説明

硬化性組成物およびシール方法

本発明は、(a)ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を分子中に少なくとも1個含有し数平均分子量500〜1,000,000のビニル系重合体、(b)ヒドロシリル基含有化合物および(c)シリコーンパウダーからなる硬化性組成物、および該硬化性組成物を用いたシール方法を提供する。本発明によれば、現場成形性に優れ、耐熱、耐薬品、耐オイル性に優れ、かつ圧縮永久歪みが低い硬化性組成物を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬化性組成物に関するものであり、現場成形ガスケット用途に適したものであり、さらに詳しくは、反応硬化型ビニル系重合体を主成分とした耐油性、耐熱性などに優れたものであり、特に耐圧縮永久歪性が良好な硬化性組成物および該組成物を用いたシール方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車部品や電機部品などは内部の液体・気体を外部に漏洩させないため、あるいはその逆に外部の液体、気体、汚れなどを内部に侵入させないため、内部と外部とを密封する必要が生じることがある。通常密封すなわちシールは部材を密接させることにより得ることができるが、固いもの同士を密接しても有効なシール効果は得られ難い。その場合はパッキンやガスケットなど比較的柔らかいシートなどの部材を間に挟み圧接する。このとき、当接する部分を通常フランジと呼んでいる。このパッキンや固形ガスケットは紙、コルク、ゴムなどを金型成型したり、シートを打ち抜きしたりして形成する。
【0003】
周知の問題点ではあるが、前述のパッキンや固形ガスケットは被シール部品の形状ごとに必要であり、部品点数が多くなったり、被シール部品に組み込むのに自動化しにくいといった欠点が存在するため、液状のシール材を被シール部品のフランジ部に塗布し、硬化させる現場成形ガスケットが多用されている。現場成形ガスケットは大別して3つに分類される。1つ目は、予め被シール部品のフランジに金型を圧接し、金型とフランジ間に生じたキャビティーに加熱硬化型シリコーンなどの液状シール材を注入し、硬化させガスケットを形成するモールド・インプレイス・ガスケット(MIPG)法、2つ目は被シール部品のフランジに室温(湿気)硬化性や2液混合硬化性のシリコーンなどの液状シール剤を自動塗布し、もう一方の被シール部品のフランジを圧接し、所定時間養生してフランジ間の液状シール剤を硬化させるフォームド・インプレイス・ガスケット(FIPG)法、3つ目は被シール部品のフランジに2液混合硬化性や加熱硬化性のシリコーンなどの液状シール剤をビード状に塗布し、そのまま所定時間養生または加熱して、シール部を形成するキュアード・インプレイス・ガスケット(CIPG)法である。
【0004】
MIPGは被シール部品ごとに金型を用意しなければならないため、少量多品種の製品には不向きであり、また、バリを生じさせないための生産技術も容易ではない。FIPGは自動化が容易であり、硬化養生は部品を組み合わせたまま放置できる場合が多いため生産性に優れる。しかし、被シール部品のフランジ間は未硬化の時点で貼り合わされるため形成されるシール層すなわちフランジ間のシール剤は薄膜になる。これはフランジ同士を接着するようなものであり、非常に高いシール耐圧性を示す反面、使用条件が高温になるもの、振動の激しいものなど条件の厳しいものはシール層が破壊される可能性やシール剤とフランジの界面で剥離する可能性があり、そのような箇所への使用に懸念されるようになった。CIPGはシール剤をビード状に形成し、もう一方の被シール部材のフランジで圧接するものであり、シール剤の弾性から生じる反発力によりシール性を確保するものであった。そのため、長期的なシール効果を発現するためには反発力を長期的に維持する、すなわち、圧縮永久歪が低いシール剤を使用することが必要であった。
【0005】
上述の現場成形ガスケットに使用されるシール剤はオルガノポリシロキサンを主成分としたものがほとんどである。オルガノポリシロキサンはいわゆるシリコーン樹脂とよばれ、耐熱性に優れ取り扱い性に優れており、特許文献1、特許文献2などをはじめ数多くの先行文献が発表されている。
【特許文献1】特開昭63−251488号公報
【特許文献2】特開平5−246456号公報
【0006】
しかしながら、近年、エンジン部などエンジオイルやギヤーオイルなどを高温時でシールしなければならない箇所において、潤滑性能向上のため局圧添加剤を増加させたオイル類を使用する箇所が増えてきた。この部位にシリコーン樹脂を使用するとオイル類に含まれる局圧添加剤がオルガノポリシロキサンの結合を切断してしまい、シール剤を劣化させてしまうという問題が発生するようになってきた。特にCIPGにおいてはシール形状がビード状であるためオイル類と接触する面積が大きく、劣化させられる可能性が高い。よって、特許文献3のようにシリコーン樹脂を用いず、アクリル酸エステルを共重合させたいわゆるアクリルゴムを用いたシール剤も提案されている。アクリルゴムはシリコーン樹脂に比べ、局圧添加剤による劣化は少ないものであり、そのような箇所に対して有用である。しかしながら特許文献3に代表されるアクリルゴムは常温で固体であるため固形パッキンとして使用することしかできず、FIPGやCIPGのように液状物を塗布して硬化させるといった手法に手軽に使用するということはできなかった。
