説明

硬化性樹脂組成物および硬化物

【課題】硬度、耐溶剤性、耐熱性に優れた硬化物を形成することができる硬化性樹脂組成物を提供すること、また、硬度、耐溶剤性、耐熱性に優れた硬化物を提供すること。
【解決手段】本発明の硬化性樹脂組成物は、少なくともエポキシ基含有ビニル単量体a1を単量体成分として含有し、かつ、下記式(I)で表されるフルオロアルキル基、もしくはフルオロアリール基含有ビニル単量体を単量体成分として含有しない重合体Aと、少なくとも下記式(I)で表されるフルオロアルキル基、もしくはフルオロアリール基含有ビニル単量体を単量体成分として含有してなる重合体Bとを含むことを特徴とする。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物および硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
塗膜の形成等に、硬化性樹脂を含む樹脂組成物が広く利用されている。このような樹脂組成物としては、樹脂組成物を用いて形成される硬化物の硬度、基材への密着性等の観点から、エポキシ樹脂を含むものが用いられている。
一方、硬化物の硬度、耐溶剤性、耐熱性、基材への密着性を向上させる目的で、種々の組成の樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このような樹脂組成物を用いた場合であっても、硬化物についての硬度、耐溶剤性、耐熱性を十分に満足のいくものとすることができなかった。
【0003】
【特許文献1】特開2007−41107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、硬度、耐溶剤性、耐熱性に優れた硬化物を形成することができる硬化性樹脂組成物を提供すること、また、硬度、耐溶剤性、耐熱性に優れた硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的は下記の本発明により達成される。
本発明の硬化性樹脂組成物は、少なくともエポキシ基含有ビニル単量体a1を単量体成分として含有し、かつ、下記式(I)で表されるフルオロアルキル基、もしくはフルオロアリール基含有ビニル単量体を単量体成分として含有しない重合体Aと、
少なくとも下記式(I)で表されるフルオロアルキル基、もしくはフルオロアリール基含有ビニル単量体を単量体成分として含有してなる重合体Bとを含むことを特徴とする。
【化1】

これにより、硬度、耐溶剤性、耐熱性に優れた硬化物を形成することができる硬化性樹脂組成物を提供することができる。
【0006】
本発明の硬化性樹脂組成物では、前記重合体Aは、単量体成分として、前記エポキシ基含有ビニル単量体a1に加え、イソシアネート基またはそれが保護基で保護されたブロックイソシアネート基を備えたビニル単量体a2を含有してなる共重合体であることが好ましい。
これにより、硬化物の硬度、耐溶剤性を特に優れたものとすることができる。
【0007】
本発明の硬化性樹脂組成物では、前記重合体Aは、100重量部の前記エポキシ基含有ビニル単量体a1に対し、前記ビニル単量体a2を2〜20重量部含むものであることが好ましい。
これにより、硬化物の膜強度を十分に優れたものとしつつ、硬化物の硬度、耐溶剤性を特に優れたものとすることができる。
【0008】
本発明の硬化性樹脂組成物では、前記重合体Aは、単量体成分として、前記エポキシ基含有ビニル単量体a1に加え、水酸基を備えたビニル単量体a3を含有してなる共重合体であることが好ましい。
これにより、硬化物の基材に対する密着性を特に優れたものとすることができる。
本発明の硬化性樹脂組成物では、前記重合体Aは、100重量部の前記エポキシ基含有ビニル単量体a1に対し、前記ビニル単量体a3を2〜20重量部含むものであることが好ましい。
これにより、硬化物の膜強度を十分に優れたものとしつつ、硬化物の基材に対する密着性を特に優れたものとすることができる。
【0009】
本発明の硬化性樹脂組成物では、前記重合体Aの含有率と前記重合体Bの含有率との比率が、重量比で、25:75〜75:25であることが好ましい。
これにより、硬化物の膜強度、硬度、耐熱性、および、耐溶剤性を特に優れたものとすることができる。
本発明の硬化物は、本発明の硬化性樹脂組成物を硬化することにより得られたことを特徴とする。
これにより、硬度、耐溶剤性、耐熱性に優れた硬化物を提供することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、硬度、耐溶剤性、耐熱性に優れた硬化物を形成することができる硬化性樹脂組成物を提供すること、また、硬度、耐溶剤性、耐熱性に優れた硬化物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
まず、本発明の硬化性樹脂組成物の好適な実施形態について説明する。
≪硬化性樹脂組成物≫
本発明の硬化性樹脂組成物は、少なくともエポキシ基含有ビニル単量体a1を単量体成分として含有してなる重合体Aと、フルオロアルキル基、もしくはフルオロアリール基含有ビニル単量体b1を単量体成分として含有してなる重合体Bとを含むものである。
【0012】
<重合体A>
重合体Aは、少なくともエポキシ基含有ビニル単量体a1を単量体成分として含有してなるものである。重合体Aは、実質的に単一の化合物からなるものであってもよいし、複数種の化合物の混合物であってもよい。ただし、重合体Aが複数種の化合物の混合物である場合、各化合物が、少なくともエポキシ基含有ビニル単量体a1を単量体成分として含有するものである。
【0013】
[エポキシ基含有ビニル単量体a1]
重合体Aは、少なくともエポキシ基含有ビニル単量体a1を単量体成分として含有してなるものである。このようなエポキシ基含有ビニル単量体a1を単量体成分として含有することにより、重合体A中にエポキシ基を容易かつ確実に導入することができる。また、エポキシ基含有ビニル単量体a1を単量体成分として含有することにより、硬化性樹脂組成物を硬化させて硬化物を得る際に、比較的温和な条件で硬化物を得ることができるとともに、得られる硬化物の硬度等を優れたものとする上で有用である。また、重合体Aが、後述するようなビニル単量体a2、ビニル単量体a3等を含むものである場合、重合体の合成を好適に行うことができ、所望の特性を有する重合体Aを容易かつ確実に得ることができる。
【0014】
エポキシ基含有ビニル単量体a1としては、例えば、下記式(II)で表される構造を有するものを用いることができる。エポキシ基含有ビニル単量体a1がこのような構造を有するものであると、硬化性樹脂組成物を硬化させて硬化物を得る際に、比較的温和な条件で硬化物を得ることができるとともに、得られる硬化物の硬度等を優れたものとする上で有用である。また、エポキシ基含有ビニル単量体a1がこのような構造を有するものであると、重合体Aと後述する重合体Bとの相溶性を特に優れたものとすることができ、硬化性樹脂組成物およびそれを硬化させて得られる硬化物において、白化が生じてしまうのを確実に防止することができ、硬化物の透明性を特に高いものとすることができる。
【0015】
【化2】

