説明

碍子のコンテナ輸送用梱包具

【課題】長さが2.3m以下の縦長の磁器製碍子をコンテナ輸送する場合のコストを削減でき、しかも安全輸送ができる碍子のコンテナ輸送用梱包具を提供する。
【解決手段】コンテナの横幅に一致する長辺と、コンテナの奥行き寸法を等分した長さの短辺とを有するプラットフォーム1の上面内部に、水平置きされた複数本の碍子Wの中央部を支持する支持台2を複数設置し、プラットフォーム1の外周部には段積み用の支柱3を立設した磁器製の碍子の梱包具である。コンテナ内部にぴったりと収納でき、固定作業が不要となる。支柱3は折り畳み式とすることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長さが2.3m以下の縦長の磁器製碍子をコンテナ輸送するために用いられるコンテナ輸送用梱包具に関するものである。なお本明細書において碍子とは、中実碍子のみならず、碍管やブッシングをも含むものとする。
【背景技術】
【0002】
碍子を国外や遠隔地へ輸送するには主として貨物船が使用され、その場合には20フィートコンテナ、40フィートコンテナのような定尺のコンテナが用いられるのが普通である。輸送中の損傷から碍子を保護するとともに、フォークリフト等による荷役作業の便宜のために、碍子はプラットフォーム(パレット)を兼ねる木箱に収納されたうえ、コンテナ内部に積載されて輸送されていた。
【0003】
しかし近年になって木材の価格が上昇してきたことと、日本が松喰い虫の害虫汚染地域に指定されて木材の薬品処理等にコストがかかるようになってきたことなどの事情により、コンテナ輸送用梱包具も木箱から鉄骨構造の箱への置き換えが進行している。例えば本件出願人の特許文献1、2には、長さが5〜10mの大型ブッシングのための鉄骨製のコンテナ輸送用梱包具が開示されている。
【0004】
このようなコンテナ輸送用の梱包具は、コンテナへの積載効率をできるだけ高めるため、輸送対象物の外径寸法に合わせてできるだけ小さく設計されるのが常識であり、碍子のコンテナ輸送用梱包具も、従来は個々の碍子のサイズに合わせて個別設計がなされており、その大きさは様々であった。
【0005】
特許文献1、2に示されるような長さが5〜10mの大型ブッシングの場合には、コンテナの内部に複数本を収納することは物理的に不可能であるから、1本のブッシングが収納されたコンテナ輸送用梱包具をコンテナの中央に設置し、現場合わせ作業によってコンテナの内壁面との間にスペーサを取り付け、輸送中のずれを防止している。
【0006】
一方、長さが2.3m以下の中型から小型の碍子の場合にはコンテナの内部に多数本を積載することとなるが、この場合には個々の碍子のサイズに合わせて個別設計されたコンテナ輸送用梱包具をコンテナの内部に段積みしている。
【0007】
しかし碍子のサイズに合わせて個別設計されたコンテナ輸送用梱包具を隙間なくコンテナに積載して行くと、幅方向、奥行き方向ともに必ず空隙が生ずるため、やはり現場合わせ作業によってコンテナの内壁面との間にスペーサを取り付けて輸送中のずれを防止する必要があり、その作業コストは無視できないものであった。しかも碍子のサイズに合わせて個別設計されたコンテナ輸送用梱包具は必然的にその種類が多くなり、製作コストや管理コストも大きくなっていた。特に中型から小型の碍子の場合には出荷数量も多いため、コスト削減が強く求められていた。
【特許文献1】特開2007−30934号公報
【特許文献2】特開2007−30935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記した従来の問題点を解決し、長さが2.3m以下の縦長の磁器製碍子をコンテナ輸送する場合の現場合わせ作業を削減できるとともに、製作コストや管理コストも削減することができ、しかも従来品と同様に安全輸送ができる碍子のコンテナ輸送用梱包具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するためになされた請求項1の発明は、磁器製の碍子を定尺のコンテナに収納して輸送するための梱包具であって、コンテナの横幅に一致する長辺と、コンテナの奥行き寸法を等分した長さの短辺とを有するプラットフォームの上面内部に、水平置きされた複数本の碍子の中央部を支持する支持台を複数設置するとともに、プラットフォームの外周部には段積み用の支柱を立設したことを特徴とするものである。なお、請求項2に記載のように、支持台が凹状の鋼板からなり、プラットフォームの上面内部に、長辺または短辺と平行に配置されていることが好ましい。
