説明

硬化性組成物およびこれを用いた塗装物

【課題】硬化物と塗膜との良好な密着性が得られるとともに、硬化物上に形成された塗膜の耐汚染性が良好である、硬化性組成物を提供する。
【解決手段】加水分解性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン重合体(A)100質量部と、可塑剤(B)30〜100質量部を含有し、前記可塑剤(B)が、水酸基価60〜130mgKOH/gの水酸基含有アクリレート系共重合体(B1)を含む硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加水分解性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン重合体を含有する硬化性組成物、およびこれを用いた塗装物に関する。
【背景技術】
【0002】
加水分解性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン重合体は、その硬化物がゴム弾性を有する特徴を利用して、建築用のシーリング材、接着剤、コーティング材などの用途に使用されている。
例えば住宅外壁のシーリング材にあっては、該シーリング材上に塗料を塗る場合があり、シーリング材と塗膜との密着性が要求される。これに対して、フタル酸系可塑剤を添加すると、シーリング材と塗膜との密着性は向上しやすいが、塗膜表面に汚れが付着して汚染されやすいという問題が生じる。
【0003】
下記特許文献1には、可塑剤として、フタル酸系可塑剤であるジオクチルフタレート(比較例)、アクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとの共重合体(実施例)、アクリル酸アルキルエステルの共重合体(比較例)、または水酸基価20mgKOH/gの水酸基含有アクリル重合体(比較例)を添加した組成物が記載されている(段落[0024]〜[0029]の実施例、比較例)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−193033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されているアクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとの共重合体、またはアクリル酸アルキルエステルの共重合体を用いると、硬化物表面に埃垢が付着し難くなるものの、該硬化物表面上に塗膜を形成すると、塗膜の密着性が良くない。また、水酸基価20mgKOH/gの水酸基含有アクリル重合体を用いた場合は、硬化物表面に埃垢が付着しやすく(特許文献1の比較例8)、該硬化物表面上に設けられた塗膜の耐汚染性も良くない。
【0006】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、硬化物と塗膜との良好な密着性が得られるとともに、硬化物上に形成された塗膜の耐汚染性が良好である、硬化性組成物、および該硬化性組成物の硬化物上に塗膜が設けられた塗装物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記[1]〜[9]の発明である。
[1]加水分解性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン重合体(A)と可塑剤(B)とを含有し、可塑剤(B)の含有量が加水分解性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン重合体(A)100質量部に対して30〜100質量部であり、
前記可塑剤(B)の少なくとも一部が、水酸基価60〜130mgKOH/gの水酸基を含有するアクリレート系共重合体(B1)であることを特徴とする硬化性組成物。
[2]前記可塑剤(B)の含有量が、加水分解性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン重合体(A)100質量部に対して30〜80質量部である[1]の硬化性組成物。
[3]前記アクリレート系共重合体(B1)の含有量が、可塑剤(B)の全量に対して50〜100質量%である、[1]または[2]の硬化性組成物。
[4]前記アクリレート系共重合体(B1)の、25℃における粘度が1,000〜13,000mPa・sである、[1]〜[3]の硬化性組成物。
[5]前記アクリレート系共重合体(B1)が、水酸基含アクリレートの単位と水酸基を有しないアクリレートの単位とを含む共重合体である、[1]〜[4]の硬化性組成物。
[6]前記水酸基含アクリレートの単位が、ヒドロキシアルキル部分の炭素数が10以下のヒドロキシアルキルアクリレートに由来する単位である、[5]の硬化性組成物。
[7]前記水酸基を有しないアクリレートの単位が、アルキル部分の炭素数が4〜16のアルキルアクリレートに由来する単位を含む、[5]または[6]の硬化性組成物。
[8][1]〜[7]の硬化性組成物の硬化物に密着して塗膜が設けられている塗装物。
[9]前記硬化物がシーリング材である、[8]の塗装物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の硬化性組成物によれば、硬化物と塗膜との良好な密着性が得られるとともに、硬化物上に形成された塗膜表面において優れた耐汚染性が得られる。
本発明の塗装物は、硬化物と塗膜との密着性が良好であり、塗膜表面の耐汚染性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書における水酸基価(単位:mgKOH/g)は、JIS K−1557(2007年版)に準拠して測定した値である。
本明細書における粘度の値(単位:mPa・s)は、E型粘度計を用い25℃、No.4ローター、若しくはNo.10ローターを用いて測定した値である。
本明細書における質量平均分子量(Mw、以下「Mw」とも記す。)および数平均分子量(Mn、以下「Mn」とも記す。)は、ゲル浸透クロマトグラフィ−(GPC)によって測定したポリスチレン換算分子量である。また本明細書における分子量分布(以下、「Mw/Mn」とも記す。)は、前記方法で測定したMw、Mnより算出した値であり、数平均分子量(Mn)に対する質量平均分子量(Mw)の比率(Mw/Mn)である。
【0010】