【0016】
式(II)において、Rによって示される炭素数1〜7のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル基等のアルキル基が挙げられるが、水素原子または炭素数1〜2のアルキル基が好ましく、水素原子またはメチル基がより好ましい。これにより、硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の硬度等を優れたものとすることができるとともに、重合体Aと後述する重合体Bとの相溶性を特に優れたものとすることができ、硬化性樹脂組成物およびそれを硬化させて得られる硬化物において、白化が生じてしまうのを確実に防止することができ、硬化物の透明性を特に高いものとすることができる。
【0017】
式(II)中、Gによって示される2価のヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基の代表的な例としては、直鎖または分枝状のアルキレン基、より具体的には、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、テトラメチレン、エチルエチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、オキシメチレン、オキシエチレン、オキシプロピレン等が挙げられる。
エポキシ基含有ビニル単量体a1の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸エチルグリシジル、グリシジルビニルベンジルエーテル(セイミケミカル株式会社製、商品名VBGE)、下記式(4)〜式(34)で表される脂環式エポキシ基含有不飽和化合物等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、エポキシ基含有ビニル単量体a1としては、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。これにより、硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の硬度等を優れたものとすることができるとともに、重合体Aと後述する重合体Bとの相溶性を特に優れたものとすることができ、硬化性樹脂組成物およびそれを硬化させて得られる硬化物において、白化が生じてしまうのを確実に防止することができ、硬化物の透明性を特に高いものとすることができる。
【0018】
【化3】

【0019】
【化4】

【0020】
【化5】

【0021】
【化6】

【0022】
【化7】

なお、式(4)〜(34)において、Rは、水素原子またはメチル基を示し、Rは、炭素数1〜8の2価の炭化水素基を示し、Rは、炭素数1〜20の2価の炭化水素基を示す。また、R、RおよびRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。また、wは、0〜10を示す。
【0023】
重合体A中におけるエポキシ基含有ビニル単量体a1の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、50〜100wt%であるのが好ましく、70〜94wt%であるのがより好ましい。重合体A中におけるエポキシ基含有ビニル単量体a1の含有率が前記範囲内の値であると、硬化性樹脂組成物を硬化させて硬化物を得る際に、比較的温和な条件で硬化物を得ることができるとともに、得られる硬化物の硬度等を特に優れたものとすることができる。なお、重合体Aが、複数種の化合物の混合物である場合、エポキシ基含有ビニル単量体a1の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。また、重合体Aが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率でエポキシ基含有ビニル単量体a1を含有しているのが好ましい。
【0024】
[ビニル単量体a2]
重合体Aは、少なくともエポキシ基含有ビニル単量体a1を単量体成分として含有してなるものであればよいが、エポキシ基含有ビニル単量体a1に加え、さらに、イソシアネート基またはそれが保護基で保護されたブロックイソシアネート基を備えたビニル単量体a2を単量体成分として含有してなるもの(共重合体)であるのが好ましい。これにより、硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の硬度、耐溶剤性を特に優れたものとすることができる。
【0025】
重合性ビニル単量体a2としては、例えば、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製、商品名「カレンズMOI」)、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等の、(メタ)アクリロイル基が炭素数2〜6のアルキレン基を介してイソシアネート基と結合した(メタ)アクリロイルイソシアネート等が挙げられる。
上記(メタ)アクリロイルイソシアネートのイソシアネート基は、ブロックイソシアネート基であることが好ましい。ここで言うブロックイソシアネート基とは、末端をブロック剤でマスキングしたイソシアネート基を指す。ブロックイソシアネート基を持つ単量体としては、例えば、メタクリル酸2−(0−[1’メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル等が挙げられ、また、昭和電工株式会社製「カレンズMOI−BM」の商品名で市販されている。これら重合性ビニル単量体は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
重合体Aにおけるビニル単量体a2の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、100重量部のエポキシ基含有ビニル単量体a1に対し、2〜20重量部であるのが好ましく、3〜15重量部であるのがより好ましい。重合体Aにおけるビニル単量体a2の含有率が前記範囲内の値であると、硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の膜強度を十分に優れたものとしつつ、硬化物の硬度、耐溶剤性を特に優れたものとすることができる。これに対し、重合体Aにおけるビニル単量体a2の含有率が前記下限値未満であると、上記のようなビニル単量体a2を含有することによる効果が十分に発揮されない可能性がある。また、重合体Aにおけるビニル単量体a2の含有率が前記上限値を超えると、重合体Aと後述する重合体Bとの相溶性が低下し、硬化性樹脂組成物およびそれを硬化させて得られる硬化物において、白化が生じてしまう可能性があり、硬化物の透明性を十分に高いものとするのが困難になる。なお、重合体Aが、複数種の化合物の混合物である場合、ビニル単量体a2の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。また、重合体Aが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率でビニル単量体a2を含有しているのが好ましい。
【0027】
[ビニル単量体a3]
重合体Aは、少なくともエポキシ基含有ビニル単量体a1を単量体成分として含有してなるものであればよいが、エポキシ基含有ビニル単量体a1に加え、さらに、水酸基を備えたビニル単量体a3を単量体成分として含有してなるもの(共重合体)であるのが好ましい。これにより、硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の基材に対する密着性を特に優れたものとすることができる。また、重合体Aと後述する重合体Bとの相溶性を特に優れたものとすることができ、硬化性樹脂組成物およびそれを硬化させて得られる硬化物において、白化が生じてしまうのをより確実に防止することができ、硬化物の透明性を特に高いものとすることができる。
【0028】
ビニル単量体a3としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の、多価アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのモノエステル化物、上記多価アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのモノエステル化物にε−カプロラクトンを開環重合した化合物(ダイセル化学工業株式会社製プラクセルFAシリーズ、プラクセルFMシリーズ等)やエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドを開環重合した化合物等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
重合体Aにおけるビニル単量体a3の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、100重量部のエポキシ基含有ビニル単量体a1に対し、2〜20重量部であるのが好ましく、3〜15重量部であるのがより好ましい。重合体Aにおけるビニル単量体a3の含有率が前記範囲内の値であると、硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の膜強度を十分に優れたものとしつつ、硬化物の基材に対する密着性を特に優れたものとすることができる。また、重合体Aと後述する重合体Bとの相溶性を特に優れたものとすることができ、硬化性樹脂組成物およびそれを硬化させて得られる硬化物において、白化が生じてしまうのをより確実に防止することができ、硬化物の透明性を特に高いものとすることができる。これに対し、重合体Aにおけるビニル単量体a3の含有率が前記下限値未満であると、上記のようなビニル単量体a3を含有することによる効果が十分に発揮されない可能性がある。また、重合体Aにおけるビニル単量体a3の含有率が前記上限値を超えると、硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の耐溶剤性(耐薬品性)や硬度を十分に優れたものとするのが困難になる。なお、重合体Aが、複数種の化合物の混合物である場合、ビニル単量体a3の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。また、重合体Aが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率でビニル単量体a3を含有しているのが好ましい。
【0030】
[その他の重合性ビニル単量体a4]
重合体Aは、上述したようなエポキシ基含有ビニル単量体a1、ビニル単量体a2、および、ビニル単量体a3以外の重合性ビニル単量体a4を単量体成分として含有していてもよい。このような重合性ビニル単量体a4としては、エポキシ基含有ビニル単量体a1と共重合可能なビニル単量体を用いることができ、具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜12のアルキル、アラルキル(メタ)アクリレート;スチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族化合物等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。ただし、重合体Aは、単量体成分として、後述するようなフルオロアルキル基、もしくはフルオロアリール基含有ビニル単量体b1を含有するものではない。
【0031】
重合体Aにおける重合性ビニル単量体a4の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、100重量部のエポキシ基含有ビニル単量体a1に対し、15重量部以下であるのが好ましく、7重量部以下であるのがより好ましい。なお、重合体Aが、複数種の化合物の混合物である場合、重合性ビニル単量体a4の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。また、重合体Aが、複数種の化合物の混合物である場合、各化合物について、重合性ビニル単量体a4の含有率が上記のような条件を満足するのが好ましい。
【0032】
上記のように、重合体Aは、少なくともエポキシ基含有ビニル単量体a1を単量体成分として含有し、かつ、後述するフルオロアルキル基、もしくはフルオロアリール基含有ビニル単量体b1を単量体成分として含有しないものであればよいが、エポキシ基含有ビニル単量体a1に加え、ビニル単量体a2およびビニル単量体a3を含有するものであるのが好ましい。これにより、上述するようなビニル単量体a2を含むことによる効果と、上述するようなビニル単量体a3を含むことによる効果とを、両立することができる。
硬化性樹脂組成物中における重合体Aの含有率は、特に限定されないが、4〜30wt%であるのが好ましく、4.5〜25wt%であるのが好ましい。なお、重合体Aが複数種の化合物の混合物である場合、重合体Aの含有率としては、これらの化合物の含有率の総和を採用する。
【0033】
<重合体B>
本発明の硬化性樹脂組成物は、上述したような重合体Aに加え、少なくとも下記式(I)で表されるフルオロアルキル基、もしくはフルオロアリール基含有ビニル単量体b1を単量体成分として含有してなる重合体Bを含むものである。
【0034】
【化8】

