説明

硬質表面の水切れ性付与剤

【課題】 本発明の課題は、プラスチック、ガラス、金属等の硬質表面に対して良好な水切れ性、特に水切れの持続性を付与することができる、硬質表面の水切れ性付与剤、及びそれを含有する硬質表面用洗浄剤の提供。
【解決手段】 重量平均分子量が100万〜1000万であるカチオン化多糖を含有する硬質表面の水切れ性付与剤、この水切れ性付与剤、及び界面活性剤を含有する硬質表面用洗浄剤、並びにこの水切れ性付与剤あるいは洗浄剤を硬質表面に適用し、硬質表面に水切れの持続性を付与する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック、ガラス、金属等の硬質表面の水切れ性付与剤、及びそれを含有する硬質表面用洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭内における水まわりの設備である浴室、浴槽、シンク等のプラスチック製品、ガラス製品、金属製品等では、使用時に蛇口やシャワーからの水の飛び散り等により、使用後の設備材質表面に水滴が付着、残留しやすい。これらの水滴の残留は浴室の場合には、湿気がこもり、カビ等の発生につながりやすく、また、シンクの場合は、残留する水滴が付着時の形状を保ちながら徐々に乾燥し、小さいリング状の跡がつきやすくなる。このような不都合な状態に対して、消費者の一般的な対応は、例えば、シンクの場合では、ふきん等で改めて水の拭き取りを行い、美観を保つための労力を払ったり、また、浴室、浴槽の場合は、窓、ドアの開放、あるいは換気扇の作動等により湿気を浴室から排除し、乾燥を促す労力を払っているが、保安上の問題や屋外からの汚染物質侵入の問題、あるいは省エネルギーの観点からいずれも満足のいく対処方法ではなかった。
【0003】
またプラスチックやガラス等の硬質表面を有する食器などを洗浄し、すすいだ場合においても、水の硬度成分に由来するウォータースポットや曇りが硬質表面上に残存するため、食器などの美観を損ねていた。また、ガラスなどを洗浄した後は表面が水で濡れるため、洗浄後の拭き取り作業に多大な労力を必要としていた。
【0004】
このような問題を解決する技術として、特許文献1には親水性ポリマーと界面活性剤を含有する硬質表面用のクリーニング組成物が開示されており、好ましい親水性ポリマーとして、分子量が約5000〜約20万のアミンオキシド基を有するポリマーが記載されている。また特許文献2には界面活性剤と水溶性オキサゾリンポリマーを含有する硬質表面用洗浄剤組成物が、特許文献3には界面活性剤とポリ(ジメチルアクリルアミド)等の水溶性ポリマーを含有する硬質表面用洗浄剤組成物が開示されている。また、特許文献4にはカチオン性構成部位とアミンオキシド基含有構成部位を有するカチオン性共重合ポリマーを含有する速乾性付与剤及び速乾性洗浄剤が開示されている。
【特許文献1】特表2003−528164号公報
【特許文献2】特開平8−253796号公報
【特許文献3】特開平8−253797号公報
【特許文献4】特開2003−183694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術においては、水切れ性、特に水切れの持続性においてまだ十分満足できるものではなかった。
従って、本発明の課題は、プラスチック、ガラス、金属等の硬質表面に対して良好な水切れ性、特に水切れの持続性を付与することができる、硬質表面の水切れ性付与剤、及びそれを含有する硬質表面用洗浄剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、重量平均分子量が100万〜1000万であるカチオン化多糖(以下(a)成分という)を含有する硬質表面の水切れ性付与剤、この水切れ性付与剤、及び界面活性剤を含有する硬質表面用洗浄剤、並びにこの水切れ性付与剤あるいは洗浄剤を硬質表面に適用し、硬質表面に水切れの持続性を付与する方法に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の水切れ性付与剤及び硬質表面用洗浄剤は、硬質表面に適用した後、濯ぎを行うことにより水滴の残留を防止して水切れ性を良好にし、更に濯ぎを繰り返しても水切れの持続性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
[(a)成分及び水切れ性付与剤]
本発明に用いられる(a)成分のカチオン化多糖としては、具体的にカチオン化デンプン、カチオン化セルロース、カチオン化グアーガム、カチオン化ローカストビーンガム、カチオン化フェヌグリークガム、カチオン化タラガム、カチオン化カードラン、カチオン化カラギーナンなどが挙げられる。その中でもカチオン化デンプン、カチオン化セルロース、カチオン化グアーガムが好ましく、特にカチオン化セルロースが好ましい。
【0009】
