説明

硬化性樹脂組成物

【課題】 低温硬化性と耐熱性を有する硬化物を与える熱硬化性樹脂組成物及び該熱硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物を提供する。
【解決手段】特定のシアン酸エステル化合物、エポキシ樹脂、金属触媒および特定のアミン化合物を含んでなる熱硬化性樹脂組成物及び該熱硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な一液型硬化性樹脂組成物に関する。かかる硬化性樹脂組成物は、流動性、耐熱性及び貯蔵安定性に優れ、航空機用構造材料、鉄道車両用構造材料をはじめとして、ゴルフシャフト、釣り竿等のスポーツ用途、その他一般産業用途に好適に適用しうる繊維強化複合材料のマトリックスに該当する樹脂組成物を用いることができるほか、電気用絶縁材料、レジスト用樹脂、半導体封止用樹脂、プリント配線板用接着剤、電気用積層板及びプリプレグのマトリックス樹脂、ビルドアップ積層板材料、繊維強化プラスチック用樹脂、液晶表示パネルの封止用樹脂、液晶のカラーフィルター用樹脂、塗料、各種コーティング剤、接着剤等の広範な用途に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
近年、繊維強化複合材料の用途拡大に伴い、繊維強化複合材料には、高強度、高弾性率、高耐熱性、高耐湿性、難燃性等の物性が要求されてきている。繊維強化複合材料は様々な方法で製造されるが、強化繊維基材を配置した型内に液状の熱硬化性樹脂を注入し、加熱硬化して繊維強化複合材料を得るResin Transfer Molding(RTM)が生産性に優れた方法であり、とりわけ、型内を真空ポンプで減圧して熱硬化性樹脂を注入する方法はVacuum Assisted Resin Transfer Molding(VaRTM)と呼ばれ、低コストな成形方法として注目されている。
【0003】
一般に繊維強化複合材料に使用されるマトリックス樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ビスマレイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シアン酸エステル樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂が用途に応じて使用されているが、耐熱性、高弾性率、高耐湿性の点でシアン酸エステル−エポキシ樹脂が優れており、好ましく用いられている。以上の背景より、常温液状で、硬化すると高耐熱性、高弾性率、高耐湿性を有するシアン酸エステル−エポキシ樹脂組成物が望まれている。
【0004】
一般にシアン酸エステル−エポキシ樹脂を硬化させるためには、200℃以上の高温で硬化させる必要がある。(例えば特許文献1参照)このような高温の硬化条件は、航空機の翼や胴体、鉄道車輌等の大型複合構造物の成形においては、経済的に優れず、好ましくない。この改良として、ジシアンジアミド、ジヒドラジド等のアミン系硬化剤を使用する例も提案されているが(例えば特許文献2参照)活性水素を有する1級、2級アミンは、グリシジル基と常温でも反応してしまうため、これらの硬化剤を用いた場合には十分な貯蔵安定性を得ることができない。
【0005】
一方、特定の構造を有したアミン化合物、分子内に2個以上のアミノ基を有するポリアミン化合物、有機ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物を反応させて得られる潜在性硬化物を使用する例が提案されているが(例えば特許文献3参照)この場合は300℃の高温で硬化させた試料についてガラス転移点を測定しており、低温硬化と高耐熱性の両立については述べられていない。
【0006】
金属錯体触媒とビスフェノール化合物、イミダゾールの併用の組成が開示されているが(例えば特許文献4参照)この場合、使用するビスフェノールは硬化温度付近で溶融するもの、もしくは常温でエポキシ樹脂とシアネート樹脂に対して難溶であることが望ましいと記載されている。従って、組成物は均一な溶液とならず、RTM法に適するものとは言えない。また、硬化剤として金属キレート剤と酸無水物の併用組成が開示されているが(例えば特許文献5参照)さらなる硬化温度の低減、並びに硬化物の耐熱性向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平08−283409号公報
【特許文献2】特開2001−302767号公報
【特許文献3】特開2009−13205号公報
【特許文献4】特開平11−106481号公報
【特許文献5】特開2000−336245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、常温液状で、低温で硬化可能な硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、下記式(1)で表わされるシアン酸エステル、エポキシ樹脂、金属錯体触媒および共役酸のpKaが5.0以上12.0以下で窒素原子上に活性水素を持たないアミン化合物を含んでなる硬化性樹脂組成物が、優れた低温硬化性と耐熱性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0010】
