硬質配管の破砕方法および破砕器
【課題】建物における老朽化した既設の硬質管を解体するために必要な配管の一部を除去する工程において、騒音および振動の発生が可及的に低減され、且つ迅速な施工が可能な方法を提供すること。
【解決手段】上記方法は、破砕すべき配管の長さ方向に垂直な方向に伸びるカッター刃の少なくとも２枚で前記配管の破砕すべき箇所を挟み、前記カッター刃のうちの少なくとも１枚を、前記配管を圧縮する方向に移動する工程を経ることを特徴とする。
【解決手段】上記方法は、破砕すべき配管の長さ方向に垂直な方向に伸びるカッター刃の少なくとも２枚で前記配管の破砕すべき箇所を挟み、前記カッター刃のうちの少なくとも１枚を、前記配管を圧縮する方向に移動する工程を経ることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、硬質配管の破砕方法および破砕器に関する。さらに詳しくは、建物における老朽化した既設の硬質管をスリーブ部から撤去するために、騒音を長時間発することなく、既設配管を迅速且つ経済的に解体するための方法およびそのための治具に関する。
【背景技術】
【０００２】
戸建住宅、マンション、ビジネスビルなどにおける給水管、排水管、ガス管などの既設配管が老朽化した場合には、配管の一部またはその全部の更新を要することとなる。かかる更新作業は、建物自体を稼動状態においたまま施工されることが通常である。
これらの配管設備、特に給排水管は、例えば上下階に連通する配管スペース内にスリーブを介して軸方向に連接されている場合が多い。この場合、スリーブ部は、コンクリート製の床板（スラブコンクリート）を貫通して配管外径よりも大きな直径で穿たれた穴であり、該スリーブ部における配管の外周と床板との間隙はモルタルで充填されている。通常は、床面上にさらにシンダーコンクリートが敷設されている。
このような構造にある既設の配管を交換する際、従来は、スリーブ間に位置する配管の２箇所を切断してその間の部分を除去した後、スリーブ部のシンダーコンクリートおよびモルタルを破砕してスリーブ部を貫通する配管を抜き取った後に、新規の配管を設置する方法が採用されている。一方、本願出願人は、建物の既設配管を解体するための静かで迅速な新規な方法として、スリーブを介して連接された旧配管の２箇所を切断してその間の部分を除去した後、除去部分よりも上の部分の配管をジャッキによって上階方向に押し上げることによってスリーブから抜き取る方法を開発し、先に特許出願した（特願２０１０−２５７１０２号）。
【０００３】
既設配管の除去を上記の従来法による場合であっても、本願出願人による新規な方法による場合であっても、ともに既設配管を、１部屋あたり２箇所において切断する工程が必要である。この既設配管の切断工程には、従来、ダイヤモンド刃を装着した電動ノコギリにより行われているが、鋳鉄管などの硬質管の切断にはダイヤモンド刃の傷みが激しく、１箇所当たり２〜３本の刃を交換使用することが必要となる。既設配管の更新には１世帯（１部屋）当たり２箇所の切断が必要であるから、１箇所の切断につき２本の刃を消費すると仮定すると、世帯数１００の集合住宅の場合、１００（世帯）×２（箇所／世帯）×２（本）＝４００本のダイヤモンド刃を要することとなる。ダイヤモンド刃は１本当たり約１，５００円程度と高価であるから、上記試算の場合では約６０万円が無為に消費されることとなる。
また、電動ノコギリによる場合、硬質管１ヶ所の切断には４０分程度を要し、その間、切断箇所から２ｍ程度の距離において８０ｄＢを超える騒音および振動が継続して発生することとなる。特に巨大共同住宅においては、日祭日を除く日中に継続して一定以上の騒音および振動が発生することとなり、施工期間中の住民のストレスは大きい。特に高齢者世帯では、健康上の問題が生ずる場合もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
本発明は、上記の現状に鑑みてなされたものであり、その目的は、建物における老朽化した既設の硬質管を解体するために必要な配管の一部を除去する工程において、騒音および振動の発生が可及的に低減され、且つ迅速な施工が可能な方法およびそのための治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００５】
既設の硬質管を解体するために必要な配管の一部を除去する工程を、電動ノコギリによって行う従来技術の方法によると、旧配管が略直線状に切断された綺麗な切断面の切断物を生ずる。しかし、これらの切断物および解体された旧配管は、後に再利用されずに廃棄されるべきものである。従って、既設配管の解体においては、綺麗な切断面を得ることは要求されない。
そこで本発明者は、略直線状の綺麗な切断面は得られないけれども迅速な施工が可能な方法について検討し、本発明に到った。本発明は、旧配管を「切断」する代わりに、硬質管の塑性変形し難い性質を利用してこれを「破砕」することによって切断と同じ効果を奏するものである。
【０００６】
すなわち本発明によると、本発明の上記目的および利点は、第一に、
破砕すべき配管の長さ方向に垂直な方向に伸びるカッター刃の少なくとも２枚で前記配管の破砕すべき箇所を挟み、
前記カッター刃のうちの少なくとも１枚を、前記配管を圧縮する方向に移動する工程を経ることを特徴とする、硬質配管の破砕方法によって達成される。
本発明の上記目的および利点は、第二に、
上記の硬質配管の破砕方法に用いるための破砕器であって、
破砕すべき配管の破砕すべき箇所を囲繞し得る単一の部品からなる支持体または破砕すべき配管の破砕すべき箇所を介して対向配置し得る複数の部品からなる支持体と、
破砕すべき配管の長さ方向に垂直な方向に伸びるカッター刃の少なくとも２枚、
これらのカッター刃のうちの少なくとも１枚は前記支持体に固定して保持され、且つ
これらのカッター刃は前記配管の破砕すべき箇所を挟み得るように構成されている、とを有し、そして
前記カッター刃のうちの少なくとも１枚が、前記破砕すべき配管を圧縮する方向に向かって移動可能であることを特徴とする、前記破砕器によって達成される。
【発明の効果】
【０００７】
