湿性に加え、ポリマー成分を有するため重合硬化に基づく硬化収縮が少なく、極めて優れた耐湿信頼性を有している。また、使用される波長帯域での優れた透明性と耐熱性を兼ね備えた材料でもある。
【0454】
これらの封止された光素子は種々の場所に使用されるが、非限定的な例示としては、ハイマウントストップランプやメーターパネル、携帯電話のバックライト、各種電気製品のリモートコントロール装置の光源などといった発光素子;カメラのオートフォーカス、CD/DVD用光ピックアップ用受光素子などがあげられる。
【0455】
本発明の材料を用いた封止部材用材料には、必要に応じて光酸化剤、さらに硬化促進剤、染料、変性剤、劣化防止剤、離型剤などの添加剤を配合し、ドライブレンド法、さらに溶融ブレンド法などを組み合わせて常法により混合・混練したのち粉砕し、必要に応じて打錠することにより製造することができる。
【0456】
封止部材用材料による封止は常法により行なうことができ、トランスファー成形法などの公知の成形法により封止すべき箇所に充填し成形することにより実施できる。
【0457】
つぎに光導波路に関して説明する。光導波路用部材は、光導波路型素子を構成する部材であり、基板上に形成される。ここで、光導波路型素子とは、光機能素子間を光導波路で接続したもので、光導波路部はコア部とクラッド部から構成される。一方、光機能素子とは光通信信号に対し、増幅、波長変換、光合分波、波長選択等の作用を示す素子で、形態も様々ではあるが、光合分波や光増幅のように導波路型の機能素子がある。その場合は、機能素子もコア部とクラッド部より形成されている。本発明の光学材料はいずれのコア部、クラッド部にも用いることが可能で、コア部のみ、またはクラッド部のみに本発明の光学材料を用いてもよい。また、種々の機能性化合物、たとえば非線形光学材料や蛍光発光性の機能性有機色素、フォトリフラクティブ材料などを本発明の光学材料に含有させて、導波路型の機能素子のコア材として用いることも可能である。さらに、コア部とクラッド部との両者が硬化性含フッ素樹脂組成物を硬化させたものであることがより好ましい。
【0458】
本発明によれば、硬化性含フッ素樹脂組成物の硬化物を含む光導波路型素子をも提供できる。
【0459】
光導波路型素子がコア部とクラッド部とを有する場合、コア部の屈折率はクラッド部のそれより高くなければならないが、コア部とクラッド部との屈折率の差は、0.003以上であることが好ましく、0.01以上であることがさらに好ましい。本発明の材料は幅広く屈折率の制御が可能なため、材料の選択範囲は広い。
【0460】
光導波路素子において、コア部の幅は1〜200μmが好ましく、さらに好ましくは5〜50μmである。またコア部の高さは、5〜50μmが好ましい。コア部の幅および高さの精度は、平均値の5%以下が好ましく、さらに好ましくは1%以下である。
【0461】
図1に、典型的な光導波路型素子の構造を概略断面図で例示する。1は基板、2はコア部、4および5はクラッド部である。かかる光導波路型素子は、光機能素子間を接続するために使用され、一方の光機能素子の端末から送出された光は、光導波路型素子のコア部2内を、例えばコア部2とクラッド部4、5との界面で全反射を繰り返しながら、他方の光機能素子端末へと伝播される。光導波路型素子の形式は、平面型、ストリップ型、リッジ型、埋込み型等の適宜の形式をとることができる。
【0462】
光導波路型素子の基板材料は、特に限定されるものではなく、金属、半導体材料、セラミック、ガラス、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の適宜の材料を使用することができる。
【0463】
本発明の材料を用いる光導波路型素子の製造工程の一例を図2に示す。光導波路型素子は、フォトリソグラフィー技術を利用して製造される。まず図2(a)に示すように、予め基板1上にクラッド部4を形成し、コア部を形成する本発明の光学材料の膜3を形成する。これらのクラッド部4、コア部を形成する光導波路用材料の膜の形成に際しては、それらの均一な液状組成物を回転塗布、流延塗布等の塗布手段で塗布する方法、金型を用いる方法がある。前記の均一な液状組成物は、好ましくは、例えば孔径0.2μm程度のフィルターで濾過して調製される。
【0464】
前記各液状組成物の好ましい粘度は、一般に10〜20,000mPa・s、特に好ましくは20〜10,000mPa・sであり、さらに好ましくは50〜8,000mPa・sである。ここで粘度の調整は前述のとおり、ポリマー成分(B)、(D)で調整を行なう。
【0465】
ついで、図2(b)に示すように、硬化性含フッ素樹脂組成物に対して、所定パターン形状のマスク6を介して活性エネルギー線7を照射する。その後、必要に応じて予備焼成を行う。光硬化すると硬化性含フッ素樹脂組成物が分子間で重合する。その結果、樹脂硬度が高くなり、機械的強度が向上したり、耐熱性が向上する。多官能性含フッ素単量体を用いた場合は硬化前には溶解していた溶剤に対して不溶となるだけでなく、他の数多くの種類の溶剤に対して不溶となる。すなわち、フォトレジスト材料として機能する。ついで、未硬化の硬化性含フッ素樹脂組成物を適当な溶剤で溶解、留去することで、図2(c)に示すように、所定パターン形状のコア部2を形成する。光導波路型素子は、以上のようにして形成されたコア部2のみを有する形態でそのまま使用することもできるが、コア部2の形成後、図2(d)に示すように、さらにクラッド部5を形成することが好ましい。このクラッド部5は、その材料溶液を回転塗布、流延塗布、ロール塗布等により塗布することにより形成することが好ましく、特に回転塗布が好ましい。またクラッド部5の均一な液状組成物も、好ましくは、例えば孔径0.2μm程度のフィルターで濾過して調製される。