1.(A)下記式(1)で表わされ、50℃において非結晶性液体であるシアン酸エステル100重量部、(B)エポキシ樹脂20〜250重量部、(C)金属錯体触媒および(D)共役酸のpKaが5.0以上12.0以下で窒素原子上に活性水素を持たないアミン化合物を含んでなる50℃において液状である硬化性樹脂組成物。
【化1】

(式中R1とR2は異なる基であって、R1は水素または炭素数1〜4のアルキル基、R2は炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
【0011】
2.(A)シアン酸エステルが1,1−ビス(4−シアナトフェニル)エタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)イソブタンおよび2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−4−メチルペンタンからなる群から選ばれる1種以上である上記第1項記載の硬化性樹脂組成物。
【0012】
3.(D)アミン化合物が、3級アミノ基を有し、常圧における沸点が120℃以上である、上記第1項または第2項に記載の硬化性樹脂組成物。
【0013】
4.(D)アミン化合物がピリジン骨格またはキノリン骨格を有し、常圧における沸点が120℃以上である、上記第1項または第2項に記載の硬化性樹脂組成物。
【0014】
5.(D)アミン化合物が2−ジメチルアミノエタノール、4−ジメチルアミノピリジンおよび2,6−ルチジンからなる群から選ばれた1種以上である、上記第1項または第2項に記載の硬化性樹脂組成物。
【0015】
6.(B)エポキシ樹脂が50℃において液状である、上記第1〜第5項に記載の硬化性樹脂組成物。
【0016】
7.(B)エポキシ樹脂がビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂およびジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂からなる群から選ばれた1種以上である、上記第1〜第5項に記載の硬化性樹脂組成物。
【0017】
8.(C)金属錯体触媒が金属カルボン酸塩または金属アセチルアセトナト錯体である、上記第1〜第7項に記載の硬化性樹脂組成物。
【0018】
9.(C)金属錯体触媒が(A)シアン酸エステル樹脂100重量部に対し0.01〜0.1重量部である、上記第1〜第8項に記載の硬化性樹脂組成物。
【0019】
10.(D)アミン化合物が(B)エポキシ樹脂100重量部に対し0.05〜1.0重量部である、上記第1〜第9項に記載の硬化性樹脂組成物。
【0020】
11.上記第1〜第10項に記載されている組成物を硬化させてなる硬化物。
【0021】
12.180℃以下の温度で熱硬化させてなる、上記第11項に記載の硬化物。
【0022】
13.160℃以下の温度で熱硬化させてなる、上記第11項に記載の硬化物。
【発明の効果】
【0023】
本発明の硬化性樹脂組成物は、常温で液状であり、低温硬化性と高い耐熱性を有するため、高機能性高分子材料として極めて有用であり、熱的、電気的および機械物性に優れた材料として電気絶縁材料、接着剤、積層材料、レジスト、ビルドアップ積層板材料のほか、土木・建築、電気・電子、自動車、鉄道、船舶、航空機、スポーツ用品、美術・工芸
などの分野における固定材、構造部材、補強剤、型どり材などに好ましく使用される。これらの中でも、耐候性、耐燃性および高度の機械強度が要求される航空機構造部材、衛星構造部材および鉄道車両構造部材、スポーツ用の繊維強化複合材料、すなわちゴルフクラブ用シャフト、釣り竿などの幅広い用途に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】1,1−ビス(4−シアナトフェニル)エタンの1H-NMRスペクトル
【図2】2,2−ビス(4−シアナトフェニル)ブタンの1H-NMRスペクトル
【図3】1,1−ビス(4−シアナトフェニル)イソブタンの1H-NMRスペクトル
【図4】2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−4−メチルペンタンの1H-NMRスペクトル
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、(A)式(1)で表わされ、50℃において非結晶性液体であるシアン酸エステル、(B)エポキシ樹脂、(C)金属錯体触媒および(D)共役酸のpKaが5.0以上12.0以下で窒素原子上に活性水素を持たないアミン化合物を含んでなる50℃において液状である硬化性樹脂組成物である。この組成物は、(A)式(1)に示すシアン酸エステル化合物100重量部に対し、(B)エポキシ樹脂が40〜250重量部、(C)金属錯体触媒、(D)共役酸のpKaが5.0以上12.0以下で、窒素原子上に活性水素を持たないアミン化合物を含むことを必須とするが、常温で液状であれば(A)成分以外のシアン酸エステル化合物、オキセタン樹脂、および/または重合可能な不飽和基を有する化合物等を添加することも可能である。
【0026】