本発明によれば、建物における老朽化した既設配管を解体するために必要な配管の一部を除去する工程において、騒音および振動の発生が可及的に低減され、且つ迅速な施工が可能な方法が提供される。本発明の硬質配管の破砕方法の施工時間は１箇所当たりわずか数分程度であり、破砕箇所から２ｍの距離で測定して７０〜８０ｄＢ程度の破砕音がほんの一瞬（１秒程度）発生するのみである。
本発明の破砕器は、上記本発明の硬質配管の破砕方法に好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【０００８】
【図１】本発明の破砕器の実施態様を説明するための斜視図。
【図２】本発明の破砕器の別の実施態様を説明するための斜視図。
【発明を実施するための形態】
【０００９】
以下、本発明の硬質配管の破砕方法および該方法に用いるための破砕器について、順に詳説する。
＜硬質配管の破砕方法＞
本発明の硬質配管の破砕方法は、上記のとおり、
破砕すべき配管の長さ方向に垂直な方向に伸びるカッター刃の少なくとも２枚で前記配管の破砕すべき箇所を挟み、
前記カッター刃のうちの少なくとも１枚を、前記配管を圧縮する方向に移動する工程を経ることを特徴とする。
本発明の方法が適用される配管は、その種類を問わない。例えば主として直管からなる給水管、集合管継手を介して連接されてなる排水管などのほか、ガス管などにも適用することができる。
本発明の方法によって破砕される硬質配管を構成する材料としては、例えば鋼管、ステンレス鋼管、鋳鉄管などのほか、亜鉛メッキ鋼管など、現在給排水管またはガス管として使用されているもののうち、比較的硬質の材料であることができる。本発明の方法は、特に鋳鉄管に適用した場合にその有利な効果を最大限に発揮することができ、好ましい。
本発明の方法は、配管の呼び径が２０〜１５０Φ程度の管に適用することができ、すなわち、現在給排水管またはガス管として一般に使用されているすべてのサイズの配管に適用することができる。
【００１０】
本発明の方法においては、上記のような破砕すべき配管に対して、その長さ方向に垂直な方向に伸びるカッター刃の少なくとも２枚で前記配管の破砕すべき箇所を挟む。これらのカッター刃のそれぞれは、例えば、上側から見た形状が正方形または長方形であり、このうちの一辺が刃となっている平面板状のカッター刃であるか、正方形または長方形の一辺が凹円弧状の曲線となっており、該曲線部分が刃となっている平面板状のカッター刃であることができる。この場合、前者は刃先は直線状であり、後者の刃先は凹円弧状の形状を有する。刃先が凹円弧状である場合、その曲率半径は、破砕すべき配管の外径の１〜３倍であることが好ましく、１〜１．５倍であることがより好ましい。
刃の長さは、破砕すべき配管の外径よりも大きいものであることが好ましく、例えば５０〜１５０ｍｍ程度とすることができ、１００〜１５０ｍｍとすることが好ましい。刃は、片刃であっても両刃であってもよいが、両刃であることが好ましい。ここで、片刃とは刃がブレードの片面についていることをいい、両刃とは刃がブレードの中心についていることをいう。
刃先から鎬までの距離は、１０〜１００ｍｍ程度とすることができ、２０〜７０ｍｍとすることが好ましい。カッター刃の厚さは、５〜２０ｍｍ程度とすることができ、５〜１０ｍｍとすることが好ましい。カッター刃の長さ（刃先から棟（背）までの長さ）は、上記の構成をとることが可能である限り、本発明において臨界的な要件ではないが、必要以上に大きくする必要はなく、当業者によって適宜に設定することができる。このカッター刃の長さは、例えば２５〜１００ｍｍ程度とすることができる。
【００１１】
カッター刃を構成する材料としては、本体の材料としては、例えばモリブデン鋼、ボルボ鋼、圧延鋼などを挙げることができる。刃先の材料としては、モリブデン鋼、ボルボ鋼などを用いることができるほか、真空焼入れした圧延鋼などを使用してもよい。
カッター刃は、上記のような形状のみからなっていてもよく、あるいは刃を固定手段または移動手段に接続保持するための部位を有していてもよい。
本発明の硬質配管の破砕方法においては、先ず、上記のようなカッター刃を少なくとも２枚用いる。使用するカッター刃の数としては、２〜４枚とすることが好ましく、２または３枚とすることがより好ましい。
【００１２】
これらのカッター刃で、配管の破砕すべき箇所を挟む。このとき、カッター刃の平面部分（上記の説明中で、正方形もしくは長方形形状、またはこれらの一辺が凹円弧状の曲線となった形状を構成する面）が、配管の長さ方向に垂直な方向を向き、
刃先が直線状である場合には該直線が配管の長さ方向に垂直な方向となるように、
一方、刃先が凹円弧状である場合には、該凹円弧で規定される平面（この平面はカッター刃の上記平面部分と平行であることが好ましい。）が配管の長さ方向に垂直な方向となるように、そして
いずれの場合も刃先が配管の方を向くようにして、配管を挟む。複数のカッター刃の各刃先が配管と接触する位置は、配管の断面を考えたときに、略対称の位置とすることが好ましい。すなわち、各カッター刃が刃先の一点において配管と接触する場合、
２枚のカッター刃を使用するときには配管の断面の描く円の中心と２つの接触点とをそれぞれ結んだ２本の直線のなす角度が約１８０°となることが好ましく；
３枚のカッター刃を使用するときには配管の断面の描く円の中心と３つの接触点とをそれぞれ結んだ３本の直線のなす角度がそれぞれ約１２０°となることが好ましい。各カッター刃が刃先のある長さにわたって配管と接触する場合には、接触部分の中心の位置を接触点と考えて、上記と同様の位置とすることができる。
各カッター刃は、刃先の中心の位置またはその近傍で配管と接触することが好ましい。
【００１３】
そして上記カッター刃のうちの少なくとも１枚を、配管を圧縮する方向に移動することにより、配管を破砕することができる。このとき、移動するカッター刃の移動距離は、配管の径を横断する必要はなく、配管の径の３０〜６０％程度移動することにより、配管に傷が入り、且つ配管の耐性を超える応力が印加されるため、配管は破砕される（過大な歪みがかかって傷が入った部分から「割れる」）。破砕後の破砕面は、直線状ではなく「ギザギザ」状となるが、上述のように解体後の旧配管は再利用されないので、切断面の状態は問題にならない。