【0010】
また請求項3に記載のように、プラットフォームの外周部に立設された段積み用の支柱の上面に天井枠と蓋枠とを設け、全体をボックス状とすることが好ましく、この場合には請求項4のように蓋枠に碍子の上面押え具を取付けたり、請求項5のように蓋枠に碍子の長手方向の移動を防止する押え具を取付けたりすることができる。
【0011】
またこのほか、請求項6に記載のようにプラットフォームの外周部に立設された段積み用の支柱を折り畳み可能な構造とし、折りたたみ状態で梱包具を返送できるようにすることもできる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の碍子のコンテナ輸送用梱包具は、複数本の碍子が積載されるプラットフォームの長辺をコンテナの横幅に一致させ、短辺をコンテナの奥行き寸法を等分した長さとしたので、コンテナの内部に隙間なく収納することができる。このため従来のようにコンテナ内部でのずれを防止するための現場合わせによる固定作業を省略することが可能となる。またプラットフォームの種類を削減できるので製作コストや管理コストも削減することができる。また段積みが可能であるので、コンテナへの積載効率も従来品と比較して遜色がない。
【0013】
なお、長さが2.3m以下の縦長の磁器製碍子のほとんどは重量が400kg以下と軽量であるため、請求項2のように支持台を凹状の鋼板からなるものとし、碍子の笠の部分で支えても輸送中に笠欠けを生ずることがない。ただしポリマー碍子の場合には笠の強度が弱いので、このような支え方は不適当である。
【0014】
請求項3のように全体をボックス状とすれば、輸送中に碍子が外部からの損傷を受け難くなる。この場合、請求項4のように蓋枠に碍子の上面押え具を取付けたり、請求項5のように蓋枠に碍子の長手方向の移動を防止する押え具を取付けたりすれば、支持台上で碍子がずれることを確実に防止することができる。
【0015】
また請求項6のように段積み用の支柱を折り畳み可能な構造とすれば、支柱を折りたたんでかさばらない状態で梱包具を返送できるので、コンテナ輸送用梱包具のリサイクルが可能となり、より大幅なコストダウンを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に図面を参照しつつ、本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1は第1の実施形態を示す分解斜視図である。このコンテナ輸送用梱包具は、長さが約2m、笠部直径が約50cmの磁器製の碍子Wを2本収納するためのものである。本発明のコンテナ輸送用梱包具は、プラットフォーム1と、支持台2と、段積み用の支柱3とを必須要件としている。
【0017】
まずプラットフォーム1は、鋼材により構成された長方形の底枠であり、フォークリフトによる荷役作業ができるように底面に適当数のすり材4を設けて、床面からの高さを確保している。本発明の特徴の一つはこのプラットフォーム1のサイズをコンテナのサイズに対応させて設定した点であり、プラットフォーム1の長辺aはコンテナの横幅に一致させてあり、プラットフォーム1の短辺bはコンテナの奥行き寸法を等分した長さとなっている。
【0018】
コンテナの内径寸法は国際的に略一定で、20フィートコンテナの場合には幅、奥行き、高さがそれぞれ2340mm、5920mm、2380mm前後である。また40フィートコンテナの場合には奥行きが上記の2倍である。この実施形態では20フィートコンテナを使用しており、図2に示すようにプラットフォーム1の長辺aはコンテナの横幅である2340mmとほぼ一致させた2310mmとしてある。またプラットフォーム1の短辺bはコンテナの奥行き寸法を4等分した1480mmとしてある。なお、上記の数字が厳密には一致しないのは、コンテナ内部にフォークリフトで積み込む場合の余裕が必要なためであり、本願の請求項はこの余裕分の誤差を含んで解釈されなければならない。この実施形態では短辺bをコンテナの奥行き寸法を4等分した長さとしたが、5等分した長さとしたり、3等分した長さとすることも可能である。