カチオン化多糖は一般に、市販品として入手可能なものをそのまま使用してもよいし、あるいは同様に入手可能な未変性もしくはヒドロキシエチル変性、ヒドロキシプロピル変性などのような非カチオン化変性の多糖類をカチオン化剤と反応させることにより得ることもできる。カチオン化剤としては、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、3−クロロプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、グリシジルジメチルアンモニウムクロリド等の第4級又は第3級窒素を含有するハロゲン化物、ハロヒドリン及びエポキシドが挙げられる。
【0010】
本発明に用いられるカチオン化多糖の重量平均分子量は、硬質表面への残留性を高めて良好な水切れ性を得る観点から、100万以上であり、130万以上が好ましく、200万以上が更に好ましく、250万以上が特に好ましい。また、適度な水切れ速度を得るという観点から、1000万以下であり、750万以下が好ましく、500万以下が更に好ましく、450万以下が特に好ましい。
ここでカチオン化多糖の重量平均分子量は、下記実施例に示すようにゲルパーミエーションクロマトグラフィーでプルランを標準として求めた値である。
【0011】
本発明に用いられるカチオン化多糖の窒素含量は、硬質表面(特にガラス)への吸着性を高める観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、1質量%以上が特に好ましい。また界面活性剤との塩の形成により沈殿が生成するのを抑制する観点から10質量%以下が好ましく、5質量%以下が更に好ましく、2質量%以下が特に好ましい。
【0012】
尚、カチオン化多糖の窒素含量は、ポリビニル硫酸カリウムを用いたコロイド滴定により求めることができる。この方法は、窒素カチオンとポリビニル硫酸カリウムが化学量論的に反応する原理に基づいている(「コロイド滴定法」千手諒一著(1969年))。
【0013】
本発明の水切れ性付与剤は(a)成分のカチオン化多糖を含有し、水を含有することが好ましい。本発明の水切れ性付与剤は、硬質表面の処理に応じて(a)成分の濃度を調整することができる。また、(a)成分の濃厚溶液を調製しておき、使用時に水で希釈して用いることもできる。
【0014】
[硬質表面用洗浄剤]
本発明の硬質表面用洗浄剤は、本発明の水切れ性付与剤及び界面活性剤(以下(b)成分という)を含有する。更に水を含有することが好ましい。
【0015】
本発明に用いられる(b)成分の界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる1種以上を用いることができる。
【0016】
陰イオン界面活性剤としては、高級脂肪酸塩、高級アルコール硫酸エステル、高級アルコールスルホン酸塩、硫酸化脂肪酸塩、スルホン化脂肪酸塩、リン酸エステル塩、脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、脂肪酸エステルのスルホン酸エステル塩、高級アルコールエーテルのスルホン酸エステル塩、高級アルコールエーテル置換の酢酸塩、脂肪酸とアミノ酸の縮合物、脂肪酸アミドのアルキロール化硫酸エステル塩、脂肪酸アミドのアルキル化スルホン酸塩、スルホコハク酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェノールスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルベンゾイミダゾールスルホン酸塩、アミドエーテルカルボン酸又はその塩、エーテルカルボン酸又はその塩、N−アシル−N−メチルタウリン又はその塩、アミドエーテル硫酸又はその塩、N−アシルグルタミン酸又はその塩、N−アミドエチル−N−ヒドロキシエチル酢酸又はその塩、アシルオキシエタンスルホン酸又はその塩、N−アシル−β−アラニン又はその塩、N−アシル−N−カルボキシエチルタウリン又はその塩、N−アシル−N−カルボキシエチルグリシン又はその塩、及びアルキル又はアルケニルアミノカルボニルメチル硫酸又はその塩等が挙げられる。
【0017】
非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキルポリグリコシド、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルポリグリセリンエーテル等が挙げられる。
【0018】
陽イオン界面活性剤としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド等のアルキル(炭素数10〜20)トリメチルアンモニウム塩;ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジアルキル(炭素数12〜18)ジメチルアンモニウムクロライド等のジアルキルジメチルアンモニウム塩;アルキル(炭素数12〜18)ジメチルベンジルアンモニウムクロライド等のアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩;置換ベンザルコニウム塩;ベンゼトニウム塩等のモノカチオン化合物の他、N−アルキル−N,N,N’,N’,N’−ペンタメチル−プロピレンアンモニウム塩等のポリカチオン化合物等が挙げられる。
