説明

確率的均衡配分における交通量依存諸量の集計データ生成方法、および装置

【課題】 確率的利用者均衡配分において配分後の交通量に依存する諸量を所定の集計対象について集計することを可能とする集計データ生成方法、および装置の提供。
【解決手段】 集計処理部30において、配分率決定部311は、配分処理部20の処理結果に基づき、繰り返し段階毎の配分率を求め、後退処理部312に出力する。後退処理部312は、当該配分率を用いて交通量を修正し、修正した交通量を、特定の着目点から前記起点ノードに向かう後退処理により配分する処理を実行する。前進処理部313は、後退処理部312が出力する配分交通量をパターンとして用い、特定の着目点から前記終点ノードに向かう前進処理により配分する処理を実行する。集計部314は、後退処理部312のみ、または後退処理部312および前進処理部313の両方を制御して、後退処理のみまたは後退処理と前進処理の両方を繰り返し段階毎に実行させ、その結果を集計テーブルに累加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、確率的均衡配分における交通量依存諸量の集計データを生成する方法、および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交通量推計の実務では、経路交通量とともに交通の内訳(リンク交通量のOD内訳、リンク別平均トリップ長、ノードの方向別交通量等)を示すことが必要である。従来から交通量の推計には、地域間の交通量をマトリックスで与えるOD表を分割し、リンクコストを更新しながらOD交通量(ある起点からある終点へ向かう交通量に対応したOD表中の各エレメント)を最短経路に順次負荷する分割配分が広く用いられてきた。しかし、分割配分では、分割条件(分割回数、比率等)によって推計結果が異なるという問題があり、均衡配分を用いる推計法の検討がすすめられている(例えば、非特許文献1、非特許文献2参照)。
【非特許文献1】「道路交通需要予測の理論と適用 第I編 利用者均衡配分の適用に向けて」 社団法人土木学会 土木計画学研究委員会 交通需要予測技術検討小委員会編、丸善株式会社、2003年8月31日
【非特許文献2】「交通ネットワークの均衡配分−最新の理論と解法−」 社団法人土木学会 土木計画学研究委員会編、丸善株式会社 1998年3月20日
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
均衡配分の中でも、確定的な利用者均衡配分は、全ての利用者は常に旅行時間最小化という同一の評価基準に基づいて行動し、かつ利用者は利用経路の完全な旅行時間情報を得ていることを前提とした交通均衡配分モデルであり、確定的な利用者均衡配分によれば、路線交通量の均衡解を求めることができるが、経路交通量には一意性がない。従って、確定的な利用者均衡配分の結果を集計できたとしても、経路の唯一性が保障されないので、交通の内訳の正当性を主張し得ないという問題点がある。
一方、確率的利用者均衡配分は、もはやどの利用者も経路を変更することによって自己の旅行時間をそれ以上短縮することはできないと信じている状態を考える交通均衡配分モデル、換言すれば、利用者が認識している各経路の旅行時間は確定的なものではなく、確率的に(ランダムに)変動する誤差を含んでいると考えるモデルであり、この確率的利用者均衡配分によれば、理論上、経路交通量が一意的であり、従って路線交通量も唯一解である。しかしながら、確率的利用者均衡配分では、OD間の複数の経路について、各経路の所要時間に応じて交通量が確率的に分布するため、また、実際の交通ネットワークでは経路の個数が膨大であるため、経路を列挙することが困難である。このため、従来の配分手法に用いられている集計手法をそのまま適用して、経路交通量に関係する交通の内訳、例えば、リンク交通量のOD内訳、リンク別平均トリップ長やノードの方向別交通量等を求めることができない。すなわち、確率的利用者均衡配分のための新たな集計方法の開発が必要である。
【0004】
そこで本発明の目的は、確率的利用者均衡配分において配分後の交通量に依存する諸量を所定の集計対象について集計することを可能とする集計データ生成方法、および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る確率的均衡配分における交通量依存諸量の集計データ生成方法の発明は、交通ネットワークに関するOD交通量を、一つの起点ノードから複数の終点ノードに至る複数の経路に確率的に均衡配分し、配分後の交通量に依存する諸量を所定の集計対象について集計する、集計データ生成方法であって、前記OD交通量を入力し、該入力されたOD交通量を、最短経路の遠い順にかつ全ての前記終点ノード側から前記起点ノード側に向かう後退処理により確率的に均衡配分する処理を複数回繰り返し、繰り返し段階毎の配分された交通量の近似解を求めるステップと、前記繰り返し段階毎の配分率を求めるステップと、前記配分率を用いて修正した交通量を、特定の着目点から前記起点ノードに向かう後退処理により配分する処理を、前記繰り返し段階毎に実行し、その結果をあらかじめ設定した集計条件に従い累加することにより、配分交通量に依存する諸量の集計されたデータを生成し、出力するステップと、を含むことを特徴とする。
【0006】
また、請求項2に係る確率的均衡配分における交通量依存諸量の集計データ生成方法の発明は、交通ネットワークに関するOD交通量を、一つの起点ノードから複数の終点ノードに至る複数の経路に確率的に均衡配分し、配分後の交通量に依存する諸量を所定の集計対象について集計する、集計データ生成方法であって、前記OD交通量を入力し、該入力されたOD交通量を、最短経路の遠い順にかつ全ての前記終点ノード側から前記起点ノード側に向かう後退処理により確率的に均衡配分する処理を複数回繰り返し、繰り返し段階毎の配分された交通量の近似解を求めるステップと、前記繰り返し段階毎の配分率を求めるステップと、前記配分率を用いて修正した交通量を、特定の着目点から前記起点ノードに向かう後退処理により配分した後、当該後退処理により配分された配分交通量をパターンとして用いて、特定の着目点から前記終点ノードに向かう前進処理により配分する処理を、前記繰り返し段階毎に実行し、その結果をあらかじめ設定した集計条件に従い累加することにより、配分交通量に依存する諸量の集計されたデータを生成し、出力するステップと、を含むことを特徴とする。
【0007】
また、請求項3に係る集計データ生成方法の発明は、請求項1または2に記載の方法において、前記着目点が、交通ネットワークに含まれる特定のノードまたはリンクであることを特徴とする。
【0008】
本発明の好ましい態様である、請求項4に係る確率的均衡配分における交通量依存諸量の集計データ生成方法の発明は、交通ネットワークに関するOD交通量を、一つの起点ノードから複数の終点ノードに至る複数の経路に確率的に均衡配分し、配分後の交通量に依存する諸量を所定の集計対象について集計する、集計データ生成方法であって、前記OD交通量を入力し、一つの起点ノードから複数の終点ノードの各々に至る最短経路探索の解に基づいて各ノードに接続される各リンクの選択確率を求め、前記入力されたOD交通量を、前記選択確率を用いて、最短経路の遠い順にかつ全ての前記終点ノード側から前記起点ノード側に向かう後退処理により配分し、リンク交通量の近似解を求める第1のステップと、第1のステップで求めた前記近似解を修正しながら第1のステップを収束するまで複数回繰り返し、繰り返し段階毎の前記リンクの選択確率と配分後のリンク交通量の近似解とを求める第2のステップと、前記繰り返し段階毎の配分率を求める第3のステップと、前記配分率を用いて修正した交通量を、前記リンクの選択確率を用いて、特定の着目点から始めて前記起点ノードから遠い順に当該起点ノードまで後退処理により配分し、その結果をあらかじめ設定した集計条件に従い集計用テーブルに累加する第4のステップと、第4のステップを前記繰り返し回数分