説明

硬化性樹脂組成物

【課題】
簡便な方法により合成・調製が可能であり、またその組成物が光または熱により容易に硬化し、弾性および耐熱性、耐湿性に優れた硬化物を形成し、電気電子分野、輸送機器分野等、広い分野で接着剤、シール剤、注型剤等として広く応用が可能である、硬化性呪詛組成物を得る。
【解決手段】
(1)(a)水素添加ヒマシ油および/または水素添加ヒマシ油系ポリオールと(b)分子中にイソシアネート基と(メタ)アクリル基を含有する化合物、を反応させて得られる水素添加ヒマシ油誘導アクリレートオリゴマーと、(2)ラジカル重合開始剤、を必須成分とする硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物に関するものであり、紫外線などの活性エネルギー線の照射または加熱により硬化し、広い温度範囲での弾性および耐熱性、耐湿性に優れた硬化型樹脂組成物に関するものであり、接着剤、シール剤、注型剤等に広く応用が可能なものである。
【背景技術】
【0002】
従来からポリオール成分とポリイソシアネート成分とからなるウレタンシステムは、産業上の種々の分野において広く採用されている。その中で、植物油系の脂肪酸エステル類ポリオールを用いたウレタンシステムは、電気絶縁性および耐水性がすぐれている上、機械的性質、耐熱性、耐候性も良好であるので、電気絶縁用、接着用、塗料用、封止用、成形物などの用途に好適である。例えば、ナタネ油、ヒマシ油、大豆油、パーム油などから変性されたポリオール類は、古くから潤滑性素材として使用されている。このような植物油系ポリオールの中でも特にヒマシ油変性体は耐熱性や接着性が優れており、好ましく使用されている。ウレタンポリオールとしてのヒマシ油は、低粘度・低発泡であるため無溶剤システムが組みやすく、しかもその硬化物は低吸水率ですぐれた電気特性を有し、顔料の分散性も良好であるという特長をもっている上、耐薬品性、耐加水分解性の点でもある程度の水準で実用性がある。さらに、このようなヒマシ油の特徴を向上させるため、水素添加するとともに分子量を大きくしたヒマシ油誘導ポリオールが開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1では水素添加ヒマシ油中の12−ヒドロキシステアレートの割合を制御したもの、特許文献2ではヒマシ油のヒドロキシル化の方法を開示するものであり、ヒマシ油を所望の用途に適するものにするための変性方法を開示したものである。また、特許文献3はポリウレタン製造用のポリオールとして水素添加ヒマシ油脂肪酸のオキシカルボン酸の縮合物であるオリゴマーと多価アルコールのエステルを開示している。さらに、特許文献4はヒマシ油または水素添加ヒマシ油にヒマシ油脂肪酸または12−ヒドロキシステアリン酸をエステル結合した、ヒマシ油変性ポリオールを開示している。
【0004】
【特許文献1】特開平3−84099号公報
【特許文献2】特開昭54−100319 号公報
【特許文献3】特開2004−244443号公報
【特許文献4】特開平11−50086号公報
【0005】
これらのヒマシ油またはヒマシ油系ポリオールは一般的にポリイソシアネート成分と混合することにより常温硬化または加熱硬化型の2液型ウレタンシステムとして利用することができる。
【0006】
一方、オリゴマー分子中に(メタ)アクリロイル基を導入し、(メタ)アクリロイル基を架橋させることにより、ラジカル硬化性樹脂として用いることができる技術は公知である(特許文献5)。ヒマシ油またはヒマシ油系ポリオールにおいても同様に特許文献6に開示されている。
【0007】
【特許文献5】特開平2−8211号公報
【特許文献6】特開平11−302347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながらこれらはいずれもポリオールに多価イソシアネートを反応させて得た末端イソシアネートプレポリマーに水酸基を含有する(メタ)アクリロイル基含有化合物を反応させる手法であり、製造工程が多段階で煩雑であり、かつ得られる樹脂の粘度が高いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
鋭意検討した結果、水素添加ヒマシ油ポリオールとイソシアネート基含有(メタ)アクリル基含有化合物を反応させることで非常に簡便かつ粘度の低い(メタ)アクリル基含有水素添加ヒマシ油誘導体が得られることがわかった。またこれに光または/および熱ラジカル重合開始剤を混合することで一液型の硬化性組成物が得られることがわかった。この組成物の硬化物は、光または熱により容易に硬化し、広い温度範囲での弾性および耐熱性、耐湿性に優れた硬化物を形成し、接着剤、シール剤、注型剤等に広く応用が可能である。
