説明

硬質ポリウレタンフォーム製造用基剤および硬質ポリウレタンフォームの製造方法

【課題】硬質ポリウレタンフォームに難燃性を付与するとともに、優れた貯蔵安定性を示す、硬質ポリウレタンフォーム製造用基剤等を提供。
【解決手段】 メラミンと、ホルムアルデヒドと、アルカノールアミンとを、1:x:y(xは、3.5を超え、かつ6以下であり、yは、xに対して1倍以上であり、かつ2倍以下である)のモル比で反応させて得られ、かつ10〜40℃で実質的に均一な液体である硬質ポリウレタンフォーム製造用基剤;該基剤とポリイソシアネート化合物とを、発泡剤の存在下に反応させる硬質ポリウレタンフォームの製法;(A)該基剤と発泡剤とを含有した組成物と(B)ポリイソシアネート化合物とを含有した硬質ポリウレタンフォーム製造用キット;(A’)該基剤と(B)と(C)とを含有した硬質ポリウレタンフォーム製造用キット;及び該製法により得られた硬質ポリウレタンフォーム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質ポリウレタンフォーム製造用基剤、硬質ポリウレタンフォームの製造方法、硬質ポリウレタンフォーム製造用キットおよび硬質ポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
硬質ポリウレタンフォームは、衝撃吸収性、断熱性、耐熱性、耐薬品性、吸音特性などに優れ、加工が容易であるため、建築材料、例えば、建造物における断熱材、結露防止材など、産業用資材、例えば、地上タンク施設などにおける断熱材など、生活関連製品における断熱材などの幅広い用途がある。
【0003】
かかる硬質ポリウレタンフォームを、例えば、建築材料、生活関連製品などに用いる場合、該硬質ポリウレタンフォームは、難燃規制に基づく所定の難燃性を満たすことが求められることがある。
【0004】
前記硬質ポリウレタンフォームの難燃性を付与する手段としては、例えば、製造時に用いられるポリオール成分として、ポリオール化合物中に固体のメラミンを分散させて得られた分散物を用いることにより、得られる硬質ポリウレタンフォームに難燃性を付与する方法(例えば、特許文献1、特許文献2などを参照のこと)、製造時に用いられるポリオール成分として、トリアジン環含有化合物とポリオール化合物との原料混合物にアルキレンオキサイドを付加させて得られたトリアジン環含有ポリオールを用いることにより、得られる硬質ポリウレタンフォームに難燃性を付与する方法(特許文献3を参照のこと)などが挙げられる。
【0005】
しかしながら、前記特許文献1または特許文献2に記載の方法では、貯蔵時などにおいて、分散物中にメラミンが沈降するため、得られる分散物が不均質な状態となるという欠点がある。
【0006】
一方、前記特許文献3の方法では、製造時に用いられるポリオール成分において、トリアジン環含有化合物の一部がポリオール化合物に溶解せず、固体の状態のトリアジン環含有化合物を含む場合があるため、アルキレンオキサイドを実質的に均一にトリアジン環含有化合物に付加させることが困難であり、貯蔵時などにおいて、トリアジン環含有ポリオールも不均一なものとなるという欠点がある。
【0007】
さらに、通常用いられる高圧発泡機を用いた硬質ポリウレタンフォームの製造に際して、前記特許文献1、2および3に記載のポリオールを用いた場合、均一な撹拌が困難であったり、ラインの詰まり、磨耗劣化などを引き起こしたりするなどの欠点がある。
【特許文献1】特開平6−192558号公報
【特許文献2】特開平6−9743号公報
【特許文献3】特開平10−251399号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来の欠点に鑑みてなされたものであり、1つの側面では、硬質ポリウレタンフォームの製造に際して、得られる硬質ポリウレタンフォームに難燃性を付与するとともに、優れた貯蔵安定性を示す、硬質ポリウレタンフォーム製造用基剤を提供することを課題とする。また、本発明は、他の側面では、得られる硬質ポリウレタンフォームに難燃性を付与する、硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供することを課題とする。本発明は、さらに他の側面では、得られる硬質ポリウレタンフォームに良好な難燃性を付与するとともに、得られる硬質ポリウレタンフォーム製造用基剤が優れた貯蔵安定性を示すことなどの少なくとも1つを達成しうる、硬質ポリウレタンフォームの製造用キットを提供することを課題とする。さらに、本発明は、別の側面では、良好な難燃性を示す硬質ポリウレタンフォームを提供することを課題とする。なお、本発明の他の課題は、本明細書の記載から明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、1つの側面では、メラミンと、ホルムアルデヒドと、アルカノールアミンとを、1:x:y