本発明で使用する式(1)で表されるシアン酸エステルは、R1とR2が異なる基であって、R1は水素または炭素数1〜4のアルキル基を、R2は炭素数1〜4のアルキル基を意味する。これらのシアン酸エステルは50℃において低粘度の非結晶性液体であり、その粘度は25℃において20〜10000cPである。式(1)のシアン酸エステルの例としては、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)エタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)イソブタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)−2,2−ジメチルプロパン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−3−メチルペンタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−3,3−ジメチルブタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)ヘキサン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)ヘプタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)オクタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2−メチルペンタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2−メチルヘキサン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2,2−ジメチルペンタン、4,4−ビス(4−シアナトフェニル)−3−メチルヘプタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2−メチルヘプタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2,2−ジメチルヘキサン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2,4−ジメチルヘキサン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2,2,4−トリメチルペンタンが挙げられ、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)エタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)イソブタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−3,3−ジメチルブタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)ヘキサン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2−メチルペンタンが好ましく、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)エタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)イソブタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−4−メチルペンタンが更に好ましい。
【0027】
(A)成分のシアン酸エステル化合物は、対応する構造を有したフェノールをシアン酸エステルに誘導することで得ることができる。フェノールをシアネート化する方法としては、IAN HAMERTON,“Chemistry and Technology of Cyanate Ester Resins”,BLACKIE ACADEMIC & PROFESSIONALには、一般的なシアネート化合物の合成法が記載されている。また、米国特許USP3553244号には溶媒中、塩基の存在下ハロゲン化シアンが常に塩基より過剰に存在するようにして反応させる方法が提供されている特開平7−53497号公報では、塩基として3級アミンを用い、これを塩化シアンよりも過剰に用いながら合成する方法が、特表2000−501138号公報には連続プラグフロー方式で、トリアルキルアミンとハロゲン化シアンを反応させる方法が、特表2001−504835号公報には、フェノールとハロゲン化シアンをtert−アミンの存在化非水溶液中反応させる際、副生するtert−アンモニウムハライドをカチオン及びアニオン交換対で処理する方法が開示されている。また、特許2991054号にはフェノール化合物を水と分液可能な溶媒の存在下、3級アミンとハロゲン化シアンを同時に添加し反応させた後、水洗分液し、得られた溶液から2級もしくは3級アルコール類、炭化水素の貧溶媒を用いて沈殿精製する方法が、また、特開2007−277102公報には、ナフトール類、ハロゲン化シアン、及び3級アミンを、水と有機溶媒の二相系溶媒中、酸性条件下で反応させることを特徴とする、シアン酸エステルの製造方法が記載されている。
【0028】
通常、シアン酸エステルの合成手順として、有機溶媒中、フェノール化合物を溶解させ、3級アミンなどの塩基性化合物を添加した後、過剰のハロゲン化シアンと反応させていく。この方式では、常にハロゲン化シアンが過剰に存在するため、フェノラートアニオンがシアン酸エステルと反応して生成するイミドカーボネートを抑制できるとされている。ただし、過剰のハロゲン化シアンと3級アミンが反応して、ジアルキルシアナミドを生成するため、反応温度を10℃以下、好ましくは0℃以下、さらに好ましくは−10℃以下に保つ必要がある。
【0029】