本発明の硬化性組成物は、加水分解性ケイ素基を含有するポリオキシアルキレン重合体(A)、可塑剤(B)を含有し、これらのほかに他の配合成分を任意に含有する。以下に、各成分についての説明をする。
【0011】
<加水分解性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン重合体(A)>
本発明の硬化性組成物は、加水分解性ケイ素基を含有するポリオキシアルキレン重合体(A)(以下、単に重合体(A)ということもある。)を含む。重合体(A)はいわゆる変成シリコーンポリマーであり、加水分解反応し、その後脱水縮合することで硬化する。
重合体(A)はポリオキシアルキレン鎖を有する。すなわち重合体(A)はアルキレンオキシドの開環付加重合により形成されたアルキレンオキシドに由来する繰り返し単位(以下、オキシアルキレン単位ともいう。)からなる分子構造を有する。
【0012】
ポリオキシアルキレン鎖は、1種のオキシアルキレン単位からなっていてもよく、2種以上のオキシアルキレン単位からなっていてもよい。後者の場合、それぞれのオキシアルキレン単位の並び方は、ランダム状であってもよく、ブロック状であってもよい。
アルキレンオキシドは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン、およびヘキシレンオキシドからなる群から選ばれる1種以上のアルキレンオキシドが好ましく、プロピレンオキシドが特に好ましい。
【0013】
加水分解性ケイ素基は、特に限定されず、トリアルコキシシリル基、またはジアルコキシアルキルシリル基が好ましく、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、またはジエトキシエチルシリル基が特に好ましい。
重合体(A)は分子末端に加水分解性ケイ素基を有することが好ましい。すなわち、重合体(A)のオキシアルキレン単位の末端に加水分解性ケイ素基が結合していることが好ましい。
【0014】
重合体(A)の製造方法は、特に限定されず、開環付加重合触媒の存在下、活性水素原子を有する化合物(開始剤)にアルキレンオキシドを開環付加重合させることによって、オキシアルキレン鎖を有し、かつ分子末端にヒドロキシ基を有する重合体(以下、重合体(H)ともいう。)を得、該重合体(H)に加水分解性ケイ素基を導入して重合体(A)を製造する方法が好ましい。
【0015】
開環付加重合触媒は、特に限定されず、複合金属シアン化物錯体が好ましく、亜鉛ヘキサシアノコバルテートがより好ましく、有機配位子を有する亜鉛ヘキサシアノコバルテートが特に好ましい。
有機配位子としては、エーテル系配位子(グライム、ジグライム等。)またはアルコール系配位子(tert−ブチルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、iso−ペンチルアルコール、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル等。)が挙げられる。硬化物の機械物性を向上させるため、重合体(A)の分子量分布を狭くできる、tert−ブチルアルコールが好ましい。
活性水素原子を有する化合物(開始剤)は、特に限定されず、活性水素原子を有する有機化合物が好ましく、ヒドロキシ基、またはアミノ基を有する有機化合物がより好ましく、ヒドロキシ基を有する有機化合物が特に好ましい。活性水素原子を有する化合物中の活性水素原子数は、特に限定されず、1〜4個が好ましい。
【0016】
活性水素原子を有する有機化合物の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、水素化ビスフェノールA、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、アリルアルコール、メタリルアルコール、グリセリン、トリメチロールメタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の非重合体状アルコール類;ポリオキシプロピレンモノオール、ポリオキシプロピレンジオール、ポリオキシプロピレントリオール、ポリオキシエチレンモノオール、ポリオキシエチレンジオール、およびポリオキシエチレントリオールからなる群から選ばれる重合体状アルコールが挙げられる。重合体状アルコールの水酸基換算質量平均分子量は、300〜30,000が好ましく、2,000〜10,000が特に好ましい。
【0017】
重合体(H)に加水分解性ケイ素基を導入して重合体(A)を得る方法は、特に限定されず、下記方法1、下記方法2、または下記方法3によるのが好ましい。高温時の耐久性や引張物性の点から下記方法1が好ましい。
[方法1]まず、重合体(H)とアルカリ金属水酸化物を反応させて重合体(H)中のヒドロキシ基をアルコラートし、これとアルケニルハライドを反応させることによって、ポリオキシアルキレン鎖を有し、かつ分子末端にアルケニル基を有する重合体(以下、重合体(V)ともいう。)を得る。次に、白金触媒の存在下、該重合体(V)とトリアルコキシシランまたはジアルコキシアルキルシランとを反応させて、重合体(A)を得る方法。
[方法2]ラジカル開始剤の存在下、上記重合体(V)と、メルカプト基および加水分解性ケイ素基を有する化合物とを反応させて、重合体(A)を得る方法。
[方法3]重合体(H)と、イソシアネート基および加水分解性ケイ素基を有する化合物とを反応させて、重合体(A)を得る方法。
【0018】
加水分解性ケイ素基を導入した重合体(A)を得る際に、製造中の酸素及び不純物の混入を極力下げて、ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドの発生を極力抑えることが好ましい。重合体(A)中の、揮発物質であるホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドが少ない点で好ましい。ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドは、いわゆるシックハウス症候群の原因物質の一つと言われており、本発明の重合体(A)を含む硬化性組成物を硬化して得られる硬化物を室内で使用する場合は、硬化物中にホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドが少ないことが好ましく、原料である重合体(A)も揮発物質を極力含まないのが好ましい。
ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドそれぞれの、重合体(A)中における含有量は100ppm以下が好ましく、10ppm以下がより好ましく、5ppm以下が最も好ましい。なお、得られた重合体(A)を市販の吸着剤等を用いて後処理し、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドの含有量を低減させてもよい。
【0019】
重合体(A)の1分子あたり平均の加水分解性ケイ素基の数は、特に限定されず、1.0〜4.0個が好ましく、1.5〜2.5個が特に好ましい。なお、重合体(A)には未反応物である、加水分解性ケイ素基を有しないポリオキシアルキレン重合体(前記重合体(H)や前記重合体(V)など)が含まれていることが少なくないが、この未反応物は重合体(A)の一部とみなし、後述するポリエーテル系可塑剤等としてのポリオキシアルキレン重合体やその誘導体とはみなさないものとする。
重合体(A)の数平均分子量(Mn)は、耐久性に優れるという点から5,000以上が好ましい。とりわけ5,000〜50,000が好ましく、15,000〜40,000がさらに好ましく、19,000〜30,000が特に好ましい。
重合体(A)の25℃における粘度は、特に限定されず、5〜40Pa・sが好ましく、8〜30Pa・sが特に好ましい。
本発明の硬化性組成物においては、1種の重合体(A)を用いてもよく、2種以上の重合体(A)を用いてもよい。
【0020】
<可塑剤(B)>
本発明において、可塑剤(B)の少なくとも一部はアクリレート系共重合体(B1)である。可塑剤(B)は、そのすべてがアクリレート系共重合体(B1)であってもよく、可塑剤(B)がアクリレート系共重合体(B1)以外の可塑剤(以下、可塑剤(B2)という)を含んでいてもよい。
(アクリレート系共重合体(B1))
アクリレート系共重合体(B1)は、アクリレートの2種以上の共重合体、または、アクリレートの1種以上と共重合可能な他の単量体の1種以上とを共重合させた共重合体であり、かつ水酸基を有する。アクリレート系共重合体(B1)は、水酸基を有する単量体の1種以上と水酸基を有しない単量体の1種以上との共重合体であることが好ましく、水酸基を有する単量体の少なくとも一部がアクリレートであるか、または、水酸基を有しない単量体の少なくとも一部がアクリレートである。水酸基を有する単量体の少なくとも一部はアクリレートであることが好ましく、水酸基を有する単量体のすべてがアクリレートであることがより好ましい。
水酸基を有する単量体の少なくとも一部がアクリレートである限り、水酸基を有しない単量体はアクリレート以外の単量体であってもよいが、水酸基を有しない単量体の少なくとも一部はアクリレートであることが好ましい。すなわち、アクリレート系共重合体(B1)が、水酸基を有するアクリレートに由来する、水酸基含アクリレートの単位と、水酸基を有しないアクリレートに由来する、水酸基を有しないアクリレートの単位とを含む共重合体であることが好ましい。
アクリレート系共重合体(B1)におけるアクリレート単位の割合は、全単量体単位に対して50モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましい。
【0021】
水酸基を有するアクリレート(本明細書では水酸基含アクリレートともいう。)としては、ヒドロキシアルキルアクリレートが好ましく、そのヒドロキシアルキル部分の水酸基数は1または2であることが好ましく、特に1であることが好ましい。また、ヒドロキシアルキル部分の炭素数は10以下が好ましく、6以下がより好ましい。このようなヒドロキシアルキルアクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、6−ヒドロキシヘキシルアクリレートなどが挙げられる。
水酸基を有しないアクリレートとしては、アルキルアクリレートが好ましい。アルキルアクリレートはアルキル基の炭素数が異なる2種以上を併用することができる。アルキルアクリレートのアルキル基部分は直鎖状であっても、分岐状であってもよい。好ましいアルキルアクリレートは、アルキル基部分の炭素数が4〜16のアルキルアクリレートである。
アルキル基部分の炭素数が4以上のアルキルアクリレートを使用すると、アクリレート系共重合体(B1)の粘度が低くなる傾向にあり、アルキル基部分の炭素数が16以下のアルキルアクリレートを使用すると、アクリレート系共重合体(B1)の重合体(A)に対する親和性が良好になり、可塑剤としての機能を発現できる。したがって、アルキル基部分の炭素数が3以下、17以上のアルキルアクリレートを使用する場合は、アルキル基部分の炭素数が4〜8のアルキルアクリレートと併用することが好ましい。
アクリレート系共重合体(B1)の全単量体単位に対して、このようなアルキル基部分の炭素数が3以下と少ないアルキルアクリレートおよび17以上と大きいアルキルアクリレートに由来する単量体単位の合計が50モル%以下であることが好ましい。
アルキルアクリレートの具体例としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソノニルアクリレート等が挙げられる。
【0022】
アクリレートと共重合可能な他の単量体としては、例えば、メタクリレート系単量体、スチレン系単量体、ビニルエステル系単量体、オレフィン類などが挙げられる。他の単量体としては、特に、アルキルメタクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレートなどのメタクリレート系単量体が好ましい。具体的には、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどが挙げられる。
アクリレートと共重合可能な他の単量体の単位を多く含む重合体は、粘度が高くなりすぎるなどの可塑剤としての機能が不充分となるおそれがあり、アクリレート系共重合体(B1)中のこの単位の割合は全単量体単位に対して0〜50モル%が適当であり、0〜20モル%が好ましい。
【0023】
アクリレート系共重合体(B1)の水酸基価は60〜130mgKOH/gである。水酸基価は、アクリレート系共重合体(B1)中の水酸基を有する単量体の単位の割合で調整される。水酸基価が60mgKOH/g以上であると、硬化物と塗膜との密着性、および硬化物上に設けられた塗膜の耐汚染性を良好に向上できる。130mgKOH/g以下であると硬化性組成物の貯蔵安定性の悪化を抑えつつ、上記密着性および耐汚染性を良好に向上できる。アクリレート系共重合体(B1)の水酸基価のより好ましい範囲は70〜120mgKOH/gである。
