説明

硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物及び硬質ポリウレタンフォームの製造方法

【課題】HFC化合物を主発泡剤として使用し、発泡時のHFC化合物の揮散が小さく、断熱性に優れ、高い難燃性グレードである難燃3級に適合し、かつ−10℃の低温環境でスプレー施工した場合においても基材との接着性に優れた硬質ポリウレタンフォームを形成することができる低温施工に適したポリオール組成物並びに該ポリオール組成物を使用した低温施工に適した硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供する。
【解決手段】発泡剤はHFC245faとHFC365mfcとを含有し、ポリオール化合物は、芳香族エステルポリオールとポリエーテルポリオールとからなり、触媒はイソシアヌレート基形成触媒を含有し、架橋剤はN−アルキルジエタノールアミンであり、N−アルキルジエタノールアミンの配合量が2〜8重量部である硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高断熱性、難燃性の硬質ポリウレタンフォームを形成する硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物並びに該ポリオール組成物を使用した硬質ポリウレタンフォームの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
硬質ポリウレタンフォームは、断熱材、軽量構造材等として周知の材料である。係る硬質ポリウレタンフォームは、ポリオール化合物、発泡剤を必須成分として含有するポリオール組成物とポリイソシアネート成分とを混合し、発泡、硬化させることにより形成される。硬質ポリウレタンフォームの製造方法としてスプレー発泡法や連続生産法がある。これらの発泡法による硬質ポリウレタンフォームであって高い断熱性を必要とする用途においては、オゾン層破壊係数が大きく、使用が禁止されたCFC化合物に代えてHCFC−141bを使用する技術が公知である(特許文献1)。
【0003】
特許文献1において使用されているHCFC−141bは、数値が小さいもののなおオゾン層破壊係数を有するものであり、現在は使用が禁止されている。硬質ポリウレタンフォームの製造において、HCFC−141bに代わる発泡剤として、水を使用したスプレー発泡硬質ポリウレタンフォームも公知である(特許文献2)。
【0004】
特許文献1に開示された硬質ポリウレタンフォームは、ポリオール化合物として芳香族エステルポリオールとポリエーテルポリオールを併用するものである。また特許文献2に開示された硬質ポリウレタンフォームは、発泡剤として上記HCFC−141bを使用して硬質ポリウレタンフォームをスプレー発泡法により基材上に施工した場合に発生する横滑り現象を解消することを目的とし、エチレンジアミンを開始剤とするポリオール化合物をポリオール化合物の1成分として使用することを特徴とするものである。
【0005】
スプレー発泡の硬質ポリウレタンフォームの製造において、HCFC化合物、HFC化合物、水など発泡剤を限定なく使用することができ、エチレンジアミンを開始剤とするポリオール化合物を使用した場合にポリオール組成物の液粘度が高くなるという問題を解決することを目的としてビスフェノールAにアルキレンオキサイドを付加した架橋剤とジアルカノールアミンを併用する架橋剤組成物を使用する技術も公知である(特許文献3)。
【0006】
【特許文献1】特開平8−53565号公報
【特許文献2】特開平10−87774号公報
【特許文献3】特開2003−55430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2に開示された硬質ポリウレタンフォームは水を発泡剤とし、かつエチレンジアミンを開始剤とするポリオール化合物と共に使用するポリオール化合物もポリエーテルポリオールであるために難燃性が十分ではなく、建築物等に使用する断熱材として高度の難燃性グレードである難燃3級に適合するフォームを得ることができない。また発泡剤として水を使用するために、経時変化によりフォームが収縮するという問題、断熱性能が十分でないという問題、フライアビリティーが大きいという問題をも有する。
【0008】
これに対して特許文献1に開示の硬質ポリウレタンフォームは、HCFC化合物を発泡剤として使用し、かつ芳香族エステルポリオールをポリオール化合物の主成分として使用しているために断熱性、難燃性に優れたものであり、経時変化によりフォームが収縮するという問題も発生しない。
【0009】
