説明

硬質ポリウレタンフォーム成形用組成物、及び該組成物を用いた硬質ポリウレタンフォームの製造方法

【課題】 発泡剤として水を使用した場合にフォーム内部のスコーチを容易に改善し、且つ、所望される機械物性を確保しながらフォームの低密度化を容易に実現することができる、独立気泡率が0〜75%の硬質ポリウレタンフォーム成形用組成物および製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 (A)有機ポリイソシアネート、(B)ポリオール、(C)触媒、(D)改質添加剤、(E)整泡剤、(F)発泡剤としての水からなる硬質ポリウレタンフォーム成形用組成物において、(B)ポリオールとして、分子量2000〜5000のポリプロピレングリコールを特定量導入し、(D)改質添加剤として、隣接して不飽和結合とカルボニル基を有する分子量500未満の低分子化合物を特定量導入し、且つ、該組成物におけるイソシアネートインデックスを100未満とすることにより、上記の課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は独立気泡率が0〜75%の硬質ポリウレタンフォーム成形用組成物および製造方法に関し、更に詳しくは、発泡剤として水を使用した場合にフォーム内部のスコーチを容易に改善し、且つ、所望される機械物性を確保しながらフォームの低密度化を容易に実現することができる、独立気泡率が0〜75%(以下、「連続気泡」と略記)の硬質ポリウレタンフォーム成形用組成物および製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、硬質ポリウレタンフォームを製造する方法として、発泡剤として塩素を含むフロン類(CFC−11、HCFC−141b、HCFC−123、HCFC−22、CFC−12等のCFC類およびHCFC類)を用いる方法が公知である。しかし、CFC類およびHCFC類はオゾン層破壊という環境問題の原因の一つとされており、削減及び撤廃が実施されようとしている。
【0003】
近年、これらのCFC類およびHCFC類に替わる発泡剤として、ハイドロフルオロカーボン類(以下「HFC類」と略記)が注目されている。しかし、HFC類はオゾン破壊係数(ODP)は有しないものの、地球温暖化係数(GWP)が高いという、環境上の問題点を有している。
【0004】
そこで、水とイソシアネート基の反応により発生する炭酸ガスを発泡剤として利用する水発泡が注目されている。
【0005】
水だけを発泡剤として用い、ポリオールとして、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、エチレンジアミン、トリレンジアミン、ペンタエリスリトール、メチルグルコシド、ソルビトール、蔗糖等を開始剤とするポリエーテルポリオールを用いた場合、あるいは、水だけを発泡剤として用い、多価アルコールと多価カルボン酸の縮合によって得られるポリエステルポリオールを用いた場合、発生して気泡内に閉じ込められた炭酸ガスはフロン類と比べて樹脂を透過しやすい。そのため、気泡内の気圧が低下し、CFC類やHCFC類あるいはHFC類を発泡剤として用いたフォームに比べ、一般に寸法安定性が悪化するという問題が生じる。
【0006】
このため、特に低い熱伝導率すなわち高い断熱性が要求されない用途においては、あらかじめ気泡を連続化させる物質(以下「連続気泡化剤」と略記)を含むポリオールを用いたり、別に連続気泡化剤を添加したり、連続気泡化を起こしやすい整泡剤を選択するなどして、一般に独立気泡率85%以上の状態で得られる硬質ポリウレタンフォームの気泡を連続化、即ち、連続気泡化することで、気泡内の気圧と大気圧を一致させ、それにより寸法安定性を改善することが行われている。
【0007】
一般に連続気泡化は、フォームが形成される過程において、ある程度発泡が進んだ段階で、気泡壁の一部を破壊することによって達成される。連続気泡化は、フォーム内部が反応熱によって高温状態である時に起こるため、連続気泡化によってフォーム内部に酸素が供給されると、樹脂の燃焼が起こり、フォーム内部が焼け焦げてしまったり、発火したりすることがある。これをスコーチと呼んでいる。スコーチが起こると、フォームが燃焼するため物性は著しく悪化し、また燃焼が激しくなる場合には火災発生の危険もある。
【0008】