アクリレート系共重合体(B1)の質量平均分子量(Mw)は1,000〜12,000が好ましく、2,000〜10,000がより好ましく、2,000〜7,000がさらに好ましい。アクリレート系共重合体(B1)の質量平均分子量(Mw)が1,000以上であると、硬化物上に設けられた塗膜中へ移行しにくいため塗膜汚染等の影響が少ない。また、質量平均分子量(Mw)が12,000以下であると可塑剤としての効果が充分に得られ、アクリレート系共重合体(B1)を含む硬化性組成物の粘度が低下する。
また、アクリレート系共重合体(B1)の1分子当たりの水酸基数は1〜20が好ましく、より好ましくは2〜15であり、3〜14がもっとも好ましい。
【0024】
アクリレート系共重合体(B1)は、それ単独での、25℃における粘度が1,000〜13,000mPa・sであることが好ましい。1,000mPa・s以上であると、硬化物上に設けられた塗膜中へ移行しにくいため塗膜汚染等の影響が少なく、13,000mPa・s以下であると可塑化効果が充分に得られ、アクリレート系共重合体(B1)を含む硬化性組成物の粘度が低下する。アクリレート系共重合体(B1)の粘度は、1,000〜10,000mPa・sがより好ましく、1,000〜6,000mPa・sがさらに好ましい。
アクリレート系共重合体(B1)は1種でもよく、2種以上を併用することも可能である。アクリレート系共重合体(B1)を2種以上用いる場合、上記水酸基価、質量平均分子量(Mw)、および粘度の値は、それぞれの重合体単独での値である。
【0025】
(可塑剤(B2))
可塑剤(B)として、アクリレート系共重合体(B1)以外の可塑剤である、可塑剤(B2)を、アクリレート系共重合体(B1)とともに使用してもよい。可塑剤(B2)としては、公知のものを適宜用いることができる。具体例としては以下のものが挙げられる。可塑剤(B2)の分子量(M)は15,000未満が好ましい。
フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジブチル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸イソノニル等のフタル酸エステル系可塑剤;
アジピン酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、セバシン酸ジブチル、オレイン酸ブチル等の脂肪族カルボン酸エステル系可塑剤;
ペンタエリスリトールエステルなどのアルコールエステル類;
リン酸トリオクチル、リン酸トリクレジル等のリン酸エステル系可塑剤;
エポキシ化大豆油、4,5−エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシステアリン酸ベンジル等のエポキシ系可塑剤;
塩素化パラフィン;
2塩基酸と2価アルコールとを反応させてなるポリエステル類などのポリエステル系可塑剤;
ひまし油またはひまし油誘導体、流動パラフィン、テルペン等の炭化水素系可塑剤;
ポリオキシプロピレングリコールやその誘導体、例えばポリオキシプロピレングリコールの水酸基をアルキルエーテルで封止したポリエーテル系可塑剤;
ポリ−α−メチルスチレン、ポリスチレン等のポリスチレンのオリゴマー類、ポリブタジエン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、ポリブテン、水添ポリブテン、エポキシ化ポリブタジエン等のオリゴマー類等の高分子可塑剤が挙げられる。
これらのうちで、ポリオキシプロピレングリコールまたはその誘導体、流動パラフィンやテルペン等の炭化水素系可塑剤が好ましい。
可塑剤(B2)は1種でもよく、2種以上を併用することも可能である。
【0026】
本発明の硬化性組成物は、重合体(A)100質量部に対して、可塑剤(B)を30〜100質量部、好ましくは30〜80質量部含む。可塑剤(B)が30質量部以上であると、硬化性組成物の糸引きを抑えやすく作業性の点で好ましい。100質量部以下であると、硬化物の良好な強度が得られやすい
可塑剤(B)の全量に対する、アクリレート系共重合体(B1)が占める割合は50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、100質量%でもよい。アクリレート系共重合体(B1)が50質量%以上であると、硬化物と塗膜との密着性、および硬化物上に設けられた塗膜の耐汚染性の向上効果が得られやすい。
【0027】
<他の配合成分>
本発明の硬化性組成物には、重合体(A)および可塑剤(B)のほかに、重合体(A)の範疇に含まれない加水分解性ケイ素基含有重合体(以下重合体(C)という)が含有されていてもよい。重合体(C)は、重合体(A)と同様に硬化する機能を有し、重合体(A)と併用できる。さらに、本発明の硬化性組成物は、可塑剤(B)のほかに、重合体(A)を硬化性成分とする硬化性組成物に配合することが知られている各種添加剤を適宜含有することができる。
【0028】
(重合体(C))
重合体(C)は、重合体(A)以外の、加水分解性ケイ素基を有する重合体であり、例えば、加水分解性ケイ素基を有するアクリレート系重合体、加水分解性ケイ素基を有するメタクリレート系重合体、加水分解性ケイ素基を有するポリイソブチレン重合体などの、ポリオキシアルキレン鎖を有しない重合体が挙げられる。重合体(C)の質量平均分子量(Mw)は、特に限定されるものではないが、3,000以上が好ましく、5,000以上がより好ましい。また、質量平均分子量(Mw)の上限は40,000であることが好ましい。重合体(C)を含有させる場合、その含有量は重合体(A)の100質量部に対して50質量部以下であることが好ましく30質量部以下であることがより好ましい。なお、重合体(C)を含む硬化性組成物における可塑剤(B)や他の配合剤の量は、重合体(A)に対する量的割合を重合体(C)の含有量を考慮した量的割合に変更することができるが、重合体(C)の量が少ない場合(重合体(A)の100質量部に対して30質量部以下の場合)はその必要性はない。
【0029】
本発明の硬化性組成物は、さらに、硬化触媒と充填材を通常含み、また、多くの場合、さらに、脱水剤、接着付与剤などを含む。また、任意に、助触媒、光硬化性化合物、モジュラス調整剤、チキソ付与剤、老化防止剤、顔料などを含有させてもよい。以下これらの添加剤について説明する。
