説明

硬化性組成物、その硬化物、液晶表示素子用シール剤、液晶表示素子、及びビニル基含有エポキシ樹脂

【課題】 液晶滴下工法によって液晶表示素子を製造する場合に、液晶材料を汚染することなく、液晶材料の配向乱れ、色むら等の表示不良を防止できる他、基板との接着性を良好に維持できる液晶表示素子用のシール剤、これに適する硬化性組成物、その硬化物、及び前記性能を具備した液晶表示素子、並びに、前記シール剤にこのような性能を付与し得るビニル基含有エポキシ樹脂を提供すること。
【解決手段】 エポキシ基のβ位に炭素原子数1〜4のアルキル基を有するビスフェノール型エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸とを反応させて得られる、下記一般式(1)
【化1】


(式中、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基、R2は水素原子またはメチル基を表す。)で示される官能基とグリシジルオキシ基とを分子構造中に有するビニル基含有エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂用硬化剤(B)、及び光重合開始剤(C)を必須成分とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低粘度で作業性に優れ液晶汚染性が極めて少なく、高品位な液晶表示素子を製造することができる液晶表示素子用シール剤に適する硬化性組成物、その硬化物、該硬化性組成物からなる液晶表示素子用シール剤、液晶表示素子、及びビニル基含有エポキシ樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示素子の大型化に伴い、液晶表示素子の製造技術として、より量産性の高い液晶滴下工法が広く用いられている。かかる液晶滴下工法は一方の基板の外周部全周にシール材を切れ目なく塗布し、当該基板又は他方の基板上に規定量の液晶を滴下し、続いて真空中で両基板を貼り合わせた後、大気圧中に戻すことにより液晶を充填し、その後シール材を硬化させる方法であり、基板貼り合わせと液晶充填とをほぼ同時に完了させることができる為、液晶表示装置の製造工程が大幅に簡略化され生産性を向上できるという利点を有する。
【0003】
この液晶滴下工法におけるシール剤の硬化方法は、一般に熱硬化法、光硬化法、光・熱併用硬化法の3つの方法が知られている。このうち、熱硬化法では、例えば加熱によって生じる液晶の膨張により、低粘度化した硬化途中のシール剤から液晶材料が漏洩する他、硬化時のシール剤自体の収縮によって基板のアライメントにずれが生じる等の不具合が起こり得る。また、熱硬化法における硬化反応は通常150℃程度に加熱するため基板の反りを生じるなどの問題がある。一方、光硬化法では、光重合開始剤の種類により、カチオン重合型とラジカル重合型の2種類が挙げられるが、カチオン重合型のシール剤を用いる場合、光硬化の際にイオンが発生するため、接触状態の液晶にイオン成分が溶出し、液晶の比抵抗値を低下させるという問題がある。また、ラジカル重合型のシール剤を用いる場合、光硬化時の硬化収縮が大きいために接着強度が十分発現されず、耐湿性に劣るという問題がある他、液晶表示素子のアレイ基板のメタル配線部分やCF基板のブラックマトリックス部分等、シール剤に光が当たらない遮光部分が生じるため、当該遮光部分が未硬化となってしまうという問題もある。そこで、これらの問題を改善する方法として、熱硬化させた後に光照射によって硬化させる光・熱併用硬化法が広く用いられている。
【0004】
かかる光・熱併用硬化法に用いられる硬化性樹脂として、従来より、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエポキシ基の一部をアクリル酸で変性して、エポキシ基を残存させた部分変性ビニルエステル樹脂が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、前記したエポキシ基を残存させた部分変性ビニルエステル樹脂は、通常、高粘度であるため作業性に劣り、液晶滴下工法の長所である生産性を犠牲にしてしまう為、シール剤自体の低粘度化を目的として低粘度のエポキシ樹脂や低粘度のアクリル酸エステル類を多量に混合しなければならなかった。ところが、液晶滴下工法においてはシール剤が未硬化の状態で液晶材料に接触するためにシール剤中に低粘度のエポキシ樹脂や低粘度のアクリル酸エステル類が多量に存在すると、これらが容易に液晶材料中に溶解して液晶材料を汚染し、配向乱れを引き起こして色むらや等の表示不良を引き起こしたり、また、基板との接着性が低下して高温高湿下で液晶材料の配向乱れを引き起こすものであった。
【0006】
【特許文献1】特開平09−5759号公報
【特許文献2】特開2005−232369号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明が解決しようとする課題は、液晶滴下工法によって液晶表示素子を製造する場合に、液晶材料を汚染することなく、液晶材料の配向乱れ、色むら等の表示不良を防止できる他、基板との接着性を良好に維持できる液晶表示素子用のシール剤、これに適する硬化性組成物、その硬化物、及び前記性能を具備した液晶表示素子、並びに、前記シール剤にこのような性能を付与し得るビニル基含有エポキシ樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、エポキシ基のβ−位に炭素原子数1〜4のアルキル基を置換基として有するエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、不飽和一塩基酸を反応させて得られるエポキシ基とアクリロイル基とを含有する樹脂を用いた場合、該樹脂の粘度が飛躍的に低くなって前記した課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、下記一般式(1)
【0010】
【化1】

(式中、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基、R2は水素原子またはメチル基を表す。)で示される官能基とグリシジルオキシ基とを分子構造中に有するビニル基含有エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂用硬化剤(B)、及び光重合開始剤(C)を必須成分とすることを特徴とする硬化性組成物に関する。
【0011】
本発明は、更に、硬化性組成物を硬化させてなる硬化物に関する。
【0012】
本発明は、更に、硬化性組成物からなることを特徴とする液晶表示素子用シール剤に関する。
【0013】
本発明は、更に、2枚の電極基板付き透明基板、シール剤、及び液晶材料を用い液晶滴下工法によって製造される液晶表示素子であって、前記シール剤として前記請求項1〜3の硬化性組成物を用いることを特徴とする液晶表示素子に関する。
【0014】
本発明は、更に、下記一般式(3)
【0015】
【化2】

(式中、R〜R10はそれぞれ独立的に炭素原子数1〜4のアルキル基、臭素原子、塩素原子、又は水素原子を表し、Xはメチレン基、イソプロピリデン基、エチリデン基、1,1−シクロヘキセン基、フェニルメチルメチレン基、又はスルホニル基を表す。)
で表されるフェノキシ構造を繰り返し単位としており、
分子末端に下記一般式(1)
【0016】
【化3】

(式中、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基、R2は水素原子またはメチル基を表す。)で示される官能基(a1)と、
下記一般式(2)
【0017】
【化4】