【特許文献3】特開平8−284746号公報
【0007】
一方、比較的低分子のアクリル酸エステルの共重合体の分子中に反応性官能基を付加し、反応性官能基を反応させることにより硬化させる技術は古くから提案されていた。それは特許文献4などに記載され、特許文献4記載の組成物を使用すれば、塗布時は液状であるため簡便に塗布することが可能であり、硬化させるとアクリルゴムの耐オイル性が発現されるため非常に有用な組成物である。しかし、実際にはアクリル酸エステルの共重合反応において選択的に反応性官能基を付加することは困難であり、商業的にこのような樹脂は実用化されていなかった。近年、特許文献5〜8などに記載される方法により、反応性の液状アクリルゴムが開発され、実用的にも可能になるに至った。
【特許文献4】特開昭61−133201号公報
【特許文献5】特開平11−80250号公報
【特許文献6】特開2000−38404号公報
【特許文献7】特開2001−271055号公報
【特許文献8】特開2002−69121号公報
【0008】
特許文献4〜8に記載される樹脂組成物をCIPG法の現場成形ガスケットに応用してみると耐オイル性に優れ、前述の問題点は解決されるが、従来のシリコーン樹脂に比べ圧縮永久歪が大きく、経時に従って、フランジの圧接に対する反発力が低下してきてしまい、シール性が経時で低下してしまうという欠点が生じた。さらに、汗かき現象が発生するという欠点も生じた。ここで、汗かき現象とはエンジンオイルなどシールされるべき液体がシール剤と接触し、シール剤に浸透し、シール剤を貫通して外側に達してしまうことにより、シール剤が汗をかいたようにしみ出てしまう現象である。汗かき現象による漏洩は非常に微量であるため、内圧が変化したり、シールされる液体量が減ったりというほどの問題は生じないが、汗かき現象がおこったシール剤は粉塵や塵などの汚れが付着しやすくなり製品の外観性が損なわれる。そればかりでなく、シール不良によるオイル漏れと区別が付きづらいため、これがシール剤自体の不良による内容物の漏洩の早期発見の妨げるものであった。よって、上述の問題点を改善したものが望まれてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は背景技術における上記問題点を解決するためになされたものであり、硬化前は常温で液体であるビニル系共重合体を主成分とした組成物であって、短時間で硬化し、硬化後は耐熱性、耐油性、耐圧縮永久歪性に優れた硬化性組成物を提供することを目的とする。
さらに、本発明の他の目的は、上記硬化性組成物を用いて有効的にシールするシール方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、(a)ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を分子中に少なくとも1個含有し数平均分子量500〜1,000,000のビニル系重合体、(b)ヒドロシリル基含有化合物および(c)シリコーンパウダーからなる硬化性組成物に関する。
【0011】
また、本発明は、上記硬化性組成物を被シール物の少なくとも片方に塗布する工程、塗布後の前記組成物を硬化させる工程、次いでもう一方の被シール物で圧接する工程からなるシール方法にも関する。
さらに、本発明は上記硬化性組成物を2液混合型とした硬化性組成物セット、および該硬化性組成物セットを用いたシール方法にも関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は対オイル性、耐薬品性、耐熱性がよい硬化性組成物であり、現場成形性能に優れかつ、従来の欠点であった圧縮永久歪が低く、また、汗かき現象も生じないものであり、高温環境下であっても長期間シール性能が低下することなく使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の(a)成分であるヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を分子中に少なくとも1個含有し数平均分子量500〜1、000,000のビニル系重合体は主鎖がビニル系化合物の共重合体であり、分子末端または分子鎖にアルケニル基が付属したものである。本成分の詳細な製造方法は前述の特許文献4〜8に記載されており、これを利用することができる。
【0014】
本発明のビニル系重合体(a)の主鎖を構成するビニル系モノマーとしては特に限定されず、各種のものを用いることができる。例示するならば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル酸系モノマー;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等のスチレン系モノマー;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニルモノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系モノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられる。これらは、単独で用いても良いし、複数を共重合させても構わない。なかでも、生成物の物性等から、スチレン系モノマー及び(メタ)アクリル酸系モノマーが好ましい。より好ましくは、アクリル酸エステルモノマー及びメタクリル酸エステルモノマーであり、特に好ましくはアクリル酸エステルモノマーであり、更に好ましくは、アクリル酸ブチルである。本発明においては、上記モノマーを他のモノマーと共重合、更にはブロック共重合させても構わなく、その際は、上記モノマーが重量比で40%以上含まれていることが好ましい。なお上記表現形式で例えば(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸および/あるいはメタクリル酸を表す。
