説明

磁性トナー

【課題】停止スジやクリーニング不良が生じず、カブリが少ない優れた耐久安定性を有するトナーを提供する事である。
【解決手段】結着樹脂、磁性体を少なくとも含有する磁性トナー粒子と、脂肪酸金属塩とを含有する磁性トナーであって、
前記磁性トナーは脂肪酸金属塩を磁性トナー粒子100質量部あたり0.05質量部以上0.50質量部以下含有し、
前記脂肪酸金属塩の体積基準におけるメジアン径(D50)が0.15μm以上0.65μm以下であり、
前記磁性トナーの下式(1)から得られる圧縮率が30以下であり、
式(1) 圧縮率={1−(見掛け密度/タップ密度)}×100
前記磁性トナーの表面自由エネルギーが40.0mJ/m以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法などを利用した記録方法に用いられる磁性トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンターや複写機は近年アナログからデジタルへの移行が進み、潜像の再現性に優れ高解像度であると同時に、様々な環境においても常に安定した高画質を得られる事が強く求められている。
【0003】
ここで、様々な環境と言う点に着目すると、特定の環境/条件において特有の問題が生じる事が分かってきており、高温高湿環境下において一晩放置した後、静電潜像担持体周期の白いスジ状の画像欠陥が生じると言う問題が発生した。
【0004】
この原因については、静電荷像担持体とクリーニングブレードの当接部における特異な現象に起因する事が分かってきている。
【0005】
印字する際の静電潜像担持体とクリーニングブレードの挙動を考えると、多数枚印字を重ねることでクリーニングブレードの先端部分に転写残トナーや外添剤が蓄積される。このような転写残トナーや外添剤は印字停止時にクリーニングブレードの当接部の圧力により静電潜像担持体に押しつけられ、融着を引き起こす。また、一度停止した静電潜像担持体を回転させる際、クリーニングブレードと静電潜像担持体間の摩擦係数は回転中よりも高くなるため、クリーニングブレードはビビリ易い。このため、再び印字するとクリーニングブレードがビビリ、当接部で生じた融着物はクリーニングブレードをすり抜けてしまう。この状態で静電潜像担持体が1回転し、融着物がクリーニングブレードと接触した際に、静電潜像担持体とクリーニングブレード間の回転阻害を引き起こし、その瞬間に帯電ムラなどの帯電安定性の低下を招く。そして、静電潜像担持体が2回転、3回転と回転を重ねるたびに、同様の原因により静電潜像担持体の回転周期ごとに帯電不良による画像欠陥が引き起こされる。これが、白いスジ状の画像欠陥(以後、停止スジと呼ぶ)の原因であると考えられる。
【0006】
これに対して、印字を停止した際の融着物の生成を抑制するため、クリーニングブレードの当接圧を調整する事が求められる。しかし、当接圧を軽圧にすると停止スジは良くなるものの低温環境下でクリーニング不良が生じてしまい、両者のバランスを取る事が非常に困難であった。
【0007】
これに対し、従来からクリーニング改善を目的とし、脂肪酸金属塩や固体潤滑剤のような所謂固体セッケンを用いる事が知られている(特許文献1、2参照)。また、トナーの体積50%径とガラス転移温度を制御し、脂肪酸金属塩粒子と流動性向上剤を添加したトナーも提案されている(特許文献3参照)。
【0008】
しかし、これらトナーを用いても停止スジとクリーニングの両立は困難であり、改善の余地があった。さらには、小径のトナー担持体を用いた画像形成装置においてこれら脂肪酸金属塩を用いた場合、非画像部にもトナーが飛翔してしまう、所謂カブリが生じ易く、検討の余地があった。
【0009】
また、部材との離型性と言う意味では、接触角や表面自由エネルギーを制御する事が重要であり、これらを規定したトナーも提案されている(特許文献4、5参照)。しかし、これらトナーに関してはクリーニングや停止スジに関して何ら記載がなく、更なる検討の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭63−096664号公報
【特許文献2】特開平04−177364号公報
【特許文献3】特開平09−251214号公報
【特許文献4】特開2000−047428号公報
【特許文献5】特開2009−109817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は上記従来技術の問題に鑑みなされたものであり、停止スジやクリーニング不良が生じず、カブリが少ない優れた耐久安定性を有するトナーを提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、結着樹脂、磁性体を少なくとも含有する磁性トナー粒子と、脂肪酸金属塩とを含有する磁性トナーであって、
前記磁性トナーは脂肪酸金属塩を磁性トナー粒子100質量部あたり0.05質量部以上0.50質量部以下含有し、
前記脂肪酸金属塩の体積基準におけるメジアン径(D50)が0.15μm以上0.65μm以下であり、
前記磁性トナーの下式(1)から得られる圧縮率が30以下であり、
式(1) 圧縮率={1−(見掛け密度/タップ密度)}×100
前記磁性トナーの表面自由エネルギーが40.0mJ/m2以下であることを特徴とする磁性トナーに関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、停止スジやクリーニング不良が生じず、カブリが少ない優れた画像を耐久を通じて得る事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のトナーを好適に用いることができる画像形成装置の一例を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のトナーは、結着樹脂、磁性体を少なくとも含有する磁性トナー粒子と、脂肪酸金属塩とを含有する磁性トナーであって、
前記磁性トナーは脂肪酸金属塩を磁性トナー粒子100質量部あたり0.05質量部以上0.50質量部以下含有し、
前記脂肪酸金属塩の体積基準におけるメジアン径(D50)が0.15μm以上0.65μm以下であり、
前記磁性トナーの下式(1)から得られる圧縮率が30以下であり、
式(1) 圧縮率={1−(見掛け密度/タップ密度)}×100
前記磁性トナーの表面自由エネルギーが40.0mJ/m2以下であることを特徴とするものである。
【0016】
前述の如く、停止スジは、1)トナー及び外添剤がクリーニングブレードと静電潜像担持体との当接部で圧縮され、長時間放置される事により潜像担持体への融着が発生する;2)印刷開始時、クリーニングブレードがビビリ、融着物がクリーニングブレードをすり抜ける;3)すり抜けた融着物が再びクリーニングブレードと接触した際に静電潜像担持体の回転阻害が起こる;ためにが生じる。
【0017】
これらメカニズムを基に本発明者らが鋭意検討したところ、特定の粒径の脂肪酸金属塩を含有し、トナーの圧縮率と表面自由エネルギーを調整する事でクリーニング不良を起こさず停止スジも改善出来る事を見出し、本発明に至った。
【0018】
まず、脂肪酸金属塩であるが、本発明のトナーは体積基準におけるメジアン径(D50)が0.15μm以上0.65μm以下の脂肪酸金属塩を含有する。一般に、トナー粒径に対し、大粒径の外添剤はトナー粒子に付着し難く、遊離し易い。特に、脂肪酸金属塩は滑性を有するため、この傾向が強い。このため、従来の脂肪酸金属塩は粒径が大きく、トナーと一緒に挙動する事が難しかった。しかし、本発明では脂肪酸金属塩の体積基準におけるメジアン径(D50)を0.15μm以上0.65μm以下とする事で、トナーは脂肪酸金属塩と一緒に挙動する事が出来る。これは、トナーに対して脂肪酸金属塩の粒径が充分に小さいために均一にトナーに付着する事が可能となり、現像時及び、転写時にトナーから脱離しないためである。
【0019】
このような脂肪酸金属塩をトナー粒子100質量部あたり0.05質量部以上0.50質量部以下含有する事により、クリーニングブレードのビビリを高度に抑制できる。この理由についてであるが、転写残トナーにも充分な量の脂肪酸金属塩が均一に付着しており、クリーニング部において脂肪酸金属塩を静電潜像担持体に塗りつけることが可能となるためである。また、脂肪酸金属塩がトナーに対し均一に付着している事から、耐久を通じ安定してクリーニングブレードのビビリを高度に抑制できる。
【0020】
脂肪酸金属塩の量が0.05質量部未満であると上記効果が得られないため好ましくない。一方、脂肪酸金属塩の量が0.50質量部よりも多いと、トナーの現像性が低下する(すなわち、濃度低下が生じる)と共に、カブリが増加するために好ましくない。
【0021】
脂肪酸金属塩の体積基準におけるメジアン径(D50)が0.65μmよりも大きいと、脂肪酸金属塩はトナーに均一に付着し難く、遊離して挙動するようになる。このような状態ではクリーニング部に安定して脂肪酸金属塩を供給する事が難しく、クリーニングブレードのビビリを高度に抑制する事が困難であり、好ましくない。
【0022】
また、脂肪酸金属塩の体積基準におけるメジアン径(D50)が0.15μmよりも小さい場合、トナーを均一に覆い易くなる反面、トナーの帯電性を阻害し現像し難くなる。このため、画像濃度の低下やカブリの増大が生じるので好ましくない。
【0023】
以上のように、本発明において脂肪酸金属塩の体積基準におけるメジアン径(D50)は0.15μm以上0.65μm以下である事が重要であり、より好ましくは0.30μm以上0.60μm以下である。また、脂肪酸金属塩の添加量はトナー粒子100質量部あたり0.05質量部以上0.50質量部以下である事がクリーニングブレードのビビリを高度に抑制するために重要である。
【0024】
次に、本発明のトナーは下式(1)で得られる圧縮率が30%以下である。
式(1) 圧縮率={1−(見掛け密度/タップ密度)}×100
【0025】
圧縮率が30%以下と言う事は圧がかかってもトナーは圧縮され難い事を意味し、クリーニングブレードと静電潜像担持体との当接部においてもトナーは圧縮され難く、融着物が生じ難いと考えられる。このため、停止スジの発生要因である、第一段階の融着物の発生を阻害できる。一方、圧縮率が30%よりも大きいと、当接部に存在するトナーが高密度に圧縮される事になり、融着物を生じ易いために好ましくない。
【0026】
なお、圧縮率はトナーの形状や外添剤の付着状態により制御できる。具体的には、トナー表面の凹凸を無くし平滑にしたり、トナーの円形度を上げる事で圧縮率は低くなる傾向にある。また、トナーの流動性を高める等でも圧縮率は低くなる。
【0027】