繰り返し、配分交通量に依存する諸量の集計されたデータを生成し、出力する第5のステップと、を含むことを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明の好ましい別の態様である、請求項5に係る確率的均衡配分における交通量依存諸量の集計データ生成方法の発明は、交通ネットワークに関するOD交通量を、一つの起点ノードから複数の終点ノードに至る複数の経路に確率的に均衡配分し、配分後の交通量に依存する諸量を所定の集計対象について集計する、集計データ生成方法であって、前記OD交通量を入力し、一つの起点ノードから複数の終点ノードの各々に至る最短経路探索の解に基づいて各ノードに接続される各リンクの選択確率を求め、前記入力されたOD交通量を、前記選択確率を用いて、最短経路の遠い順にかつ全ての前記終点ノード側から前記起点ノード側に向かう後退処理により配分し、リンク交通量の近似解を求める第1のステップと、第1のステップで求めた前記近似解を修正しながら第1のステップを収束するまで複数回繰り返し、繰り返し段階毎の前記リンクの選択確率と配分後のリンク交通量の近似解とを求める第2のステップと、前記繰り返し段階毎の配分率を求める第3のステップと、前記配分率を用いて修正した交通量を、前記リンクの選択確率を用いて、特定の着目点から始めて当該起点から遠い順に前記起点ノードまでの後退処理により配分する第4のステップと、第4のステップで求めた配分交通量をパターンとして用い、特定の着目点から始めて前記起点ノードに近い順に前記終点ノードまでの前進処理により配分する第5のステップと、第5ステップの処理結果をあらかじめ設定した集計条件に従い集計用テーブルに累加する第6のステップと、第4のステップから第6のステップまでの処理を前記繰り返し回数分繰り返し、配分交通量に依存する諸量の集計されたデータを生成し、出力する第7のステップと、を含むことを特徴とする。
【0010】
また、請求項6に係る集計データ生成方法の発明は、請求項4または5に記載の方法において、前記繰り返し段階毎の配分率が、第2のステップにおいて求められる繰り返し段階毎のステップサイズに基づき決定されることを特徴とする。
【0011】
さらに、請求項7に係る集計データ生成方法の発明は、請求項4または5に記載の方法において、前記着目点が、交通ネットワークに含まれる、起点ノード以外の特定のノードまたはリンクであることを特徴とする。
【0012】
また、請求項8に係る集計データ生成方法の発明は、請求項4に記載の方法において、前記第4のステップを少なくとも1つの特定のODペア交通量について実行し、あらかじめ指定したリンクのOD内訳を集計することを特徴とする。
【0013】
さらに、請求項9に係る集計データ生成方法の発明は、請求項5に記載の方法において特定の一つのリンクを前記特定の着目点に設定することを特徴とする。
【0014】
本発明の別の局面による、請求項10に係る確率的均衡配分における交通量依存諸量の集計データ生成装置の発明は、交通ネットワークに関するOD交通量を、一つの起点ノードから複数の終点ノードに至る複数の経路に確率的に均衡配分し、配分後の交通量に依存する諸量を所定の集計対象について集計する、集計データ生成装置であって、OD交通量を入力する入力手段と、前記入力されたOD交通量を、最短経路の遠い順にかつ全ての前記終点ノード側から前記起点ノード側に向かう後退処理により確率的に均衡配分する処理を複数回繰り返し、繰り返し段階毎の配分された交通量の近似解を求める配分処理手段と、前記繰り返し段階毎の配分率を求める配分率決定手段と、前記配分率を用いて修正した交通量を、特定の着目点から前記起点ノードに向かう後退処理により配分する処理を実行する後退処理手段と、前記後退処理手段を制御して、前記繰り返し段階毎に、後退処理を1回または複数回実行させ、その結果をあらかじめ設定した集計条件に従い集計テーブルに累加することにより、配分交通量に依存する諸量の集計されたデータを生成する集計手段と、前記集計されたデータを出力する出力手段と、を含むことを特徴とする。
【0015】
さらに、本発明の別の局面による、請求項11に係る確率的均衡配分における交通量依存諸量の集計データ生成装置の発明は、交通ネットワークに関するOD交通量を、一つの起点ノードから複数の終点ノードに至る複数の経路に確率的に均衡配分し、配分後の交通量に依存する諸量を所定の集計対象について集計する、集計データ生成装置であって、前記OD交通量を入力する入力手段と、前記入力されたOD交通量を、最短経路の遠い順にかつ全ての前記終点ノード側から前記起点ノード側に向かう後退処理により確率的に均衡配分する処理を複数回繰り返し、繰り返し段階毎の配分された交通量の近似解を求める配分処理手段と、前記繰り返し段階毎の配分率を求める配分率決定手段と、前記配分率を用いて修正した交通量を、特定の着目点から前記起点ノードに向かう後退処理により配分する処理を実行する後退処理手段と、前記後退処理手段により配分された配分交通量をパターンとして用いて、特定の着目点から前記終点ノードに向かう前進処理により配分する処理を実行する前進処理手段と、前記後退処理手段および前記前進処理手段とを制御して、前記繰り返し段階毎に、後退処理およびその後の前進処理を1回または複数回実行させ、その結果をあらかじめ設定した集計条件に従い集計テーブルに累加することにより、配分交通量に依存する諸量の集計されたデータを生成する集計手段と、前記集計されたデータを出力する出力手段と、を含むことを特徴とする。
【0016】
本発明者は、確率的利用者均衡配分の配分結果を集計処理する方法を鋭意検討した結果、所定の後退処理を単独で、あるいは所定の後退処理と前進処理とを組合せて用いることにより、確率的利用者均衡配分における各種の交通量依存諸量の集計データを生成することが可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0017】
ここで後退処理とは、OD交通の終点側から起点側に向けてリンク交通量を配分する処理をいう。好ましい後退処理の具体的な一例として、後述するDialのアルゴリズムの後退処理を用い、集計処理を行うことができる。
【0018】
一方、前進処理とは、交通の流れと同じ起点側から終点側に向けてリンク交通量を配分する処理をいう。本発明においては、先行して行われる後退処理による配分結果をパターンとして用いること、および後述する適切な開始点および順番に従い前進処理を行うことで、後退処理と前進処理を組み合わせた集計処理を可能とした。
【0019】
図1は、確率的利用者均衡配分の解法として知られているDialのアルゴリズムの基本フローを説明する図である。図示のとおり、Dialのアルゴリズムは、起点rから全てのノードmへの最小交通費用c(m)を計算し、かつ全リンクについてリンク尤度L[i→j]を計算するステップ(Step0の処理)、起点rから近い順(c(m)の昇順)に、リンクウェイトW[m→j]を計算するステップ(Step1の処理)、および起点rから遠い順(c(m)の降順)に、各ノードmに流入する交通量ximを計算するステップ(Step2の処理)を含んでいる。ここで、mは各処理において着目しているノード、iはその上流側のノード、jはその下流側のノードをそれぞれ表す。また、Step2の処理におけるqrmは着目点mがセントロイドの場合、そこに集中する交通である。また、リンクウェイトとは、あるノードが選ばれたという条件下で、それに接続する各リンクが選ばれる確率に比例した値を意味する。
【0020】
このようなDialのアルゴリズムによれば、あるノードから他の全てのノードに至る経路について、流動する交通量を一度に配分することが出来る(上記Step2の処理参照)。これは、後述するように最短経路と副経路が樹形状に分布することと、それに基づきDialのアルゴリズムが構成されていることによる。一方、Dialのアルゴリズムによれば、1つのODペアについてのみ交通量を配分することも可能である。本発明における集計処理の一実施態様では、基本的手法の1つとして、1つのODペアについてのみ交通量を配分する処理を利用する。これにより、特定のリンクのOD内訳を集計することができる。