(硬化触媒)
本発明の硬化性組成物は、硬化触媒を、重合体(A)の100質量部に対して、0.01〜15.0質量部含むのが好ましく、0.1〜10質量部含むのが特に好ましい。
硬化触媒は、重合体(A)の加水分解反応を触媒する化合物であれば特に限定されず、有機金属錯体が好ましい。
有機金属錯体は、中心金属がSn(II)である有機金属錯体、中心金属がSn(IV)である有機金属錯体、または中心金属がBi(II)である有機金属錯体が好ましく、中心金属がSn(II)である有機金属錯体が特に好ましい。
中心金属がSn(II)である有機金属錯体の具体例としては、ビス(2−エチルヘキサン酸)スズ、ジナフテン酸スズ、ジステアリン酸スズ等が挙げられる。
【0030】
(助触媒)
本発明の硬化性組成物は、硬化触媒に加えて助触媒をさらに含んでいてもよい。助触媒を含むことで硬化触媒の触媒作用を高めることができる。助触媒は、アミン、カルボン酸、またはリン酸が好ましく、硬化性組成物の速硬化性と硬化物の機械物性との観点から、アミンが特に好ましい。助触媒は、1種を用いてもよく2種以上を用いてもよい。
助触媒を使用する場合は、重合体(A)の100質量部に対して、0.01〜15質量部を用いるのが好ましく、0.1〜5質量部を用いるのが特に好ましい。
【0031】
アミンは、特に限定されず、第1級アミンが好ましい。アミンの具体例としては、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、N、N−ジメチルオクチルアミン等の脂肪族モノアミン;エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族ポリアミン;芳香族アミン;アルカノールアミン;N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン等の加水分解性ケイ素基を有するアミンが挙げられる。
カルボン酸は、特に限定されず、炭素数1〜20のカルボン酸が好ましく、酢酸、プロピオン酸、2−エチルヘキサン酸、ステアリン酸、アジピン酸、シュウ酸、クエン酸、アクリル酸、メタクリル酸、または安息香酸が好ましい。
【0032】
触媒と助触媒の好ましい態様としては、中心金属がSn(II)である有機金属錯体とアミンからなる態様、中心金属がBi(II)である有機金属錯体とアミンまたはカルボン酸からなる態様が挙げられる。
【0033】
(充填材)
本発明の硬化性組成物は、作業性と経済性の観点から、充填材を含むのが特に好ましい。充填材は、従来、シーリング材または接着剤に使用していたものを使用することができる。特に限定されず、重質炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム等の炭酸カルシウム;サランバルーン、フェノールバルーンの有機樹脂バルーン、またはガラスバルーンの無機バルーン、酸化チタン等が挙げられる。1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の硬化性組成物は、重合体(A)の100質量部に対して、充填材を1〜1000質量部含むのが好ましく、10〜700質量部含むのがより好ましく、100〜500質量部含むのが特に好ましい。本発明の硬化性組成物は充填材を多量含んでいても、硬化物の優れた耐久性が得られる。
【0034】
(光硬化性化合物)
重合体(A)を含有する硬化性組成物に、分子内に複数のアクリロイルオキシ基および/またはメタクリロイルオキシ基(以下、(メタ)アクリロイルオキシ基という場合がある)を有する光硬化性化合物を含有させてもよい。該化合物は耐候性の向上に寄与する。
該光硬化性化合物としては、光硬化性を有する公知の多官能(メタ)アクリレート化合物を適宜用いることができる。
例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリペンタエリスリトール−カプロラクトン付加物のアクリル酸エステル化合物またはメタクリル酸エステル化合物等を用いることができる。
これらのうち、ポリペンタエリスリトール−カプロラクトン付加物のアクリル酸エステル化合物またはメタクリル酸エステル化合物が好ましく、具体例としては、カヤラッドDPCA−20、カヤラッドDPCA−30、カヤラッドDPCA−60、カヤラッドDPCA−120(いずれも日本化薬社製)などが例示できる。
これらは単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。かかる光硬化性化合物を使用する場合、その使用量としては、重合体(A)の100質量部に対し、0.1〜20質量部が好ましい。該使用量が0.1質量部より小さいと、顕著な耐候性効果が見られず、20質量部を超えると、硬化性が遅くなる傾向があり好ましくない。該使用量は、0.1〜20質量部がより好ましく、1〜10質量部が更に好ましい。
【0035】
(接着性付与剤)
接着性付与剤の具体例としては、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するシラン、アミノ基を有するシラン、エポキシ基を有するシラン、カルボキシル基を有するシラン等の有機シランカップリング剤;イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)プロピルトリメトキシチタネート、3−メルカプトプロピルトリメトキチタネート等の有機金属カップリング剤が挙げられる。
アミノ基を有するシランとしては、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられ、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。
本発明の硬化性組成物がシランカップリング剤を含む場合、重合体(A)100質量部に対して、シランカップリング剤を30質量部以下含むのが好ましい。
【0036】
(脱水剤)
脱水剤の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、オルトケイ酸テトラメチル(テトラメトキシシランないしはメチルシリケート)、オルトケイ酸テトラエチル、オルトケイ酸テトラプロピル、オルトケイ酸テトラブチル等のシラン類;オルトぎ酸トリメチル、オルトぎ酸トリエチル、オルトぎ酸トリプロピル、オルトぎ酸トリブチル等のオルトぎ酸トリアルキル;オルト酢酸トリメチル、オルト酢酸トリエチル、オルト酢酸トリプロピル、オルト酢酸トリブチル等のオルト酢酸酸トリアルキルが挙げられる。本発明の硬化性組成物が脱水剤を含む場合、重合体(A)100質量部に対して、脱水剤の0.001〜30質量部を含むのが好ましい。
