説明

磁性ナノ粒子組成物、およびその関連方法

【解決手段】 種々の治療または生物学的用途のための生体適合性磁性ナノ粒子組成物、およびそれに関連した方法を開示している。具体的には、本発明は、乱流ゾーンを含む高圧均質化工程により調製された磁性ナノ粒子組成物に関する。 その生成方法には、2つの工程段階または単一の工程段階からなる工程が関与する。開示した磁性ナノ粒子組成物は、種々の兆候について、対象の身体、身体部分、組織、細胞、または体液の治療に役立ちうる。この開示した磁性ナノ粒子組成物は、固化、分離、輸送、標的のマーキング若しくはコーディング、またはエネルギー変換の工程にも役立ちうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2003年2月6日付け米国特許出願番号第10/360,561号および2003年7月10日付け独国特許出願番号第103 33 631号の利益を及びそれらに対して優先権を主張する一部継続出願であり、これらはこの参照により組み込まれるものである。
【0002】
本発明は、全体として生物学的および治療的な種々の用途のための生体適合性の磁性ナノ粒子組成物とそれに関連する方法に関する。具体的には、本発明は、乱流ゾーンを含む高圧均質化工程により調製された磁性ナノ粒子組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、磁性ナノ粒子の商業的応用例は、多数存在している。その例としては、細胞、細胞の一部、核酸、酵素、抗体、タンパク質またはペプチドの単離、固化、および浄化;細胞生物学における食細胞診断;臨床化学における診断アッセイまたは治療薬剤形態の一部;臨床診断における造影剤、放射性核種、または薬物担体;および生化学および工業化学における、分子認識現象およびヘテロ触媒過程の分析用固相などがある。
【0004】
1980年代の中期以降、生物学的用途の、高分子でコーティングした種々の金属酸化物粒子が、開示されてきている。その例としては、細胞、細胞の一部、生物活性分子、および放射性核種の輸送および分離に新しい可能性をもたらした200ナノメートル(nm)未満の磁化可能なナノ粒子(US 2003/0099954、Miltenyi;WO 01/17662、Zborowski;WO 02/43708、Alexiouなど)、造影剤により改善した、核磁気共鳴映像法用または診断方法用のマーカー(US 2003/0092029A1、Josephson;WO 01/74245、Johansson。US 5,427,767、Kresseなど)、および機械的および熱的な生細胞修飾(DE 10020376A1、Koch;US 6,541,039、Lesniakなど)などがある。
【0005】
このような全応用例には、生体適合性高分子層でコーティングした磁化可能な金属酸化物粒子が関与しており、これらは組み合わせによりコロイド状の安定な水性懸濁液中で直径5nm〜500nmの複合粒子を形成する。コーティング材料は、コーティングした粒子について重要細胞との十分な忍容性を保証し、生体環境で前記粒子の代謝機序に影響を及ぼし、細胞表面で選択的結合を可能にし、あるいは収容された物質の制御放出を可能にするため、前記粒子と生物材料との間の望ましくない相互作用をすべて排除するよう、すなわちこれらの粒子が生体適合性を有するよう選択される。前記粒子は、その磁気特性のため、印加した磁場に整列し、その磁場に反応して変化しうる。
【0006】
これらの金属酸化物(特に酸化鉄)の粒子を生成する方法は、各種報告されている。これらの方法の例には、高温焼結後の機械研削、減圧下でのクラスタリング、および溶液からの湿式化学合成などがある。酸化鉄の沈殿は、非水溶性の条件下で開始でき(US 4,677,027、Porathなど)、これを水溶性の条件下で継続することができ(US 5,160,725、Pilgrimなど)、また完全に水溶性の条件下で達成することもできる(US 4,329,241,Massartなど)。毒性への懸念から、生物学的用途では一般に水溶性の製剤が使用されている(US 4,101,435、Hasegawaなど)。湿式化学合成は、事前に高分子成分でのコーティングを行うことができ(コア−シェル法)、あるいは高分子の存在下で実施することもできる(ワンポット法)。コア−シェル法の場合は、酸化鉄に安定化物質を加えることが必要である。これは、これらの安定化物質が水溶液中で凝結する傾向があり、酸化物粒子の凝結を制限するためである。安定剤としては、両親媒性物質(WO 01/56546、Babincovaなど)または帯電した表面を伴う追加ナノ粒子(US 4,280,918、Homolaなど)を選択することができる。安定剤として使われる表面活性の物質は、前記表面の機能に影響し、それを制限しうる。ワンポット法で生成される、鉄を含有した磁化可能なナノ粒子複合材料は、その物理特性、化学特性、および薬理学的安定性により、医療用に認められている。ワンポット法では、酸化鉄の形成過程および溶液からの結晶成長を安定化させるため、酸化鉄の形成中、高分子を直接コーティングする。最も一般に使われるコーティング材料は、種々の形態のデキストランである。また、アラビノガラクタン、デンプン、グリコサミノグリカン、およびタンパク質など他の生体適合性炭水化物も使われている(US 6,576,221、Kresseなど)。このような方法の1つは、デキストラン存在下におけるFe(II)塩およびFe(III)塩の沈殿である(US 4,452,773、Moldayなど)。その変更(修正)形態としての方法では、超音波処理後、同じ装置内で熱処理が行われる(US 4,827,945、Gromanなど)。この方法の特性は、磁気分類により改善される(WO 9007380、Miltenyiなど)。さらにカプセル化/コーティングを行うと、安定化用に両親媒性物質が使用されるため、ナノ粒子の生体適合性を改善しうる(US 5,545,395、Tournier;EP 0272091、Eleyなど)。