【0021】
従来の分割配分と確定的な利用者均衡配分の配分過程は、後退処理による一本の最短経路上への交通量の配分であり、当該最短経路上を終点から起点に向かい一本道に交通量を累加することで、各種諸量を集計することができる。これに対し、確率的利用者均衡配分においては、交通量の配分結果は、図2のイメージ図に示すように、起点から終点までの最短経路と副経路が樹形状に分布して表現されるものであるため、集計には新たな手法を開発する必要がある。
【0022】
確率的利用者均衡配分の、例えばDialのアルゴリズムにより配分交通量を求める過程は、あるノードから起点ノードに向かう後退処理により、最短経路と副経路(最短経路よりは幾分か長い経路で、交通量を分配する対象となる経路)にリンクウェイトの割合で交通量を分配する処理を含んでいる。
図3は、かかる後退処理により交通量を配分する例のイメージ図である。図3において、ノードAの方がノードBよりも起点(図示せず)から遠いので、まずノードAに関し、ノードAから流出する60の交通量(10+20+30)を、所定のリンクウェイトの割合で上流側の2つのリンクに25,35とそれぞれ分配する。次いで、ノードAよりも起点に近いノードBに関し、ノードBから流出する70の交通量(45+25)を、所定のリンクウェイトの割合で上流側の2つのリンクに30,40とそれぞれ分配する。このようにして、Dialの後退処理のアルゴリズムにおいては、全てのノードについて、起点から遠い順に、下流側に流出する交通量を合計し、上流側のリンクにリンクウェイトの割合で分配する処理を行っている。そこで、確率的利用者均衡配分の集計処理においても、配分処理で用いた後退処理を応用すると、終点側から起点側に向かい遡ることが可能であり、起点から遠い順に起点に向けて交通量を配分する後退処理の結果を累加することで、各種諸量を集計できる。
なお、確率的利用者均衡配分の集計処理において、集計の目的に応じて後退処理を複数回適用してもよいのは勿論である。
【0023】
次に、本発明に係る集計方法に用いられる前進処理は、特定の着目点から前記終点ノードに向かう前進処理により配分する処理である。実際の交通の流れでは、ある特定の区間(たとえば特定のリンク、ノード(交差点)、複数のノード(交差点)を集約したグループ等を指す。以下これらを「着目点」といい、特に特定のリンクを指す場合には「着目リンク」ともいう。)を流れた交通が目的地に至るのを集計するのは、当該区間を通過した車両を追跡すればよいので自然である。しかし、確率的利用者均衡配分の配分過程の経路は、一般的にそれとは逆向きの終点側から起点に向かうように規定されており、Dialのアルゴリズムによる配分過程も終点側から起点に向かう順に後退処理している(DialのアルゴリズムにおけるStep2の処理を参照)。
【0024】
配分計算の結果を「ある区間を利用する交通」と表現した場合には、当然それに先立つ何らかの配分を行っている。この先行する配分を利用することで、前進処理により着目点から終点に至る経路を求めることができる。一般的に、着目リンクを利用する交通は、先行する後退処理によって配分した交通の一部分である。そこで、図4にイメージ図で示すように、前進処理では、この先行する後退処理の配分結果をパターンとして用いている。
なお、確率的利用者均衡配分の集計処理において、集計の目的に応じて後退処理と前進処理とを複数回適用してもよいのは勿論である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、所定の後退処理を単独で、あるいは所定の後退処理と前進処理とを組合せて用いることにより、確率的利用者均衡配分における各種の交通量依存諸量の集計データを生成することが可能となる。また、実用規模の交通ネットワークに対して、確率的利用者均衡配分の集計を行い、十分に許容できる時間内で処理を完了させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の好ましい実施態様について図面を参照して詳しく説明する。なお、以下に記述する実施の形態は例示であって、本発明はこれらに限定されるものではない。
図5は、本発明に係る集計データ生成装置の一例の基本構成を示すブロック図である。図5において、集計データ生成装置100は、入力部10と、配分処理部20と、集計処理部30と、出力部40とから構成されている。さらに、集計処理部30は、配分率決定部311と、後退処理部312と、前進処理部313と、集計部314とを備えている。
【0027】
入力部10は、後述する確率的利用者均衡配分を配分処理部20で実行させるために必要なデータと、同様に後述する後退処理(または後退処理および前進処理)を用いた集計処理を集計処理部30で実行させるために必要なデータとを入力する。
入力部10から入力される前者のデータの例を挙げれば、(1)OD表、(2)配分の制御データ(ゾーン数、車種数、収束判定条件等)、(3)ネットワークデータ(リンクデータ(両端ノード、距離、パフォーマンス関数コード等)、ゾーン中心ノード番号(各ゾーンに1つあって、ゾーンに発着する交通をネットワークに対応させるノード番号)、パフォーマンス関数(交通量に応じてそのリンクを通過するのに要する時間を求める関数)のパラメータ、方向規制データ(3ノード列で走行規制する方向を指定するデータ)等)である。
【0028】
図6は、入力部10から入力されるOD表のイメージ図を示す。OD表は、ある起点から他の終点に至る交通量を、マトリックスで与えるものである。なお、図6では、一例として発ゾーン(起点ノードに相当)と着ゾーン(終点ノードに相当)との間の交通量を規定している。
【0029】
また、入力部10から入力される後者のデータの例としては、集計の制御データ(集計対象リンクを指定するデータ、集計対象領域を指定するデータ等)であり、当該集計の制御データは、後述する集計処理部30における集計条件をあらかじめ設定する。
【0030】
配分処理部20は、入力部10から入力されるOD表、配分の制御データ、ネットワークデータに基づき、OD交通量を、最短経路の遠い順にかつ全ての前記終点ノード側から前記起点ノード側に向かう後退処理により確率的に均衡配分する処理を実行する。この処理が所定の収束条件を満たすまで複数回繰り返されることにより、繰り返し段階毎の配分された交通量(以下「配分交通量」ともいう)の近似解が求められる。配分処理部20は、処理結果として、後述する繰り返し段階毎の、リンクの選択確率すなわちリンクウェイト、配分交通量の近似解、およびステップサイズを出力する。
【0031】
集計処理部30において、配分率決定部311は、配分処理部20における処理結果(具体的にはステップサイズ)に基づき、繰り返し段階毎の配分率を求め、後退処理部312に出力する。後退処理部312は、配分率決定部311が出力する配分率を用いて交通量を修正し、修正した交通量を、特定の着目点から起点ノードに向かう後退処理により配分する処理を実行する。また、前進処理部313は、後退処理部312によって配分された配分交通量を後退処理部312から取得し、当該配分交通量をパターンとして用いて、特定の着目点から前記終点ノードに向かう前進処理により配分する処理を実行する。さらに、集計部314は、後退処理部312のみ、または後退処理部312および前進処理部313の両方を制御して、前記繰り返し段階毎に、後退処理のみまたは後退処理と前進処理の両方を1回または複数回実行させ、その結果をあらかじめ設定した集計条件に従い図示しない集計テーブルに累加する。なお、ここでの集計部314の動作は、入力部10で入力された集計条件に従う。
【0032】
以上により、集計部314において配分交通量に依存する諸量に関する所望の集計されたデータ(集計済みデータ)が生成され、出力部40に出力される。