本発明のトナーは表面自由エネルギーが40.0mJ/m2以下である。一般的に、表面自由エネルギーが低いと言う事は他の物質との離型性が良好である事を意味する。本発明において、トナーの表面自由エネルギーは40.0mJ/m2以下であるため、たとえクリーニングブレードと静電潜像担持体との当接部で融着物が生じても、静電潜像担持体が1周した後にクリーニングブレードでかきとられると考えられる。これは、融着物と静電潜像担持体との付着力が低いためである。
【0028】
このため、静電潜像担持体の回転阻害が生じ難い。一方、トナーの表面自由エネルギーが40.0mJ/m2よりも大きい場合、融着物と静電潜像担持体との離型性が劣るため、融着物はクリーニングブレードでかきとられ難く、静電潜像担持体の回転阻害を起こしてしまうため、好ましくない。
【0029】
なお、トナーの表面自由エネルギーはトナー表面の組成や外添剤の種類等によっても制御できる。具体的には、トナー表面に離型剤や吸水性の高い化合物を露出させない事により、表面自由エネルギーを下げる事が可能となる。このため、トナーとしてはコア−シェル構造を有した構造が好ましく、水系媒体中にて得られたトナーであるとこのような構造を制御し易いため、好適に用いる事が出来る。また、外添剤としては本発明に必須の脂肪酸金属塩等の離型性が高いものを用い、均一にトナー表面に付着させる事によりトナーの表面自由エネルギーを下げる事が可能となる。
【0030】
これまで述べてきたように、停止スジ発生の3つのプロセスに対し、1)トナーの圧縮率を30%以下とする事で融着を生じ難くする;2)トナーに特定の粒径の脂肪酸金属塩を特定量含有する事により、クリーニングブレードのビビリを高度に抑制する;3)トナーの表面自由エネルギーを40.0mJ/m2以下にする事で、融着物と静電潜像担持体との付着力を低減し、クリーニングブレードの回転阻害を起こさないと言う、各段階での対策を行なう事ではじめて停止スジを大幅に改善できる。
【0031】
また、本発明のトナーはクリーニング性も大幅に改善できる。これは、上述のようにクリーニングブレードのビビリを高度に抑制できる事に加え、下記の点が効果的に作用している為である。
【0032】
まず、本発明のトナーは表面自由エネルギーが40.0mJ/m2以下と低いため、転写残トナーと静電潜像担持体との付着力が十分に低い。このため、転写残トナーをクリーニングブレードがかきとり易くなる。
【0033】
また、本発明のトナーは圧縮率が30%以下と低いため、クリーニングブレードと静電潜像担持体とのクサビ状部分にトナーが入り込み難いため、トナーがすり抜け難い。これら3点の相乗効果により多様な環境において、耐久を通じ安定したクリーニングが可能となる。
【0034】
本発明のトナーは、脂肪酸金属塩の遊離率が10.0質量%以上40.0質量%以下である事が好ましい。脂肪酸金属塩の遊離率が40.0質量%以下と言う事は、多くの脂肪酸金属塩粒子がトナーと一緒に挙動する事を意味し、よりクリーニングブレードのビビリを抑制する事が可能となり、非常に好ましい。また、脂肪酸金属塩の遊離率が10.0質量%以上であると、脂肪酸金属塩がマイクロキャリアのような働きをするため、カブリが良化するので好ましい。
【0035】
本発明のトナーはトナー粒子と脂肪酸金属塩を混合して得られるが、脂肪酸金属塩の遊離率を上記のようにするために、混合条件を制御する事が好ましい。具体的には、トナー粒子と脂肪酸金属塩を混合する混合工程において休止工程を設けると効果がある。休止工程を設けて、混合工程を数回に分けることで、通常の混合工程を行ったときに比べて、トナー粒子と脂肪酸金属塩の運動速度差が生じている時間をより長くすることができ、トナー粒子表面の脂肪酸金属塩の均一化がより進んだ状態となる。さらに、このように休止工程と混合工程とを繰り返すことにより、トナー粒子表面への脂肪酸金属塩の付着も効率よく行うことができ、過剰なストレスによる脂肪酸金属塩の欠損を抑制しつつ、遊離率を上記の範囲にコントロールすることができる。
【0036】
混合工程の撹拌翼最先端の周速は30.0m/sec以上50.0m/sec以下の範囲とすることが好ましい。この範囲であると撹拌翼から受けるエネルギーを急激な発熱を伴わない程度のものとすることができる。撹拌翼最先端の周速が上記の範囲内である場合には、トナー粒子や脂肪酸金属塩を劣化させることなく、脂肪酸金属塩の遊離を抑制できる。
【0037】
混合工程中の槽内温度は、上述してきたように、脂肪酸金属塩、トナー粒子、及びトナーの劣化を抑えるために温度42℃以下にすることが好ましい。
【0038】
本発明に用いる脂肪酸金属塩は、下記式(2)で定義されるスパン値Bが1.75以下であることが好ましく、より好ましくは1.35以下である。
式(2) スパン値B=(D95−D5)/D50
D5 :脂肪酸金属塩の体積基準における5%積算径
D50:脂肪酸金属塩の体積基準における50%積算径
D95:脂肪酸金属塩の体積基準における95%積算径
【0039】
スパン値Bとは脂肪酸金属塩の粒度分布を示す指標であり、スパン値Bが1.75以下であると言う事は、脂肪酸金属塩の粒径のばらつきが小さい事を意味する。上述の如く、本発明において脂肪酸金属塩はトナーに均一に付着している方が好ましいが、脂肪酸金属塩の粒径が均一な方がその効果は大きくなりより効果的である。このため、スパン値Bが1.75以下であると停止スジやクリーニング性が改善される。さらに、脂肪酸金属塩のトナー粒子への付着状態が均一なため、トナーの帯電量分布もシャープになり、カブリも良化するために好ましい。
【0040】
本発明に用いられる脂肪酸金属塩としては、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、リチウムから選ばれる金属の塩が好ましい。この中でも脂肪酸亜鉛または脂肪酸カルシウムが特に好ましく、これらを用いた場合には本発明の効果がより顕著となる。
【0041】
また、脂肪族金属塩の脂肪酸としては、炭素数12以上22以下の高級脂肪酸が好ましい。炭素数12以上の脂肪酸を用いると遊離脂肪酸の発生を抑えやすい。また、脂肪酸の炭素数が22以下であれば、脂肪酸金属塩の融点が高くなりすぎず、良好な定着性が得られやすい。脂肪酸としては、ステアリン酸が特に好ましい。
【0042】
本発明のトナーはコアシェル構造を有しており、該シェル層はポリエステル樹脂を含有する事が好ましい。シェル層にポリエステル樹脂を含有させる事により、耐久を通じて濃度が安定化すると共に、耐久後半でも良好なクリーニング性を維持できる。この理由についてであるが、コアシェル構造を有す事によりコアの着色剤の露出を抑制できると共に、離型剤等の染み出しを抑制できる。これにより耐久後半でも高い現像効率を維持できる。
【0043】
また、シェル層にポリエステル樹脂を含有させる事により、本発明の必須要件である脂肪酸金属塩とのなじみ性が向上し、耐久後半でも安定して均一な付着状態を維持できる。これにより、耐久後半でも良好なクリーニング性を維持できると共に、停止スジもより良化する。
【0044】
本発明において、上記シェル層に含まれるポリエステル樹脂のガラス転移点(Tg)は75℃以上90℃以下である事が好ましい。ポリエステル樹脂のガラス転移点(Tg)が75℃以上であると、トナー劣化を抑制できるために耐久性が向上する。さらに、シェル層のガラス転移点(Tg)が高い事により、クリーニングブレードと静電潜像担持体との当接部においてトナーが圧縮されても融着物を生じ難い。このため、停止スジもより生じ難く、より好ましい。
【0045】
また、ポリエステル樹脂のガラス転移点(Tg)が90℃よりも低いと、脂肪酸金属塩の遊離率や他の外添剤の遊離率を制御し易くなり、好ましい。
【0046】
本発明のトナーに使用されるポリエステル樹脂は、飽和ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、あるいはその両者を適宜選択して使用することが可能である。
【0047】
本発明に使用されるポリエステル樹脂は、アルコール成分と酸成分から構成される通常のものが使用でき、両成分については以下に例示する。
【0048】
アルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ブテンジオール、オクテンジオール、シクロヘキセンジメタノール、水素化ビスフェノールA、また下記式(I)で表されるビスフェノール誘導体;
【0049】
【化1】

[式中、Rはエチレンまたはプロピレン基であり、x,yはそれぞれ1以上の整数であり、かつx+yの平均値は2から10である。]、あるいは式(I)の化合物の水添物、また、下記式(II)で示されるジオール;
【0050】
【化2】

あるいは式(II)の化合物の水添物のジオールが挙げられる。
【0051】
特に、本発明におけるポリエステル樹脂は、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物を含有するアルコール成分と、カルボン酸成分とを縮重合させて得られるポリエステルであることが好ましい。
【0052】
さらに、該ポリエステル樹脂のアルコールモノマーユニットの80mol%以上、より好ましくは90mol%以上が、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物(平均付加モル数=2mol)であることが特に好ましい。
【0053】
アルコールモノマーユニットの80mol%以上が、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物(平均付加モル数=2mol)であることにより、ポリエステル樹脂が、より均一なシェル層としてトナー表面を覆うようになる。これは、シェルを構成するポリエステル樹脂の構造がシンプルなものとなるため、複雑な構成/構造のポリエステル樹脂に比して組成が均一になり易いためである。このため、シェルの均一性が向上し、上述の如き耐久性やクリーニング性、停止スジが向上する。
【0054】
2価のカルボン酸としてはフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸の如きベンゼンジカルボン酸またはその無水物;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸またはその無水物、またさらに炭素数6から18のアルキルまたはアルケニル基で置換されたコハク酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸またはその無水物などが挙げられる。
【0055】