カッター刃の移動速度としては、１〜２０ｍｍ／秒とすることが好ましく、２〜１０ｍｍ／秒とすることがより好ましい。
複数のカッター刃のうちの、１枚のみを移動させてもよく、２枚以上を移動させてもよいが、１枚のみの移動により、本発明の目的を十分に達成することができる。移動させないカッター刃は、固定手段に保持しておくことが好ましい。
【００１４】
上記のようなカッター刃の移動は、移動手段としてジャッキを用い、ジャッキを加圧することによって行うことが好ましい。
本発明において使用されるジャッキの種類としては、例えば公知の油圧ジャッキ、機械式ジャッキ、パンダ式ジャッキなどを挙げることができるが、横方向（水平方向）への加圧が可能なものであれば、制限なく使用することができる。ジャッキは、機長（機高）１００〜３００ｍｍ、ジャッキ能力２〜１０ｔｏｎ、ストローク（移動距離）１０〜２０ｍｍ、重圧面積６０〜１２０ｃｍ２のものを選択して使用することが好ましい。最も好ましくは機長１５０ｍｍ程度、ジャッキ能力６ｔｏｎ程度、ストローク（揚程距離）１５ｍｍ程度、重圧面積８０ｃｍ２程度のジャッキである。
上記固定手段としては、破砕すべき配管に対して移動しない構成で設置された棒状体、板状体、網状体など、およびこれら以外の任意の形状を有する堅固体を挙げることができ、好ましくは後述の破砕器における支持体である。
【００１５】
＜破砕器＞
本発明の破砕器は、上記のような硬質配管の破砕方法を有利に行うためのものであって、
破砕すべき配管の破砕すべき箇所を囲繞し得る単一の部品からなる支持体または破砕すべき配管の破砕すべき箇所を介して対向配置し得る複数の部品からなる支持体と、
破砕すべき配管の長さ方向に垂直な方向に伸びるカッター刃の少なくとも２枚、
これらのカッター刃のうちの少なくとも１枚は前記支持体に固定して保持され、且つ
これらのカッター刃は前記配管の破砕すべき箇所を挟み得るように構成されている、とを有し、そして
前記カッター刃のうちの少なくとも１枚が、前記破砕すべき配管を圧縮する方向に向かって移動可能であることを特徴とする。移動可能なカッター刃は、カッター刃の移動手段に直接に、または他の部品を介して間接に接続保持されていることが好ましい。移動させないカッター刃は、固定手段としての支持体に固定して保持されていることが好ましい。
【００１６】
上記支持体が単一の部品からなる場合には、例えば、相対して略対称形状にある２つの部分と、これらを一端において接続する部分とからなり、該接続部分とは逆側に開口部を有し、前記相対して略対称形状にある２つの部分の間隙に破砕すべき配管を囲繞するための空間を有する支持体などを挙げることができる。このような支持体としては、例えば「Ｃ」字型、「Ｕ」字型、「コ」字型などの形状を有する支持体を挙げることができる。
この場合におけるカッター刃の数は２枚であることが好ましく、
そのうちの１枚（第１のカッター刃）は、略対称形状にある２つの部分のうちの一方に固定して保持され、
もう一枚（第２のカッター刃）は、略対称形状にある２つの部分のうちのもう片方に、移動可能に保持されることが好ましい。ここで、各カッター刃は、刃先を略対称形状にある２つの部分の内側に向けて保持される。第２のカッター刃は、第１のカッター刃の方向に向かって移動可能であるように構成される。そして第２のカッター刃は、カッター刃の移動手段（例えばジャッキ）に接続され、該移動手段が駆動することによって移動することが好ましい。
上記支持体の大きさは、概ね以下のとおりとすることができる。
【００１７】
上記破砕すべき配管を囲繞するための空間の大きさとしては、例えば配管の径と、カッター刃が支持体から突出する長さよりも大きいものであることを要する。一方、この空間が大きすぎると、配管とカッター刃との接触位置と支持体との距離が離れすぎるため、安定・安全な施工が困難となる。このような観点から、空間の大きさは配管の径の１．２〜３倍とすることができ、１．５〜２倍とすることが好ましい。
各部分の太さ（すなわち、「Ｃ」字、「Ｕ」字、「コ」字などの字の太さに相当する。）としては、好ましくは配管に対するジャッキ加圧に耐えるに十分な太さとすることを要し、例えば８〜２５ｍｍとすることができ、１０〜２０ｍｍとすることが好ましい。支持体の厚さとしては、例えば８０〜２５０ｍｍとすることができ、１００〜２００ｍｍとすることが好ましい。
配管を囲繞後に、補強用部品（例えばボルトなど）によって開口部の両端を固定し、強度の増大を図ってもよい。
支持体および任意的に設けられる補強用部品を構成する材料としては、十分な強度を有するものを使用することを要し、例えば真空焼入れした圧延鋼などを使用することができる。
【００１８】
一方、上記支持体が複数の部品からなる場合には、例えば
支持体が、
第１のカッター刃を保持する第１の支持板と
第２のカッター刃を保持する第２の支持板と
を有し、
前記第１の支持板と前記第２の支持板とは、破砕すべき配管の破砕すべき箇所を介して対向配置し得るように構成されており、そして
前記第２の支持板が、前記第１の支持体の方向に移動可能であることによって、
前記第２のカッター刃が破砕すべき配管を圧縮する方向に向かって移動可能であるように構成された破砕器を挙げることができる。この場合においてもカッター刃の数は２枚であることが好ましい。
この破砕器は、さらに、カッター刃の移動手段（好ましくはジャッキ）を保持する第３の支持板を有し、
前記第２の支持板が、前記移動手段の稼動によって移動するように構成されていてもよい。
【００１９】
各支持板は、正方形または長方形の板状であることができ、各辺から板面に垂直に伸びる側面部を有する箱状であってもよい。板の片面に「Ｘ」字型、「二」字型、「川」字型、ハニカム型などの形状の補強用部位を裏打ちしたものであってもよい。
第１の支持板および第２の支持板は、それぞれ、その最も面積の広い面が破砕すべき配管の長軸方向に平行に配置される。２枚のカッター刃はこれら各支持板の最も面積の広い面から好ましくは垂直に突出し、破砕すべき配管の方向に刃先が向くように構成される。２枚のカッター刃は、刃先が直線状である場合には該直線が配管に対して対称位置に配置されることが好ましく、