(式中、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基)で示されるグリシジルオキシ基(a2)とを、前記官能基(a1)と前記官能基(a2)との存在比率が、モル比で、(a1)/(a2)=(20〜80)/(80〜20)となる割合で有するものであることを特徴とするビニル基含有エポキシ樹脂に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、液晶滴下工法によって液晶表示素子を製造する場合に、液晶材料を汚染することなく、液晶材料の配向乱れ、色むら等の表示不良を防止できる他、基板との接着性を良好に維持できる液晶表示素子用のシール剤、これに適する硬化性組成物、その硬化物、及び前記性能を具備した液晶表示素子、並びに、前記シール剤にこのような性能を付与し得るビニル基含有エポキシ樹脂を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いるビニル基含有エポキシ樹脂(A)は、その分子構造内に下記一般式(1)
【0020】
【化5】

(式中、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基、R2は水素原子またはメチル基を表す。)で示される官能基とグリシジルオキシ基とを有することを特徴としている。
【0021】
即ち、当該ビニル基含有エポキシ樹脂(A)は、その分子構造内に前記一般式(1)で表される官能基とグリシジルオキシ基とを併せ持った光・熱併用型の硬化性樹脂であり、エポキシ樹脂用硬化剤(B)を用いることで熱硬化すると共に、光重合開始剤(C)を用いることで光照射によって硬化する。そして、本発明は前記一般式(1)で表される官能基中に存在する水酸基が3級水酸基であることから、ビニル基含有エポキシ樹脂(A)自体の増粘、高分子量化が抑制されて、光・熱併用型の硬化性樹脂でありながら粘度の低いものとなり、液晶表示用のシール剤を調整する際、液晶材料の汚染の原因となる低分子量成分の配合を低減乃至不要とできるものとなる。
【0022】
この点につき詳述すれば、従来のエポキシ基のβ−位にアルキル基を有しないエポキシ樹脂のグリシジルオキシ基の一部をアクリル酸で変性した場合、グリシジルオキシ基とアクリル酸とが反応して形成される構造は、下記に示すとおり、2級の水酸基又は1級水酸基を有しており、
【0023】
【化6】

当該2級水酸基又は1級水酸基が更に下記に示すようにα−グリコール基を生成する。
【0024】
【化7】

【0025】
【化8】

【0026】
そして、前記α−グリコール基は高分子量化反応を引き起こすため、最終的に得られる部分変性ビニルエステル樹脂は高粘度化し、更にはゲル化を招くものとなる。
【0027】
【化9】

【0028】
これに対して、前記ビニル基含有エポキシ樹脂(A)は、下記一般式(1)
【0029】
【化10】

(式中、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基、R2は水素原子またはメチル基を表す。)の中に存在する水酸基が3級水酸基であることから、α−グリコール基の生成が防止されて、ゲル化や高分子量体の生成が良好に抑制されたものとなる。
【0030】
ここで、前記一般式(1)においてRは炭素原子数1〜4のアルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基が挙げられる。一方、前記一般式(1)においてRは、前記した通り、水素原子またはメチル基である。
【0031】
また、前記ビニル基含有エポキシ樹脂(A)中に存在するグリシジルオキシ基は、例えば、β−アルキルグリシジルオキシ基や、β−アルキル基非含有のグリシジルオキシ基が挙げられるが、とりわけ本発明においては、前記エポキシ基を含む構造部位として下記一般式(2)
【0032】
【化11】

【0033】
〔式中、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基を表す。〕
で表されるβ−アルキルグリシジルオキシ基を有するものがエポキシ樹脂(A)の粘度低減の効果が顕著となる点から好ましい。ここで、前記一般式(2)において、Rは一般式(1)におけるものと同義であり、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基が挙げられる。
【0034】
従って、前記した一般式(1)で表される官能基とグリシジルオキシ基とを分子構造中に有するビニル基含有エポキシ樹脂(A)は、下記に示す通り、その前駆体となるエポキシ樹脂として前記一般式(2)で表されるグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂(以下、これを「エポキシ樹脂(a)」と略記する。)を用い、不飽和一塩基酸と反応させることによりによって、容易に得ることができる。
【0035】
【化12】

【0036】
従って、前記ビニル基含有エポキシ樹脂(A)の前駆体となるエポキシ樹脂は、前記一般式(2)で表されるβ−アルキルグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂(a)が好ましく、具体的には、フェノール系化合物(x1)と、β−位に炭素原子数1〜4のアルキル基を有するアルキル置換エピハロヒドリン(x2)との反応によって得られるものが好ましい。
【0037】
ここで用いるフェノール系化合物(x1)は、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール等のジヒドロキシベンゼン類;1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、及びビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等のビスフェノール類;4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル等のビフェノール類;ビス(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)メタン、
ビス(2−ヒドロキシ−1−ナフチル)プロパン等のビスナフトール類;フェノール/ホルムアルデヒド重縮合物、オルソクレゾール/ホルムアルデヒド重縮合物、フェノール/アセトアルデヒド重縮合物、オルソクレゾール/アセトアルデヒド重縮合物、フェノール/サリチルアルデヒド重縮合物、オルソクレゾール/サリチルアルデヒド重縮合物等のフェノール類/アルデヒド類重縮合物;1−ナフトール/ホルムアルデヒド重縮合物、2−ナフトール/ホルムアルデヒド重縮合物、1−ナフトール/アセトアルデヒド重縮合物、2−ナフトール/アセトアルデヒド重縮合物、1−ナフトール/サリチルアルデヒド重縮合物、2−ナフトール/サリチルアルデヒド重縮合物等のナフトール類/アルデヒド類重縮合物;フェノール/ジシクロペンタジエン重付加物、フェノール/テトラヒドロインデン重付加物、フェノール/4−ビニルシクロヘキセン重付加物、フェノール/5−ビニルノボルナ−2−エン重付加物、フェノール/α−ピネン重付加物、フェノール/β−ピネン重付加物、フェノール/リモネン重付加物、オルソクレゾール/ジシクロペンタジエン重付加物、オルソクレゾール/テトラヒドロインデン重付加物、オルソクレゾール/4−ビニルシクロヘキセン重付加物、オルソクレゾール/5−ビニルノボルナ−2−エン重付加物、オルソクレゾール/α−ピネン重付加物等のフェノール類/脂肪族環状ジエン類重付加物;1−ナフトール/ジシクロペンタジエン重付加物、1−ナフトール/4−ビニルシクロヘキセン重付加物、1−ナフトール/5−ビニルノルボルナジエン重付加物、1−ナフトール/α−ピネン重付加物、1−ナフトール/β−ピネン重付加物、1−ナフトール/リモネン重付加物、オルソクレゾール/β−ピネン重付加物、オルソクレゾール/リモネン重付加物等のナフトール類/脂肪族環状ジエン類重付加物;フェノール/p−キシレンジクロライド重縮合物、フェノール/ビスクロロメチルビフェニル重縮合物、オルトクレゾール/ビスクロロメチルビフェニル重縮合物、フェノール類/アラルキル化剤との重縮合物;1−ナフトール/p−キシレンジクロライド重縮合物、2−ナフトール/p−キシレンジクロライド重縮合物、1−ナフトール/ビスクロロメチルビフェニル重縮合物、2−ナフトール/ビスクロロメチルビフェニル重縮合物等のナフトール類/アラルキル化剤との重縮合物、及び、これらの化合物の芳香核に置換基としてアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、ハロゲン原子を有する化合物が挙げられる。
【0038】
これらのフェノール系化合物のなかでも、耐熱性、感光性に優れる低粘度エポキシ樹脂中間体が得られることから、ジヒドロキシベンゼン類、ジヒドロキシナフタレン類、ビスフェノール類等の2官能性フェノール化合物が好ましく、とりわけ粘度特性に優れる点からビスフェノール類であることが好ましい。
【0039】
従って、前記ビニル基含有エポキシ樹脂(A)は、ビスフェノール類と、β−位に炭素原子数1〜4のアルキル基を有するアルキル置換エピハロヒドリンとの反応によって得られるエポキシ樹脂と、不飽和一塩基酸(b)との反応によって得られるビニルエステル型エポキシ樹脂であることが好ましく、具体的には、下記一般式(3)
【0040】
【化13】