【0007】
本明細書で説明する技術を使って生成したナノ粒子の懸濁剤は、典型的にサイズなどの可変特性を伴った粒子を含む。この粒子懸濁液の非均質性により、多くの生物学的用途において懸濁液の性能が劣化する。注射用流体として意図された分散水溶液系の生成では、前記粒子の均質性を改善する方法が利用されている。このような均質化方法には、ローター−ステータ法および高圧法が含まれる。液体ジェットまたは液体スロットノズルの高圧力を使った均質化機械(MFIC,Corp.の一事業部であるMicrofluidics社などから入手可。米国マサチューセッツ州ニュートン)では大きな機械的エネルギー付与が可能になり、これは特にリポソーム(US 5,635,206、Ganterなど)または注射用活性物質(US 5,595,687、Raynoldsなど)の生成に役立つ。
【0008】
制御した合一後に乳濁液中での乾燥を使って金属酸化物ナノ粒子組成物を生成する(この場合、酸化物は非水溶性成分にゾルとして含まれる)ための高圧均質化機械は、触媒材料の工業生産(US 5,304,364、Costaなど)およびエレクトログラフィック顔料粒子、セラミック粉末、フェルト素材、スプレー層、活性物質の担体、およびイオン交換樹脂(US 5,580,692、Lofftusなど)との関連で報告されている。乳濁液は、2若しくはそれ以上の不溶性液体からなる多相系が分散したものである。乳濁液は、少なくとも1つの連続(外側の)相(水など)と、単離された1つの(分散した、内側の)相とからなる(油など)。乳濁液は、熱力学的に不安定である。製薬産業、化粧品産業、化学産業、および食品産業における乳濁液および懸濁剤の調製または安定化には、しばしば高圧均質化(high−pressure homogenization、略称HPH)が使われる。ナノスケールの金属酸化物は流動化装置で高剪断力を使って調製できることも知られているが、これは未加工の酸化物、すなわちコーティングされていない酸化物だけに適用される(US 5,417,956、Moser)。一部の応用例では、最高200メガPa(MPa)以上の圧力が使われる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
磁性ナノ粒子組成物を生成する方法は、種々存在する。しかし、均質性の改善された、特に金属含有量および磁気的移動性の高い、生体適合性の磁性ナノ粒子組成物を生成できないことが主要な問題となっている。
【0010】
上記の観点から、高い磁気的移動性を伴う高金属含有量ナノ粒子を有する、均質性の改善された生体適合性磁性ナノ粒子組成物が必要とされている。また、このような組成物を生成する方法も必要とされている。
【0011】
したがって、本発明の態様では、均質性が改善された生体適合性の磁性ナノ粒子組成物を提供する。
【0012】
また、本発明の態様では、高い磁気的移動性を伴う高金属含有量ナノ粒子を有した磁性ナノ粒子組成物も提供する。
【0013】
本発明の異なる別の態様では、磁性ナノ粒子組成物を生成する方法であって、特に乱流ゾーンを含む高圧均質化工程を使用した方法を提供する。
【0014】
本発明のさらに異なる別の態様では、高い磁気的移動性を伴う高金属含有量ナノ粒子を有した生体適合性磁性ナノ粒子組成物の用途を提供する。
【0015】
本発明は、改善された均質性と、加熱速度の増加に寄与する高い磁気的移動性とを呈する高金属含有量の生体適合性磁性ナノ粒子組成物に関する。種々の治療用途では、高い加熱速度が望ましい。これらの組成物は、高圧均質化工程で調製することが好ましく、種々の治療用途および生物学的用途に役立つ。
【0016】
一実施形態では、前記磁性ナノ粒子組成物は、1若しくはそれ以上の金属含有磁性ナノ粒子と、前記ナノ粒子の懸濁に適した媒体とを有する。これらのナノ粒子は、適切な生体適合性コーティング材料を有する。前記磁性ナノ粒子は、外部磁場が印加されると磁化されて低磁場を有する。前記ナノ粒子の磁性材料は、その出発(それが由来された)材料より大きい低磁場を呈する。これらのナノ粒子は、少なくとも平均50質量パーセントの金属と、平均200nm未満の流体力学的直径とを有する。
【0017】