【0037】
(その他の添加剤)
モジュラス調整剤としては、加水分解によりトリメチルシラノールを発生する化合物が用いられる。具体例としては、フェノキシトリメチルシラン、2,2−ビス[(トリメチルシロキシ)メチル]−1−(トリメチルシロキシ)ブタン等が挙げられる。1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
チキソ性付与剤の具体例としては、水添ひまし油、脂肪酸アミドが挙げられる。
老化防止剤の具体例としては、ポリウレタン樹脂用の酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤が挙げられる。老化防止剤の具体例としては、ヒンダードアミン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエ−ト系、シアノアクリレート系、アクリレート系、ヒンダードフェノール系、リン系、または硫黄系の老化防止剤が挙げられる。
顔料の具体例としては、酸化鉄、酸化クロム、酸化チタン等の無機顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の有機顔料が挙げられる。
【0038】
<硬化性組成物>
本発明の硬化性組成物は、湿気硬化してゴム弾性に優れた硬化物を形成する。
本発明の硬化性組成物は、全成分を含有する液を、水分の入らない条件下で製造し、密閉容器に入れ保存し、使用時に容器から出し、大気中に曝すことにより湿気硬化させる一液型の硬化性組成物であってもよい。または重合体(A)を含有する主剤と、硬化触媒を含有する硬化剤とを別個に調製、保管する二液型の硬化性組成物(硬化システム)であってもよい。一液、二液型ともに好ましい形態であるが、配合物の貯蔵安定性の点からは、二液型の方が好ましい。二液型の場合は、使用に際して、主剤と硬化剤を混合し、常温で、または必要に応じて加熱して硬化させる。主剤は、密閉容器に入れ保存し、使用時に容器に硬化剤や必要により着色材(トナー)を添加して混合することが好ましい。
【0039】
<塗膜>
本発明の硬化性組成物は、その硬化物に密着して塗膜を設けて塗装物とする用途に好適である。例えば、住宅外壁を構成するサイディングボード間に、本発明の硬化性組成物からなるシーリング材を公知の手法で充填し、硬化させた後、該シーリング材の硬化物表面とサイディングボード表面に対して一括的に塗料を塗って塗装外壁(塗装物)を形成するのに好適に用いられる。
【0040】
塗料は、特に限定されず、溶液型の上塗り塗料として公知のものを適宜使用できる。また該上塗り塗料の塗布に先立って、本発明の硬化性組成物の硬化物上に、公知の溶液型の下塗塗料または中塗り塗料を塗布してもよい。
好ましい塗料の具体例としては、ポリウレタン樹脂塗料、アクリルシリコン樹脂塗料、常乾フッ素樹脂塗料、等の溶剤系塗料;アクリル系エマルション塗料、アクリルウレタン系エマルション塗料、アクリルシリコン系エマルション塗料、フッ素樹脂系エマルション塗料、等の水系塗料が挙げられる。これらのうちでも硬化物との密着性の点でアクリルシリコン樹脂塗料やアクリルシリコン系エマルション塗料が好ましい。
【0041】
塗膜の形成方法は特に限定されず、公知の手法を適宜用いることができる。例えば、少なくとも本発明の硬化性組成物の硬化物表面を含む被塗装面に対して、浸漬、吹き付け、刷毛などを用いた塗布方法によって塗料を塗布し、常温で放置、または30℃程度以上で焼き付けて硬化させて塗膜を形成することができる。
本発明の硬化性組成物の硬化物以外の被塗装面の材質は、特に限定されないが、例えば金属、セラミックス、ガラス、セメント、窯業系成形物、プラスチック、木材、紙、繊維などが挙げられる。
【0042】
本発明の硬化性組成物は、硬化物と塗膜との密着性に優れるとともに、硬化物上に設けられた塗膜の耐汚染性も良好である。
すなわち、硬化物と塗膜との密着性を向上させる従来の可塑剤は、硬化物から可塑剤がブリードアウトして塗膜側へ移行して塗膜表面にべたつきが生じやすいために、塗膜が汚染されやすいと考えられる。これに対して本発明では、後述の実施例に示されるように、硬化物の表面と塗膜との密着性が良好であるにもかかわらず、塗膜の表面には粉体が付着し難く耐汚染性に優れる。
かかる効果が得られる理由は明確ではないが、可塑剤(B)として用いる特定のアクリレート系共重合体(B1)が、エステル基を有するとともに適度に水酸基を有していることが、硬化物表面と塗膜との密着性向上と、硬化物からの可塑剤のブリードアウト抑制の両立に関与していると考えられる。
【実施例】
【0043】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[製造例1:重合体(A1)の製造]
ジプロピレングリコールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテート−グライム錯体触媒の存在下、プロピレンオキシドを反応させて、Mnが16,000でMw/Mnが1.4のポリオキシプロピレンジオールを得た。
このポリオキシプロピレンジオールの末端を、以下の方法でアリル基に置換した。すなわちポリオキシプロピレンジオールの水酸基のモル数に対して1.05倍モルのナトリウムメトキシドをメタノール溶液として添加し、加熱減圧下でメタノールを留去して水酸基をナトリウムアルコキシドとし、続いて、過剰量の塩化アリルを添加して反応させた。未反応の塩化アリルを除去後、副生した無機塩を除去精製して、アリル基末端のオキシアルキレン重合体(a1)を得た。
【0044】
これとは別に、グリセリンを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテート−グライム錯体触媒の存在下、プロピレンオキシドを反応させて、Mnが20,000でMw/Mnが1.4のポリオキシプロピレントリオールを得た。
このポリオキシプロピレントリオールの末端を、上記(a1)と同様にしてアリル基に置換し、アリル基末端のオキシアルキレン重合体(a2)を得た。
【0045】