これまで、スコーチの発生を改善する方法として、酸化防止剤などの特定の添加剤を添加する方法、例えば、ジアリールアミンと低級アルキルケトンとの反応生成物、ジアリールアリーレンジアミン、更に、新たな特定の第三の成分としてヒンダードフェノールからなるスコーチ防止組成物を添加する方法(例えば、特許文献1参照)や、ジアリールアミン、立体障害化フェノール、更に、ペンタエリトリオールジホスファイトからなる安定剤組成物を添加する方法(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
【0009】
また、スコーチの発生を改善する方法として、特定の構造を有するポリオールを用いる方法、例えば、特定のヒドロキシ化合物からなる組成物をポリオールとして用いる方法(例えば、特許文献3参照)、特定のポリオールと特定のモノオールを組み合わせて用いる方法(例えば、特許文献4参照)が提案されている。
【0010】
さらに、スコーチの発生を改善する方法として、予め変性した有機ポリイソシアネートを用いる方法、例えば、水酸基含有化合物とポリメチレンポリフェニルイソシアネートを予め反応させたポリメチレンポリフェニルイソシアネートプレポリマーを用いる方法(例えば、特許文献5参照)が提案されている。
【0011】
加えて、スコーチの発生を改善する方法として、発熱を抑えるために液体二酸化炭素を加えて発泡する方法(例えば、特許文献6参照)が提案されている。
【0012】
しかし、添加剤の多量添加によるフォーム物性の悪化や経済面でのコストの増加、ポリオール組成や有機イソシアネートの変更に伴う作業面や経済面でのコストの増加、特殊液体の使用に伴う経済面でのコストの増加など、種々の問題を招くことになり、作業性や経済性の面で不便さが伴ってしまう。
【0013】
一方で近年、連続気泡化したポリウレタンフォームを用いる業界において、施工性の観点等から、軽量化を念頭においた連続気泡化したポリウレタンフォームに対する低密度化、とりわけ、フォーム密度が30kg/m密未満との要求が高まってきている。しかし、前述の通り、フォームが形成される過程において、ある程度発泡が進んだ段階で気泡壁の一部を破壊することにより連続気泡化を達成するというメカニズムを鑑みた場合、低密度化を達成するのは非常に難しい。
【0014】
この低密度化を解決するために、例えば発泡剤としての水を組成物に多量導入する方法が考えられるが、この方法では前述したスコーチがより起こり易くなる等の問題がある。
【0015】
【特許文献1】特開平2−49059号公報(第2〜3頁)
【特許文献2】特表平8−503992号公報(第7〜11頁)
【特許文献3】特開平7−10952号公報(第4〜8頁)
【特許文献4】特開平8−193118号公報(第4〜7頁)
【特許文献5】特開平7−53655号公報(第3〜4頁)
【特許文献6】特表2001−526728号公報(第9頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、発泡剤として水を使用した場合、前述の問題を鑑み、容易に且つ安価な方法によりスコーチを改善し、結果として物性が改善され、安全に製造できる連続気泡硬質ポリウレタンフォームを製造するための組成物、およびその製造方法を提供することにある。
【0017】
本発明の目的はまた、発泡剤としての水を大量に導入することなく、所望される機械物性を確保しながらフォームの低密度化を容易に実現することができる連続気泡硬質ポリウレタンフォームを製造するための組成物、およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の問題点を解決するために、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、連続気泡硬質ポリウレタンフォームを製造するための原料である有機ポリイソシアネート、特定構造を有するものを含むポリオール、発泡剤として水、触媒、整泡剤を含有する原料に、改質添加剤として、隣接して不飽和結合とカルボニル基を有する分子量500未満の低分子化合物を、ポリオール又は有機ポリイソシアネート100質量部に対し特定の割合で導入し、且つ、特定のイソシアネートインデックスに設定された組成物を用いることが非常に有効であることを見出し、本発明に至った。
【0019】
すなわち、本発明は次の(1)〜(3)のとおりである。
(1) (A)有機ポリイソシアネート、(B)ポリオール、(C)触媒、(D)改質添加剤、(E)整泡剤、(F)発泡剤としての水からなる硬質ポリウレタンフォーム成形用組成物において、(B)ポリオールとして、分子量2000〜5000のポリプロピレングリコール(b−1)を(B)ポリオール100質量部に対し5〜30質量部用い、(D)改質添加剤として、隣接して不飽和結合とカルボニル基を有する分子量500未満の低分子化合物を、(B)ポリオール100質量部に対し0.01〜20質量部用い、且つ、該組成物におけるイソシアネートインデックスが100未満であることを特徴とする、独立気泡率0〜75%の硬質ポリウレタンフォーム成形用組成物。