上記の方法以外にも、反応における注下の順序などは任意に選択することができる。例えば、フェノール化合物を溶媒に溶解させた後、3級アミンなどの塩基性化合物とハロゲン化シアンもしくはその溶液を交互に滴下していっても良いし、同時に供給しても良い。また、フェノール化合物と3級アミンなどの塩基性化合物の混合溶液とハロゲン化シアンもしくはその溶液を同時に供給することもできる。いずれの場合も大きな発熱反応であるが、副反応を抑制するなどの目的から、反応温度を10℃以下、好ましくは0℃以下、さらに好ましくは−10℃以下に保つ必要がある。
【0030】
反応形態はいずれの形態を用いることができ、回分式で行ってもよいし、半回分式で行っても、連続流通形式で行ってもよい。
【0031】
フェノール化合物のフェノール性水酸基に対して3級アミンなどの塩基性化合物及びハロゲン化シアンは0.1〜8倍モル、好ましくは1倍〜5倍モル加え、反応させる。特にヒドロキシル基のオルト位に立体障害のある置換基を有する場合は、置換基が存在しない場合に比べ、3級アミンなどの塩基性化合物及びハロゲン化シアン必要量が増加する。用いるハロゲン化シアンとしては、塩化シアン、臭化シアンなどを用いることができる。用いる塩基性化合物としては、有機、無機塩基いずれでもかまわないが、有機溶媒を使用する場合、溶解度の高い、有機塩基が好ましい。中でも副反応の少ない3級アミンが好ましい。3級アミンとしては、アルキルアミン、アリールアミン、シクロアルキルアミンいずれでもよく、具体的にはトリメチルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、メチルジブチルアミン、ジノニルメチルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジエチルアニリン、ピリジン、キノリンなどが挙げられる。
【0032】
反応に用いる溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤、ジエチルエーテル、ジメチルセルソルブ、ジグライム、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、テトラエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロパノール、メチルソルソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリドン、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶剤、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶剤、ニトロメタン、ニトロベンゼンなどのニトロ系溶剤、酢酸エチル、安息香酸エチルなどのエステル系溶剤、シクロヘキサンなどの炭化水素系溶剤などいずれも用いることができ、反応基質に合わせて、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
反応後の後処理としては、通常、副生した3級アミンなどの塩基性化合物の塩化水素塩をろ過するか、または、水洗により除去する。一方、水と混和する溶媒を用いた時は、得られた反応液を水に注下した後に水と混和しない有機溶剤で抽出操作を実施する、もしくは析出した結晶を濾取することで目的物を得ることができる。また、洗浄工程の際に過剰のアミン類を除去するため、うすい塩酸などの酸性水溶液を用いる方法も採られる。充分に洗浄された反応液から水分を除去するために、硫酸ナトリウムや硫酸マグネシウムなどの一般的な方法を用いて乾燥操作をすることができる。
【0034】
それらの操作の後、濃縮、場合によっては蒸留精製を施す。濃縮、蒸留精製の際には、シアン酸エステル化合物が不安定な構造であることから、150℃以下に抑制しながら、減圧する方法が採られる。
【0035】
(B)成分のエポキシ樹脂は、一般に公知のものが使用できる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、キシレンノボラック型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキルノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は1種または2種以上混合して用いることができる。
【0036】
これらのエポキシ樹脂は、固体であっても、他のシアン酸エステルやエポキシ樹脂を併用することにより、50℃で液状の樹脂組成物にすることができるものであれば使用可能であるが、50℃で液状のエポキシ樹脂である事が好ましく、常温で液状のエポキシ樹脂であればさらに好ましい。常温で液状のエポキシ樹脂の具体例を述べると、ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては「エピコート828(ジャパンエポキシレジン(株)製)」、「エピコート815(同)」、「エピクロン840(DIC(株)製)等が、ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては「エピコート806(ジャパンエポキシレジン(株)製)」、「エピコート807(同)」、「エピクロンS−129(DIC(株)製)」、「エピクロン830(同)」等が、フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては「エピコート152(ジャパンエポキシレジン(株)製)」等が、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂としては「エピクロンHP−4032(DIC(株)製)」等が挙げられる。