【0015】
本発明のビニル系重合体の数平均分子量は500〜1,000,000の範囲であり、1000〜100,000がさらに好ましい。分子量500未満であれば、硬化物におけるヒドロシリル結合の存在量が多くなり、ビニル系重合体の本来の特性が発現されにくく、また、1,000,000より多いと、粘度が高くなり、ディスペンス塗布がしにくいなど液状として取扱いが困難になる。
【0016】
ビニル系重合体は種々の重合法により得ることができ、その方法は特に限定されないが、モノマーの汎用性、制御の容易性の点からラジカル重合法が好ましい。ラジカル重合の中でも制御ラジカル重合が好ましく、リビングラジカル重合がより好ましく、原子移動ラジカル重合が特に好ましい。これらの方法は既に公知な方法であり、前述の特許文献4〜8に詳細に記載されている。
【0017】
本発明の(a)成分が有するアルケニル基は、ヒドロシリル反応するものであれば限定はされないが、HC=C(R)−で表されるものであることが好ましい。
上記式において、Rは水素又は炭素数1〜20の有機基である。炭素数1〜20の有機基としては特に限定されないが、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基が好ましく、具体的には以下のような基が例示される。−(CH−CH、−CH(CH)−(CH−CH、−CH(CHCH)−(CH−CH、−CH(CHCH、−C(CH−(CH−CH、−C(CH)(CHCH)−(CH−CH、−C、−C(CH)、−C(CH、−(CH−C、−(CH)n−C(CH)、−(CH−C(CH(nは0以上の整数で、各基の合計炭素数は20以下)これらの内では、Rとしては水素又はメチル基がより好ましい。
【0018】
アルケニル基とビニル系重合体の主鎖の結合形式は、特に限定されないが、炭素−炭素結合、エステル結合、エーテル結合、カーボネート結合、アミド結合、ウレタン結合等を介して結合されていることが好ましい。本発明の硬化性組成物の硬化物にゴム的な性質が特に要求される場合には、ゴム弾性に大きな影響を与える架橋点間分子量が大きくとれるため、アルケニル基の少なくとも1個は分子鎖の末端にあるより全てのアルケニル基が分子鎖末端に有するものが好ましい。
【0019】
アルケニル基をビニル系重合体に導入する方法は以下の方法が挙げられる。
(1)ラジカル重合、好ましくはリビングラジカル重合によりビニル系重合体を合成する際に、一分子中に重合性の低いアルケニル基と比較的重合性の高いアルケニル基を併せ持つ化合物を第2のモノマーとして反応させる方法。
(2)リビングラジカル重合によりビニル系重合体を合成する際に、重合反応の終期あるいは所定のモノマーの反応終了後に、例えば1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエンなどのような重合性の低いアルケニル基を少なくとも2個有する化合物を反応させる方法。
(3)反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体に、例えばアリルトリブチル錫、アリルトリオクチル錫などの有機錫のようなアルケニル基を有する各種の有機金属化合物を反応させてハロゲンを置換する方法。
(4)反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体に、アルケニル基を有する安定化カルバニオンを反応させてハロゲンを置換する方法。
(5)反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体に、例えば亜鉛のような金属単体あるいは有機金属化合物を作用させてエノレートアニオンを調製し、しかる後にハロゲンやアセチル基のような脱離基を有するアルケニル基含有化合物、アルケニル基を有するカルボニル化合物、アルケニル基を有するイソシアネート化合物、アルケニル基を有する酸ハロゲン化物等の、アルケニル基を有する求電子化合物と反応させる方法。
(6)反応性の高い炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有するビニル系重合体に、アルケニル基を有するオキシアニオンあるいはカルボキシレートアニオンを反応させてハロゲンを置換する方法。
(7)水酸基を少なくとも1個有するビニル系重合体の水酸基にアルケニル基含有ハロゲン化物、アルケニル基含有イソシアネート化合物、アルケニル基含有カルボン酸またはアルケニル基含有酸ハロゲン化物を反応させる方法、あるいは上記水酸基にジイソシアネートを反応させ、さらに水酸基とアルケニル基を含有する化合物を反応させる方法。