なお、集計データ生成装置100は、バスによって相互接続されたCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access
Memory)、記憶装置、入力装置、および出力装置(例えばディスプレイ等の表示装置)を備えた通常のパーソナルコンピュータによって構成することができることは言うまでもない。かかるパーソナルコンピュータのハードウェア構成自体は自明であるのでその図示は省略するが、本実施態様に即して簡潔に説明すると、パーソナルコンピュータの入力装置は、集計データ生成装置100の入力部10に、パーソナルコンピュータのCPU、RAM、および記憶装置は、集計データ生成装置100の配分処理部20、および集計処理部30に、パーソナルコンピュータの出力装置は、集計データ生成装置100の出力部40にそれぞれ相当する。パーソナルコンピュータの記憶装置には、前記配分処理部20および後退処理部30における各処理をパーソナルコンピュータに実行させるためのメインプログラム、および集計用テーブルを格納させる。そして、パーソナルコンピュータのCPUは、記憶装置に格納されたメインプログラムを読み出し、RAMに設けられたワークエリアに展開して当該プログラムを実行することにより、集計データ生成装置100の各部を駆動制御する。また、パーソナルコンピュータのRAMは、CPUによって実行されるメインプログラム、および当該プログラムに従い記憶装置から読み出され、更新され、あるいは生成されるデータ等を一時的に格納するワークエリアを形成する。
なお、集計データ生成装置100をパーソナルコンピュータによって構成する場合には、出力部40をインターフェースとして、出力結果を、別途パーソナルコンピュータに接続されたディスプレイ(図示せず)に所定形式で表示させ、プリンタ(図示せず)に所定形式で印刷させ、あるいは外部記憶媒体(図示せず)に記憶させることができる。
【0033】
集計部314は、集計を目的としている各種の配分交通量に依存する諸量毎に、所定の集計サブプログラムを備えることができる。一例として、特定のリンクのOD内訳およびトリップ長分布を求めるサブプログラム、スクリーンのOD内訳およびトリップ長分布を求めるサブプログラム、地域関連交通の集計プログラム、ランプ間のOD表集計プログラム、特定路線利用交通の経路集計プログラム、路線パターンの集計プログラム等をあらかじめ作成して記憶装置(図示せず)に格納しておき、CPU(図示せず)が集計目的に応じた適切なサブプログラムを記憶装置(図示せず)から選択して読み出し、実行するようにしてもよい。
【0034】
以上のように構成される集計データ生成装置100を用いて行われる本発明の集計方法の複数の実施態様について、図面を参照して以下に詳しく説明する。なお、本実施態様における、配分処理部20および集計処理部30の動作に関連して、本実施態様の方法が前提としている確率的利用者均衡配分の解法であるDialのアルゴリズムに再び言及し、利用者均衡配分の解法であるFrank-Wolfe法について予備的に言及する。
【0035】
再び図1を参照して、Dialのアルゴリズムの基本フローは、起点rから全てのノードmへの最小交通費用c(m)を計算し、かつ全リンクについてリンク尤度L[i→j]を計算するステップ(Step0の処理)、起点rから近い順(c(m)の昇順)に、リンクウェイトW[m→j]を計算するステップ(Step1の処理)、および起点rから遠い順(c(m)の降順)に、各ノードmに流入する交通量ximを計算するステップ(Step2の処理)を含んでいる。Dialのアルゴリズムの基本フローのうち、Step2の後退処理、すなわちノードから流出する交通をリンクウェイトの割合で上流側リンクに分配する処理が、集計処理部30における集計処理に重要な役割を果たす。
【0036】
図7はDialのアルゴリズムのStep2の後退処理の説明図、図8はDialのアルゴリズムによる交通量配分のイメージを示す表である。両図において、i,m,jはノード番号、x,Xはリンク交通量、qrmはOD交通量、W[]はリンクウェイトをそれぞれ表す。図7の例で、DialのアルゴリズムのStep2の後退処理において、ノードmに着目して、下流側のリンクの交通量Xmj1、Xmj2、Xmj3を上流側リンクにリンクウェイトの割合W[i1→m]、W[i2→m]で分配する。図1に示したStep2の定義式から分かるように下流側に流れる交通を上流側のリンクに分配する比率(イとイ’、ロとロ’、ハとハ’、ニとニ’の比率)は同じである。着目ノードmがゾーンのセントロイドのときは、これも上流側リンクにリンクウェイトの割合W[i1→m]、W[i2→m]で分配する。
【0037】
交通ネットワークの均衡配分は、数理最適化問題としてFrank-Wolfe法で数値的に解くことができる。このことは、非特許文献1に確定的な利用者均衡配分の解法として紹介されている。確率的利用者均衡配分における交通量の配分処理にもFrank-Wolfe法を用いることができる。また、配分処理で求めた結果を利用してさらに集計処理を行う場合にも、Frank-Wolfe法に従い、修正された各段階のリンク交通量を用いることができる。Frank-Wolfe法を用いる均衡配分では、所定の目的関数について関数値を降下させる方向を指すように決定される降下方向ベクトルと、一次元探索において降下できる距離を示すステップサイズとを決定し、リンク交通量ベクトルを修正する。本実施態様では、配分処理部20にこの手法を実行させている。
【0038】
(第1の実施形態)
次に、集計データ生成装置100を用いて行われる第1の実施形態に係る集計方法について、図面を参照して順に説明する。本実施態様では、集計処理部30が、後退処理のみを実行し集計を行う例について説明する。
【0039】
まず、集計データ生成装置100の配分処理部20が実行する配分処理について、フローチャートを用いて以下に説明する。なお、配分処理部20を動作させる前提として、OD表、配分の制御データ、ネットワークデータ等の配分処理に必要な外部データが、入力部10から入力されているものとする。
【0040】
図9は、配分処理部20が実行する配分処理の一例を示すフローチャートである。
まず、初期値として、均衡解が収束するまでの繰り返し回数nを0、全リンク交通量を0に設定する(StepS11)。次いで、配分処理部20は、初期リンクコストtij(0)=tij(0)を求める(StepS12)。
【0041】
配分処理部20は、StepS12において求めた初期リンクコストtij(0)に対し、Dialのアルゴリズムに従い、入力部10から入力された全OD交通量を配分し、リンク交通量xij(0)を求める(StepS13)。Dialのアルゴリズムによる交通量配分については、既に図1、図7および図8を参照して説明したので、以下詳しい説明を省略する。
【0042】
次いで配分処理部20は、上記StepS13で求めたリンク交通量xij(0)に基づき、リンクコストtij(n)を修正する(StepS14)。ここで、初期リンク交通量を求めた直後の最初の演算では、tij(0)=tij(xij(0))を求めることを意味する。
【0043】
次いで配分処理部20は、Step14で修正されたリンクコストに対し、Dialのアルゴリズムに従い、全OD交通量を配分し、リンク交通量yij(n)を求める(StepS15)。ここでも、初期リンク交通量を求めた直後の最初の演算では、yij(0)を求めることを意味する。
【0044】
次いで配分処理部20は、dij(n)=yij(n)−xij(n)の式により降下方向ベクトルを求める。降下方向ベクトルは後述するStepS18の演算に用いられる。StepS17では降下方向ベクトルのステップサイズα(n)を決定する(StepS16)。ここでも、初期リンク交通量を求めた直後の最初の演算では、α(0)を求めることを意味する。
【0045】
次いで配分処理部20は、xij(n+1)=xij(n)+α(n)dij(n)の式によりリンク交通量を修正する(StepS18)。この修正過程では、xij(n+1)を所定の目的関数に代入し当該目的関数を最小にするステップサイズ、リンク交通量が求められる。