【0020】
(2) (D)改質添加剤がマレイン酸エステルであることを特徴とする、請求項1に記載の独立気泡率0〜75%の硬質ポリウレタンフォーム成形用組成物。
【0021】
(3) (1)又は(2)に記載の成形用組成物を用いることを特徴とする、独立気泡率0〜75%の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明の組成物のように、ポリオールとして、分子量2000〜5000のポリプロピレングリコール(b−1)を(B)ポリオール100質量部に対し5〜30質量部用い、改質添加剤として。隣接して不飽和結合とカルボニル基を有する分子量500未満の低分子化合物をポリオールまたは有機ポリイソシアネート100質量部に対し0.01〜20質量部の割合で用い、且つ、該組成物におけるイソシアネートインデックスを100未満とすることで、容易に且つ安価な方法により、水を発泡剤として用いた連続気泡硬質ポリウレタンフォームにおけるスコーチの発生を、樹脂組成を著しく変えることなく抑え、且つ、得られる連続気泡ポリウレタンフォームの低密度化についても大幅に改善しつつ、優れたフォーム物性を保持することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明をさらに詳細に説明する。
【0024】
一般に硬質ポリウレタンフォームは、断熱材としての用途が最も大きく、この分野では断熱性能が最も重視される因子になっている。この断熱性能を高めるためには、一つ一つの気泡をできるだけ独立させ、気泡間におけるガスの移動を食い止める必要がある。
【0025】
本発明に於ける硬質ポリウレタンフォームは、この断熱性能が因子として最優先されない用途、即ち、一つ一つの気泡ができるだけ連続していても構わない用途に用いられる。一つ一つの気泡をできるだけ連続化する、具体的には独立気泡率を0〜75%とすることにより、気泡内におけるガスは速やかに空気と置換される。そのため、断熱性能は独立気泡を有する硬質ポリウレタンフォームよりは劣るものの、フォーム内部の気圧と大気圧が一致するため、フォームの機械物性、特に寸法安定性などが著しく改善される。
【0026】
本発明における(A)有機ポリイソシアネートとしては、公知の各種多官能性の脂肪族、脂環族及び芳香族イソシアネートを使用でき、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4、4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製トリレンジイソシアネート、変性トリレンジイソシアネート、4、4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′−MDI)、ポリメリックMDI(粗製ジフェニルメタンジイソシアネート、クルードMDI等と呼称されている:以下「p−MDI」と略記)、変性ジフェニルメタンジイソシアネート(カルボジイミド変性、プレポリマー変性等)、オルトトルイジンジイソシアネート(TODI)、ナフチレンジイソシアネート(NDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、リジンジイソシアネート(LDI)などが挙げられる。本発明においては、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4′−MDI)、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2′−MDI)、4、4′−MDI、及びベンゼン環を3つ以上有するポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートの混合物であるp−MDI、又は、該p−MDIとその他のイソシアネート成分との混合物を用いるのが好ましく、中でも、得られる硬質ポリウレタンフォームの機械物性や価格の観点に於いて優れるとの観点から、ベンゼン環を2つ有するジフェニルメタンジイソシアネートにおける2,4′−MDIと2,2′−MDIとの合計の比率が0〜30質量%であり、且つ、該ジフェニルメタンジイソシアネートが25〜70質量%、ベンゼン環を3つ以上有するポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートが30〜75質量%から成るp−MDIを用いるのが特に好ましい。