しかるに、このHCFC−141bに代えてオゾン層破壊係数の小さなHFC化合物を使用すると、HFC化合物のポリオール組成物への溶解性がHCFC−141bと比較して小さく、しかもHFC−245faが気化しやすいためにポリオール組成物とポリイソシアネート成分とを混合した発泡原液組成物の反応開始時にHFC−245faが気化して揮散するという問題、並びに寒冷地でのスプレー発泡による断熱工事、とりわけ気温が−10℃となる寒冷地における施工においては、フォームと基材との接着性が低下するという問題が発生した。また、特許文献1に開示の組成において発泡剤をHFC化合物に変更したフォームでは、JIS A 1321規定の難燃3級に適合するフォームは得られないことも判明した。
【0010】
また特許文献3には、−10℃の寒冷地におけるスプレー発泡施工において、基材との接着性が改善される硬質ポリウレタンフォーム組成は開示されていない。
【0011】
本発明は、HFC−245fa,HFC−365mfaなどのHFC化合物を主発泡剤として使用し、スプレー発泡時のHFC化合物の揮散が小さく、断熱性に優れ、高い難燃性グレードである難燃3級に適合し、かつ−10℃の低温環境で施工した場合においても基材との接着性に優れた硬質ポリウレタンフォームを形成することができる低温施工に適したポリオール組成物並びに該ポリオール組成物を使用した低温施工に適した硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のポリオール組成物はポリオール化合物、架橋剤、発泡剤、整泡剤及び触媒を含み、ポリイソシアネート成分と混合し、反応させて硬質ポリウレタンフォームを形成する硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物であり、
前記発泡剤はHFC245faとHFC365mfcとを含有し、
前記ポリオール化合物は、芳香族エステルポリオールとポリエーテルポリオールとからなり、
前記触媒はイソシアヌレート基形成触媒を含有し、
前記架橋剤はN−アルキルジエタノールアミンであり、前記N−アルキルジエタノールアミンの配合量がポリオール化合物と架橋剤の合計を100重量部としたときに2〜8重量部であることを特徴とする。
【0013】
係る構成のポリオール組成物を使用することにより、HFC化合物を主発泡剤として使用し、断熱性に優れ、高い難燃性グレードである難燃3級に適合し、かつ−10℃の低温環境での施工においてスプレー発泡法により施工した場合においても基材との接着性が良好な硬質ポリウレタンフォームを形成することができる。N−アルキルジエタノールアミンを構成するアルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基のいずれかであることが好ましい。
【0014】
上記の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物においては、前記ポリエーテルポリオールは、水酸基価500〜900mgKOH/gのエチレンジアミンを開始剤とするEDAポリエーテルポリオール、水酸基価200〜550mgKOH/g、平均官能基数が2〜4のマンニッヒポリエーテルポリオールから選択される少なくとも1種であり、前記ポリエーテルポリオールの配合量がポリオール化合物と架橋剤の合計を100重量部としたときに5〜40重量部であることが好ましい。
【0015】
上記構成のポリオール組成物を使用することにより、HFC化合物を主発泡剤として使用し、ポリオール組成物とポリイソシアネート成分とを混合した発泡原液組成物の反応開始時のHFC化合物の揮散が小さく、断熱性に優れ、高い難燃性グレードである難燃3級に適合し、かつスプレー発泡法により−10℃において施工した場合においても十分な反応性を有し、基材との接着性に優れた硬質ポリウレタンフォームをより確実に形成することができる。
【0016】
上記ポリエーテルポリオールの水酸基価が上記範囲を逸脱する場合には形成される硬質ポリウレタンフォームの強度、硬度が低下し、あるいは脆性が高くなる。また上記ポリエーテルポリオールの配合量が5重量部未満の場合には芳香族エステルポリオールの割合が多くなってフォームの強度が低下して脆くなり、ポリエーテルポリオールの配合量が40重量部を超えると難燃性が低下する。
【0017】
別の本発明はポリオール化合物、発泡剤、整泡剤及び触媒を含むポリオール組成物とポリイソシアネート成分とを混合し、反応させて硬質ポリウレタンフォームとする硬質ポリウレタンフォームの製造方法であって、
前記発泡剤はHFC245faとHFC365mfcとを含有し、
前記触媒はイソシアヌレート基形成触媒を含有し、
前記ポリオール化合物は、芳香族エステルポリオールとポリエーテルポリオールとからなり、
前記触媒はイソシアヌレート基形成触媒を含有し、