【0046】
StepS11からStepS18までの一連の処理で1段階の処理が終了する。こうして求められたステップサイズ、リンク交通量は、次のStepS19の収束条件を満足しない限り、各段階の近似解である。
【0047】
続いて配分処理部20は、xij(n+1)、xij(n)を用いて、あらかじめ設定した収束条件を満足するかを判定する(StepS19)。収束条件を満足していない場合(StepS19;NO)、n=n+1としてStepS14へ戻る(StepS20)。収束条件を満足する場合(StepS19;YES)、処理を終了する。
【0048】
このようにして、配分処理部20は、所定の収束条件を満足するまでStepS14〜StepS18の配分処理を繰り返す。なお、収束条件は、装置の演算時間等を考慮してあらかじめ設定した繰り返し回数の上限を満たすこと、近似解の変化量がある定数以下となること等の条件を複数組み合わせて設定することができ、例えば、Frank-Wolfe法を用いた確定的な均衡配分の配分処理でも用いられている収束条件を同様に用いても良い。
【0049】
以上の配分処理を配分処理部20が終了した時点で、リンク交通量の収束した近似解(均衡解)が最終的に求まるが、その過程で、繰り返しの度に、その配分段階のリンクウェイトがStepS15において求められ(DialのアルゴリズムのStep1参照)、また、繰り返しの度に、その配分段階のステップサイズ、およびリンク交通量の近似解(以下「配分交通量」ともいう)がStepS18において求められている。これらは後述する集計処理部30での集計処理にも用いられるため、繰り返しの各段階において、StepS15、StepS18の各ステップの直後に別個に、あるいはStepS18の直後もしくはStepS19の収束判定後にこれらをまとめて、図示しない記憶装置に記憶させておく。
本実施態様では、配分処理において求めたステップサイズを、集計処理において後述する配分率を求めるために用いている。また、本実施態様では、配分処理において求めた配分交通量、リンクウェイトを、集計のための各段階kの状態を再現するために用いることができる。ここで状態とは、具体的にはリンク交通量であり、特に配分交通量は、集計処理において確率的均衡配分の後退処理が可能な状態を作り出すために用いることができる。例えば、集計処理においては、再現されたリンク交通量を用いて、各リンクのパフォーマンス関数を用いて各リンクの所要時間(リンク旅行時間)を求めたり、そのようにして求めたリンクの所要時間を更に用いて最短経路の旅行時間(OD間旅行時間)を求めたりすることも、勿論可能である。
なお、リンクウェイトは配分交通量から別途算出することも可能であるため、配分処理において求めたリンクウェイトを記憶装置に記憶させること(したがって、後述する集計処理において記憶装置から読み出すこと)は必ずしも必要ではなく、集計処理の段階において配分交通量を用いて個別に算出するようにしても良い。
さらに、後述する集計処理においては、前述した配分処理において求めた各段階の降下方向ベクトルおよびステップサイズを用いて、ある段階の状態から次の段階の状態すなわち修正されたリンク交通量を再現しても良いし、また、配分処理の結果を用いて各段階の状態を再現する代わりに、同様の配分処理を集計処理の一部分として再度実行することにより次の段階の状態を再現するようにしても良い。
このように、後述の集計処理では配分処理の各段階の状態を再現することが必要であるが、その再現方法としては種々の方法を適宜用いることが可能であり、いかなる再現方法を採用するかによって本発明が限定されないことは言うまでもない。
【0050】
次に、第1の実施態様において、集計データ生成装置100の配分処理部30が実行する集計処理の一例について、フローチャートを用いて以下に説明する。なお、集計処理部30を動作させる前提として、集計の制御データ(集計対象リンクを指定するデータ、集計対象領域を指定するデータ等)等の集計処理に必要な外部データが、入力部10から入力されているものとする。
【0051】
図10は、第1の実施態様において、集計処理部30が実行する基本的な集計処理の一例を示すフローチャートである。
まず、集計条件を設定する(StepS21)。集計条件は、如何なる交通量依存諸量の集計データを求めるか、ネットワーク内のどの地域、ゾーン、あるいはリンクを集計対象とするか等を設定する。
【0052】
次いで、集計処理部30は、上記の配分処理において求めておいた各段階kのステップサイズα(k)、配分交通量xij(k)、およびリンクウェイトW(k)[i→j]を、図示しない記憶装置から読み出す(StepS22)。
【0053】
次いで、配分率決定部311は、読み出した各段階kのステップサイズα(k)を用いて、Frank-Wolfe法での各繰り返しステップにおいて配分する交通量の配分率P(k)を求める(StepS23)。配分率P(k)は、各ステップの降下ベクトルのステップサイズをα(k)とすると、次のように表せる。
【数1】

【0054】
そして、配分率決定部311は、式(1)により求めた、各段階の配分率P(k)を後退処理部312に渡す。
【0055】
Frank-Wolfe法を用いる均衡配分の場合、上記のとおり配分処理部20において解が収束するまで配分計算過程を行った後に(すなわち均衡解を求めた後に)、OD交通量に各段階の配分率P(k)を乗じて求めた「集計のためのOD交通量q(k)rm=P(k)×qrm」に対して、集計処理を行う(StepS24)。。
【0056】
次いて、後退処理部312は、式(2)に従い、集計のためのOD交通量q(k)rmと、リンクウェイトW(k)[]を用いて、集計開始リンク(あるいはノード)から始めて、起点から遠い順(最小交通費用が大きい順)に、起点まで後退処理して、交通量を配分する(StepS25)。
【数2】

【0057】
ここでの処理は、DialのアルゴリズムのStep2が全ノードを対象として後退処理により交通量を配分するのに対し、(ア)OD交通量に各段階の配分率P(k)を乗じて求めた「集計のためのOD交通量」を配分する点(上記StepS24参照)、(イ)例えば特定の一つまたは複数のODペアに対し実行する等、特定の起点と終点とで規定される経路に沿った交通量の分布を集計対象としている点で、配分処理部20における通常の後退処理による配分とは異なる。後者の(イ)については、後述する集計部314の処理(StepS27参照)にも関係する。後退処理部312は、StepS25で後退処理した結果を集計部314に渡す。
【0058】
集計部314は、StepS25で後退処理した結果を、図示しない集計用テーブルに書き込むことで、集計用テーブルに累加する(StepS26)。
【0059】
上記StepS25およびStepS26での具体的処理の一例として、例えばリンクのOD内訳、リンクのトリップ長の分布の集計では、OD表のODペア毎に後退処理を実行し、集計用テーブルへ累加すれば良い。言うまでもなく、かかる集計条件はあらかじめStepS21において適宜設定されうるものである。
【0060】
次いで、集計部314は、全ての集計対象について後退処理部312の後退処理が実行されてその結果が集計用テーブルに累加がされたかどうかを判定する(StepS27)。集計対象全部について累加が行われた場合(StepS27;YES)には、次のStepS28に進む。そうでない場合(StepS27;NO)、StepS25へ戻り、残りの集計対象が無くなるまで、StepS25の処理を後退処理部312に実行させるとともに、集計部314自らもStepS26の処理を実行する。
【0061】
集計対象全部について累加が行われた場合、集計部314は、繰り返し回数を示すパラメータkを見て、nステップだけ集計が行われたかどうか、すなわち、配分処理部20における配分処理が収束するまでに求めた各段階kについて、繰り返しの回数nの分の集計が終了したかどうかを判定する(StepS28)。繰り返し回数に達していない場合(StepS28;NO)、k=k+1としてStepS24へ戻る(StepS29)。繰り返し回数に達した場合(StepS28;YES)、処理を終了する。