(ここで、xは、3.5を超え、かつ6以下であり、yは、xに対して1倍以上であり、かつ2倍以下である)
のモル比で反応させて得られ、かつ10〜40℃で実質的に均一な液体である、メラミンとアルカノールアミンとのホルムアルデヒド縮合物
を含有した、硬質ポリウレタンフォーム製造用基剤に関する。
【0010】
また、本発明は、他の側面では、前記硬質ポリウレタンフォーム製造用基剤とポリイソシアネート化合物とを、発泡剤の存在下に反応させることを特徴とする、硬質ポリウレタンフォームの製造方法に関する。
【0011】
さらに、本発明は、別の側面では、(A)前記硬質ポリウレタンフォーム製造用基剤と発泡剤とを含有した組成物と、
(B)ポリイソシアネート化合物と、
を含有した、硬質ポリウレタンフォーム製造用キットに関する。
【0012】
本発明は、さらに別の側面では、(A’)前記硬質ポリウレタンフォーム製造用基剤と、
(B)ポリイソシアネート化合物と、
(C)発泡剤と、
を含有した、硬質ポリウレタンフォーム製造用キットに関する。
【0013】
また、本発明は、さらに他の側面では、前記硬質ポリウレタンフォームの製造方法により得られた硬質ポリウレタンフォームに関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の硬質ポリウレタンフォーム製造用基剤は、優れた貯蔵安定性を示すとともに、得られる硬質ポリウレタンフォームに難燃性を付与することができるという優れた効果を奏する。
【0015】
また、本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法によれば、得られる硬質ポリウレタンフォームに難燃性を付与することができるという優れた効果を奏する。
【0016】
さらに、本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造用キットによれば、硬質ポリウレタンフォームの製造に際して、かかるキットを用いた場合、得られる硬質ポリウレタンフォームに良好な難燃性を付与することができるという優れた効果を奏する。
【0017】
また、本発明の硬質ポリウレタンフォームによれば、良好な難燃性を示すという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、1つの側面では、メラミンと、ホルムアルデヒドと、アルカノールアミンとを、1:x:y
(ここで、xは、3.5を超え、かつ6以下であり、yは、xに対して1倍以上であり、かつ2倍以下である)
のモル比で反応させて得られ、かつ10〜40℃で実質的に均一な液体である、メラミンとアルカノールアミンとのホルムアルデヒド縮合物
を含有してなる、硬質ポリウレタンフォーム製造用基剤に関する。
【0019】
本発明の硬質ポリウレタンフォーム製造用基剤は、前記メラミンとアルカノールアミンとのホルムアルデヒド縮合物を含有していることに1つの大きな特徴がある。したがって、本発明の硬質ポリウレタンフォーム製造用基剤によれば、該硬質ポリウレタンフォーム製造用基剤を用いて得られる硬質ポリウレタンフォームに難燃性を付与させることができるという優れた効果を発揮する。
【0020】
前記メラミンとアルカノールアミンとのホルムアルデヒド縮合物は、メラミンと、ホルムアルデヒドと、アルカノールアミンとを、1:x:y
(ここで、xは、3.5を超え、かつ6以下であり、yは、xに対して1倍倍以上であり、かつ2倍以下である)
のモル比で反応させて得られる化合物である。さらに、前記メラミンとアルカノールアミンとのホルムアルデヒド縮合物は、10〜40℃で実質的に均一な液体である。そのため、かかるメラミンとアルカノールアミンとのホルムアルデヒド縮合物を含有した本発明の硬質ポリウレタンフォーム製造用基剤は、実質的に均一な状態が維持されるため、メラミンをポリオール成分中に分散させた場合に比べ、極めて高い貯蔵安定性を示すという優れた効果を発揮する。