この中でも制御がより容易である点から(2)、(6)、(7)の方法が好ましい。この方法は前述の特許文献4〜8に詳細に記載されている。
【0020】
本発明の(b)成分のヒドロシリル基含有化合物としては、(a)成分のアルケニル基を少なくとも1個の有するビニル系重合体と架橋により硬化できるヒドロシリル基含有化合物であれば特に制限はなく、各種のものを用いることができるが、好ましくはオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、分子中に水素原子が直接結合しているケイ素原子を含んでいる、直鎖状、分岐状、環状または網状の分子からなるシリコーンである。水素原子が直接結合しているケイ素原子を好ましくは2個以上分子中に有しているものがよい。
【0021】
(b)成分のケイ素原子に結合した水素原子以外の置換基は、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基が好ましいが、その他のものでもかまわない。この(b)成分の添加量は、(a)成分に含まれるアルケニル基1個に対して、通常0.5〜1.5当量となる量、好ましくは0.8〜1.2当量となる量である。0.5当量より少ない場合には、架橋密度が少なくなりすぎる傾向があり、1.5当量より多い場合には、脱水素反応による発泡の問題が生じたり、耐熱性に影響を与えたりする傾向がある。
【0022】
このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、公知の製造方法により容易に得られる。一般的には、例えば、テトラハイドロテトラメチルシクロテトラシロキサンおよび/またはオクタメチルシクロテトラシロキサンと、末端基となる(CHSiO1/2単位および/またはH(CHSiO1/2単位を有する化合物とを、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸等の触媒の存在下、−10から+40℃程度で平衡化させることによって製造することができる。
【0023】
本発明の(a)成分と(b)成分は任意の割合で混合することができるが、硬化性の面から、アルケニル基とヒドロシリル基のモル比が5〜0.2の範囲にあることが好ましく、さらに、2.5〜0.4であることが特に好ましい。モル比が5以上になると硬化が不十分でべとつきのある強度の小さい硬化物しか得られない傾向があり、また、0.2より小さいと、硬化後も硬化物中に活性なヒドロシリル基が大量に残る傾向があり、クラック、ボイドが発生し、均一で強度のある硬化物が得られない恐れがある。
【0024】
本発明のシリコーンパウダー(c)としては三次元架橋したシリコーン樹脂やシリコーンレジンの球状微粒子が挙げられる。これらは分子量数千〜数十万の三次元架橋した高分子量オルガノポリシロキサンを粉砕などにより球状化したものであり、粒径0.1〜50μmのものが使用される。この(c)成分としては例えば東レ・ダウコーニングシリコーン社製、トレフィルE−500、E−501、E−600、E−601、E−602、E−603等、東芝シリコーン社製トスパール105、120、130、145、3120、200B、等を使用することができる。
【0025】
(c)成分は本発明の硬化性組成物の硬化物の耐圧縮永久歪性を大幅に改善する。すなわち圧縮永久歪を低下させることができる。しかも、そればかりでなく、硬化性組成物をオイル箇所に使用したときに生じる汗かき現象も大幅に減少させる。(c)成分の添加量は(a)成分100重量部に対し5〜30重量部が好ましく、5重量部未満であれば耐圧縮永久歪性が低下する傾向があり、30重量部より多いと、硬化物の強靱性が低下するだけでなく逆に汗かき性が悪くなる傾向がある。
【0026】
本発明の硬化性組成物にはさらに、(a)成分と(b)成分を反応促進するヒドロシリル化触媒を使用することが好ましい。ヒドロシリル化触媒については、特に制限はなく、任意のものが使用できる。例えば、有機過酸化物やアゾ化合物等のラジカル開始剤、および遷移金属触媒が挙げられる。この中でも反応性の良さから遷移金属触媒が好ましい。
【0027】
遷移金属触媒については、具体的に例示すると、白金単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に白金固体を担持させたもの;塩化白金酸;塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体;白金−オレフィン錯体;、Pt(ViMeSiOSiMeVi)、Pt〔(MeViSiO)等の白金−ビニルシロキサン錯体;Pt(PPh、Pt(PBu等の白金−ホスフィン錯体;Pt〔P(OPh)、Pt〔P(OBu)等の白金−ホスファイト錯体、Pt(acac)が挙げられる。(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは整数を表す。)また、Ashbyらの米国特許第3159601及び3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体;並びにLamoreauxらの米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒も挙げられる。