【0062】
なお、集計のためのOD交通量は、上記StepS24のとおり分配率P(k)によって修正された値であるため、nステップ(ここでnは、配分処理における収束までの繰り返し回数)の累加によって、交通量が重複して集計されることはなく、1つのノードについてそこに流入し、または集中する交通量の合計が変動することはない。
【0063】
以上のようにして、交通量依存諸量の集計データが書き込まれた集計用テーブルが完成する。一例として、OD表のODペア毎に後退処理と、集計用テーブルへの累加を実行した場合、リンクのOD内訳の集計が完了する。
こうして生成した集計済データは、出力部40をインターフェースとして、別途パーソナルコンピュータに接続されたディスプレイ(図示せず)に所定形式で表示させ、プリンタ(図示せず)に所定形式で印刷させ、あるいは外部記憶媒体(図示せず)に記憶させることができる。
【0064】
(第2の実施の態様)
次に、集計データ生成装置100を用いて行われる第2の実施形態に係る集計方法の一例について、図面を参照して順に説明する。本実施態様では、配分処理部20が実行する配分処理は、第1の実施例の場合と同様であり、詳しい説明は省略する。本実施態様では、特に集計処理部30が、後退処理と前進処理の両方を実行し集計を行う例について説明する。なお、第1の実施形態と同様に、集計処理部30を動作させる前提として、集計の制御データ(集計対象リンクを指定するデータ、集計対象領域を指定するデータ等)等の集計処理に必要な外部データが、入力部10から入力されているものとする。
【0065】
図11は、第2の実施態様において、集計処理部30が実行する基本的な集計処理の一例を示すフローチャートである。
図10に示した、第1の実施態様におけるフローチャートと異なる点を説明すると、第1の実施態様においては、後退処理部312が、集計開始リンク(あるいはノード)から始めて、起点から遠い順(最小交通費用が大きい順)に、起点まで後退処理して、交通量を配分する処理(StepS25)を実行した後、集計部314への集計に移行したが、本実施態様においては、後退処理部312の後退処理の後に、前進処理部313に、後退処理部312による後退処理の結果である配分交通量xをパターンとして用いて、集計開始リンク(あるいはノード)から始めて、起点に近い順(最小交通費用が小さい順)に、終点まで前進処理して、交通量を配分する処理、すなわち集計のための前進処理を実行させている点である(StepS35)。
【0066】
すなわち、前進処理部313は、後退処理部312による後退処理の結果である配分交通量xを後退処理部312から取得し、当該配分交通量をパターンとして用いて、式(3)に従い前進処理し、交通量を配分する。
【数3】

【0067】
式(3)の意義を直感的に表現すると、「あるノードに流入する交通量の合計は流出側交通量に等しい」こと、および「パターンとする交通流動のリンク交通量の比率でその部分の交通流動を求める」ことに対応している。
【0068】
図12は、前進処理部313において実行される前進処理による交通量の配分例を示す図、図13は、前進処理の様子を表形式にあらわした図である。これらの図、および後述する式(4)において、r,i,m,jはノード番号、x,Xはリンク交通量、q,QはOD交通量、W[]はリンクウェイトをそれぞれ表す。
図示の例において、後退処理部312による後退処理の結果、ノードmの状況が、下流側3リンクの交通量300,600,100と、ノードm(ここではセントロイド)に集中する交通量(すなわちOD交通量)200がリンクウェイトの割合で分配され、上流側には960,240が流れていたとする(図12(A)、図13(A)参照)。この配分交通量をパターンとし、いま着目するリンクi1→mに交通量576があるとすれば、前進処理による配分で分配すると、セントロイドに集中する交通量(すなわちOD交通量)96と、下流側のリンクにはそれぞれ144,288,48の交通量が流れる(図12(B)、図13(B)参照)。
次の式(4)に、先の式(3)を用いて前進処理による配分された交通量を求める具体例を示す。ただし、着目した箇所に進行方向規制がないことを前提とする。
【数4】

【0069】
なお、本実施態様において、図11のフローチャートにおけるStepS31からStepS35は、第1の実施態様に係るフローチャート(図10)におけるStepS21からStepS25にそれぞれ対応し、また、StepS37からStepS40は、同フローチャート(図10)におけるStepS26からStepS29にそれぞれ対応し、処理の内容は同様である。したがって、ここでの詳しい説明は省略する。
【0070】
本実施態様によれば、後退処理と前進処理とを併用することにより、一例として、特定のリンクを利用する経路交通量の集計を行うことができる。この集計は、「特定のリンクを利用する交通が、その前後でどのような経路をたどるか」を集計するので、当該リンクの影響範囲を見るうえで有用な集計である。
図14は、特定のリンクを利用する経路交通量の集計のイメージ図、図15は、特定のリンクを利用する経路交通量の集計結果のイメージ図をそれぞれ示す。この集計は、着目リンクを流れる交通の、起点oからそのリンクまでの流動を後退処理により配分し、その結果をパターンとして、着目リンクから終点dまでの経路交通量を、前進処理によって集計するものである(図15(A)、(B)参照)。なお、図14において、経路交通量の大小を線の太さで表示している。
【0071】
なお、第2の実施形態の前進処理部313による処理に関して、着目した箇所に進行方向規制がない場合に、式(3)に従い前進処理して交通量を配分する例を説明したが、着目した箇所に進行方向規制がある場合には、式(3)を一般化した次の式(5)に従い、前進処理して交通量を配分することができる。
【数5】

ここで、xはパターンとして用いる後退処理実行後のリンク交通量、W(k)[]は後退処理において用いた各段階のリンクウェイトである。
【0072】
(他の集計への応用例1)
第1の実施態様の例として、集計処理部30における集計処理が、特定のODを集計対象として、終点ノードを特定の着目点として、当該終点ノードから始めて起点ノードから遠い順に起点ノードまで後退処理を実行する例(図3のイメージ図)を説明したが、終点ノードよりも起点ノード側に近い任意のリンクを着目リンクとして、当該着目リンクから始めて起点ノードから遠い順に起点ノードまで後退処理により配分するようにしてもよい。図16は、着目リンクから始める後退処理のイメージ図、図17はこのような後退処理による配分交通量のイメージ図である。
【0073】
特定のリンクから始める後退処理の手法を使うことで、スクリーンのOD内訳、スクリーンのトリップ長分布を集計することができる。ここで、スクリーンのOD内訳とは、河川断面を横断する交通のように、複数のリンクを通行する(1回または複数回利用する)交通のOD内訳をいう。
この集計では、集計対象として例えば河川断面を横断する複数のリンクを指定するが、断面を形成するものに限らず、他の形のリンク群を集計対象とするものであってもよい。例えば、高速道路網全体を対象に集計すれば、高速道路利用交通のOD内訳、トリップ長分を集計することもできる。
【0074】
スクリーンを利用する交通のOD内訳集計処理の概要は、以下のとおりである。
(1)まず、集計処理部30の後退処理部312において、1ODペアについての後退処理により交通量を配分する。
(2)次に、集計対象リンク(スクリーンを構成する複数のリンク)に流れる交通量を残し、他の全てのリンクの交通量を0に置き換えるよう、集計条件を設定する。
(3)次に、後退処理部312において、上記(2)の状態から、着目リンクから開始して起点ノードに向かって後退処理による配分を実行し、結果を累加する。なお、後退処理の過程で他の集計対象リンクに達する場合には、交通量の累加を行わない。