前記架橋剤はN−アルキルジエタノールアミンであり、前記N−アルキルジエタノールアミンの配合量がポリオール化合物と架橋剤の合計を100重量部としたときに2〜8重量部であり、
前記ポリオール組成物とポリイソシアネート成分との混合におけるNCO基/OH基の当量比を1.5〜2.5とすることを特徴とする。
【0018】
係る構成の製造方法によれば、HFC化合物を主発泡剤として使用し、断熱性に優れ、高い難燃性グレードである難燃3級に適合し、かつスプレー発泡法により−10℃において施工した場合においても十分な反応性を有して基材との接着性に優れた硬質ポリウレタンフォームを形成することができる。
【0019】
上記の硬質ポリウレタンフォームの製造方法においては、前記ポリエーテルポリオールは、水酸基価500〜900mgKOH/gのエチレンジアミンを開始剤とするEDAポリエーテルポリオール、水酸基価200〜550mgKOH/g、平均官能基数が2〜4のマンニッヒポリエーテルポリオールから選択される少なくとも1種であり、前記ポリエーテルポリオールの配合量がポリオール化合物と架橋剤の合計を100重量部としたときに5〜40重量部であることが好ましい。
【0020】
上記構成のポリオール組成物を使用することにより、HFC化合物を主発泡剤として使用し、ポリオール組成物とポリイソシアネート成分とを混合した発泡原液組成物の反応開始時のHFC化合物の揮散が小さく、断熱性に優れ、高い難燃性グレードである難燃3級に適合し、かつスプレー発泡法により−10℃において施工した場合においても基材との接着性に優れた硬質ポリウレタンフォームをより確実に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物並びに硬質ポリウレタンフォームの製造方法においては、ポリオール組成物を構成するポリオール化合物として芳香族エステルポリオールとポリエーテルポリオールを使用する。
【0022】
芳香族エステルポリオールは、芳香族ジカルボン酸グリコールエステルであり、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸から選択される少なくとも1種とエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、平均分子量が150〜500のポリオキシエチレングリコール等のグリコールとのグリコールに基づく水酸基末端を有するエステルポリオールが例示される。芳香族エステルポリオールは、水酸基価が100〜600mgKOH/g、より好ましくは150〜350mgKOH/g、平均官能基数は2.0〜2.5であることが好ましい。
【0023】
EDAポリエーテルポリオールは、エチレンジアミンを開始剤としてエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドの少なくとも1種を開環付加させた末端水酸基の4官能ポリオール化合物である。EDAポリエーテルポリオールは実質的に4官能であり、水酸基価は600〜850mgKOH/gであることがより好ましい。
【0024】
マンニッヒポリオールは、フェノール及び/又はそのアルキル置換誘導体、ホルムアルデヒド及びアルカノールアミンのマンニッヒ反応により得られた活性水素化合物又はこの化合物にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドの少なくとも1種を開環付加重合させることによって得られるポリオール化合物である。マンニッヒポリオールの水酸基価は200〜450mgKOH/gであることがより好ましい。係るポリオール化合物の市販品としては、例えばDK−3810(第一工業製薬)などがあり、使用可能である。
【0025】
本発明の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物を構成する成分としてN−アルキルジエタノールアミンに加えて他の架橋剤を使用してもよい。係る架橋剤としてはポリウレタンの技術分野において使用される低分子量多価アルコールが使用可能であり、脂肪族多価アルコール、芳香族多価アルコール、ビスフェノールAにエチレンオキサイドを好ましくはフェノール基に各1個付加したグリコールなどが例示できる。
【0026】
脂肪族多価アルコールとしてはトリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリエタノールアミン等が例示され、芳香族多価アルコールとしてはビスフェノールAにエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドを2〜4モル付加した化合物、ヒドロキノンにエチレンオキサイドを2〜4モル付加した化合物、ビスヒドロキシエチルテレフタレート、ビスヒドロキシイソフタレート、キシリレングリコール等が例示される。
【0027】
