説明

硬貨処理装置

【課題】エスクロ機構を備えた硬貨処理装置において、エスクロ機構に一時保留した硬貨をコインチューブへ収納するときに、複数枚の硬貨が立ってしまう状態の発生を可及的に防止するようにした硬貨処理装置を提供する。
【解決手段】エスクロ機構25、26に収容された硬貨をコインチューブ31、32へ収容する際に、払出可能枚数計数部701により計数された該コインチューブ31、32から払出可能な硬貨の枚数を確認し、該払出可能な硬貨の枚数が0枚のときは、エスクロ機構からの最初の硬貨を収容した後、チェンジスライド31d、32dを閉鎖状態にした状態でペイアウトスライド38をスライドし、該ペイアウトスライド38をスライドさせた状態で、硬貨検知センサ31b、32bにより硬貨を検出した場合は、エスクロ機構25、26に一時保留された残りの保留硬貨を1枚ずつコインチューブ31、32へ収容する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動販売機や両替機等に搭載される硬貨処理装置に関し、特に、投入された硬貨を一時保留するエスクロ機構を備えた硬貨処理装置において、エスクロ機構から導入された硬貨がコインチューブ内に硬貨が詰まることを可及的に防止した硬貨処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動販売機等に搭載される硬貨処理装置は、硬貨が1枚も収容されていない(空の)コインチューブに、硬貨を1枚受け入れた時、コインチューブの底に受け入れた硬貨が立った状態(以下「硬貨立ち」と云う)になることがある。
【0003】
この硬貨立ちが発生した場合、ペイアウトスライドをスライドしても、硬貨を引き出せず、釣銭が払い出せなくなる場合がある。
【0004】
この問題を解決する為に、従来の硬貨処理装置においては、特許文献1に示されるように、硬貨収容枚数が少ないコインチューブから硬貨を払い出す前に必ず少なくとも一回以上「空打ち」を実行して、たとえ硬貨が立っていたとしても「空打ち」によって立った硬貨を倒してから払出処理を行うようにした構成が知られている。
【0005】
また、従来、特許文献2に示されるように、上記「空打ち」動作をした際、ペイアウトスライドの中の硬貨の有無を検知できる硬貨検知センサを備え、チューブ内に少なくとも硬貨が一枚収容されていることを検知する技術も知られている。
【0006】
また、この種の硬貨処理装置においては、特許文献3に示されるように、振分通路内に複数の硬貨を一時的に保留し、この保留した複数の硬貨を一枚ずつ放出してチューブへ落下させるエスクロ機構が設けられたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−62420号公報
【特許文献2】特開2003−115067号公報
【特許文献3】特開2002−74461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献3に示されるようなエスクロ機構を備えた硬貨処理装置においては、連続して硬貨がコインチューブに落下されることがあり、この場合に、空のコインチューブ内へ硬貨が落下されると、最初に落下された一枚目の硬貨が立ち、さらに後続の硬貨も立って収容される状態が発生することがある。
【0009】
このように複数硬貨立ちの状態が発生すると、釣銭の払出し動作直前に「空打ち」動作を行っても硬貨が倒れない。
【0010】
このため、払出しの前に空打ち動作をしても硬貨立ちが解消できず、釣銭が払い出せなくなる問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、エスクロ機構を備えた硬貨処理装置において、エスクロ機構に一時保留した硬貨をコインチューブへ収納するときに、複数枚の硬貨が立ってしまう状態の発生を可及的に防止するようにした硬貨処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1の発明の貨幣処理装置は、少なくとも一つの硬貨通路の下流に配設され、該硬貨通路に案内された複数枚の硬貨を一時的保留するとともに、保留した硬貨を一枚ずつ解放して下流