説明

硬膜外腔穿刺針

【課題】針先が硬膜外腔に到達したことを、外部からの観察により視覚的に認知可能とし、硬膜穿通等を防止することで、小児に対しても安心して適用することができる安全性の高い硬膜外腔穿刺針を提供すること。
【解決手段】中空の外針1と、外針に挿着される内針2と、各々の針基3、4より構成し、前記外針1の先端部11と基端部12を除く外針表面に、電気絶縁材5をコーティングして形成し、硬膜外腔に穿刺するさいに、外針1を通して電気刺激を付加することにより、針先が硬膜外腔に到達したことを骨格筋収縮により外部から視覚的に認識可能となるように構成した。また、前記先端部の非絶縁部11の長さを、1mm以上、4mm以下(小児用は、2mm以下)とし、先端湾曲角度を25度以上、35度以下として形成し、必要に応じて、外針基を2部材に分割し、外針に間隙を有して接続し、該間隙を非絶縁部として構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麻酔や疼痛治療のため、麻酔薬や鎮痛剤を硬膜外腔に注入するさいに用いる硬膜外腔穿刺針に関する。
【背景技術】
【0002】
硬膜外麻酔、硬膜外鎮痛法(以下、合わせて硬膜外麻酔)は、脊柱管の中にある硬膜の外側の硬膜外腔まで針管(硬膜外腔穿刺針)を穿刺して、この針管や該針管を介して硬膜外腔まで挿入されるカテーテル(硬膜外カテーテル)を通じて麻酔薬や鎮痛剤(以下、合わせて麻酔薬)を該硬膜外腔に注入する手技で、副作用が比較的少ない麻酔手段として、様々な手術や術後の鎮痛、および各種疼痛対策に広く用いられている。
従来この手技に用いられる硬膜外腔穿刺針は、ステンレス管よりなる外針と、ステンレスあるいは、ステンレスの先端部にフッ素樹脂等で形成した針先を接続した中実の内針とによる二重針で構成されており、その針管先端部は、針管の鋭利な刃先による偶発的な硬膜穿刺を防止するため、及び、該針管を通してカテーテルを硬膜外腔に挿入するさい、該カテーテルがスムーズに硬膜外腔に突出するように湾曲して形成されている。
【0003】
そして、この硬膜外腔穿刺針による、硬膜外腔穿刺にさいしては、針管が硬膜外腔を越えて硬膜を突き破ってしまうことによる脳脊髄液の漏出、更には、脊髄に刃先が触れてしまうことによる脊髄損傷の危険性が常に付きまとい、それによる合併症も甚大であることから、該穿刺のさいは、針先を硬膜外腔で止めることに細心の注意が求められている。
そして、このために重要な、針先が硬膜外腔に穿刺されたことを確認する手法として最も一般的なものは、硬膜外腔穿刺針を黄靱帯の抵抗のあるところまで刺入した後、内針を抜き、注射器に空気か生理食塩水を入れて針管に接続し、断続的に注射器の内筒に圧をかけながらゆっくりと針を進め、手指による押圧抵抗の消失の感覚により硬膜外腔への到達を確認するLOR法(loss of resistance)であるが、脊髄麻酔のように髄液の戻りにより視覚的に刺入位置を認知できるものではなく、該認知が術者の手指の感覚に委ねられることで、広く行われている手法ではあるが、手際よく行うには、経験を必要とする難しい手技となっている。
更に、年配者や腰痛の患者の場合、筋肉が弱っているため硬膜外腔以外の箇所でも圧が消失する感触を覚えることがあり、術者によっては、幾つも腔があるような感覚に陥るケースがあること、また、特に小児の場合、場所や体位により異なるが硬膜外腔が、概ね、1.5mm程度の幅しかなく、この狭い範囲に正確に針先を止めなければいけないことなど、この硬膜外腔の認知が一層難しいものとなるケースもある。
【0004】
このため従来から、硬膜の突き破り等を防止すべく、いくつかの提案がなされている。例えば、針管の外表面に粗面加工を施したり、あるいは、針管に段差または凸部を形成したりして、黄靭帯や組織を穿通するときの前進を妨げる抵抗を生じさせたり、前進を制御したりする硬膜外腔穿刺針(特許文献1、特許文献2)、あるいは、針管先端を鈍に形成し、切れ味を落とし、超音波振動により穿刺するようにした硬膜外腔穿刺針(特許文献3)等がある。
【0005】
一方、目的は異なるが、本発明の構造に近いものとして、針管外表面の先端や基端の一部を除いた中間部を電気絶縁コーティングで覆った穿刺針(トーヒ針:トーヒ針のことを日本では、便宜上、硬膜外針とも呼ぶ)も提案されている。例えば、トーヒ針の挿入後に、電気刺激による筋肉収縮反応を指標として視覚的にトーヒ針の位置を確認することができるとした末梢神経ブロックのための麻酔剤送達のための針(特許文献4)、あるいは、類似な構成を有し、硬膜外腔に穿刺して、電気刺激により脊髄神経を刺激して疾病を治療するための電気刺激針(特許文献5)等がある。