【0019】
両性界面活性剤としては、アルキルジメチルアミンオキサイド等のアミンオキサイド、アルキルN,N−ジメチル酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピル−N,N−ジメチル酢酸ベタイン、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン等のベタイン等が挙げられる。
【0020】
これらの界面活性剤の中では、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤が好ましく、これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
本発明の硬質表面用洗浄剤中の(a)成分の含有量は、良好な水切れ性を得る観点から、0.001〜5質量%が好ましく、0.01〜5質量%が更に好ましく、0.01〜3質量%が特に好ましい。また、(b)成分の含有量は、良好な水切れ性と洗浄性を得る観点から、0.001〜20質量%が好ましく、0.01〜15質量%が更に好ましく、0.01〜10質量%が特に好ましい。
【0022】
また、(a)成分と(b)成分の質量比は、良好な水切れ性と洗浄性を得る観点から、(a)/(b)=0.01/20〜5/0.01、更に0.1/15〜5/0.1、特に0.1/10〜3/0.1が好ましい。
【0023】
本発明の硬質表面用洗浄剤は水溶性溶剤(以下(c)成分という)を含有することが好ましい。水溶性溶剤としては、エタノール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の1価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、イソプレングリコール等の炭素数2〜8の多価アルコール、ジエチレングリコールモノアルキル(炭素数4〜8)エーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル、アルキル基の炭素数が3〜8のモノアルキルグリセリルエーテル等が挙げられる。
【0024】
本発明の洗浄剤中の(c)成分の含有量は、0.001〜20質量%が好ましく、0.001〜10質量%が更に好ましい。
【0025】
本発明の硬質表面用洗浄剤にはキレート剤(以下(d)成分という)を配合することができる。キレート剤としては、トリポリリン酸、ピロリン酸、オルソリン酸、ヘキサメタリン酸及びこれらのアルカリ金属塩;エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシイミノ二酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、ニトリロ三酢酸、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸及びこれらのアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩;アミノトリメチレンホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、及びこれらのアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩;アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれるモノマーの単一重合体又は共重合体、アクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリα−ヒドロキシアクリル酸及びこれらのアルカリ金属塩;クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、マロン酸、マレイン酸から選ばれる多価カルボン酸及びそれらのアルカリ金属塩;アルキルグリシン−N,N−ジ酢酸、アスパラギン酸−N,N−ジ酢酸、セリン−N,N−ジ酢酸、グルタミン酸二酢酸、エチレンジアミンジコハク酸又はこれらの塩等が挙げられる。
【0026】
本発明の洗浄剤中の(d)成分の含有量は、0.001〜15質量%が好ましく、0.01〜10質量%が更に好ましい。
【0027】