【0028】
さらに、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh、RhCl、Rh/Al、RuCl、IrCl、FeCl、AlCl、PdCl・xHO、NiCl、TiCl、等が挙げられる。これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用しても構わない。
【0029】
上記触媒の中でも特に触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、Pt(acac)等が好ましく、更には白金−ビニルシロキサン錯体がなお好ましい。触媒量としては特に制限はないが、ビニル系重合体(a)のアルケニル基1molに対して10−1〜10−8molの範囲で用いるのがよい。好ましくは10−2〜10−6molの範囲で用いるのがよい。また、ヒドロシリル化触媒は、一般に高価で腐食性であり、また、水素ガスを大量に発生して硬化物が発泡してしまう場合があるので10−1モル以上用いない方がよい。
【0030】
本発明の硬化性組成物に、ヒドロシリル化触媒として遷移金属触媒を用いた場合、室温での保存中は反応せず、加熱時に反応を開始するいわゆる加熱硬化タイプにするための成分として脂肪族不飽和結合を含む化合物を添加することが好ましい。この脂肪族不飽和結合を含む化合物はヒドロシリル化反応の抑制剤としてすでに公知であり、アセチレン化合物が使用される。ただし、加熱硬化タイプとせず、2液を混合すると直ちに反応を開始する2液混合タイプの場合は添加の必要はない。
【0031】
さらに、本発明には(c)成分以外にも硬化物の物性を向上させるために無機充填剤を添加することが好ましい。無機系充填剤については、特に制限はないが、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、カーボンブラック、カオリン、クレー、活性白土、ケイ砂、ケイ石、ケイ藻土、無水ケイ酸アルミニウム、含水ケイ酸マグネシウム、タルク、パーライト、ホワイトカーボン、マイカ微粉末、ベントナイト、有機ベントナイト、微粉末シリカ等の無機系化合物が挙げられる。上述の無機充填剤は脂肪酸や樹脂酸で表面処理されていてもよい。
【0032】
また、上記成分以外にも、本発明においては、次に述べる反応性希釈剤を用いても構わない。反応性希釈剤としては、分子中に少なくとも1個のヒドロシリル化反応可能なアルケニル基あるいはアルキニル基を有する有機化合物が挙げられる。この化合物は、硬化前の組成物の粘度を低下させるとともに、硬化反応時にはヒドロシリル基含有化合物(b)のSi−H基とヒドロシリル化反応により結合し、最終的に網目構造に取り込まれるものである。このため本発明においては、分子中に少なくとも1個のヒドロシリル化反応可能なアルケニル基あるいはアルキニル基を有する有機化合物であれば特に制限はないが、本発明のビニル系重合体(a)との相溶性が良好であるという観点からエステル基などの極性基をもった化合物が好ましい。また分子量は低いほど相溶し易くなるため好ましいが、充分相溶するものであればある程度高くても構わない。また、本発明の組成物の特徴である耐熱性、耐候性等の観点からはこの反応性希釈剤化合物中にはヒドロシリル化に対する活性の低い炭素−炭素不飽和結合は有さないことが更に好ましい、反応性希釈剤化合物として、硬化養生中に揮発し得るような低沸点の化合物を用いた場合は、硬化前後で形状変化を起こしたり、揮発物により環境にも悪影響を及ぼしたりすることから、常温での沸点が100℃以上である有機化合物が特に好ましい。反応性希釈剤化合物の具体例としては1−オクテン、4−ビニルシクロヘキセン、酢酸アリル、1,1−ジアセトキシ−2−プロペン、1−ウンデセン酸メチル、8−アセトキシ−1,6−オクタジエン等が挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0033】
一方、反応性希釈剤化合物の添加量は、(a)成分と(b)成分とのヒドロシリル化反応による3次元的架橋構造の形成を妨げない範囲内であれば、特に制限はない。すなわち、反応性希釈剤化合物の添加量が過剰になった場合、(b)成分のSi−H基は反応性希釈剤化合物の不飽和基とのヒドロシリル化反応により消費されてしまい、(a)成分による3次元架橋構造の形成が不充分になることがある。反応性希釈剤化合物はビニル系重合体(a)100重量部に対し0.1〜100重量部、好ましくは0.5〜70重量部、特には1〜50重量部用いることが好ましい。
【0034】
さらに、本発明には接着性付与剤を添加することが好ましい。配合できる接着性付与剤としては、シランカップリング剤が挙げられる。これらを具体的に例示すると、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン等のアルキルアルコキシシラン類;ジメチルジイソプロペノキシシラン、メチルトリイソプロペノキシシラン等のアルキルイソプロペノキシシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクロイルオキシプロピルメチルトリエトキシシラン等のビニル型不飽和基含有シラン類が挙げられる。
【0035】