【特許文献1】特開平7−514号公報
【特許文献2】特表平8−504105号公報
【特許文献3】特開2001−58008号公報
【特許文献4】特表2003−526478号公報
【特許文献5】特開昭61−131759号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記のように、針管外表面に粗面加工や段差または凸部を施した針や、超音波を利用して穿刺する針は、穿刺抵抗を大きくしたり、刃先を鈍にして超音波の発生が無い場合切れないようにしたりすることで、硬膜への誤穿刺を防止しようとしているが、針を穿刺するうえで、穿刺抵抗を大きくすることは、穿刺に力が必要となるなど必ずしも好ましいことではなく、また、いずれの器具も、硬膜外腔に針先が到達したことを感知する手段としては、従来のLOR法等のみに委ねており、人間の手指の感覚のみに頼って硬膜外腔の位置を認知していることに変わりがなく、また、本当に硬膜外腔に針先が位置しているかの確認も盲目的となることから、根本的な解決手段とはなっていない。
【0007】
一方、電気絶縁コーティングを施した電極針タイプの針管は、前記の通り、トーヒ針挿入後の末梢神経と針管の位置の特定をすること(特許文献4)、あるいは、脊髄神経に刺激を与えることにより疾病を治療すること(特許文献5)を目的とした器具であり、硬膜穿通の防止や脊椎損傷の防止に最も重要な、硬膜外腔穿刺時における、硬膜外腔に針先が到達ことを感知する手段については考慮されておらず、前述した従来技術と同様に、穿刺のさいの探索は術者の手指の感覚に頼るLOR法等の方法が採られると考えられることから、前述の器具と同様な問題がある。また、これらの従来技術を、硬膜外腔に針先が到達したことを感知することを目的とした器具とするには、構成が十分とはいえないため、必ずしも適用することはできない。
【0008】
そこで、本発明は、硬膜外腔穿刺のさいに、硬膜外腔穿刺針の針先が硬膜外腔に到達したことを、従来のLOR法による術者の手指の感覚と同時に、外部からの観察により視覚的に認知可能とすることにより、硬膜穿通や脊椎損傷を防止することのできる安全性の高い硬膜外腔穿刺針を提供することを課題とした。
また、従来困難事例とされる、硬膜外腔の幅が小さい小児に対しても安全に適用することができる硬膜外腔穿刺針の提供を課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の硬膜外腔穿刺針は、先端に刃先、及び、刃面を備えた中空の外針と、該外針に挿脱自在に挿着される内針と、各々の基端部に設ける外針基及び内針基より構成し、前記外針の先端あるいは先端及び基端の一部を除く外針表面に、電気絶縁材をコーティングして形成し、この硬膜外腔穿刺針を硬膜外腔に穿刺していくさいに、外針を通して電気刺激を付加することにより、針先が硬膜外腔に到達したことを骨格筋収縮により外部から視覚的に認識可能となるように構成した。
【0010】
更に、次の構成を付加することが好ましい。
1.前記外針先端部の電気絶縁材をコーティングしない部位の長さを、1mm以上、4mm以下、小児用にあっては、該長さを、1mm以上、2mm以下として構成する。
2.前記外針の先端部分を湾曲して形成した硬膜外腔穿刺針においては、該湾曲角度を、25度以上、35度以下として形成する。
3.前記外針の基端部に設ける外針基を2つの部材に分割し、該外針基端部に間隙を設けて取り付け、該間隙となる外針表面は電気絶縁材をコーティングしない部位として構成する。
【0011】
(作用)
前記硬膜外腔穿刺針によると、該硬膜外腔穿刺針を硬膜外腔に穿刺するさい、外針基端部の電気絶縁材をコーティングしない部位(以下、非絶縁部)に、電気刺激装置に接続された電極用のクリップ等を取り付け、該穿刺針を通して、該電気刺激装置からの電気刺激を印加しながら穿刺していくと、針先が硬膜外腔に到達したさい、目的穿刺部位に対応する部位の脊髄神経が電気刺激を受け、その神経が支配する骨格筋組織が収縮することにより、該収縮を指標として、硬膜外腔への到達を外部から視覚的に感知することが可能となり、針先が黄靭帯を抜け、硬膜外腔に到達したことを感知するための指標として、従来のLOR法による注射器への押圧抵抗消失による手指感覚に加え、2つの指標により確実な探索ができる。