【0466】
硬化方法は適宜公知の方法を採用すればよい。また前記のように光硬化する場合はプロセスが簡単になり、有利である。また、導波路の形成方法としては、上記の方法以外にも、最近、硬化性樹脂組成物を用いる新しい成形方法が提案されている。例えば、微細金型を用いて光導波路を作成するスタンパ成形方法、エンボス加工、シリコーンゴムの鋳型を介するナノインプリント方法である。これらのいずれの成形においても、本発明の樹脂組成物は適用できる。
【0467】
本発明の硬化物は、光学用途に特に好適であるが、そのほか硬化して得られる有機ポリマーの特性を活用して、光学用途以外の用途、たとえば接着剤、塗料、各種成形材料、歯科用材料などを製造する材料としても有用である。
【0468】
したがって、本発明の硬化性含フッ素組成物には、光学用途用の各種添加剤のほか、顔料、充填剤、酸化チタンなどの光触媒などを配合することができる。
【0469】
なお、本明細書における各種の物性および特性は、以下の方法で測定したものである。
(1)重合体組成(1H−NMR、19F−NMR、IR)
NMR測定装置:BRUKER社製
1H−NMR測定条件:300MHz(テトラメチルシラン=0ppm)
19F−NMR測定条件:282MHz(トリクロロフルオロメタン=0ppm)
1H−NMRのデータより、CH2=CF−C(=O)−(αFアクリロイル)化率(5.2〜5.8ppm(2H))が、19F−NMRのデータより、αFアクリロイル基(−116〜−118ppm(1F))と鎖(−83ppm(10F)と−129ppm(1F))の比率が定法により算出できる。
IR測定装置:PERKIN ELMER社製フーリエ変換赤外分光光度計1760X
測定条件:室温にて測定
【0470】
(2)フッ素含有率(F)
酸素フラスコ燃焼法により試料10mgを燃焼し、分解ガスを脱イオン水20mlに吸収させ、吸収液中のフッ素イオン濃度をフッ素選択電極法(フッ素イオンメータ。オリオン社製の901型)で測定することによって求めた値を採用する(質量%)。
【0471】
(3)ガラス転移温度(Tg)
DSC(示差走査熱量計)を用いて、1st runを昇温速度10℃/分で200℃まで上げ、200℃で1分間維持したのち降温速度10℃/分で25℃まで冷却し、ついで昇温速度10℃/分で得られる2nd runの吸熱曲線の中間点を採用する。
【0472】
(4)熱分解温度(Td)
熱天秤(TGA)を用い、室温下に昇温速度10℃/分で室温から加熱し、重量が0.1質量%減少したときの温度を採用する。
【0473】
(5)非晶性
非晶性とはTgの測定に用いたDSC分析において、2nd runで昇温速度10℃/分の条件で測定した際に実質的に融解に基づく吸熱ピークが観測されないか、もしくは融解熱量が1J/g以下である性質を示す。
【0474】
(6)数平均分子量
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、東ソー(株)製のGPC HLC−8020を用い、Shodex社製のカラム(GPC KF-801を1本、GPC KF-802を1本、GPC KF-806Mを2本直列に接続)を使用し、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速1ml/分で流して測定したデータより算出する。
【0475】
本発明の硬化性含フッ素樹脂組成物の硬化物の分子量は、式(2)の多官能性含フッ素単量体(C)を含有する場合や、硬化性部位を有する非晶性含フッ素ポリマー(D)を有する場合は、架橋構造をとるため特定できない。
【0476】
(7)粘度
東京計器(株)製のB型粘度計にて25℃における組成物の粘度の値を採用する。
【0477】
(8)屈折率(n)
ナトリウムD線を光源として25℃においてアッベ屈折率計を用いて測定した値を採用する。
【0478】
(9)光透過率(可視光領域)
自記分光光度計((株)日立製作所製のU−3310(商品名))を用いて波長300〜800nmにおける約100μm厚のサンプル(硬化フィルム)の分光透過率曲線を測定した値を採用する。
【0479】
(10)光透過率(近赤外領域)
光透過率は、微弱吸収スペクトル測定装置(日本分光(株)製のMAC−1(商品名))を用いて測定した値を採用する。
【0480】
(11)硬化収縮率(S)
硬化性含フッ素樹脂組成物を縦50.0mm、横10.0mmの型に流し込み、1.0mm(厚さ)×50mm×10mmのサンプルを作製する。このサンプルに高圧水銀灯を用い、室温にて1500mJ/cm2の強度で紫外線を照射して光硬化させて、硬化後の寸法を測定して体積を算出し、硬化収縮率を求める。
硬化収縮率(S)(%)={(硬化前の体積−硬化後の体積)/硬化前の体積}×100
【実施例】
【0481】
つぎに本発明を実施例にしたがって具体的に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0482】
合成参考例(OH基を有する含フッ素アリルエーテルのコポリマーの合成)
撹拌装置および温度計を備えた100mlのガラス製四ツ口フラスコに、パーフルオロ−(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビストリフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノール)
【0483】
【化133】