【0037】
(A)成分と(B)成分の比は(A)成分100重量部に対し(B)成分が20〜250重量部であることが好ましい。シアン酸エステル、エポキシ樹脂は各々単独で反応し硬化するが、シアン酸エステル単独の硬化物は高弾性のため強靭性が不足し、エポキシ樹脂単独の硬化物では、耐熱性が不足する。しかし、シアン酸エステルとエポキシ樹脂を併用すると、これらの競争反応が並行して起こり、オキサゾリジン環を形成することができ、強靭性と耐熱性の両立が可能になる。
【0038】
(C)成分の金属錯体触媒としては、一般に公知のものが使用できる。例えばコバルト、亜鉛、クロム、銅、鉄、マンガン、ニッケル、チタンなどの金属ナフテン酸塩、アセチルアセトナート、又その誘導体の塩、各種カルボン酸塩アルコキシド等の有機酸塩があり、これらを単独でも混合して使用しても良い。また、(C)成分の金属錯体触媒の使用量は(A)成分のシアン酸エステル100重量部に対し0.01重量部から0.1重量部である事が好ましい。0.01重量部より少ないと反応促進効果が低く、硬化時間が長くなる場合がある。一方、0.1重量部を超えると製品としての可使時間や保管可使時間が損なわれる場合がある。以上の理由により(C)成分の金属錯体触媒の使用量は、(A)成分のシアン酸エステル100重量部に対し0.015重量部から0.08重量部がより好ましく、0.02重量部から0.075重量部がさらに好ましい。
【0039】
(D)成分の窒素原子上に活性水素を持たないアミン化合物は、共役酸のpKaが5.0以上12.0以下であることが好ましい。5.0より低いと十分な触媒作用が得られず、低温硬化性が損なわれ、硬化物も十分な物性を得ることが困難である。また、12.0より高いと反応性が高すぎて常温で一部硬化が進行してしまい、貯蔵安定性が確保できない。以上の理由より、共役酸のpKaは7.0以上12.0以下がより好ましく、8.0以上11.0以下がさらに好ましい。また、(D)成分の窒素原子上に活性水素を持たないアミン化合物の使用量は(B)成分のエポキシ樹脂100重量部に対し0.05重量部から1.0重量部である事が好ましい。0.05重量部より少ないと反応促進効果が低く、硬化時間が長くなる場合がある。一方、1.0重量部を超えると製品としての可使時間や保管可使時間が損なわれる場合がある。以上の理由により(D)成分の金属錯体触媒の使用量は、(B)成分のエポキシ樹脂100重量部に対し0.15重量部から0.8重量部がより好ましく、0.2重量部から0.75重量部がさらに好ましい。
【0040】
(D)成分の窒素原子上に活性水素を持たないアミン化合物は、真空脱泡工程ならびに硬化中の逸散を制御するためにも、高沸点であるものが望ましい。具体的には(D)成分の窒素原子上に活性水素を持たないアミン化合物の沸点は常圧で120℃以上であることが好ましく、130℃以上であることがより望ましく、150℃以上であることがさらに望ましい。(D)成分の窒素原子上に活性水素を持たないアミン化合物としては、ある程度の極性を有した化合物のほうが樹脂との相容性が高まり、反応促進効果が高まるため、優れるといえる。
【0041】
(D)成分の窒素原子上に活性水素を持たないアミン化合物としては、窒素原子上に活性水素を有さないものであれば、脂肪族アミン、芳香族アミンのいずれも使用できる。例えば、N,N-ジメチルドデシルアミン、N,N−ジメチルヘキサデシルアミン、N,N−ジメチルオクタデシルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルシクロヘペンチルアミン、N,N−ジシクロヘキシルメチルアミン、2−(ジイソプロピルアミノ)エタノール、2−ジメチルアミノエタノール、3−ジメチルアミノ−1−プロパノール4-ジメチルアミノ−1−ブタノール、6−ジメチルアミノ−1−ヘキサノール、8−ジメチルアミノ−1−オクタノール、N−tert−ブチルジエタノールアミン、2−ジブチルアミノエタノール、2−(2−ジエチルアミノエトキシ)エタノール、2−(ジエチルアミノ)エタノール、3−(ジエチルアミノ)−1−プロパノール、2−[2−ジメチルアミノ]エトキシ]エタノール、N,N−ジメチル−n−オクチルアミン、N,N−ジメチルデシルアミン、N,N−ジメチルテトラデシルアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、1−メチル−3−ピペリジンメタノール、1−メチル−2−ピペリジンメタノール、4−ヒドロキシ−1−メチルピペリジン、1−ピペリジンエタノール、1−ピペリジンペンタノール、N−ブチルジエタノールアミン、ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタキス(2−ヒドロキシプロピル)ジエチレントリアミン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル1,6−ジアミノヘキサン、N,N,N’,N’−テトラメチル1,4−ジアミノブタン、2,6,10−トリメチル−2,6,10−トリアザウンデカン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)ジスルフィド、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