【0019】
このようにプラットフォーム1の長辺aと短辺bを設定しておけば、図2に示すようにコンテナの内部にぴったりと積載することができ、ずれる恐れがなくなるので、従来のようにコンテナ内部で現場合わせによる固定作業を行う必要がなくなる。
【0020】
プラットフォーム1の上面内部には、支持台2が設置されている。支持台2は図1に示すように水平置きされた複数本の碍子Wの中央部を支持するものであり、図1では2個の支持台2が設けられている。図3に示すように、支持台2はプラットフォーム1の横梁5上に左右2本のL型鋼材6と薄板鋼板7(図1では省略)を溶接したもので、碍子Wの中央部を支えるとともに、横方向への転がりを防止する形状としてある。なお碍子Wは樹脂製のクッション材12をL型鋼材6及び薄板鋼板7の上に配置後、支持台2の上に置かれる。
【0021】
支持台2の個数は碍子Wの本数に対応させるべきことはいうまでもなく、図4に示す第2の実施形態では3本の碍子Wを支持できるように3つの支持台2が設けられている。なお、支持台2は碍子Wの長手方向に2分割することも可能であって、必ずしも中央部に設ける必要はない。またこの実施形態では碍子Wをプラットフォーム1の長辺aと平行に支持するが、短辺bと平行に支持させることも可能である。
【0022】
プラットフォームの外周部には段積み用の支柱3が立設されている。この実施形態では、12本の支柱3が立設され、さらにそれらの上端に天井枠8と蓋枠9とを設け、全体をボックス状としている。このようにコンテナ輸送用梱包具をボックス状としておけば、プラットフォーム1のみの場合と比較して、碍子Wが輸送中や荷役中に損傷される危険性が小さくなる。なお、支柱3には垂直荷重に耐えるに十分な強度を持たせておき、コンテナ輸送用梱包具を多段に積み重ねることができるようにしておく。
【0023】
この実施形態では、蓋枠9の端部付近に、碍子Wの長手方向の移動を防止する押え具10が設けられている。これは蓋枠9の下方に向かって垂下し、碍子Wの端部または端部金具と接触して碍子Wの長手方向の移動を防止する機能を有するものである。なお、図1のコンテナ輸送用梱包具は蓋枠9以外はすべて溶接されているが、図8に示すように6面体を構成する各面をボルト接続または差込構造とし、解体及び組み立てが容易なコンテナ輸送用梱包具とすることもできる。このような構造とすれば、返送時に解体したうえで各面のパネルを積み重ねて輸送することが可能となり、輸送コストを引き下げることができる。
【0024】
図4に示す第2の実施形態も、上記した第1の実施形態と応用であるが、3本の碍子Wを積載できるようになっていることと、端面の押え具10に代えて、平板状の上面押え具11を使用した点が相違している。この上面押え具11も蓋枠9の下面に取り付けられたものであって、碍子Wの笠の上面を押さえ、摩擦によって長手方向の移動を防止するようにしたものである。
【0025】
以上に説明した第1、第2の実施形態のコンテナ輸送用梱包具は、碍子メーカーが客先に碍子Wを送り出す場合に使用されるもので、図2に示したようにコンテナの内部に隙間なく収納することができるから、従来のようにコンテナ内部でのずれを防止するための現場合わせによる固定作業を省略することができる。またプラットフォームを標準化してその種類を削減できるので製作コストや管理コストも削減することができる。また段積み用の支柱3を備えているのでコンテナ内部で段積みが可能である。
【0026】
本発明のコンテナ輸送用梱包具はこのような多くの利点を有するものであるが、上記した実施形態のようにボックス状とした場合には嵩張るために返送コストが高くなる。このため、客先で碍子Wを取り出した後は返送されず、廃棄処分される。次に述べる第3の実施形態はこの点をさらに改良したものである。