さらに異なる別の実施形態では、前記磁性ナノ粒子組成物は2段階の工程により調製され、その場合、第1の工程段階では、予備成形した金属含有磁性材料が乱流ゾーンを通して処理され、第2の工程段階では、前記第1の工程段階の結果得られた改善済み磁性材料と生体適合性コーティング材料とを併用し、乱流ゾーンを通して磁性ナノ粒子組成物が生成される。さらに異なる別の実施形態では、前記磁性ナノ粒子組成物は2段階の工程により調製され、その場合、第1の工程段階では、乱流ゾーンを通して金属含有溶液から金属含有磁性材料が生成され、第2の工程段階では、前記第1の工程段階の結果得られた磁性材料と生体適合性コーティング材料とを併用し、乱流ゾーンを通して磁性ナノ粒子組成物が生成される。さらに異なる別の実施形態では、前記磁性ナノ粒子組成物は単一の工程段階で調製され、その場合、金属含有溶液から金属含有磁性材料が生成され、この金属含有磁性材料が乱流ゾーンを通して生体適合性コーティング材料で処理されて、磁性ナノ粒子組成物を形成する。その結果得られた磁性ナノ粒子は、外部磁場、例えば永久磁石により担体媒体から分離される。
【0018】
前記生体適合性コーティング材料は、高分子か、金属化合物か、トランスフェクション剤か、これらの任意の組み合わせかを有しうる。前記高分子は、天然高分子か、合成高分子か、半合成高分子かを有しうる。この高分子は、デキストランか、またはスルホアルキル、アミノアルキル、エポキシアルキル、およびカルボキシアルキルなどの官能基を含むデキストランかであることが好ましく、その場合、アルキル鎖は酸素などのヘテロ原子で置換しうる。前記金属含有磁性材料は、金属か、金属酸化物か、金属酸化物水和物か、金属水素化物か、2若しくはそれ以上の金属の金属合金か、これらの任意の組み合わせかを有する。前記金属含有磁性材料は、強磁性か、反強磁性か、フェリ磁性か、反フェリ磁性(antiferrimagnetic)か、超常磁性かの特性を有する。この金属含有磁性材料は鉄酸化物を有することが好ましく、前記酸化鉄はマグネタイト(磁鉄鉱)か、ヘマタイト(赤鉄鉱)か、マグヘマイト(磁赤鉄鉱)か、これらの任意の組み合わせかを有することがより好ましい。前記磁性ナノ粒子組成物は、リガンドまたはキレート剤を有しうる部分構造、あるいは1若しくはそれ以上の生物活性物質を有しうる部分構造も有しうる。
【0019】
また、本発明は、生体適合性の磁性ナノ粒子組成物の用途、具体的には治療用途および生物学的用途にも関係する。前記治療用途は、種々の兆候に関する、対象の身体か、身体部分か、組織か、細胞か、体液かの治療に関し、前記種々の兆候としては、これに限定されるものではないが、骨髄癌、肺癌、血管癌、神経癌、結腸癌、卵巣癌、乳癌、前立腺癌など任意タイプの癌と、類上皮肉腫と、有害な血管形成と、再狭窄と、アミロイドーシスと、結核と、多発性硬化症と、心臓血管のプラークと、血管のプラークと、肥満症と、マラリアと、HIVやAIDSなどのウイルスによる疾患とが含まれる。この治療用の組成物は、注射か、局所投与か、経皮投与か、経口摂取か、直腸挿入か、経口または経鼻での吸入か、これらの任意の組み合わせかにより投与される。前記生物学的用途には、固化、分離、輸送、標的のマーキングまたはコーディング、エネルギー変換の工程などがある。前記磁性ナノ粒子組成物は、核酸か、核酸誘導体か、核酸片か、タンパク質か、タンパク質誘導体か、タンパク質片か、これらの任意の組み合わせかの、分離か、精製か、これらの任意の組み合わせかにおいて使用することもできる。
【0020】
上記の課題を解決するための手段は、例示した実施形態または本発明の実施のそれぞれについて説明することを意図したものではない。これらの実施形態は、以下の図面と詳細な説明とで特に例示する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、改善された均質性と、加熱速度の増加に寄与する高い磁気的移動性とを呈する高金属含有量の生体適合性磁性ナノ粒子組成物に関する。種々の治療用途では、高い加熱速度が望ましい。これらの組成物は、高圧均質化工程で調製することが好ましく、種々の治療用途および生物学的用途に役立つ。
【0022】
1.定義
本明細書における用語「標的治療システム」、「標的ナノ治療」、および「標的治療」は、米国特許出願第US2003/0032995号、第US2003/0028071号、第10/360,578号、および第10/360561号に開示されたものを含む兆候の治療用に、バイオプローブ組成物の送達が関与する方法および装置を言及する。
【0023】
本明細書における用語「温熱療法(ハイパーサーミア)」は、40℃〜46℃の温度への組織加熱を意味する。
【0024】
本明細書における用語「サセプタ」は、エネルギー源に露出されると温度上昇または物理的運動を呈する、磁性エネルギーへの感度を有する粒子を言及する。
【0025】
本明細書における用語「磁性ナノ粒子組成物」は、生体適合性コーティングおよび適切な媒体を有するサセプタを有した組成物を意味する。
【0026】
本明細書における用語「リガンド」は、サセプタ(または前記サセプタのコーティング)および標的に付着し、また生物学的マーカーに付着する分子または化合物を言及する。Her−2(上皮成長因子受容体タンパク質)に対し特異性を示す単クローン抗体は、例示的なリガンドである。
【0027】
本明細書における用語「マーカー」は、リガンドが特異性を示す抗原または他の物質を言及する。Her−2タンパク質は例示的なマーカーである。
【0028】