(a)成分と(b)成分との硬化反応は、2成分を混合して加熱することにより進行するが、反応をより迅速に進めるために、前述の遷移金属触媒などのヒドロシリル化触媒を添加することができる。このヒドロシリル化触媒は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもかまわない。更に、特に限定はないが、硬化性の調整や保存安定性のために脂肪族不飽和結合を含む化合物やアミン化合物を添加するのが好ましい。
【0036】
硬化温度については特に制限はないが、一般に10℃〜200℃、好ましくは30℃〜150℃、さらに好ましくは80℃〜150℃で硬化させるのがよい。これにより短時間で硬化性組成物を得ることができる。
【0037】
なお、前述の貴金属触媒を用いたアルケニル基に対するSi−H基の付加反応は、硬化速度が非常に速く、ライン生産を行う上で好都合である。この場合は、このヒドロシリル化触媒に、前述の脂肪族不飽和結合を含む化合物やアミン化合物を更に添加し、100℃〜180℃の範囲内で熱硬化させるのが好ましい。100℃より低い温度では、組成物が貯蔵安定性に優れているため、硬化反応はほとんど進行しないが、100℃程度以上になると、急激にヒドロシリル化反応が進行し、短い時間で硬化物を得ることができる。
【0038】
また、所望により2液混合硬化タイプを選択することもできる。この場合、少なくとも(a)成分と(b)成分を別々に存在させた第1液性成分と第2液性成分の2液形態((c)成分は第1あるいは第2液性成分のいずれ含有させてもよい)とし、塗布直前にこれら2つの液性成分を混合し、塗布することにより、加熱を必要としないか、あるいは低温加熱により硬化させることも可能である。ただし、(a)〜(c)成分の配合比は大きく違うため、混合機の精度が低いと、各混合量にばらつきが発生し硬化物の性能もかわるため、混合塗布機の制御に留意する必要がある。このため、製造ラインで使用する場合は加熱硬化タイプの方が容易である。
【0039】
上述した硬化性組成物は、例えば、以下の成型方法を用いてシール剤として成形することができる。すなわち、被シール物品であるフランジに前記硬化性組成物を自動塗布装置などによりビード状に塗布する。自動塗布装置は2次元または3次元の動作が可能であるものを選択し、被シール物品の形状を予めティーチングしておくことが好ましい。塗布された硬化性組成物および被シール物品を加熱することにより、硬化性組成物を硬化させる。このとき、ビード状に塗布されたまま硬化しても良いが、ビード塗布物の表面にかぶせ型などで覆い、加熱硬化させても良い。かぶせ型は例えば、特開昭60−237267号公報に示されているものが使用でき、かぶせ型には凹状の溝が形成されており、形成されるシール剤がフランジ面よりも凸状に盛り上がる様にすることが必要である。かぶせ型により硬化したシール剤の表面は平滑になりまた凸状の高さや幅も一定となる。さらにノズルでの塗布は塗布開始位置と塗布終了位置とに継ぎ目が生じやすいが、かぶせ型での成形により均一に補正されるというメリットがある。しかし、ビード状に形成されるのであればかぶせ型は必ずしも必要ではない。
【0040】
上述のように成形されたシール剤は対向する被シール物品のフランジ部を接合し、圧接される。このとき、確実なシール効果を発揮するためシール剤の圧縮率が10%以上の圧縮となる力で圧接することが好ましい。好ましい圧縮率は20〜40%である。本発明の硬化性組成物を硬化させたシール剤は圧縮永久歪が低いため、このような圧縮を長時間、高温環境下で行っても反発力が失われず、信頼性の高いシール性能を発揮することができる。
【実施例】
【0041】
以下に、本発明の具体的な実施例を比較例と併せて説明するが、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。なお、下記実施例および比較例中「部」および「%」は、それぞれ「重量部」および「重量%」を表す。
【0042】
下記実施例中、「数平均分子量」および「分子量分布(重量平均分子量と数平均分子量の比)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出した。ただし、GPCカラムとしてポリスチレン架橋ゲルを充填したものを2本(shodex GPC K−802.5;昭和電工(株)製)(shodex GPCK−804;昭和電工(株)製)直列につないで用い、GPC溶媒としてクロロホルムを用いた。
【0043】
(製造例1)
還流管および攪拌機付きの10Lのセパラブルフラスコに、CuBr(36.02g、0.2511mol)を仕込み、反応容器内を窒素置換した。アセトニトリル(618mL)を加え、オイルバス中70℃で15分間攪拌した。これにアクリル酸ブチル(360mL、2.51mol)、アクリル酸エチル(500mL、4.62mol)、アクリル酸2−メトキシエチル(375mL、2.91mol)、2、5−ジブロモアジピン酸ジエチル(150.68g、0.419mol)、ペンタメチルジエチレントリアミン(2.18mL、1.81g、10.46mmol)(これ以降トリアミンと表す)を加え、反応を開始した。70℃で加熱攪拌しながら、アクリル酸ブチル(1440mL)、アクリル酸エチル(2002mL)、アクリル酸2−メトキシエチル(1498mL)の混合液を210分かけて連続的に滴下した。モノマーの滴下途中にトリアミン(7.63mL、6.33g、36.5mmol)を追加した。反応開始より330分経過後に1,7−オクタジエン(1236mL、922g、8.37mol)、トリアミン(26.16mL、21.71g、0.125mol)を加え、引き続き70℃で250分加熱攪拌した。