【0010】
すなわち、本発明は(1)(a)水素添加ヒマシ油および/ または水素添加ヒマシ油系ポリオールと(b)イソシアネート基含有(メタ)アクリル基含有化合物を反応させて得られる水素添加ヒマシ油誘導アクリレートオリゴマーと(2)ラジカル重合開始剤、を必須成分とする硬化性樹脂組成物である。
【0011】
以下、本発明で使用される各成分について詳説する。本発明の(1)成分の原料である(a)成分は水素添加ヒマシ油または水素添加ヒマシ油系ポリオールである。ヒマシ油はヒマの種子から得られる油を精製したものであり、リシノール酸のグリセリンエステルである。水素添加ヒマシ油はこのヒマシ油の不飽和二重結合を水素添加し飽和結合化したものであり、その方法には限定されない。例えば、この方法は特開昭54−100319号公報に記載されている。この水素添加ヒマシ油は商業的に容易に入手することができる。例えば、伊藤製油株式会社製のヒマシ硬化油A、ヒマシ硬化油B、川研ファインケミカル(株)製のK−3−ワックス、K−3−ワックス−500、日本油脂(株)製のカスターワックスが挙げられる。
【0012】
また、ヒマシ油系ポリオールは、分子中に2つ以上のヒドロキシル基を有し、ヒマシ油脂肪酸(リシノール酸)を骨格とするポリエステルポリオールを含有するポリオールである。ヒマシ油変性ポリオールと表されることもある。このヒマシ油系ポリオールとしては、ヒマシ油およびヒマシ油のアルキレンオキサイド付加物のうちの少なくとも1種と、アルコール、ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオールのうちの少なくとも1種とのエステル交換物、;ヒマシ油脂肪酸(リシノール酸)と、アルコール、ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオールのうちの少なくとも1種とのエステル化合物、;ヒマシ油のジオール型の部分脱水化物または部分アシル化物、;上記エステル交換物、エステル化合物および部分脱水化物または部分アシル化物の各々の化合物の水添物等が挙げられる。ヒマシ油系ポリオールとしては1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
尚、ヒマシ油およびヒマシ油脂肪酸としては、オリゴマーを用いることもできる。このオリゴマーとしては、2〜7量体、特に3〜5量体が好ましく、より多量体とすることもできる。また、不飽和基の水素化により生成した飽和型のオリゴマーを用いることもできる。
【0013】
上記のエステル交換物は、ヒマシ油およびヒマシ油のアルキレンオキサイド付加物のうちの少なくとも1種と、アルコール、ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオールのうちの少なくとも1種とを反応させて生成させることができる。エステル交換反応におけるヒマシ油等とアルコール等との使用割合は特に限定されないが、ヒマシ油(多量体の場合は多量体換算である。)等1モルに対して、アルコール等を0.1〜5モル、特に0.2〜4モルとすることが好ましい。エステル交換反応に用いられるアルコールの分子量は特に限定されないが、その炭素数が1〜12、特に2〜8、更に2〜4の低分子量アルコールであることが好ましい。このアルコールはポリオールでも、モノオールでもよく、特にポリオールが好ましい。モノオールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール等が挙げられる。また、ポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のポリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ジグリセリン等のポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等のポリペンタエリスリトール、ソルビトール、シュルクゾールなどが挙げられる。アルコールとしては1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。更に、モノオールとポリオールとを併用してもよい。尚、価数の異なるポリオールを併用することもでき、特に3価以上のポリオールを少なくとも一部に使用することが好ましい。また、全量が3価以上のポリオールであることが特に好ましい。
