説明

硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物及び硬質ポリウレタンフォームの製造方法

【課題】水を発泡剤とし、低密度であって収縮が特に効果的に防止された硬質ポリウレタンフォームを形成することができるポリオール組成物並びに該ポリオール組成物を使用した硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供する。
【解決手段】発泡剤は水であり、ポリオール化合物は第3級アミノ基を有するアミンポリオールを主成分とするものであり、整泡剤成分は、(a)Si−O結合を4〜5個含む環状ジアルキルポリシロキサン、(b)(R)Si(OR,(RSi(OR,(RSi(OR)からなる群から選択される少なくとも1種とSi(ORとの共加水分解縮合物であるシリコン重合体、及び(c)ポリジメチルシロキサンとポリオキシアルキレングリコールのグラフト共重合体である共重合シリコン化合物の少なくとも1種、を含有するポリオール組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を発泡剤とする硬質ポリウレタンフォーム用のポリオール組成物並びに該ポリオール組成物を使用した硬質ポリウレタンフォームの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
硬質ポリウレタンフォームは、断熱材、軽量構造材等として周知の材料である。係る硬質ポリウレタンフォームは、ポリオール化合物、発泡剤を必須成分として含有するポリオール組成物とポリイソシアネート成分とを混合し、発泡、硬化させることにより形成される。発泡剤としては、古くはCFC−11等のフロン化合物が使用されていたが、CFC化合物はオゾン層の破壊を引き起こすことから禁止され、HCFC−141bに切り換えられ、さらに2004年からはオゾン層破壊係数がゼロであるHFC化合物への切り換えが行われているが、HFC化合物はGWP(地球温暖化係数)が大きく、また現状では高価であるという問題を有する。
【0003】
HFC化合物等のハロゲン化炭化水素化合物に代えて、低コストの発泡剤としてn−ペンタン、iso−ペンタン、シクロペンタン等のペンタン類を使用する技術が公知であるが、ペンタン類は可燃性が高く、これらを発泡剤としてポリオール組成物や硬質ポリウレタンフォームを製造するためには、火災防止のための設備に多大の費用が必要であるという問題を有する。
【0004】
作業環境においても地球環境においても問題がなく、しかも低コストの発泡剤として水が知られており、他の発泡剤を使用することなく水を発泡剤として使用した硬質ポリウレタンフォームは公知であるが、低密度の水発泡の硬質ポリウレタンフォームは、寸法変化が大きいという問題を有する。係る問題を解決する技術として特定のシリコン化合物を使用する技術が公知である(特許文献1、2など)。
【0005】
【特許文献1】特許第2722952号公報
【特許文献2】特開2004−315580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1、2に記載の技術によれば、収縮が抑制された硬質ポリウレタンフォームを得ることができるものの、なお収縮を生じるものであり、さらに改善が求められている。
【0007】
本発明は、水を発泡剤とし、低密度であって収縮が特に効果的に防止された硬質ポリウレタンフォームを形成することができるポリオール組成物並びに該ポリオール組成物を使用した硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ポリオール化合物、発泡剤及び整泡剤を含み、ポリイソシアネート成分と混合・反応させて硬質ポリウレタンフォームを形成するポリオール組成物であって、
前記発泡剤は水であり、
前記ポリオール化合物は第3級アミノ基を有するアミンポリオールを主成分とするものであり、
前記整泡剤成分は、(a)Si−O結合を4〜5個含む環状ジアルキルポリシロキサン、(b)(R)Si(OR,(RSi(OR,(RSi(OR)からなる群から選択される少なくとも1種とSi(ORとの共加水分解縮合物であるシリコン重合体(Rは炭素数1又は2のアルキル基又はフェニル基、Rは炭素数1又は2のアルキル基、R、Rは同じであってもよく、異なってもよい。)、及び(c)ポリジメチルシロキサンとポリオキシアルキレングリコールのグラフト共重合体である共重合シリコン化合物の少なくとも1種、を含有するものであることを特徴とする。
【0009】
係る組成のポリオール組成物を使用して製造した硬質ポリウレタンフォームは、特許文献1、2のフォームと比較して、水を発泡剤とし、低密度であって収縮が特に効果的に防止された硬質ポリウレタンフォームである。
【0010】
本発明の硬質ポリウレタンフォームのフリー発泡フォーム(上部が開放の筒状モールドで発泡させたフォーム)の密度は15〜35kg/mであることが好ましい。
【0011】
フリー発泡フォームの密度が35kg/mを超える高密度フォームは用途が限定される一方で本発明によることなく寸法安定性が良好であり、フリー発泡フォームの密度が15kg/m未満のフォームは収縮の発生を防止することが困難である。
【0012】