【0484】
を15.3gと
【0485】
【化134】

【0486】
(含フッ素アリルエーテルAEHF)を4.8g入れ、
さらに
【0487】
【化135】

【0488】
の8.0質量%パーフルオロヘキサン溶液を21.2g入れ、充分に窒素置換を行なったのち、窒素気流下20℃で24時間撹拌を行なったところ、高粘度の固体が生成した。
【0489】
得られた固体をジエチルエーテルに溶解させたものをパーフルオロヘキサンに注ぎ、分離、真空乾燥させ、無色透明な重合体13.1gを得た。
【0490】
この重合体を19F−NMR、1H−NMR分析、IR分析により分析したところ、上記2種類の含フッ素アリルエーテルの構造単位からなり側鎖末端にヒドロキシル基を有する含フッ素重合体であった。また、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒に用いるGPC分析により測定した重量平均分子量(Mw)は21000であり、数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は1.3であった。
【0491】
合成例1(α−フルオロアクリロイル基を有する含フッ素ポリマー(I)の合成)
環流冷却器、温度計、撹拌装置、滴下漏斗を備えた200ml四ツ口フラスコに、メチルエチルケトン(MEK)30ml、合成参考例で得たヒドロキシル基含有含フッ素アリルエーテルの共重合体7.0gと、ピリジン2.6gを仕込み5℃以下に氷冷した。
【0492】
窒素気流下、撹拌しながら、さらにα−フルオロアクリル酸フルオライド(CH2=CFCOF)の2.6gをMEK10mlに溶解したものを約30分間かけて滴下した。
【0493】
滴下終了後、室温まで温度を上げさらに4.0時間撹拌を継続した。
【0494】
反応後のエーテル溶液を分液漏斗に入れ、水洗、2%塩酸水洗浄、5%NaCl水洗浄、さらに水洗をくり返したのち、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ついでエーテル溶液を濾過により分離し、硬化性含フッ素プレポリマーを得た。
【0495】
この硬化性含フッ素プレポリマーを19F−NMR分析により調べたところ、
【0496】
【数1】