刃先が凹円弧状である場合には、２枚のカッター刃先の各凹円弧で規定される平面が同一平面を構成するように、配管に対して対称位置に配置されることが好ましい。そして、破砕すべき配管は、これら第１および第２の支持板の間にあってカッター刃の刃先に挟まれた状態で保持され、この状態で第２の支持板が第１の支持体の方向に移動し、該第２の支持板に固定して保持されたカッター刃が配管を圧縮する方向に向かって移動することによって、配管の破砕が行われる。
各支持板は、第２の支持板が滑らかに移動可能となるように、１本以上のシャフトで連結されていてもよい。
支持板を構成する材料としては、ならびに任意的に設けられる補強用部品およびシャフトを構成する材料としては、十分な強度を有するものを使用することを要し、例えば真空焼入れした圧延鋼などを使用することができる。
【実施例】
【００２０】
以下、本発明の破砕器の具体的な態様について、添付の図を参照しつつ説明する。
実施例１
図１の破砕器は、支持体が「Ｕ」字型を有する単一の部品からなる（Ｕ型支持具）。カッター刃の数は２枚である。
カッター刃のうちの１枚（切断治具（固定））は、接続用部位を介して固定手段である支持体に固定して保持されている。もう一枚のカッター刃（切断治具（シリンダー接続側））は、固定されたカッター刃の方向に移動可能な状態で、接続用部位（ジャッキ支持具）を介してジャッキに保持されている。２枚のカッター刃は、カッター刃は、それぞれ凹円弧状の刃先を有し、各凹円弧で規定される平面が同一平面を構成するように水平方向に、刃先を内側に向けて配置されている。
Ｕ字の開口部は、配管を囲繞後にボルトによって固定され、強度の増大を図ることができる。
そして、破砕すべき配管を、図１の破砕器のカッター刃の刃先に挟まれた状態でＵ字の開口部によって囲繞し、開口部をボルトによって固定したうえで、ジャッキを稼動してシリンダー接続側カッター刃を固定カッター刃の方向に平行移動させることによって、配管を破砕することができる。
【００２１】
実施例２
図２の破砕器は、支持体が、
第１のカッター刃を保持する第１の支持板（支持板１）と
第２のカッター刃を保持する第２の支持板（支持板２）と
ジャッキを保持する第３の支持板（支持板３）と、
からなる。カッター刃の数は２枚である。
各支持板は、長径が横方向である長方形の板の各辺から板面に垂直に伸びる側面部を有する箱状である。各支持板は、その板面のうちの側面部を有する側に補強用部位が裏打ちされている。補強用部位の形状は、支持板１では「Ｘ」字型であり、支持板２および３では「二」字型である（支持板２については図示せず）。補強用部位の高さは、側面部の高さと略同一である。
３つの支持板は、それぞれの板面が互いに平行となるように配置されている。支持板１が保持するカッター刃および支持板２が保持するカッター刃は、それぞれ凹円弧状の刃先を有し、各凹円弧で規定される平面が同一平面を構成するように水平方向に配置されている。３つの支持板は、２本のシャフトで連結されている。これらのシャフトは、支持板１および支持板３とは固定されているが、支持板２は、ジャッキの稼動によって、支持板１と支持板３との間をシャフトを介して支持板１の方向に滑らかに移動し得るように構成されている。
そして、破砕すべき配管を、図２の破砕器のカッター刃の刃先に挟まれた状態で支持板１と支持板２との間に保持し、次いでジャッキを稼動して支持板２を支持板１の方向に平行移動させ、該支持板２に固定して保持されたカッター刃が配管を圧縮する方向に向かって移動することによって、配管を破砕することができる。
【００２２】
＜本発明の利点＞
上記のような、好ましくは本発明の破砕器を用いて行う本発明の硬質配管の破砕方法によると、破砕する配管の径にもよるが、カッター刃の移動開始（好ましくはジャッキの稼動開始）から１０〜６０秒程度で配管の破砕を完了することができる。このとき発生する作業音は、カッター刃の移動手段の動作音のほかは、配管が破砕される（割れる）際に破砕箇所から２ｍ離れた位置において６０〜８０ｄＢ程度の音がほんの１秒程度発するのみである。
【技術分野】
【０００１】
本発明は、硬質配管の破砕方法および破砕器に関する。さらに詳しくは、建物における老朽化した既設の硬質管をスリーブ部から撤去するために、騒音を長時間発することなく、既設配管を迅速且つ経済的に解体するための方法およびそのための治具に関する。
【背景技術】
【０００２】
戸建住宅、マンション、ビジネスビルなどにおける給水管、排水管、ガス管などの既設配管が老朽化した場合には、配管の一部またはその全部の更新を要することとなる。かかる更新作業は、建物自体を稼動状態においたまま施工されることが通常である。
これらの配管設備、特に給排水管は、例えば上下階に連通する配管スペース内にスリーブを介して軸方向に連接されている場合が多い。この場合、スリーブ部は、コンクリート製の床板（スラブコンクリート）を貫通して配管外径よりも大きな直径で穿たれた穴であり、該スリーブ部における配管の外周と床板との間隙はモルタルで充填されている。通常は、床面上にさらにシンダーコンクリートが敷設されている。
このような構造にある既設の配管を交換する際、従来は、スリーブ間に位置する配管の２箇所を切断してその間の部分を除去した後、スリーブ部のシンダーコンクリートおよびモルタルを破砕してスリーブ部を貫通する配管を抜き取った後に、新規の配管を設置する方法が採用されている。一方、本願出願人は、建物の既設配管を解体するための静かで迅速な新規な方法として、スリーブを介して連接された旧配管の２箇所を切断してその間の部分を除去した後、除去部分よりも上の部分の配管をジャッキによって上階方向に押し上げることによってスリーブから抜き取る方法を開発し、先に特許出願した（特願２０１０−２５７１０２号）。
【０００３】