【0012】
前記筋収縮発現のメカニズム、及び、本手段の非絶縁部の長さの限定による作用(仮説)を、図5により説明する。
非絶縁部11の長さについて、本発明で設定した1mm以上、4mm以下(小児用に付いては2mm以下)とした場合、4mmを超えて長く設定した場合、1mmより短く設定した場合の穿刺時の安全性等について説明すると、図5Aに示すように、非絶縁部11を本発明の限定の範囲(1mm以上、4mm以下(小児用2mm以下))に設定すると、穿刺途中の硬膜外腔穿刺針の針先(非絶縁部)11が黄靭帯7に広く接している段階では、黄靭帯7へと流れている電流が、針先が黄靭帯を越え、硬膜外腔61に到達すると、コーティングされた絶縁部が黄靭帯7と広く接し、黄靭帯7電流の流れが無くなることにより、刺激電流9が脊髄81に届き、該脊髄神経に対応する骨格筋組織が収縮することになる。
一方、図5Bのように、必要以上の長さ(個体差、場所等にもよるが概ね、4mmを越える長さ)に設定すると、針先が硬膜外腔61に到達した時点においても、通電部となる非絶縁部11が黄靭帯7に幅広く接しているため刺激電流9の多くが黄靭帯7へと流れてしまうため、脊髄81に届かず、電流が脊髄81に届く前に、硬膜穿通や脊髄損傷が発生する位置まで針を穿刺してしまう危険性がある。
また、図示しないが非絶縁部11を、例えば刃面14のみなど極めて小さく設定すると、電気刺激装置の電圧を高く設定しないと求める筋収縮が得られないといった問題があり、確実な認知手段とするには不安定な指標となる可能性がある。
尚、本作用はこれまでの試験から導いた仮説である。
【0013】
また、針先端の屈曲度を穿刺性能が著しく損なわれない程度に増し(従来に比して角度にして、5度程度)、針先を鈍とすることで、穿刺抵抗が大きくなり、偶発的な硬膜穿通の可能性を低下させることができる。特に、小児においては、硬膜外腔が1.5mm程度と狭く、針先を適正位置に確実に止めることが困難で、硬膜穿通の危険性が大きくなることから、この作用は一層有効となる。
また、前記外針の基端部に設ける外針基を、2つの部材として、間隙を有して取り付け、該間隙を基端部側の非絶縁部とし、電気刺激装置から接続される電極用クリップ等の取り付け位置とすることで、従来では、外針基と人体穿刺部位との間にクリップ等が取り付けられることにより、針の実効長が短くなるなど操作上の不利益となっていたものを、該外針基と人体穿刺部位との間に何も設ける必要が無いことにより、針管の有効長を犠牲にすることがなく、操作性を向上させることができる。特に、小児用においては、針管の長さが短く設定されているため、操作に支障が出る可能性が高いことから、この作用は、一層有効となる。
【発明の効果】
【0014】
本構成の硬膜外腔穿刺針によれば、該硬膜外腔穿刺針の硬膜外腔への穿刺のさいに、LOR法と電気刺激を併用することにより、従来の靭帯を突き抜けたことによる注射器の押圧抵抗の消失による手指の感覚と共に、硬膜外腔穿刺針の穿刺部位に対応する部位の脊髄神経が支配する骨格筋収縮による外部からの視覚的認識の2つを指標として、硬膜外腔への針先の穿刺を感知、検出できることにより、確実に硬膜外腔穿刺針の針先を硬膜外腔に留めることができ、硬膜の穿通、脊椎損傷の危険性を低減することのできる安全で安心感の高い硬膜外腔穿刺針を提供することができる。
【0015】
前記のことは、硬膜外腔の巾の狭い小児に対しても極めて有効で、更に、針の屈曲度を増し、刃先を鈍にすることにより硬膜穿通を防止することと併せ、これまで硬膜の穿通、脊椎損傷の危険性のため断念していたような小児への硬膜外麻酔の適用を広げることができる。
また、外針基を2つの部材として、その間隙に電極用クリップ等を取り付けることにより、クリップ等が操作上、邪魔とならないことで使用勝手に優れた硬膜外腔穿刺針とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態の一例につき図面を参考に説明する。図1は、本発明の実施の形態を示す硬膜外腔穿刺針の全体の構成図、図2は前記硬膜外腔穿刺針の先端部拡大図で、Aは正面図、Bは側面断面図を示している。尚、塗りつぶし部分は電気絶縁材によるコーティング層を示し、理解を容易とするため、該コーティング層は実体の比率よりも厚く描かれている。