【0497】
の共重合体であった。
【0498】
NaCl板に塗布し、室温にてキャスト膜としたものをIR分析したところ、炭素−炭素二重結合の吸収が1661cm-1に、C=O基の吸収が1770cm-1に観測された。フッ素含有率が57%の非晶性ポリマーであった。得られたポリマーをポリマー1という。
【0499】
合成例2(バルク重合)
三つ口フラスコに2−パーフルオロプロポキシ−2,3,3,3−テトラフルオロプロピルα−フルオロアクリレート(6FOn1−F):
【0500】
【化136】

【0501】
を20g、開始剤としてAIBNを20mg入れ、窒素置換した。反応温度を60℃にして、10時間攪拌しながら塊状重合した。得られた透明な液体をアセトン50mlに溶解させ、ヘキサンに滴下して、再沈殿した。得られた沈殿物をシャーレ上に移して、60℃で10時間真空乾燥した。得られた重合体は18gであり、ガラス転移温度Tgは80℃であった。また、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒に用いるGPC分析により測定した数平均分子量は120,000、重量平均分子量は270,000であった。このポリマーをP6FOn1−Fという。
【0502】
同様にしてヘキサフルオロネオペンチルα−フルオロアクリレート(6FNPF):
【0503】
【化137】

【0504】
および
ヘキサフルオロイソプロピルα−フルオロアクリレート(HFIP−F):
【0505】
【化138】

【0506】
をそれぞれ単独重合し、合計3種類の本発明における含フッ素アクリルポリマーを得た。各重合体のガラス転移温度Tgおよびフッ素含有率、分子量を表1に示す。いずれのポリマーも非晶性であった。6FNPFおよびHFIP−FのホモポリマーをそれぞれP6FNPFおよびPHFIP−Fという。
【0507】
比較合成例1
単量体としてメチルメタクリレート(MMA)を用いた以外は合成例2と同様にして比較用の重合体を得た。この重合体のガラス転移温度およびフッ素含有率を表1に示す。このポリマーをPMMAという。
【0508】
合成例3(共重合)
三つ口フラスコに6FOn1−Fを20g、ベンジルα−フルオロアクリレート(Bz−F):
【0509】
【化139】

【0510】
を20g、開始剤としてAIBNを20mg入れ、窒素置換した。反応温度を60℃にして、10時間攪拌しながら塊状重合した。得られた透明な液体をアセトン100mlに溶解させ、ヘキサンに滴下して、再沈殿した。得られた沈殿物をシャーレ上に移して、60℃で10時間真空乾燥した。得られた共重合体は36gであった。この共重合体のガラス転移温度およびフッ素含有率、分子量を表1に示す。この共重合体をコポリマー1:
【0511】
【化140】

【0512】
という。
【0513】
合成例4
三つ口フラスコにHFIP−Fを20g、開始剤としてAIBNを40mg入れ、溶媒としてベンゼンを60g入れ、窒素気流下で、反応温度を60℃にして、10時間攪拌しながら溶液重合した。得られた透明な液体をヘキサンに滴下して、再沈殿した。得られた沈殿物をシャーレ上に移して、60℃で10時間真空乾燥した。得られた重合体は15gであった。この重合体のガラス転移温度およびフッ素含有率、数平均分子量を表1に示す。この重合体をPHFIP−F−LMWという。
【0514】
【表1】