本発明のポリオール組成物及び硬質ポリウレタンフォームの製造方法において使用する発泡剤は、HFC化合物としてHFC−245faとHFC−365mfcを使用する。係る発泡剤の使用により、優れた断熱性を有する硬質ポリウレタンフォームを得ることができる。HFC−245fa/HFC−365mfcの比率は、95/5〜60/40であることが好ましく、85/15〜75/25であることがより好ましい。HFC化合物の添加量は、ポリオール化合物合計100重量部に対して20〜50重量部であることが好ましい。
【0028】
また発泡剤として、さらに水を添加することが好ましい。水の添加により、ポリオール組成物の発泡剤の蒸気圧を低下させることができる。水の添加量は、ポリオール化合物の合計100重量部に対して0.5〜5重量部であることが好ましい。
【0029】
触媒としては、少なくともイソシアヌレート基形成触媒を使用する。イソシアヌレート基形成触媒(三量化触媒)としては、酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム(オクチル酸カリウム)、等の炭素数1〜20の有機カルボン酸アルカリ金属塩、及びN−(2−ヒドロキシプロピル)−N−(2−ヒドロキシエチル)−N,N−ジメチルアンモニウム・オクチル酸塩、N−ヒドロキシアルキル−N,N,N−トリアルキルアンモニウム塩等、特開平9−104734号公報に開示された化合物等の第4級アンモニウム塩触媒から選択される少なくとも1種の化合物を使用する。
【0030】
本発明の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物並びに硬質ポリウレタンフォームの製造方法においては、イソシアヌレート結合形成触媒に加えて第3級アミン触媒を使用する。第3級アミン触媒はウレタン結合形成触媒ないし泡化触媒であり、具体的には、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンやN,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン(カオライザーNo.1)、N,N,N’,N’,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン(カオライザーNo.3)等のN−アルキルポリアルキレンポリアミン類、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン(ポリキャット−8)、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン等を使用することができる。
【0031】
本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造に際しては、上記成分の他に、当業者に周知の整泡剤、難燃剤、着色剤、酸化防止剤等が使用可能である。
【0032】
整泡剤としては、硬質ポリウレタンフォームの技術分野において使用される公知の整泡剤が限定なく使用可能である。具体的には、B−8465(ゴールドシュミット)、SH−193、S−824−02、SZ−1704(東レダウコーニングシリコン)等の整泡剤を使用することができる。整泡剤は2種以上を使用してもよい。
【0033】
本発明においては、さらに難燃剤を添加することも好ましい態様であり、好適な難燃剤としては、ハロゲン含有化合物、有機リン酸エステル類、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム等の金属化合物が例示される。
【0034】
有機リン酸エステル類は、可塑剤としての作用も有し、従って硬質ポリウレタンフォームの脆性改良の効果も奏することから、好適な添加剤である。またポリオール組成物の粘度低下効果も有する。かかる有機リン酸エステル類としては、リン酸のハロゲン化アルキルエステル、アルキルリン酸エステルやアリールリン酸エステル、ホスホン酸エステル等が使用可能であり、具体的にはトリス(β−クロロエチル)ホスフェート(CLP、大八化学製)、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート(TMCPP、大八化学製)、トリブトキシエチルホスフェート(TBXP,大八化学製)、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、ジメチルメチルホスホネート等が例示でき、これらの1種以上が使用可能である。有機リン酸エステル類の添加量はポリオール化合物と架橋剤の合計100重量部に対して40重量部以下であり、5〜40重量部であることが好ましい。この範囲を越えると可塑化効果、難燃効果が十分に得られなかったり、フォームの機械的特性が低下するなどの問題が生じる場合が発生する。