(式中、R〜Rはそれぞれ独立的に炭素原子数1〜4のアルキル基、臭素原子、塩素原子、又は水素原子を表し、Xはメチレン基、イソプロピリデン基、エチリデン基、1,1−シクロヘキセン基、フェニルメチルメチレン基、又はスルホニル基を表す。)
で表されるフェノキシ構造を繰り返し単位としており、
分子末端に下記一般式(1)
【0041】
【化14】

(式中、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基、R2は水素原子またはメチル基を表す。)で示される官能基(a1)と、
下記一般式(2)
【0042】
【化15】


(式中、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基)で示されるグリシジルオキシ基(a2)とを、前記官能基(a1)と前記官能基(a2)との存在比率が、モル比で、(a1)/(a2)=(20〜80)/(80〜20)となる割合で有するものであることを特徴とする本発明のビニル基含有エポキシ樹脂であることが好ましい。
【0043】
ここで、前記官能基(a1)と前記官能基(a2)との存在比率は、前記した通り、モル比で、(a1)/(a2)=(20〜80)/(80〜20)となる割合であることから、光・熱併用型の硬化性樹脂として液晶滴下工法で液晶表示素子を製造する際の液晶汚染を効果的に防止することができる。かかる効果が顕著なものとなる点から特に、前記官能基(a1)と前記官能基(a2)との存在比率は、モル比で、(a1)/(a2)=(20〜55)/(80〜45)であることが好ましい。
【0044】
また、前記ビニル基含有エポキシ樹脂(A)のなかでも特に、25℃におけるB型粘度計による粘度が200〜1,000Pa.sとなるものであることが流動性の点から好ましく、また、α−グリコール基含有量0.10meg/g以下のものであることがゲル化防止の点から好ましい。
【0045】
更に、前記フェノール化合物(x1)は、前記ビニル基含有エポキシ樹脂(A)中により多くのアクリロイル基を導入でき、当該ビニル基含有エポキシ樹脂(A)の感光性が良好なものとなり、また、硬化物の耐熱性にも優れる点から前記フェノール化合物(x1)は、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ジヒドロキシナフタレン、フェノール/ジシクロペンタジエン重付加物などが特に好ましい。
【0046】
以上詳述したビニル基含有エポキシ樹脂(A)は、例えば、以下の工程1及び工程2を必須の製造工程とする製造方法によって製造することができる。
即ち、当該製造方法は、フェノール系化合物(x1)とβ-位に炭素原子数1〜4のアルキル基を有するアルキル置換エピハロヒドリン(x2)とを反応させてエポキシ樹脂(a)を得(工程1)、次いで、得られたエポキシ樹脂(a)に、不飽和一塩基酸(b)を特定条件下、反応させる(工程2)を特徴とするものである。
【0047】
工程1における反応は、例えば、フェノール系化合物(x1)とβ-位に炭素原子数1〜4のアルキル基を有するアルキル置換エピハロヒドリン(x2)との溶解混合物に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物を触媒として用い反応させることが好ましい。
【0048】
また、前記反応はアルカリ金属水酸化物を反応開始前に一度に添加しても良いし、或いは、アルカリ金属水酸化物を連続的乃至断続的に反応系に添加しながら反応を行っても良い。反応温度は、特に限定されるものではないが、20〜120℃の範囲であることが反応性の点から好ましく、反応時間は1〜10時間の範囲が挙げあれる。
【0049】
β−位に炭素原子数1〜4のアルキル基を有するアルキル置換エピハロヒドリン(x2)の使用量は、理論分子構造体量と釜得量(生産性)の兼ね合いから、フェノール系化合物(x1)中の水酸基1当量に対して、通常、0.3〜20当量の範囲となる量であることが好ましい。即ち、β-位に炭素原子数1〜4のアルキル基を有するアルキル置換エピハロヒドリン(x2)が0.3当量よりも少ない場合、生成したβ−アルキル置換グリシジルエーテル基と未反応フェノール性水酸基が反応してオリゴマー化反応し易くなり、エポキシ樹脂(a)の粘度の増大を招くことになる。一方、20当量を越える場合、フェノール系化合物(x1)のフェノール性水酸基がβ−アルキル置換グリシジルエーテル基に置換された構造(理論構造体:n=0体)を有する低分子量エポキシ樹脂の含有量が高くなるものの、生産性を低下させることになる。よって、これらのバランスの点から特に2.5〜10当量となる量であることがより好ましい。
【0050】
ここでβ−位に炭素原子数1〜4のアルキル基を有するアルキル置換エピハロヒドリン(x2)は、例えば、β−メチルエピクロロヒドリン、β−メチルエピブロモヒドリン、β−メチルエピヨードヒドリン等のβ−メチルエピハロヒドリン;β−エチルエピクロロヒドリン、β−エチルエピブロモヒドリン、β−エチルエピヨードヒドリン等のβ−エチルエピハロヒドリン;β−プロピルエピクロロヒドリン、β−プロピルエピブロモヒドリン、β−プロピルエピヨードヒドリン等のβ−プロピルエピハロヒドリン;β−ブチルエピクロロヒドリン、β−ブチルエピブロモヒドリン、β−ブチルエピヨードヒドリン等のβ−ブチルエピハロヒドリン等が挙げられる。これらのなかでも前記フェノール系化合物との反応性が良好で、流動性に優れる低粘度エポキシ樹脂が得られることからβ−メチルエピハロヒドリンが好ましく、更にその入手が容易であることからβ−メチルエピクロロヒドリンが最も好ましい。β-位に炭素原子数1〜4のアルキル基を有するアルキル置換エピハロヒドリンは、単独でも、2種以上の混合物としても使用できる。
【0051】
また、工程1において前記アルカリ金属水酸化物はその水溶液を使用してもよく、その場合、該アルカリ金属水酸化物の水溶液を連続的に反応系内に添加すると共に減圧下、または常圧下連続的に水及びβ-位に炭素原子数1〜4のアルキル基を有するアルキル置換エピハロヒドリン(x2)を留出させ、更に分液し水は除去しβ-位に炭素原子数1〜4のアルキル基を有するアルキル置換エピハロヒドリン(x2)は反応系内に連続的に戻す方法がエポキシ樹脂(a)の純度が向上する点から好ましい。
【0052】
また、工程1における反応は、上記反応方法の他に、フェノール系化合物(x1)とβ-位に炭素原子数1〜4のアルキル基を有するアルキル置換エピハロヒドリン(x2)との溶解混合物にテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩を触媒として添加し50〜150℃で1〜5時間反応させて得られる該フェノール系化合物(x1)のハロヒドリンエーテル化物を得、次いで、これに、アルカリ金属水酸化物の固体または水溶液を加え、再び20〜120℃で1〜10時間反応させ脱ハロゲン化水素(閉環)させる方法を採用してもよい。
【0053】
更に、反応を円滑に進行させるためにメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;ジオキサンなどのエーテル類;ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒などを添加して反応を行うことが好ましい。溶媒を使用する場合のその使用量としては、β-位に炭素原子数1〜4のアルキル基を有するアルキル置換エピハロヒドリン(x2)の使用量に対し通常5〜50質量%、好ましくは10〜30質量%である。また非プロトン性極性溶媒を用いる場合はβ-位に炭素原子数1〜4のアルキル基を有するアルキル置換エピハロヒドリン(x2)の量に対し通常5〜100質量%、好ましくは10〜60質量%である。
【0054】
このようにして得られたβ−アルキル置換グリシジルエーテル化反応の反応物を水洗後、または水洗無しに加熱減圧下、110〜250℃、圧力10mmHg以下で未反応のβ-位に炭素原子数1〜4のアルキル基を有するアルキル置換エピハロヒドリン(x2)や他の添加溶媒などを除去する。また、更に加水分解性ハロゲンの少ないエポキシ樹脂とするために、β-位に炭素原子数1〜4のアルキル基を有するアルキル置換エピハロヒドリン(x2)等を回収した後に得られる粗エポキシ樹脂を再びトルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えて更に反応させて閉環を確実なものにすることが好ましい。この場合、アルカリ金属水酸化物の使用量は粗エポキシ樹脂中に残存する加水分解性塩素1モルに対して、通常0.5〜10モル、好ましくは1.2〜5.0モルである。反応温度としては通常50〜120℃、反応時間としては通常0.5〜3時間である。反応速度の向上を目的として、4級アンモニウム塩やクラウンエーテル等の相関移動触媒を存在させてもよい。相関移動触媒を使用する場合のその使用量としては、粗エポキシ樹脂に対して0.1〜3.0質量%の範囲であることが好ましい。
【0055】
反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に、加熱減圧下トルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤を留去することによりエポキシ基のβ-位にアルキル基を置換基として導入したエポキシ樹脂(a)を得ることができる。
【0056】
次に、工程2は、工程1で得られたエポキシ基のβ-位にアルキル基を置換基として導入したエポキシ樹脂(a)に、不飽和一塩基酸(b)を反応させる工程である。
【0057】
ここで用いる不飽和一塩基酸(b)は、アクリル酸、メタクリル酸、β-スチリルアクリル酸、β-フルフリルアクリル酸、クロトン酸、α-シアノ桂皮酸、桂皮酸等が挙げられる。これらのなかでもエポキシ基のβ-位にアルキル基を置換基として導入したエポキシ樹脂(a)との反応性が良好で、更にその入手が容易であることからアクリル酸、メタクリル酸が最も好ましい。不飽和一塩基酸は、単独でも、2種以上の混合物としても使用できる。
【0058】