【0014】
更に、上記のエステル化合物は、ヒマシ油脂肪酸と、アルコール、ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオールのうちの少なくとも1種とを反応させて生成させることができる。このエステル化合物を生成させる際のヒマシ油脂肪酸とアルコール等との使用割合も特に限定されないが、ヒマシ油脂肪酸(多量体の場合は多量体換算である。)1モルに対して、アルコール等を0.05〜2モル、特に0.1〜2モルとすることが好ましい。エステル化合物の生成に用いられるアルコールの分子量は特に限定されないが、その炭素数が1〜12、特に2〜8、更に2〜4の低分子量アルコールであることが好ましい。このエステル化合物の生成に使用するアルコールとしては、上記のモノオールおよびポリオールを用いることができるが、ヒマシ油脂肪酸が1量体である場合は、ポリオールを用いる必要がある。このアルコールとしては1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよく、モノオールとポリオールとを併用してもよい。更に、価数の異なるポリオールを併用することもでき、特に3価以上のポリオールを少なくとも一部に使用することが好ましい。また、全量が3価以上のポリオールであることが特に好ましい。
なお、上述では単にヒマシ油またはヒマシ油脂肪酸をエステル交換してヒマシ油系ポリオールを得る方法を述べているが、本発明では水素添加されたヒマシ油系ポリオールを使用する。そのためには上述のヒマシ油またはヒマシ油脂肪酸を最初から水素添加したものを上述のエステル交換して水素添加ヒマシ油系ポリオールとしても良いし、ヒマシ油系ポリオールとした後水素添加したものでも良いが、反応の効率を考えると、前者が好ましい。その場合、上述の説明のヒマシ油をヒマシ硬化油、ヒマシ油脂肪酸を12−ヒドロキシステアリン酸と読み替えると理解しやすい。この水素添加ヒマシ油系ポリオールは商業的に容易に入手することができる。例えば、伊藤製油株式会社製のURIC PH−5001、PH−5002、PH−6000、URIC 1815U、URIC 1886U、豊国製油株式会社社製のHS−3G−500B、等が挙げられる。
【0015】
本発明の(1)成分の原料である(b)成分は(b)分子中にイソシアネート基と(メタ)アクリル基を含有する化合物である。当該化合物は1分子中にイソシアネート基と(メタ)アクリル基をそれぞれ1つ以上含有すれば特に限定されない。ここで、(メタ)アクリル基とはアクリル基とメタクロイル基を特に区別なく総称したものである。当該化合物の具体例は2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1−ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、m−メタクリロイルフェニルイソシアネート(メタ)アクリロイルイソシアネート、4−メタクリロイルオキシブチルイソシアネート、2−(2−メタクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアナート等が挙げられる。また、組成物を紫外線硬化させる際には、酸素阻害による硬化不良が少ない点から、アクリル基を分子内に1つ以上有する化合物が好ましい。これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0016】
(1)成分は前述の(a)成分と(b)成分を反応させて得ることができる。詳しくは(a)成分の水酸基と(b)成分のイソシアネート基をウレタン反応させることにより得ることができる。この反応は常温または加温下で(a)成分と(b)成分を混合することにより容易に行うことができるが、触媒を用いることが好ましい。この触媒としては錫、鉛、およびチタン等の金属を有する有機金属化合物、トリエチルアミン、トリエチレンジアミンなどの三級アミン系などが挙げられる。中でも、有機錫化合物が好ましく、その代表例は、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫メルカプトプロピオネート、ジブチル錫ビスイソオクチルチオグリコレート、ジブチル錫ドデシルメルカプチド、2−エチルヘキサン酸錫、オクタン酸第一錫、オレイン酸第一錫等が挙げられる。触媒はイソシアネート基と水酸基との反応速度を調節するための好ましい量を適宜選択して使用できるが、一般には用いる全原料中の触媒量が0.001〜10重量%であることが好ましい。さらに反応温度は10〜90℃、特には40〜70℃の範囲が好ましい。