、2−ジメチルアミノエタンチオール、2−ジエチルアミノエタンチオール、キヌクリジン、3−キヌクリジノール、3−キヌクリジノン、トリエタノールアミン、8−メルカプトキノリン、6,6’−ジメチル−2,2’−ビピリジル、4,4’−ジメチル−2,2’−ビピリジル、シンコニジン、4−ジメチルアミノピリジン、2−ジメチルアミノピリジン、4,4’−ジピリジルスルフィド、ジ−2−ピリジルケトキシム、2,6−ルチジン、2,4,6−コリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、4−ピロリジノピリジン、4−(4−ピリジル)モルホリン等が挙げられ、2−(ジイソプロピルアミノ)エタノール、2−ジメチルアミノエタノール、3−ジメチルアミノ−1−プロパノール、4-ジメチルアミノ−1−ブタノール、N−tert−ブチルジエタノールアミン、2−ジブチルアミノエタノール、2−(2−ジエチルアミノエトキシ)エタノール、2−(ジエチルアミノ)エタノール、3−(ジエチルアミノ)−1−プロパノール、2−[2−ジメチルアミノ]エトキシ]エタノール、N,N−ジメチル−n−オクチルアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、1−メチル−3−ピペリジンメタノール、1−メチル−2−ピペリジンメタノール、4−ヒドロキシ−1−メチルピペリジン、1−ピペリジンエタノール、1−ピペリジンペンタノール、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、2−ジメチルアミノエタンチオール、2−ジエチルアミノエタンチオール、キヌクリジン、3−キヌクリジノール、3−キヌクリジノン、トリエタノールアミン、シンコニジン、4−ジメチルアミノピリジン、2−ジメチルアミノピリジン、2,6−ルチジン、2,4,6−コリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、4−ピロリジノピリジン、4−(4−ピリジル)モルホリンが好ましく、2−ジメチルアミノエタノール、3−ジメチルアミノ−1−プロパノール、N−tert−ブチルジエタノールアミン、2−(ジエチルアミノ)エタノール、3−(ジエチルアミノ)−1−プロパノール、1−メチル−3−ピペリジンメタノール、1−メチル−2−ピペリジンメタノール、4−ヒドロキシ−1−メチルピペリジン、1−ピペリジンエタノール、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、2−ジメチルアミノエタンチオール、キヌクリジン、3−キヌクリジノール、3−キヌクリジノン、シンコニジン、4−ジメチルアミノピリジン、2−ジメチルアミノピリジン、2,6−ルチジン、2,4,6−コリジン、4−(4−ピリジル)モルホリンがより好ましく、2−ジメチルアミノエタノール、4−ジメチルアミノピリジン、2,6−ルチジンがさらに好ましい。
【0042】
(A)成分以外のシアン酸エステル化合物としては、一般に公知のものが使用できる。例えば、ビスフェノールAジシアネート、ビスフェノールFジシアネート、ビスフェノールPジシアネート、ビスフェノールZジシアネート、4,4’−(α−メチルベンジリデン)ビスフェノールジシアネート、ビスフェノールフルオレンジシアネート、フェノールノボラック型シアネート、クレゾールノボラック型シアネート、ジシクロペンタジエンノボラック型シアネート、テトラメチルビスフェノールFジシアネート、ビフェノールジシアネート、4,4’−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノールジシアネート、ビス(4−シアナトフェニル)エーテル、ビス(4−シアナトフェニル)チオエーテル等が挙げられる。これらのシアン酸エステル化合物は1種または2種以上混合して用いることができる。
【0043】
オキセタン樹脂としては、一般に公知のものが使用できる。例えば、オキセタン、2−メチルオキセタン、2,2−ジメチルオキセタン、3−メチルオキセタン、3,3−ジメチルオキセタン等のアルキルオキセタン、3−メチル−3−メトキシメチルオキセタン、3,3’ −ジ(トリフルオロメチル)パーフルオキセタン、2−クロロメチルオキセタン、3,3−ビス(クロロメチル)オキセタン、OXT−101(東亞合成株式会社製商品名)、OXT−121(東亞合成株式会社製商品名)等が挙げられる。これらのオキセタン樹脂は1種または2種以上混合して用いることができる。
【0044】
重合可能な不飽和基を有する化合物としては、一般に公知のものが使用できる。例えば、エチレン、プロピレン、スチレン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル等のビニル化合物、メチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の1価または多価アルコールの(メタ)アクリレート類、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート類、ベンゾシクロブテン樹脂、(ビス)マレイミド樹脂等が挙げられる。これらの不飽和基を有する化合物は1種または2種以上混合して用いることができる。
【0045】