【0035】
このように、硬化性樹脂組成物が、重合体Aとともに重合体Bを含むものであることにより、硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の硬度、耐溶剤性、耐熱性(耐熱変色性)を、いずれも、十分に優れたものとすることができる。このような優れた効果は、(エポキシ基含有ビニル単量体a1を含有する)重合体Aと(フルオロアルキル基、もしくはフルオロアリール基含有ビニル単量体b1を含有する)重合体Bとを含むことにより得られるものであって、重合体A、重合体Bのうち一方のみでは得られるものではなく、また、エポキシ基含有ビニル単量体a1とフルオロアルキル基、もしくはフルオロアリール基含有ビニル単量体b1とを含む共重合体としただけでも、得られない。すなわち、硬化性樹脂組成物が、重合体Aと重合体Bとを含むものではなく、単に、エポキシ基含有ビニル単量体a1とフルオロアルキル基、もしくはフルオロアリール基含有ビニル単量体b1との共重合体で構成されたものである場合には、同量のフルオロアルキル基、もしくはフルオロアリール基含有ビニル単量体b1を含有していても、十分な耐溶剤性が得られない。
重合体Bは、実質的に単一の化合物からなるものであってもよいし、複数種の化合物の混合物であってもよい。ただし、重合体Bが複数種の化合物の混合物である場合、各化合物が、少なくともフルオロアルキル基、もしくはフルオロアリール基含有ビニル単量体b1を単量体成分として含有するものである。
【0036】
[フルオロアルキル基、もしくはフルオロアリール基含有ビニル単量体b1]
重合体Bは、少なくとも式(I)で表されるフルオロアルキル基、もしくはフルオロアリール基含有ビニル単量体b1を単量体成分として含有してなるものである。このようなフルオロアルキル基、もしくはフルオロアリール基含有ビニル単量体b1を単量体成分として含有することにより、重合体B中にフルオロアルキル基、もしくはフルオロアリール基を容易かつ確実に導入することができる。また、フルオロアルキル基、もしくはフルオロアリール基含有ビニル単量体b1を単量体成分として含有することにより、硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の耐溶剤性を特に優れたものとすることができる。また、重合体Bが、後述するようなビニル単量体b2等を含むものである場合、重合体の合成を好適に行うことができ、所望の特性を有する重合体Bを容易かつ確実に得ることができる。
【0037】
式(I)において、Rによって示される炭素数1〜7のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル基等のアルキル基が挙げられるが、水素原子または炭素数1〜2のアルキル基が好ましく、水素原子またはメチル基がより好ましい。これにより、硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の硬度、耐溶剤性、耐熱性を特に優れたものとすることができるとともに、重合体Aと重合体Bとの相溶性を特に優れたものとすることができ、硬化性樹脂組成物およびそれを硬化させて得られる硬化物において、白化が生じてしまうのを確実に防止することができ、硬化物の透明性を特に高いものとすることができる。
【0038】
式(I)中、Dによって示される2価の炭化水素基(ヘテロ原子を含んでいてもよい炭化水素基)の代表的な例として、直鎖または分枝状のアルキレン基、より具体的には、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、テトラメチレン、エチルエチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、オキシメチレン、オキシエチレン、オキシプロピレン等が挙げられる。これらのうちでも、炭素数1〜3の直鎖アルキレン基(例えば、メチレン、エチレン、プロピレン基)が特に好ましい。
【0039】
式(I)で表される単量体の具体例としては、例えば、CF(CFCHCH=CH、CF(CFCH=CH、CF(CFCHCH=CH、CF(CFCH=CH、CF(CFCH=CH、CF(CFCHCH=CH、CF(CFCH=CH、(CFCF(CFCHCH=CH、(CFCF(CFCH=CH、(CFCF(CFCHCH=CH、(CFCF(CFCH=CH、(CFCF(CFCHCH=CH、(CFCF(CFCH=CH、FCH=CH、CF(CFCHCHOCHCH=CH、CF(CFCHCHCHOCHCH=CH、CF(CFCHCHOCHCH=CH、CF(CFCHCHCHOCHCH=CH、CF(CFCHCHOCHCH=CH、CF(CFCHCHCHOCHCH=CH、H(CFCHOCHCH=CH、H(CFCHOCHCH=CH、(CFCF(CFCHCHOCOCH=CH、(CFCF(CFCHCHOCOC(CH)=CH、(CFCF(CFCHCHOCOCH=CH、(CFCF(CFCHCHOCOC(CH)=CH、(CFCF(CFCHCHOCOCH=CH、(CFCF(CFCHCHOCOC(CH)=CH、CF(CFCHCHOCOCH=CH、CF(CFCHCHOCOC(CH)=CH、CF(CFCHCHOCOCH=CH、CF(CFCHCHOCOC(CH)=CH、CF(CFCHCHOCOCH=CH、CF(CFCHCHOCOC(CH)=CH、H(CFCHCHOCOCH=CH、H(CFCHCHOCOC(CH)=CH、F(CFCHCHOCOCH=CH、F(CFCHCHOCOC(CH)=CH、H(CFCHOCOC(CH)=CH、H(CFCHOCOCH=CH等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
重合体B中におけるフルオロアルキル基、もしくはフルオロアリール基含有ビニル単量体b1の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、10〜60wt%であるのが好ましく、15〜50wt%であるのがより好ましい。重合体B中におけるフルオロアルキル基、もしくはフルオロアリール基含有ビニル単量体b1の含有率が前記範囲内の値であると、硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の膜強度を十分に優れたものとしつつ、硬化物の耐溶剤性を特に優れたものとすることができる。また、重合体Bの、重合体Aや重合体Bに対する相溶性を特に優れたものとすることができ、硬化性樹脂組成物およびそれを硬化させて得られる硬化物において、白化が生じてしまうのをより確実に防止することができ、硬化物の透明性を十分に高いものとすることができる。これに対し、重合体Bにおけるフルオロアルキル基、もしくはフルオロアリール基含有ビニル単量体b1の含有率が前記下限値未満であると、上記のようなフルオロアルキル基、もしくはフルオロアリール基含有ビニル単量体b1を含有することによる効果が十分に発揮されない可能性がある。また、重合体Bにおけるフルオロアルキル基、もしくはフルオロアリール基含有ビニル単量体b1の含有率が前記上限値を超えると、硬化性樹脂組成物およびそれを硬化させて得られる硬化物において、白化が生じやすくなり、硬化物の透明性を十分に高いものとするのが困難になる。なお、重合体Bが、複数種の化合物の混合物である場合、フルオロアルキル基、もしくはフルオロアリール基含有ビニル単量体b1の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。また、重合体Bが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率でフルオロアルキル基、もしくはフルオロアリール基含有ビニル単量体b1を含有しているのが好ましい。
【0041】
[その他の重合性ビニル単量体b2]
重合体Bは、上述したようなフルオロアルキル基、もしくはフルオロアリール基含有ビニル単量体b1以外の重合性ビニル単量体b2を単量体成分として含有していてもよい。このような重合性ビニル単量体b2としては、フルオロアルキル基、もしくはフルオロアリール基含有ビニル単量体b1と共重合可能なビニル単量体を用いることができ、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸エチルグリシジル、グリシジルビニルベンジルエーテル(セイミケミカル株式会社製、商品名VBGE)、上記式(4)〜式(34)で表される脂環式エポキシ基含有不飽和化合物等のような上記式(II)で表されるエポキシ基含有ビニル単量体;2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製、商品名「カレンズMOI」)、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等の、(メタ)アクリロイル基が炭素数2〜6のアルキレン基を介してイソシアネート基と結合した(メタ)アクリロイルイソシアネート、メタクリル酸2−(0−[1’メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル(昭和電工株式会社製、商品名「カレンズMOI−BM」)等の、イソシアネートまたはそれが保護基で保護されたブロックイソシアネート基を備えた重合性ビニル単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の、多価アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのモノエステル化物、上記多価アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのモノエステル化物にε−カプロラクトンを開環重合した化合物(ダイセル化学工業株式会社製プラクセルFAシリーズ、プラクセルFMシリーズ等)やエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドを開環重合した化合物等の水酸基を備えた重合性ビニル単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜12のアルキル、アラルキル(メタ)アクリレート;スチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシブチルフェニルジメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有ビニル単量体等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、重合性ビニル単量体b2として、エポキシ基含有ビニル単量体を含有することにより、重合体Aと重合体Bとの相溶性を特に優れたものとし、硬化物の透明性を非常に優れたものとすることができる。ただし、重合体Bは、単量体成分として、後述するようなアルコキシシリル基含有ビニル単量体を含まないものであるのが好ましい。
【0042】
重合体B中における重合性ビニル単量体b2の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、40〜90wt%であるのが好ましく、50〜85wt%であるのがより好ましい。なお、重合体Bが、複数種の化合物の混合物である場合、重合性ビニル単量体b2の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。また、重合体Bが、複数種の化合物の混合物である場合、各化合物について、重合性ビニル単量体b2の含有率が上記のような条件を満足するのが好ましい。
【0043】
硬化性樹脂組成物中における重合体Bの含有率は、特に限定されないが、4〜30wt%であるのが好ましく、4.5〜25wt%であるのが好ましい。なお、重合体Bが複数種の化合物の混合物である場合、重合体Bの含有率としては、これらの化合物の含有率の総和を採用する。
また、硬化性樹脂組成物中における重合体Aの含有率と重合体Bの含有率との比率は、重量比で、25:75〜75:25であるのが好ましく、45:55〜55:45であるのがより好ましい。このような条件を満足することにより、硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の膜強度、硬度、および、耐溶剤性を特に優れたものとすることができる。
【0044】
<重合体C>
本発明の硬化性樹脂組成物は、上述したような重合体Aと重合体Bとを含むものであるが、さらに、下記式(III)で表されるアルコキシシリル基含有ビニル単量体c1を単量体成分として含有してなる重合体Cを含むものであってもよい。
【0045】
【化9】