へ放出するエスクロ機構と、前記エスクロ機構の下流に配設され、該エスクロ機構から放出された硬貨を積載収容するコインチューブと、前記コインチューブの下端に位置し、スライドして該コインチューブ内の硬貨を一枚ずつ引き出すペイアウトスライドと、前記ペイアウトスライドが硬貨を一枚引き出す際に、該ペイアウトスライドによる硬貨の払出しを阻止する閉鎖状態から硬貨の払出の許可状態へと切り替えることで硬貨を払い出すチェンジスライドと、前記ペイアウトスライドがスライドした時に、該ペイアウトスライドによって引き出された硬貨の有無を検出する硬貨検知センサと、前記コインチューブに蓄積された払出可能な硬貨の枚数を計数する払出可能枚数計数手段と、前記エスクロ機構に収容された硬貨を前記コインチューブへ収容する際に、前記払出可能枚数計数手段により計数された前記払出可能な硬貨の枚数を確認し、該払出可能な硬貨の枚数が0枚のときは、エスクロ機構からの最初の硬貨を収容した後、前記チェンジスライドを前記閉鎖状態にした状態で前記ペイアウトスライドをスライドし、該ペイアウトスライドをスライドさせた状態で、前記硬貨検知センサにより硬貨を検出した場合は、前記エスクロ機構に一時保留された残りの保留硬貨を1枚ずつ前記コインチューブへ収容するように前記エスクロ機構を制御する制御手段とを具備する。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記制御手段は、前記硬貨検知センサにより硬貨が検出できない場合は、前記チェンジスライドを前記閉鎖状態にした状態で前記ペイアウトスライドを再スライドさせる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、エスクロ機構に収容された硬貨をコインチューブへ収容する際に、払出可能枚数計数手段により計数された該コインチューブから払出可能な硬貨の枚数を確認し、該払出可能な硬貨の枚数が0枚のときは、エスクロ機構からの最初の硬貨を収容した後、チェンジスライドを閉鎖状態にした状態でペイアウトスライドをスライドし、該ペイアウトスライドをスライドさせた状態で、硬貨検知センサにより硬貨を検出した場合は、エスクロ機構に一時保留された残りの保留硬貨を1枚ずつコインチューブへ収容するようにしたので、コインチューブ内で複数枚の硬貨が立ってしまう硬貨立ちの発生を抑えることができ、これにより複数枚の硬貨立ちによってコインチューブから硬貨が払い出せなくなる問題の発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明に係わる硬貨処理装置の概略構成を示す正面図および断面図である。
【図2】図2は、図1に示したエスクロ機構の詳細構成を説明する図である。
【図3】図3は、硬貨払出機構の詳細を示す図である。
【図4】図4は、硬貨払出機構による硬貨払出時の空打ち動作を説明する図である。
【図5】図5は、空打ち動作によりコインチューブ内の硬貨立ちを解消する動作を示した図である。
【図6】図6は、コインチューブ内に複数硬貨立ちの状態が生じた場合の不都合を説明する図である。
【図7】図7は、本発明に係わる硬貨処理装置の複数硬貨立ちを防止するための構成を示すブロック図である。
【図8】図8は、本発明に係わる硬貨処理装置の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施例を添付図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明に係わる硬貨処理装置の概略構成を示す正面図(図1(A))およびB断面図(図1(B))である。この硬貨選別装置1は、硬貨10、基本的に、4種類の硬貨A(500円硬貨)、硬貨B(10円硬貨)、硬貨C(100円硬貨)、硬貨D(50円硬貨)および偽貨の選別を行う。
【0018】
この硬貨選別装置1の硬貨投入口11の直下には図1の(A)の右方向に傾斜した硬貨判別通路12が形成され、その途中には硬貨の正偽と、正貨の金種とを識別する硬貨識別センサ13が配設される。
【0019】
また、この硬貨判別通路12の終端には、該硬貨判別通路12から転送された硬貨を正貨、偽貨に振り分け、正貨と偽貨とを格別の硬貨通路へ案内する正偽貨振り分けレバー14が配設される。