上記の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物においては、前記ポリオール化合物は、全量を100重量部としたときに、水酸基価300〜500mgKOH/gの芳香族ジアミンを開始剤として含有するポリオール化合物(芳香族アミンポリオール)70〜95重量部、及び水酸基価400〜600mgKOH/gの脂肪族ジアミンを開始剤とするポリオール(脂肪族アミンポリオール)30〜5重量部を含有することが好ましい。
【0013】
係る構成のポリオール組成物を使用することにより、低密度であって強度、とりわけ曲げ強度に優れた硬質ポリウレタンフォームを製造することができる。
【0014】
上記の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物においては、前記触媒が、イミダゾール系触媒を主成分とするものであることが好ましい。
【0015】
係る構成のポリオール組成物を使用することにより、面材と積層した場合に面材との接着強度に優れた硬質ポリウレタンフォームを製造することができる。
【0016】
本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法は、ポリオール化合物、発泡剤及び整泡剤を含むポリオール組成物とポリイソシアネート成分とを混合・反応させて硬質ポリウレタンフォームとする製造方法であって、
前記発泡剤は水であり、
前記ポリオール化合物は第3級アミノ基を有するアミンポリオールを主成分とするものであり、
前記整泡剤成分は、(a)Si−O結合を4〜5個含む環状ジアルキルポリシロキサン、(b)(R)Si(OR,(RSi(OR,(RSi(OR)からなる群から選択される少なくとも1種とSi(ORとの共加水分解縮合物であるシリコン重合体(Rは炭素数1又は2のアルキル基又はフェニル基、Rは炭素数1又は2のアルキル基、R、Rは同じであってもよく、異なってもよい。)、及び(c)ポリジメチルシロキサンとポリオキシアルキレングリコールのグラフト共重合体である共重合シリコン化合物の少なくとも1種、を含有するものであることを特徴とする。
【0017】
係る構成の製造方法によれば、特許文献1、2のフォームと比較して、水を発泡剤とし、低密度であって収縮が特に効果的に防止された硬質ポリウレタンフォームを製造することができる。
【0018】
上記の硬質ポリウレタンフォームの製造方法においては、前記ポリオール化合物は、全量を100重量部としたときに、水酸基価300〜500mgKOH/gの芳香族ジアミンを開始剤として含有するポリオール化合物(芳香族アミンポリオール)70〜95重量部、及び水酸基価400〜600mgKOH/gの脂肪族ジアミンを開始剤とするポリオール(脂肪族アミンポリオール)30〜5重量部を含有することが好ましい。
【0019】
係る構成の製造方法によれば、水を発泡剤とし、低密度であって収縮が効果的に防止されており、しかもフォームの強度、とりわけ曲げ強度に優れた硬質ポリウレタンフォームを製造することができる。
【0020】
上述の硬質ポリウレタンフォームの製造方法においては、前記触媒が、イミダゾール系触媒を主成分とするものであることが好ましい。
【0021】
係る構成製造方法によれば、面材と積層した場合に面材との接着強度に優れた硬質ポリウレタンフォームを製造することができる。
【0022】
また上記の硬質ポリウレタンフォームの製造方法においては、前記整泡剤成分は、(a)環状ジアルキルポリシロキサン、(b)シリコン重合体及び(c)共重合シリコン化合物の3成分を予め混合して製造した後に他のポリオール組成物構成成分と混合することが好ましい。
【0023】
係る構成によってポリオール組成物の貯蔵安定性が向上し、安定した品質の硬質ポリウレタンフォームを製造することができる。特に(a)環状ジアルキルポリシロキサンと(b)シリコン重合体とを先に混合溶解し、その後(c)共重合シリコン化合物と混合することが短時間で混合液を製造でき、好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明のポリオール組成物は、第3級アミノ基を有するアミンポリオールを主成分とするものであり、より好ましくは水酸基価300〜500mgKOH/gの芳香族ジアミンを開始剤として含有するポリオール化合物(芳香族アミンポリオール)及び水酸基価400〜600mgKOH/gの脂肪族ジアミンを開始剤とするポリオール(脂肪族アミンポリオール)を使用する。
【0025】
芳香族アミンポリオールは、芳香族ジアミンを開始剤としてエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等の環状エーテル化合物、好ましくはプロピレンオキサイドのみ、もしくはプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドを開環付加させた約4官能の第3級アミノ基を有するポリオール化合物である。開始剤である芳香族ジアミンとしては、公知の芳香族ジアミンを限定なく使用することができる。具体的には2,4−トルエンジアミン、2,6−トルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、p−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、ナフタレンジアミン等が例示される。これらの中でも得られる硬質ポリウレタンフォームの断熱性と強度などの特性が優れている点でトルエンジアミン(2,4−トルエンジアミン、2,6−トルエンジアミン又はこれらの混合物)の使用が特に好ましい。