【0046】
重合体Cは、実質的に単一の化合物からなるものであってもよいし、複数種の化合物の混合物であってもよい。ただし、重合体Cが複数種の化合物の混合物である場合、各化合物が、少なくともアルコキシシリル基含有ビニル単量体c1を単量体成分として含有するものである。
【0047】
[アルコキシシリル基含有ビニル単量体c1]
重合体Cは、少なくとも式(III)で表されるアルコキシシリル基含有ビニル単量体c1を単量体成分として含有してなるものである。このようなアルコキシシリル基含有ビニル単量体c1を単量体成分として含有することにより、重合体C中にアルコキシシリル基を容易かつ確実に導入することができる。また、アルコキシシリル基含有ビニル単量体c1を単量体成分として含有することにより、硬化性樹脂組成物を硬化させて硬化物を得る際に、重合体Aの硬化を補うことができ、比較的温和な条件で硬化物を得ることができるとともに、得られる硬化物の基材への密着性を特に優れたものとすることができる。また、重合体Cが、後述するようなビニル単量体c2等を含むものである場合、重合体の合成を好適に行うことができ、所望の特性を有する重合体Cを容易かつ確実に得ることができる。
【0048】
式(III)において、Rによって示される炭素数1〜7のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル基等のアルキル基が挙げられるが、水素原子または炭素数1〜2のアルキル基が好ましく、水素原子またはメチル基がより好ましい。これにより、硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の硬度、耐溶剤性、耐熱性、基材への密着性を特に優れたものとすることができるとともに、重合体A、重合体Bとの相溶性を特に優れたものとすることができ、硬化性樹脂組成物およびそれを硬化させて得られる硬化物において、白化が生じてしまうのを確実に防止することができ、硬化物の透明性を特に高いものとすることができる。
【0049】
式(III)中、Eによって示される2価の炭化水素基の代表的な例として、直鎖または分枝状のアルキレン基、より具体的には、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、テトラメチレン、エチルエチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン等が挙げられる。これらのうちでも、炭素数1〜3の直鎖アルキレン基(例えば、メチレン、エチレン、プロピレン基)が特に好ましい。
【0050】
式(III)中、R、RおよびRによって示される炭素数1〜6のアルキル基としては、直鎖または分枝状のアルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、ペンチル、ヘキシル基等が挙げられる。RおよびRによって示される炭素数1〜6のアルコキシル基としては、直鎖または分枝状のアルコキシル基、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、s−ブトキシ、ペントキシ、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0051】
式(III)で表される単量体の具体例としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシブチルフェニルジメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有重合性不飽和化合物等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
重合体C中におけるアルコキシシリル基含有ビニル単量体c1の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、70〜100wt%であるのが好ましく、80〜100wt%であるのがより好ましい。重合体C中におけるアルコキシシリル基含有ビニル単量体c1の含有率が前記範囲内の値であると、硬化性樹脂組成物を硬化させて硬化物を得る際に、重合体Aの硬化を補うことができ、比較的温和な条件で硬化物を得ることができるとともに、得られる硬化物の硬度、耐溶剤性、耐熱性、基材への密着性を、いずれも、特に優れたものとすることができる。なお、重合体Cが、複数種の化合物の混合物である場合、アルコキシシリル基含有ビニル単量体c1の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。また、重合体Cが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率でアルコキシシリル基含有ビニル単量体c1を含有しているのが好ましい。
【0053】
[その他の重合性ビニル単量体c2]
重合体Cは、少なくともアルコキシシリル基含有ビニル単量体c1を単量体成分として含有してなるものであればよいが、アルコキシシリル基含有ビニル単量体c1に加え、さらに、アルコキシシリル基含有ビニル単量体c1以外の重合性ビニル単量体c2を単量体成分として含有していてもよい。このような重合性ビニル単量体c2としては、アルコキシシリル基含有ビニル単量体c1と共重合可能なビニル単量体を用いることができ、具体的には、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の、多価アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのモノエステル化物、上記多価アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのモノエステル化物にε−カプロラクトンを開環重合した化合物(ダイセル化学工業株式会社製プラクセルFAシリーズ、プラクセルFMシリーズ等)やエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドを開環重合した化合物等の水酸基を備えた重合性ビニル単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜12のアルキル、アラルキル(メタ)アクリレート;スチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族化合物等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。ただし、重合体Cは、単量体成分として、前述したようなエポキシ基含有ビニル単量体a1、フルオロアルキル基、もしくはフルオロアリール基含有ビニル単量体b1を含有するものではない。
【0054】
重合体Cにおける重合性ビニル単量体c2の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、30wt%以下であるのが好ましく、20wt%以下であるのがより好ましい。なお、重合体Cが、複数種の化合物の混合物である場合、重合性ビニル単量体c2の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。また、重合体Cが、複数種の化合物の混合物である場合、各化合物について、重合性ビニル単量体c2の含有率が上記のような条件を満足するのが好ましい。
【0055】
上記のように、重合体Cは、少なくともアルコキシシリル基含有ビニル単量体c1を単量体成分として含有してなるものであればよく、アルコキシシリル基含有ビニル単量体c1以外の単量体成分を含有していてもよいが、アルコキシシリル基含有ビニル単量体c1の単独重合体であるのが好ましい。すなわち、重合体Cは、単量体成分として、アルコキシシリル基含有ビニル単量体c1以外の成分を含まないものであるのが好ましい。これにより、硬化物の基材への密着性、および、耐熱性を特に優れたものとすることができる。
【0056】
硬化性樹脂組成物中における重合体Cの含有率は、特に限定されないが、4〜30wt%であるのが好ましく、4.5〜25wt%であるのが好ましい。なお、重合体Cが複数種の化合物の混合物である場合、重合体Cの含有率としては、これらの化合物の含有率の総和を採用する。
また、硬化性樹脂組成物中における重合体Aの含有率と重合体Cの含有率との比率は、重量比で、25:75〜75:25であるのが好ましく、45:55〜55:45であるのがより好ましい。このような条件を満足することにより、硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の膜強度、硬度、耐溶剤性、耐熱性、および、基材への密着性を特に優れたものとすることができる。
【0057】
上記のような重合体(重合体A、重合体B、重合体C)の重量平均分子量は、いずれも、1000〜50000であるのが好ましく、1200〜10000であるのがより好ましく、1500〜5000であるのがさらに好ましい。また、上記のような重合体(重合体A、重合体B、重合体C)の分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、いずれも、1〜3程度である。
【0058】
<その他の成分>
本発明の硬化性樹脂組成物は、上述したような成分(重合体A、重合体B、重合体C)以外の成分を含むものであってもよい。このような成分としては、重合体A、重合体Bおよび重合体Cのいずれとも異なる重合体や、熱酸発生剤、光酸発生剤、架橋剤、酸化防止剤、溶解抑止剤、増感剤、紫外線吸収剤、光安定剤、接着性改良剤、溶媒、金属粉末、セラミックス粉末等が挙げられる。
【0059】
[熱酸発生剤]
本発明で使用することができる熱酸発生剤の好ましい例としては、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、セレニウム塩、オキソニウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
具体的には、商品名として、例えば、サンエイドSI−45、同左SI−47、同左SI−60、同左SI−60L、同左SI−80、同左SI−80L、同左SI−100、同左SI−100L、同左SI−145、同左SI−150、同左SI−160、同左SI−110L、同左SI−180L(以上、三新化学工業社製品、商品名)、CI−2921、CI−2920、CI−2946、CI−3128、CI−2624、CI−2639、CI−2064(以上、日本曹達(株)社製品、商品名)、CP−66、CP−77(旭電化工業社製品、商品名)、FC−520(3M社製品、商品名)等が挙げられる。
熱酸発生剤を含む場合、熱酸発生剤の含有量は、硬化性樹脂組成物の固形分に対して、例えば、0.05〜10wt%であるのが好ましく、0.5〜5wt%であるのがより好ましい。
【0060】
[光酸発生剤]
本発明で使用することができる光酸発生剤の好ましい例としては、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、セレニウム塩、オキソニウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