本明細書における用語「標的」は、異常細胞、病原体、または他の望ましくない物質など、不活性化、破断、崩壊、または破壊することが望ましい物質を言及する。マーカーは、標的に付着しうる。乳癌細胞は例示的な標的である。
【0029】
本明細書における用語「バイオプローブ」は、生体適合性コーティングおよび少なくとも1つの部分構造を有するサセプタを意味する。本明細書における用語「バイオプローブ組成物」は、磁性ナノ粒子組成物および少なくとも1つの部分構造を有する組成物を言及する。この部分構造はバイオプローブを標的に導く働きをするもので、好ましくはリガンドである。本明細書における用語「バイオプローブシステム」は、マーカーにより任意選択で識別される、標的に対し特異的なバイオプローブを意味する。
【0030】
本明細書における用語「リンカー分子」は、リガンド上、サセプタ上、またはコーティング上の特定の官能基を標的とし、リガンドと、サセプタまたはコーティングとの間に共有結合を形成する薬剤を言及する。
【0031】
本明細書における用語「兆候」は、疾患などの病状を意味する。乳癌は例示的な兆候である。
【0032】
本明細書における用語「エネルギー源」は、AMFエネルギーをバイオプローブのサセプタに送達する能力のある装置を意味する。
【0033】
本明細書における用語「AMF」(alternating magnetic field(交互に変動する磁場)の略称)は、正弦波、三角波、または矩形波状に場のベクトル方向が定期的に変化する磁場を意味する。AMFは、結果的に生じる磁場ベクトルのAMF成分だけが方向変化するよう、静磁場に付加することもできる。この交互に変動する磁場は交互に変動する電場に付随するものであり、電磁的な性質のものであることを理解すべきである。
【0034】
また、本明細書および添付した請求項において単数形扱いしている名称は、文脈で別段の断わりを明示しない限り、複数形も含むことを理解すべきである。
【0035】
2.ナノ粒子組成物
本発明は、磁性ナノ粒子組成物、およびこれらの組成物を生成する方法に関する。
【0036】
2.1.磁性ナノ粒子組成物
本発明の一態様は、1若しくはそれ以上の金属含有磁性ナノ粒子と、前記ナノ粒子の懸濁に適した媒体とを有する磁性ナノ粒子組成物に関する。これらの磁性ナノ粒子は、適切な生体適合性コーティング材料を有するサセプタを有する。前記磁性ナノ粒子は、外部磁場が印加されると磁化されて低磁場を有する。前記ナノ粒子の磁性材料は、その出発材料より大きい低磁場を呈する。この磁性ナノ粒子組成物と、リガンドであるであることが好ましい部分構造とは、対象の身体、身体部分、組織、細胞、または体液の治療に有用なバイオプローブ組成物の主成分を形成する。
【0037】
2.2.磁性ナノ粒子組成物を生成するための高圧均質化(High Pressure Homogenization、略称HPH)工程
本発明の異なる別の態様は、種々の兆候の治療および種々の生物学的用途に使われる生体適合性磁性ナノ粒子を生成する方法に関する。前記ナノ粒子合成用のこれらの方法では、「コア−シェル法」または「ワンポット法」を利用する。本明細書に開示したコア−シェル法では2つの工程段階からなる工程を使用し、その場合、第1の工程段階では、1)例えば予備成形した磁性材料または適切な金属含有前駆体材料から、磁性金属酸化物を形成し(コア)、次にこれを、2)生体適合性高分子、すなわちコーティング(シェル)でコーティングする。
【0038】
この2段階工程は、第1に予備成形した金属含有磁性材料を処理して改善された磁気特性を有する金属含有磁性材料を生成した後後、第1の工程段階の結果得られた材料および生体適合性コーティング材料を使って磁性ナノ粒子組成物を生成することにより達成でき、どちらの工程段階も乱流ゾーンを通して処理される。この2段階工程は、第1に金属含有溶液から金属含有磁性材料を生成した後後、第1の工程段階の結果得られた材料および生体適合性コーティング材料を使って磁性ナノ粒子組成物を生成することによっても達成でき、どちらの工程段階も乱流ゾーンを通して処理される。
【0039】
本明細書で開示する前記ワンポット法では1つの工程段階からなる工程を使用し、この場合、金属含有磁性材料を金属含有溶液から生成し、乱流ゾーンを通して生体適合性コーティング材料で処理して、磁性ナノ粒子組成物を生成する。
【0040】
本明細書で使用する前記予備成形した金属含有磁性材料は、金属か、金属酸化物か、金属酸化物水和物か、金属水素化物か、金属アルコキシドか、別の金属との金属合金か、これらの任意の組み合わせかを有する。前記予備成形した磁性材料は、強磁性か、反強磁性か、フェリ磁性か、反フェリ磁性(antiferrimagnetic)か、超常磁性かの特性を有する。この予備成形した磁性材料は鉄酸化物を有することが好ましく、前記酸化鉄はマグネタイト(磁鉄鉱)か、ヘマタイト(赤鉄鉱)か、マグヘマイト(磁赤鉄鉱)か、これらの任意の組み合わせかを有することがより好ましい。前記酸化鉄は、2価または3価の金属イオンでドープしうる。前記予備成形した磁性材料は、Fe(II)およびFe(III)の組み合わせを有することが好ましく、Fe(II)およびFe(III)の組み合わせを1:1〜1:2のモル比で有することがより好ましい。