【0026】
脂肪族アミンポリオールは、脂肪族ジアミンを開始剤としてエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等の環状エーテル化合物、好ましくはプロピレンオキサイドのみ、もしくはプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドを開環付加させた約4官能の第3級アミノ基を有するポリオール化合物である。開始剤である脂肪族ジアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,4−ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が例示される。
【0027】
本発明においては、上記のポリオール化合物に加えて、本発明の特徴を損なわない範囲で他のポリオール化合物、例えばヒドロキノン、ビスフェノールA、キシリレングリコール等の芳香族化合物を開始剤とした芳香族ポリエーテルポリオール、シュークロース、ソルビトール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の脂肪族多官能アルコールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等の環状エーテル化合物、好ましくはプロピレンオキサイドのみ、もしくはプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドを開環付加させた脂肪族ポリエーテルポリオール、トリエタノールアミンを開始剤とした3官能ポリオール化合物などを添加してもよい。これらのポリオール化合物の添加量は、ポリオール化合物の全量中10重量%未満、即ちアミンポリオールが90重量%以上であることが好ましい。
【0028】
上述のポリオール化合物において、ポリオール化合物の合成に使用する環状エーテルとしてプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドとを使用する場合には、エチレンオキサイドの使用量は、環状エーテル中5〜40%であることが好ましく、5〜20%であることがより好ましい。
【0029】
本発明の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物を構成する成分として架橋剤を使用してもよい。架橋剤としてはポリウレタンの技術分野において使用される低分子量多価アルコールが使用可能である。具体的には、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリエタノールアミン等が例示される。
【0030】
本発明において整泡剤成分として使用する(b)シリコン重合体は、(R)Si(OR,(RSi(OR,(RSi(OR)からなる群から選択される少なくとも1種とSi(ORとを水と触媒とを使用して共加水分解縮合してポリシロキサン結合を形成することにより製造することができる。R,Rは、同一であっても異なっていてもよく、メチル基又はエチル基であることが好ましい。また(a)環状ジアルキルポリシロキサンも公知の方法で製造することができ、環状ジメチルシロキサンであることが好ましい。
【0031】
(c)共重合シリコン化合物は、ポリウレタンフォームの技術分野において整泡剤として使用される化合物である。本発明においては、これらの公知の整泡剤の中でも、Si含有率が10〜40重量%のもの、即ち共重合しているポリオキシアルキレングリコールの含有率が小さいく、一般的に活性が低いとされる整泡剤(低活性整泡剤)を使用することが好ましい。Si含有率が小さいと活性が高くなり、Si含有率が大きいとポリオール組成物との相溶性が低下する。Si含有率が10〜40重量%の低活性整泡剤としては、具体的には、S−824−02(Si=25wt%;東レダウコーニングシリコン)、SF−2945,SF−2935,SZ−1605,BY−10−540、SH−193(Si=30wt%;東レダウコーニングシリコン)、SZ−1704(Si=25wt%;東レダウコーニングシリコン)、F501(Si=25wt%;信越化学工業)等の整泡剤を使用することができる。ポリオキシアルキレングリコールを有する整泡剤(共重合シリコン化合物)は、2種以上を使用してもよく、(a)環状ジアルキルポリシロキサンを含有したものであってもよい。
【0032】
本発明の整泡剤成分には、上記(a)〜(c)の成分に加えて、Si含有率が10重量%以下の中ないし高活性の整泡剤を添加してもよい。ただし、係る中活性ないし高活性の整泡剤の添加量は整泡剤成分中10重量%未満であることが好ましい。
【0033】
上記(a),(b),(c)のシリコン化合物としては市販品を使用することができ、具体的には(a)と(b)を含有する組成物としてF701(信越化学工業)が例示され、使用に好適である。上述のように、(a)環状ジアルキルポリシロキサン、(b)シリコン重合体及び(c)共重合シリコン化合物である整泡剤を予め混合して整泡剤組成物としてポリオール組成物の製造に使用することが好ましい。