【0021】
前記xは、3.5を超え、かつ6以下であり、安定的に均一な液体のメラミンとアルカノールアミンとのホルムアルデヒド縮合物を得る観点から、好ましくは、4以上であり、メラミン中における縮合可能な官能基の数、残存ホルムアルデヒドの抑制、メラミンの樹脂化の抑制などの観点から、好ましくは、6以下である。
【0022】
前記yは、xに対して1倍以上であり、かつ2倍以下である。前記yは、メラミンとアルカノールアミンとのホルムアルデヒド縮合物の製造に際して用いられるホルムアルデヒドを十分に反応させ、得られるメラミンとアルカノールアミンとのホルムアルデヒド縮合物中におけるホルムアルデヒドの混入を抑制する観点から、xの数よりも1倍以上であり、未反応アルカノールアミンを低減させ、メラミンとアルカノールアミンとのホルムアルデヒド縮合物中におけるメラミン成分の低下と官能基数の低下とを抑制する観点から、xに対して2倍以下、好ましくは、1.5倍である。
【0023】
なお、メラミンとアルカノールアミンとのホルムアルデヒド縮合物の製造に際して、前記ホルムアルデヒドは、ホルマリン、パラホルムアルデヒドおよびこれらの混合物のいずれの形態であってもよい。メラミンとアルカノールアミンとのホルムアルデヒド縮合物の製造に際して用いられるホルムアルデヒドが、ホルマリンの形態である場合、該ホルマリン中のホルムアルデヒドのモル量が、メラミンとアルカノールアミンとのホルムアルデヒド縮合物の製造に際して、メラミン 1モルに対して、前記モル比となる量であればよい。具体的には、前記ホルムアルデヒドのモル量は、安定的に実質的に均一な液体のメラミンとアルカノールアミンとのホルムアルデヒド縮合物を得る観点から、前記反応に際して、前記メラミン 1モルに対して、3.5モルを超えるモル量、好ましくは、4モル以上であり、メラミン中における縮合可能な官能基の数の観点、残存ホルムアルデヒドの抑制、メラミンの樹脂化の抑制などの観点から、6モル以下であることが望ましい。
【0024】
前記アルカノールアミンは、窒素原子に結合した1個又は2個のアルカノール基を有する、脂肪族第一級のモノアミン化合物又は脂肪族第二級のモノアミン化合物である。前記アルカノールアミンとしては、特に限定されないが、例えば、モノアルカノールアミン、ジアルカノールアミンなどおよびこれらの混合物が挙げられる。前記アルカノールアミンとしては、特に限定されないが、具体的には、例えば、モノエタノールアミン、メチルエタノールアミン、エチルエタノールアミン、イソプロパノールアミン、エチルイソプロパノールアミン、メチル−2−ヒドロキシブチルアミン、ジエタノールアミン、エタノールイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エタノール−2−ヒドロキシブチルアミン、イソプロパノール−2−ヒドロキシブチルアミンなどが挙げられる。なかでも、メラミンとアルカノールアミンとのホルムアルデヒド縮合物に高い反応性を与える観点から、好ましくは、ジエタノールアミンが望ましい。前記アルカノールアミンのモル量は、ホルムアルデヒドと十分に反応させる観点から、前記反応に際して、前記ホルムアルデヒドのモル量の1倍以上であり、メラミンとアルカノールアミンとのホルムアルデヒド縮合物中におけるメラミン成分の低下と官能基数の低下とを抑制する観点から、2倍以下、好ましくは、1.5倍以下である。
【0025】
メラミンと、ホルムアルデヒドと、アルカノールアミンとの反応条件としては、40℃〜120℃で反応させる条件が挙げられる。前記温度は、実用的な反応速度を得る観点から、好ましくは、60℃以上であり、メラミンの樹脂化を抑制する観点から、好ましくは、100℃以下であることが望ましい。
【0026】
前記メラミンとアルカノールアミンとのホルムアルデヒド縮合物は、例えば、メラミンとアルカノールアミンとホルマリンとを混合し、40〜120℃、好ましくは、60〜100℃の範囲の温度において、約0.5〜5時間維持して反応を行ない、その後、得られた産物を、減圧(1〜3kPa)下、120℃以下、好ましくは、100℃以下で維持して、加熱減圧脱水を行なうことにより製造されうる。なお、メラミンとアルカノールアミンとホルマリンとの混合の順番は、特に限定されないが、例えば、メラミンとアルカノールアミンとを混合した後、得られた混合物に、ホルマリンをさらに混合させてもよい。
【0027】