工程2における反応は、エポキシ基のβ-位にアルキル基を置換基として導入したエポキシ樹脂(a)中の「β-位にアルキル基置換基を有するエポキシ基」1化学当量に対し、不飽和一塩基酸(B)中のカルボン酸基0.2〜0.8化学当量となる比率で行うことができ、必要に応じて触媒(エステル化触媒)を用いて反応させて得ることができる。また、当該反応は、初期から同反応比率にて一括反応させてもよいし、或いは、順次反応させることで最終的に官能基の反応比率が同比率となる方法であってもよい。
【0059】
工程2における反応はエステル化触媒の存在下に行うことが好ましく、かかるエステル化触媒としては、例えばトリエチルアミン、N,N−ベンジルジメチルアミン、N,N−ジメチルフェニルアミン、N,N−ジメチルアニリンもしくはジアザビシクロオクタンの如き3級アミン類;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、メチルトリエチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩類;トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等のホスフィン類;2−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類;トリフェニルスチビン、アニオン交換樹脂等が挙げられる。該触媒の使用量は反応混合物に対して、0.01〜1質量%、特に0.05〜0.5質量%となる範囲であることが、反応性に優れる点から好ましい。
【0060】
本発明においては、反応中の重合防止やゲル化抑制を目的に、重合禁止剤を使用することが好ましい。ここで重合禁止剤は、例えばp−ベンゾキノン、アントラキノン、1,4−ナフトキノン、p−トルキノン、メトキノン等のキノン類;ハイドロキノン、モノメチルハイドロキノン、モノ−t−ブチルハイドロキノン等のハイドロキノン類;ナフテン酸銅等の銅酸;フェノチアジン等の硫黄類が好ましく、特にその効果が顕著であることから、メトキノン、ハイドロキノンが好ましい。重合禁止剤の添加量としては、反応混合物、即ちエポキシ樹脂(a)と不飽和一塩基酸(b)の合計量に対して、100〜2000ppmとすることが、樹脂の合成反応時や保管時、及び樹脂組成物とした際の安定性が極めて高くなるため好ましい。
【0061】
また、工程2の反応は希釈剤の存在下に行うこともできる。ここで使用し得る希釈剤は、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル類;オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサなどの石油系溶剤等の有機溶剤類等が挙げられる。これらのなかでも、特に高温条件での反応が可能な点から、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートの単独で使用するか、または、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート若しくはジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートと芳香族炭化水素類とを併用することが好ましい。
【0062】
工程2の反応における反応温度は、エステル化触媒の添加時期を問わず、60〜150℃なる範囲であることが反応を好適に進行させることができる点から好ましいが、反応時間が短く、経済的に優位であることから、中でも80〜130℃であることが更に好ましい。
【0063】
ここで、特筆すべきは、エポキシ基のβ-位にアルキル基を置換基として導入したエポキシ樹脂(a)に、不飽和一塩基酸(b)を反応させる際、通常のエポキシ樹脂のビニルエステル化反応で生じやすいゲル化や高分子量化といった副反応を殆ど起こさない点にある。即ち、従来の「置換基を有していないエポキシ基(通常のエポキシ基)」と(メタ)アクリル酸等のカルボン酸の部分エステル化反応においては、副反応を抑制する為に、反応温度を60〜120℃、特にエステル化触媒の添加直後の反応温度は60〜110℃程度に反応温度を低温化する必要があり、更に、かかる反応温度の低温化によっても、副反応抑制は充分抑制できなかったのに対して、前記工程2における反応は、副反応抑制効果が顕著なものであって、特段に反応条件を温和化することなく反応できる。その結果、工程2では反応時間を延長させることなく、経済的に有利に、副反応が抑制されたビニル基含有エポキシ樹脂(A)を得ることができる。
【0064】
工程2において、エステル化触媒はエポキシ基のβ-位にアルキル基を置換基として導入したエポキシ樹脂(a)と不飽和一塩基酸(b)とを反応させる際に添加(一括添加)すれば良いが、エステル化触媒の一部を添加(一次添加)して反応を進行させた後、更に連続的乃至断続的にエステル化触媒を添加(二次添加)する方法(多段添加)を採用しても良い。一次添加と二次添加で用いる際の触媒量は特に限定されないが、一次添加で総触媒量の50〜90%を添加し、二次添加で残りを添加することが好ましい。
【0065】
このようにして得られた反応生成物は、水可溶イオン性不純物削減を目的とした精製を行うことができる。精製の方法は、反応生成物に重量比で約4倍のトルエンと同量の純水を加え、60〜80℃で1時間攪拌した後、静置して有機層と水層とに分離し、水層を除去し、この操作を3〜5回繰り返し、最後に有機層を回収し、残存するトルエンを真空蒸留により除去する方法が挙げられる。
【0066】
このようにして得られたビニル基含有エポキシ樹脂(A)は、α−グリコール基量が0.10meq/g以下と非常に低いものであり、シール剤としての信頼性向上に著しい効果がある。このようなビニル基含有エポキシ樹脂(A)を得るためには、部分エステル化する反応前のエポキシ基のβ-位にアルキル基を置換基として導入したエポキシ樹脂(a)中のα−グリコール基は0.10meq/g以下であることが好ましい。
【0067】
次に、本発明の硬化性組成物で用いるエポキシ樹脂用硬化剤(B)は、液晶表示素子を製造する際にシール剤の加熱硬化時に、該シール剤が液晶を汚染することなく均一、速やかに反応を開始すること、使用時には室温下における経時的な粘度変化が少ないことが重要であり、このような特性を具備したものとして多官能ヒドラジド類、多価アミン類を使用することが好ましい。
【0068】
ここで前記多官能ヒドラジド類は、分子中に2個以上のヒドラジド基を有するものである、その具体例としては、例えばカルボヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカンジオジヒドラジド、ヘキサデカンジオヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド、4,4−ビスベンゼンジヒドラジド、1,4−ナフトエ酸ジヒドラジド、2,6−ピリジンジヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジド、ピロメリット酸テトラヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントイン等のバリンヒダントイン骨格を有するジヒドラジド類が挙げられる。
【0069】
なお、多官能ジヒドラジドを硬化剤として使用する場合、潜在性硬化剤とするために、粒径を細かくして均一に分散することが好ましい。前記多官能ジヒドラジド類のうち、中でもジヒドラジドが好ましく、液晶汚染性の観点から特にイソフタル酸ジヒドラジド、バリンヒダントイン骨格を有するジヒドラジド類が好ましい。その平均粒径は、大きすぎると狭ギャップの液晶セル製造時に上下ガラス基板の貼り合わせ時のギャップ形成がうまくできない等の不良要因となるため、3μm以下が好ましく、より好ましくは2μm以下である。また、同様に最大粒径は8μm以下が好ましく、より好ましくは5μm以下である。硬化剤の粒径はレーザー回折・散乱式粒度分布測定器(乾式)(株式会社セイシン企業製;LMS−30)により測定出来る。
【0070】
多価アミン類は、ジシアンジアミド、グアニジン誘導体、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、N−[2−(2−メチル−1−イミダゾリル)エチル]尿素、2,4−ジアミノ−6−[2'−メチルイミダゾリル−(1')]−エチル−s−トリアジン、N,N'−ビス(2−メチル−1−イミダゾリルエチル)尿素、N,N'−(2−メチル−1−イミダゾリルエチル)−アジポアミド、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、変性脂肪族ポリアミン、各種アミンとエポキシ樹脂との付加生成物等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種類以上を用いてもよい。
【0071】
またエポキシ樹脂用硬化剤(B)成分の配合比は、ビニル基含有エポキシ樹脂(A)中のエポキシ基の当量に対して0.8〜3.0当量が好ましく、なかでも0.9〜2.0当量なる範囲が好ましい。
【0072】
即ち、エポキシ樹脂用硬化剤(B)成分の量が0.8当量以上とすることにより熱硬化反応が十分に良好となって接着力、ガラス転移点が向上する。一方、当量が3.0以下とすることによってポットライフが向上し、接着力の低下を防止できる。
【0073】
次に、光重合開始剤(C)としては、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤が挙げられる。
【0074】