さらに、アルコール成分としてグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビット、ソルビタン、ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテルの如き多価アルコールが挙げられ、酸成分としてトリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸やその無水物等の多価カルボン酸が挙げられる。
【0056】
本発明におけるポリエステル樹脂は全成分中45モル%から55モル%がアルコール成分であり、55モル%から45モル%が酸成分であることが好ましい。
【0057】
本発明におけるポリエステル樹脂は、通常用いられる触媒、例えばスズ、チタン、アンチモン、マンガン、ニッケル、亜鉛、鉛、鉄、マグネシウム、カルシウム、ゲルマニウム等の金属;およびこれら金属含有化合物など、いずれの触媒を用いても製造することができる。これら触媒の中でも特に、チタン系の触媒を用いて重縮合したポリエステル樹脂が好ましい。
【0058】
チタン系の触媒を用いて重縮合したポリエステル樹脂は、均質なポリエステル樹脂になりやすいため、トナー粒子間でのばらつきも少なくなる。このため、特に本発明のトナーの好ましい製造方法である懸濁重合法においては、トナー粒子の外殻を均一に覆いやすくなるため非常に好ましい。
【0059】
また、本発明におけるポリエステル樹脂は、GPC測定により得られるピークトップ分子量が2.5×103以上2.5×104以下であることが好ましく、より好ましくは、2.5×103以上1.5×104以下である。ピークトップ分子量が2.5×103以上であると現像性、耐ブロッキング性、耐久性が向上する。またピークトップ分子量が2.5×104以下であると低温定着性が向上するので好ましい。
【0060】
本発明におけるポリエステル樹脂は、帯電の安定性と言う観点から酸価は1mgKOH/g以上15mgKOH/g以下である事が好ましい。15mgKOH/g以下であることにより、トナーの帯電性が安定化しやすいため、特に高温高湿度環境下での現像性が向上しやすい。また、1mgKOH/g以上であることにより、均一なシェル層を形成しやすい。
【0061】
本発明において、結着樹脂100質量部に対するポリエステル樹脂の含有量は1質量部以上30質量部以下である事が好ましく、より好ましくは2質量部以上20質量部以下である。ポリエステル樹脂の含有量が2質量部以上30質量部以下であると、トナー中でのワックス成分、着色剤成分などの材料の高度な分散性が達成されやすく、さらに軽圧での定着性と両立させやすい。
【0062】
ポリエステル樹脂によりシェル層を形成させる具体的手法としては、コア粒子にシェル用の微粒子を埋め込むことでも可能である。また、本発明に好適な製造方法である水系媒体中でトナーを製造する場合は、コア粒子にシェル用の超微粒子を付着させ、乾燥させる事によりシェル層を形成させる事が可能である。また、溶解懸濁法、懸濁重合法においてはシェル層用のポリエステル樹脂の酸価、親水性を利用し水との界面、即ち、トナー表面近傍にポリエステル樹脂を偏在せしめ、シェル層を形成する事が可能である。さらには、所謂シード重合法によりコア粒子表面にモノマーを膨潤させ、重合する事によりシェル層を形成する事ができる。
【0063】
本発明のトナーの重量平均粒径(D4)は3.0μm以上12.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは4.0μm以上10.0μm以下である。重量平均粒径(D4)が3.0μm以上12.0μm以下であると良好な流動性が得られ、潜像に忠実に現像する事が出来る。このため、ドット再現性に優れた良好な画像を得る事が出来る。
【0064】
本発明のトナーは、平均円形度が0.960以上である事が好ましく、モード円形度が0.97以上であるとより好ましい。トナーの平均円形度が0.960以上だとトナーの形状は球形又はこれに近い形になり、流動性に優れ均一な摩擦帯電性を得られやすい。このため、耐久後半においても高い現像性を維持し易くなるために好ましい。
【0065】
本発明のトナーのガラス転移温度(Tg)は40.0℃以上70.0℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度が40.0℃以上70.0℃以下であると、良好な定着性を維持しつつ保存安定性、そして耐久性を向上できる。
【0066】
本発明のトナーに用いられる結着樹脂としては公知のものが全て使用できるが、特にスチレン−アクリル樹脂が現像特性、定着性等の点で好ましい。
【0067】
本発明のトナーには、帯電特性向上のために必要に応じて荷電制御剤を配合しても良い。荷電制御剤としては、公知のものが利用できるが、帯電スピードが速く、且つ一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が特に好ましい。更に、トナーを後述するような重合法を用いて製造する場合には、重合阻害性が低く、水系分散媒体への可溶物が実質的にない荷電制御剤が特に好ましい。荷電制御剤のうち、ネガ系荷電制御剤として具体的には、サリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸などの芳香族カルボン酸の金属化合物、アゾ染料又はアゾ顔料の金属塩又は金属錯体、スルフォン酸又はカルボン酸基を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーン等が挙げられる。
【0068】
荷電制御剤をトナーに含有させる方法としては、トナー粒子内部に添加する方法と、懸濁重合によりトナーの製造を行う場合には、造粒前に重合性単量体組成物中に荷電制御剤を添加する方法が一般的である。また、水中で油液滴を形成し重合を行っている最中、又は重合後に荷電制御剤を溶解、懸濁させた重合性単量体を加えることによりシード重合を行い、トナー表面を均一に覆うことも可能である。また、荷電制御剤として有機金属化合物を用いる場合は、トナー粒子にこれら化合物を添加し、シェアをかけ混合・撹拌することにより導入することも可能である。
【0069】
これらの荷電制御剤の使用量は、結着樹脂の種類、他の添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるものであり、一義的に限定されるものではない。しかし、トナー粒子に内部添加する場合、好ましくは結着樹脂100質量部に対して0.1質量部以上10.0質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上5.0質量部以下の範囲で用いられる。また、トナー粒子に外部添加する場合、トナー粒子100質量部に対し、好ましくは0.005質量部以上1.000質量部以下、より好ましくは0.01質量部以上0.30質量部以下である。
【0070】
本発明のトナーには、定着性向上のために必要に応じて離型剤を配合しても良い。離型剤としては公知の全ての離型剤を用いる事が出来る。具体的には、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等の石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックスびその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックス等天然ワックス及びその誘導体、エステルワックスなどである。また、エステルワックスとしては1官能エステルワックス、2官能エステルワックスをはじめ、4官能や6官能等の多官能エステルワックスを用いる事が出来る。
【0071】
本発明に用いる離型剤の吸熱ピークトップ温度は50℃以上90℃以下である事が好ましい。吸熱ピークトップ温度が50℃以上90℃以下であると、定着時にトナーが可塑化しやすく、定着性が良化する。また、高温高湿環境下で放置してもワックスのブリーディング等も生じ難く好ましい。
【0072】
本発明のトナーに離型剤を用いる場合、結着樹脂100質量部に対し離型剤を2質量部以上30質量部以下用いる事が好ましい。2質量部以上30質量部以下であると、定着性が向上するとともに、トナーの保存安定性も良好になり易く好ましい。
【0073】
本発明のトナーは磁性体を含有するが、磁性体量は結着樹脂100質量部に対して、20質量部以上150質量部以下である事が好ましい。磁性体の添加量を20質量部以上150質量部以下とする事で、着色力が良好でカブリが少なく、良好な定着性を得る事が出来る。
【0074】
なお、トナー中の磁性体の含有量の測定は、パーキンエルマー社製熱分析装置、TGA7を用いて測定することができる。測定方法は、窒素雰囲気下において昇温速度25℃/分で常温から900℃まで、トナーを加熱し、100℃から750℃まで間の減量質量%を結着樹脂量とし、残存重量を近似的に磁性体量とする。
【0075】
本発明のトナーに用いる磁性体は、四三酸化鉄やγ−酸化鉄などを主成分とするものであり、リン、コバルト、ニッケル、銅、マグネシウム、マンガン、アルミニウムなどの元素を含んでもよい。
【0076】
本発明のトナーに用いる磁性体の形状としては、多面体、8面体、6面体、球形、針状、鱗片状などがあるが、多面体、8面体、6面体、球形等の異方性の少ないものが、画像濃度を高める上で好ましい。
【0077】
本発明のトナーに用いる磁性体は、体積平均粒径(D3)が0.10μm以上0.40μm以下であることが好ましい。磁性体の体積平均粒径(D3)が0.10μm以上0.40μm以下であると、十分な着色力を得られると共に、磁性体の分散性が向上しカブリが低減出来るために好ましい。
【0078】
なお、磁性体の体積平均粒径(D3)は、透過型電子顕微鏡を用いて測定できる。具体的には、エポキシ樹脂中へ観察すべきトナー粒子を十分に分散させた後、温度40℃の雰囲気中で2日間硬化させ得られた硬化物を得る。得られた硬化物をミクロトームにより薄片状のサンプルとして、透過型電子顕微鏡(TEM)において1万倍ないしは4万倍の拡大倍率の写真で視野中の100個の磁性体の粒子径を測定する。そして、磁性体の投影面積に等しい円の相当径を基に、体積平均粒径(D3)の算出を行う。また、画像解析装置により粒径を測定することも可能である。
【0079】
本発明のトナーに用いられる磁性体は、例えば下記の方法で製造することができる。第一鉄塩水溶液に、鉄成分に対して当量又は当量以上の水酸化ナトリウム等のアルカリを加え、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製する。調製した水溶液のpHを7.0以上に維持しながら空気を吹き込み、水溶液を70℃以上に加温しながら水酸化第一鉄の酸化反応を行い、磁性酸化鉄粒子の芯となる種晶をまず生成する。
【0080】
