説明

磁性ガラス粒子からの核酸の改善された回収

本発明は、核酸と結合することができる固相、例えば磁性ガラス粒子を使用して核酸を分離する方法である。ここで前記固相への核酸の結合は、エチレン−アミン化合物の存在によって高められる。本発明は、エチレン−アミン化合物を含む核酸を単離するための反応混合物、及び前記方法を実施するためのキットをさらに含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は核酸単離の分野に関し、具体的には、固相担体を使用した核酸の単離の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
核酸の単離は、分子診断における重要なステップである。試料から単離される核酸の質及び量は、下流における診断応用の成功に大きく影響を及ぼす。臨床及びフィールド応用においても、迅速であって且つ自動化になじみやすいことが単離手順に要求される。
【0003】
種々の生物及び組織からの核酸を単離するために、多くの手順が存在する。幾つかの種類の臨床試料及び環境試料により、核酸の成功した単離のための特別な課題が提起される。例えば、骨のような特定の組織は、核酸を入手する前に除去することが必要である多量の細胞外材料を含む。幾つかの生物、例えば真菌、植物及び細菌は、細胞壁又は厳しい化学処理を必要とする外膜を有する。厳しい処理において使用される試薬は、単離された核酸を利用する、下流応用のための課題を提示する。さらに、厳しい処理の間における標的核酸の分解により、下流の検出アッセイにおける偽陰性の結果がもたらされる。さらに、臨床において適用可能となるためには、診断手順が十分な感受性を有さなければならず、すなわち、患者試料における偽陰性の結果を避けなければならない。したがって分子診断の分野において、診断手順を感度が高く、信頼性があり、かつ容易に実施できるものとするために、核酸を単離する方法の改善が必要である。
【0004】
成功した核酸ベースの診断試験のための前提条件は、分解されない、阻害剤が含まれない核酸の単離である。同時に、単純で自動化に適した核酸単離手順に対する需要が存在する。固相担体、例えば球形微小粒子を用いて核酸を単離することが近年一般的となっている。「磁性ガラス粒子(Magnetic Glass Particle)」又は「MGP」と一般的に呼ばれる、ガラス様物質を含有する又は当該物質で被覆された磁性微小粒子が特に一般的である。MGPを使用する核酸単離手順は、比較的少ないステップを必要とし、容易に自動化できる。ゾル−ゲル法によって製造されるMGPが特に一般的であり、それはEP1154443又は米国特許第6,255,477号及び第6,870,047号明細書に記載されている。
【0005】
ゾル−ゲル法によって製造されるMGPの一般的記載及び具体例は、文献中で容易に利用可能である(例えばEP1154443参照)。これらのMGPは、シリカ系ガラス様材料で被覆された強磁性コアからなる。当該強磁性コアは通常、酸化鉄、例えばFe又はFeを含む。当該コアは、鉄単体のコアであってもよく、又は合成材料から製造されてもよい。当該コアはまた、酸化鉄が埋め込まれた、結晶、セラミック又はガラス様構造からなることができる。当該ガラス被覆は、酸化ケイ素を含む非晶質材料からなってもよく、1又は2以上の追加の金属酸化物、例えば、酸化ホウ素(B)、酸化アルミニウム(Al)、酸化カルシウム(CaO)、酸化バリウム(BaO)、酸化カリウム(KO)、酸化ナトリウム(Na0)、酸化マグネシウム(MgO)又は酸化鉛(Pb)をさらに含んでもよい。幾つかの実施形態において、ガラスは酸化ケイ素であり、そして1又は2以上の以下の化合物を以下の濃度範囲で含んでもよい;B(0〜30%)、Al(0〜20%)、CaO(0〜20%)、BaO(0〜10%)、KO(0〜20%)、NaO(0〜20%)、MgO(0〜18%)、Pb(0〜15%)。ガラスはまた、より少ないパーセンテージ(0〜5%)の多くの他の酸化物、例えば、Mn、TiO、As、Fe、CuO及びCoOを含んでもよい。ホウケイ酸ガラスの組成物から作られる表面は、特に効果的であることが分かった。ホウケイ酸ガラスは、25%超の酸化ホウ素を有する。例えば、SiO/Bの組成が、70/30である。
【0006】