【0020】
正偽貨振り分けレバー14は下端の軸を中心に上端が紙面に対し垂直方向に開閉することで、正貨と偽貨との振り分けを行う。
【0021】
この正偽貨振り分けレバー14により、偽貨として振り分けられた硬貨は図示しない硬貨返却口に返却されるが、正貨として振り分けられた硬貨は、第1の金種振り分けレバー15により、硬貨A、硬貨Cのグループと、硬貨B、硬貨Dのグループとに振り分けられる。
【0022】
第1の金種振り分けレバー15は、全体として正面が略L字形状に形成されており、表面から突出した状態で、側方にある第1の硬貨選別通路16を開放するとともに、第2の硬貨選別通路17を閉塞し、また、表面から引き込まれた状態で第1の硬貨選別通路16を閉塞して第2の硬貨選別通路17を開放することにより、硬貨A、硬貨Cのグループと、硬貨B、硬貨Dのグループとの振り分けを行う。
【0023】
第1の硬貨選別通路16に導かれた硬貨Aおよび硬貨Cは、第2の金種振り分けレバー18により、硬貨Aと硬貨Cとに振り分けられる。
【0024】
第2の金種振り分けレバー18は、正偽貨振り分けレバー14と同様に、下端の軸を中心に上端が紙面に対し垂直方向に開閉することで、硬貨Aを第3の硬貨選別通路19に導き、硬貨Cを第3の硬貨選別通路19の上面に形成された第4の硬貨選別通路20に導くことで硬貨Aと硬貨Cとの振り分けを行う。
【0025】
硬貨Aを案内する第3の硬貨選別通路19(点線)は進行方向へ向け略L字形状に形成され、その上面に形成される硬貨Cを案内する第4の硬貨選別通路20(実線)は、その通路長をできるだけ長く確保するため進行方向へ向けて略S字形状に蛇行し形成される。
【0026】
第2の硬貨選別通路17には、第3の金種振り分けレバー21が設けられる。この第3の金種振り分けレバー21は、正偽貨振り分けレバー14と同様に、下端の軸を中心に上端が紙面に対し垂直方向に開閉することで、第2の硬貨選別通路17に導かれた硬貨B、硬貨Dを第5の硬貨選別通路22に振り分け、図示しない金庫に導く硬貨を第6の硬貨選別通路23に導く振り分けを行う。
【0027】
第5の硬貨選別通路22には、第4の金種振り分けレバー24が設けられ、この第4の金種振り分けレバー24は、第1の金種振り分けレバー15と同様に正面が略L字形状で、表面から突出した状態または表面から引き込まれた状態に制御されることにより、硬貨Bと硬貨Dとの振り分けを行う。
【0028】
前述した略L字形状の第3の硬貨選別通路19の下流端には当該第3の硬貨選別通路19を通過する硬貨Aを、当該第3の硬貨選別通路19内に複数枚(最大枚数で3枚)一時的に保留する第1のエスクロ機構25が配設される。
【0029】
また、前述した略S字形状に蛇行し形成された第4の硬貨選別通路20の下流端には当該第4の硬貨選別通路20を通過する硬貨Cを、当該第4の硬貨選別通路20内に複数枚(最大枚数で4枚)一時的に保留する第2のエスクロ機構26が配設される。
【0030】
また、硬貨Aを一時保留する第1のエスクロ機構25の下端には、第1のエスクロ機構25により一時保留された硬貨を図示しない硬貨排出シュート若しくはコインチューブ31若しくは図示しない金庫側通路に振り分ける振り分けレバー27が設けられる。
【0031】
また、硬貨Cを一時保留する第2のエスクロ機構26の下端には、第2のエスクロ機構26により一時保留された硬貨Cを硬貨排出シュート若しくはコインチューブ31若しくは金庫側通路に振り分ける振り分けレバー28が設けられる。
【0032】
第1のエスクロ機構25は、図2に詳細を示すように、第3の硬貨通路19を通過する硬貨Aを一時保留する断面コの字形の硬貨保留レバー250と、該硬貨保留レバー250を軸250aを中心に回動させるソレノイド251から構成される。
【0033】
硬貨保留レバー250は、図2の(A)に示すように、一対の円筒形の先端部25a、25bが軸250aを中心に時計方向に常時付勢され停止し、これにより該一対の先端部25a、25bを第3の硬貨選別通路19内に突出させて、当該第3の硬貨選別通路19の下流端を閉塞する一方、円筒形の後端25cは第3の硬貨選別通路19内から退避して第3の硬貨選別通路19の上流側を解放している。