次に、種晶を含むスラリー状の液に前に加えたアルカリの添加量を基準として約1当量の硫酸第一鉄を含む水溶液を加える。液のpHを5.0以上10.0以下に維持し、空気を吹き込みながら水酸化第一鉄の反応を進め、種晶を芯にして磁性酸化鉄粒子を成長させる。この時、任意のpH及び反応温度、撹拌条件を選択することにより、磁性体の形状及び磁気特性をコントロールすることが可能である。酸化反応が進むにつれて液のpHは酸性側に移行していくが、液のpHは5.0未満にしない方が好ましい。このようにして得られた磁性体を定法によりろ過、洗浄、乾燥することにより磁性体を得ることができる。
【0081】
また、本発明において重合法にてトナーを製造する場合、磁性体表面を疎水化処理することが非常に好ましい。乾式にて疎水化処理をする場合、洗浄・ろ過・乾燥した磁性体にカップリング剤を用いて疎水化処理を行う。湿式にて疎水化処理を行う場合、酸化反応終了後、乾燥させたものを再分散させる、又は酸化反応終了後、洗浄、濾過して得られた酸化鉄体を乾燥せずに別の水系媒体中に再分散させ、疎水化処理を行う。具体的には、再分散液を十分撹拌しながらカップリング剤を添加し、加水分解後温度を上げる、或いは、加水分解後に分散液のpHをアルカリ域に調整することで疎水化処理を行う。この中でも、均一な疎水化処理を行うという観点から、酸化反応終了後、ろ過、洗浄後に乾燥させずそのままリスラリー化し、疎水化処理を行うことが好ましい。
【0082】
磁性体の疎水化処理を湿式で、すなわち水系媒体中において磁性体をカップリング剤で処理するには、まず水系媒体中で磁性体を一次粒径となるよう十分に分散させ、沈降、凝集しないように撹拌羽根等で撹拌する。次いで上記分散液に任意量のカップリグ剤を投入し、カップリング剤を加水分解しながら疎水化処理するが、この時も撹拌を行いつつピンミル、ラインミルなどの装置を使いながら凝集しないように十分に分散させつつ疎水化処理を行うことがより好ましい。
【0083】
ここで、水系媒体とは、水を主要成分としている媒体である。具体的には、水そのもの、水に少量の界面活性剤を添加したもの、水にpH調製剤を添加したもの、水に有機溶剤を添加したものが挙げられる。界面活性剤としては、ポリビニルアルコールなどのノンイオン系界面活性剤が好ましい。界面活性剤の添加量は、水100質量部に対して0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。pH調製剤としては、塩酸等の無機酸が挙げられる。有機溶剤としてはアルコール類等が挙げられる。
【0084】
磁性酸化鉄の表面処理に用いる事が出来るシラン化合物としては、例えば一般式(3)で示されるものが挙げられる。
mSiYn (3)
[式中、Rはアルコキシ基を示し、mは1から3の整数を示し、Yはアルキル基、ビニル基、エポキシ基、(メタ)アクリル基などの官能基を示し、nは1から3の整数を示す。但し、m+n=4である。]
【0085】
一般式(3)で示されるシラン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0086】
この中で、高い疎水性を磁性酸化鉄に付与するという観点では、下記一般式(4)で示されるシラン化合物を用いることが好ましい。
p2p+1−Si−(OCq2q+13 (4)
[式中、pは2から20の整数を示し、qは1から3の整数を示す。]
【0087】
上記式におけるpが2より小さいと、磁性酸化鉄に疎水性を十分に付与することが困難であり、またpが20より大きいと疎水性は十分になるが、磁性酸化鉄同士の合一が多くなり好ましくない。更に、qが3より大きいとシラン化合物の反応性が低下して疎水化が十分に行われ難くなる。よって、式中のpが2から20の整数(より好ましくは、3から15の整数)を示し、qが1から3の整数(より好ましくは、1又は2の整数)を示すシラン化合物を使用することが好ましい。
【0088】
上記シラン化合物を用いる場合、単独で処理する、或いは複数の種類を併用して処理することが可能である。複数の種類を併用する場合、それぞれのシラン化合物で個別に処理してもよいし、同時に処理してもよい。
【0089】
用いるシラン化合物の量は磁性酸化鉄100質量部に対して0.5質量部以上5.0質量部以下であることが好ましく、磁性酸化鉄の表面積、シラン化合物の反応性等に応じて処理剤の量を調整することが重要である。
【0090】
本発明のトナーは、公知のいずれの方法によっても製造することが可能である。まず、粉砕法により製造する場合は、例えば、結着樹脂、磁性体、離型剤等のトナーとして必要な成分及びその他の添加剤等をヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合器により十分混合する。その後、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーの如き熱混練機を用いて溶融混練してトナー材料を分散又は溶解させ、冷却固化、粉砕後、分級、必要に応じて表面処理を行ってトナー粒子を得ることができる。分級及び表面処理の順序はどちらが先でもよい。分級工程においては生産効率上、多分割分級機を用いることが好ましい。
【0091】
粉砕工程は、機械衝撃式、ジェット式等の公知の粉砕装置を用いた方法により行うことができる。また、本発明の好ましい円形度を有するトナーを得るためには、更に熱をかけて粉砕したり、補助的に機械的衝撃を加える処理を行ったりすることが好ましい。また、微粉砕(必要に応じて分級)されたトナー粒子を熱水中に分散させる湯浴法、熱気流中を通過させる方法などを用いても良い。
【0092】
機械的衝撃力を加える手段としては、例えば川崎重工社製のクリプトロンシステムやターボ工業社製のターボミル等の機械衝撃式粉砕機を用いる方法が挙げられる。また、ホソカワミクロン社製のメカノフージョンシステムや奈良機械製作所製のハイブリダイゼーションシステム等の装置のように、圧縮力、摩擦力等の力によりトナーに機械的衝撃力を加える方法が挙げられる。
【0093】
本発明のトナーは、上述のように粉砕法によって製造することも可能であるが、この粉砕法で得られるトナー粒子は一般に不定形のものである。この為、均一な帯電性が得られ難く、耐久後の放置において濃度低下を生じ易い。
【0094】
そこで、本発明のトナー粒子は分散重合法、会合凝集法、溶解懸濁法、懸濁重合法等、水系媒体中で製造することが好ましく、懸濁重合法はより好ましい。
【0095】
懸濁重合法とは、重合性単量体及び磁性体(更に必要に応じて重合開始剤、架橋剤、荷電制御剤、その他の添加剤)を均一に溶解又は分散させて重合性単量体組成物を得る。その後、この重合性単量体組成物を分散安定剤を含有する連続層(例えば水相)中に適当な撹拌器を用いて分散し同時に重合反応を行なわせ、所望の粒径を有するトナーを得るものである。この懸濁重合法で得られるトナー(以後「重合トナー」ともいう)は、個々のトナー粒子形状がほぼ球形に揃っているため、帯電量の分布も比較的均一となるために好ましい。
【0096】
本発明に関わる重合トナーの製造において、重合性単量体組成物を構成する重合性単量体としては以下のものが挙げられる。
【0097】
重合性単量体としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エチルスチレン等のスチレン系単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル類、その他のアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等の単量体が挙げられる。これらの単量体は単独で、又は混合して使用し得る。上述の単量体の中でも、スチレン又はスチレン誘導体を単独で、或いは他の単量体と混合して使用することがトナーの現像特性及び耐久性の点から好ましい。
【0098】
本発明のトナーの重合法による製造において使用される重合開始剤としては、重合反応時における半減期が0.5時間以上30.0時間以下であるものが好ましい。また、重合開始剤の添加量は重合性単量体100質量部に対して0.5質量部以上20.0質量部以下である事が好ましい。
【0099】
具体的な重合開始剤例としては、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系又はジアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート等の過酸化物系重合開始剤が挙げられる。
【0100】
本発明のトナーを重合法により製造する際は架橋剤を添加しても良く、好ましい添加量としては、重合性単量体100質量部に対して0.01質量部以上10.00質量部以下である。
【0101】
ここで架橋剤としては、主として2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物が用いられ、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等のような芳香族ジビニル化合物、例えばエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート等のような二重結合を2個有するカルボン酸エステル、ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホン等のジビニル化合物、及び3個以上のビニル基を有する化合物、が単独で、又は2種以上の混合物として用いられる。
【0102】
本発明のトナーを重合法で製造する方法では、一般に上述のトナー組成物等を適宜加えて、ホモジナイザー、ボールミル、超音波分散機等の分散機に依って均一に溶解又は分散させた重合性単量体組成物を、分散安定剤を含有する水系媒体中に懸濁する。この時、高速撹拌機もしくは超音波分散機のような分散機を使用して一気に所望のトナー粒子のサイズとするほうが、得られるトナー粒子の粒径がシャープになる。重合開始剤添加の時期としては、重合性単量体中に他の添加剤を添加する時に同時に加えても良いし、水系媒体中に懸濁する直前に混合しても良い。また、造粒直後、重合反応を開始する前に重合性単量体又は溶媒に溶解した重合開始剤を加えることもできる。
【0103】
造粒後は、通常の撹拌機を用いて、粒子状態が維持され且つ粒子の浮遊・沈降が防止される程度の撹拌を行なえば良い。
【0104】
本発明のトナーを製造する場合には、分散安定剤として公知の界面活性剤や有機分散剤・無機分散剤が使用できる。中でも無機分散剤は、有害な超微粉を生じ難く、その立体障害性により分散安定性を得ているので反応温度を変化させても安定性が崩れ難く、洗浄も容易でトナーに悪影響を与え難いため、好ましく使用できる。こうした無機分散剤の例としては、燐酸三カルシウム、燐酸マグネシウム、燐酸アルミニウム、燐酸亜鉛、ヒドロキシアパタイト等の燐酸多価金属塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、メタ硅酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の無機化合物が挙げられる。