【0017】
(1)成分を得るための(a)成分と(b)成分の比率は(a)成分に含有される水酸基の存在量と、(b)成分に含有されるイソシアネート基の存在量で検討される。(a)に含有される水酸基の存在量に対する(b)に含有されるイソシアネート基の存在量の比が0.2未満である場合、耐久性良好なゲル状の硬化物を得ることができる。また、(a)に含有される水酸基の存在量に対する(b)に含有されるイソシアネート基の存在量の比が1.0を超えた場合、組成物に湿気硬化性を付与することができる。本発明では(a)に含有される水酸基の存在量に対する(b)に含有されるイソシアネート基の存在量の比が0.2以上であることが好ましい。
【0018】
本発明の(2)成分はラジカル重合開始剤である。ラジカル重合開始剤は(メタ)アクリレート化合物等のラジカル重合性化合物の重合開始剤として一般に良く知られている化合物が使用できる。この(2)ラジカル重合開始剤は紫外線などの活性エネルギー線によりラジカルを発生するものや、熱を加えることによりラジカルを発生するものがある。
【0019】
(2)ラジカル重合開始剤は、上記したように紫外線や可視光などの活性エネルギー線によりラジカルを生成する化合物と熱を与えることによりラジカルを生成する化合物と分けられるが、これらのうち活性エネルギー線によりラジカルを生成する光ラジカル重合開始剤は、さらに化学構造(分子結合エネルギー)の違いにより、分子内開裂型(P1型)と水素引き抜き型(P2型)に分類される。分子内開裂型(P1型)の具体例としては、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン類、アシルフォシフィンオキサイド類、チタノセン化合物等が挙げられる。
【0020】
水素引き抜き型(P2型)の具体例としては、ベンゾフェノン、ベンゾイルベンゾイックアシッド、ベンゾイルベンゾイックアシッドメチルエーテル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、3,3’−メチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類が挙げられる。さらに、熱によりラジカルを発生する化合物としては、過酸化ベンゾイル、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルパーオキシジイソブチレート、過酸化ラウロイル、2,2'−アゾビスイソ酪酸ジメチル等の有機パーオキサイド類やアゾビスイソブチロニトリルなどが挙げられる。
【0021】
熱を与えることによりラジカルを生成するラジカル重合開始剤としてはアゾ系開始剤、過酸化物開始剤等、通常のラジカル重合に使用できるものはいずれも使用することができる。アゾ系開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサノン−1−カルボニトリル、アゾジベンゾイル等が挙げられる。また、過酸化物開始剤としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート等が挙げられる。
【0022】
これらを単独または併用して添加することで紫外線等の活性エネルギー線または/および熱により硬化しうる一液性硬化性組成物が得られる。(2)成分の添加量は使用される成分や所望する硬化性により異なるが(1)成分100重量部に対し0.1〜10重量部である。
【0023】