前記メラミンとアルカノールアミンとのホルムアルデヒド縮合物は、少なくとも10〜40℃の範囲において、実質的に均一な液体である。前記「実質的に均一な液体」とは、固体を実質的に含有していない液体を意味し、無色の液体であってもよく、着色した液体であってもよい。なお、メラミンとアルカノールアミンとのホルムアルデヒド縮合物の外観は、10人のモニターによる目視観察により評価される。
【0028】
本発明は、他の側面では、本発明の硬質ポリウレタンフォーム製造用基剤とポリイソシアネート化合物とを、発泡剤の存在下に反応させることを特徴とする、硬質ポリウレタンフォームの製造方法に関する。
【0029】
本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法は、反応に際して、本発明の硬質ポリウレタンフォーム製造用基剤が用いられていることに1つの大きな特徴がある。したがって、本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法によれば、得られる硬質ポリウレタンフォームに難燃性を付与すること、すなわち、難燃性が付与された硬質ポリウレタンフォームを得ることができるという優れた効果を発揮する。
【0030】
本発明の製造方法では、製造時において、本発明の硬質ポリウレタンフォーム製造用基剤に加え、他のポリオールをさらに用いてもよい。前記ポリオールは、硬質ポリウレタンフォームに用いられている各種ポリオールであればよい。前記ポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、シュークロースなどにオキシアルキレン基を付加させたポリエーテルポリオール化合物;エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、アニリンなどにオキシアルキレン基を付加させたアミンポリオール化合物;フェノール化合物と、第一級アミン化合物または第二級アミン化合物とのホルムアルデヒド縮合物にオキシアルキレン基を付加させたポリエーテルポリオール化合物などが挙げられる。前記ポリオールは、本発明の硬質ポリウレタンフォーム製造用基剤の難燃効果を阻害しない範囲で使用されうる。かかるポリオールの使用量は、要求される難燃性の程度に応じて異なるが、本発明の硬質ポリウレタンフォーム製造用基剤 100重量部に対するポリオールの重量部として、30〜99重量部、好ましくは、50〜99重量部となる量であることが望ましい。
【0031】
本発明の製造方法に用いられるポリイソシアネート化合物としては、特に限定されないが、例えば、直鎖状脂肪族ポリイソシアネート、環状脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、ポリオール変性イソシアネートなどが挙げられる。前記直鎖状脂肪族ポリイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、イソプロピレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。また、前記環状脂肪族ポリイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,3−ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。前記芳香族ポリイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネートなどのジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート;4,4’−ジフェニルテトラメチルメタンジイソシアネートなどのテトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート;1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートなどが挙げられる。前記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、キシリレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。前記ポリオール変性イソシアネートとしては、前記ポリオールで前記ポリイソソアネート化合物を変性させた化合物などが挙げられる。なかでも、芳香族ポリイソシアネート化合物、ポリエーテルポリオールで変性された芳香族ポリイソシアネートが望ましい。前記ポリイソシアネート化合物は、単独で用いてもよく、または2種以上を混合して用いてもよい。