【0105】
これらの無機分散剤は、重合性単量体100質量部に対して0.20質量部以上20.00質量部以下の量を用いる事が好ましい。また、上記分散安定剤は単独で用いても良いし、複数種を併用してもよい。更に、重合性単量体100質量部に対して、0.0001質量部以上0.1000質量部以下の界面活性剤を併用しても良い。
【0106】
上記重合性単量体を重合する工程において、重合温度は40℃以上、一般には50℃以上90℃以下の温度に設定される。
【0107】
上記重合性単量体の重合終了後、得られた重合体粒子を公知の方法によって濾過、洗浄、乾燥することによりトナー粒子が得られる。このトナー粒子に、後述するような無機微粉体を必要に応じて混合して前記トナー粒子の表面に付着させることで、本発明のトナーを得ることができる。また、製造工程(無機微粉体の混合前)に分級工程を入れ、トナー粒子中に含まれる粗粉や微粉をカットすることも可能である。
【0108】
本発明のトナーは無機微粉体を有する事が好ましく、無機微粉体としては個数平均1次粒径(D1)が4nm以上80nm以下、より好ましくは6nm以上40nm以下である事がより好ましい。
【0109】
無機微粉体の個数平均1次粒径(D1)が4nm以上80nm以下であるとトナーの流動性が優れたものとなり、均一な帯電性を得る事が出来ると共に、長期使用においても均一な画像を得る事が出来る。
【0110】
本発明において、無機微粉体の個数平均1次粒径(D1)の測定法は、走査型電子顕微鏡により拡大撮影したトナーの写真を用いて行う。
【0111】
本発明で用いられる無機微粉体としては、シリカ、酸化チタン、アルミナなどが使用できる。シリカ微粉体としては、例えば、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成されたいわゆる乾式法又はヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及び水ガラス等から製造されるいわゆる湿式シリカの両者が使用可能である。
【0112】
本発明において無機微粉体の添加量は、トナー粒子100質量部に対して0.1質量部以上5.0質量部以下である事が好ましい。無機微粉体の添加量上記範囲であると、トナーに良好は流動性を与える事が出来、定着性も阻害しないので好ましい。
【0113】
なお、無機微粉体の含有量は、蛍光X線分析を用い、標準試料から作成した検量線を用いて定量できる。
【0114】
次に、本発明のトナーを好適に用いることのできる画像形成装置の一例を図1に沿って具体的に説明する。図1において、100は静電潜像担持体(以下、感光体とも呼ぶ)であり、その周囲に帯電ローラー117、トナー担持体102を有する現像器140、転写帯電ローラー114、クリーナー116、レジスタローラー124等が設けられている。静電潜像担持体100は帯電ローラー117によって例えば−600Vに帯電される(印加電圧は例えば交流電圧1.85kVpp、直流電圧−620Vdc)。そして、レーザー発生装置121によりレーザー光123を静電潜像担持体100に照射することによって露光が行われ、目的の画像に対応した静電潜像が形成される。静電潜像担持体100上の静電潜像は現像器140によって一成分トナーで現像されてトナー画像を得、トナー画像は転写材Pを介して静電潜像担持体に当接された転写ローラー114により転写材上へ転写される。トナー画像を載せた転写材Pは搬送ベルト125等により定着器126へ運ばれ転写材上に定着される。また、一部静電潜像担持体上に残されたトナーはクリーナー116によりクリーニングされる。
【0115】
次に、本発明のトナーに係る各物性の測定方法に関して記載する。
【0116】
(1)トナーの平均粒径
本発明のトナーの重量平均粒径(D4)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行ない、算出した。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
【0117】
尚、測定、解析を行なう前に、以下のように専用ソフトの設定を行なった。
【0118】
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
【0119】
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
1−1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行なう。そして、解析ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
1−2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
1−3)発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
1−4)前記1−2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
1−5)前記1−4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
1−6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記1−5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行なう。
1−7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4を算出する。尚、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
【0120】
(2)表面自由エネルギー
磁性トナー表面及びトナー担持体表面の表面自由エネルギーは、下記装置を用い、該装置の操作マニュアルに従い、表面自由エネルギー3成分が既知のプローブ液体(水、ジヨードメタン、エチレングリコール)を使用して、下記条件にて測定した。
【0121】
具体的には、協和界面科学(株)製の接触角計CA−X ROLL型を使用し、磁性トナー及びトナー担持体の表面における上記各プローブ液体の接触角θを測定し、北崎・畑の理論の式を用い、表面自由エネルギーを求めた。
(i)接触角θの詳細な測定条件は以下のとおりである。
測定 :液滴法(真円フィッティング)
液量 :1μl
着滴認識 :自動
画像処理 :アルゴリズム−無反射
イメージモード :フレーム
スレッシホールドレベル:自動
【0122】
また、接触角θに関しては、各プローブ液体を用いそれぞれ5回測定を行い、5回の平均値をもって該プローブ液体の接触角θとした。データ解析にはFAMAS(協和界面科学(株)製)を用いた。
【0123】
なお、トナーはプレス成型機MAEKAWA Testing Machine(MFG Co,LTD製)を用い、以下の条件にてペレットを作成し、上記条件にて表面自由エネルギーの測定を行なった。
アルミリング:直径30mm
トナー:4.1g
プレス圧:200kgf
プレス時間:3分
【0124】
(3)脂肪酸金属塩のメジアン径とスパン値Bの測定
本発明で用いられる脂肪酸金属塩の体積基準のメジアン径の測定は、JIS Z8825−1(2001年)に準じて測定されるが、具体的には以下の通りである。
【0125】
測定装置としては、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置「LA−920」(堀場製作所社製)を用いる。測定条件の設定および測定データの解析は、LA−920に付属の専用ソフト「HORIBA LA−920 for Windows(登録商標) WET(LA−920) Ver.2.02」を用いる。また、測定溶媒としては、予め不純固形物などを除去したイオン交換水を用いる。
【0126】
測定手順は、以下の通りである。
(1)バッチ式セルホルダーをLA−920に取り付ける。
(2)所定量のイオン交換水をバッチ式セルに入れ、バッチ式セルをバッチ式セルホルダーにセットする。
(3)専用のスターラーチップを用いて、バッチ式セル内を撹拌する。
(4)「表示条件設定」画面の「屈折率」ボタンを押し、ファイル「110A000I」(相対屈折率1.10)を選択する。
(5)「表示条件設定」画面において、粒子径基準を体積基準とする。
(6)1時間以上の暖気運転を行った後、光軸の調整、光軸の微調整、ブランク測定を行う。
(7)ガラス製の100ml平底ビーカーに約60mlのイオン交換水を入れる。この中に分散剤として、「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(8)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2ml添加する。
(9)前記(7)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(10)前記(9)のビーカー内の水溶液に超音波を照射した状態で、約1mgの脂肪酸金属塩を少量ずつ前記ビーカー内の水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、この際に脂肪酸金属塩が固まりとなって液面に浮く場合があるが、その場合はビーカーを揺り動かすことで固まりを水中に沈めてから60秒間の超音波分散を行う。また、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(11)前記(10)で調製した脂肪酸金属塩が分散した水溶液を、気泡が入らないように注意しながら直ちにバッチ式セルに少量ずつ添加して、タングステンランプの透過率が90%〜95%となるように調整する。そして、粒度分布の測定を行う。得られた体積基準の粒度分布のデータを元に、5%積算径、50%積算径及び95%積算径を算出する。得られた各値をD5、D50、D95とし、これらよりスパン値Bを求める。
【0127】
(4)ガラス転移点(Tg)
トナー及びシェル層に用いられるポリエステル樹脂のガラス転移点(Tg)はDSCにてASTM D 3418−99に準じて行う。
【0128】