【0041】
本明細書での使用に適した前記金属含有溶液は、異なる金属か、異なる金属化合物か、異なる価数の単独金属または金属の組み合わせかのうち、1つ、または2若しくはそれ以上の組み合わせから調製しうる。この溶液は、Fe(II)塩およびFe(III)塩の組み合わせを有することが好ましく、Fe(II)塩およびFe(III)塩の組み合わせを1:1〜1:2のモル比で有することがより好ましい。
【0042】
金属含有溶液から前記コアを生成するには、例えば酸化鉄懸濁液の場合は、アンモニアの存在下、塩化第二鉄および塩化第一鉄を沈殿させて生成する。沈殿後、液体から粒子を分離し、再び懸濁する。第2の工程段階では、懸濁させたこれらの酸化鉄沈殿物、すなわちコアを、高圧均質化条件下で生体適合性高分子でコーティングする。均質化は、100バール以上で起こることが好ましく、1000バール以上で起こることがより好ましい。高圧の均質化では、高圧で大量の流体にノズルを強制通過させた場合に生じる強い剪断力を活用して、高分子でコーティングされた粒子を生成する。強制的にノズルを通過させた流体は沈殿させた前記粒子を含んでおり、これに、生体適合性コーティング材料を溶解させた液体(好ましくは高分子)を加える。その結果得られる混合物を繰り返しノズル通過させて、ホモジナイザーでさらに処理する。その結果得られた磁性ナノ粒子を、永久磁石などの外部磁場で、担体媒体から分離する。
【0043】
結果として得られた磁性ナノ粒子は、安定したコロイド水溶液または安定したコロイド生理溶液を形成することが好ましい。
【0044】
前記第1の工程段階および前記第2の工程段階は、液体担体媒体内において約40℃から前記媒体の沸点までの範囲の温度で処理されることが好ましく、約75℃〜約95℃の範囲の温度で処理されることがより好ましい。また、前記液体媒体は、水酸化アンモニアか、水酸化ナトリウムか、水酸化カリウムかを主成分とするアルカリ水溶液、または水を有することが好ましい。これらの成分は、各工程段階において乱流ゾーンを通して約20ml/分〜約200ml/分範囲の流量で処理されることが好ましい。
【0045】
本明細書での使用に適した生体適合性コーティング材料は、高分子か、金属化合物か、これらの任意の組み合わせかを有する。本明細書での使用に適した高分子コーティング材料は、天然高分子か、合成高分子か、半合成高分子か、これらの任意の組み合わせかでありうる。前記合成高分子は、ポリアミンか、ポリイミンか、ポリビニルか、ポリオールか、ポリエーテルか、ポリカルボン酸か、ポリケイ酸か、ポリアクリル酸塩か、ポリシロキサンか、ポリアルキレングリコールか、パリレンか、ポリ乳酸か、ポリグリコール酸か、これらの任意の誘導体か、これらの任意の組み合わせかを有しうる。
【0046】
一実施形態では、前記高分子は官能基、好ましくは反応性基か、イオン基か、これらの任意の組み合わせかを有する。異なる別の実施形態では、前記高分子は、ホモポリマー(単独重合体)か、コポリマー(共重合体)か、ポリマーブレンドかを有する。さらに異なる別の実施形態では、前記高分子は、多糖類などの生物材料、好ましくはデキストランか、ポリアミノ酸か、タンパク質か、脂質か、脂肪酸か、ヘパリンか、ヘパリン硫酸塩か、コンドロイチン硫酸塩か、キチンか、キトサンか、アルギン酸塩か、グリコサミノグリカンか、セルロースか、デンプンか、これらの任意の誘導体か、これらの任意の組み合わせかを有する。適切なタンパク質としては、細胞外マトリックスタンパク質、プロテオグリカン、糖タンパク質、アルブミン、ペプチド、ゼラチンなどがある。さらに異なる別の実施形態では、前記高分子は、ヒドロゲル高分子か、ヒスチジン含有高分子か、ヒドロゲル高分子およびヒスチジン含有高分子の組み合わせかを有する。本明細書で使用する高分子は、官能基を含むデキストランまたはデキストランであることが好ましい。好適な官能基は、ヒドロキシル官能基、オキシアルキル官能基、およびカルボキシル官能基である。
【0047】
本明細書での使用に適した(前記生体適合性コーティング材料の)金属化合物としては、ヒドロキシアパタイト、金属カルボン酸塩、金属スルホン酸塩、金属リン酸塩、金属フェライト、金属ホスホン酸塩、および周期表の4族元素の酸化物などがある。これらの材料は、前記生物材料の高分子または前記合成高分子と複合コーティングを形成しうる。生体適合性の磁性材料から前記磁性粒子が形成される場合、前記粒子の表面自体は、前記生体適合性コーティングとして作用しうる。
【0048】
その結果得られる磁性ナノ粒子組成物のナノ粒子組成物は、リガンドか、キレート剤か、これらの組み合わせか、生物活性物質かを有しうる部分構造も有しうる。これらの部分構造は、共有結合または物理的相互作用により、サセプタ142の非コーティング部分に、コーティング144に、またはサセプタ142の非コーティング部分およびコーティング144で一部カバーされた部分に結合されるか、あるいはコーティング144とともにインターカレートしうる。前記リガンドまたはキレート剤は、ペプチドか、タンパク質か、核酸か、酵素か、抗体か、抗体片か、これらの任意の組み合わせかを有しうる。本明細書での使用に適したリガンドは、表Iのとおりである。本明細書での使用に好適な抗体はING−1である。前記生物活性物質は、化学療法薬とホルモンを含む製薬剤か、ペプチドか、脂質か、生化学的因子か、これらの任意の組み合わせかを有しうる。