具体的には、商品名として、例えば、サイラキュアUVI−6970、サイラキュアUVI−6974、サイラキュアUVI−6990、サイラキュアUVI−950(以上、米国ユニオンカーバイド社製、商品名)、イルガキュア261(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名)、SP−150、SP−151、SP−170、オプトマーSP−171(以上、旭電化工業株式会社製、商品名)、CG−24−61(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名)、DAICATII(ダイセル化学工業社製、商品名)、UVAC1591(ダイセル・ユーシービー(株)社製、商品名)、CI−2064、CI−2639、CI−2624、CI−2481、CI−2734、CI−2855、CI−2823、CI−2758(以上、日本曹達社製品、商品名)、PI−2074(ローヌプーラン社製、商品名、ペンタフルオロフェニルボレートトルイルクミルヨードニウム塩)、FFC509(3M社製品、商品名)、BBI−102、BBI−101、BBI−103、MPI−103、TPS−103、MDS−103、DTS−103、NAT−103、NDS−103(ミドリ化学社製、商品名)、CD−1012(米国、Sartomer社製、商品名)等が挙げられる。
光酸発生剤を含む場合、光酸発生剤の含有量は、硬化性樹脂組成物の固形分に対して、例えば、0.05〜10wt%であるのが好ましく、0.5〜5wt%であるのがより好ましい。
【0061】
[架橋剤]
本発明で使用することができる架橋剤としては、例えば、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸、多官能エポキシモノマー、多官能アクリルモノマー、多官能ビニルエーテルモノマー、多官能オキセタンモノマー等が挙げられる。
多価カルボン酸無水物の具体例としては、無水フタル酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水ドデセニルコハク酸、無水トリカルバリル酸、無水マレイン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ジメチルテトラヒドロフタル酸、無水ハイミック酸、無水ナジン酸等の脂肪族または脂環族ジカルボン酸無水物;1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族多価カルボン酸二無水物;無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸無水物;エチレングリコールビストリメリテイト、グリセリントリストリメリテイト等のエステル基含有酸無水物が挙げられるが、中でも、芳香族多価カルボン酸無水物が好ましい。また、市販のカルボン酸無水物からなるエポキシ樹脂硬化剤も好適に用いることができる。
【0062】
多価カルボン酸の具体例としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ブタンテトラカルボン酸、マレイン酸、イタコン酸等の脂肪族多価カルボン酸;ヘキサヒドロフタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸、およびフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸が挙げられるが、中でも、芳香族多価カルボン酸が好ましい。
【0063】
多官能エポキシモノマーの具体例としては、ダイセル化学工業株式会社製、商品名セロキサイド2021、ダイセル化学工業株式会社製、商品名エポリードGT401、ダイセル化学工業株式会社製、商品名エポリードPB3600、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、イソシアヌル酸トリグリシジル等が挙げられる。
多官能アクリルモノマーの具体例としては、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートトリメタリルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0064】
多官能ビニルエーテルモノマーの具体例としては、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、ノナンジオールジビニルエーテル、シキロヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル等が挙げられる。
【0065】
多官能オキセタンモノマーの具体例としては、キシリレンジオキセタン、ビフェニル型オキセタン、ノボラック型オキセタン等が挙げられる。
架橋剤を含む場合、架橋剤の含有量は、硬化性樹脂組成物の固形分に対して、例えば、0.05〜50wt%であるのが好ましく、0.5〜20wt%であるのがより好ましい。
【0066】
≪硬化性樹脂組成物の調製方法≫
本発明の硬化性樹脂組成物は、重合体Aおよび重合体B、さらには、必要に応じて、上述した各成分を混合することにより、調製することができる。
重合体A、重合体B(さらには、重合体C)は、それぞれ、上述したような単量体成分を、重合溶媒中において、重合反応させることにより合成することができる。
重合体の合成には、必要に応じて、重合開始剤、連鎖移動剤を用いることができる。
【0067】
[重合溶媒]
重合溶媒は、単量体組成等に応じて適宜選択できる。重合溶媒としては、例えば、エーテル(ジエチルエーテル;エチレングリコールモノまたはジアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノまたはジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノまたはジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノまたはジアリールエーテル、ジプロピレングリコールモノまたはジアルキルエーテル、トリプロピレングリコールモノまたはジアルキルエーテル、1,3−プロパンジオールモノまたはジアルキルエーテル、1,3−ブタンジオールモノまたはジアルキルエーテル、1,4−ブタンジオールモノまたはジアルキルエーテル、1,6−ヘキサンジオールモノまたはジアルキルエーテル、グリセリンモノ,ジまたはトリアルキルエーテル等のグリコールエーテル類等の鎖状エーテル;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル等)、エステル(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、C5−6シクロアルカノールアセテート、C5−6シクロアルカンジオールモノまたはジアセテート、C5−6シクロアルカンジメタノールモノまたはジアセテート等のカルボン酸エステル類;エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、エチレングリコールモノまたはジアセテート、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノまたはジアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノまたはジアセテート、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノまたはジアセテート、1,3−プロパンジオールモノアルキルエーテルアセテート、1,3−プロパンジオールモノまたはジアセテート、1,3−ブタンジオールモノアルキルエーテルアセテート、1,3−ブタンジオールモノまたはジアセテート、1,4−ブタンジオールモノアルキルエーテルアセテート、1,4−ブタンジオールモノまたはジアセテート、1,6−ヘキサンジオールモノまたはジアセテート、グリセリンモノ,ジまたはトリアセテート、グリセリンモノまたはジC1−4アルキルエーテルジまたはモノアセテート、トリプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノまたはジアセテート等のグリコールアセテート類またはグリコールエーテルアセテート類等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、3,5,5−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−オン等)、アミド(N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等)、スルホキシド(ジメチルスルホキシド等)、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、C5−6シクロアルカノール、C5−6シクロアルカンジオール、C5−6シクロアルカンジメタノール等)、炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素等)や、これらの混合溶媒等が挙げられる。
【0068】
[重合開始剤]
重合体(重合体A、重合体B、重合体C)を製造するにあたり、用いられる重合開始剤としては、通常のラジカル開始剤が挙げられる。重合開始剤の具体例としては、例えば、2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2′−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、ジエチル−2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジブチル−2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ化合物、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシピバレート、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物、過酸化水素等が挙げられる。過酸化物をラジカル重合開始剤として使用する場合、還元剤を組み合わせてレドックス型の開始剤としてもよい。上記のなかでもアゾ化合物が好ましく、2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(イソ酪酸)ジメチルがより好ましい。
重合開始剤の使用量は、円滑な重合を損なわない範囲で適宜選択できるが、通常、全単量体成分および重合開始剤の総量に対して、1〜30wt%であるのが好ましく、5〜25wt%であるのがより好ましい。
【0069】
[連鎖移動剤]