本実施の形態の硬膜外腔穿刺針は、外針1、内針2及び各々の外針基3、内針基4より構成した二重針で、外針1の先端部の一部11及び基端部12の一部を除いた針管表面は電気絶縁材5をコーティングして形成される。
【0017】
次に各部に付いて詳細に説明すると、外針1は、ステンレス管よりなり、外径サイズは内挿するカテーテル(図示しない)により選択されるが、一般的な持続硬膜外麻酔にあっては、0.8mmのカテーテルに対しては、18G(外径1.26mm)、1.0mmのカテーテルに対しては、17G(外径1.48mm)が選択され、長さは、通常80mmから120mm程度として形成され、小児用にあっては、外径は、0.6mmのカテーテルに対して19G(外径1.06mm)が選択され、長さは、通常60mm程度として形成される。また、先端部は、穿刺時に偶発的に硬膜を穿通しないように、また、カテーテルを硬膜外腔に誘導するさい、該先端部で自然に曲がり、硬膜外腔に沿っての挿入が可能なように湾曲形状に形成され、該湾局部13に刃面14を設けたヒューバーポイントとして形成される。そして、その湾曲角度aは通常、15度〜30程度であるが、特に小児用にあっては、硬膜外腔61が極めて狭く、靭帯7を過ぎると、すぐに硬膜62があることから、該硬膜の穿通防止を一層考慮して、湾曲を大きく設定し、湾曲部13の角度を25度〜35度程度として形成している。
尚、湾曲部13の角度とは、針管の中心部の直進延長方向の線L1と、該中心部の湾曲部13mへの接線L2が形成する角度を示している。(図3)
そして、穿刺のさいに通電部となる、外針先端から3mm(小児用では、1.5mm)の先端部11、及び、穿刺のさいに電極用クリップの取り付け位置となる基端部12(長さ5mm〜10mm程度)を除く、針管外周面に電気絶縁性のフッ素樹脂(絶縁材)5をコーティングして形成している。
この構成により電気刺激装置から電極用クリップを通して基端部12に印加された電圧は、針先の非絶縁部11に外針を通じて通電され、一方、絶縁材5をコーティングした絶縁部は、絶縁層となり穿刺通路(中間部)には通電されない構成となっている。
尚、先端部の湾曲部の角度aは20度〜35度の範囲で、刃面の角度b(図3、L3、L4の成す角度)は3度〜15度の範囲で、必要により適度に設定すれば良く、針先の非絶縁部11長さは、本発明の設定した範囲で適度に設定されれば良い。
【0018】
外針基2は、樹脂成形品より形成され、前記外針1に接着により接続され、把持部は穿刺が容易となるように広い面積の翼31を有している。また、後記する内針基4の嵌合突起41と嵌合する凹部(図示しない)を設けているが、この凹部は刃面14の方向に合致して設けられ、内外針の嵌合固定部となると同時に刃面方向の指標ともなっている。
内針3は、ステンレス棒よりなり、先端部に外針1と嵌合して合致する刃面21を設け、外針1の内腔に適合する外径及び長さに形成される。尚、該内針3は、製造の容易性を考慮し、ステンレスパイプの先端にフッ素樹脂等の樹脂をかしめ加工等で接続したものも従来から使用されており、いずれであっても良い。また、内針先端部は、外針1と適合する湾曲形状とするような加工は特に施さないが、細径であるため外針内腔に挿入されると自然に外針1の湾曲形状に沿った形状となる。
内針基4は、樹脂成形品により形成され、前記内針3に接着により接続され、前記した外針基2との嵌合固定部及び、刃面方向の指標となる内外針基の嵌合凸部41を設けて構成されている。
そして、外針1の内腔に内針3が摺動、着脱自在に挿着され、該挿着時に内外針の先端刃面14、21が一致(少なくとも最先端部において内針が外針より突出しないように)するように形成される。
【0019】
図4は、本発明の別の実施の形態の針基部を示した拡大図を示している。
本形態の外針基3a、3bは、把持部となる前記翼31を含む前部外針基3aと、内針基4との嵌合部を含む後部外針基3bの2つの部材より構成されており、該前部外針基3aと後部外針基3bとは、外針1の基端部側に1〜5mm程度の間隙121を有して共に接着により接続されている。そして、前記外針1の間隙121は、電気絶縁材がコーティングされていない非絶縁部(通電部)であって、該間隙121が、電気刺激装置から導線101により接続された電極用クリップ100を接続する位置となっている。尚、この場合、前部外針基3aより先端部側の外針1は、先端部11を除き電気絶縁材がコーティングされる。