本発明は(1)成分と(2)成分により硬化性組成物を得ることができるが、硬化物の強度等の特性をさらに向上させるためラジカル官能性のモノマーまたはオリゴマーを添加することが好ましい。ラジカル官能性モノマーまたはオリゴマーは(メタ)アクリル基を有する化合物であり、特に(メタ)アクリレート化合物が典型的に用いられる。(メタ)アクリレート化合物の例は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、等が挙げられるが、本発明の組成物において、分子内に環状脂肪族骨格を有する(メタ)アクリレートモノマーまたはオリゴマーを添加した場合、特に優れた作業性、硬化性、硬化物強度に優れた組成物が得られる為、当該成分として分子内に環状脂肪族骨格を有する(メタ)アクリレートモノマーまたはオリゴマーを用いることが特に好ましい。分子内に環状脂肪族骨格を有する(メタ)アクリレートモノマーまたはオリゴマーの例としては、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジアクリレート、イソボニルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ビス(アクリロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、トリシクロデカンジメタノールアクリレート、シクロヘキシルメタアクリレート、ジシクロペンタニルメタアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタアクリレート、イソボニルメタアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、アクリロイルモルフォリン、イミドアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタアクリレート、グリシジルメタアクリレート等が上げられるがこれに限定されない。これら環状脂肪族骨格を有する(メタ)アクリレートモノマーまたはオリゴマーは1種以上を混合して用いてよい。これらと(1)成分である水素添加ヒマシ油誘導アクリレートオリゴマーとの混合割合は特に限定せず、使用目的に応じ任意に調整が可能であるが、(1)水素添加ヒマシ油誘導アクリレートオリゴマー100重量部に対し5〜90重量部の範囲で添加すると、組成物の作業性と硬化性にすぐれ、柔軟性、強度に優れた硬化物が得られる。
【0024】
本発明の組成物には必要に応じ種々の他の添加剤を加えることができる。例えば環状脂肪族骨格を含まない(メタ)アクリル基を有するモノマー/オリゴマー、あるいはラジカル重合禁止剤、酸化防止剤、可塑剤、充填剤、カップリング剤、レベリング剤、レオロジー調整剤等を添加することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の硬化性樹脂組成物は簡便な方法により得ることができ、またその組成物は光または熱により容易に硬化し、弾性および耐熱性、耐湿性に優れた硬化物を形成し、電気電子分野、輸送機器分野等、広い分野で接着剤、シール剤、注型剤等として広く応用が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に、実施例と比較例によって本発明の内容を更に具体的に説明する。なお、実施例によって本発明が制限されるものではない。
【実施例】
【0027】
実施例1
(1)(a)水素添加ヒマシ油および/ または水素添加ヒマシ油系ポリオールと(b)イソシアネート基含有(メタ)アクリル基含有化合物を反応させて得られる水素添加ヒマシ油誘導アクリレートオリゴマーの製造
加熱温度調節装置、真空装置を備えた容量3Lのプラネタリー撹拌装置に伊藤製油株式会社製URIC 1815U(水素添加ヒマシ油系ポリオール)800.0gを投入し、40℃にて30分間、−740mmHgの真空度にて真空撹拌し、ポリオール中の微量水分を除去した。
【0028】
撹拌を停止し窒素置換しながら常圧に戻し、日東化成(株)製ネオスタンU−100(錫系ウレタン架橋触媒)0.8gを添加し、均一に撹拌混合した後、昭和電工(株)製、カレンズMOI(イソシアネート基含有メタアクリル基含有化合物)100.0gを滴下混合し、窒素雰囲気化中40℃常圧にて8時間撹拌し反応させたのち30分間−740mmHgの真空度にて真空撹拌し水素添加ヒマシ油誘導アクリレートオリゴマーを製造した。FT−IR測定によりイソシアネート基の消失とウレタン結合の生成を確認し反応生成物が合成できていることを確認した。得られた反応生成物は淡黄色液状であった。
【0029】
得られた水素添加ヒマシ油誘導アクリレートオリゴマーの粘度測定をし、その結果を表1に示した。また、表1には配合成分の量、ヒマシ油誘導体に含まれる水酸基数とイソシアネート基含有(メタ)アクリル基含有化合物に含まれるイソシアネート基数の比(NCO/OH比)、反応温度、反応時間も示した。なお、表1に示す全ての配合成分の量の単位は重量(g)であり、粘度は25℃下、レオメーター(一定速度モード(せん断速度10/s))にて測定した値である。またNCO/OH比は以下の式によって求めた。NCO/OH比=(イソシアネート基含有(メタ)アクリル基含有化合物に含まれるイソシアネート基の数)/(ヒマシ油誘導体に含まれる水酸基の数)