(4)後退処理が起点に達したとき、起点に集まる交通が、スクリーンを少なくとも1回通過する交通量となる。
【0075】
(他の集計への応用例2)
さらに、第2の実施態様において、後退処理と前進処理とを併用して特定のリンクを利用する交通の経路交通量を集計する例を説明したが、実用場面の集計では、特定の路線(複数のリンク)を利用する交通の経路の集計が必要となる。例えば、高速道路のICの影響圏を求める集計などである。そこで、特定のリンクを利用する交通の経路交通量を集計する手法をさらに拡張して、複数のリンクを利用する交通の経路交通量を集計する。
【0076】
1つの特定のリンク(着目リンク)の利用経路の集計では、前進処理と後退処理を行うことで集計データが求まるが、複数の着目リンクの利用経路の集計では、前進処理と後退処理の両方の配分の結果、重複して集計される交通が生じるので、この重複分を除くことが必要である。図18は、複数のリンクを利用する経路交通量の集計のイメージ図である。図18の場合には、イの交通が着目リンクAの後退処理による配分と着目リンクBの前進処理による配分とで集計される。すなわち、重複して集計される交通を求めれば(これを「着目リンク間の交通」とする)、複数のリンクを利用する交通は次式のように表せる。
【0077】
[複数リンクの利用交通]
=[前進処理の配分結果]+[後退処理の配分結果]−[着目リンク間の交通]・・・(6)
【0078】
複数の着目リンク間の交通の経路集計処理の概要は、以下のとおりである。
(1)まず、集計処理部30の後退処理部312において、全ての着目リンクから他の着目リンクに至るまでの後退処理により交通量を配分し、着目リンクに到達する交通を求める。同時に、このときに経由したリンクの交通量を記憶する。
(2)上記(1)のステップの交通量から他の着目リンクに到達した交通だけを残し、他のリンク交通量を0とする。これにより、着目リンク間の交通量が求まる(ただし、経路は求まっていない)。
(3)次に、集計処理部30の前進処理部313において、上記(2)で求めた交通量について、上記(1)で求めた配分交通量をパターンとして用いて前進処理による配分を実行し、結果を累加する。
上記(1)〜(3)により求まる交通は、必ず最初のリンクに戻ることができ、これが着目リンク間の経路交通となる。つまり、式(6)に従い、複数のリンクを利用する経路交通量を集計できたことになる。
【0079】
本発明の実用性を確かめるために集計に要する時間を実測した。以下に実施例として説明する。
【実施例1】
【0080】
図5の集計データ生成装置を用いて、確率的利用者均衡配分における集計データを求め、所要時間を測定した。なお、所要時間計測に用いたデータは、Dialのアルゴリズムによる確率的均衡配分において、約20回の繰り返しで目的関数値が0.1%以下に収束したが、ここでは便宜上繰り返し回数を10回で打ち切って所要時間を計測した。
【0081】
所要時間測定条件は次のとおりである。
ネットワーク:28,270リンク、9,626ノード、リンクは全て一方通行のある地域の道路網。
OD表:946ゾーン(交通量のあるODペア数は、94,386ペア)。
パフォーマンス関数:BPR関数。
実行環境:OS(Operating System)・・・Windows XP(WindowsはMicrosoft Corporationの商標)、CPU(Central Processing Unit)・・・Pentium4,2.8GHz(PentiumはIntel Corporationの商標)、メモリー・・・1GB。
【0082】
(集計毎の所要時間)
配分計算には170秒を要した。
各種交通量依存諸量の集計のうち、ノードの方向別交通量の集計(10ノード)に256秒、リンクのOD内訳の集計(10リンク、10ゾーンブロックに集約)に485秒、スクリーンのOD内訳の集計(2リンクのスクリーンが2つ)に704秒、リンクのトリップ長分布の集計(10リンク、トリップ長ランクは14段階)に901秒、複数リンクを利用する交通の経路の集計(4リンクの利用交通)に322秒を要した。したがって、集計に要する時間は、最大でも配分計算時間の5倍強であった。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明によれば、所定の後退処理を単独で、あるいは所定の後退処理と前進処理とを組合せて用いることにより、確率的利用者均衡配分における各種の交通量依存諸量の集計データを生成することが可能となる。また、実用規模の交通ネットワークに対して、確率的利用者均衡配分の集計を行い、十分に許容できる時間内で処理を完了させることができる。したがって、確率的利用者均衡配分の実用化に向けて集計の困難性を解決した本発明の有する意義は、極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】確率的利用者均衡配分の解法として知られているDialのアルゴリズムの基本フローを説明する図である。
【図2】交通量の配分結果のイメージ図である。
【図3】後退処理による交通量を配分する例のイメージ図である。
【図4】後退処理と前進処理とを併用する集計処理のイメージ図である。
【図5】本発明に係る集計データ生成装置の一例の基本構成を示すブロック図である。
【図6】入力部10から入力されるOD表のイメージ図である。
【図7】DialのアルゴリズムのStep2の後退処理の説明図である。
【図8】DialのアルゴリズムのStep2(後退処理)による交通量分配のイメージ図である。
【図9】配分処理部20が実行する配分処理の一例を示すフローチャートである。
【図10】第1の実施態様において、集計処理部30が実行する基本的な集計処理の一例を示すフローチャートである。
【図11】第2の実施態様において、集計処理部30が実行する基本的な集計処理の一例を示すフローチャートである。
【図12】前進処理部313において実行される前進処理による交通量の配分例を示す図である。
【図13】前進処理の様子を表形式にあらわした図である
【図14】特定のリンクを利用する経路交通量の集計のイメージ図である。
【図15】特定のリンクを利用する経路交通量の集計結果のイメージ図である。
【図16】着目リンクから始める後退処理のイメージ図である。
【図17】後退処理による配分交通量のイメージ図である。
【図18】複数のリンクを利用する経路交通量の集計のイメージ図である。
【符号の説明】
【0085】
10 入力部
20 配分処理部
30 集計処理部
40 出力部
100 集計データ生成装置
311 配分率決定部
312 後退処理部
313 前進処理部
314 集計部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
交通ネットワークに関するOD交通量を、一つの起点ノードから複数の終点ノードに至る複数の経路に確率的に均衡配分し、配分後の交通量に依存する諸量を所定の集計対象について集計する、集計データ生成方法であって、
前記OD交通量を入力し、該入力されたOD交通量を、最短経路の遠い順にかつ全ての前記終点ノード側から前記起点ノード側に向かう後退処理により確率的に均衡配分する処理を複数回繰り返し、繰り返し段階毎の配分された交通量の近似解を求めるステップと、
前記繰り返し段階毎の配分率を求めるステップと、
前記配分率を用いて修正した交通量を、特定の着目点から前記起点ノードに向かう後退処理により配分する処理を、前記繰り返し段階毎に実行し、その結果をあらかじめ設定した集計条件に従い累加することにより、配分交通量に依存する諸量の集計されたデータを生成し、出力するステップと、
を含むことを特徴とする、確率的均衡配分における交通量依存諸量の集計データ生成方法。
【請求項2】
交通ネットワークに関するOD交通量を、一つの起点ノードから複数の終点ノードに至る複数の経路に確率的に均衡配分し、配分後の交通量に依存する諸量を所定の集計対象について集計する、集計データ生成方法であって、