【0034】
この初期状態において、第3の硬貨選別通路19に硬貨Aが一枚案内されると、硬貨保留レバー250の一対の先端部25a、25bは、硬貨Aの周面を支持して当該硬貨Aを保留し、またさらに、当該一枚の硬貨Aの保留後、第3の硬貨選別通路19内に複数枚(3枚) の硬貨Aが案内されると、これら3枚の硬貨Aは第3の硬貨選別通路19内に次々に一時保留される。なお、この第3の硬貨選別通路19内に一時保留される硬貨の枚数は、当該第3の硬貨選別通路19の長さに依存する。
【0035】
この第1のエスクロ機構25は、後に詳述する制御部700からの駆動信号に基づき駆動される。図2の(A)に示す初期状態において、第3の硬貨選別通路19に硬貨Aが一枚案内されると、硬貨保留レバー250の一対の先端部25a、25bは、硬貨Aの周面を支持して当該硬貨Aを保留し、先端部25cは、第3の硬貨選別通路19内から退避して第3の硬貨選別通路19の上流側を解放しているが、制御部700から駆動信号が加えられると、硬貨保留レバー250は図2の(B)に示すように、軸250aを中心に反時計方向に回動し、硬貨保留レバー250の一対の先端部25a、25bが、第3の硬貨選別通路19内から退避するとともに、先端部25cは、第3の硬貨選別通路19内に突出して後続の硬貨Aを支持保留して、硬貨Aが1枚下方に落下する。
【0036】
なお、硬貨Cを保留する第2のエスクロ機構26も、第1のエスクロ機構25と同様に、第4の硬貨通路20を通過する硬貨Cを一時保留する図示しない断面コの字形の第2の硬貨保留レバーと、該硬貨保留レバーを軸を中心に回動させるソレノイドから構成され、この第2のエスクロ機構26は、初期状態では、円弧形状の先端部26aを第4の硬貨選別通路20内に突出させて、当該第4の硬貨選別通路20の下流端を閉塞する一方、円筒形の後端26bは第4の硬貨選別通路20内から退避して第4の硬貨選別通路20の上流側を解放している。
【0037】
この初期状態において、硬貨選別通路20に硬貨Cが一枚案内されると、硬貨保留レバーの先端部26a は、硬貨Cの周面を支持して当該硬貨Cを保留し、またさらに、当該一枚の硬貨Cの保留後、第4の硬貨選別通路20内に複数枚(4枚)の硬貨Cが案内されると、これら4枚の硬貨Cは、第4の硬貨選別通路20内に次々に一時保留される。
【0038】
なお、この第4の硬貨選別通路20は、その通路長をできるだけ長く確保するため進行方向へ向けて略S 字形状に蛇行し形成されているから、この第4の硬貨選別通路20内に一時保留される硬貨Cの枚数は総計で4枚となる。
【0039】
硬貨Aを一時保留する第1のエスクロ機構25の下端に設けられた振り分けレバー27は、それぞれ図示しない軸を中心に回動自在に支承された第1の振り分けレバー27aと第2の振り分けレバー27bからなり、図示の状態では第1のエスクロ機構25に一時保留した硬貨Aをコインチューブ31に落下させるが、第1の振り分けレバー27aの時計方向の回動により、第1のエスクロ機構25に一時保留した硬貨Aを図示しない硬貨排出シュートに案内し、第2の振り分けレバー27bの反時計方向の回動により、第1のエスクロ機構25に一時保留した硬貨Aを図示しない金庫側通路に案内する。
【0040】
なお、硬貨Cを一時保留する第2のエスクロ機構25の下端に設けられた振り分けレバー28も、振り分けレバー27と同様に構成される。
【0041】
さて、この硬貨処理装置1には、5本のコインチューブ31〜35が設けられており、このコインチューブの下端には図3にその詳細を示すような硬貨払出機構が設けられており、また、各コインチューブ31〜35には、各コインチューブ31〜35に最低限の釣銭が支払い可能な硬貨が収容されているか否かを検知するエンプティセンサ31a〜35aがそれぞれ設けられている。
【0042】
図3は、コインチューブ31に対応する硬貨払出機構の詳細を示す図である。コインチューブ31の下端31eとコインチューブ31の下方に固着されたコインベース37との間には、コインチューブ31内に蓄積収容された硬貨10を一枚ずつ引き出すペイアウトスライド38がスライド自在に支承されている。なお、このペイアウトスライド38にはコインチューブ31内に収容された硬貨10を一枚だけ収容する硬貨収容孔38aが形成されている。