既設配管の除去を上記の従来法による場合であっても、本願出願人による新規な方法による場合であっても、ともに既設配管を、１部屋あたり２箇所において切断する工程が必要である。この既設配管の切断工程には、従来、ダイヤモンド刃を装着した電動ノコギリにより行われているが、鋳鉄管などの硬質管の切断にはダイヤモンド刃の傷みが激しく、１箇所当たり２〜３本の刃を交換使用することが必要となる。既設配管の更新には１世帯（１部屋）当たり２箇所の切断が必要であるから、１箇所の切断につき２本の刃を消費すると仮定すると、世帯数１００の集合住宅の場合、１００（世帯）×２（箇所／世帯）×２（本）＝４００本のダイヤモンド刃を要することとなる。ダイヤモンド刃は１本当たり約１，５００円程度と高価であるから、上記試算の場合では約６０万円が無為に消費されることとなる。
また、電動ノコギリによる場合、硬質管１ヶ所の切断には４０分程度を要し、その間、切断箇所から２ｍ程度の距離において８０ｄＢを超える騒音および振動が継続して発生することとなる。特に巨大共同住宅においては、日祭日を除く日中に継続して一定以上の騒音および振動が発生することとなり、施工期間中の住民のストレスは大きい。特に高齢者世帯では、健康上の問題が生ずる場合もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
本発明は、上記の現状に鑑みてなされたものであり、その目的は、建物における老朽化した既設の硬質管を解体するために必要な配管の一部を除去する工程において、騒音および振動の発生が可及的に低減され、且つ迅速な施工が可能な方法およびそのための治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００５】
既設の硬質管を解体するために必要な配管の一部を除去する工程を、電動ノコギリによって行う従来技術の方法によると、旧配管が略直線状に切断された綺麗な切断面の切断物を生ずる。しかし、これらの切断物および解体された旧配管は、後に再利用されずに廃棄されるべきものである。従って、既設配管の解体においては、綺麗な切断面を得ることは要求されない。
そこで本発明者は、略直線状の綺麗な切断面は得られないけれども迅速な施工が可能な方法について検討し、本発明に到った。本発明は、旧配管を「切断」する代わりに、硬質管の塑性変形し難い性質を利用してこれを「破砕」することによって切断と同じ効果を奏するものである。
【０００６】
すなわち本発明によると、本発明の上記目的および利点は、第一に、
破砕すべき配管の長さ方向に垂直な方向に伸びるカッター刃の少なくとも２枚で前記配管の破砕すべき箇所を挟み、
前記カッター刃のうちの少なくとも１枚を、前記配管を圧縮する方向に移動する工程を経ることを特徴とする、硬質配管の破砕方法によって達成される。
本発明の上記目的および利点は、第二に、
上記の硬質配管の破砕方法に用いるための破砕器であって、
破砕すべき配管の破砕すべき箇所を囲繞し得る単一の部品からなる支持体または破砕すべき配管の破砕すべき箇所を介して対向配置し得る複数の部品からなる支持体と、
破砕すべき配管の長さ方向に垂直な方向に伸びるカッター刃の少なくとも２枚、
これらのカッター刃のうちの少なくとも１枚は前記支持体に固定して保持され、且つ
これらのカッター刃は前記配管の破砕すべき箇所を挟み得るように構成されている、とを有し、そして
前記カッター刃のうちの少なくとも１枚が、前記破砕すべき配管を圧縮する方向に向かって移動可能であることを特徴とする、前記破砕器によって達成される。
【発明の効果】
【０００７】
本発明によれば、建物における老朽化した既設配管を解体するために必要な配管の一部を除去する工程において、騒音および振動の発生が可及的に低減され、且つ迅速な施工が可能な方法が提供される。本発明の硬質配管の破砕方法の施工時間は１箇所当たりわずか数分程度であり、破砕箇所から２ｍの距離で測定して７０〜８０ｄＢ程度の破砕音がほんの一瞬（１秒程度）発生するのみである。
本発明の破砕器は、上記本発明の硬質配管の破砕方法に好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【０００８】
【図１】本発明の破砕器の実施態様を説明するための斜視図。
【図２】本発明の破砕器の別の実施態様を説明するための斜視図。
【発明を実施するための形態】
【０００９】
以下、本発明の硬質配管の破砕方法および該方法に用いるための破砕器について、順に詳説する。
＜硬質配管の破砕方法＞
本発明の硬質配管の破砕方法は、上記のとおり、
破砕すべき配管の長さ方向に垂直な方向に伸びるカッター刃の少なくとも２枚で前記配管の破砕すべき箇所を挟み、
前記カッター刃のうちの少なくとも１枚を、前記配管を圧縮する方向に移動する工程を経ることを特徴とする。
本発明の方法が適用される配管は、その種類を問わない。例えば主として直管からなる給水管、集合管継手を介して連接されてなる排水管などのほか、ガス管などにも適用することができる。
本発明の方法によって破砕される硬質配管を構成する材料としては、例えば鋼管、ステンレス鋼管、鋳鉄管などのほか、亜鉛メッキ鋼管など、現在給排水管またはガス管として使用されているもののうち、比較的硬質の材料であることができる。本発明の方法は、特に鋳鉄管に適用した場合にその有利な効果を最大限に発揮することができ、好ましい。
本発明の方法は、配管の呼び径が２０〜１５０Φ程度の管に適用することができ、すなわち、現在給排水管またはガス管として一般に使用されているすべてのサイズの配管に適用することができる。
【００１０】
本発明の方法においては、上記のような破砕すべき配管に対して、その長さ方向に垂直な方向に伸びるカッター刃の少なくとも２枚で前記配管の破砕すべき箇所を挟む。これらのカッター刃のそれぞれは、例えば、上側から見た形状が正方形または長方形であり、このうちの一辺が刃となっている平面板状のカッター刃であるか、正方形または長方形の一辺が凹円弧状の曲線となっており、該曲線部分が刃となっている平面板状のカッター刃であることができる。この場合、前者は刃先は直線状であり、後者の刃先は凹円弧状の形状を有する。刃先が凹円弧状である場合、その曲率半径は、破砕すべき配管の外径の１〜３倍であることが好ましく、１〜１．５倍であることがより好ましい。
