説明

硬質木片セメント板の固定方法および硬質木片セメント板固定用釘

【課題】 釘を用いて硬質木片セメント板を鋼材に固定する際に、硬質木片セメント板に割れが発生するのを抑えることのできる硬質木片セメント板の固定方法を提供する。
【解決手段】 硬質木片セメント板2を金属フレーム1に固定する際に、ビッカース硬度500以上の釘4を用いて固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質木片セメント板を鋼材等に固定するための硬質木片セメント板の固定方法、および硬質木片セメント板固定用釘に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、硬質木片セメント板をスタッド(間柱)等に取り付ける際、硬質木片セメント板の裏面に金属フレーム(鋼材)を固定しておき、この金属フレームをブラインドリベットを用いてスタッドに取り付ける方法が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−197348号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、硬質木片セメント板の裏面に金属フレームを固定する場合、通常、硬質木片セメント板に釘を打ち込んで、その釘を金属フレームまで貫通させることにより、金属フレームを硬質木片セメント板に固定するようにしている。
【0004】
しかし、通常の釘(軟鉄、オーステナイト系ステンレスの釘)を硬質木片セメント板に打ち込んでいくと、釘が硬質木片セメント板を貫通し、さらに金属フレームを貫通するときに、釘の先端部の弾性変形に伴って硬質木片セメント板も一緒に面外方向に変形する。このように硬質木片セメント板が局部的に変形すると、硬質木片セメント板に割れが発生しやすいという問題がある。
【0005】
本発明の課題は、釘を用いて硬質木片セメント板を鋼材に固定する際に、硬質木片セメント板に割れが発生するのを抑えることのできる硬質木片セメント板の固定方法、および硬質木片セメント板固定用釘を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の硬質木片セメント板の固定方法は、硬質木片セメント板を鋼材に固定する際に、ビッカース硬度500以上の釘を用いて固定することを特徴としている。
【0007】
上記方法によれば、ビッカース硬度500以上の釘を用いているので、釘の貫通力が増して、釘が鋼材を貫通するとき、釘の先端部は鋼材を押して弾性変形するが、その際の釘の変形量が小さくなる。その結果、釘に押されて変形する硬質木片セメント板も面外方向への変形量が少なくなり、硬質木片セメント板に割れが発生するのを効果的に抑えることができる。
【0008】
また、請求項2に記載の硬質木片セメント板固定用釘は、ビッカース硬度500以上であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、釘を用いて硬質木片セメント板を鋼材に固定する際に、硬質木片セメント板に割れが発生するのを効果的に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を図面に従って説明する。
【実施例】
【0011】
図1は、本発明に係る固定方法によって金属フレーム1が固定された硬質木片セメント板2を、スタッド3に取り付けたときの断面図である。
【0012】
硬質木片セメント板2は例えば縦長矩形をなしており、その裏面には、鋼材である金属フレーム1が釘4によって固定されている。なお、金属フレーム1は冷間圧延鋼板を矩形状に折り曲げて形成され、硬質木片セメント板2の周囲に固定されている。
【0013】
釘4は、図1に示すように、一側の先端部4Aが細く鋭く形成された胴部4Bと、胴部4Bの他側端部に設けられた頭部4Cとから構成されている。ここで、胴部4Bの横断面は円形をなしており、また頭部4Cは円錐台形状をなしている。
【0014】
釘4は全体(胴部4B及び頭部4C)がビッカース硬度500以上に設定されている。なお、釘4は少なくとも胴部4Bの先端部4Aがビッカース硬度500以上に設定されていればよい。
【0015】
釘4を用いて硬質木片セメント板2の裏面に金属フレーム1を固定する際、先ず、硬質木片セメント板2と金属フレーム1との間に接着剤5を塗っておく。そして、この接着剤5を塗った箇所に硬質木片セメント板2の表側から釘5を打ち込んでいく。
【0016】
釘4を打ち込んでいく際に、通常の釘(軟鉄、オーステナイト系ステンレスの釘)を使用すると、硬質木片セメント板2を釘4が貫通して、金属フレーム1を釘4が貫通するとき、釘4の先端部の弾性変形に伴って硬質木片セメント板2も一緒に面外方向に変形する。このように硬質木片セメント板2が局部的に変形すると、硬質木片セメント板2に割れが発生しやすい。
【0017】
これに対し、本実施例のように釘4がビッカース硬度500以上であれば、釘4の貫通力が増して、釘4が金属フレーム1を貫通するとき、釘4の先端部4Aは金属フレーム1を押して弾性変形するが、その際の釘4の変形量が小さくなる。その結果、釘4に押されて変形する硬質木片セメント板2も面外方向への変形量が少なくなり、硬質木片セメント板2に割れが発生するのを抑えることができる。
【0018】
なお、硬質木片セメント板2の裏面に固定された金属フレーム1は、ブラインドリベット6によってスタッド3に取り付けられている。
【0019】
次に、本発明に係る硬質木片セメント板固定用の釘4を用いて硬質木片セメント板2に金属フレーム1を固定する実験を行った。その実験結果を表1に示す。
【0020】
【表1】

【0021】
表1から分かるように、実験例1、比較例1および比較例2において、基材(つまり、硬質木片セメント板)の板厚、金属フレームの板厚、釘の軸径はすべて同じとし、釘の硬度だけを各々異ならせた(実験例1では560、比較例1では342、比較例2では400)。その結果、実験例1では割れは発生しなかったが、比較例1と比較例2では割れが発生した。
【0022】
以上、本発明の実施例を図面により詳述してきたが、上記実施例は本発明の例示にしか過ぎないものであり、本発明は上記実施例の構成にのみ限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、本発明に含まれることは勿論である。例えば、釘4の頭部4Cは円錐台状とは限らず、円形平板状であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る固定方法によって金属フレームが固定された硬質木片セメント板を、スタッドに取り付けたときの断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 金属フレーム(鋼材)
2 硬質木片セメント板
3 スタッド
4 釘
4A 釘の先端部
4B 釘の胴部
4C 釘の頭部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質木片セメント板を鋼材に固定する際に、ビッカース硬度500以上の釘を用いて固定することを特徴とする硬質木片セメント板の固定方法。
【請求項2】
ビッカース硬度が500以上であることを特徴とする硬質木片セメント板固定用釘。


【図1】
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【公開番号】特開2006−328776(P2006−328776A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−153285(P2005−153285)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】