【0515】
実施例1
含フッ素アクリル系単量体として6FOn1−Fを50重量部、含フッ素アクリルポリマーとしてP6FNPFを50重量部、そしてこれに活性エネルギー線硬化開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンを0.1重量%加えて本発明の液状の硬化性含フッ素樹脂組成物を調製した。
【0516】
硬化前の組成物の25℃における粘度を測定し、液状組成物の外観を目視で評価した。結果を表2に示す。
○:透明でかつ均一であり、550nmの光の透過率が80%以上である。
△:一部に白濁(ゲル状物)が認められる。
×:不透明、白濁。
【0517】
ついでアルミ箔上にアプリケーターを用いて膜厚が約100μmとなるように塗布し、被膜に高圧水銀灯を用い、1500mJ/cm2Uの強度で紫外線を照射したのち、アルミ箔を希塩酸で溶かし、サンプルフィルムとした。
【0518】
サンプルフィルム(硬化後)の屈折率(n)、ガラス転移温度(Tg)、熱分解温度(Td)、フッ素含有率(F)、光透過率可視(633nm)(T(633))、光透過率近赤外(1310nm)(T(1310))を調べた。
また、外観を目視で評価した。
○:透明でかつ均一である。
△:一部に白濁(にごり)が認められる。
×:不透明、白濁。
【0519】
さらに、硬化収縮の測定(S)を行なった。以上の結果を表2に示す。
【0520】
実施例2
含フッ素アクリル系単量体として6FNPFを50重量部、含フッ素アクリルポリマーとして合成例3で合成したコポリマー1を50重量部用いた以外は実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化性含フッ素樹脂組成物を得、各種物性を実施例1と同様にして測定した。結果を表2に示す。
【0521】
実施例3
含フッ素アクリル系単量体として6FOn1−Fを40重量部、非晶性含フッ素ポリマーとしてポリマー1を50重量部、多官能性含フッ素単量体として1,4−ビス(ヘキサフルオロイソプロピルα−フルオロアクリル)ベンゼン(FB−DFA):
【0522】
【化141】

【0523】
を10重量部用いた以外は実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化性含フッ素樹脂組成物を得、各種物性を実施例1と同様にして測定した。結果を表2に示す。
【0524】
実施例4
含フッ素アクリル系単量体として6FOn1−Fを40重量部、非晶性含フッ素ポリマーとしてPHFIP−Fを50重量部、多官能性含フッ素単量体としてFB−DFAを10重量部用いた以外は実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化性含フッ素樹脂組成物を得、各種物性を実施例1と同様にして測定した。結果を表2に示す。
【0525】
実施例5
含フッ素アクリル系単量体として6FOn1−Fを40重量部、非晶性含フッ素ポリマーとしてP6FNPFを50重量部、多官能性含フッ素単量体としてビスフェノールAF−エチレングリコールメタクリレート(BisAFEOMA):
【0526】
【化142】

【0527】
を10重量部用いた以外は実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化性含フッ素樹脂組成物を得、各種物性を実施例1と同様にして測定した。結果を表2に示す。
【0528】
比較例1
硬化性含フッ素樹脂組成物として含フッ素単量体として1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルα−フルオロアクリレート(8FF):
【0529】
【化143】

【0530】
を50重量部、アクリルポリマーとしてポリメチルメタクリレート(PMMA)を50重量部用いた以外は実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化性含フッ素樹脂組成物を得、各種物性を実施例1と同様にして測定した。結果を表2に示す。
【0531】
比較例2
含フッ素アクリル系単量体として2−(パーフルオロオクチル)エチルメタクリレート(17FMA):
【0532】
【化144】

【0533】
を50重量部、含フッ素アクリルポリマーとしてP6FOn1−Fを50重量部用いた以外は実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を得、各種物性を実施例1と同様にして測定した。結果を表2に示す。
【0534】
比較例3
含フッ素アクリル系単量体として1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタクリレート(8FM):
【0535】
【化145】

【0536】
を40重量部、非晶性ポリマーとしてPMMAを50重量部、多官能性単量体としてトリメチロールプロパントリメタクリレートを10重量部用いた以外は実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化性含フッ素樹脂組成物を得、各種物性を実施例1と同様にして測定した。結果を表2に示す。
【0537】
比較例4
含フッ素アクリル系単量体として17FMAを40重量部、非晶性含フッ素ポリマーとしてP6FOn1−Fを50重量部、多官能性単量体としてトリエチレングリコールジメタクリレート(3G):
【0538】
【化146】