磁性粒子は時折、核酸の結合を容易とする官能基で修飾される。かかる基は、限定されないが、ポリ−A含有核酸の捕獲用にポリ−Tオリゴヌクレオチドを含み、ビオチン標識された核酸の捕獲用にストレプトアビジンを含み、そしてプローブに相補的な固有配列を含有する核酸の捕獲用に特定のプローブ配列を含む。しかし配列に関係なく、試料中に存在する任意の核酸を単離することができる未修飾の表面を有する磁性粒子が、最も普遍的に有用である。
【0007】
MGPを使用する典型的な核酸単離手順において、核酸を放出させるために、細胞又は組織の破壊を開始する。一般的に使用される組織破壊手順は、化学的、酵素的又は物理的性質のものである。それらは、超音波、高圧、せん断力、強塩基、洗剤若しくはカオトロピック剤、プロテアーゼ若しくはリパーゼを含む。化学的及び酵素的溶解のために、溶解剤は典型的には緩衝剤、塩、1若しくは2以上の変性剤、及びカオトロピック物質、プロテーゼ、及び場合により、ヌクレアーゼ阻害剤及び保存剤を含む。溶解試薬は、タンパク質の消化、ヌクレアーゼの阻害並びに、脂質、リポタンパク質などの可溶化を引き起こす。例えば緩衝剤はTrisであってもよく、塩はナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩又はマグネシウム塩であってもよく、例えば塩化物塩若しくは酢酸塩であってもよく、洗剤はドデシル硫酸ナトリウム、Triton−X又はTweenであってもよく、カオトロピック試薬は尿素、チオ尿素、ヨウ素酸ナトリウム(sodium iodite)、ドデシル硫酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、グアニジウムチオシアネート、グアニジウムイソチオシアネート若しくは次亜塩素酸グアニジウム(guanidinium hydrochlorite)であってもよく、ヌクレアーゼ阻害剤はキレート剤、例えばEDTAであってもよく、保存剤は金属アジドであってもよく、そしてプロテアーゼはプロテイナーゼKであってもよい。典型的には、試料は溶解試薬と共に、70〜100℃で、例えば90〜95℃でインキュベートされる。
【0008】
大部分の試料にとって、上記の溶解試薬及び条件は、細胞の溶解及び核酸の溶液への放出を達成するために十分である。残念ながら幾つかの種類の試料にとって、溶解には大きな課題が存在する。幾つかの細胞、生命体及び組織は、細胞壁若しくは組織を破壊するために、及び細胞含有物を放出するために厳しい溶解条件を必要とする。例えば、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)のようなグラム陽性病原菌は、脂質に富んだペプチドグリカンの細胞壁を有する。M.ツベルクローシス及び他のマイコバクテリアを検出する迅速な方法に関する世界的な需要が存在する。しかし核酸の単離は通常、所望のレベルのアッセイ感受性を達するための限定要因である。Neonakis et al.(2008)Molecular diagnostic tools in mycobacteriology,J.Microbiol.Methods,75:111を参照。現在、マイコバクテリアの検出における所望の感受性は、繰り返しの洗浄ステップ及び遠心分離ステップを含む、多段階の核酸単離手順を用いて達成される。Shamputa et al.(2004)Molecular genetic methods for diagnosis and antibiotic resistance detection of mycobacteria from clinical specimens,APMIS,122:728を参照。しかしかかる手順は自動化可能なものではなく、大部分の利用者にとって実用的ではない。
【0009】
MGPを使用する核酸の典型的な単離方法において、試料中の細胞区画が破壊されて核酸が放出された後、MGPへの核酸の結合を達成するために、当該試料をMGPと接触させる。溶解の前にMGPを試料へと添加してもよい。例えばMGPは、初期試料が添加される容器中に存在し得る。MGPの存在は、試料の溶解に影響を与えないことが明らかとなっている。或いは試料を最初に溶解し、溶解ステップが完了した後にのみMGPが導入されてもよい。
【0010】
MGPへの結合を達成するために、典型的には試料はMGPと混合され、結合が起こるのに十分な時間この結合混合物中でインキュベートされる。このステップは、磁性ガラス粒子の表面上に固定化された核酸の量を異なる時点で測定することによって、又は以下の異なるインキュベーション時間で核酸収量を測定することによって、容易に最適化され得る。一般的に、10秒〜30秒のインキュベーション時間が核酸にとって好適である。