【0044】
反応混合物をトルエンで希釈し、活性アルミナカラムを通した後、揮発分を減圧留去することによりアルケニル基末端共重合体{アルケニル末端を有する、アクリル酸ブチルとアクリル酸エチルとアクリル酸メトキシエチルの共重合体:共重合体[1]}を得た。
【0045】
還流管付10Lセパラブルフラスコに、共重合体[1](2.87kg)、酢酸カリウム(79.57g)、N,N−ジメチル酢酸アミド(2.9L)を仕込み、窒素気流下100℃で12時間加熱攪拌した。加熱減圧下でN,N−ジメチル酢酸アミドを除去した後、トルエンで希釈した。トルエンに不溶な固体分(KBrおよび余剰な酢酸カリウム)を活性アルミナカラムで濾過した。ろ液の揮発分を減圧留去することにより共重合体[2]を得た。
【0046】
還流管付10Lセパラブルフラスコに、共重合体[2](2.87kg)、酸性珪酸アルミ(143g、協和化学製、キョーワード700SL)、ハイドロタルサイト類(143g、協和化学製、キョーワード500SH)、トルエン(5.2L)を仕込み、窒素気流下100℃で7時間加熱攪拌した。吸着剤を濾過により除去した後、ろ液のトルエンを減圧留去することによりビニル基末端共重合体(共重合体[3])を得た。得られた共重合体の数平均分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)により18000、分子量分布は1.24であった。共重合体1分子当たりに導入された平均のビニル基の数を1HNMR分析により求めたところ、2.2個であった。
【0047】
(実施例および比較例)
(a)成分として製造例1で得られた共重合体[3](アルケニル基量0.158mmol/g)100重量部に、(b)成分として鎖状シロキサン(分子中に平均5個のヒドロシリル基と平均5個のα−メチルスチレン基を含有する:Si−H基量3.70mmol/g)を鎖状シロキサンのSiH基が、共重合体[3]のアルケニル基の2.32当量分となる量を添加し充分混合し、さらにビス(1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン)白金錯体触媒(1.32×10−5mmol/μlキシレン溶液、アルケニル基に対して白金が1×10−3当量(モル比)となる量)、無機充填剤としてシリカ粉(アエロジルR972(日本アエロジル社製))10重量部、炭酸カルシウム45重量部を添加したものを組成物Aとした。組成物Aに三次元架橋したシリコーンレジンの球状微粒子粉としてトレフィルE−600(東レ社製))を表に記載の量添加した。これらをプラネタリーミキサーで充分混合し、次いで脱泡し、硬化性組成物を得た。また、比較例として三次元架橋したシリコーンレジンの球状微粒子粉を添加しないもの、類似のものとして、マイクロバルーンであるマイクロスフェア(松本油脂製薬社製)、コアセル微粒子としてスタフィロイド(武田薬品工業社製)を添加したものを同様に作成した。
【0048】
また、両末端にビニル基を有するアクリル共重合体としてOR100Aを90重量部(鐘淵化学社製)、ヒドロシリル基含有可能物としてCR500を4.82重量部、さらにビス(1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン)白金錯体触媒(1.32×10−5mmol/μlキシレン溶液、アルケニル基に対して白金が1×10−3当量(モル比)となる量)、無機充填剤としてシリカ粉(アエロジルR972(日本アエロジル社製))10重量部、炭酸カルシウム45重量部、添加したものを組成物Bとした。同様に組成物Bに三次元架橋したシリコーンレジンの球状微粒子粉としてトレフィルE−500(東レ社製))を10重量部量添加した。これらをプラネタリーミキサーで充分混合し、次いで脱泡し、硬化性組成物を得た。
【0049】
得られた各組成物をJIS K 6262に規定されている永久(圧縮)歪み試験方法に準じておこなった。ただし、圧縮率は25%、試験温度は150℃、時間は168時間とした。
【0050】
さらに、実験装置としてJIS K 6820に規定されている耐圧試験用フランジ圧力容器を用いて試験を行った。この模擬容器の下側容器のフランジ面略中央に、フランジ形状に沿って各硬化性組成物を円環状にビード幅5mm、高さ3mmで塗布した。そして、120℃で60分間加熱し、シール剤を形成した。
【0051】
シール剤を成形した下側容器のフランジと上側容器のフランジとを対面させ、ボルトを用いて締結することにより、シール剤を圧縮した。シール剤の圧縮率が約30%になるまで締め付けた。そして、下側容器の底部に形成された孔より容器内にSG5W−30エンジンオイルを満杯注入し、孔を密栓した。これを150℃の加熱炉に入れ、1000時間加熱した。加熱により容器内は内圧が高くなっている。
【0052】
加熱終了後、容器を分解せずフランジ接合部を目視によるエンジンオイルの漏れの確認、およびフランジ接合部にホワイトパウダーを振りかけ、汗かき現象の有無を確認した。その結果を表1に記す。
【表1】