【0032】
本発明の製造方法に用いられる発泡剤としては、特に限定されないが、例えば、水、ヒドロフルオロカーボン化合物、ペンタン、イソペンタン、シクロペンタンなどの炭化水素類、超臨界二酸化炭素などが挙げられる。なかでも、環境保護の観点から、好ましくは、水が望ましい。
【0033】
本発明の製造方法において、硬質ポリウレタンフォーム製造用基剤と、ポリイソシアネート化合物との配合割合は、NCO/OH比として、好ましくは、1.0〜3.0であり、より好ましくは、1.0〜2.0であることが望ましい。
【0034】
また、本発明の製造方法において、発泡剤の配合量は、目的のフォームの密度に合わせて任意に調整されうる。例えば、水を発泡剤として用いる場合には、生成フォーム 100重量部に対して、0.1〜10重量部となる量であることが望ましい。
【0035】
本発明の製造方法における前記反応は、例えば、本発明の硬質ポリウレタンフォーム製造用基剤、他のポリオール、整泡剤、難燃剤、発泡剤などを溶解させた溶液と、前記イソシアネート化合物単独の溶液または該イソシアネートを2種以上混合して得られた混合液とを、ホモディスパー、スタティックミキサー、スプレー発泡機などを用いて混合、発泡、硬化させることにより行なわれうる。なお、前記反応に際しては、前記イソシアネート化合物と反応しない化合物を整泡剤、難燃剤として前記イソシアネート化合物に混合してもよい。
【0036】
本発明は、別の側面では、硬質ポリウレタンフォーム製造用キットに関する。本発明の硬質ポリウレタンフォーム製造用キットは、1つの実施態様では、(A)本発明の硬質ポリウレタンフォーム製造用基剤と発泡剤とを含有した組成物と、
(B)ポリイソシアネート化合物と、
を含有した、硬質ポリウレタンフォーム製造用キットに関する。
また、本発明の硬質ポリウレタンフォーム製造用キットは、他の実施態様では、(A’)本発明の硬質ポリウレタンフォーム製造用基剤と、
(B)ポリイソシアネート化合物と、
(C)発泡剤と、
を含有した、硬質ポリウレタンフォーム製造用キットに関する。
【0037】
本発明の硬質ポリウレタンフォーム製造用キットは、本発明の硬質ポリウレタンフォーム製造用基剤を含有しているため、硬質ポリウレタンフォームの製造に際して、かかるキットを用いた場合、得られる硬質ポリウレタンフォームの難燃性を大きく改善することができるという優れた効果を発揮する。また、本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造用キットによれば、含まれる硬質ポリウレタンフォーム製造用基剤が、イソシアネート基と反応可能な水酸基を有する化合物であるため、水酸基をもたない化合物を含有した従来の難燃剤、例えば、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、臭素系難燃剤などを用いる場合と比べ、得られる硬質ポリウレタンフォームに、より良好な物性を付与することができる。さらに、本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造用キットによれば、含まれる硬質ポリウレタンフォーム製造用基剤が、常温で液体状態のものであるため、例えば、固体であるトリアジン環化合物を用いた従来の方法に比べ、固体の沈降が実質的に生じず、貯蔵安定性が顕著に向上するという優れた効果を発揮する。
【0038】
前記実施態様1の硬質ポリウレタンフォーム製造用キットの使用態様としては、例えば、硬質ポリウレタンフォームの製造において、前記(A)と(B)とを混合して、硬質ポリウレタンフォームを製造することなどが挙げられる。また、前記実施態様2の硬質ポリウレタンフォーム製造用キットの使用態様としては、例えば、硬質ポリウレタンフォームの製造において、前記(A’)と(B)と(C)とを混合して、硬質ポリウレタンフォームを製造することなどが挙げられる。
【0039】
前記(A)は、本発明の硬質ポリウレタンフォーム製造用基剤と発泡剤との混合物であってもよく、本発明の硬質ポリウレタンフォーム製造用基剤と発泡剤とに適切な可塑剤を添加して得られた溶液であってもよい。また、前記(A)の組成物中における発泡剤の含有量は、所望の発泡度合いに応じた量であればよい。前記可塑剤としては、特に限定されないが、例えば、フタル酸、アジピン酸などのカルボン酸と、各種アルコールとから得られるエステル化合物などが挙げられる。この場合、前記(A)中におけるかかる可塑剤は、前記硬質ポリウレタンフォームの製造や難燃性に影響を与えない範囲の量であればよい。