吸熱ピークのピークトップの測定はASTM D 3417−99に準じて行う。これらの測定には、例えばパーキンエルマー社製DSC−7、TAインストルメント社製DSC2920、TAインストルメント社製Q1000を用いることができる。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。測定サンプルにはアルミニウム製のパンを用い、対照用に空パンをセットし測定する。
【0129】
(5)圧縮率
本発明において、圧縮率は下記式で得られる値である。
圧縮率={1−(見掛け密度/タップ密度)}×100
【0130】
本発明の見掛け密度、タップ密度は、パウダーテスター(ホソカワミクロン社製)を用いて以下の方法で測定する。
【0131】
直径5.03cm,高さ5.03cm、容積100cm3の円筒容器へ目開き608μm(24メッシュ)の篩いを通して上方から均一に30秒間供給し、ただちに上面をすり切って秤量することにより見掛け密度(g/cm3)を得る。
【0132】
見掛け密度測定後円筒状のキャップをはめ、この上縁まで粉体を加えてタップ高さ1.8cmのタッピングを180回行う。終了後、キャップを外して容器の上面で粉体をすり切って秤量し、この状態の密度をタップ密度(g/cm3)とする。
【0133】
(6)脂肪酸金属塩の遊離率
本発明におけるトナー中の脂肪酸金属塩の遊離率は、KM Shaker(いわき産業社製)と、蛍光X線分析装置 Axios(PANalytical製)及び測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「SuperQ ver.4.0F」(PANalytical社製)を用いて蛍光X線の強度差により脂肪酸金属塩の遊離率を求める。
【0134】
具体的な測定法としては、以下の通りである。
(1)トナーをリング径22mm×16mm×5mmの塩ビリングに約1g載せ、プレス機にて100kgfで圧縮しサンプルを作成する。得られたサンプルを蛍光X線分析装置(Axios)で測定し、トナーが含有する脂肪酸金属塩の金属元素由来のネット強度を得る。
(2)トナー粒子に関しても(1)と同様に蛍光X線分析装置(Axios)で測定しておき、脂肪酸金属塩に含まれる金属元素について、トナー粒子のみに由来するネット強度を得ておく。
(3)トナーを1g精評しておき、30ccバイアルにメタノールを16g入れておく。バイアル中にトナーを投入し、30秒間静置後に下記条件で振とうし、磁力によってトナーを分離する。
【0135】
[振とう装置/条件]
装置:KM Shaker(いわき産業社製)
model:V.SX
振とう条件:speedを50に設定し、10秒間振とう
分離したトナーを真空乾燥機で一晩乾燥し、得られた試料を(1)と同様の塩ビリングに約1g載せ、プレス機にて100kgfで圧縮しサンプルを作成する。得られたサンプルを蛍光X線分析装置(Axios)で測定し、メタノール中で振とうした後の試料に含有される脂肪酸金属塩由来のネット強度を得る。
【0136】
尚、X線管球のアノードとしてはRhを用い、測定雰囲気は真空、測定径(コリメーターマスク径)は10mm、測定時間300秒とする。また、軽元素を測定する場合にはプロポーショナルカウンタ(PC)、重元素を測定する場合にはシンチレーションカウンタ(SC)で検出する。
【0137】
脂肪酸金属塩の遊離率は、メタノール振とう前後の脂肪酸金属塩の金属元素のKα線ネット強度(KCPS)を測定して、下記式より求める。
脂肪酸金属塩の遊離率(%)={(B−T)−(A−T)}/(B−T)×100
A:メタノール振とう後のトナーにおける脂肪酸金属塩の金属元素のネット強度
B:メタノール振とう前のトナーにおける脂肪酸金属塩の金属元素のネット強度
T:トナー粒子のネット強度
【実施例】
【0138】
以下、本発明を製造例及び実施例により更に具体的に説明するが、これらは本発明をなんら限定するものではない。なお、以下の配合における部数は全て部を示す。
【0139】
<磁性体1の製造>
硫酸第一鉄水溶液中に、鉄元素に対して1.00から1.10当量の苛性ソーダ溶液、鉄元素に対しリン元素換算で0.15質量%となる量のP25、鉄元素に対して珪素元素換算で0.50質量%となる量のSiO2を混合し、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製した。水溶液のpHを8.0とし、空気を吹き込みながら85℃で酸化反応を行い、種晶を有するスラリー液を調製した。
【0140】
次いで、このスラリー液に当初のアルカリ量(苛性ソーダのナトリウム成分)に対し0.90から1.20当量となるよう硫酸第一鉄水溶液を加えた後、スラリー液をpH7.6に維持して、空気を吹込みながら酸化反応をすすめ、磁性酸化鉄を含むスラリー液を得た。濾過、洗浄した後、この含水スラリー液を一旦取り出した。この時、含水サンプルを少量採取し、含水量を計っておいた。次に、この含水サンプルを乾燥せずに別の水系媒体中に投入し、撹拌すると共にスラリーを循環させながらピンミルにて再分散させ、再分散液のpHを約4.8に調整する。そして、撹拌しながらn−ヘキシルトリメトキシシランカップリング剤を磁性酸化鉄100部に対し1.6部(磁性酸化鉄の量は含水サンプルから含水量を引いた値として計算した)添加し、加水分解を行った。その後、撹拌を十分行い、分散液のpHを8.6にして表面処理を行った。生成した疎水性磁性体をフィルタープレスにてろ過し、多量の水で洗浄した後に100℃で15分、90℃で30分乾燥し、得られた粒子を解砕処理して体積平均粒径が0.21μmの磁性体1を得た。
【0141】
<磁性体2の製造>
硫酸第一鉄水溶液中に、鉄元素に対して1.00から1.10当量の苛性ソーダ溶液、鉄元素に対しリン元素換算で0.15質量%となる量のP25、鉄元素に対して珪素元素換算で0.50質量%となる量のSiO2を混合し、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製した。水溶液のpHを8.0とし、空気を吹き込みながら85℃で酸化反応を行い、種晶を有するスラリー液を調製した。次いで、このスラリー液に当初のアルカリ量(苛性ソーダのナトリウム成分)に対し0.90から1.20当量となるよう硫酸第一鉄水溶液を加えた後、スラリー液をpH7.6に維持して、空気を吹込みながら酸化反応をすすめ、磁性酸化鉄を含むスラリー液を得た。濾過、洗浄した後、乾燥し、得られた粒子を解砕処理して体積平均粒径が0.21μmの磁性体2を得た。
【0142】
<ポリエステル樹脂1の合成>
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、表1に示す、無水トリメリット酸以外のモノマー成分を、同表中のモル比で入れ、下記成分を入れ、230℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら10時間反応させた。この際、触媒としては、チタン系触媒(チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート))を、酸/アルコールのモノマー総量100部に対して、0.25部添加した。
【0143】
次いで20mmHgの減圧下に反応させ、酸価が2以下になった時点で180℃に冷却し、無水トリメリット酸を添加し、常圧密閉下2時間反応後取り出し、室温まで冷却後、粉砕してポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂1は、Mp=10500、ガラス転移点は86℃であった。
【0144】
<ポリエステル樹脂2乃至5の合成>
表1に示すようなモノマー組成に変更したこと以外は、ポリエステル樹脂1の合成と同様にして、ポリエステル樹脂2乃至5を得た。得られたポリエステル樹脂のガラス転移点とMpを表1に示す。
【0145】
【表1】

【0146】
上記表中、BPA−PO(2):ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2モル付加物、BPA−PO(3):ビスフェノールAのプロピレンオキサイド3モル付加物、TPA:テレフタル酸、TMA:無水トリメリット酸を、それぞれ示す。
【0147】
<脂肪酸金属塩1の製造>
撹拌装置付きの容器を用意し、撹拌機を350rpmで回転させた。この受け容器に0.5質量%ステアリン酸ナトリウム水溶液500部を投入し、液温を85℃に調整した。次に、この受け容器に0.2質量%硫酸亜鉛水溶液525部を、15分かけて滴下した。全量仕込み終了後、反応時の温度状態で10分間熟成し、反応を終結した。
【0148】
次に、このようにして得られた脂肪酸金属塩スラリーを濾過洗浄した。得られた洗浄後の脂肪酸金属塩ケーキを粗砕後、連続瞬間気流乾燥機を用いて105℃で乾燥した。その後、ナノグラインディングミル〔NJ−300〕(サンレックス社製)にて風量6.0m3/min、処理速度80kg/hの条件で粉砕した後、リスラリーして湿式遠心分級機を用いて微粒子、粗粒子の除去を行った。その後、連続瞬間気流乾燥機を用いて80℃で乾燥して脂肪酸金属塩1を得た。得られた脂肪酸金属塩1の体積基準におけるメジアン径(D50)は0.45μm、スパン値Bは0.92であった。脂肪酸金属塩1の物性を表2に示す。
【0149】
<脂肪酸金属塩2の製造>
脂肪酸金属塩1の製造において、0.2質量%硫酸亜鉛水溶液を0.3質量%塩化カルシウム水溶液に変更した。それ以外の工程は脂肪酸金属塩1の製造と同様にして、脂肪酸金属塩2を得た。得られた脂肪酸金属塩2の体積基準におけるメジアン径(D50)は0.50μm、スパン値Bは1.22であった。脂肪酸金属塩2の物性を表2に示す。
【0150】
<脂肪酸金属塩3の製造>
脂肪酸金属塩1の製造において、0.5質量%ステアリン酸ナトリウム水溶液を0.25質量%ステアリン酸ナトリウム水溶液に、0.2質量%硫酸亜鉛水溶液を0.15質量%硫酸亜鉛水溶液に変更した。それ以外の工程は脂肪酸金属塩1の製造と同様にして、脂肪酸金属塩3を得た。得られた脂肪酸金属塩3の体積基準におけるメジアン径(D50)は0.30μm、スパン値Bは0.83であった。脂肪酸金属塩3の物性を表2に示す。
【0151】
<脂肪酸金属塩4の製造>
脂肪酸金属塩1の製造において、0.5質量%ステアリン酸ナトリウム水溶液を0.7質量%ステアリン酸ナトリウムに変更し、0.2質量%硫酸亜鉛水溶液を0.4質量%硫酸亜鉛水溶液に変更した。また、粉砕の条件を風量4.0m3/min、処理速度40kg/hとした。それ以外の工程は脂肪酸金属塩1の製造と同様にして、脂肪酸金属塩4を得た。得られた脂肪酸金属塩4の体積基準におけるメジアン径(D50)は0.60μm、スパン値Bは1.12であった。脂肪酸金属塩4の物性を表2に示す。
【0152】
<脂肪酸金属塩5の製造>