この構成により、図1のように、電極用クリップ100が、人体穿刺部と外針基3との間に位置することになる、外針1の針管基端部の非絶縁部12に該クリップ100を接続する場合と比べ、外針1の実効長を損なうことなく、また、電極用クリップ100が前部外針基3aと後部外針基3bに挟まれ固定されやすい等、操作面からも使用勝手の良好な構成となっている。
尚、本実施の形態においては、電気刺激装置から硬膜外腔穿刺針への刺激電流の供給を、外針1に電極用クリップ100を接続することで行っているが、外針先端部の非絶縁部11に、該刺激電流が付与されるものであれば、別途電極用クリップの取り付け部を設けるもの、あるいは導線を直接接続するものなど、どのような手段であっても良い。
【0020】
以下、本発明の硬膜外腔穿刺針を用いての硬膜外腔穿刺、探索の手段を確認する。
1.穿刺ポイントを決めたら、穿刺に先立ち、予め臀部などに添付した対電板(図示せず)に電気刺激装置(スティムレータ)の(+)極を導線で接続し、一方、スティムレータの(−)極と、外針1の電気絶縁材がコーティングされていない基端部12とをクリップ等により導線で接続する。
2.スティムレータのスイッチを入れた状態で、硬膜外腔穿刺針を外針1の湾曲方向を確認して、前記穿刺ポイントから穿刺する。
3.硬膜外腔穿刺針を黄靭帯7の抵抗のあるところまで刺入し、内針4を抜き、5〜10mlの注射器に空気か生理食塩水を入れて接続し、断続的に注射器の内筒に圧をかけながらゆっくりと針を進める。(LOR法)
4.前記LOR法と電気刺激を併用しながら、指先の押圧抵抗消失と、電気刺激による患者の骨格筋収縮を確認しながら穿刺を進め、該筋収縮を起こすと同時に抵抗消失を感じた位置で針管先端の硬膜外腔到達を確認する。
5.以下、通常の硬膜外麻酔の手法により麻酔が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態の硬膜外腔穿刺針を示す全体構成図。
【図2】前記硬膜外腔穿刺針の先端拡大図。
【図3】前記硬膜外腔穿刺針の先端の湾曲角度を説明するための説明図。
【図4】本発明の別の実施の形態の硬膜外腔穿刺針の基部を示す拡大図。
【図5】本発明の作用を説明するための模式図。
【符号の説明】
【0022】
1. 外針
11.先端部(非絶縁部)
12.基端部(非絶縁部)
13.湾曲部
13m.湾曲部中心部
14.刃面(外針)
2. 内針
21.刃面(内針)
3. 外針基
31.翼
32.指標突起
4. 内針基
41.嵌合突起(湾曲方向指標)
5. 絶縁材
61.硬膜外腔
62.硬膜
7. 黄靭帯
81.脊髄
82.クモ膜下腔
100.電極用クリップ
101.導線
a. 湾曲角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に刃先、及び、刃面を備えた中空の外針と、該外針に挿脱自在に挿着される内針と、各々の基端部に設ける外針基及び内針基より構成し、前記外針の先端、あるいは、先端及び基端の一部を除く外針表面に、電気絶縁材をコーティングして形成した硬膜外腔穿刺針であって、硬膜外腔に穿刺するさい、該硬膜外腔穿刺針を通して電気刺激を付加することにより、針先が硬膜外腔に到達したことを骨格筋収縮により外部から視覚的に認識可能としたことを特徴とする硬膜外腔穿刺針。
【請求項2】
前記外針先端部の電気絶縁材をコーティングしない部位の長さを、1mm以上、4mm以下とした請求項1の硬膜外腔穿刺針。
【請求項3】
前記外針先端部の電気絶縁材をコーティングしない部位の長さを、1mm以上、2mm以下とした小児用を用途とする請求項1の硬膜外腔穿刺針。
【請求項4】
前記外針の先端部分を湾曲して形成した硬膜外腔穿刺針において、該湾曲角度を、25度以上、35度以下に形成する請求項1乃至3のいずれか1項に係る硬膜外腔穿刺針。
【請求項5】
前記外針の基端部に設ける外針基は、2つの部材が間隙を有して設けられ、該間隙となる部位の外針表面は、電気絶縁材をコーティングしない部位とした請求項1乃至4のいずれか1項に係る硬膜外腔穿刺針。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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