刃の長さは、破砕すべき配管の外径よりも大きいものであることが好ましく、例えば５０〜１５０ｍｍ程度とすることができ、１００〜１５０ｍｍとすることが好ましい。刃は、片刃であっても両刃であってもよいが、両刃であることが好ましい。ここで、片刃とは刃がブレードの片面についていることをいい、両刃とは刃がブレードの中心についていることをいう。
刃先から鎬までの距離は、１０〜１００ｍｍ程度とすることができ、２０〜７０ｍｍとすることが好ましい。カッター刃の厚さは、５〜２０ｍｍ程度とすることができ、５〜１０ｍｍとすることが好ましい。カッター刃の長さ（刃先から棟（背）までの長さ）は、上記の構成をとることが可能である限り、本発明において臨界的な要件ではないが、必要以上に大きくする必要はなく、当業者によって適宜に設定することができる。このカッター刃の長さは、例えば２５〜１００ｍｍ程度とすることができる。
【００１１】
カッター刃を構成する材料としては、本体の材料としては、例えばモリブデン鋼、ボルボ鋼、圧延鋼などを挙げることができる。刃先の材料としては、モリブデン鋼、ボルボ鋼などを用いることができるほか、真空焼入れした圧延鋼などを使用してもよい。
カッター刃は、上記のような形状のみからなっていてもよく、あるいは刃を固定手段または移動手段に接続保持するための部位を有していてもよい。
本発明の硬質配管の破砕方法においては、先ず、上記のようなカッター刃を少なくとも２枚用いる。使用するカッター刃の数としては、２〜４枚とすることが好ましく、２または３枚とすることがより好ましい。
【００１２】
これらのカッター刃で、配管の破砕すべき箇所を挟む。このとき、カッター刃の平面部分（上記の説明中で、正方形もしくは長方形形状、またはこれらの一辺が凹円弧状の曲線となった形状を構成する面）が、配管の長さ方向に垂直な方向を向き、
刃先が直線状である場合には該直線が配管の長さ方向に垂直な方向となるように、
一方、刃先が凹円弧状である場合には、該凹円弧で規定される平面（この平面はカッター刃の上記平面部分と平行であることが好ましい。）が配管の長さ方向に垂直な方向となるように、そして
いずれの場合も刃先が配管の方を向くようにして、配管を挟む。複数のカッター刃の各刃先が配管と接触する位置は、配管の断面を考えたときに、略対称の位置とすることが好ましい。すなわち、各カッター刃が刃先の一点において配管と接触する場合、
２枚のカッター刃を使用するときには配管の断面の描く円の中心と２つの接触点とをそれぞれ結んだ２本の直線のなす角度が約１８０°となることが好ましく；
３枚のカッター刃を使用するときには配管の断面の描く円の中心と３つの接触点とをそれぞれ結んだ３本の直線のなす角度がそれぞれ約１２０°となることが好ましい。各カッター刃が刃先のある長さにわたって配管と接触する場合には、接触部分の中心の位置を接触点と考えて、上記と同様の位置とすることができる。
各カッター刃は、刃先の中心の位置またはその近傍で配管と接触することが好ましい。
【００１３】
そして上記カッター刃のうちの少なくとも１枚を、配管を圧縮する方向に移動することにより、配管を破砕することができる。このとき、移動するカッター刃の移動距離は、配管の径を横断する必要はなく、配管の径の３０〜６０％程度移動することにより、配管に傷が入り、且つ配管の耐性を超える応力が印加されるため、配管は破砕される（過大な歪みがかかって傷が入った部分から「割れる」）。破砕後の破砕面は、直線状ではなく「ギザギザ」状となるが、上述のように解体後の旧配管は再利用されないので、切断面の状態は問題にならない。
カッター刃の移動速度としては、１〜２０ｍｍ／秒とすることが好ましく、２〜１０ｍｍ／秒とすることがより好ましい。
複数のカッター刃のうちの、１枚のみを移動させてもよく、２枚以上を移動させてもよいが、１枚のみの移動により、本発明の目的を十分に達成することができる。移動させないカッター刃は、固定手段に保持しておくことが好ましい。
【００１４】
上記のようなカッター刃の移動は、移動手段としてジャッキを用い、ジャッキを加圧することによって行うことが好ましい。
本発明において使用されるジャッキの種類としては、例えば公知の油圧ジャッキ、機械式ジャッキ、パンダ式ジャッキなどを挙げることができるが、横方向（水平方向）への加圧が可能なものであれば、制限なく使用することができる。ジャッキは、機長（機高）１００〜３００ｍｍ、ジャッキ能力２〜１０ｔｏｎ、ストローク（移動距離）１０〜２０ｍｍ、重圧面積６０〜１２０ｃｍ２のものを選択して使用することが好ましい。最も好ましくは機長１５０ｍｍ程度、ジャッキ能力６ｔｏｎ程度、ストローク（揚程距離）１５ｍｍ程度、重圧面積８０ｃｍ２程度のジャッキである。
上記固定手段としては、破砕すべき配管に対して移動しない構成で設置された棒状体、板状体、網状体など、およびこれら以外の任意の形状を有する堅固体を挙げることができ、好ましくは後述の破砕器における支持体である。
【００１５】
＜破砕器＞
本発明の破砕器は、上記のような硬質配管の破砕方法を有利に行うためのものであって、
破砕すべき配管の破砕すべき箇所を囲繞し得る単一の部品からなる支持体または破砕すべき配管の破砕すべき箇所を介して対向配置し得る複数の部品からなる支持体と、
破砕すべき配管の長さ方向に垂直な方向に伸びるカッター刃の少なくとも２枚、
これらのカッター刃のうちの少なくとも１枚は前記支持体に固定して保持され、且つ
これらのカッター刃は前記配管の破砕すべき箇所を挟み得るように構成されている、とを有し、そして
前記カッター刃のうちの少なくとも１枚が、前記破砕すべき配管を圧縮する方向に向かって移動可能であることを特徴とする。移動可能なカッター刃は、カッター刃の移動手段に直接に、または他の部品を介して間接に接続保持されていることが好ましい。移動させないカッター刃は、固定手段としての支持体に固定して保持されていることが好ましい。
【００１６】
上記支持体が単一の部品からなる場合には、例えば、相対して略対称形状にある２つの部分と、これらを一端において接続する部分とからなり、該接続部分とは逆側に開口部を有し、前記相対して略対称形状にある２つの部分の間隙に破砕すべき配管を囲繞するための空間を有する支持体などを挙げることができる。このような支持体としては、例えば「Ｃ」字型、「Ｕ」字型、「コ」字型などの形状を有する支持体を挙げることができる。