【0027】
本発明に於いては、イソシアネート基と反応しうる(B)ポリオール、即ち、活性水素含有官能基を2以上有する活性水素化合物として、分子量2000〜5000(好ましくは3000〜5000、より好ましくは4000〜5000)のポリプロピレングリコール(プロピレングリコールを出発物質として、プロピレンオキサイドを用いて鎖延長して得られる、末端に水酸基を2個有する化合物)(b−1)を(B)ポリオール100質量部に対し5〜30質量部(好ましくは10〜25質量部、より好ましくは10〜20質量部)用いる。該(b−1)が5質量部未満の場合、本発明の所望する独立気泡率が得られない。また、該(b−1)が30質量部を越えた場合、得られる硬質ポリウレタンフォームの寸法変化が大きくなる。
【0028】
本発明に於いては、(B)ポリオールとして前記(b−1)以外に用いるものとしては、水酸基やアミノ基などの活性水素含有官能基を2以上有する化合物、あるいはその化合物の2種以上の混合物であれば、公知のものをいずれも使用することができる。本発明においては特に、得られる硬質ポリウレタンフォームの機械物性が向上するとの観点から、(B)ポリオールとして前記(b−1)以外に用いるものとして、2以上の水酸基を有する化合物やその混合物、またはそれを主成分としさらにポリアミンなどを含む混合物を用いることが好ましい。
【0029】
但し、後に詳細に述べる(D)改質添加剤と反応する1級アミノ基を持つ化合物をポリオール(B)として使用する場合は、(D)改質添加剤を予め(A)有機ポリイソシアネートと混合して用いるか、若しくは発泡成形時にポリオール成分、有機ポリイソシアネート成分、(D)改質添加剤の3成分を同時に混合して用いるなど、本発明の目的とする効果を得るためにも、発泡成形時までに、1級アミノ基を持つ化合物と(D)改質添加剤が触れないようにする必要がある。
【0030】
前記の2以上の水酸基を有する化合物としては、ポリエーテル系ポリオール(前記(b−1)のグリコールを除く)、ポリエステル系ポリオール、多価アルコール、水酸基含有ジエチレン系ポリマーなどが挙げられる。なお、ポリオールとしてポリマーポリオールあるいはグラフトポリオールと呼ばれる主にポリエーテル系ポリオール中にビニルポリマーの微粒子が分散したポリオール組成物を使用することも可能である。
【0031】
前記のポリエステル系ポリオールとしては、多価アルコール、多価カルボン酸縮合系のポリオールや環状エステル開環重合体系のポリオールがあり、多価アルコールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどがある。多価カルボン酸としては、無水フタル酸、テレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、アジピン酸、ヘット酸などがある。
【0032】
本発明に於いては、作業性や経済性等に優れるとの観点から、前記(b−1)のポリオールと、ポリエーテル系ポリオールの2種からなるか、該2種を主成分としてさらに、ポリエステル系ポリオール、多価アルコール、ポリアミン、アルカノールアミン、その他の活性水素化合物と併用されるのが好ましい。
【0033】
本発明に於いてはまた、ポリエーテル系ポリオール(前記(b−1)のグリコールを除く)として、多価アルコール、糖類、アルキルアミン、アルカノールアミン、その他の開始剤に環状エーテル、特にプロピレンオキシドやエチレンオキシドなどのアルキレンオキシドを付加して得られるポリエーテル系ポリオールを用いることが好ましい。
【0034】
なお、(B)ポリオールの有する水酸基価は、得られる硬質ポリウレタンフォームの用途、即ち要求される諸物性に応じて、15〜2000(mgKOH/g)の範囲の中から選択される。
【0035】
(B)ポリオールとして市販されているものとしては、例えば、シュクローズにプロピレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルポリオール(例えば、「GR−35(水酸基価400(mgKOH/g):武田薬品工業(株)製)」)、トルエンジアミンにプロピレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルポリオール(例えば、「NT−400(水酸基価400(mgKOH/g):三井化学(株)製)」)、グリセリンにプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオール(例えば、「FA−103T(水酸基価50(mgKOH/g):三洋化成工業(株)製)」)」、シュクローズ及びトリエチレンジアミンにプロピレンオキサイドを付加した旭硝子(株)製「EX−425R(水酸基価420(mgKOH/g))」などが例として挙げられる。