【0027】
図5以下は第3の実施形態を示す図であり、プラットフォーム1の寸法や支持台2は上記の実施形態と同様であるが、プラットフォーム1の外周部に立設された段積み用の支柱を折り畳み可能な支柱20とした点が相違している。この支柱20はプラットフォーム1上に溶接されたブラケット21に水平軸22によって折り畳み可能に支持されたもので、図5に示す直立状態と図6に示す折り畳み状態とを安定に維持できる機能を有する。なおこのような折り畳み構造自体は周知である。
【0028】
コンテナ内部の収納効率を高めるため、本発明のコンテナ輸送用梱包具は段積みされるのが普通である。この支柱20は直立状態を安定に維持できるため、図7のように複数段を積み重ねることができる。このため、支柱20の上端が嵌り込む脚部23をプラットフォーム1の下側に設けておくものとする。
【0029】
第3の実施形態のコンテナ輸送用梱包具は、客先で碍子Wを降ろした後は図6に示すように支柱20を折り畳むことができる。このためコンテナに多段積みして返送することができるから、使い捨てではなく何度も繰り返して使用することができる。これによって輸送コストの削減と、資源の有効利用を達成することができる。その他の利点は他の実施形態と同様であるから、説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1の実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】プレットフォーム寸法とコンテナ寸法との関係を示す平面図である。
【図3】支持台の拡大側面図である。
【図4】第2の実施形態を示す斜視図である。
【図5】第3の実施形態を示す斜視図である。
【図6】支柱を折り畳んだ状態の斜視図である。
【図7】段積みした状態の斜視図である。
【図8】第1の実施形態の変形例を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1 プラットフォーム
2 支持台
3 段積み用の支柱
4 すり材
5 横梁
6 L型鋼材
7 薄板鋼板
8 天井枠
9 蓋枠
10 押え具
11 上面押え具
12 クッション材
20 折り畳み可能な支柱
21 ブラケット
22 水平軸
23 脚部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁器製の碍子を定尺のコンテナに収納して輸送するための梱包具であって、コンテナの横幅に一致する長辺と、コンテナの奥行き寸法を等分した長さの短辺とを有するプラットフォームの上面内部に、水平置きされた複数本の碍子の中央部を支持する支持台を複数設置するとともに、プラットフォームの外周部には段積み用の支柱を立設したことを特徴とする碍子のコンテナ輸送用梱包具。
【請求項2】
支持台が凹状の鋼板からなり、プラットフォームの上面内部に、長辺または短辺と平行に配置されていることを特徴とする請求項1記載の碍子のコンテナ輸送用梱包具。
【請求項3】
プラットフォームの外周部に立設された段積み用の支柱の上面に天井枠と蓋枠とを設け、全体をボックス状としたことを特徴とする請求項1記載の碍子のコンテナ輸送用梱包具。
【請求項4】
蓋枠に碍子の上面押え具を取付けたことを特徴とする請求項3記載の碍子のコンテナ輸送用梱包具。
【請求項5】
蓋枠に碍子の長手方向の移動を防止する押え具を取付けたことを特徴とする請求項3記載の碍子のコンテナ輸送用梱包具。
【請求項6】
プラットフォームの外周部に立設された段積み用の支柱を折り畳み可能な構造としたことを特徴とする請求項1記載の碍子のコンテナ輸送用梱包具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−161241(P2009−161241A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−3053(P2008−3053)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】