【0043】
この硬貨払出機構は、後に示す硬貨払出モータ704により回動する円板形状のペイアウトカム36と、このペイアウトカム36に連動して図面左右方向へ往復スライド移動するペイアウトリンク39と、このペイアウトリンク39の下面に配設され、ペイアウトスライド38によりコインチューブ31から引き出された硬貨の下面支持とその解除とを選択的に行って硬貨の払出しと非払出しとを制御するチェンジスライド31dとから構成される。
【0044】
なお、ペイアウトリンク39とペイアウトスライド38は、コインチューブ31を装置本体に装着した際に互いに凹凸嵌着し連結される。また、チェンジスライド31dの後端には、チェンジスライド31dの駆動を制御する払出硬貨選択ソレノイド31cがそれぞれ配設される。
【0045】
また、ペイアウトスライド38と対向する位置には、コインチューブ31から引き出されたペイアウトスライド38の硬貨収容孔38a内に硬貨10があるか否かを検知する硬貨検知センサ31bが配設される。
【0046】
ここで、ペイアウトカム36、ペイアウトスライド38、ペイアウトリンク39は、各コインチューブ31〜35に共通に設けられているが、硬貨検知センサ31b、チェンジスライド31d、払出硬貨選択ソレノイド31cは、各コインチューブ31〜35に対応して設けられている。
【0047】
この硬貨払出機構によりコインチューブ31から硬貨10を1枚払い出す場合は、図3(A)に示すペイアウトスライド38の硬貨収容孔38a内に硬貨10がある状態で、硬貨払出モータにより円板形状のペイアウトカム36を1回転し、図3(B)に示すように、ペイアウトリンク39を介しペイアウトスライド38を図面右側へ移動して、同時に硬貨収容孔38a内の硬貨10を硬貨払出し位置に移動させる。
【0048】
その際、同時にチェンジスライド31dの駆動を制御するソレノイド31cの駆動をONして、当該ソレノイド31cとチェンジスライド31dとの係合を解除しする。
【0049】
これにより、ペイアウトスライド38の硬貨収容孔38a内の硬貨10は、チェンジスライド31dにより下面が支承されず、下方へ落下する。
【0050】
図4は、この硬貨払出機構部による硬貨払出時の「空打ち」動作を説明する図である。
【0051】
硬貨払出時の空打ち動作は、図4(A)に示す状態で、ソレノイド31cの駆動をOFFにしてペイアウトカム36を1回転させる。
【0052】
この場合、ソレノイド31cとチェンジスライド31dとの係合は解除されないので、図4(B)に示すように、ペイアウトスライド38の硬貨収容孔38a内の硬貨10は、チェンジスライド31dにより下面が支承され、ペイアウトスライド38の硬貨収容孔38a内の硬貨10は、下方に落下せずに、コインチューブ31内に戻る。
【0053】
図5は、上記「空打ち動作」により、コインチューブ31内の硬貨立ちを解消する動作を説明する図である。
【0054】
図5(A)に示すように、コインチューブ31内に硬貨立ちが生じている状態で、図4で説明したような「空打ち」動作を行うと、コインチューブ31内で立った状態の硬貨は、図5(B)に示すように倒れ、これによりコインチューブ31内の硬貨立ちを解消することができる。
【0055】
図6は、コインチューブ31内に複数硬貨立ちの状態が生じた場合の不都合を説明する図である。
【0056】
エスクロ機構で一時保留される500円硬貨のように厚い硬貨は、受け入れた硬貨が立った状態で収容されることがある。特に、空のコインチューブに硬貨を1枚だけ導入した時、硬貨がチューブ内に立つ確率が高くなる。このように硬貨が立った状態に対して、例えば、第1のエスクロ機構25で一時保留された硬貨が1枚ずつ更にコインチューブ31に導入された場合は、図6(A)に示すように、複数の硬貨が立った状態になり、この場合は、図6(B)に示すように、「空打ち」をしても硬貨を倒すことが出来なくなり、釣銭が払い出せない不良が発生する。
【0057】