【0040】
また、前記(A’)は、本発明の硬質ポリウレタンフォーム製造用基剤からなるものであってもよく、本発明の硬質ポリウレタンフォーム製造用基剤に適切な可塑剤を添加して得られた溶液であってもよい。前記可塑剤としては、特に限定されないが、例えば、フタル酸、アジピン酸などのカルボン酸と、各種アルコールとから得られるエステル化合物などが挙げられる。この場合、前記(A’)中におけるかかる可塑剤は、前記硬質ポリウレタンフォームの製造や難燃性に影響を与えない範囲の量であればよい。
【0041】
前記(B)の組成物は、ポリイソシアネート化合物からなるものであってもよく、該ポリイソシアネート化合物と、ポリイソシアネート化合物に反応しない適切な可塑剤との混合物であってもよい。前記(B)の組成物中におけるポリイソシアネート化合物の含有量は、前記(A)または(A’)との反応に十分な量であればよい。前記可塑剤としては、特に限定されないが、例えば、フタル酸、アジピン酸などのカルボン酸と、各種アルコールとから得られるエステル化合物などが挙げられる。この場合、前記(B)の組成物中におけるかかる可塑剤は、前記硬質ポリウレタンフォームの製造や難燃性に影響を与えない範囲の量であればよい。
【0042】
本発明は、さらに他の側面では、本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造方法により得られた硬質ポリウレタンフォームに関する。
【0043】
本明細書において、前記難燃性は、JIS D 1201の方法に準じ、着火点からの燃焼距離と、着火源を遠ざけた場合の燃焼時間とにより評価される。
【0044】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、かかる実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0045】
(実施例1)
反応器内で、メラミン(ナカライテスク株式会社製、試薬1級)と、37重量% ホルムアルデヒド水溶液(株式会社オーシカ製)と、ジエタノールアミン(ナカライテスク株式会社製、試薬1級)とを、1:4:6(モル比)となるように混合した。その後、得られた混合物を、80℃で2時間維持した。得られた産物を、90℃で1〜3kPaの減圧下に維持して、脱水し、それにより、実施例1のメラミンとアルカノールアミンとのホルムアルデヒド縮合物(図中、「縮合物A」という)を得た。
【0046】
(実施例2〜5、および比較例1〜3)
メラミンと、ホルムアルデヒドと、ジエタノールアミンとのモル比を、表1に記載のとおりにしたことを除き、前記実施例1と同様の操作を行ない、実施例2〜5のメラミンとアルカノールアミンとのホルムアルデヒド縮合物(図中、縮合物B〜E)を得た。
【0047】
一方、メラミンと、ホルムアルデヒドと、ジエタノールアミンとのモル比を、表1に記載のとおりにしたことを除き、前記実施例1と同様の操作を行ない、比較例1〜3のメラミンとアルカノールアミンとのホルムアルデヒド縮合物(図中、縮合物F〜H)を得た。
【0048】
【表1】

【0049】
(試験例1)
実施例1〜5、比較例1〜3のそれぞれで得られたメラミンとアルカノールアミンとのホルムアルデヒド縮合物について、外観を10人のモニターによる肉眼観察により評価した。
【0050】
その結果、実施例1〜5では、淡黄色透明液体が得られた。したがって、実施例1〜5のように、メラミンと、ホルムアルデヒドと、ジエタノールアミンとのモル比を、1:x:y(xは、3.5を超え、かつ6以下であり、yは、xに対して1倍以上であり、かつ2倍以下である)として、製造を行なった場合、実質的に均一な液体として、メラミンとアルカノールアミンとのホルムアルデヒド縮合物が得られることがわかる。
【0051】
一方、比較例1〜3では、黄白色懸濁液体が生じた。したがって、かかる比較例1〜3のメラミンとアルカノールアミンとのホルムアルデヒド縮合物では、良好なポリウレタンフォームが得られない可能性があることが示唆される。
【0052】
(試験例2)