脂肪酸金属塩1の製造において、0.5質量%ステアリン酸ナトリウム水溶液を0.8質量%ステアリン酸ナトリウムに変更し、0.2質量%硫酸亜鉛水溶液を0.4質量%硫酸亜鉛水溶液に変更した。また、粉砕の条件を風量3.5m3/min、処理速度40kg/hとした。それ以外の工程は脂肪酸金属塩1の製造と同様にして、脂肪酸金属塩5を得た。得られた脂肪酸金属塩5の体積基準におけるメジアン径(D50)は0.65μm、スパン値Bは1.35であった。脂肪酸金属塩5の物性を表2に示す。
【0153】
<脂肪酸金属塩6の製造>
脂肪酸金属塩1の製造において、0.5質量%ステアリン酸ナトリウム水溶液を0.8質量%ステアリン酸ナトリウムに変更し、0.2質量%硫酸亜鉛水溶液を0.4質量%硫酸亜鉛水溶液に変更した。また、粉砕の条件を風量3.5m3/min、処理速度40kg/hに変更し、粉砕後は風力式の分級機で微粗粉を取り除いた。それ以外の工程は脂肪酸金属塩1の製造と同様にして、脂肪酸金属塩6を得た。得られた脂肪酸金属塩6の体積基準におけるメジアン径(D50)は0.65μm、スパン値Bは1.75であった。脂肪酸金属塩5の物性を表2に示す。
【0154】
<脂肪酸金属塩7の製造>
脂肪酸金属塩6の製造において、風力式の分級機の分級条件を変更し、微粗粉を取り除いた。それ以外の工程は脂肪酸金属塩6の製造と同様にして、脂肪酸金属塩7を得た。得られた脂肪酸金属塩7の体積基準におけるメジアン径(D50)は0.65μm、スパン値Bは1.92であった。脂肪酸金属塩7の物性を表2に示す。
【0155】
<脂肪酸金属塩8の製造>
脂肪酸金属塩1の製造において、0.5質量%ステアリン酸ナトリウム水溶液を1.0質量%ステアリン酸ナトリウムに変更し、0.2質量%硫酸亜鉛水溶液を0.4質量%硫酸亜鉛水溶液に変更した。また、15分間の熟成で反応を終結させた。また、粉砕の条件を風量4.0m3/minに変更した。それ以外の工程は脂肪酸金属塩1の製造と同様にして、脂肪酸金属塩8を得た。得られた脂肪酸金属塩8の体積基準におけるメジアン径(D50)は0.72μm、スパン値Bは1.26であった。脂肪酸金属塩8の物性を表2に示す。
【0156】
<脂肪酸金属塩9の製造>
脂肪酸金属塩1の製造において、0.5質量%ステアリン酸ナトリウム水溶液を0.3質量%ステアリン酸ナトリウム水溶液に、0.2質量%硫酸亜鉛水溶液を0.15質量%硫酸亜鉛水溶液に変更した。また、粉砕の条件を風量10.0m3/minに変更し、粉砕工程を3回行うように変更した。それ以外の工程は脂肪酸金属塩1の製造と同様にして、脂肪酸金属塩9を得た。得られた脂肪酸金属塩9の体積基準におけるメジアン径(D50)は0.15μm、スパン値Bは1.22であった。脂肪酸金属塩9の物性を表2に示す。
【0157】
<脂肪酸金属塩10の製造>
脂肪酸金属塩1の製造において、0.5質量%ステアリン酸ナトリウム水溶液を0.05質量%ステアリン酸ナトリウムに変更し、また0.2質量%硫酸亜鉛水溶液を0.02質量%硫酸亜鉛水溶液に変更した。また、粉砕の条件を風量10.0m3/minに変更し、粉砕工程を3回行うように変更した。それ以外の工程は脂肪酸金属塩1の製造と同様にして、脂肪酸金属塩10を得た。得られた脂肪酸金属塩10の体積基準におけるメジアン径(D50)は0.12μm、スパン値Bは1.25であった。脂肪酸金属塩10の物性を表2に示す。
【0158】
<脂肪酸金属塩11>
市販されているステアリン酸亜鉛(MZ2 日本油脂製)を脂肪酸金属塩11とする。体積基準におけるメジアン径(D50)は1.29μm、スパン値Bは1.61であった。脂肪酸金属塩11の物性を表2に示す。
【0159】
<脂肪酸金属塩12>
市販されているステアリン酸亜鉛(SZ2000 堺化学工業製)を脂肪酸金属塩12とする。体積基準におけるメジアン径(D50)は5.30μm、スパン値Bは1.84であった。脂肪酸金属塩12の物性を表2に示す。
【0160】
【表2】

【0161】
<トナー1の製造>
イオン交換水720部に0.1M−Na3PO4水溶液450部を投入して60℃に加温した後、1.0M−CaCl2水溶液67.7部を添加して、分散安定剤を含む水系媒体を得た。
・スチレン 78.0部
・n−ブチルアクリレート 22.0部
・ジビニルベンゼン 0.6部
・モノアゾ染料の鉄錯体(T−77:保土ヶ谷化学社製) 3.0部
・磁性体1 90.0部
・ポリエステル樹脂1 5.0部
上記処方をアトライター(三井三池化工機(株))を用いて均一に分散混合して単量体組成物を得た。この単量体組成物を60℃に加温し、そこにフィッシャートロプシュワックス15.0部を添加混合し、溶解した後に重合開始剤としてジラウロイルパーオキサイド7.0部を溶解した。
【0162】
上記水系媒体中に上記単量体組成物を投入し、60℃、N2雰囲気下においてTK式ホモミキサー(特殊機化工業(株))にて12000rpmで10分間撹拌し、造粒した。その後パドル撹拌翼で撹拌しつつ74℃で6時間反応させた。
【0163】
反応終了後、懸濁液を冷却し、塩酸を加えて洗浄した後に濾過・乾燥して磁性トナー粒子1を得た。
【0164】
この磁性トナー粒子1を100.00部、個数平均1次粒径12nmの疎水性シリカ微粉体1.00部、脂肪酸金属塩1を0.20部をヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))に投入した。そして、撹拌翼の周速を40m/secとして4分間撹拌・混合した。その後、撹拌・混合を1分間停止し、再び、撹拌翼の周速を40m/secとして4分間撹拌・混合して重量平均粒径(D4)が6.8μmの磁性トナー1を得た。得られた磁性トナー1を分析したところ、結着樹脂100部を含有していた。磁性トナー1の物性を表3に示す。
【0165】
<トナー2の製造>
トナー1の製造において、脂肪酸金属塩1を脂肪酸金属塩2に変更した事以外はトナー1の製造と同様にして磁性トナー2を得た。磁性トナー2の物性を表3に示す。
【0166】
<トナー3の製造>
トナー1の製造において、脂肪酸金属塩1を脂肪酸金属塩3にし、添加量を0.05部に変更した事以外はトナー1の製造と同様にして磁性トナー3を得た。磁性トナー3の物性を表3に示す。
【0167】
<トナー4の製造>
トナー1の製造において、ポリエステル樹脂1をポリエステル樹脂2に変更した。また、脂肪酸金属塩1を脂肪酸金属塩4にし、添加量を0.40部に変更した事以外はトナー1の製造と同様にして磁性トナー4を得た。磁性トナー4の物性を表3に示す。
【0168】
<トナー5の製造>
トナー1の製造において、ポリエステル樹脂1をポリエステル樹脂2に変更した。また、脂肪酸金属塩1を脂肪酸金属塩4にし、添加量を0.50部に変更した事以外はトナー1の製造と同様にして磁性トナー5を得た。磁性トナー5の物性を表3に示す。
【0169】
<トナー6の製造>
トナー5の製造において、ポリエステル樹脂2をポリエステル樹脂3に変更した事以外はトナー5の製造と同様にして磁性トナー6を得た。磁性トナー6の物性を表3に示す。
【0170】
<トナー7の製造>
トナー5の製造において、ポリエステル樹脂2をポリエステル樹脂4に変更した事以外はトナー5の製造と同様にして磁性トナー7を得た。磁性トナー7の物性を表3に示す。
【0171】
<トナー8の製造>
トナー5の製造において、ポリエステル樹脂2をポリエステル樹脂5に変更した事以外はトナー5の製造と同様にして磁性トナー8を得た。磁性トナー8の物性を表3に示す。
【0172】
<トナー9の製造>
トナー5の製造において、ポリエステル樹脂2をスチレン−アクリル樹脂(ピーク分子量=10000、ガラス転移点:74℃、酸価=10mg/KOH)に変更した事以外はトナー5の製造と同様にして磁性トナー9を得た。磁性トナー9の物性を表3に示す。
【0173】
<トナー10の製造>
トナー1の製造において、脂肪酸金属塩1を脂肪酸金属塩9にし、添加量を0.05部に変更した事以外はトナー1の製造と同様にして磁性トナー10を得た。磁性トナー10の物性を表3に示す。
【0174】
<トナー11の製造>
トナー5の製造において、脂肪酸金属塩4を脂肪酸金属塩5にした事以外はトナー5の製造と同様にして磁性トナー11を得た。磁性トナー11の物性を表3に示す。
【0175】
<トナー12の製造>
トナー5の製造において、脂肪酸金属塩4を脂肪酸金属塩6にした事以外はトナー5の製造と同様にして磁性トナー12を得た。磁性トナー12の物性を表3に示す。
【0176】
<トナー13の製造>
トナー5の製造において、脂肪酸金属塩4を脂肪酸金属塩7にした事以外はトナー5の製造と同様にして磁性トナー13を得た。磁性トナー13の物性を表3に示す。
【0177】
<トナー14の製造>
トナー10の製造において、ヘンシェルミキサーの撹拌翼の周速を40m/secで4分間撹拌・混合し、1分間停止した。再びを同周速で4分間撹拌・混合し、1分間停止した。さらに、同周速で4分間撹拌・混合した事以外はトナー10の製造と同様にして磁性トナー14を得た。磁性トナー14の物性を表3に示す。
【0178】
<トナー15の製造>
トナー13の製造において、ヘンシェルミキサーの撹拌翼の周速を30m/secに変更し、2回の撹拌・混合時間を2分に変更した事以外はトナー13の製造と同様にして磁性トナー15を得た。磁性トナー15の物性を表3に示す。
【0179】
<トナー16の製造>
トナー9の製造において、脂肪酸金属塩4を脂肪酸金属塩7に変更した事以外はトナー9の製造と同様にして磁性トナー16を得た。磁性トナー16の物性を表3に示す。
【0180】
<トナー17の製造>
トナー10の製造において、脂肪酸金属塩9の添加量を0.03部に変更した事以外はトナー10の製造と同様にして磁性トナー17を得た。磁性トナー17の物性を表3に示す。
【0181】
<トナー18の製造>
トナー11の製造において、脂肪酸金属5の添加量を0.60部に変更した事以外はトナー11の製造と同様にして磁性トナー18を得た。磁性トナー18の物性を表3に示す。
【0182】
<トナー19の製造>
トナー10の製造において、脂肪酸金属塩9を脂肪酸金属塩10に変更した事以外はトナー10の製造と同様にして磁性トナー19を得た。磁性トナー19の物性を表3に示す。
【0183】
<トナー20の製造>
トナー11の製造において、脂肪酸金属塩5を脂肪酸金属塩8に変更した事以外はトナー11の製造と同様にして磁性トナー20を得た。磁性トナー20の物性を表3に示す。
【0184】
<トナー21の製造>
トナー11の製造において、脂肪酸金属塩5を脂肪酸金属塩11に変更した事以外はトナー11の製造と同様にして磁性トナー21を得た。磁性トナー21の物性を表3に示す。
【0185】
<トナー22の製造>
トナー11の製造において、脂肪酸金属塩5を脂肪酸金属塩12に変更した事以外はトナー11の製造と同様にして磁性トナー22を得た。磁性トナー22の物性を表3に示す。
【0186】