【0049】
結果として得られる磁性ナノ粒子は、外部磁場に影響されうる。このような場合、結果として得られる磁性ナノ粒子の初期感受性(ナノ粒子の磁気モーメントと、ゼロ場付近、特に−20〜+20エルステッド範囲の印加磁場との比)は、その出発材料である磁性材料の初期感受性より大きい。
【0050】
結果的に得られる磁性ナノ粒子は、少なくとも平均50質量パーセントの金属と、平均200nm未満の流体力学的直径とを有する。
【0051】
3.応用例
本発明のさらに異なる別の態様は、前記磁性ナノ粒子組成物の応用に関し、これには標的療法や生物学的用途などがある。本発明の組成物の磁性ナノ粒子は高い金属含有量を有し、改善された均質性と、加熱速度の増加に寄与する高い磁気的移動性とを呈する。種々の治療用途では、高い加熱速度が望ましい。
【0052】
3.1.標的ナノ治療
本発明のバイオプローブ組成物は、種々の兆候について、対象の身体か、身体部分か、組織か、細胞か、体液かの治療に有用である。標的ナノ治療システムの一成分としてのこのバイオプローブ組成物は、これに限定されるものではないが、骨髄癌、肺癌、血管癌、神経癌、結腸癌、卵巣癌、乳癌、前立腺癌など任意タイプの癌と、類上皮肉腫と、AIDSと、有害な血管形成と、再狭窄と、アミロイドーシスと、結核と、心臓血管のプラークと、血管のプラークと、肥満症と、マラリアと、HIVなどのウイルスによる疾患とを含む種々の兆候の治療に使用しうる。
【0053】
この標的治療システムは、温熱療法(ハイパーサーミア)原理に基づいており、バイオプローブシステムと、それに伴う兆候治療用エネルギー源を有する。図1は、本発明の実施形態に係るバイオプローブ構成を概略的に開示したものである。バイオプローブ190は、サセプタとも呼ばれる、磁性エネルギーに対し感度のある粒子142と、抗体など(これに限定はされないが)少なくとも1つの標的リガンド140であって、サセプタ142の外側部分に位置する標的リガンド140とを有する。前記サセプタ142は、生体適合性のコーティング144を有しうる。コーティング144の材料は、完全または部分的にサセプタ142をコーティングしている。AMFなどのエネルギー源にサセプタ142を露出すると、サセプタ142内で熱が生じる。バイオプローブ190のこの加熱特性は、特にコーティング144が高分子材料であるなどにより高い粘性を有する場合、コーティング144により強化しうる。コーティングされたこのサセプタは、前記HPH工程および本明細書で説明する例に従って生成される。前記標的リガンド140は、特定タイプの細胞または疾患に関連した物質などの標的を探してそれに付着するよう選択しうる。この標的リガンド140は、マーカーと呼ばれる標的上の抗原といった物質に対し特異的でありうる。
【0054】
サセプタ142が加熱してなる温度は、特に材料の磁気特性と、磁場の特性と、標的部位の冷却容量とに依存する。バイオプローブ190がマグネタイト(Fe)粒子142を含む場合、サセプタ142の直径は約8nm〜約80nm範囲、より具体的には10nm〜40nm範囲になりうる。この範囲であれば、バイオプローブ190を十分小さくして肝臓透過を可能にし、かつ印加AMF内で加熱するよう前記磁性粒子142の磁気モーメントを十分に保持できる。約8nmより大きいマグネタイト粒子は、一般傾向としてフェリ磁性であるため、疾患治療に適している。コバルトなど他の元素をマグネタイトに加えると、このサイズ範囲をより小さくすることができる。これは、コバルトが一般にマグネタイトより大きな磁気モーメントを有することの直接の結果であり、コバルトを含有するサセプタ142の全体的な磁気モーメント増加に寄与する。一般に、バイオプローブ190のサイズは、疾患兆候と前記バイオプローブの構築材料とに応じ、約0.1nm〜約200nmになりうる。
【0055】
コーティング144と、前記コーティング材料の組成物との存在により、固有のエネルギー損失が決定し、これにより、バイオプローブ190の生じる熱が決定しうる。また、コーティング144は付加的な目的も果たす。コーティング144は、タンパク質および酵素から前記磁性材料を分離する生体適合性の層を提供するとともに、患者内部における免疫防御ももたらし、これにより血液または組織液中における前記ナノ粒子の滞留時間を制御することができる。この滞留時間の制御により、特定の組織タイプに適した標的リガンド140を選択することが可能になる。また、コーティング144は、サセプタ142に含まれる潜在的に有毒な元素から患者を保護する働きをすることもできる。バイオプローブ190は流体中に懸濁される場合があるため、前記コーティング144は粒子の凝結を防止する働きをすることもできる。このコーティング144には、含有される金属酸化物の完全性を維持して酸化または化学的変化の進行を防止する働きもあり、これにより、前記酸化物の構造特性および磁気特性が維持される。生物分解性または吸収性の生体適合性コーティングでバイオプローブ190をコーティングすることが有利な場合もある。そのような適用例では、前記コーティング144も前記サセプタ142も体内で消化および吸収されうる。