【0539】
を10重量部用いた以外は実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を得、各種物性を実施例1と同様にして測定した。結果を表2に示す。
【0540】
実施例6
含フッ素アクリル系単量体として6FOn1−Fを45重量部、非晶性含フッ素ポリマーとしてビニリデンフルオライド/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(ダイキン工業(株)製のダイエルG−801)を50重量部、多官能性含フッ素単量体として実施例5で使用したBisAFEOMAを5重量部用いた以外は実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を得、各種物性を実施例1と同様にして測定した。結果を表2に示す。
【0541】
また、上島製作所(株)製U−F衝撃試験機を用い、ASTM D256にしたがいノッチ付アイゾット衝撃強度を測定したところ、衝撃破壊を示さず、高い耐衝撃性を有していた。
【0542】
【表2】

【0543】
実施例7
以上の実施例の結果から、実施例3の硬化性含フッ素樹脂組成物(硬化後の屈折率:1.367)をクラッドに、実施例4の硬化性含フッ素樹脂組成物(硬化後の屈折率:1.377)をコアに用いればコア/クラッド型の光導波路を形成できることがわかった。
【0544】
そこで実施例3で得られた硬化性含フッ素樹脂組成物を0.5μmのフィルターでろ過後、シリコンウェハ上に回転数200rpmで10秒間、ついで回転数500rpmで30秒間スピンコートさせた。高圧水銀灯を用い、1500mJ/cm2Uの強度で紫外線を照射してシリコン基板上に約15μmの厚さのクラッド層を得た。つぎに実施例4の硬化性含フッ素樹脂組成物を0.5μmのフィルターでろ過後、先のクラッド層の上に回転数500rpmで10秒間、ついで回転数1000rpmで30秒間スピンコートさせた。
【0545】
つぎに、ホトマスクを介して光照射を行ない、コア部用の膜を硬化させた。その後、コア部用膜の未硬化の部分を溶剤で洗い流し、コア部として長さ50mm、幅8μm、高さ8μmの直線矩形パターンに加工した。加工後、クラッド部を図2にしたがって説明した工程でコア部上に塗布して光導波路を作製した。
【0546】
つぎに、得られたこの光導波路の伝送損失をカットバック法により測定したところ、波長633nmで0.80dB/cm以下、波長850nmで0.75dB/cm、波長1310nmで0.9dB/cmとなり、可視光から近赤外光までの通信波長帯域の光を良好に伝達できた。
【0547】
また、併せて85℃、湿度85%の恒温槽内で168時間保持するという耐久テスト後の伝送損失(dB/cm)の変化を表3に示す。
【0548】
比較例5
比較例4の硬化性含フッ素樹脂組成物(硬化後の屈折率:1.382)をコア用の材料として用いる以外は実施例7と同様にして光導波路を得た。得られた光導波路の伝送損失(dB/cm)および耐久テスト後の伝送損失(dB/cm)の変化を表3に示す。
【0549】
【表3】

【0550】
実施例8
含フッ素アクリル系単量体として6FOn1−Fを80重量部、非晶性含フッ素ポリマーとしてP6FOn1−Fを8重量部、多官能性含フッ素単量体としてFB−DFAを12重量部用いた以外は実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化性含フッ素樹脂組成物を得、各種物性を実施例1と同様にして測定した。結果を表4に示す。
【0551】
実施例9
含フッ素アクリル系単量体として6FOn1−Fを80重量部、非晶性含フッ素ポリマーとしてPHFIP−Fを8重量部、多官能性含フッ素単量体としてFB−DFAを12重量部用いた以外は実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化性含フッ素樹脂組成物を得、各種物性を実施例1と同様にして測定した。結果を表4に示す。
【0552】
実施例10
含フッ素アクリル系単量体として6FOn1−Fを75重量部とパーフルオロフェニルα−フルオロアクリレート(PFP−F):
【0553】
【化147】