本発明の硬質表面用洗浄剤にはハイドロトロープ剤(以下(e)成分という)を配合することができる。ハイドロトロープ剤としては、炭素数1〜3のアルキル基が1〜3個置換したベンゼンスルホン酸又はその塩を挙げることができる。より具体的に好ましい例としては、p−トルエンスルホン酸、m−キシレンスルホン酸、p−クメンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸等が挙げられ、塩を用いる場合にはナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩が良好である。
【0028】
本発明の洗浄剤中の(e)成分の含有量は、0.001〜15質量%が好ましく、0.01〜10質量%が更に好ましい。
【0029】
また、本発明の硬質表面用洗浄剤には、上記成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば香料、抗菌剤、粘度調整剤、顔料、染料、懸濁剤などを添加することができる。
【0030】
本発明の硬質表面用洗浄剤は、硬質表面の処理に応じて組成を調整することが好ましい。また、それぞれの濃厚溶液を調製しておき、使用時に希釈して用いることもできる。
【0031】
また、本発明の硬質表面用洗浄剤の20℃におけるpHは、2〜11、更に3〜10、特に4〜8が作業時の安全性、及び硬質表面に対する損傷性の点から好適である。pH調節剤としては塩酸や硫酸等の無機酸や、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、マロン酸、マレイン酸等の有機酸などの酸剤や、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、アンモニアやその誘導体、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ剤を、単独もしくは複合して用いても構わない。また、これらの酸剤とアルカリ剤を組み合わせて緩衝剤系として用いても構わない。
【0032】
[硬質表面に水切れの持続性を付与する方法]
硬質表面への本発明の水切れ性付与剤又は洗浄剤の適用方法は、硬質表面の広さ(面積)等に応じて適宜選択できる。例えば(a)成分の含有量が0.5質量%の水溶液を、10cm2あたり0.1mL〜10mL程度スプレーしてスポンジ等を用いて薄く塗りのばして処理することにより行うことができる。
【0033】
本発明の水切れ性付与剤及び洗浄剤は、硬質表面に対して良好な水切れ性を付与することができ、しかも水切れの持続性をも付与することができる。
【0034】
尚、ここで水切れ性とは、水切れ性付与剤又は洗浄剤を硬質表面に適用した後、水で濯いだ時に、硬質表面に水滴が残らない現象(例えば、表面が一端水膜で覆われた後、やがて上端からゆっくりと水が切れていく現象等)をいう。また、水切れの持続性とは、水が切れた後、再び水で濯ぎ、これを繰り返しても水切れ現象が起きることをいい、水切れ現象が起きる回数が10回以上のものが好ましい。
また、本発明の洗浄剤は、油汚れ、タンパク質汚れ、皮脂汚れ等に対する洗浄効果も有する。
【0035】
本発明の水切れ性付与剤又は洗浄剤を適用した硬質表面は、水切れ性及びその持続性に優れるためカビが発生し難く、本発明の水切れ性付与剤及び洗浄剤は防カビ処理用としても好適である。また、水切れ性が良好であるため硬質表面に付着した汚れ、特に疎水性汚れを水で容易に洗い流すことができるため、本発明の水切れ性付与剤及び洗浄剤は防汚処理用としても好適である。
【0036】
本発明の水切れ性付与剤及び洗浄剤は、水回りの設備等を構成する硬質表面、例えば、プラスチック、ガラス、セラミックス、金属等の材質からなる疎水性の硬質表面に対して適用されることが好ましく、具体的にはガラス、塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ABS、ナイロン、ステンレス、繊維強化プラスチック(FRP)、タイル、ガラスなどに対して適用されることが好ましく、特にガラス、PVCに対して適用されることが好ましい。
【実施例】
【0037】
以下の実施例において、カチオン化多糖の重量平均分子量及び窒素含量は以下の方法で測定した。
【0038】
<重量平均分子量の測定法>
下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で行い、標準試料としてプルランを用いた。
【0039】
・測定条件
カラム名:α−M+α−M(東ソー(株)製)
溶媒:0.15mol/L Na2SO4、1%CH3COOH/水
流速:1.0mL/min
カラム温度:40℃。
【0040】
<窒素含量の測定法>
コロイド滴定法で行った。即ち、カチオン化多糖0.1gを精秤し、0.1質量%水溶液となるようにイオン交換水に溶解させた。このカチオン化多糖水溶液10gを精秤(Ag)し、5倍に希釈した後トルイジンブルーを3滴加え、N/400ポリビニル硫酸カリウム(PVSK)水溶液で滴定した。終点は青→(赤)紫である。滴定に要したPVSK量をBmL、ブランク(カチオン化多糖を溶解させない水溶液)に要したPVSK量をC mLとしたとき、窒素含量は、以下の式で求められる。尚、fはN/400PVSKのファクターである。