なお、図3乃至図6においては、コインチューブ31に対応する硬貨払出機構を示したが、他のコインチューブに対応する硬貨払出機構も同様に構成されている。例えば、コインチューブ32に対応する硬貨払出機構においては、図3乃至図6に示した硬貨検知センサ31b、チェンジスライド31d、払出硬貨選択ソレノイド31cに対応して図示しない硬貨検知センサ32b、チェンジスライド32d、払出硬貨選択ソレノイド32cが設けられている。
【0058】
ところで、本発明は、図6に示すようなエスクロ機構で一時保留された硬貨のコインチューブへの導入による「複数硬貨立ち」の状態の発生を可及的に防止するようにしたものである。
【0059】
本発明においては、エスクロ機構25、26に収容された硬貨をコインチューブ31、32へ収容する際に、次に示す払出可能枚数計数部701により計数された該コインチューブ31、32から払出可能な硬貨の枚数を確認し、該払出可能な硬貨の枚数が0枚のときは、エスクロ機構からの最初の硬貨を収容した後、チェンジスライド31d、32dを閉鎖状態にした状態でペイアウトスライド38をスライドし、該ペイアウトスライド38をスライドさせた状態で、硬貨検知センサ31b、32bにより硬貨を検出した場合は、エスクロ機構25、26に一時保留された残りの保留硬貨を1枚ずつコインチューブ31、32へ収容する。
【0060】
図7は、本発明に係わる硬貨処理装置の「複数硬貨立ち」を防止するための構成を示すブロック図である。
【0061】
本発明に係わる硬貨処理装置は、制御部700により制御され、各コインチューブ31〜35内の収容硬貨枚数を計数する払出可能枚数計数部701、空打ちにより硬貨を検出する硬貨検知センサ702、エスクロ機構に一時保留した硬貨を1枚ずつコインチューブへ落下導入する硬貨1枚開放ソレノイド703、ペイアウトカム36を駆動する硬貨払出モータ704、チェンジスライド31dの駆動を制御する払出硬貨選択ソレノイド705を有している。
【0062】
払出可能枚数計数部701は、各コインチューブ31〜35に最初に収容された各硬貨の枚数に対して各コインチューブ31〜35にそれぞれ導入された硬貨の枚数を加算計数し、各コインチューブ31〜35からそれぞれ払い出された硬貨の枚数を減算計数することにより各コインチューブ31〜35内に現在収容されている硬貨の枚数を各コインチューブ31〜35毎にそれぞれ計数するものである。
【0063】
硬貨検知センサ702は、図3乃至図6に示した硬貨検知センサ31bに対応するもので、各コインチューブ31〜35に対応して設けられている。
【0064】
硬貨1枚開放ソレノイド703は、図2に示したソレノイド251に対応するもので、制御部からの駆動信号により制御され、エスクロ機構25、26に一時保留された硬貨をコインチューブに1枚導入するときに駆動されるものであって、エスクロ機構25、26に対応して設けられている。
【0065】
硬貨払出モータ704は、制御部からの駆動信号により制御され、図3乃至図6に示したペイアウトカム36を駆動するものである。
【0066】
払出硬貨選択ソレノイド705は、図3乃至図6に示したチェンジスライド31dと係合する払出硬貨選択ソレノイド31cに対応するもので、制御部からの駆動信号により制御されるものであって、各コインチューブ31〜35に対応して設けられている。
【0067】
制御部700は、この硬貨処理装置の全体動作を制御するものである。なお、この制御部700は、図1に示した硬貨識別センサ13の識別結果等に基づき正偽貨振り分けレバー14、第1の金種振り分けレバー15、第2の金種振り分けレバー18、第3の金種振り分けレバー21、第4の金種振り分けレバー24、振り分けレバー27、振り分けレバー28等の制御も行うが、これらに対しては図7では省略している。
【0068】
図8は、図7に示した制御部700による本発明に係わる複数硬貨立ちを防止するための処理を説明するフローチャートである。
【0069】
なお、図7においては、制御部700からの硬貨導入信号により第1のエスクロ部25に一時保留された硬貨をコインチューブ31に導入する処理について説明する。
【0070】