【0011】
ほとんどの場合において、溶解試薬を含む放出された核酸は、MGPへの結合が起こるために適した環境である。しかし幾つかの場合において、溶解試薬は当該環境を、磁性ガラス粒子の表面への核酸の結合にとって不適切なものとする。特に、磁性ガラス粒子が未修飾の表面を有する場合において、核酸と粒子表面との間の結合は、pH及び結合混合物のイオン強度などの条件に依存する。MGPへの核酸の最大結合は、低いpHで、例えばpH5以下で起こることが明らかとなっている。しかし幾つかの応用に関して、結合混合物のかかる低いpHは達成されないかもしれない。例えば、マイコバクテリアを溶解するための溶解試薬は、12以上のpH値を有する。マイコバクテリアの核酸を単離するための典型的な手順において、細胞溶解に続く中和ステップの間に、pH9未満とされることはないが、pHは低下される。pH9以上において、核酸の磁性ガラス粒子への結合は効率的ではない。現時点まで、結合におけるこの非効率性は、延長されたインキュベーション時間によって克服されている。当該課題を解決するためのこの方法は、臨床応用のためには実用的ではない。さらに、延長されたインキュベーションによって、核酸鋳型、特にRNA鋳型の安定性が脅かされる。
【発明の概要】
【0012】
発明の概要
本発明は、核酸を含有する試料溶液から核酸を分離する方法であって、以下のステップ:核酸と結合することができる固相、及びエチレン−アミン化合物を含む結合混合物と、前記試料溶液とを接触させ;前記核酸が前記固相と結合し得る条件下、前記固相を含有する前記試料溶液をインキュベートし;そして前記溶液から前記固相を分離することを含む、前記方法である。本発明は場合により、溶出に先立ち、結合した核酸を洗浄するステップを含む。幾つかの実施形態において、本方法は、単離後に核酸を検出することを含む。本発明は、核酸を単離するための反応混合物をさらに含み、前記混合物は、核酸と結合することができる固相、及びエチレン−アミン化合物を含有する。本発明はまた、核酸を試料から分離するためのキットであって:核酸と結合することができる固相、及びエチレン−アミン化合物を含む前記キットを含む。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な説明
定義
本明細書において、用語「エチレン−アミン化合物」は、一般式(NH−CH=CH)n−NH(式中、nは1〜10又はそれ以上である)を有する分子のことである。本発明において有用であるエチレン−アミン化合物は、限定されないが、エチレン−ジアミン(EDA)、ジエチレン−トリアミン(DETA)、トリエチレン−テトラミン(TETA)、テトラエチレン−ペンタミン(TEPA)及びペンタエチレン−ヘキサミン(PEHA)を含む。当業者であれば、他のエチレン−アミン化合物が本発明に有用であると認識し得る。
【0014】
本明細書において、用語「試料」は、対象物質、例えば核酸を含有する混合物又は溶液のことである。当該試料は、固体又は液体組織、体液、真核細胞(植物、真菌、動物又はヒト細胞を含む)の培養液若しくは懸濁物、原核細胞(細菌細胞を含む)の培養液若しくは懸濁物を含み得る。当該試料はウィルスを含んでもよい。当該試料はまた、対象物質を含む無細胞の溶液を含んでもよい。試料の性質に応じて、試料からの対象物質の単離を容易とするための化学的若しくは物理的処理をそれは必要としてもよい。例えば試料は、細胞区画及び細胞内区画から核酸を放出させるための処理を必要としてもよい。
【0015】
本明細書において、生物学的試料の「成分」なる用語は、分子の1分類のこと(例えばタンパク質、核酸など)であるか、又は検出が望まれる特定の標的、例えば特定のタンパク質又は核酸配列のことである。
【0016】
本明細書において、用語「核酸」は、デオキシリボヌクレオチド(2−デオキシ−D−リボースを含む)のポリマー(すなわちDNA)、ポリリボヌクレオチド(D−リボースを含む)(すなわちRNA)、並びに他の、プリン若しくはピリミジン塩基、又は修飾プリン若しくはピリミジン塩基、又はそれらの組み合わせのN−グリコシド類縁体のことである。
【0017】
本発明の方法において、核酸は磁性ガラス粒子を使用して試料から単離され、ここで核酸の磁性ガラス粒子への結合は、1又は2以上のエチレン−アミン化合物の存在によって向上される。