【0041】
【数1】

【0042】
実施例1
下記に示す本発明の(a)成分及び比較品を用い、表1に示す組成の水切れ性付与剤を調製した。なお、水切れ性付与剤のpHは、水酸化ナトリウム及び塩酸により7.5(20℃)に調整した。得られた水切れ性付与剤について、下記方法で硬質表面(ガラス及びPVC)の水切れ性と、水切れの持続性を評価した。結果を表1に示す。
【0043】
・(a)成分
(a−1):カチオン化セルロース ポイズC−60H(花王(株)製、重量平均分子量200万、窒素含量2.0質量%):
(a−2):カチオン化セルロース ポイズC−80M(花王(株)製、重量平均分子量320万、窒素含量1.5質量%)
(a−3):カチオン化セルロース ポイズC−150L(花王(株)製、重量平均分子量440万、窒素含量1.3質量%)
(a−4):カチオン化デンプン ネオタック#40T(日本食品化工(株)製、重量平均分子量135万、窒素含量0.04質量%)
(a−5):・カチオン化グアーガム JAGUAR C−13S(三晶(株)製、重量平均分子量730万、窒素含量1.4質量%)
・比較品
(a’−1):カチオン化セルロース ジェルナーQH−200(ダイセル化学工業(株)製、重量平均分子量91万、窒素含量1.7質量%)
(a’−2):カルボキシメチルセルロースNa塩(SUNROSE 日本製紙工業(株)製)
(a’−3):2−ヒドロキシエチルセルロース(試薬、Aldrich製)
<水切れ性の評価方法>
水切れ性付与剤2mLを、20mm×70mm×2mmの評価用基材の硬質表面に塗布し、50mL/秒で10秒間水で濯ぎ、基材の面を垂直に保持し硬質表面上に水膜がなくなるまでの時間を測定した。水切れをした場合は、完全に水膜がなくなるまでの時間に応じ、◎(20秒以下)、○(20秒を越え95秒以下)、及び△(95秒を越える)とした。水膜がなくなるまで5分以上を要したもの、又は水切れ現象が起きないものは×とした。
【0044】
<水切れの持続性の評価方法>
水切れが起きたものについては、水が切れた後再び水で濯ぎ、これを繰り返すことで水切れ現象が起きる回数を測定し、水切れの持続性とした。
【0045】
【表1】

【0046】
実施例2
実施例1に示す(a)成分((a−2)〜(a−5))及び比較品((a’−1)〜(a’−3))を用い、表2に示す組成の水切れ性付与剤を調製し、実施例1と同様の方法で硬質表面(FRP及びステンレス)の水切れ性と、水切れの持続性を評価した。結果を表2に示す。
【0047】
【表2】

【0048】
実施例3
下記に示す配合成分を用い、表3に示す組成の硬質表面用洗浄剤を調製した。なお、洗浄剤のpHは、水酸化ナトリウム及び塩酸により7.5(20℃)に調整した。得られた洗浄剤について、下記方法で硬質表面(ガラス、PVC及びステンレス)の水切れ性と、水切れの持続性を評価した。結果を表3に示す。
【0049】
<配合成分>
・(a)成分及び比較品
実施例1と同様の(a−1)〜(a−5)及び(a’−1)〜(a’−3)を用いた。
【0050】
・(b)成分
(b−1):脂肪酸(炭素数12)アミドプロピル−N,N−ジメチル−酢酸ベタイン
・(c)成分
(c−1):ジエチレングリコールモノブチルエーテル
・(d)成分
(d−1):エチレンジアミン四酢酸Na
<水切れ性及び水切れの持続性の評価方法>
洗浄剤2mLを、20mm×70mm×2mmの評価用硬質表面に塗布し、実施例1と同様の方法で水切れ性及び水切れの持続性を評価した。
【0051】
【表3】

【0052】
実施例4
(a)成分として(a−2)〜(a−5)を用いる以外は実施例3と同様の配合成分を用い、表4に示す組成の硬質表面用洗浄剤を調製し、実施例3と同様に硬質表面(FRP)の水切れ性と、水切れの持続性を評価した。結果を表4に示す。
【0053】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が100万〜1000万であるカチオン化多糖を含有する硬質表面の水切れ性付与剤。
【請求項2】
カチオン化多糖の窒素含量が0.01〜10質量%である、請求項1記載の硬質表面の水切れ性付与剤。
【請求項3】
請求項1又は2記載の水切れ性付与剤、及び界面活性剤を含有する硬質表面用洗浄剤。
【請求項4】
請求項1又は2記載の水切れ性付与剤、あるいは請求項3記載の洗浄剤を硬質表面に適用し、硬質表面に水切れの持続性を付与する方法。

【公開番号】特開2007−45991(P2007−45991A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−234067(P2005−234067)
【出願日】平成17年8月12日(2005.8.12)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】