【0036】
本発明において(D)改質添加剤として用いられる、隣接して不飽和結合とカルボニル基を有する分子量500未満の低分子化合物の添加部数は、(B)ポリオールまたは(A)有機ポリイソシアネート100質量部に対し0.01〜20質量部添加するのが好ましく、中でも0.1〜10質量部添加するのがより好ましい。0.01質量部未満では、スコーチを改善する効果が小さいので好ましくない。また、20質量部を超えると、フォーム内部に残った改質添加剤の影響により寸法安定性を悪化させるので好ましくない。
【0037】
(D)改質添加剤としては、マレイン酸、マレイン酸エステル、フマル酸、フマル酸エステル、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、イタコン酸、イタコン酸エステル、アクロレイン、メタアクロレイン、クロトン酸、ベンゾキノン、イソホロンなど、ポリオールとの混合性が良く、且つ、粘度が低いものであることが好ましいとの観点から、分子量が500未満のものであれば、いずれも用いることができる。本発明に於いては、これらのうち、マレイン酸ジメチル,マレイン酸ジエチル,マレイン酸ジブチル,マレイン酸ジオクチル(マレイン酸ジ2−エチルヘキシル)等のマレイン酸エステルを用いるのが好ましく、中でも、粘度、有機イソシアネートあるいはポリオールとの混和性、臭気、安全性、価格などの面で最も優れるとの観点から、また、本発明の目的とする低密度化をも達成しやすいとの観点から、マレイン酸ジオクチルを選択して用いるのが特に好ましい。
【0038】
(D)改質添加剤は、1級アミノ基とは速やかに反応するが、(B)ポリオールに於ける水酸基や(A)有機ポリイソシアネートに於けるイソシアネート基とは反応しない。従って、連続気泡硬質ポリウレタンフォームを得る形態として、(B)ポリオールを含む成形前混合物(ポリオールプレミックス)と、(A)有機ポリイソシアネートを含む成形前混合物(または(A)有機ポリイソシアネート単独のもの)の2液を、成形時に混合して得る形態をとる場合、(D)改質添加剤を予め、(B)ポリオールを含む成形前混合物、あるいは(A)有機ポリイソシアネートを含む成形前混合物(または、(A)有機ポリイソシアネート単独)のいずれか一方、または、双方に各々という形態で予め添加しておく方法により用いられる。(D)改質添加剤が添加された成形前混合物は、液の粘度が低下し、且つ、液の混合性を改善するという優れた効果も有する。
【0039】
また、連続気泡硬質ポリウレタンフォームを得る形態として、(B)ポリオールを含む成形前混合物(ポリオールプレミックス)と、(A)有機ポリイソシアネートを含む成形前混合物(または(A)有機ポリイソシアネート単独のもの)の他に、さらに(D)改質添加剤等を予め添加せず第3成分とし、3液以上の状態で成形時に混合して得る形態も、勿論可能である。
【0040】
本発明に於いては、(B)ポリオールと(A)有機ポリイソシアネートを反応させる際、反応を促進するなどの目的から、(C)触媒の使用が必要とされる。(C)触媒としては、(B)ポリオール中の活性水素含有基と(A)有機ポリイソシアネート中のイソシアネート基の反応を促進させる有機スズ化合物などの金属化合物系触媒やトリエチレンジアミン(TEDA)、テトラメチルヘキサメチレンジアミン(TMHMDA)、ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)、ジメチルシクロヘキシルアミン(DMCHA)、ビスジメチルアミノエチルエーテル(BDMAEA)などの3級アミン触媒が使用される。また、該イソシアネート基同士を反応させる三量化触媒も目的に応じて使用される。
【0041】
本発明に於いては、良好な気泡を形成する目的から、(E)整泡剤の使用が必要とされる。(E)整泡剤としては、ポリウレタン工業において整泡剤として公知のものであれば、いずれも使用することができ、例えば、シリコーン系整泡剤や含フッ素化合物系整泡剤などがある。なお、特に、本来は独立気泡率が75%を越える硬質ポリウレタンフォームについて、独立気泡率が75%以下になるようにするために、必要に応じて、連続気泡化を促すような傾向を示す整泡剤を選択して用いてもよい。このような傾向を示す整泡剤としては、例えば、「SZ−1923(日本ユニカー(株)製)」「SZ−1932(日本ユニカー(株)製)」「F−370(信越化学工業(株)製)」がある。