実施例1で得られたメラミンとアルカノールアミンとのホルムアルデヒド縮合物A(縮合物A)と、窒素含有芳香族系ポリエーテリポリオール(水酸基価350mgKOH/g、第一工業製薬株式会社製、商品名:DKポリオール3776)とを、10:90(重量比)で混合し、ポリオール混合物を得た。ついで、得られたポリオール混合物 40gと、整泡剤(東レダウコーニングシリコーン株式会社製、商品名:SZ−1605) 0.4gと、酢酸カリウム 0.4gと、水 1.5gとを混合した。得られた混合物を20℃に調整し、該混合物に、20℃に調整したポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン株式会社製、商品名:ミリオネートMR200、F−NCO:31%) 60gを添加し(NCO/OH比=1.50)、直ちに、ホモディスパーで5秒間高速撹拌させながら、混合し、直ちに、20℃に調整した鉄板上にショットして、実験例1のポリウレタンフォームを得た。
【0053】
また、表1に示される配合量としたことを除き、実験例2〜8のポリウレタンフォームを得た。
【0054】
なお、ポリウレタンフォームの発泡に際して、クリームタイム、ゲルタイムおよびライズタイムをそれぞれ測定し、フリー発泡反応性を評価した。その結果を表2に示す。
【0055】
ここで、クリームタイムとは、混合開始から混合液がクリーム色になり液面が上昇し始めるまでの時間、ゲルタイムとは、混合開始から、フォーム表面が糸を引き始めるまでの時間、ライズタイムとは、混合開始から発泡が終了するまでの時間である。
【0056】
実験例1〜8のそれぞれで得られたポリウレタンフォームについて、JIS A 9511に準じて、フォーム密度を測定した。結果を表2に示す。
【0057】
また、実験例1〜8のそれぞれで得られたポリウレタンフォームについて、JIS D 1201に準じて、難燃性を評価した。結果を表2に示す。
【0058】
【表2】

【0059】
その結果、表2に示されるように、実験例1〜7に示されるように、メラミンと、ホルムアルデヒドと、ジエタノールアミンとのモル比を、1:x:y(xは、3.5を超え、かつ6以下であり、yは、xに対して1倍以上であり、かつ2倍以下である)として、製造されたメラミンとアルカノールアミンとのホルムアルデヒド縮合物を用いて、発泡させた場合、該メラミンとアルカノールアミンとのホルムアルデヒド縮合物を用いていない実験例8の場合に比べ、より、難燃性に優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明によれば、高い難燃性を示す硬質ポリウレタンフォームを提供することができるため、建築物、生活関連用品などの難燃化を図ることが可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メラミンと、ホルムアルデヒドと、アルカノールアミンとを、1:x:y
(ここで、xは、3.5を超え、かつ6以下であり、yは、xに対して1倍以上であり、かつ2倍以下である)
のモル比で反応させて得られ、かつ10〜40℃で実質的に均一な液体である、メラミンとアルカノールアミンとのホルムアルデヒド縮合物
を含有してなる、硬質ポリウレタンフォーム製造用基剤。
【請求項2】
請求項1記載の硬質ポリウレタンフォーム製造用基剤とポリイソシアネート化合物とを、発泡剤の存在下に反応させることを特徴とする、硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項3】
(A)請求項1記載の硬質ポリウレタンフォーム製造用基剤と発泡剤とを含有した組成物と、
(B)ポリイソシアネート化合物と、
を含有してなる、硬質ポリウレタンフォーム製造用キット。
【請求項4】
(A’)請求項1記載の硬質ポリウレタンフォーム製造用基剤と、
(B)ポリイソシアネート化合物と、
(C)発泡剤と、
を含有してなる、硬質ポリウレタンフォーム製造用キット。
【請求項5】
請求項2記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法により得られてなる、硬質ポリウレタンフォーム。

【公開番号】特開2007−314696(P2007−314696A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−147051(P2006−147051)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】