重合可能な不飽和基を有する化合物を使用する際には、必要に応じて公知の重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、一般に公知のものが使用できる。例えば、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシカーボネート等の過酸化物、またはアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。
【0046】
前述の方法で得られた本発明の硬化性樹脂組成物は、熱によって硬化させることができる。硬化温度は、60℃以上300℃以下の範囲内が好ましい。硬化温度が低すぎると硬化が進まず、高すぎると硬化物そのものの劣化や、接続する他部材に熱影響を与えうる。さらに、航空機の翼や胴体、鉄道車輌等の大型複合構造物の成形に適用する際には、硬化温度はより低い方が好ましい。以上の理由より80℃以上200℃以下の範囲内がより好ましく、100℃以上180℃以下の範囲内がさらに好ましく、120℃以上160℃以下の範囲内がより一層好ましい。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により特に限定されるものではない。
【0048】
(I)シアン酸エステルの合成
合成例1
1,1−ビス(4−シアナトフェニル)エタンの合成
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(和光純薬工業株式会社製)100mmolおよびトリエチルアミン 280mmolをテトラヒドロフラン100mLに溶解させた( 溶液1) 。300mmol の塩化シアンの塩化メチレン溶液46.2 gとテトラヒドロフラン100mLを混合させた液に−10 ℃ で溶液1を1.5 時間かけて滴下した。反応の完結が確認されたところで反応液を濃縮し、得られた粗製物を塩化メチレン300mLに溶解した。これを1M塩酸、蒸留水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。塩化メチレンを留去することで、目的とする1,1−ビス(4−シアナトフェニル)エタンを23.1g得た。得られたシアン酸エステルは50℃において液状であった。NMRスペクトルにて構造を同定した。
1H−NMR:(270MHz、クロロホルム−d、内部標準TMS)
δ(ppm)
1.62 (d,3H)、4.22(q,1H)、7.42(complex,8H)
【0049】
合成例2
2,2−ビス(4−シアナトフェニル)ブタンの合成
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンの代わりに2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン(東京化成工業株式会社製)を用いた以外は合成例1と同様に実施し、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)ブタンを29.4g得た。得られたシアン酸エステルは50℃において液状であった。NMRスペクトルにて構造を同定した。
1H−NMR:(270MHz、クロロホルム−d、内部標準TMS)
δ(ppm)
0.73 (t,3H)、1.61(s、3H)、2.14(q,2H)、7.22(complex,8H)
【0050】
合成例3
1,1−ビス(4−シアナトフェニル)イソブタンの合成
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンの代わりに1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)イソブタン(和光純薬工業株式会社製)を用いた以外は合成例1と同様に実施し、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)イソブタンを28.3g得た。得られたシアン酸エステルは50℃において液状であった。NMRスペクトルにて構造を同定した。
1H−NMR:(270MHz、クロロホルム−d、内部標準TMS)
δ(ppm)
0.88 (d,6H)、2.41(m,1H)、3.51(d,1H)、7.20−7.35(complex,8H)
【0051】
合成例4
2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−4−メチルペンタンの合成
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンの代わりに2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン(東京化成工業株式会社製)を用いた以外は合成例1と同様に実施し、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−4−メチルペンタンを31.7g得た。得られたシアン酸エステルは50℃において液状であった。NMRスペクトルにて構造を同定した。
1H−NMR:(270MHz、クロロホルム−d、内部標準TMS)
δ(ppm)
0.73 (d,6H)、1.53(m,1H)、2.05(s,3H)、7.18−7.26(complex,8H)
【0052】
(II)組成物の調製
表に示した各実施例、比較例の配合割合(重量部)で各原料を配合し、ミキサーで均一に混合した後、真空脱泡し、組成物を得た。得られた組成物について、50℃における性状を観察した後、組成物をガラス板(120mm × 120mm × 5mmt)、ポリイミドフィルム(カプトン200H:東レデュポン株式会社製)、フッ素ゴム製Oリング(S−100:株式会社森清化工製)で作製した型に注型し、オーブンで150℃、3時間加熱して硬化させた。冷却後、ポリイミドフィルムを研磨により除去して、硬化物を得た。