光ラジカル重合開始剤は、例えば、アセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、シクロロアセトフェノン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1等のアセトフェノン類;ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、P,P−ビスジエチルアミノベンゾヘェノン、4−ベンゾイル−4′−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン類;ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;ベンジルジメチルケタール等のケタール類;チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アントラキノン、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、2,4,6−トリス−S−トリアジン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。これらのなかでも、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オンや2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1は、反応性が高く好ましい。また、これらの光ラジカル重合開始剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0075】
また、光カチオン重合触媒は、活性エネルギー線を照射することにより酸を発生するものであり、例えばスルホニウム塩、ヨードニウム塩が挙げられる。かかる光カチオン開始剤の好ましい例としては、下記一般式(4)で表される構造を有するオニウム塩を挙げることができる。このオニウム塩は、光反応し、ルイス酸を放出する化合物である。
【0076】
[R3a4b5c6dW]m+[MXn+mm- (4)
(上記式中、カチオンはオニウムイオンであり、Wは、S、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O、I、Br、Cl、またはNであり、R3、R4、R5、およびR6は同一または異なる有機基であり、a、b、cおよびdはそれぞれ0〜3の整数であって、(a+b+c+d)は((Wの価数)+m)に等しい。また、Mは、ハロゲン化錯体[MXn+m]の中心原子を構成する金属またはメタロイドであり、例えば、B、P、As、Sb、Fe、Sn、Bi、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn、Co等である。Xは例えば、F、Cl、Br等のハロゲン原子であり、mはハロゲン化物錯体イオンの正味の電荷であり、nはMの原子価である。
【0077】
前記一般式(4)においてオニウムイオンは、ジフェニルヨードニウム、4−メトキシジフェニルヨードニウム、ビス(4−メチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム、トリフェニルスルホニウム、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウム、ビス〔4−(ジフェニルスルフォニオ)−フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル)スルホニオ)−フェニル〕スルフィド、η5−2,4−(シクロペンタジェニル)〔1,2,3,4,5,6−η−(メチルエチル)ベンゼン〕−鉄(1+)等が挙げられる。
【0078】
前記一般式(4)における陰イオンの具体例は、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサクロロアンチモネート等が挙げられる。また、前記一般式(4)において陰イオンとしてハロゲン化錯体[MXn+m]の代わりに、過塩素酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、トリニトロトルエンスルホン酸イオン等を用いてもよい。
【0079】
さらに、前記一般式(4)において陰イオンとしてハロゲン化錯体[MXn+m]の代わりに芳香族陰イオンを用いることができる。かかる芳香族陰イオンは、例えばテトラ(フルオロフェニル)ボレート、テトラ(ジフルオロフェニル)ボレート、テトラ(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラ(テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラ(パーフルオロフェニル)ボレート、テトラ(トリフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラ(ジ(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート等が挙げられる。
【0080】
これらの光カチオン開始剤は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明の樹脂組成物における光カチオン開始剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0081】
本発明において、光重合開始剤(C)の量は、ビニル基含有エポキシ樹脂(A)100重量部に対して、通常0.05〜30重量部の範囲であることが好ましい。即ち、0.05重量部以上においては、ビニル基含有エポキシ樹脂(A)の硬化反応が良好に進行し、また、30重量部以下ではシール剤としての機械物性が良好なものとなる。感度、シール剤の機械物性などの面から、この光重合開始剤(C)のより好ましい配合量は0.1〜20重量部の範囲である。
【0082】
本発明の光・熱併用硬化性樹脂組成物からなるシール剤は、粘度が200〜500Pa.sの範囲のものが好ましく、特に200〜450Pa.sの範囲のものが、液晶滴下工法としての作業性に優れることから好ましい。なお、これらの粘度は、測定温度25℃、東機産業株式会社製E型粘度計を用いて測定したものである。
【0083】
望ましいこれら粘度範囲となるように、低粘度のエポキシ樹脂(D)や低粘度の(メタ)アクリル酸エステル(E)等を混合することができる。
【0084】
低粘度のエポキシ樹脂(D)は、例えば、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、核水添ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの中で、液晶汚染性が良好で、且つ入手が容易であることから、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂が好ましい。
【0085】
また、低粘度の(メタ)アクリル酸エステル(E)は、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルメタクリル酸付加物、プロピレングリコールジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、グリセリンジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、ビスフェノールAの2モルプロピレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテルメタクリル酸付加物、ビスフェノールAの2モルプロピレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテルアクリル酸付加物等のエポキシエステル類、エチレングリコールジメタクリル酸エステル、ジエチレングリコールジメタクリル酸エステル、1,6−ヘキサンジオールジメタクリル酸エステル、1,9−ノナンジオールジメタクリル酸エステル、1,10−デカンジオールジメタクリル酸エステル等のアルコールエステル類が挙げられる。これらの中で、低粘度で液晶汚染性が良好、且つ入手が容易であることから、1,6−ヘキサンジオールジメタクリル酸エステルが好ましい。
【0086】
本発明のシール剤には、更に必要に応じて、反応性希釈剤、有機溶媒、有機充填剤、無機充填剤ならびに顔料、レベリング剤、消泡剤などの添加剤を配合することができる。
【0087】
本発明のシール剤を得るには、前記各成分を公知の混合装置、例えばロールミル、サンドミル、ボールミル等により均一に混合することにより本発明のシール剤を製造することができる。必要により、濾過、脱泡処理を施してもよい。
【0088】
本発明の液晶表示素子は、一対の基板を所定の間隔に対向配置し、周囲を本発明のシール剤でシールされ、その間隙に液晶が封入されたものである。封入される液晶の種類は特に限定されない。ここで、基板とはガラス、石英、プラスチック、シリコン等からなる少なくとも一方に光透過性がある組み合わせの基板から構成される。
【0089】
ここで、前記液晶表示素子の製法としては、例えば本発明のシール剤に、グラスファイバー等のスペーサー(間隙制御材)を添加後、一対の基板の一方にディスペンサー等により該シール剤を塗布し、もう一方の基板に所定量の液晶を滴下し、真空中にて重ね合わせ、大気圧に戻すことにより液晶注入を行い、次いで、紫外線照射機によりシール部に紫外線を照射させて光硬化させ、その後、更に、該シール剤を熱硬化させる方法が挙げられる。ここで、紫外線照射量は5,000J/m2〜60,000J/m2、特に10,000J/m2〜40,000J/m2であることが好ましく、また、熱硬化させる際の条件としては、封入される液晶の特性低下を最小限に留めるため、90〜130℃で行うことが好ましい。熱硬化反応させる時間は、1〜2時間程度であることが好ましい。
【0090】
このようにして得られた本発明の液晶表示素子は、液晶汚染による表示不良が無く、接着性、耐湿信頼性に優れたものである。スペーサーとしては、例えばグラスファイバー、シリカビーズ、ポリマービーズ等があげられる。その直径は、目的に応じ異なるが、通常2〜8μm、好ましくは4〜7μmである。その使用量は、本発明のシール剤100重量部に対し通常0.1〜4重量部、好ましくは0.5〜2重量部、更に、好ましくは0.9〜1.5重量部程度である。
【0091】
本発明の液晶滴下工法用のシール剤は、極めて作業性に優れ、また、液晶汚染を引き起こしにくく、色むらが少ない高品位な画像の液晶表示素子を製造することができる。
【実施例】
【0092】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明する。なお、以下に記載の部及び%は、特に断りがない限り重量基準である。
【0093】
実施例1 下記構造式
【0094】
【化16】