【0042】
本発明に於いては、必要に応じて、さらに助剤として、例えば充填剤、安定剤、着色剤、難燃剤などを用いることができる。難燃剤の代表的なものとしてはトリス(クロロプロピル)ホスフェート(TCPP)がある。なお、特に、本来は独立気泡率が75%を越える硬質ポリウレタンフォームについて、独立気泡率が75%以下になるようにするために、本発明に於いては必要に応じて、連続気泡化を促すような助剤、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸亜鉛、ミスチリン酸カルシウム等の飽和高級脂肪酸のアルカリ土類金属塩または亜鉛塩などを用いることもできる。
【0043】
本発明に於ける硬質ポリウレタンフォーム成形用組成物は、フォーム内部のスコーチを容易に改善し、且つ、所望される機械物性を確保しながらフォームの低密度化を容易に実現するため、イソシアネートインデックスを100未満(好ましい範囲としては70以上100未満、より好ましい範囲としては80以上98未満、中でも、とりわけ好ましい範囲としては85以上96未満)として使用される点に特徴がある。イソシアネートインデックスが100以上の場合、過剰のイソシアネート基の存在によるフォーム内部のスコーチの発生、特に寸法安定性といった機械物性の悪化、また、フォームの低密度化が困難になる等の理由により好ましくない。なお、該イソシアネートインデックスとは、(A)有機ポリイソシアネートに於けるイソシアネート基と(B)ポリオール及び(F)発泡剤としての水に於ける活性水素含有基との当量比、即ち、全イソシアネート基/全活性水素含有基による当量比に100を乗じた値である。
【0044】
本発明においては、これらの原料を使用することにより、連続気泡ポリウレタンフォームが得られる。本発明は、連続気泡硬質ポリウレタンフォームの製造において有用である。
【実施例1】
【0045】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、以下に示す実施例のみに限定して解釈されるものではない。
【0046】
発泡速度の測定
表1並びに表2に記載の原料を用意し、表1並びに表2に記載されている配合比に基づいて、ポリオールプレミックスやイソシアネート成分を調合する等の準備をした。これらを各々20℃に温調した後、合計重量が500gになるように2000mlのデスカップに秤量し、ホモミキサー(回転数7000rpm)で5秒間攪拌し、硬質ポリウレタンフォーム成形用組成物を得た。攪拌終了後、予め40℃に温調された内寸250×250×250mmの上面開放型アルミ製モールドに該組成物を直ちに注入し、自由発泡フォームの反応速度(クリームタイム、ゲルタイム、ライズタイム、タックフリータイム)を測定、その後、下記の方法によりフリーライズ密度の測定、及び、スコーチの有無の確認を行った。
【0047】
フリーライズ密度
JIS A9511に準拠して測定した(表1に於ける単位:kg/m)。
【0048】
スコーチの有無
反応速度を測定し終えた自由発泡フォームについて、反応速度測定後、脱型せずに10分間静置し、経過後、該フォームを縦に二等分にカットし内部の様子を目視確認した。スコーチが発生した痕跡がないものを”○”、スコーチが発生した痕跡が認められるものを”×”と評価した。
【0049】
パネル発泡フォームの作成
表1並びに表3に記載の原料を用意し、表1並びに表3に記載されている配合比に基づいてポリオールプレミックスやイソシアネート成分を調合する等の準備をした。これらを各々20℃に温調した後、合計重量が650gになるように2000mlのデスカップに秤量し、ホモミキサー(回転数7000rpm)で5秒間攪拌し、硬質ポリウレタンフォーム成形用組成物を得た。攪拌終了後、予め40℃に温調された内寸500×500×60(厚み)mmのアルミ製モールドに直ちに注入、10分後に脱型しパネル発泡フォームとした。脱型後、24時間室温にて静置した後、次の項目について測定を行った。
パネル発泡密度:JIS A9511(表1に於ける単位:kg/m
高温寸法変化率:下記の測定方法(表1に於ける単位:体積%)
低温寸法変化率:下記の測定方法(表1に於ける単位:体積%)
独立気泡率:ASTM D2856準拠
【0050】
寸法変化率