【0554】
を5重量部、非晶性含フッ素ポリマーとしてPHFIP−F−LMWを8重量部、多官能性含フッ素単量体としてFB−DFAを12重量部用いた以外は実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化性含フッ素樹脂組成物を得、各種物性を実施例1と同様にして測定した。結果を表4に示す。
【0555】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0556】
【図1】光導波路型素子の構造の概略断面図である。
【図2】光導波路型素子の製造工程のブロック図である。
【符号の説明】
【0557】
1 基板
2 コア部
3 膜
4 クラッド部
5 クラッド部
6 マスク
7 活性エネルギー線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
つぎの(A−1)、(C)および(D)からなる均一な液状組成物であって、(A−1)を5〜98質量%、(C)を1〜94質量%および(D)を1〜94質量%含む硬化性含フッ素樹脂組成物。
(A−1)式(1a):
【化1】

(式中、X1はH、CH3、F、ClおよびCF3よりなる群から選ばれる少なくとも1種;R1は式(1−1):
【化2】

(式中、ZはFまたはCF3;m1、m2、m3、m4は0または1〜10の整数である。ただしm1+m2+m3+m4は1〜10の整数)で表わされる部位を含む含フッ素アルキル基)で表わされる含フッ素単量体、
(C)式(2):
【化3】

(式中、X2およびX3は同じかまたは異なり、H、CH3、F、ClおよびCF3よりなる群から選ばれる少なくとも1種;nは1〜6の整数;R4は炭素数1〜50の水素原子の一部または全てがフッ素原子に置換されていても良い(n+1)価の有機基であって、当該R4中にヘテロ原子を有していても良い芳香族炭化水素構造の部位またはヘテロ原子を有していても良い脂肪族環状炭化水素構造の部位から選ばれる少なくとも1種の部位を含む有機基)で表される多官能性含フッ素単量体、
(D)フッ素含有率25質量%以上の非晶性の含フッ素ポリマー。
【請求項2】
前記式(2)において、nが1〜3の整数でR4が炭素数3〜50の(n+1)価の有機基である請求項1記載の硬化性含フッ素樹脂組成物。
【請求項3】
前記式(1a)の含フッ素単量体において、R1が式(1−3):
【化4】

(式中、m5は1〜5の整数)である請求項2記載の硬化性含フッ素樹脂組成物。
【請求項4】
非晶性の含フッ素ポリマー(D)のフッ素含有率が50質量%以上である請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性含フッ素樹脂組成物。
【請求項5】
非晶性の含フッ素ポリマー(D)が、本質的にアクリル系単量体のみを重合してなる含フッ素アクリル系ポリマー(D−1)である請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性含フッ素樹脂組成物。
【請求項6】
非晶性の含フッ素ポリマー(D−1)が、ガラス転移点が85℃以上の含フッ素アクリル系ポリマーである請求項5記載の硬化性含フッ素樹脂組成物。
【請求項7】
前記式(2)で表される多官能性含フッ素単量体において、R4中の芳香族炭化水素構造の部位に、水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい(n+1)価のベンゼン環構造を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の硬化性含フッ素樹脂組成物。
【請求項8】
前記式(2)で表される多官能性含フッ素単量体において、R4中の脂肪族環状炭化水素構造の部位に、水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい(n+1)価のシクロヘキサン環構造を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の硬化性含フッ素樹脂組成物。
【請求項9】
前記式(2)で表される多官能性含フッ素単量体において、R4中の脂肪族環状炭化水素構造の部位に、水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい(n+1)価のノルボルナン環構造および/またはアダマンタン環構造を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の硬化性含フッ素樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の硬化性含フッ素樹脂組成物を硬化してなる硬化物であって、硬化後のガラス転移温度が85℃以上である硬化物。
【請求項11】
硬化後のガラス転移温度が100℃以上である請求項10記載の硬化物。
【請求項12】
請求項10または11記載の硬化物からなる光学材料。
【請求項13】
コア部とクラッド部からなる光導波路であって、コア部およびクラッド部の少なくとも一方が、請求項10または11記載の硬化物からなることを特徴とする光導波路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−2132(P2006−2132A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−353180(P2004−353180)
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【分割の表示】特願2004−292819(P2004−292819)の分割
【原出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】