(式中、a:bはモル比で1.0:1.0であり、nの平均は0.1である。)
で表される部分アクリル変性エポキシ樹脂(50%変性)の合成
【0095】
温度計、撹拌機を取り付けたフラスコにビスフェノールA228g(1.0モル)とβ−メチルエピクロルヒドリン1065g(10.0モル)、n−ブタノール213gを仕込み溶解させた。その後、窒素ガスパージを施しながら、65℃に昇温した後に、共沸する圧力までに減圧して、49%水酸化ナトリウム水溶液180g(2.20モル)を5時間かけて滴下した、次いでこの条件下で0.5時間撹拌を続けた。この間、共沸で留出してきた留出分をディーンスタークトラップで分離して、水層を除去し、有機層を反応系内に戻しながら反応した。その後、未反応のβ−メチルエピクロルヒドリンを減圧蒸留して留去させた。それで得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン1000gとn−ブタノール100gを加え溶解した。更にこの溶液に10%水酸化ナトリウム水溶液20gを添加して80℃で2時間反応させた後に洗浄液のPHが中性となるまで水300gで水洗を3回繰り返した。次いで共沸によって系内を脱水し、精密濾過を経た後に、溶媒を減圧下で留去して、エポキシ樹脂(E−1)357gを得た。この樹脂(E−1)のエポキシ当量は213g/eq.、粘度は63,000mPa・s(25℃、キャノンフェンスケ法)、α−グリコール基含有量0.03meq/gであることが確認された。
【0096】
次いで、温度計、撹拌機を取り付けたフラスコにエポキシ樹脂(E−1)213g(1当量)、アクリル酸36g(0.5当量)、重合禁止剤としてハイドロキノン0.12g(500ppm)を仕込み、70℃で加熱攪拌し、均一溶解させた。その後、触媒としてトリフェニルホスフィン 0.24g(1000ppm)を添加して、110℃まで昇温し、更に同温度で2時間反応させた。その後、更に触媒としてトリフェニルホスフィン 0.24g(1000ppm)を追加添加し、更に110℃で6時間反応を行い、前記構造式で示される部分アクリル変性エポキシ樹脂(HVE−1: 50%アクリレート変性)249gを得た。
【0097】
生成物249gにトルエン1000gを加えて希釈溶液とし、これに純水1000gを添加して、室温で1時間攪拌した後、静置し水層を除去した。この操作を3回繰り返し、更に同量の1規定NaOH水溶液による洗浄を3回繰り返し、更に同量の純水による洗浄を3回繰り返し、水可溶イオン性不純物削減を目的とした精製を行った。
その後、得られた希釈溶液を精密濾過し、減圧下70℃で濃縮してトルエンを完全除去して、部分アクリル変性エポキシ樹脂(HVE−1: 50%アクリレート変性)240gを得た。
【0098】
該部分アクリル変性エポキシ樹脂(HVE−1)は、エポキシ当量495g/eq.(理論値 498g/eq)、25℃におけるB型粘度計による粘度512Pa.s、酸価0.1mgKOH/g、α−グリコール基含有量0.04meq/gであった。得られた部分アクリル変性エポキシ樹脂(HVE−1: 50%アクリレート変性)のGPCチャートを図1、13C−NMRスペクトルを図2にそれぞれ示す。
【0099】
実施例2 下記構造式
【0100】
【化17】