【0018】
幾つかの実施形態において、当該試料は全細胞を含む。細胞区画及び細胞内区画から核酸を放出させるために、細胞膜及び、存在する場合には細胞壁を破壊するために適した溶解試薬を使用して、細胞は溶解される。細胞及び組織を破壊する種々の方法が当技術分野で既知である。Sambrook&Russell,Molecular Cloning,A Laboratory Manual(第3版,2001))に、多くの方法が参照され、記載されている。
【0019】
幾つかの実施形態において、試料はグラム陽性細菌を含有する。強い化学塩基(例えば水酸化アルカリ)、洗剤及び塩を含み、かつpHが12超である溶解試薬を使用して、グラム陽性細菌は溶解される。幾つかの実施形態において、グラム陽性細菌を含有する試料は、80℃〜100℃で、通常95℃で加熱され、そして5〜30分間、通常約15分間インキュベートされる。
【0020】
本発明において、細胞区画及び細胞内区画から放出された核酸を含有する試料は、核酸が磁性ガラス粒子と結合するために適した条件下で、磁性ガラス粒子と接触される。結合混合物へのエチレン−アミン化合物の添加によって、磁性ガラス粒子表面への核酸の結合の効率が大きく増加することが発見された。この現象は、高いpHで特に利益がある。結合効率は、結合混合物中における金属塩、例えばマグネシウム塩若しくはマンガン塩、例えば塩化物塩若しくは酢酸塩の存在によってさらに増大する。
【0021】
幾つかの実施形態において、エチレン−アミン化合物の濃度は10〜65mM、例えば16mMである。
【0022】
結合ステップの後に、結合された核酸を有する磁性ガラス粒子は、エチレン−アミン化合物を含有する溶液から分離され得る。磁性ガラス粒子の大きさ及び種類に依存して、当該粒子はインキュベーション期の間に液体から分離されるか、又はインキュベーション後に懸濁液中に残存して更なる分離を必要とする。分離ステップが必要である場合、結合された核酸を有する粒子は、磁場の適用によって試料溶液から分離される。例えば磁性ガラス粒子は、インキュベーションが行われた試料容器の壁へと引っ張られ得るか、又は当該容器の底へと引っ張られ得る。試料中に存在する、任意の未結合の物質及び混入物を含有する液体はその後、ピペッティング又はアスピレーションにより試料容器から除去され得る。
【0023】
結合した核酸を有する磁性ガラス粒子は、1又は2回以上、1又は2以上の洗浄溶液を用いて場合により洗浄されてもよい。洗浄溶液は、核酸の磁性粒子表面からの放出を引き起こさないが、核酸又は磁性ガラス粒子になおも結合している所望ではない混入物を洗い流す組成を有する。幾つかの実施形態において、最初の洗浄溶液はアルコール、例えばエタノール又はイソプロパノールを含む。当該洗浄溶液はまた、カオトロピック塩及び緩衝液を含んでもよい。幾つかの実施形態において、その後に続く洗浄溶液はアルコールを含まないが、塩、緩衝液を含み、及び場合により保存剤を含む。この洗浄ステップは、洗浄溶液を核酸が結合している磁性ガラス粒子と共にインキュベートすることにより行われてもよい。当該磁性粒子は、洗浄液体との最大接触が達成されるために、このステップの間に再度懸濁されてもよい。汚れた洗浄溶液をその後試料容器から除去する。
【0024】
最後の洗浄ステップの後、結合した核酸を有する磁性ガラス粒子が真空中で短時間乾燥され得るか、又は残余の洗浄液体が留去され得る。所望であれば、核酸は磁性粒子から分離され得、場合により、当該磁性粒子を残したまま当該粒子を含有する容器から除去され得る。核酸は、低い塩含量の緩衝液を使用して磁性ガラス粒子から溶出され得る。幾つかの実施形態において、溶出緩衝液はTrisを含む。場合により、溶出緩衝液は保存剤及びヌクレアーゼ阻害剤、例えばEDTAのようなキレート剤を含有してもよい。他の実施形態において、溶出緩衝液は保存剤を含有する水か、又は含有しない水である。
【0025】
幾つかの実施形態において、核酸は下流応用の間、磁性粒子と結合されたままであってもよい(例えば、米国特許出願第20040014070号を参照)。他の実施形態において、核酸は磁性ガラス粒子から除去されるが、当該粒子は下流応用のために核酸と共に容器中に残存したままである。例えば、米国特許出願第20040014070号明細書は、ゾル−ゲル法によって製造される磁性ガラス粒子は、PCRによる核酸の増幅の効率を向上させることを教示している。他の例において、核酸は、溶出後に磁性ガラス粒子から分離されてもよい。典型的には、核酸を含有する溶液は、磁性ガラス粒子を含有する容器から除去される。