【0056】
前記コーティング144は、トランスフェクションとして知られる工程である、細胞内へのバイオプローブ190輸送を促進する働きをすることもできる。このようなコーティング材料は、トランスフェクション剤として知られており、ベクトルか、プリオンか、ポリアミノ酸か、陽イオン性リポソームか、両親媒性物質か、非リポソーム脂質か、これらの任意の組み合わせかを含みうる。適切なベクトルは、プラズマか、ウイルスか、ファージか、バイロン(viron。単一ウイルス粒子)か、ウイルスコートかでありうる。前記バイオプローブのコーティングは、特定タイプの異常細胞用および患者身体の特定位置用に特定の組み合わせを調製できるよう、トランスフェクション剤と、有機および/または無機材料との組み合わせを有しうる。
【0057】
バイオプローブ190が標的に選択的に付着または付随することを確実にするため、バイオプローブ190には適切なリガンド140を組み合わせることができる。1つまたは複数のリガンド190を組み合わせることにより、細胞上の癌または疾患マーカーに標的を絞ることが可能になる。また、患者体内の生体物質に標的を絞ることも可能になる。用語「リガンド」は、例えばタンパク質、ペプチド、グリカン、抗体、抗体片、糖類、炭水化物、サイトカイン、ケモカイン、脂質、ヌクレオチド、レクチン、受容体、ステロイド、神経伝達物質、インプリンティングポリマー、Cluster Designation/Differentiation(クラスター表記/識別、略称CD)マーカーなどを含む分子を標的とする化合物に関する。タンパク質リガンドの例には、細胞表面タンパク質、膜タンパク質、プロテオグリカン、糖タンパク質、ペプチドなどがある。ヌクレオチドリガンドの例には、完全なヌクレオチド、相補ヌクレオチド、ヌクレオチド片がある。脂質リガンドの例としては、リン脂質、糖脂質などがある。リガンド140は、サセプタ142またはコーティング144と共有結合するか、または物理的に相互作用しうる。リガンド140は、共有結合または物理的相互作用により、サセプタ142の非コーティング部分に結合しうる。また、リガンド140は、共有結合または物理的相互作用により、サセプタ142の非コーティング部分と、コーティング144で部分的にカバーされた部分とに直接結合しうる。さらに、リガンド140は、共有結合または物理的相互作用により、バイオプローブ190のコーティング部分に結合しうる。バイオプローブ190のコーティング部分には、リガンド140をインターカレートしうる。リンカー分子とは共有結合を形成しうる。リンカー分子の連結反応に使用する官能基の例には、アミン、スルフヒドリル、炭水化物、カルボキシル、ヒドロキシルなどがある。この連結剤は、カルボジイミド、スルホ−N−ヒドロキシスクシンアミド(sulfo−N−hydroxy succinamide、略称NHS)エステルリンカーなどのホモ二官能性またはヘテロ二官能性の架橋結合試薬であってよい。この連結剤は、グルタルアルデヒドなどのアルデヒド架橋結合試薬であってもよい。この連結剤は、好ましい配向で、標的として利用できるリガンド142の活性領域と特異的に、サセプタ142またはコーティング144がリガンド140に連結するよう選択しうる。物理的相互作用の場合は、吸収、吸着、インターカレーションなどの非共有結合的手段で、連結分子およびリガンド140がサセプタ142またはコーティング144に直接結合される必要はない。
【0058】
表Iは、前記標的リガンドと、それに対応する標的およびマーカーとを、所与の兆候について示したものである。
【0059】
【表1−1】

【0060】
【表1−2】

【0061】
【表1−3】

【0062】
【表1−4】

【0063】
【表1−5】

【0064】
抗体は、磁性ナノ粒子の表面に付着することもできる。これは例えば、カルボジイミドを活性化した粒子表面上カルボン酸基への、抗体分子のアミノ基の直接共有結合、ストレプトアビジンでコーティングしたナノ粒子上のビオチン化抗体の結合、およびタンパク質Aまたはタンパク質Gでコーティングしたナノ粒子上の抗体の結合により行う。核酸は、共有結合的に付着したオリゴヌクレオチドで、ナノ粒子の表面上に固定できる。
【0065】
一実施形態では、標的リガンドはING−1抗体である。ING−1(heMAb)は高親和性、Human−Engineered(TM)の単クローン抗体であり、40 kDa上皮細胞粘着分子(epithelial cell adhesion molecule、略称Ep−CAM、別称17−1A、EPG40、GA733−2、KSA、およびEGP)を認識する。ING−1は人間工学により開発されたもので、マウス抗体の可変領域における個々の残留物を、その可変領域の免疫原性が低下するよう、ヒトのフレームワークに見られるアミノ酸で置換するものである。ING−1は、ヒトIgG1およびκ定常領域cDNAにそれぞれ連結された修飾済み可変領域をエンコードしている合成の重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子を含んだチャイニーズハムスターの卵巣(Chinese hamster ovary、略称CHO)細胞から生成される。
【0066】