本発明においては、ラジカル重合において一般的に使用されている連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤の具体例としては、チオール類(n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、tert−ブチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、トリエチレングリコールジメルカプタン等)、チオール酸類(メルカプトプロピオン酸、チオ安息香酸、チオグリコール酸、チオリンゴ酸等)、アルコール類(イソプロピルアルコール等)、アミン類(ジブチルアミン等)、次亜燐酸塩類(次亜燐酸ナトリウム等)、α−メチルスチレンダイマー、タービノーレン、ミルセン、リモネン、α−ピネン、β−ピネン等が挙げられる。
【0070】
連鎖移動剤の使用量は、全単量体成分に対して、0.001〜3wt%であるのが好ましい。
連鎖移動剤を使用する場合は、予め、上述したような単量体(ラジカル重合性単量体)に混合させておくことが好ましい。
これらの成分は、重合体の合成後、生成により除去されるものであってもよいし、除去されることなく、最終的な硬化性樹脂組成物中に含まれるものであってもよい。
【0071】
重合は、溶液重合、塊状重合、懸濁重合、塊状−懸濁重合、乳化重合等、スチレン系ポリマーやアクリル系ポリマーを製造する際に用いる慣用の方法により行うことができる。これらのなかでも溶液重合が好ましい。モノマー(単量体成分)、重合開始剤は、それぞれ、反応系に一括供給してもよく、その一部または全部を反応系に滴下してもよい。例えば、一定温度に保持したモノマーと重合溶媒の混合液中に、重合開始剤を重合溶媒に溶解した溶液を滴下して重合する方法や、予め単量体、重合開始剤を重合溶媒に溶解させた溶液を、一定温度に保持した重合溶媒中に滴下して重合する方法(滴下重合法)等を採用することができる。
【0072】
重合反応における処理温度(重合温度)は、例えば、30〜150℃の範囲で適宜選択することができる。
上記のような方法で得られた重合液は、必要に応じて固形分濃度を調整したり、溶媒置換を行ったり、濾過処理を施した後、これに、用途に応じた適宜な化合物や溶剤を加えることにより硬化性樹脂組成物として利用することができる。また、重合により生成したポリマー(重合体)を沈殿または再沈殿等により精製し、この精製したポリマーを、前記適宜な化合物とともに溶剤に溶解することにより、硬化性樹脂組成物として利用することもできる。
【0073】
≪硬化物≫
本発明の硬化物は、上記のような硬化性樹脂組成物を硬化させることにより、得ることができる。
硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、各種基材上に付与され、その後、硬化処理が施される。
【0074】
硬化性樹脂組成物を基材上に付与する方法としては、スピンコーター、スリットコーター等が挙げられる。基材としては、例えば、ガラス、セラミック、シリコンウエハ、金属、プラスチック等が挙げられる。
また、硬化性樹脂組成物は、成形型内に付与され、所定の形状を有する硬化物よりなる成形体を製造するのに用いられるものであってもよい。このような場合、成形型の内表面(硬化性樹脂組成物が接触する部位)には、離型処理が施されているのが好ましい。
【0075】
硬化性樹脂組成物の硬化は、加熱すること、あるいは活性エネルギー線を照射し露光すること、または露光後に加熱することにより行うことができる。硬化性樹脂組成物を熱により硬化させる場合、加熱温度は50〜260℃であるのが好ましく、80〜240℃であるのがより好ましい。また、硬化性樹脂組成物を光により硬化させる場合、露光には種々の波長の光線、例えば、紫外線、X線、g線、i線、エキシマレーザー等を使用することができる。
【0076】
硬化物を膜として形成する場合、その厚さ(硬化物の厚さ)は、特に限定されないが、0.1〜40μmであるのが好ましく、0.3〜20μmであるのがより好ましく、0.5〜10μmであるのがさらに好ましい。
上述したように、本発明の硬化物は、高硬度で、耐溶剤性、耐熱性に優れている。
本発明の硬化物は、ガラス基板(厚さ:1mm)上に、厚さ:1μmの膜として形成した際における、JIS K 5600−5−4の引っかき硬度(鉛筆法)に準拠して求められる鉛筆硬度が、H以上であるのが好ましい。
【実施例】
【0077】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.重合体の合成(重合体溶液の調製)
(合成例1)
攪拌機、還流冷却機、滴下漏斗、窒素導入管および温度計を備えた1Lの反応容器に1,3−ブチレングリコールジアセテート(1,3−BGDA):37.6重量部を入れて、90℃に加熱した。続いて、2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN):2重量部、および、1,3−BGDA:3重量部を加えた後、該フラスコ内に、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルメタアクリレート(ダイセル化学工業株式会社製、商品名サイクロマーM100):27重量部、メタクリル酸2−(0−[1’メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル(昭和電工株式会社製、商品名MOI−BM):1.5重量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA):1.5重量部を混合させた溶液を滴下ポンプを用いて約4時間かけて滴下した。一方、重合開始剤としての2,2′−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル(和光純薬工業株式会社製、商品名V−601):5重量部を1,3−BGDA:20重量部に溶解した溶液(重合開始剤溶液)を別の滴下ポンプを用いて約4時間かけて滴下した。重合開始剤溶液の滴下が終了した後、AIBN:0.2重量部、および、1,3−BGDA:1重量部を添加し約2時間同温程度に保持した後、AIBN:0.2重量部、および、1,3−BGDA:1重量部を添加し約2時間同温程度に保持し、その後、室温程度まで冷却して、重合体Aを含む、固形分30wt%の重合体溶液A1を得た。
【0078】
(合成例2〜7)
重合体の合成(重合体溶液の調製)に用いる単量体成分の種類、使用量を表1に示すように変更した以外は、前記合成例1と同様の操作を行った。その結果、重合体Aを含む、固形分30wt%の6種の重合体溶液(重合体溶液A2〜A7)が得られた。
(合成例8)
メタクリル酸2−(0−[1’メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル(昭和電工株式会社製、商品名MOI−BM)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)の代わりに、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製、商品名ビスコート8FM)を使用し、各成分の使用量を表1に示すようにした以外は、前記合成例1と同様の操作を行った。その結果、重合体Bを含む、固形分30wt%の重合体溶液B1が得られた。
【0079】
(合成例9〜13)
重合体の合成(重合体溶液の調製)に用いる単量体成分の種類、使用量を表1に示すように変更した以外は、前記合成例8と同様の操作を行った。その結果、重合体Bを含む、固形分30wt%の5種の重合体溶液(重合体溶液B2〜B6)が得られた。
(合成例14)
(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルメタアクリレート(ダイセル化学工業株式会社製、商品名サイクロマーM100)、メタクリル酸2−(0−[1’メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル(昭和電工株式会社製、商品名MOI−BM)、および、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)の代わりにγ‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名SZ6030):30重量部を使用した以外は、前記合成例1と同様の操作を行った。その結果、重合体Cを含む、固形分30wt%の重合体溶液C1(単独重合体溶液)が得られた。
(合成例15〜18)
重合体の合成(重合体溶液の調製)に用いる単量体成分の種類、使用量を表1に示すように変更した以外は、前記合成例14と同様の操作を行った。その結果、重合体Cを含む、固形分30wt%の4種の重合体溶液(重合体溶液C2〜C5)が得られた。
【0080】
合成例1〜18での重合体の合成(重合体溶液の調製)に用いた材料の種類、使用量(合成例1〜18で合成した重合体の組成)を表1にまとめて示した。なお、表中、「1,3−BGDA」は1,3−ブチレングリコールジアセテートのことを示し、「V−601」は2,2′−アゾビス(イソ酪酸)ジメチルのことを示し、「AIBN」は2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)のことを示し、「a1−1」は(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルメタアクリレート(サイクロマーM100)のことを示し、「a1−2」は(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルアクリレートのことを示し、「a2−1」はメタクリル酸2−(0−[1’メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル(MOI−BM)のことを示し、「a2−2」は2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製、商品名「カレンズMOI」)のことを示し、「a3−1」は2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)のことを示し、「a3−2」は4−ヒドロキシブチルアクリレートのことを示し、「a4−1」は2−エチルヘキシルメタクリレートのことを示し、「b1−1」は1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルメタアクリレート(ビスコート8FM)のことを示し、「b1−2」は1,2,3,4,5−ペンタフルオロスチレンのことを示し、「b2−1」は(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルメタアクリレート(サイクロマーM100)のことを示し、「b2−2」はシクロヘキシルメタクリレートのことを示し、「c1−1」はγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(SZ6030)のことを示し、「c1−2」はγ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランのことを示し、「c2−1」はエチルメタクリレートのことを示す。また、表中には、重合体溶液を構成する重合体の重量平均分子量Mwをあわせて示した。
【0081】
【表1】