【0026】
幾つかの実施形態において、核酸を単離する方法は、単離された標的核酸の増幅及び検出をさらに含む。例えば、増幅及び検出はPCRを使用して行われる。Principles and Applications for DNA Amplification(ed.H.A.Erlich,Freeman Press,New York,N.Y.,1992);PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(eds.Innis,et al.,Academic Press,San Diego,Calif.,1990)を参照のこと。増幅及び検出は、リガーゼ連鎖反応(LCR)(米国特許第5,185,243号、第5,679,524号及び第5,573,907号明細書)を通じて、又は任意の他の適切な核酸増幅技術を通じて行われてもよい。任意の下流における分析が、本発明の単離法と適合可能であるが、本発明の溶解溶液及び結合溶液の組成は、下流のPCR応用と特に適合性がある。
【0027】
リアルタイムPCRアッセイにおいて、標識されたプローブによって生じるシグナルは、投入された標的核酸の量と比例する。投入量が多いほど、より速く蛍光シグナルが既定の閾値(C)と交差する。したがって、試料を互いに比較することによって、又は既知の核酸量を有する対照試料と比較することによって、標的核酸の相対量又は絶対量が決定され得る。
【0028】
別の実施形態において、本発明は核酸を単離するための反応混合物である。反応混合物は:溶解試薬;1又は2以上の洗剤を含む試薬;エチレン−アミン化合物;及び場合により金属塩、例えばマグネシウム若しくはマンガン塩;1若しくは2以上の保存剤;及び/又は1若しくは2以上のキレート剤を含む。幾つかの実施形態において、溶解試薬は12以上のpH値を有する。幾つかの実施形態において、反応混合物中の溶解試薬は、1又は2以上の洗剤を1〜10%の濃度で、1又は2以上のEDTAのようなキレート剤を0.5〜2mMの濃度で、1又は2以上のアジ化ナトリウムのような保存剤を0.01〜0.1%の濃度で、エチレン−アミン化合物を10〜65mMの濃度で、及び金属塩、例えばマグネシウム塩若しくはマンガン塩、例えば塩化物塩若しくは酢酸塩を5〜25mMの濃度で含む。
【0029】
幾つかの実施形態において、反応混合物は、単離されるべき核酸を含む試料をさらに含有する。幾つかの場合において、当該試料は溶解されたグラム陽性細菌を核酸源として含む。さらに他の実施形態において、反応混合物は磁性ガラス粒子を含む。幾つかの場合において、米国特許第6,870,047号明細書及びその中で引用された参考文献中に記載されたゾル−ゲル法によって当該粒子は製造される。
【0030】
さらに別の実施形態において、本発明は、磁性ガラス粒子を使用して核酸を単離するためのキットである。当該キットは:溶解試薬;1又は2以上の洗剤を含む試薬;及び場合により1又は2以上の保存剤;エチレン−アミン化合物;並びに場合により、マグネシウム塩又はマンガン塩を含む。幾つかの実施形態において、溶解試薬、エチレン−アミン化合物及び、マグネシウム塩又はマンガン塩は、分離したコンテナで提供される。幾つかの実施形態において、溶解試薬は12以上のpHを有してもよい。幾つかの実施形態において、キット中に含まれる溶解試薬は、1又は2以上の洗剤を1〜10%の濃度で、1又は2以上のEDTAのようなキレート剤を0.5〜2mMの濃度で、1又は2以上のアジ化ナトリウムのような保存剤を0.01〜0.1%の濃度で、エチレン−アミン化合物を10〜65mMの濃度で、及び金属塩、例えばマグネシウム塩若しくはマンガン塩、例えば塩化物塩若しくは酢酸塩を5〜25mMの濃度で含む。当該キットは、磁性ガラス粒子をさらに含んでもよい。磁性ガラス粒子は、溶解試薬中に組み込まれてもよく、キット中の分離したコンテナ中に存在してもよい。磁性ガラス粒子が分離した容器中に存在するとき、当該粒子はアルコール、例えばイソプロパノール中で懸濁されてもよい。幾つかの場合において、本発明のキットに含まれる磁性粒子は、米国特許第6,870,047号明細書及びその中で引用された参考文献中に記載されたゾル−ゲル法によって製造される。幾つかの実施形態において、キットは中和試薬、洗浄試薬及び溶出試薬を場合により含む。中和試薬は、緩衝液、塩及び保存剤を含んでもよく、pH6〜8であってもよく、最も好ましくはpH7.5であってもよい。幾つかの実施形態において、緩衝液はTrisであってもよく、塩は塩化マグネシウムであってもよく、そして保存剤はアジ化ナトリウムであってもよい。洗浄試薬はアルコールを含有してもよい。溶出試薬は緩衝剤及び保存剤を含んでもよく、pH8.5であってもよい。