【0053】
(III)組成物の評価
(1)性状:上記方法で調製した硬化前の組成物について、50℃において不溶分の有無、硬化の進行を目視で確認した。均一の澄明な液体であることが望ましい。
(2)硬化性:上記方法でえられた硬化物について、フーリエ変換赤外分光分析装置(サーモサイエンティフィック社製、FT−IR Nicolet 6700)を用い、ATR法にて硬化物の赤外吸収スペクトルを測定した。920cm−1ならびに2250cm−1の吸収の残存について、どちらも認められなかった(○)、何れかが認められた(△)、どちらも認められた(×)、と示した。各波数における吸収はそれぞれグリシジル基、シアナト基に対応しており、該当する吸収が確認できないものが望ましい。
(3)ガラス転移温度(Tg):前述の評価で硬化が完結した硬化物について、JIS−K7121に準拠し、示差走査熱量計(株式会社島津製作所製、DSC−50)を用い、窒素気流下、昇温速度10℃/分で200℃まで昇温、昇温後200℃で10分間保持した後、冷却し、昇温速度10℃/分で再昇温した時に示差走査熱量測定を実施し、その際の中間点ガラス転移温度をガラス転位温度とした。ガラス転移温度が高いほど、耐熱性に優れるといえる。
【0054】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1)で表わされ、50℃において非結晶性液体であるシアン酸エステル100重量部、(B)エポキシ樹脂20〜250重量部、(C)金属錯体触媒および(D)共役酸のpKaが5.0以上12.0以下で窒素原子上に活性水素を持たないアミン化合物を含んでなる50℃にて液状である硬化性樹脂組成物。
【化1】

式中R1とR2は異なる基であって、R1は水素または炭素数1〜4のアルキル基、R2は炭素数1〜4のアルキル基を示す。
【請求項2】
(A)シアン酸エステルが1,1−ビス(4−シアナトフェニル)エタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)イソブタンおよび2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−4−メチルペンタンからなる群から選ばれる1種以上である請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
(D)アミン化合物が、3級アミノ基を有し、常圧における沸点が120℃以上である、請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
(D)アミン化合物がピリジン骨格またはキノリン骨格を有し、常圧における沸点が120℃以上である、請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
(D)アミン化合物が2−ジメチルアミノエタノール、4−ジメチルアミノピリジンおよび2,6−ルチジンからなる群から選ばれた1種以上である、請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
(B)エポキシ樹脂が50℃において液状である請求項1〜5のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
(B)エポキシ樹脂がビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂およびジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂からなる群から選ばれた1種以上である、請求項1〜5のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
(C)金属錯体触媒が金属カルボン酸塩または金属アセチルアセトナト錯体である、請求項1〜7のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
(C)金属錯体触媒が(A)シアン酸エステル樹脂100重量部に対し0.01〜0.1重量部である、請求項1〜8のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
(D)アミン化合物が(B)エポキシ樹脂100重量部に対し0.05〜1.0重量部である請求項1〜9のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載されている硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
【請求項12】
180℃以下の温度で熱硬化させてなる、請求項11に記載の硬化物。
【請求項13】
160℃以下の温度で熱硬化させてなる、請求項11に記載の硬化物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−254838(P2010−254838A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107692(P2009−107692)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】