【0082】
2.硬化性樹脂組成物の調製
(実施例1)
重合体溶液A1:50重量部に、重合体溶液B1:50重量部を加えて混合し、その後、1,3−BGDA:100重量部で希釈することにより硬化性樹脂組成物を得た。
(実施例2〜16)
重合体溶液の種類、使用量を変更した以外は、前記実施例1と同様にして硬化性樹脂組成物を調製した。
【0083】
(比較例1〜3)
重合体溶液の種類、使用量を変更した以外は、前記実施例1と同様にして硬化性樹脂組成物を調製した。
前記各実施例および各比較例の硬化性樹脂組成物を調製するのに用いた材料の使用量、各硬化性樹脂組成物の構成を表2にまとめて示した。なお、表中には、硬化性樹脂組成物の室温(25℃)における粘度をあわせて示した。
【0084】
【表2】

【0085】
3.評価
前記各実施例および各比較例で得られた硬化性樹脂組成物について、下記に示すような試験による評価を行った。
<評価用試験片の作製>
各試験を行うのに先立ち、以下に述べるような方法で、評価用試験片を作製した。
まず、厚さ:1mmのガラス基板を多数個用意した。
次に、スピンコーターを用いて、これらのガラス基板(基材)の一方の主面上に、それぞれ、前記各実施例および各比較例の硬化性樹脂組成物を塗布した。
次に、硬化性樹脂組成物が付与されたガラス基板を、100℃のホットプレートで3分間加熱した後、80℃のオーブン中で30分間加熱し、さらに220℃のオーブン中で30分間加熱することで塗膜の硬化を行った。このようにして形成された塗膜(硬化物)の厚さは、いずれも、1μmであった。
【0086】
3−1.耐熱変色性(耐熱性)
前記各実施例および各比較例の評価用試験片(他の試験を行っていないもの)について、分光光度計(150−20型ダブルビーム:日立製作所製)を用いて400〜800nmの波長の光の透過率(透過率1)を測定した。その後、240℃のオーブン中で1時間加熱し、前記と同様の条件で、分光光度計を用いて400〜800nmの波長の光の透過率(透過率2)を測定した。{(透過率1)−(透過率2)}×100/(透過率1)で表される透過率の変化率(%)を求め、以下の5段階の基準に従い、評価した。
【0087】
A:変化率が7%未満。
B:変化率が7%以上12%未満。
C:変化率が12%以上15%未満。
D:変化率が15%以上18%未満。
E:変化率が18%以上。
【0088】
3−2.膜硬度
前記各実施例および各比較例の評価用試験片(他の試験を行っていないもの)について、JIS K 5600−5−4の引っかき硬度(鉛筆法)に準拠し、塗膜(硬化物)の擦傷により鉛筆硬度を測定し、表面硬度を求めた。
3−3.耐薬品性(耐溶剤性)
前記各実施例および各比較例の評価用試験片(他の試験を行っていないもの)について、塗膜(硬化物)の表面に、Nメチルピロリドン(NMP)およびγ−ブチロラクトン(γ−BL)をそれぞれ1滴ずつ滴下し、25℃の環境下で、10分間放置した。その後、水洗し、溶剤を滴下した箇所について、目視による観察を行い、これらの外観を以下の5段階の基準に従い、評価した。
【0089】
A:外観上の変化が全く認められなかった。
B:僅かに溶剤の跡が残るが、拭き取りにより溶剤の跡が消えた。
C:溶剤の跡が残り、拭き取ってもその痕跡がわずかに残った。
D:溶剤の跡が残り、拭き取ってもその痕跡がはっきりと残った。
E:明らかな変色が認められた。
【0090】
3−4.基材に対する密着性
前記耐薬品性試験(耐溶剤性試験)を行った前記各実施例および各比較例の評価用試験片の溶剤を滴下した箇所について、JIS K 5600−5−6に準拠してクロスカットを行い、JIS K 5600−5−6の「8.3 表1 試験結果の分類」で規定された分類に従って、以下の4段階の基準に基づいて評価した。
【0091】
A:「8.3 表1 試験結果の分類」での「分類0」または「分類1」であった。
B:「8.3 表1 試験結果の分類」での「分類2」であった。
C:「8.3 表1 試験結果の分類」での「分類3」であった。
D:「8.3 表1 試験結果の分類」での「分類4」であった。
これらの結果を表3に示す。なお、表中、Nメチルピロリドンを「NMP」で示し、γ−ブチロラクトンを「γ−BL」で示した。
【0092】
【表3】