【0053】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2004年4月1日出願の日本特許出願(特願2004−109039)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の硬化性組成物は、現場成形ガスケット、特にCIPG法の現場成形ガスケットに適するものであり、自動車用のオイルパン、ロッカーカバーなどのシール剤、建築用弾性シーリング材や複層ガラス用シーリング材等におけるシーリング材、太陽電池裏面封止材などの電気・電子部品用材料、等の様々な用途に利用可能である。
【0055】
更に、本発明の硬化性組成物は圧縮永久歪が低いものであり、上述の用途だけでなく以下の用途にも応用可能である。例えば自動車分野ではボディ部品として、ガラスの振動防止材、車体部位の防振材、特にウインドシールガスケット、ドアガラス用ガスケットに使用することができる。シャーシ部品として、防振、防音用のエンジンおよびサスペンジョンゴム、特にエンジンマウントラバーに使用することができる。エンジン部品としては、冷却用、燃料供給用、排気制御用などのホース類、エンジンオイル用シール材などに使用することができる。また、排ガス清浄装置部品、ブレーキ部品にも使用できる。家電分野では、パッキン、Oリング、ベルトなどに使用できる。具体的には、照明器具用の飾り類、防水パッキン類、防振ゴム類、防虫パッキン類、クリーナ用の防振・吸音と空気シール材、電気温水器用の防滴カバー、防水パッキン、ヒータ部パッキン、電極部パッキン、安全弁ダイアフラム、酒かん器用のホース類、防水パッキン、電磁弁、スチームオーブンレンジ及びジャー炊飯器用の防水パッキン、給水タンクパッキン、吸水バルブ、水受けパッキン、接続ホース、ベルト、保温ヒータ部パッキン、蒸気吹き出し口シールなど燃焼機器用のオイルパッキン、Oリング、ドレインパッキン、加圧チューブ、送風チューブ、送・吸気パッキン、防振ゴム、給油口パッキン、油量計パッキン、送油管、ダイアフラム弁、送気管など、音響機器用のスピーカーガスケット、スピーカーエッジ、ターンテーブルシート、ベルト、プーリー等が挙げられる。建築分野では、構造用ガスケット(ジッパーガスケット)、空気膜構造屋根材、防水材、定形シーリング材、防振材、防音材、セッティングブロック、摺動材等に使用できる。スポーツ分野では、スポーツ床として全天候型舗装材、体育館床等、スポーツシューズとして靴底材、中底材等、球技用ボールとしてゴルフボール等に使用できる。防振ゴム分野では、自動車用防振ゴム、鉄道車両用防振ゴム、航空機用防振ゴム、防舷材等に使用できる。海洋・土木分野では、構造用材料として、ゴム伸縮継手、支承、止水板、防水シート、ラバーダム、弾性舗装、防振パット、防護体等、工事副材料としてゴム型枠、ゴムパッカー、ゴムスカート、スポンジマット、モルタルホース、モルタルストレーナ等、工事補助材料としてゴムシート類、エアホース等、安全対策商品としてゴムブイ、消波材等、環境保全商品としてオイルフェンス、シルトフェンス、防汚材、マリンホース、ドレッジングホース、オイルスキマー等に使用できる。その他、板ゴム、マット、フォーム板等にも使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を分子中に少なくとも1個含有し数平均分子量500〜1,000,000のビニル系重合体、(b)ヒドロシリル基含有化合物および(c)シリコーンパウダーからなる硬化性組成物。
【請求項2】
前記(a)成分が(メタ)アクリル系重合体をリビングラジカル重合法により製造されたものである請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の硬化性組成物を被シール物の少なくとも片方に塗布する工程、塗布後の前記組成物を硬化させる工程、次いでもう一方の被シール物で圧接する工程からなるシール方法。
【請求項4】
(a)ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を分子中に少なくとも1個含有し数平均分子量500〜1,000,000のビニル系重合体、を含有する第1液性成分、および(b)ヒドロシリル基含有化合物を含有する第2液性成分からなる2液混合型硬化性組成物セットであって、前記第1および第2液性成分の少なくとも一方が(c)シリコーンパウダーを含有する2液混合型硬化性組成物セット。
【請求項5】
請求項4に記載の2液混合型硬化性組成物セットの第1液性成分と第2液性成分を混合し混合物を得る工程、前記混合物を被シール物の少なくとも片方に塗布する工程、塗布後の前記混合物を硬化させる工程、次いでもう一方の被シール物で圧接する工程からなるシール方法。

【国際公開番号】WO2005/095520
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【発行日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−511812(P2006−511812)
【国際出願番号】PCT/JP2005/006323
【国際出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000132404)株式会社スリーボンド (140)
【Fターム(参考)】