【0034】
(a)環状ジアルキルポリシロキサンと(b)シリコン重合体との混合比は、重量比にて1/9〜8/2であることが好ましい。また(a)環状ジアルキルポリシロキサンと(b)シリコン重合体との合計量と(c)共重合シリコン化合物との混合比は、重量比にて(a)+(b)/(c)=1.0/0.5〜1.0/1.5であることが好ましい。
【0035】
係る構成により、独立気泡率を70〜85%の範囲に調整することができ、その結果収縮が効果的に抑制され、しかも曲げ強度に優れた硬質ポリウレタンフォームを得ることができる。
【0036】
ポリオール組成物と混合、反応させて硬質ポリウレタンフォームを形成するポリイソシアネート化合物としては、取扱の容易性、反応の速さ、得られる硬質ポリウレタンフォームの物理特性が優れていること、低コストであることなどから、液状MDIを使用する。液状MDIとしては、クルードMDI(c−MDI)(スミジュール44V−10,スミジュール44V−20等(住化バイエルウレタン社製)、ミリオネートMR−200(日本ポリウレタン工業))、ウレトンイミン含有MDI(ミリオネートMTL;日本ポリウレタン工業製)等が使用される。液状MDIに加えて、他のポリイソシアネート化合物を併用してもよい。併用するポリイソシアネート化合物としては、ポリウレタンの技術分野において公知のポリイソシアネート化合物は限定なく使用可能である。
【0037】
本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造においては、イソシアネート基と活性水素基の当量比(NCO index)は、1.0〜1.7、より好ましくは1.0〜1.3である。
【0038】
本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造に際しては、上記成分の他に、当業者に周知の触媒、難燃剤、着色剤、酸化防止剤等が使用可能である。
【0039】
触媒としては、公知の第3級アミン触媒、イミダゾール系触媒を使用することができる。イミダゾール系触媒としては、具体的には1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール等を例示することができる。また第3級アミン触媒としては、具体的にはN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンやN,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン(カオライザーNo.1)、N,N,N’,N’,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン(カオライザーNo.3)等のN−アルキルポリアルキレンポリアミン類、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン(ポリキャット−8)、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン等の第3級アミン類を例示することができる。
【0040】
ポリウレタン分子の構造において難燃性向上に寄与するイソシアヌレート結合を形成する触媒の使用も好ましく、例えば酢酸カリウム、オクチル酸カリウム、第4級アンモニウム塩触媒(特開平9−104734号公報に開示)が例示できる。上述の第3級アミン触媒の中にもイソシアヌレート環形成反応をも促進するものがある。イソシアヌレート結合生成を促進する触媒とウレタン結合生成を促進する触媒を併用してもかまわない。
【0041】
本発明においては、さらに難燃剤を添加することも好ましい態様であり、好適な難燃剤としては、ハロゲン含有化合物、有機リン酸エステル類、水酸化アルミニウム等の金属化合物が例示される。
【0042】
ただし、水酸化アルミニウム等の粉末状の難燃剤を過剰に添加するとフォームの発泡挙動に影響が表れるなどの問題を生じる場合が有り、その添加量はかかる問題を生じない範囲に制限される。
【0043】
有機リン酸エステル類は、可塑剤としての作用も有し、従って硬質ポリウレタンフォームの脆性改良の効果も奏することから、好適な添加剤である。またポリオール組成物の粘度低下効果も有する。かかる有機リン酸エステル類としては、リン酸のハロゲン化アルキルエステル、アルキルリン酸エステルやアリールリン酸エステル、ホスホン酸エステル等が使用可能であり、具体的にはトリス(β−クロロエチル)ホスフェート(CLP、大八化学製)、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート(TMCPP、大八化学製)、トリブトキシエチルホスフェート(TBXP,大八化学製)、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、ジメチルメチルホスホネート等が例示でき、これらの1種以上が使用可能である。有機リン酸エステル類の添加量はポリオール化合物の合計100重量部に対して40重量部以下であり、5〜40重量部であることが好ましい。この範囲を越えると可塑化効果、難燃効果が十分に得られなかったり、フォームの機械的特性が低下するなどの問題が生じる場合が発生する。