(式中、a:bはモル比で0.6:1.4であり、nの平均は0.1である。)
で表される部分アクリル変性エポキシ樹脂(30%変性)の合成
【0101】
実施例1で得られたエポキシ樹脂(E−1)を用い、アクリル酸を36gから22gに変更する以外は、実施例1と同様にして、部分アクリル変性エポキシ樹脂(HVE−2: 30%アクリレート変性)228gを得た。
該部分アクリル変性エポキシ樹脂(HVE−2)は、エポキシ当量332g/eq.(理論値 335g/eq)、25℃におけるB型粘度計による粘度256Pa.s、酸価0.1mgKOH/g、α−グリコール基含有量0.03meq/gであった。
【0102】
比較例1 比較用ビスフェノールA型部分アクリル変性エポキシ樹脂の合成
下記構造式
【0103】
【化18】

(式中、a:bはモル比で1.0:1.0であり、nの平均は である。)
で表される部分アクリル変性エポキシ樹脂(50%変性)の合成
【0104】
実施例1において、エポキシ樹脂(E−1)の変わりに、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製 EPICLON 850−S エポキシ当量;188g/eq 粘度;13,500mPa.s、α−グリコール基含有量0.02meq/g)188g(1当量)とする以外は、実施例1と同様にして、一般式(8)で示される部分アクリル変性エポキシ樹脂(HVE−3)224gを得た。
該部分アクリル変性エポキシ樹脂(HVE−3)は、エポキシ当量1234g/eq.(理論値 448g/eq)、半固形性状(25℃での粘度は測定不能)、酸値0.1mgKOH/g、α−グリコール基含有量0.16meq/gであった。
【0105】
実施例3〜5及び比較例2 シール剤の製造
表1の配合組成(単位は重量部)に従って、シール剤樹脂組成物の粘度が、200〜500Pa.sとなるように配合、3本ロールミルを用いて混練して、光・熱併用硬化性樹脂組成物(シール剤)を調整した。
【0106】
【表1】