制御部700からの硬貨導入信号により第1のエスクロ部25に一時保留された硬貨1枚をコインチューブ31に導入する処理が開始されると、まず、払出可能枚数計数部701により計数された各コインチューブ31〜35毎に計数された払出可能枚数計数値からコインチューブ31に収容された硬貨が有るかを調べる(ステップ801)。
【0071】
ここで、コインチューブ31に収容された硬貨が空でないと判断された場合は(ステップ801でYES)、コインチューブ31内に1枚以上の硬貨が収容されているので、硬貨1枚開放ソレノイド703を駆動してエスクロ機構25に一時保留された硬貨1枚を開放して、この硬貨をコインチューブ31に導入する(ステップ809)。
【0072】
また、ステップ801でコインチューブ31に収容された硬貨が空である場合は(ステップ801でNO)、硬貨1枚開放ソレノイド703を駆動してエスクロ機構25に一時保留された硬貨1枚を開放して、この硬貨をコインチューブ31に導入するが(ステップ802)、この場合、コインチューブ31に導入された硬貨がコインチューブ31内で「硬貨立ち」する可能性があるので、払出硬貨選択ソレノイド705(払出硬貨選択ソレノイド31c)をOFFにした状態で、硬貨払出モータ704を駆動してペイアウトカム36を1回転させる「空打ち」を行う(ステップ803)。
【0073】
そして、上記「空打ち」により硬貨検知センサ702(硬貨検知センサ31b)により硬貨を検知したかを調べる(ステップ804)。ここで、硬貨を検知した場合は(ステップ804でYES)、コインチューブ31内での「硬貨立ち」は生じていないと判断できるので、この処理を終了する。
【0074】
この状態で、制御部700から次の硬貨導入信号が加えられると、ステップ801でコインチューブ31に収容された硬貨有りと判断され(ステップ801でYES)、硬貨1枚開放ソレノイド703を駆動してエスクロ機構25に一時保留された硬貨1枚を開放して、この硬貨をコインチューブ31に導入する(ステップ809)処理が行われ、この処理が繰り返されることによりエスクロ機構25に一時保留された硬貨は1枚ずつコインチューブ31に導入される。
【0075】
また、ステップ804で、硬貨を検知しない場合は(ステップ804でNO)、コインチューブ31内での「硬貨立ち」が生じていると判断して、払出硬貨選択ソレノイド705(払出硬貨選択ソレノイド31c)をOFFにした状態で、硬貨払出モータ704を駆動してペイアウトカム36を1回転させる「空打ち」のリトライを行い(ステップ805)、この空打ちにより硬貨検知センサ702(硬貨検知センサ31b)により硬貨を検知したかを調べる(ステップ806)。
【0076】
ここで、ステップ806で硬貨を検知した場合は(ステップ806でYES)、コインチューブ31内での「硬貨立ち」は解消したと判断してこの処理を終了するが、ステップ806でも硬貨を検知しない場合は(ステップ804でNO)、コインチューブ31内での「硬貨立ち」は解消していないと判断して、払出硬貨選択ソレノイド705(払出硬貨選択ソレノイド31c)をOFFにした状態で、硬貨払出モータ704を駆動してペイアウトカム36を1回転させる「空打ち」の再リトライを行う(ステップ807)。
【0077】
そして、上記「空打ち」により硬貨検知センサ702(硬貨検知センサ31b)により硬貨を検知したかを再度調べ(ステップ808)、ここで、硬貨を検知した場合は(ステップ808でYES)、コインチューブ31内での「硬貨立ち」は解消したと判断してこの処理を終了する。
【0078】
また、ステップ808で、硬貨検知センサ702(硬貨検知センサ31b)により硬貨を検知しない場合は(ステップ808でNO)、コインチューブ31内での「硬貨立ち」は解消できないと判断してこの処理を終了する。
【0079】
なお、上記実施例では、「空打ち」のリトライを2回行っても、硬貨が検出されなかった場合、処理を通常通り終了してしまうようにしたが、これは、次の硬貨が収容されると硬貨同士がぶつかって「硬貨立ち」が解消される可能性が高いからである。
【0080】
また、「硬貨立ち」が解消せずに、上記処理が終了しても、釣銭払出し時に硬貨が払い出せなかったことを硬貨検知センサ702で検知できるので、その時は、代わりに他の金種で支払う処理を実行したり、あるいは、「硬貨立ち」が発生しているチューブからの払出しを禁止する処理等を実施することができる。