【0035】
本発明のポリオール組成物を使用した硬質ポリウレタンフォームは、連続生産法、スプレー発泡法のいずれによっても製造可能である。本発明のポリオール組成物の粘度は、スプレー法により製造する場合には、硬質ポリウレタンフォームの製造が容易に行える観点より1000mPa・s(20℃)以下であることが好ましく、800mPa・s(20℃)以下であることがより好ましい。
【0036】
ポリオール組成物と混合、反応させて硬質ポリウレタンフォームを形成するポリイソシアネート化合物としては、取扱の容易性、反応の速さ、得られる硬質ポリウレタンフォームの物理特性が優れていること、低コストであることなどから、液状MDIを使用する。液状MDIとしては、クルードMDI(c−MDI)(スミジュール44V−10,スミジュール44V−20,スミジュールH−420等(住化バイエルウレタン社製)、ミリオネートMR−200(日本ポリウレタン工業))、ウレトンイミン含有MDI(ミリオネートMTL;日本ポリウレタン工業製)、プレポリマー変性の粗製MDI等が使用される。液状MDIに加えて、他のポリイソシアネート化合物を併用してもよい。併用するポリイソシアネート化合物としては、ポリウレタンの技術分野において公知のポリイソシアネート化合物は限定なく使用可能である。
【0037】
上述の硬質ポリウレタンフォームの製造方法においては、前記ポリオール組成物とポリイソシアネート成分との混合におけるイソシアネート基/活性水素基当量比(NCOインデックス)が1.0〜4.0、より好ましくは1.5〜3.5であり、さらに好ましくは1.5〜2.5である。
【0038】
係る構成により、硬質ポリウレタンフォームを構成する樹脂中にイソシアヌレート結合が多く形成され、難燃性がより一層向上した硬質ポリウレタンフォームを製造することができる。本発明により製造される硬質ポリウレタンフォームの密度は、25kg/m〜50kg/mであることが好ましい。
【実施例】
【0039】
(使用材料)
a)ポリオールA
テレフタル酸とo−フタル酸/ジエチレングリコールからなるエステルポリオール(東邦理化);水酸基価=250mgKOH/g
b)ポリオールB
EDAポリエーテルポリオール(旭硝子ウレタン製);水酸基価=700mgKOH/g
c)ポリオールC
DK−3810(第一工業製薬);水酸基価=315mgKOH/g
d)架橋剤
MDA:N−メチルジエタノールアミン(MDA)(日本乳化剤工業)
芳香族多価アルコール:ビスフェノールAに2モルのプロピレンオキサイドを付加させたグリコール(bisA/PO)。
【0040】
(評価)
1)難燃性
JIS A 1321に準拠して難燃性評価を行った。
【0041】
2)基材との接着性
−10℃の環境下に1日放置した基材にスプレー発泡法により硬質ポリウレタンフォームを形成し、1日後に剥離が発生したかどうかを目視で評価した。結果は剥離が発生しなかったものを○、剥離が発生したものを×として表示した。
【0042】
3)熱伝導率
熱伝導率測定装置AUTO−Λ HC−074(英弘精機社製)を使用し、測定条件は、JIS A 9511に準拠して測定した。評価結果は熱伝導率が0.022W/K・m以下のフォームを○、これを超えるものを×として表示した。
【0043】
(実施例1〜5、比較例1〜3)
実施例、比較例は表1の上段に記載したポリオール化合物、架橋剤の配合にてポリオール組成物を調整した。ポリオール化合物、架橋剤以外の成分及びその配合量は、ポリオール化合物+架橋剤の全量を100重量部として、難燃剤TMCPP(大八化学工業)20重量部、発泡剤はHFC−245fa/HFC−365mfc=80/20(重量比)混合物37.5重量部と水1.0重量部、イソシアヌレート結合形成触媒であるオクチル酸カリウム3.0重量部、第3級アミン触媒であるカオライザーNo.1(花王)6.0重量部、整泡剤SZ−1704(東レダウコーニングシリコン)1.5重量部である。
【0044】
硬質ポリウレタンフォームは、スプレー発泡法により基材としてスレート板を使用して製造し、以下に記載の評価を行い、結果を表1の下段に示した。ポリイソシアネート成分としてはスミジュール44V−20(住化バイエルウレタン)を使用し、硬質ポリウレタンフォームの製造におけるNCO/OH当量比は、2.0とした。NCO/OH当量比の計算に発泡剤の水は含まれず、ポリイソシアネート成分は、水と1/1当量比分過剰に使用した。
【0045】
【表1】

【0046】
表1の結果より、本発明のポリオール組成物を使用したスプレー発泡硬質ポリウレタンフォームは、JIS A 1321規定の評価による難燃性、低温環境における施工によっても基材との接着性、断熱性に優れたものであった。
【0047】