【0093】
表3から明らかなように、本発明では、硬度、耐溶剤性、耐熱性に優れた硬化物を形成することができた。本発明で形成された硬化物は、基材への密着性に優れるものであった。これに対し、各比較例では、満足の行く結果が得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともエポキシ基含有ビニル単量体a1を単量体成分として含有し、かつ、下記式(I)で表されるフルオロアルキル基、もしくはフルオロアリール基含有ビニル単量体を単量体成分として含有しない重合体Aと、
少なくとも下記式(I)で表されるフルオロアルキル基、もしくはフルオロアリール基含有ビニル単量体を単量体成分として含有してなる重合体Bとを含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【化1】

【請求項2】
前記重合体Aは、単量体成分として、前記エポキシ基含有ビニル単量体a1に加え、イソシアネート基またはそれが保護基で保護されたブロックイソシアネート基を備えたビニル単量体a2を含有してなる共重合体である請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記重合体Aは、100重量部の前記エポキシ基含有ビニル単量体a1に対し、前記ビニル単量体a2を2〜20重量部含むものである請求項2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記重合体Aは、単量体成分として、前記エポキシ基含有ビニル単量体a1に加え、水酸基を備えたビニル単量体a3を含有してなる共重合体である請求項1ないし3のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記重合体Aは、100重量部の前記エポキシ基含有ビニル単量体a1に対し、前記ビニル単量体a3を2〜20重量部含むものである請求項4に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記重合体Aの含有率と前記重合体Bの含有率との比率が、重量比で、25:75〜75:25である請求項1ないし5のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を硬化することにより得られたことを特徴とする硬化物。

【公開番号】特開2009−73900(P2009−73900A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243134(P2007−243134)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】