【0107】
[表1中、※1〜※6の注釈は以下の通りである。
※1 味の素ファインテクノ株式会社製1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントイン(融点:120℃、活性水素当量:78.5g/eq)
※2 チバ・スペシャリティーケミカルズ社製 光ラジカル重合開始剤
2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン
※3 大日本インキ化学工業株式会社製 ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂
エポキシ当量:188g/eq、粘度:13,500mPa.s(25℃)
※4 共栄社化学株式会社製 1,6−ヘキサンジオールメタクリル酸エステル
※5 信越シリコーン株式会社製シランカップリング剤(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)
※6 アドマテックス株式会社製シリカフィラー(平均粒径 0.5μm) ]
【0108】
実施例6〜8及び比較例3 液晶表示素子の製造及び評価
前記実施例3〜5及び比較例2で得られた各シール剤を用いて、下記方法によって液晶表示素子を製造し、評価を行った。評価結果を表2に示す。
(1)液晶表示素子の製造方法
2枚の透明電極付き透明基板の一方に、得られたシール剤を長方形の枠を描くようにディスペンサーで塗布した。次いで、液晶(TFT駆動用)の微小滴を透明基板の枠内全面に滴下塗布し、直ちにもう一方の透明基板を重ね合わせてシール部に高圧水銀ランプを用いて、30mW/cmで100秒間(30000J/m)の紫外線照射をした。その後、120℃で1時間処理(液晶アニールと液晶滴下工法用シール剤を熱硬化)して液晶表示素子を得た。下記に、液晶(TFT駆動用)の組成を示す。
【0109】
【化19】

【0110】
[上記TFT駆動用液晶組成物の物性]
誘電率の異方性(△ε):5.30
比抵抗値:5.2×1014Ω・m
【0111】
(2)シール剤の描画性評価
各シール剤5gを10mLシリンジ(武蔵エンジニアリング社製、ノズル径0.2mm)に充填した後、ショットマスター300(武蔵エンジニアリング社製)を用いて、塗布圧3kg、速度50mm/secの条件で直線に描画した。このときの描画性について以下の基準で評価した。
◎:均一幅の直線を描けた
○:シール切れすることなく直線を描けたものの不均一な幅となった
△:直線は描けたものの、シール切れが所々に見られた
×:ほとんど描画できなかった(シリンジから吐出できなかった)
【0112】
(3)シール剤の接着性評価(ガラスに対する接着性)
各シール剤の極少量をスライドガラス上に採り、他のスライドガラスをその上に十字型に重ね合わせ、該接着剤が重ね合わせたガラスの中心部にあって、接着剤厚さが8〜10μm、直径約3mmとなるように押し付けて、接着試験片を作製した。この試験片に3000mJの紫外線照射をして光硬化した後、120℃/1時間の条件で熱硬化して接着強度測定試験片を作製した。この試験片(直径3mm)について、テンションゲージを用いて接着強度を測定した。
【0113】
(4)液晶表示素子の表示ムラの評価
得られた液晶表示素子のシール部周辺の液晶に生じる色むらを目視にて観察し、以下の基準により評価した。
◎:色むらが全くない
○:色むらがほとんどない
△:少し色むらがある
×:色むらがかなりある
【0114】
(5)エージング後の液晶表示素子の表示ムラの評価
得られた液晶表示素子に5Vの直流電圧を印加した状態で80℃雰囲気下、100時間放置後のシール部周辺の液晶に生じる色むらを目視にて観察し、以下の基準により評価した。
◎:色むらが全くない
○:色むらがほとんどない
△:少し色むらがある
×:色むらがかなりある
【0115】
(6)液晶表示素子における液晶材料の配向異常の評価
得られた液晶表示素子に、65℃、90%RHの条件下で、500時間の高温・高湿動作試験を行い、配向乱れの有無を目視にて観察し、以下の基準により評価した。
◎:配向乱れがない
×:配向乱れがある
【0116】
得られた液晶表示素子について、上述の方法に従い、描画性、接着強度、液晶汚染性、配向異常試験などを行った結果を表2に示す。このように、本発明から得られるシール剤は、液晶表示素子に極めて適したものである。
【0117】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】実施例1で得られた部分アクリル酸変性エポキシ樹脂のGPCチャートである。
【図2】実施例1で得られた部分アクリル酸変性エポキシ樹脂の13C−NMRスペクトル図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

(式中、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基、R2は水素原子またはメチル基を表す。)で示される官能基とグリシジルオキシ基とを分子構造中に有するビニル基含有エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂用硬化剤(B)、及び光重合開始剤(C)を必須成分とすることを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
前記ビニル基含有エポキシ樹脂(A)が、下記一般式(1)
【化2】

(式中、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基、R2は水素原子またはメチル基を表す。)で示される官能基(a1)と、下記一般式(2)
【化3】


(式中、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基)で示されるグリシジルオキシ基(a2)とを同一分子内に含有し、かつ、
前記官能基(a1)と前記官能基(a2)との存在比率が、モル比で、(a1)/(a2)=(20〜80)/(80〜20)となる割合であるものである請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記ビニル基含有エポキシ樹脂(A)が、α−グリコール基含有量0.10meg/g以下のものである請求項1又は2記載の硬化性組成物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一つに記載の硬化性組成物を硬化させてなる硬化物。
【請求項5】
請求項1〜3の何れか一つに記載の硬化性組成物からなることを特徴とする液晶表示素子用シール剤。
【請求項6】
2枚の電極基板付き透明基板、シール剤、及び液晶材料を用いて液晶滴下工法によって製造される液晶表示素子であって、前記シール剤として前記請求項1〜3の何れか一つに記載の硬化性組成物を用いることを特徴とする液晶表示素子。
【請求項7】
下記一般式(3)
【化4】

(式中、R〜R10はそれぞれ独立的に炭素原子数1〜4のアルキル基、臭素原子、塩素原子、又は水素原子を表し、Xはメチレン基、イソプロピリデン基、エチリデン基、1,1−シクロヘキセン基、フェニルメチルメチレン基、又はスルホニル基を表す。)
で表されるフェノキシ構造を繰り返し単位としており、
分子末端に下記一般式(1)
【化5】

(式中、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基、R2は水素原子またはメチル基を表す。)で示される官能基(a1)と、
下記一般式(2)
【化6】


(式中、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基)で示されるグリシジルオキシ基(a2)とを、
前記官能基(a1)と前記官能基(a2)との存在比率が、モル比で、(a1)/(a2)=(20〜80)/(80〜20)となる割合で有するものであることを特徴とするビニル基含有エポキシ樹脂。
【請求項8】
25℃におけるB型粘度計による粘度が200〜1,000Pa.sとなるものである請求項7記載のビニル基含有エポキシ樹脂。
【請求項9】
α−グリコール基含有量0.10meg/g以下のものである請求項7又は8記載のビニル基含有エポキシ樹脂。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−297470(P2007−297470A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−125362(P2006−125362)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】