【0030】
実施例2〜11
実施例1と同じ方法に従い、表1に示す原料と添加量・反応温度・時間で水素添加ヒマシ油誘導アクリレートオリゴマーを製造した。得られた生成物の外観ははすべて淡黄色液状であった。同様に粘度を測定し表1に記載した。なお表1に記載された原料の詳細は以下の通りである。
1815U:伊藤製油(株)製、水素添加ヒマシ油系ポリオール
1886U:伊藤製油(株)製、多官能水素添加ヒマシ油系ポリオール
HS−3G−500B:豊国製油(株)製、水素添加ヒマシ油系ポリオール
H56:伊藤製油(株)製、水素添加されていないヒマシ油系ポリオール
カレンズMOI:昭和電工(株)製、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート
カレンズAOI:昭和電工(株)製、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート
カレンズBEI:昭和電工(株)製、1,1−ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート
ネオスタンU−100:日東化成(株)製、錫系ウレタン架橋触媒
【0031】
比較例1
実施例1と同じ方法に従い、表1に示す原料と添加量、反応温度、反応時間で水素添加されていないヒマシ油誘導アクリレートオリゴマーを製造した。得られた生成物の外観は淡黄色液状であった。同様に粘度を測定しあわせて表1に記載した。
【0032】
比較例2
既知の方法による、本発明の方法によらない水素添加ヒマシ油誘導アクリレートオリゴマーの製造
加熱温度調節装置、真空装置を備えた容量3Lのプラネタリー撹拌装置に伊藤製油株式会社製URIC 1815U(水素添加ヒマシ油系ポリオール)800.0gを投入し、40℃に加温し、30分間−740mmHgの真空度にて真空撹拌し、ポリオール中の微量水分を除去した。
【0033】
撹拌を停止し窒素置換しながら常圧に戻し、日東化成(株)製ネオスタンU−100(錫系ウレタン架橋触媒)0.8gおよび三井武田ケミカル(株)製 TDI80/20 (トリレンジイソシアネート)115gを添加し、窒素雰囲気化中80℃常圧にて6時間撹拌し反応させ、末端イソシアネート基含有プレポリマーを得た。次いでこれに共栄社化学製ライトエステルHO(2−ヒドロキシエチルメタアクリレート)170gを添加し、窒素雰囲気化中80℃常圧にて3時間撹拌しイソシアネート基と水酸基を反応させたのち30分間−740mmHgの真空度にて真空撹拌し、水素添加ヒマシ油誘導アクリレートオリゴマーを製造した。FT−IR測定によりイソシアネート基の消失とウレタン結合の生成を確認し反応生成物が合成できていることを確認した。得られた生成物の外観は淡黄色液状であった。得られた水素添加ヒマシ油誘導アクリレートオリゴマーの粘度を測定しあわせて表1に記載した。
【0034】
【表1】

【0035】
実施例12〜23、比較例3〜4
(組成物の調製)
実施例12〜22、比較例3〜4については、実施例1〜11、および比較例1〜2で得た(メタ)アクリレートオリゴマーそれぞれ100gに、光ラジカル開始剤としてチバ・ジャパン(株)製DAROCURE1173を2g添加し均一混合して光硬化性一液組成物を得た。
【0036】
実施例23については、実施例1で得たメタアクリレートオリゴマーに光ラジカル開始剤としてチバ・ジャパン(株)製DAROCURE1173を2gと東京化成(株)製ベンゾフェノン(試薬)を1gを添加し均一溶解混合して光硬化性一液組成物を得た。これらの組成物について、以下に示す条件で組成物の伸び率、引っ張り強さ、硬さ、表面硬化性を測定し、表2に記載した。
【0037】
【表2】

【0038】
(伸び率、引っ張り強さ、硬さ測定用硬化物の作成)
各組成物を厚み1.2mmになるように離型処理されたPETフィルムで挟み、超高圧水銀灯を集光させたウシオ電機(株)製紫外線照射炉UV−4000を用い紫外線を積算光量3000mJ/cmになるように照射し厚み1.2mmの硬化塗膜シートを作成した。
【0039】
(伸び率および引張り強さの測定)
上述により得られた硬化塗膜シートをJIS3号ダンベル形状に打ち抜き、引張り試験器(インストロン)にて引張り速度500mm/minにて引っ張り試験を行い、伸び率および引張り強さを測定した。