この場合におけるカッター刃の数は２枚であることが好ましく、
そのうちの１枚（第１のカッター刃）は、略対称形状にある２つの部分のうちの一方に固定して保持され、
もう一枚（第２のカッター刃）は、略対称形状にある２つの部分のうちのもう片方に、移動可能に保持されることが好ましい。ここで、各カッター刃は、刃先を略対称形状にある２つの部分の内側に向けて保持される。第２のカッター刃は、第１のカッター刃の方向に向かって移動可能であるように構成される。そして第２のカッター刃は、カッター刃の移動手段（例えばジャッキ）に接続され、該移動手段が駆動することによって移動することが好ましい。
上記支持体の大きさは、概ね以下のとおりとすることができる。
【００１７】
上記破砕すべき配管を囲繞するための空間の大きさとしては、例えば配管の径と、カッター刃が支持体から突出する長さよりも大きいものであることを要する。一方、この空間が大きすぎると、配管とカッター刃との接触位置と支持体との距離が離れすぎるため、安定・安全な施工が困難となる。このような観点から、空間の大きさは配管の径の１．２〜３倍とすることができ、１．５〜２倍とすることが好ましい。
各部分の太さ（すなわち、「Ｃ」字、「Ｕ」字、「コ」字などの字の太さに相当する。）としては、好ましくは配管に対するジャッキ加圧に耐えるに十分な太さとすることを要し、例えば８〜２５ｍｍとすることができ、１０〜２０ｍｍとすることが好ましい。支持体の厚さとしては、例えば８０〜２５０ｍｍとすることができ、１００〜２００ｍｍとすることが好ましい。
配管を囲繞後に、補強用部品（例えばボルトなど）によって開口部の両端を固定し、強度の増大を図ってもよい。
支持体および任意的に設けられる補強用部品を構成する材料としては、十分な強度を有するものを使用することを要し、例えば真空焼入れした圧延鋼などを使用することができる。
【００１８】
一方、上記支持体が複数の部品からなる場合には、例えば
支持体が、
第１のカッター刃を保持する第１の支持板と
第２のカッター刃を保持する第２の支持板と
を有し、
前記第１の支持板と前記第２の支持板とは、破砕すべき配管の破砕すべき箇所を介して対向配置し得るように構成されており、そして
前記第２の支持板が、前記第１の支持体の方向に移動可能であることによって、
前記第２のカッター刃が破砕すべき配管を圧縮する方向に向かって移動可能であるように構成された破砕器を挙げることができる。この場合においてもカッター刃の数は２枚であることが好ましい。
この破砕器は、さらに、カッター刃の移動手段（好ましくはジャッキ）を保持する第３の支持板を有し、
前記第２の支持板が、前記移動手段の稼動によって移動するように構成されていてもよい。
【００１９】
各支持板は、正方形または長方形の板状であることができ、各辺から板面に垂直に伸びる側面部を有する箱状であってもよい。板の片面に「Ｘ」字型、「二」字型、「川」字型、ハニカム型などの形状の補強用部位を裏打ちしたものであってもよい。
第１の支持板および第２の支持板は、それぞれ、その最も面積の広い面が破砕すべき配管の長軸方向に平行に配置される。２枚のカッター刃はこれら各支持板の最も面積の広い面から好ましくは垂直に突出し、破砕すべき配管の方向に刃先が向くように構成される。２枚のカッター刃は、刃先が直線状である場合には該直線が配管に対して対称位置に配置されることが好ましく、
刃先が凹円弧状である場合には、２枚のカッター刃先の各凹円弧で規定される平面が同一平面を構成するように、配管に対して対称位置に配置されることが好ましい。そして、破砕すべき配管は、これら第１および第２の支持板の間にあってカッター刃の刃先に挟まれた状態で保持され、この状態で第２の支持板が第１の支持体の方向に移動し、該第２の支持板に固定して保持されたカッター刃が配管を圧縮する方向に向かって移動することによって、配管の破砕が行われる。
各支持板は、第２の支持板が滑らかに移動可能となるように、１本以上のシャフトで連結されていてもよい。
支持板を構成する材料としては、ならびに任意的に設けられる補強用部品およびシャフトを構成する材料としては、十分な強度を有するものを使用することを要し、例えば真空焼入れした圧延鋼などを使用することができる。
【実施例】
【００２０】
以下、本発明の破砕器の具体的な態様について、添付の図を参照しつつ説明する。
実施例１
図１の破砕器は、支持体が「Ｕ」字型を有する単一の部品からなる（Ｕ型支持具）。カッター刃の数は２枚である。
カッター刃のうちの１枚（切断治具（固定））は、接続用部位を介して固定手段である支持体に固定して保持されている。もう一枚のカッター刃（切断治具（シリンダー接続側））は、固定されたカッター刃の方向に移動可能な状態で、接続用部位（ジャッキ支持具）を介してジャッキに保持されている。２枚のカッター刃は、カッター刃は、それぞれ凹円弧状の刃先を有し、各凹円弧で規定される平面が同一平面を構成するように水平方向に、刃先を内側に向けて配置されている。
Ｕ字の開口部は、配管を囲繞後にボルトによって固定され、強度の増大を図ることができる。
そして、破砕すべき配管を、図１の破砕器のカッター刃の刃先に挟まれた状態でＵ字の開口部によって囲繞し、開口部をボルトによって固定したうえで、ジャッキを稼動してシリンダー接続側カッター刃を固定カッター刃の方向に平行移動させることによって、配管を破砕することができる。
【００２１】
実施例２
図２の破砕器は、支持体が、
第１のカッター刃を保持する第１の支持板（支持板１）と
第２のカッター刃を保持する第２の支持板（支持板２）と
ジャッキを保持する第３の支持板（支持板３）と、
からなる。カッター刃の数は２枚である。
各支持板は、長径が横方向である長方形の板の各辺から板面に垂直に伸びる側面部を有する箱状である。各支持板は、その板面のうちの側面部を有する側に補強用部位が裏打ちされている。補強用部位の形状は、支持板１では「Ｘ」字型であり、支持板２および３では「二」字型である（支持板２については図示せず）。補強用部位の高さは、側面部の高さと略同一である。