【0081】
なお、上記においては、第1のエスクロ部25に一時保留された硬貨をコインチューブ31に導入する処理について説明したが、第2のエスクロ部26に一時保留された硬貨をコインチューブ32に導入する処理も同様に行うことができる。
【0082】
以上が本発明の代表的な実施形態の一例であるが、本発明は、上記実施例及び図面に示す実施例に限定することなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施できるものである。
【符号の説明】
【0083】
1 硬貨処理装置
10 硬貨
11 硬貨投入口
12 硬貨判別通路
13 硬貨識別センサ
14 正偽貨振り分けレバー
15 第1の金種振り分けレバー
16 第1の硬貨選別通路
17 第2の硬貨選別通路
18 第2の金種振り分けレバー
19 第3の硬貨選別通路
20 第4の硬貨選別通路
21 第3の金種振り分けレバー
22 第5の硬貨選別通路
23 第6の硬貨選別通路
24 第4の金種振り分けレバー
25 第1のエスクロ機構
26 第2のエスクロ機構
27 振り分けレバー
28 振り分けレバー
31〜35 コインチューブ
31a〜35a エンプティセンサ
31b 硬貨検知センサ
31c 払出硬貨選択ソレノイド
31d チェンジスライド
37 コインベース
38 ペイアウトスライド
39 ペイアウトリンク
250 硬貨保留レバー
251 ソレノイド
700 制御部
701 払出可能枚数計数部
702 硬貨検知センサ
703 硬貨1枚開放ソレノイド
704 硬貨払出モータ
705 払出硬貨選択ソレノイド705

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの硬貨通路の下流に配設され、該硬貨通路に案内された複数枚の硬貨を一時的保留するとともに、保留した硬貨を一枚ずつ解放して下流へ放出するエスクロ機構と、
前記エスクロ機構の下流に配設され、該エスクロ機構から放出された硬貨を積載収容するコインチューブと、
前記コインチューブの下端に位置し、スライドして該コインチューブ内の硬貨を一枚ずつ引き出すペイアウトスライドと、
前記ペイアウトスライドが硬貨を一枚引き出す際に、該ペイアウトスライドによる硬貨の払出しを阻止する閉鎖状態から硬貨の払出の許可状態へと切り替えることで硬貨を払い出すチェンジスライドと、
前記ペイアウトスライドがスライドした時に、該ペイアウトスライドによって引き出された硬貨の有無を検出する硬貨検知センサと、
前記コインチューブに蓄積された払出可能な硬貨の枚数を計数する払出可能枚数計数手段と、
前記エスクロ機構に収容された硬貨を前記コインチューブへ収容する際に、前記払出可能枚数計数手段により計数された前記払出可能な硬貨の枚数を確認し、該払出可能な硬貨の枚数が0枚のときは、エスクロ機構からの最初の硬貨を収容した後、前記チェンジスライドを前記閉鎖状態にした状態で前記ペイアウトスライドをスライドし、該ペイアウトスライドをスライドさせた状態で、前記硬貨検知センサにより硬貨を検出した場合は、前記エスクロ機構に一時保留された残りの保留硬貨を1枚ずつ前記コインチューブへ収容するように前記エスクロ機構を制御する制御手段と
を具備する硬貨処理装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記硬貨検知センサにより硬貨が検出できない場合は、前記チェンジスライドを前記閉鎖状態にした状態で前記ペイアウトスライドを再スライドさせる請求項1記載の硬貨処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−170498(P2011−170498A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32294(P2010−32294)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(307003777)株式会社日本コンラックス (140)
【Fターム(参考)】