【0040】
(硬さの測定)
先に作成した硬化塗膜シートを直径20mmの円盤に打ち抜き、この円盤を気泡が入らないように3枚重ね、25℃においてA硬度デュロメーターを用いて硬さを測定した。
【0041】
(表面硬化性の確認)
直径28mmのポリプロピレン製皿形容器に各組成物を1g滴下し、平滑にレベリングさせた後、空気雰囲気下、超高圧水銀灯を集光させたウシオ電機(株)製紫外線照射炉UV−4000を用い紫外線を積算光量3000mJ/cmになるように照射し硬化させた。空気に触れた状態である表面の硬化状態を目視および指触で観察した。表面に未硬化の液体によるべた付きが無い場合を「優」、べたつきがごくわずかの場合を「可」、べた付きが多い場合を「劣」とした。
【0042】
実施例24〜42
(脂肪族環状(メタ)アクリレートの添加、および他の添加剤の添加)
実施例1または実施例8で得られた水素添加ヒマシ油誘導アクリレートオリゴマーに、表3に示す通りの種類と量で脂肪族環状(メタ)アクリレート、または脂肪族環状(メタ)アクリレートでない(メタ)アクリレート化合物、光ラジカル開始剤、および他の添加剤を添加し均一混合して光硬化性一液組成物を得た。これらの組成物について、実施例12〜23、比較例3〜4と同じ条件で組成物の伸び率、引っ張り強さ、硬さ、表面硬化性を測定し、表3に記載した。
【0043】
【表3】

【0044】
なお表3に記載された原料の詳細は以下の通りである。
環状脂肪族(メタ)アクリレート類
IBX:共栄社化学(株)製、イソボニルメタクリレート
IBXA:大阪有機化学工業(株)製、イソボニルアクリレート
DCP−A:共栄社化学(株)製、トリシクロデカンジメタノールアクリレート
HOA−HH:共栄社化学(株)製、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート
ビスコート155:大阪有機化学工業(株)製、 シクロヘキシルアクリレート
FA511AS:日立化成工業(株)製、トリシクロデシルアクリレート
FA512M:日立化成工業(株)製、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート
FA513M:日立化成工業(株)製、ジシクロペンタニルメタクリレート
ACMO:(株)興人製、アクリロイルモルフォリン

環状脂肪族でない(メタ)アクリレート類
FA324A:日立化成工業(株)、変性ビスフェノールAジアクリレート
IM−A:共栄社化学(株)製、イソミリスチルアクリレート
HEMA:共栄社化学(株)製、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート
IB:共栄社化学(株)製、イソブチルメタクリレート
L1253:(株)クラレ製、水添ポリブタジエン変性メタクリレート
RC100C:(株)カネカ製、アクリル基含有テレケリックポリアクリレート

その他の原料
DAROCURE1173:チバ・ジャパン(株)製 光ラジカル開始剤
アエロジルR972:日本アエロジル(株)製 フュームドシリカ
KBM403:信越化学工業(株)製 エポキシシランカップリング剤
【0045】
実施例43〜68、比較例5〜6
(耐湿試験、耐熱試験)
実施例12〜29、実施例31、実施例34、実施例36、実施例38〜42、比較例3〜4において硬度の測定で用いた直径20mmの円盤3枚をそれそれ85℃85%RHに設定した恒温恒湿炉または150℃に設定した高温恒温炉中に7日間放置したのち、気泡が入らないように3枚重ね、25℃にてA硬度デュロメーターを用いて硬さを測定し表4にまとめて記載した。
【0046】
【表4】

【0047】
実施例69
(接着強さ)
幅25mm、長さ100mm、厚み2mmのエンジニアプラスチック試験片(シクロポリオレフィン、およびポリカーボネート)および幅25mm、長さ100mm、厚み5mmのガラス試験片に重ね合わせ幅10mmになるように実施例27の組成物を塗布し同材質同士を貼り合わせ、超高圧水銀灯を集光させたウシオ電機(株)製紫外線照射炉UV−4000を用い紫外線を積算光量3000mJ/cmになるように照射し硬化接着させた。この接着試験片を引張り試験器(インストロン)にて引張り速度50mm/minにて引っ張り試験を行い、引っ張り剪断接着強さを測定した。シクロポリポリオレフィンは1.5MPa、ポリカーボネートは2.0MPa、ガラスは4.0MPaの引っ張り剪断接着強さを示した。