<トナー23の製造>
(樹脂粒子分散液1の調製)
スチレン 306部
n−ブチルアクリレート 94部
ジビニルベンゼン 3.6部
前記成分を混合溶解して溶液を調製した。
【0187】
これをアニオン性界面活性剤4部をイオン交換水570部に溶解した溶液を加えて乳化・撹拌し、74℃に加熱した。これにジラウロイルパーオキサイド25.0部を加え、重合転化率が40%に達した時点でアスコルビン酸ナトリウム6.0部を加えた。その後5時間反応し、中心粒径が0.26μmの樹脂粒子分散液1を得た。
【0188】
(樹脂粒子分散液2の調製)
ポリエステル樹脂2 20部
イオン交換水 200部
前記成分を圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理を施し、中心径0.19μmの樹脂粒子分散液2を得た。
【0189】
(磁性体分散液の調製)
磁性体2 150部
非イオン性界面活性剤 10部
イオン交換水 400部
前記成分を混合溶解し、ホモジナイザーにより30分間分散し、磁性体分散液1を得た。
【0190】
(離型剤分散液の調製)
フィッシャートロプシュワックス 50部
カチオン性界面活性剤 5部
イオン交換水 200部
前記成分を圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理を施し、中心径0.16μmの離型剤粒子を含有する離型剤分散液を得た。
【0191】
(トナーの製造)
樹脂粒子分散液1 200部
磁性体分散液1 283部
離型剤分散液1 64部
ポリ塩化アルミニウム 1.23部
前記成分をホモジナイザーで十分に混合・分散した後、を撹拌しながら58℃まで加熱した。その後、58℃で180分間保持した後、さらに樹脂粒子分散液2を30部追加して撹拌した。
【0192】
その後、0.5mol/lの水酸化ナトリウム水溶液で系内のpHを7.0に調整した後、撹拌を継続しながら85℃まで加熱し、1時間撹拌した。その後、pHを4.0まで低下して6時間保持した。反応終了後、冷却し、濾過、イオン交換水による十分な洗浄を行った後、濾過、洗浄、乾燥を行い磁性トナー粒子23を得た。
【0193】
この磁性トナー粒子23を100.00部、個数平均1次粒径12nmの疎水性シリカ微粉体1.00部、脂肪酸金属塩4を0.40部をヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))に投入した。そして、撹拌翼の周速を40m/secとして4分間撹拌・混合した。その後、撹拌・混合を1分間停止し、再び、撹拌翼の周速を40m/secとして4分間撹拌・混合して重量平均粒径(D4)が7.2μmの磁性トナー23を得た。磁性トナー23の物性を表3に示す。
【0194】
<トナー24の製造>
・スチレン/n−ブチルアクリレート共重合体(質量比78/22) 100.0部
・モノアゾ染料の鉄錯体(T−77:保土ヶ谷化学社製) 3.0部
・磁性体2 90.0部
・フィッシャートロプシュワックス 15.0部
上記材料をブレンダーにて混合し、130℃に加熱した2軸エクストルーダーで溶融混練し、冷却した混練物をハンマーミルで粗粉砕し、粗粉砕物をジェットミルで微粉砕した後、微粉砕物を風力分級して磁性トナー粒子24を得た。
【0195】
この磁性トナー粒子24を100.00部、個数平均1次粒径12nmの疎水性シリカ微粉体1.00部、脂肪酸金属塩4を0.40部をヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))に投入した。そして、撹拌翼の周速を40m/secとして4分間撹拌・混合した。その後、撹拌・混合を1分間停止し、再び、撹拌翼の周速を40m/secとして4分間撹拌・混合して重量平均粒径(D4)が7.5μmの磁性トナー24を得た。磁性トナー24の物性を表3に示す。
【0196】
<トナー25の製造>
トナー24の製造で得られた磁性トナー粒子24をハイブリタイザー(奈良機械社製)を用い、6000回転で3分間の処理を3回行って磁性トナー粒子25を得た。この磁性トナー粒子25を100.00部、個数平均1次粒径12nmの疎水性シリカ微粉体1.00部、脂肪酸金属塩4を0.40部をヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))に投入した。そして、撹拌翼の周速を40m/secとして4分間撹拌・混合した。その後、撹拌・混合を1分間停止し、再び、撹拌翼の周速を40m/secとして4分間撹拌・混合して重量平均粒径(D4)が7.5μmの磁性トナー25を得た。磁性トナー25の物性を表3に示す。
【0197】
【表3】

【0198】
<実施例1>
(画像形成装置)
画像形成装置としてLBP3100(キヤノン製)を用い、印字枚数を16枚/分を20枚/分に改造した。また、クリーニングブレードの当接圧を4kgf/mを8kgf/mに変更した。印字枚数を20枚/分に変更する事で耐久性を厳しく評価すると共に、クリーニングブレード圧を高くすることで停止スジを厳しく評価できる。
【0199】
この改造機を用いトナー1を使用し、低温常湿環境下(15℃/10%RH)、及び、高温高湿環境下(32.5℃/80%RH)にて印字率が2%の横線を1枚間欠モードで1500枚画出し試験を行った。その後各環境で1日放置し、さらに1500枚の画出しを行なった。3000枚の画出し後、各環境で1日放置し、さらに画出しを行なった。
【0200】
その結果、各環境共に耐久試験前後で濃度が高く、非画像部へのカブリの無い均一な画像を得ることができた。また、耐久を通じてクリーニング不良は発生しておらず、停止スジが無く、良好な画像を得る事が出来た。
【0201】
低温低湿環境下での評価結果を表4に、高温高湿環境下での評価結果を表5に示す。
【0202】
本発明の実施例及び比較例で行った各評価の評価方法とその判断基準について以下に述べる。
【0203】
<画像濃度>
画像濃度はベタ画像部を形成し、このベタ画像の濃度をマクベス反射濃度計(マクベス社製)にて測定した。
【0204】
<カブリ>
白画像を出力して、その反射率を東京電色社製のREFLECTMETER MODEL TC−6DSを使用して測定した。一方、白画像形成前の転写紙(標準紙)についても同様に反射率を測定した。フィルターは、グリーンフィルターを用いた。白画像出力前後の反射率から、下記式を用いてカブリを算出した。
カブリ(反射率)(%)=標準紙の反射率(%)−白画像サンプルの反射率(%)
【0205】
なお、カブリの判断基準は以下の通りである。
A:非常に良好(1.5%未満)
B:良好(1.5%以上2.5%未満以下)
C:普通(2.5%以上4.0%未満以下)
D:悪い(4%以上)
【0206】
<クリーニング不良>
耐久中の横線画像全てについて、以下の基準でクリーニング不良のレベルを目視にて以下の基準で判断した。
A:クリーニング不良は未発生
B:極軽微なクリーニング不良が発生している
C:クリーニング不良が軽微に発生しているが、実用上問題の無い画像。
D:クリーニング不良が発生しており、実用上好ましくない画像。
【0207】
<停止スジ>
停止スジは、耐久した後に1日放置し、その後5枚ハーフトーン画像を印刷し、停止スジのレベルを目視にて以下の基準で判断した。
A:停止スジは未発生
B:極軽微な停止スジが発生している
C:停止スジが軽微に発生しているが、実用上問題の無い画像。
D:停止スジが発生しており、実用上好ましくない画像。
【0208】
<実施例2から16>
トナー2から16を用いたこと以外は実施例1と同様に画出し試験を行った。その結果、いずれのトナーも耐久試験前後で実用上問題ないレベル以上の画像が得られた。低温低湿環境下での評価結果を表4に、高温高湿環境下での評価結果を表5に示す。
【0209】
<比較例1から9>
トナー17から25を用いたこと以外は、実施例1と同様に画出し試験を行った。その結果、トナー17、19〜25はいずれも高温高湿環境下で停止スジが生じており、トナー18は低温低湿環境下でカブリが悪かった。低温低湿環境下での評価結果を表4に、高温高湿環境下での評価結果を表5に示す。
【0210】
【表4】

【0211】
【表5】

【符号の説明】
【0212】
100 静電潜像担持体(感光体)、102 トナー担持体、114 転写部材(転写ローラー)、116 クリーナー、117 接触帯電部材(帯電ローラー)、121 レーザー発生装置(潜像形成手段、露光装置)、123 レーザー、124 レジスタローラー、125 搬送ベルト、126 定着器、140 現像器、141 撹拌部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂、磁性体を少なくとも含有する磁性トナー粒子と、脂肪酸金属塩とを含有する磁性トナーであって、
前記磁性トナーは脂肪酸金属塩を磁性トナー粒子100質量部あたり0.05質量部以上0.50質量部以下含有し、
前記脂肪酸金属塩の体積基準におけるメジアン径(D50)が0.15μm以上0.65μm以下であり、
前記磁性トナーの下式(1)から得られる圧縮率が30以下であり、
式(1) 圧縮率={1−(見掛け密度/タップ密度)}×100
前記磁性トナーの表面自由エネルギーが40.0mJ/m2以下であることを特徴とする磁性トナー。
【請求項2】
前記脂肪酸金属塩の磁性トナー粒子からの遊離率が10.0質量%以上40.0質量%以下であることを特徴とする磁性トナー。
【請求項3】
前記脂肪酸金属塩の体積基準におけるメジアン径(D50)が0.30μm以上0.60μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の磁性トナー。
【請求項4】
前記磁性トナー粒子はコアシェル構造を有しており、該シェル層は少なくともポリエステル樹脂を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の磁性トナー。
【請求項5】
前記ポリエステル樹脂のガラス転移点(Tg)が75℃以上90℃以下であることを特徴とする請求項4に記載の磁性トナー。
【請求項6】
前記ポリエステル樹脂を構成するモノマー成分において、アルコール成分の80mol%以上が、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物(平均付加モル数=2mol)であることを特徴とする請求項4または5に記載の磁性トナー。
【請求項7】
該磁性トナー粒子が、懸濁重合法で製造されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の磁性トナー。

【図1】
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