【0044】
本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法としては、射出成形法や連続生産法などの、公知のサンドイッチパネルの製造方法が使用可能であるが、連続生産法であることが好ましい。
【実施例】
【0045】
(ポリオール組成物)
表1の上段に記載した組成にてポリオール組成物を調製した。使用した原料の内容、特性は以下の通りである。
a)ポリオール1
トルエンジアミンにプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドを開環付加したポリオール化合物;
水酸基価=400mgKOH/g
b)ポリオール2
エチレンジアミンにプロピレンオキサイド付加したポリオール化合物;
水酸基価=505mgKOH/g
c)ポリオール3
シュークロースを含む開始剤にプロピレンオキサイドを開環付加させたポリオールポリオール化合物;
水酸基価=450mgKOH/g
d)ポリオール4
トリエタノールアミンにプロピレンオキサイド付加したポリオール化合物;
水酸基価=345mgKOH/g
e)ポリオール5
ペンタエリスリトールにプロピレンオキサイド付加したポリオール化合物;
水酸基価=450mgKOH/g
f)触媒
A: カオライザーNo.300(花王)
B: カオライザーNo.1(Kao−No.1)(花王)
g)整泡剤成分
A: (a)環状ジアルキルポリシロキサンと(b)シリコン重合体の1:1(重量比)混合物F701(信越化学工業)と(c)ポリジメチルシロキサンとポリオキシアルキレングリコールの共重合体である共重合シリコン化合物であるF501(信越化学工業)との重量比にてF701:F501=1.0:1.0混合物
B: (c)共重合シリコン化合物(低活性整泡剤)SH−193(Si含有率=30wt%,ポリオキシアルキレングリコール=ポリオキシエチレングリコール、東レダウコーニングシリコン)
C: 高活性シリコン整泡剤B−8465(ゴールドシュミット社)
h)ポリイソシアネート成分:ミリオネートMR−200(粗製MDI:日本ポリウレタン工業)。
【0046】
(実験例)
表1の上段に記載した配合にて常法により硬質ポリウレタンフォームを作製した。ポリオール組成物は、まず水と整泡剤成分を除く成分を撹拌混合し、次いで整泡剤成分を添加して十分に混合し、最後に水を添加・混合することにより調製した。整泡剤成分は予め混合して使用した。また ポリオール組成物とポリイソシアネート成分の混合におけるイソシアネートインデックス(NCO/OH当量比)は、1.0とした。以下に記載の評価を行い、結果を表1の下段に示した。
【0047】
(評価)
1)液流動性
幅400mm、厚さ20mmのモールドを50℃に温度調整し、ポリオール組成物とポリイソシアネート成分を混合した発泡原液組成物をモールドの端部に1辺に沿って注入した。発泡原液組成物が発泡硬化するまでに注入位置から広がった長さと重量を測定し、(長さ)÷(重量)にて単位重量当たりのフォームの伸びを算出した。評価結果はフォームの伸びが330mm/100g以上を○、330mm/100g未満300mm/100g以上を△、300mm/100g未満を×とした。
【0048】
2)フォーム密度(kg/m
200mm×200mm,深さ200mmの上部開放型モールドを使用して自由発泡させ、得られた硬質ポリウレタンフォーム(フリー発泡フォーム)よりスキン層を除いたコア層から100mm×100mm,厚さ100mmのフォームサンプルを切り出し、重量測定を行って密度を算出した。
【0049】
3)寸法安定性
上記のフォーム密度の測定に使用したフォームサンプルを高温高湿条件(温度70℃、相対湿度95%)において48時間放置し、発泡垂直方向の寸法変化率を測定した。
【0050】
4)曲げ強度
上記自由発泡フォームのコア部から、発泡垂直方向を長さ方向として長さ120mm、幅50mm、厚さ10mmのサンプルを切り出し、
支持点間隔100mm
圧子直径10mm
クロスヘッド速度10mm/min
測定温度23℃
の条件で曲げ強度を測定した。
【0051】
5)面材接着性
長さ800mm,幅400mm,深さ50mmのモールドを使用し、下面にクラフト紙を敷いて密度が50kg/mとなるようにして面材付きの硬質ポリウレタンフォームパネルを作製した。作製した硬質ポリウレタンフォームパネルについて図1に示した方法にて剥離試験を行い、接着強度を求めた。測定は面材に幅5cmの切欠きを入れ、W方向に引っ張り、剥離荷重を求めることにより面材接着性の評価を行った。結果は、接着強度が1.2kgf以上のものを○、1.2kgf未満1.0kgf以上のもの(実用的に使用可能であるがやや接着強度が低いもの)を△、1.0kgf未満(実用的使用には問題があるもの)を×として表示した。
【0052】
評価結果は、表1の下段に示した。この結果のように、本発明のアミンポリオールと整泡剤成分を使用した実験例1〜5の硬質ポリウレタンフォームは寸法変化が実質的に起こらないものであったが、整泡剤成分が本発明の範囲外の実験例9の硬質ポリウレタンフォームは収縮を発生した。またアミンポリオールの組成が、好ましい芳香族アミンポリオールと脂肪族アミンポリオールの比率である実験例1、2の硬質ポリウレタンフォームは、曲げ強度が高かったが、使用するポリオール化合物が異なる実験例6〜8の硬質ポリウレタンフォームは、曲げ強度が低いものであった。イミダゾール系触媒に代えて第3級アミン触媒を使用した実験例3の硬質ポリウレタンフォームは、面材との接着性においてやや劣るものであった。