【実施例】
【0031】
実施例
本発明の範囲を限定するものではなく、説明のみのために、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)(MTB)からの核酸の単離に本発明が適用された。
【0032】
実施例1:
溶解のために、100μLのマイコバクテリウム・ツベルクローシス(MTB)細胞懸濁物、又は同量のMTB DNAを含む試料の67 mMホスフェートpH6.8溶液を、400μlの溶解試薬(50mM NaOH、1%Triton X−100、1mM EDTA、0.05%NaN、pH12+)と混合し、15分間95℃でインキュベートした。その後、400μLの中和試薬(8〜64mMエチレン−アミン、200mM Tris、8〜23mM MgCl又はMg(OAc)、0.05%NaN、pH7.5)を加えた。その後、100μLの磁性ガラス粒子(Roche Molecular Systems,Inc.,Branchburg,N.J.)を加え、そして当該試料を5〜30分間室温若しくは37℃でインキュベートした。磁性ガラス粒子をその後、上清を除去することによって分離し、7.5mMクエン酸ナトリウム二水和物、0.05%(w/v)MIT、pH4.1で2回洗浄した。50〜100μLの溶出試薬(30mM Tris、pH8.5、0.2%w/v 4−ヒドロキシ安息香酸メチル(メチルパラベン)、0.09%NaN)を用いて核酸を溶出させた。溶解後の手順を、手動で、又はHamilton Star装置(Hamilton Robotics,Inc.,Reno,Nev.)によって自動的に行った。
【0033】
50μLの溶出液、及び50μLの以下のものを含むマスター混合物を用いたリアルタイムPCRとしても知られる定量的PCRによって、単離された核酸を試験した:154mMトリシン、110mM水酸化カリウム、190mM酢酸カリウム、19%グリセロール(v/v)、2.3%DMSO、1.16mM dATP、1.16mM dCTP、1.16mM dGTP、1.16mM dUTP、上流及び下流プライマー、標的プローブ、内部対照プローブ、DNAポリメラーゼ、ウラシル−N−DNAグリコシラーゼ、0.09%アジ化ナトリウム(w/v)、pH8.50、及び20コピー/反応の内部対照DNA。COBAS(登録商標)TAQMAN(登録商標)48アナライザーにおける増幅条件は以下の通りであった:5分、50℃、その後2サイクルの98℃、20秒、61℃秒及び70℃秒、その後55サイクルの95℃、25秒、61℃40秒、及び70℃20秒。
【0034】
「サイクル閾値(cycles−to−threshold)」(C)(試料からの蛍光がバックグラウンドの蛍光を超え、したがって「閾値を横切る」、サイクル数)として、結果を表現する。Cは、核酸鋳型の開始量を反映する。より低いC値は、反応における核酸鋳型のより多くの開始量を示すが、より高いC値は、反応における核酸鋳型のより少ない開始量を示す。表1〜3は、本発明の方法を使用して単離された核酸を含む、各々のPCR反応に関するC値を示す。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

【0038】
固相担体、例えば磁性ガラス粒子を使用する核酸の回収を、エチレン−アミン化合物が改善することを、当該結果は実証している。当該改善は、金属塩、例えばマグネシウム塩若しくはマンガン塩、例えば塩化物塩若しくは酢酸塩の存在によってさらに高められる。
【0039】
本発明は、具体例に関して詳細に記載されたが、種々の改変が本発明の範囲内でなされ得ることは当業者にとって明らかである。したがって、本発明の範囲は本明細書に記載された実施例によって限定されるべきではなく、以下に記載された特許請求の範囲によって限定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸を含有する試料溶液から核酸を分離する方法であって、以下のステップ:
a.核酸と結合することができる固相、及びエチレン−アミン化合物を含む結合混合物と、前記試料溶液とを接触させ;
b.前記核酸が前記固相と結合し得る条件下、前記固相を含有する前記試料溶液をインキュベートし;そして
c.前記溶液から前記固相を分離すること
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記固相に結合した核酸を洗浄することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記固相から核酸を溶出することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記試料溶液が細胞の溶解によって得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記試料溶液が、バチルス属(Bacillus)、クロストリジウム属(Clostridium)、スタヒロコッカス属(Staphylococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)、及びそれらの組み合わせから成る群から選択されるグラム陽性細菌の溶解によって得られる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ステップaにおける前記結合混合物が、金属イオンをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ステップaにおける前記結合混合物が、マグネシウムイオン又はマンガンイオンを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ステップaにおける前記結合混合物が、アルカリ金属の水酸化物及び洗剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ステップaにおける前記結合混合物が、溶液1(50mM NaOH、1%Triton X−100、1mM EDTA、0.05%NaN、pH12+)及び溶液2(10〜65mMエチレン−アミン、200mM Tris、5〜25mM MgCl、0.05%NaN、pH7.5)の、等しい体積での混合物を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
核酸と結合することができる前記固相が、磁性コア、及びシリカを含む外層を有する粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
固相を使用して試料から核酸を分離するための反応混合物であって:核酸と結合することができる固相、及びエチレン−アミン化合物を含む、前記反応混合物。
【請求項12】
アルカリ金属の水酸化物及び洗剤をさらに含む、請求項11に記載の反応混合物。
【請求項13】
金属イオンをさらに含む、請求項11に記載の反応混合物。
【請求項14】
マグネシウムイオン又はマンガンイオンを含む、請求項13に記載の反応混合物。
【請求項15】
核酸と結合することができる前記固相が、磁性コア、及びシリカを含む外層を有する粒子を含む、請求項11に記載の反応混合物。
【請求項16】
固相を使用して試料から核酸を分離するためのキットであって:核酸と結合することができる固相、及びエチレン−アミン化合物を含む、前記キット。
【請求項17】
溶解試薬、中和試薬、洗浄試薬及び溶出試薬の1つ又は2つ以上をさらに含む、請求項16に記載のキット。
【請求項18】
核酸と結合することができる前記固相が、磁性コア、及びシリカを含む外層を有する粒子を含む、請求項16に記載のキット。
【請求項19】
前記溶解試薬がアルカリ金属の水酸化物及び洗剤を含み、中和試薬がエチレン−アミン化合物、マグネシウムイオン又はマンガンイオン、及び緩衝液を含む、請求項16に記載のキット。

【公表番号】特表2013−516185(P2013−516185A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547490(P2012−547490)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【国際出願番号】PCT/EP2011/000013
【国際公開番号】WO2011/083076
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】