次いで、重合体(a1)の350gと重合体(a2)の150gとを、窒素置換された反応容器内に仕込み、1,1,3,3−テトラメチルジビニルシロキサン白金錯体(以下VTS錯体と表す)を白金濃度が2ppmになるように添加し、さらに30分攪拌した。
次に、ジメトキシメチルシランを、仕込んだ重合体(a1)と重合体(a2)のアリル基の70モル%反応分の量で加えて、70℃で5時間反応させた。反応終了後、減圧にして揮発性物質を除去することにより、25℃における粘度が13,000mPa・s、Mw/Mnが1.4である、淡黄色透明の、加水分解性ケイ素基含有オキシアルキレン重合体(A1)の500gを得た。また、重合体(A1)中のホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドを下記方法で測定したところ、それぞれ、1.1ppm、0.6ppmであった。
【0046】
[ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒド量の測定方法]
重合体(A1)の150mgを液体クロマトグラフィー用アセトニトリルの2mLに溶解し、さらに2,4−ジニトロフェニルヒドラジンの2mLを加えて、一晩常温にて保存し、重合体(A1)のアセトニトリル溶液を作成した。その後、トルエンの2mLを加えて激しく攪拌した後、放置すると、アセトニトリル層が下、トルエン層が上の状態で分離するので、トルエン層を回収した(1回目)。トルエン層にはホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドと2,4−ジニトロフェニルヒドラジンの反応物が溶解している。残った重合体(A1)のアセトニトリル溶液にトルエンの2mLをさらに加えて激しく攪拌した後、再びトルエン層を回収した(2回目)。回収した2回分のトルエン層を1つにし、窒素をバブリングすることでトルエンを完全に除去し、アセトニトリルの2mLを加えて、測定用サンプルを作成した。測定は、高速液体クロマトグラフィーで行い、移動相には、水/アセトニトリル=50/50(質量比)、を使用した。
【0047】
[実施例および比較例]
上記製造例で得た重合体(A1)、表1および表2に示す可塑剤、および下記の成分を用い、表3および表4に示す配合の硬化性組成物を調製した。すなわち表3および表4の成分のうち、硬化触媒を除く残りの全成分を、3本ロールで均一に混練した。その後、硬化触媒を添加し、充分に攪拌して硬化性組成物を得た。得られた硬化性組成物およびその硬化物について、下記の方法で評価を行った。評価結果を表3および表4に示す。なお、表2〜4における配合割合の単位は「質量部」である。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
表1に示す可塑剤は以下の通りである。可塑剤A〜Hはいずれも東亜合成社製のアクリレート系重合体である。これらのアクリレート系重合体は、ブチルアクリレートを主とするアルキルアクリレートとヒドロキシアルキルアクリレートの共重合体(ただし、水酸基価0mgKOH/gのものは、ヒドロキシアルキルアクリレート単位を含まない)であると認められる。
可塑剤A:商品名:アルフォンUH2030(東亜合成社製)。
可塑剤B:商品名:アルフォンUH2031(東亜合成社製)。
可塑剤C:商品名:アルフォンUH2032(東亜合成社製)。
可塑剤D:商品名:アルフォンUH2041(東亜合成社製)。
可塑剤E:商品名:アルフォンUH2000(東亜合成社製)。
可塑剤F:商品名:アルフォンUH2130(東亜合成社製)。
可塑剤G:商品名:アルフォンUP1000(東亜合成社製)。
可塑剤H:商品名:アルフォンUP1020(東亜合成社製)。
可塑剤I〜N:いずれも、触媒存在下で開始剤にアルキレンオキシドを開環付加重合して得られる重合体である。可塑剤I〜Mはアルキレンオキシドがプロピレンオキシドの単独重合体であり、可塑剤Nはプロピレンオキシド(80モル%)をブロック重合させた後にエチレンオキシド(20モル%)をブロック重合させた重合体である。
【0051】
可塑剤O〜R:可塑剤O〜Rは、表2のアクリレートモノマー、開始剤および連鎖移動剤を使用し、次のように合成した。攪拌機付きの耐圧反応器に酢酸エチルの50gを入れて、約67℃に昇温した。反応容器内温を約67℃に保ち、窒素雰囲気下、攪拌しながら、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、およびn−ドデシルメルカプタンならびに2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(商品名:V65、和光純薬株式会社製)を表2記載した所定量を混合した溶液を前記溶媒中に3時間かけて滴下した。滴下終了後さらに約67℃で20時間加熱攪拌した。その後、0.1gのV65を溶解した酢酸エチル溶液の10gを30分かけてさらに滴下した後、さらに約67℃で3時間加熱攪拌し、温度を100℃に上げて、酢酸エチルを除去し、表1の可塑剤O〜Rを調製した。
可塑剤S:フタル酸ジイソノニル(新日本理化株式会社)。
可塑剤T:流動パラフィン 商品名:モレスコホワイトP−350P(松村石油社製)
可塑剤U:流動パラフィン 商品名:モレスコホワイトP−120(松村石油社製)
【0052】
充填材(1):商品名:白艶華CCR(白石工業社製)。
充填材(2):商品名:ホワイトンSB(白石カルシウム工業社製)。
脱水剤(1):商品名:KBM−1003(信越化学工業社製)、ビニルトリメトキシシラン。
接着付与剤(1):商品名:KBM−603(信越化学工業社製)、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン。
接着付与剤(2):商品名:KBM−403(信越化学工業社製)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン。
硬化触媒(1):ジブチル錫ジラウレート(東京化成工業社製)。
【0053】
[評価方法]
(塗膜密着性試験)
得られた硬化性組成物を、厚み2mm×縦100mm×横30mmとなるように枠内に充填し、温度23℃、湿度50%の雰囲気下で3日間養生を行い、その後、屋外で7日間追加養生して硬化させた。