【0053】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】紙面材と硬質ポリウレタンフォームの接着強度の測定方法を示した図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール化合物、発泡剤及び整泡剤成分を含み、ポリイソシアネート成分と混合・反応させて硬質ポリウレタンフォームを形成するポリオール組成物であって、
前記発泡剤は水であり、
前記ポリオール化合物は第3級アミノ基を有するアミンポリオールを主成分とするものであり、
前記整泡剤成分は、(a)Si−O結合を4〜5個含む環状ジアルキルポリシロキサン、(b)(R)Si(OR,(RSi(OR,(RSi(OR)からなる群から選択される少なくとも1種とSi(ORとの共加水分解縮合物であるシリコン重合体(Rは炭素数1又は2のアルキル基又はフェニル基、Rは炭素数1又は2のアルキル基、R、Rは同じであってもよく、異なってもよい。)、及び(c)ポリジメチルシロキサンとポリオキシアルキレングリコールのグラフト共重合体である共重合シリコン化合物の少なくとも1種、を含有するものであることを特徴とする硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【請求項2】
前記ポリオール化合物は、全量を100重量部としたときに、水酸基価300〜500mgKOH/gの芳香族ジアミンを開始剤として含有するポリオール化合物(芳香族アミンポリオール)70〜95重量部、及び水酸基価400〜600mgKOH/gの脂肪族ジアミンを開始剤とするポリオール(脂肪族アミンポリオール)30〜5重量部を含有することを特徴とする請求項1に記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【請求項3】
前記(c)共重合シリコン化合物は、Si含有率が10〜40重量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【請求項4】
前記触媒が、イミダゾール系触媒を主成分とするものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【請求項5】
ポリオール化合物、発泡剤及び整泡剤を含むポリオール組成物とポリイソシアネート成分とを混合・反応させて硬質ポリウレタンフォームとする硬質ポリウレタンフォームの製造方法であって、
前記発泡剤は水であり、
前記ポリオール化合物は第3級アミノ基を有するアミンポリオールを主成分とするものであり、
前記整泡剤成分は、(a)Si−O結合を4〜5個含む環状ジアルキルポリシロキサン、(b)(R)Si(OR,(RSi(OR,(RSi(OR)からなる群から選択される少なくとも1種とSi(ORとの共加水分解縮合物であるシリコン重合体(Rは炭素数1又は2のアルキル基又はフェニル基、Rは炭素数1又は2のアルキル基、R、Rは同じであってもよく、異なってもよい。)、及び(c)ポリジメチルシロキサンとポリオキシアルキレングリコールのグラフト共重合体である共重合シリコン化合物の少なくとも1種、を含有するものであることを特徴とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項6】
前記ポリオール化合物は、全量を100重量部としたときに、水酸基価300〜500mgKOH/gの芳香族ジアミンを開始剤として含有するポリオール化合物(芳香族アミンポリオール)70〜95重量部、及び水酸基価400〜600mgKOH/gの脂肪族ジアミンを開始剤とするポリオール(脂肪族アミンポリオール)30〜5重量部を含有することを特徴とする請求項5に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項7】
前記(c)共重合シリコン化合物は、Si含有率が10〜40重量%であることを特徴とする請求項5又は6に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項8】
前記触媒が、イミダゾール系触媒を主成分とするものであることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項9】
前記整泡剤成分は、(a)環状ジアルキルポリシロキサン、(b)シリコン重合体及び(c)共重合シリコン化合物を予め混合して製造し、他のポリオール組成物構成成分と混合することを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−186551(P2007−186551A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−3830(P2006−3830)
【出願日】平成18年1月11日(2006.1.11)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】