前記OD交通量を入力し、該入力されたOD交通量を、最短経路の遠い順にかつ全ての前記終点ノード側から前記起点ノード側に向かう後退処理により確率的に均衡配分する処理を複数回繰り返し、繰り返し段階毎の配分された交通量の近似解を求めるステップと、
前記繰り返し段階毎の配分率を求めるステップと、
前記配分率を用いて修正した交通量を、特定の着目点から前記起点ノードに向かう後退処理により配分した後、当該後退処理により配分された配分交通量をパターンとして用いて、特定の着目点から前記終点ノードに向かう前進処理により配分する処理を、前記繰り返し段階毎に実行し、その結果をあらかじめ設定した集計条件に従い累加することにより、配分交通量に依存する諸量の集計されたデータを生成し、出力するステップと、
を含むことを特徴とする、確率的均衡配分における交通量依存諸量の集計データ生成方法。
【請求項3】
前記着目点は、交通ネットワークに含まれる特定のノードまたはリンクであることを特徴とする請求項1または2に記載の集計データ生成方法
【請求項4】
交通ネットワークに関するOD交通量を、一つの起点ノードから複数の終点ノードに至る複数の経路に確率的に均衡配分し、配分後の交通量に依存する諸量を所定の集計対象について集計する、集計データ生成方法であって、
前記OD交通量を入力し、一つの起点ノードから複数の終点ノードの各々に至る最短経路探索の解に基づいて各ノードに接続される各リンクの選択確率を求め、前記入力されたOD交通量を、前記選択確率を用いて、最短経路の遠い順にかつ全ての前記終点ノード側から前記起点ノード側に向かう後退処理により配分し、リンク交通量の近似解を求める第1のステップと、
第1のステップで求めた前記近似解を修正しながら第1のステップを収束するまで複数回繰り返し、繰り返し段階毎の前記リンクの選択確率と配分後のリンク交通量の近似解とを求める第2のステップと、
前記繰り返し段階毎の配分率を求める第3のステップと、
前記配分率を用いて修正した交通量を、前記リンクの選択確率を用いて、特定の着目点から始めて前記起点ノードから遠い順に当該起点ノードまで後退処理により配分し、その結果をあらかじめ設定した集計条件に従い集計用テーブルに累加する第4のステップと、
第4のステップを前記繰り返し回数分繰り返し、配分交通量に依存する諸量の集計されたデータを生成し、出力する第5のステップと、
を含むことを特徴とする、確率的均衡配分における交通量依存諸量の集計データ生成方法。
【請求項5】
交通ネットワークに関するOD交通量を、一つの起点ノードから複数の終点ノードに至る複数の経路に確率的に均衡配分し、配分後の交通量に依存する諸量を所定の集計対象について集計する、集計データ生成方法であって、
前記OD交通量を入力し、一つの起点ノードから複数の終点ノードの各々に至る最短経路探索の解に基づいて各ノードに接続される各リンクの選択確率を求め、前記入力されたOD交通量を、前記選択確率を用いて、最短経路の遠い順にかつ全ての前記終点ノード側から前記起点ノード側に向かう後退処理により配分し、リンク交通量の近似解を求める第1のステップと、
第1のステップで求めた前記近似解を修正しながら第1のステップを収束するまで複数回繰り返し、繰り返し段階毎の前記リンクの選択確率と配分後のリンク交通量の近似解とを求める第2のステップと、
前記繰り返し段階毎の配分率を求める第3のステップと、
前記配分率を用いて修正した交通量を、前記リンクの選択確率を用いて、特定の着目点から始めて当該起点から遠い順に前記起点ノードまでの後退処理により配分する第4のステップと、
第4のステップで求めた配分交通量をパターンとして用い、特定の着目点から始めて前記起点ノードに近い順に前記終点ノードまでの前進処理により配分する第5のステップと、
第5ステップの処理結果をあらかじめ設定した集計条件に従い集計用テーブルに累加する第6のステップと、
第4のステップから第6のステップまでの処理を前記繰り返し回数分繰り返し、配分交通量に依存する諸量の集計されたデータを生成し、出力する第7のステップと、
を含むことを特徴とする、確率的均衡配分における交通量依存諸量の集計データ生成方法。
【請求項6】
前記繰り返し段階毎の配分率は、第2のステップにおいて求められる繰り返し段階毎のステップサイズに基づき決定されることを特徴とする、請求項4または5に記載の集計データ生成方法。
【請求項7】
前記着目点は、交通ネットワークに含まれる、起点ノード以外の特定のノードまたはリンクであることを特徴とする、請求項4または5に記載の集計データ生成方法。
【請求項8】
前記第4のステップを少なくとも1つの特定のODペア交通量について実行し、あらかじめ指定したリンクのOD内訳を集計することを特徴とする、請求項4に記載の集計データ生成方法。
【請求項9】
特定の一つのリンクを前記特定の着目点に設定することを特徴とする請求項5に記載の集計データ生成方法。
【請求項10】
交通ネットワークに関するOD交通量を、一つの起点ノードから複数の終点ノードに至る複数の経路に確率的に均衡配分し、配分後の交通量に依存する諸量を所定の集計対象について集計する、集計データ生成装置であって、
OD交通量を入力する入力手段と、
前記入力されたOD交通量を、最短経路の遠い順にかつ全ての前記終点ノード側から前記起点ノード側に向かう後退処理により確率的に均衡配分する処理を複数回繰り返し、繰り返し段階毎の配分された交通量の近似解を求める配分処理手段と、
前記繰り返し段階毎の配分率を求める配分率決定手段と、
前記配分率を用いて修正した交通量を、特定の着目点から前記起点ノードに向かう後退処理により配分する処理を実行する後退処理手段と、
前記後退処理手段を制御して、前記繰り返し段階毎に、後退処理を1回または複数回実行させ、その結果をあらかじめ設定した集計条件に従い集計テーブルに累加することにより、配分交通量に依存する諸量の集計されたデータを生成する集計手段と、
前記集計されたデータを出力する出力手段と、
を含むことを特徴とする、確率的均衡配分における交通量依存諸量の集計データ生成装置。
【請求項11】
交通ネットワークに関するOD交通量を、一つの起点ノードから複数の終点ノードに至る複数の経路に確率的に均衡配分し、配分後の交通量に依存する諸量を所定の集計対象について集計する、集計データ生成装置であって、
前記OD交通量を入力する入力手段と、
前記入力されたOD交通量を、最短経路の遠い順にかつ全ての前記終点ノード側から前記起点ノード側に向かう後退処理により確率的に均衡配分する処理を複数回繰り返し、繰り返し段階毎の配分された交通量の近似解を求める配分処理手段と、
前記繰り返し段階毎の配分率を求める配分率決定手段と、
前記配分率を用いて修正した交通量を、特定の着目点から前記起点ノードに向かう後退処理により配分する処理を実行する後退処理手段と、
前記後退処理手段により配分された配分交通量をパターンとして用いて、特定の着目点から前記終点ノードに向かう前進処理により配分する処理を実行する前進処理手段と、
前記後退処理手段および前記前進処理手段とを制御して、前記繰り返し段階毎に、後退処理およびその後の前進処理を1回または複数回実行させ、その結果をあらかじめ設定した集計条件に従い集計テーブルに累加することにより、配分交通量に依存する諸量の集計されたデータを生成する集計手段と、
前記集計されたデータを出力する出力手段と、
を含むことを特徴とする、確率的均衡配分における交通量依存諸量の集計データ生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2006−244188(P2006−244188A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−59836(P2005−59836)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(594128913)株式会社長大 (2)
【Fターム(参考)】