３つの支持板は、それぞれの板面が互いに平行となるように配置されている。支持板１が保持するカッター刃および支持板２が保持するカッター刃は、それぞれ凹円弧状の刃先を有し、各凹円弧で規定される平面が同一平面を構成するように水平方向に配置されている。３つの支持板は、２本のシャフトで連結されている。これらのシャフトは、支持板１および支持板３とは固定されているが、支持板２は、ジャッキの稼動によって、支持板１と支持板３との間をシャフトを介して支持板１の方向に滑らかに移動し得るように構成されている。
そして、破砕すべき配管を、図２の破砕器のカッター刃の刃先に挟まれた状態で支持板１と支持板２との間に保持し、次いでジャッキを稼動して支持板２を支持板１の方向に平行移動させ、該支持板２に固定して保持されたカッター刃が配管を圧縮する方向に向かって移動することによって、配管を破砕することができる。
【００２２】
＜本発明の利点＞
上記のような、好ましくは本発明の破砕器を用いて行う本発明の硬質配管の破砕方法によると、破砕する配管の径にもよるが、カッター刃の移動開始（好ましくはジャッキの稼動開始）から１０〜６０秒程度で配管の破砕を完了することができる。このとき発生する作業音は、カッター刃の移動手段の動作音のほかは、配管が破砕される（割れる）際に破砕箇所から２ｍ離れた位置において６０〜８０ｄＢ程度の音がほんの１秒程度発するのみである。
【特許請求の範囲】
【請求項１】
破砕すべき配管の長さ方向に垂直な方向に伸びるカッター刃の少なくとも２枚で前記配管の破砕すべき箇所を挟み、
前記カッター刃のうちの少なくとも１枚を、前記配管を圧縮する方向に移動する工程を経ることを特徴とする、硬質配管の破砕方法。
【請求項２】
前記カッター刃の刃先が直線状または凹円弧状の形状を有する、請求項１に記載の方法。
【請求項３】
前記カッター刃の移動をジャッキの加圧によって行う、請求項１または２に記載の方法。
【請求項４】
請求項１に記載の硬質配管の破砕方法に用いるための破砕器であって、
破砕すべき配管の破砕すべき箇所を囲繞し得る単一の部品からなる支持体または破砕すべき配管の破砕すべき箇所を介して対向配置し得る複数の部品からなる支持体と、
破砕すべき配管の長さ方向に垂直な方向に伸びるカッター刃の少なくとも２枚、
これらのカッター刃のうちの少なくとも１枚は前記支持体に固定して保持され、且つ
これらのカッター刃は前記配管の破砕すべき箇所を挟み得るように構成されている、とを有し、そして
前記カッター刃のうちの少なくとも１枚が、前記破砕すべき配管を圧縮する方向に向かって移動可能であることを特徴とする、前記破砕器。
【請求項５】
前記支持体が、
第１のカッター刃を保持する第１の支持板と
第２のカッター刃を保持する第２の支持板と
を有し、
前記第１の支持板と前記第２の支持板とは、破砕すべき配管の破砕すべき箇所を介して対向配置し得るように構成されており、そして
前記第２の支持板が、前記第１の支持体の方向に移動可能であることによって、
前記第２のカッター刃が破砕すべき配管を圧縮する方向に向かって移動可能である、請求項４に記載の破砕器。
【請求項６】
前記破砕器が、さらに、ジャッキを保持する第３の支持板を有し、
前記第２の支持板が、前記ジャッキの加圧によって移動するように構成されている、請求項５に記載の破砕器。
【請求項１】
破砕すべき配管の長さ方向に垂直な方向に伸びるカッター刃の少なくとも２枚で前記配管の破砕すべき箇所を挟み、
前記カッター刃のうちの少なくとも１枚を、前記配管を圧縮する方向に移動する工程を経ることを特徴とする、硬質配管の破砕方法。
【請求項２】
前記カッター刃の刃先が直線状または凹円弧状の形状を有する、請求項１に記載の方法。
【請求項３】
前記カッター刃の移動をジャッキの加圧によって行う、請求項１または２に記載の方法。
【請求項４】
請求項１に記載の硬質配管の破砕方法に用いるための破砕器であって、
破砕すべき配管の破砕すべき箇所を囲繞し得る単一の部品からなる支持体または破砕すべき配管の破砕すべき箇所を介して対向配置し得る複数の部品からなる支持体と、
破砕すべき配管の長さ方向に垂直な方向に伸びるカッター刃の少なくとも２枚、
これらのカッター刃のうちの少なくとも１枚は前記支持体に固定して保持され、且つ
これらのカッター刃は前記配管の破砕すべき箇所を挟み得るように構成されている、とを有し、そして
前記カッター刃のうちの少なくとも１枚が、前記破砕すべき配管を圧縮する方向に向かって移動可能であることを特徴とする、前記破砕器。
【請求項５】
前記支持体が、
第１のカッター刃を保持する第１の支持板と
第２のカッター刃を保持する第２の支持板と
を有し、
前記第１の支持板と前記第２の支持板とは、破砕すべき配管の破砕すべき箇所を介して対向配置し得るように構成されており、そして
前記第２の支持板が、前記第１の支持体の方向に移動可能であることによって、
前記第２のカッター刃が破砕すべき配管を圧縮する方向に向かって移動可能である、請求項４に記載の破砕器。
【請求項６】
前記破砕器が、さらに、ジャッキを保持する第３の支持板を有し、
前記第２の支持板が、前記ジャッキの加圧によって移動するように構成されている、請求項５に記載の破砕器。
【図１】
【図２】
【図２】
【公開番号】特開２０１３−２０８７（Ｐ２０１３−２０８７Ａ）
【公開日】平成２５年１月７日（２０１３．１．７）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１１−１３２４８５（Ｐ２０１１−１３２４８５）
【出願日】平成２３年６月１４日（２０１１．６．１４）
【出願人】（５０４２７３９８８）株式会社ジャパンリフォーム (3)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２５年１月７日（２０１３．１．７）
【国際特許分類】
【出願日】平成２３年６月１４日（２０１１．６．１４）
【出願人】（５０４２７３９８８）株式会社ジャパンリフォーム (3)
【Ｆターム（参考）】
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