得られた硬化物の表面に塗料を塗布し、室温で3日間養生して塗膜(膜厚200μm)を形成した。JISK5600−5−6に準拠する、セロテープ(登録商標)を用いたクロスカット法により、塗膜と硬化物との密着性を試験した。塗料は、主成分が水系のアクリルシリコン樹脂である、商品名:アレスアクアシリコンACII、(関西ペイント社製)を使用した。
結果は、セロテープ(登録商標)側に付着して剥がれた塗膜面積を目視で確認し、セロテープ(登録商標)の面積を100%とする割合(単位:%)で表わす。この値が小さいほど密着性が良い。
【0054】
(糸引き試験)
23℃の雰囲気中で、上面が開口部(面積4cm)となっている円柱状の容器に、調製直後の硬化性組成物(触媒未添加)を、深さが5cmとなるように充填した。前記開口部の中心において、容器内の硬化組成物中に、直径3mmの円柱状の金属棒を、該金属棒の先端から4cmにわたって挿入し、金属棒と容器をそれぞれ固定した。
その直後、容器のみを垂直に落下させ、金属棒の下端から硬化性組成物が垂れ下がる長さの最大値を計測し、糸引き性の指標とした。垂れ下がる長さが短い方が、糸引きが少なくて組成物として取り扱い易い。長くなるほど組成物が切れにくく作業性が悪い。評価基準は、垂れ下がる長さが、10cm以下を○(優良)、それより長い場合を×(不可)とした。
【0055】
(耐汚染性試験)
得られた硬化性組成物を、厚み2mm×縦50mm×横50mmになるように、枠内に充填し、温度23℃、湿度50%で1週間養生させ、硬化させた。その後、塗料を所定量塗り、一日室温で乾燥させた後、80℃オーブン中で、4日間加熱してサンプルとした。
JIS Z8901(試験用粉体及び試験用粒子)に規定されている、JIS試験用粉体1(11種、関東ローム焼成品(日本粉体工業技術協会))を、予め250メッシュの篩に通したものを、サンプルの上から軽く振りかけた。振りかける粉体の量は3〜5gの範囲とした。その後、サンプルを垂直にたてて軽く叩いて、付着していない粉体を取り除き、更に0.1MPaの窒素ガスを吹きかけて余分な粉体を取り除いた後、表面に付着している粉体量を目視で判断した。評価基準は粉体が付着していないサンプルを○(優良)、一部に付着しているものは△(不良)、表面全体に付着しているものは×(不可)とした。
【0056】
【表3】

【0057】
【表4】

【0058】
表3の結果に示されるように、本発明にかかる実施例1〜11の硬化性組成物は、糸引きが少なく取り扱いやすい。また硬化物は塗膜との密着性に優れるとともに、塗膜表面に粉体が付着し難く耐汚染性も良好である。
これに対して、可塑剤として水酸基価が20mgKOH/gまたは34mgKOH/gと低いアクリル重合体を用いた比較例1、2は、硬化物の塗膜との密着性は良好であったが、硬化性組成物が糸を引き易く、取り扱い性(作業性)が良くない。塗膜の耐汚染性は不十分であった。
比較例3、4は、可塑剤として水酸基を有しないアクリレート系共重合体を用いた例である。組成物の糸引きは少ないが、硬化物の塗膜密着性が良くなかった。塗膜の耐汚染性は不十分であった。
比較例5〜10は、可塑剤として、エステル結合を有しないポリアルキレン重合体を用いた例である。組成物の糸引きは少ないが、硬化物の塗膜密着性が良くなかった。塗膜の耐汚染性はオキシエチレン鎖を含むポリオキシアルキレン重合体は不十分であったが、それ以外は良好であった。
比較例11は、可塑剤として水酸基価が40mgKOH/gのアクリレート系共重合体を用いた例である。硬化性組成物の糸引きは少なく硬化物の塗膜密着性は良かったが、塗膜の耐汚染性が不十分であった。
比較例12は、可塑剤として水酸価が150mgKOH/gのアクリレート系共重合体を用いた例である。硬化物の塗膜密着性が良く、塗膜の耐汚染性は良好であったが、硬化性組成物が糸を引き易く、取り扱い性(作業性)が良くなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン重合体(A)と可塑剤(B)とを含有し、可塑剤(B)の含有量が加水分解性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン重合体(A)100質量部に対して30〜100質量部であり、
前記可塑剤(B)の少なくとも一部が、水酸基価60〜130mgKOH/gの水酸基を含有するアクリレート系共重合体(B1)であることを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
前記可塑剤(B)の含有量が、加水分解性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン重合体(A)100質量部に対して30〜80質量部である請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記アクリレート系共重合体(B1)の含有量が、可塑剤(B)の全量に対して50〜100質量%である、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記アクリレート系共重合体(B1)の、25℃における粘度が1,000〜13,000mPa・sである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記アクリレート系共重合体(B1)が、水酸基含アクリレートの単位と水酸基を有しないアクリレートの単位とを含む共重合体である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記水酸基含アクリレートの単位が、ヒドロキシアルキル部分の炭素数が10以下のヒドロキシアルキルアクリレートに由来する単位である、請求項5に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記水酸基を有しないアクリレートの単位が、アルキル基部分の炭素数が4〜16のアルキルアクリレートに由来する単位を含む、請求項5または6に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の硬化性組成物の硬化物に密着して塗膜が設けられている塗装物。
【請求項9】
前記硬化物がシーリング材である、請求項8に記載の塗装物。

【公開番号】特開2011−79930(P2011−79930A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232525(P2009−232525)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】