【0048】
実施例1〜11から本発明の製造方法による水素添加ヒマシ油誘導(メタ)アクリレートオリゴマーは製造方法が簡便で、生成物の粘度が低く、作業性に優れることがわかる。比較例2から、従来方法の製造方法による水素添加ヒマシ油誘導アクリレートオリゴマーは粘度が製造方法が煩雑であれい、生成物の粘度が非常に高く、取り扱いが困難であることがわかる。
【0049】
実施例12〜23から、本発明の組成による硬化性樹脂組成物は、活性エネルギー線の照射により容易に硬化し、柔軟性のある硬化物を得ることができることがわかる。また水酸基当量とイソシアネート基当量の比が0.2未満の場合、良好なゲル状硬化物が得られるが、水酸基当量とイソシアネート基当量の比が0.2以上の場合、より強度に優れる硬化物が得られることがわかる。またイソシアネート基含有アクリル基含有化合物を用いた方が、イソシアネート基含有メタアクリル基含有化合物を用いるより酸素阻害性が少ない、空気中での表面硬化性に優れる組成物が得られることがわかる。また実施例23より異種のラジカル重合開始剤を使用してもよく、ラジカル重合開始剤の種類により表面硬化性やその他の特性を調節できることがわかる。
【0050】
実施例24〜42から本発明の組成物には本発明で製造したヒマシ油誘導(メタ)アクリレートオリゴマーの他に(メタ)アクリレート含有化合物を添加しても問題ないことがわかる。実施例24〜35から、分子内に環状脂肪族骨格を有する(メタ)アクリレート化合物を添加した場合、硬化物の伸びと引張強さの両方に優れた硬化物が得られることがわかる。実施例27からは(メタ)アクリレート化合物以外の添加剤や充填剤を使用しても問題ないことがわかり、組成物の粘度や作業性、硬化物の強度を向上できることがわかる。
【0051】
実施例43〜68から本発明の組成物から得られた硬化物は良好な耐湿耐久性、耐熱耐久性を有していることがわかる。
比較例1、比較例3、比較例5から、水素添加していないポリオールを用いたヒマシ油誘導(メタ)アクリレートオリゴマーの場合、生成物の粘度は低く、これを用いた硬化性組成物の初期特性は良好であるが、耐湿試験および耐熱試験性の硬さ変化が著しく大きく、著しく耐久性に劣っていることがわかる。また、実施例69から、本発明の組成物は良好な接着力を有し、種々の素材の接着剤として有効であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の硬化性樹脂組成物は簡便な方法により合成、調製することができ、紫外線などの活性エネルギー線の照射または加熱により硬化し、広い温度範囲での弾性および耐熱性、耐湿性に優れた硬化型樹脂組成物に関するものであり、接着剤、シール剤、塗料、コーティング材、目止め材、注型材、被覆材等として用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)(a)水素添加ヒマシ油および/または水素添加ヒマシ油系ポリオールと(b)分子中にイソシアネート基と(メタ)アクリル基を含有する化合物、を反応させて得られる水素添加ヒマシ油誘導アクリレートオリゴマーと
(2)ラジカル重合開始剤
を必須成分とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
(1)における(a)と(b)の割合が、(a)に含まれる水酸基の数に対する(b)に含まれるイソシアネート基の数の比が0.2以上である請求項1の硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
(1)(a)水素添加ヒマシ油および/または水素添加ヒマシ油系ポリオールと(b)分子中にイソシアネート基と(メタ)アクリル基を含有する化合物
を反応させて得られる水素添加ヒマシ油誘導アクリレートオリゴマーと
(2)ラジカル重合開始剤と
(3)環状脂肪族骨格を有する(メタ)アクリレートモノマーまたはオリゴマーの1種または1種以上の混合物からなる硬化性樹脂組成物。

【公開番号】特開2009−249613(P2009−249613A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−103311(P2008−103311)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【出願人】(000132404)株式会社スリーボンド (140)
【Fターム(参考)】