これに対して過剰のN−メチルジエタノールアミンを使用した比較例1のフォームは低温環境の施工時の基材との接着性が悪く、N−メチルジエタノールアミンを使用しなかった比較例2のフォーム、EDAポリエーテルポリオールを使用しなかった比較例3のフォームは、いずれも難燃性、低温における基材との接着性が十分ではなかった。
【0048】
(実施例6)
ポリオール化合物Aを85重量部、ポリオール化合物Cを10重量部、架橋剤としてMDAを3重量部とbisA/POを2重量部、難燃剤TMCPPを20重量部、発泡剤であるHFC−245fa/HFC−365mfc=80/20(重量比)混合物を37.5重量部と水を1.0重量部、オクチル酸カリウムを3.0重量部、カオライザーNo.1を1.0重量部、整泡剤SZ−1704を1.5重量部混合してポリオール組成物を調整し、連続生産ラインに供給して硬質ポリウレタンフォームサンドイッチパネルを製造した。連続生産ラインにおいては、上下の面材としてガルバリウム鋼板を使用した。またポリイソシアネート成分としては、実施例1〜5と同様にスミジュール44V−20を使用し、硬質ポリウレタンフォームの製造におけるNCO/OH当量比は、2.0とした。
【0049】
得られた硬質ポリウレタンフォームサンドイッチパネルについて評価を行ったところ、フォームの難燃性は難燃3級をクリアし、熱伝導率は0.022W/K・m以下であって断熱性は良好であり、面材との接着性は、フォームが材料破壊する程度に強力であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール化合物、架橋剤、発泡剤、整泡剤及び触媒を含み、ポリイソシアネート成分と混合し、反応させて硬質ポリウレタンフォームを形成するポリオール組成物であって、
前記発泡剤はHFC245faとHFC365mfcとを含有し、
前記ポリオール化合物は、芳香族エステルポリオールとポリエーテルポリオールとからなり、
前記触媒はイソシアヌレート基形成触媒を含有し、
前記架橋剤はN−アルキルジエタノールアミンであり、前記N−アルキルジエタノールアミンの配合量がポリオール化合物と架橋剤の合計を100重量部としたときに2〜8重量部であることを特徴とする硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【請求項2】
前記ポリエーテルポリオールは、水酸基価500〜900mgKOH/gのエチレンジアミンを開始剤とするEDAポリエーテルポリオール、水酸基価200〜550mgKOH/g、平均官能基数が2〜4のマンニッヒポリエーテルポリオールから選択される少なくとも1種であり、前記ポリエーテルポリオールの配合量がポリオール化合物と架橋剤の合計を100重量部としたときに5〜40重量部であることを特徴とする請求項1に記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【請求項3】
ポリオール化合物、発泡剤、整泡剤及び触媒を含むポリオール組成物とポリイソシアネート成分とを混合し、反応させて硬質ポリウレタンフォームとする硬質ポリウレタンフォームの製造方法であって、
前記発泡剤はHFC245faとHFC365mfcとを含有し、
前記触媒はイソシアヌレート基形成触媒を含有し、
前記ポリオール化合物は、芳香族エステルポリオールとポリエーテルポリオールとからなり、
前記触媒はイソシアヌレート基形成触媒を含有し、
前記架橋剤はN−アルキルジエタノールアミンであり、前記N−アルキルジエタノールアミンの配合量がポリオール化合物と架橋剤の合計を100重量部としたときに2〜8重量部であり、
前記ポリオール組成物とポリイソシアネート成分との混合におけるNCO基/OH基の当量比を1.5〜2.5とすることを特徴とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項4】
前記ポリエーテルポリオールは、水酸基価500〜900mgKOH/gのエチレンジアミンを開始剤とするEDAポリエーテルポリオール、水酸基価200〜550mgKOH/g、平均官能基数が2〜4のマンニッヒポリエーテルポリオールから選択される少なくとも1種であり、前記ポリエーテルポリオールの配合量がポリオール化合物と架橋剤の合計を100重量部としたときに5〜40重量部であることを特徴とする請求項3に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。

【公開番号】特開2009−114321(P2009−114321A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−288738(P2007−288738)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】