パネル発泡フォームを50×50×50mmのサイズにカットした。このカットしたフォームサンプルについて、−20℃または70℃一定雰囲気条件で、48時間後の寸法変化(体積変化)率を測定した。
【0051】
独立気泡率
パネル発泡フォームよりサンプルをカットし、ASTM D2856に準拠した方法で測定した。
【0052】
実施例1、2、5〜7、9〜11:
ポリエーテルポリオールA、ポリエーテルポリオールB、ポリエーテルポリオールC、ジプロピレングリコール、水、触媒、整泡剤、難燃剤、改質添加剤としてマレイン酸ジオクチル又はマレイン酸ジブチルを表1に示す配合比により混合してポリオールプレミックスを調合した。その後、該プレミックスと有機ポリイソシアネートを表1に示す配合比になるように混合し、硬質ポリウレタンフォーム成形用組成物を得た。該組成物について、前述の方法により、発泡速度、フリーライズ密度、及びスコーチの有無の測定、パネル発泡フォームの作成、及びパネル発泡密度・寸法変化率・独立気泡率の測定を行った。結果を表1に示す。
【0053】
実施例3:
ポリエーテルポリオールA、ポリエーテルポリオールB、ポリエーテルポリオールC、ジプロピレングリコール、水、触媒、整泡剤、難燃剤を表1に示す配合比により混合してポリオールプレミックスを調合した。その後、該プレミックスと有機ポリイソシアネート、さらに、改質添加剤としてマレイン酸ジオクチルを表1に示す配合比になるように混合し、硬質ポリウレタンフォーム成形用組成物を得た。該組成物について、前述の方法により、発泡速度及びスコーチの有無の測定、パネル発泡フォームの作成、及びパネル発泡密度・寸法変化率・独立気泡率の測定を行った。結果を表1に示す。
【0054】
実施例4:
ポリエーテルポリオールA、ポリエーテルポリオールB、ポリエーテルポリオールC、ジプロピレングリコール、水、触媒、整泡剤、難燃剤を表1に示す配合比により混合してポリオールプレミックスを調合した。一方、有機ポリイソシアネートに改質添加剤としてマレイン酸ジオクチルを表1に示す配合比で混合した有機ポリイソシアネート混合物を調合した。その後、該プレミックスと該混合物を表1に示す配合比になるように混合し、硬質ポリウレタンフォーム成形用組成物を得た。該組成物について、前述の方法により、発泡速度及びスコーチの有無の測定、パネル発泡フォームの作成、及びパネル発泡密度・寸法変化率・独立気泡率の測定を行った。結果を表1に示す。
【0055】
実施例8:
ポリエーテルポリオールA、ポリエーテルポリオールC、ジプロピレングリコール、水、触媒、整泡剤、難燃剤、改質添加剤としてマレイン酸ジオクチル又はマレイン酸ジブチルを表1に示す配合比により混合してポリオールプレミックスを調合した。その後、該プレミックスと有機ポリイソシアネートを表1に示す配合比になるように混合し、硬質ポリウレタンフォーム成形用組成物を得た。該組成物について、前述の方法により、発泡速度、フリーライズ密度、及びスコーチの有無の測定、パネル発泡フォームの作成、及びパネル発泡密度・寸法変化率・独立気泡率の測定を行った。結果を表1に示す。
【0056】
比較例1:
ポリエーテルポリオールA、ポリエーテルポリオールB、ポリエーテルポリオールC、ジプロピレングリコール、水、触媒、整泡剤、難燃剤を表2に示す配合比により混合してポリオールプレミックスを調合した。その後、該プレミックスと有機ポリイソシアネートを表2に示す配合比になるように混合し、硬質ポリウレタンフォーム成形用組成物を得た。該組成物について、前述の方法により、発泡速度及びスコーチの有無の測定、パネル発泡フォームの作成、及びパネル発泡密度・寸法変化率・独立気泡率の測定を行った。結果を表2に示す。
【0057】
比較例2〜5:
ポリエーテルポリオールA、ポリエーテルポリオールB、ポリエーテルポリオールC、ジプロピレングリコール、水、触媒、整泡剤、難燃剤、改質添加剤としてマレイン酸ジオクチルを表2に示す配合比により混合してポリオールプレミックスを調合した。その後、該プレミックスと有機ポリイソシアネートを表2に示す配合比になるように混合し、硬質ポリウレタンフォーム成形用組成物を得た。該組成物について、前述の方法により、発泡速度及びスコーチの有無の測定、パネル発泡フォームの作成、及びパネル発泡密度・寸法変化率・独立気泡率の測定を行った。結果を表2に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
表1・表2の注
ポリエーテルポリオールA((b−1)に相当):三洋化成工業(株)製「PP−4000」(ポリプロピレングリコール、官能基数=2、水酸基価=28(mgKOH/g))
ポリエーテルポリオールB:三洋化成工業(株)製「GP−3000」(ポリプロピレンポリオール、官能基数=3、水酸基価=56(mgKOH/g))
ポリエーテルポリオールC:旭硝子(株)製「EL−410NE」(ポリエチレンポリオール、官能基数=4、水酸基価=410(mgKOH/g))
触媒:次の(1)/(2)=3/7(質量比)からなる混合物:(1)東ソー(株)製「TOYOCAT ET」、(2)花王(株)製「カオライザーNo.10」
整泡剤:東レダウコーニングシリコーン(株)製「SF2936F」
難燃剤:アクゾノーベル社製「ファイロールPCF」
有機ポリイソシアネート:以下の(イ)(ロ)(ハ)の組成からなるポリメリックMDI(イソシアネート基含有量=31.0%、粘度=180cps/25℃)
(イ) ベンゼン環を2つ有する2,4′−MDIと2,2′−MDIとの合計が1質量%、
(ロ) ベンゼン環を2つ有する4,4′−MDIが33質量%、
(ハ) ベンゼン環を3つ以上有するポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートが66質量%
【0061】
表1に示すように、隣接して不飽和結合とカルボニル基を有する分子量500未満の低分子化合物としてマレイン酸ジオクチル又はマレイン酸ジブチルを特定量導入し、イソシアネートインデックスを100未満とし、且つ、分子量2000〜5000のポリプロピレングリコールを特定量導入したフォームは、その導入形態を問わず、いずれもスコーチが発生した痕跡は認められず、且つ、フォーム密度が30kg/m密未満であるにも関わらず、優れた寸法変化率を示した。これに対し、表2に示すように、本発明を構成する要因のいずれかがかけた場合、スコーチの発生や、寸法変化率の悪化が見受けられた。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明に係る成形用組成物は、スコーチ発生の心配がなく且つ低密度(とりわけ30kg/m未満)の連通硬質ポリウレタンフォームを得るのに極めて優れたものであり、また、該組成物を用いた製造方法は、特殊な装置を用いるなどの必要なしに、従来公知の発泡装置により容易に得ることが可能である。
【0063】
このような優れた利点から、本発明により得られる硬質連通ポリウレタンフォーム成形用組成物は、例えば、出窓屋根・ドアパネル・壁パネル・床パネル等の建築材料の製造に用いられる注入剤として、好適に使用できる。勿論、本発明の意図する、スコーチが発生せず、且つ、低密度ながら優れた物性を有する硬質連通ポリウレタンフォームが求められるような他の用途でも、大いに用いることが可能である。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)有機ポリイソシアネート、(B)ポリオール、(C)触媒、(D)改質添加剤、(E)整泡剤、(F)発泡剤としての水からなる硬質ポリウレタンフォーム成形用組成物において、(B)ポリオールとして、分子量2000〜5000のポリプロピレングリコール(b−1)を(B)ポリオール100質量部に対し5〜30質量部用い、(D)改質添加剤として、隣接して不飽和結合とカルボニル基を有する分子量500未満の低分子化合物を、(B)ポリオール100質量部に対し0.01〜20質量部用い、且つ、該組成物におけるイソシアネートインデックスが100未満であることを特徴とする、独立気泡率0〜75%の硬質ポリウレタンフォーム成形用組成物。
【請求項2】
(D)改質添加剤がマレイン酸エステルであることを特徴とする、請求項1に記載の独立気泡率0〜75%の硬質ポリウレタンフォーム成形用組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の成形用組成物を用いることを特徴とする、独立気泡率0〜75%の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。

【公開番号】特開2006−37029(P2006−37029A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−222716(P2004−222716)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000230135)日本ポリウレタン工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】