生体外の研究では、複数のヒト腫瘍細胞株に対してING−1(heMAb)が活性であり、また乳腺癌、前立腺腺癌、結腸腺癌、NSC(非小細胞)肺腺癌、および膵臓腺癌に対してING−1(heMAb)が高い親和性を有することが実証されている。
【0067】
本発明のバイオプローブ組成物による患者治療では、標的を破壊するか不活性にするため、または腫瘍の血管増生を抑制または破壊するため、対象に組成物を投与し、この組成物に含まれるバイオプローブがマーカー付き標的に付着するのを待って所定期間後、バイオプローブにエネルギーを付与する。このエネルギーは、対象の身体、身体部分、組織、または体液(血液、血漿、血清、または骨髄など)に直接投与するか、対象の身体、器官、または体液に体外から投与しうる。前記組成物は、注射か、局所投与か、経皮投与か、経口摂取か、直腸挿入か、経口または経鼻での吸入か、これらの任意の組み合わせかにより投与しうる。この対象である温熱療法は、少なくとも1つの他の治療と組み合わせてよい。
【0068】
本明細書で有用な例示的エネルギー形態は、AMF、高周波、マイクロ波、音響、またはこれらの組み合わせなどであり、種々の機序で生成できる。好適なエネルギー形態はAMFである。
【0069】
3.2.生物学的応用例
本発明の磁性ナノ粒子組成物は、これに限定されるものではないが、固化か、分離か、輸送か、標的のマーキングまたはコーディングか、エネルギー変換かの工程を含む種々の生物学的応用にも役立つ。一実施形態では、この磁性ナノ粒子は、リガンドおよびキレート剤を介して金属イオンを認識し、選択的に固化し、制御自在に放出する。ナノ粒子を放射性核種担体として使用する異なる別の実施形態の場合、このナノ粒子は、放射性核種治療用に放射性同位元素でドープするか、放射性になるよう処理する。さらに異なる別の実施形態では、生体分子の分離か、精製か、これらの任意の組み合わせかに、この磁性ナノ粒子を使用する。このような用途では、核酸か、核酸片か、核酸誘導体か、タンパク質か、タンパク質誘導体か、タンパク質片か、これらの任意の組み合わせかの分離か、精製か、これらの任意の組み合わせかに、前記磁性ナノ粒子組成物を使用しうる。一実施形態では、この磁性ナノ粒子は細胞に結合し、細胞の分別(ソート)および精製に使われる。さらに異なる別の実施形態では、この磁性ナノ粒子は、造影剤などとして分析工程または診断アッセイで使用する。
【0070】

以上に概略説明した本発明を鑑み、また本発明の限定ではなく説明のため以下に挙げた例を参照すると、より完全な理解を得ることができる。
【0071】
本明細書で以下説明する例では、以下の分析技術を利用する:
【0072】
光子相関分光法(Photon correlation spectroscopy、略称PCS)は、粒子サイズを決定するため、その粒子のランダム拡散の測定に使われる技術である。PCS測定では、懸濁液中のナノ粒子の平均流体力学的直径が決定できる。データ解析の評価は、ナノ粒子の信号強度と、体積と、数とに応じて行われる。データ解析には3つのタイプがある。第1の単一モード分析では、キュムラントだけを分析する。第2の多モード分布分析では、結果として24のサイズクラスをX軸上に置く。このプロットのYスケールは、各サイズクラスの粒子により散乱された光の相対強度となる。そのため、このプロットは強度プロットとして知られている。第3の分析方法は、CONTINモードとして業界に公知のもので、この方法では、微量の凝集体を検出しその分布を知ることができる。したがって、本明細書では、PCSデータからサイズ分布を決定するための標準分析方法として、このCONTIN分析を採用している。
【0073】
このサイズ分布の特質は、多分散度指数(polydispersity index、略称PI)により特徴付けられる。この値は、測定された自己相関関数と、数学的に適合させた相関関数との偏差として計算される。この値は、狭いサイズ分布のナノ粒子の場合0.2未満で、広いサイズ分布のナノ粒子の場合0.2〜0.5である。0.5より高いPI値は、測定値の信頼性が低く、そのデータが分析不能であることを意味する。
【0074】
PCSの実施に利用された計器は、Zetasizer 3000(Malvern Instruments Ltd.社、英国ウースターシャー(Worcestershire)、マルバーン(Malvern))で、これは10nm〜1500nmのサイズ範囲用に較正されている。
【0075】
中性子粉末回折法(Neutron Powder Diffractometry、略称NPD)は、粒子の磁気的形態および結晶構造を検証する方法で、X線粉末回折に類似してはいるがそれとは顕著に異なる回折技術である。中性子からなる入射線が試料の原子核と相互作用すると、核回折パターンが得られ、結果的に結晶内の原子核間の平均距離が導出される。この技術では、中性子の有する磁気モーメントにより、電磁的に対照的な他の技術では得られない、材料の磁気特性に関する情報が得られる。
【0076】
レーザードップラー速度測定法(Laser Doppler Velocimetry、略称LDV)は、電場内の粒子運動を測定して粒子のゼータ電位を決定するために使用される。酸化鉄粒子についてゼータ電位を測定すると、その粒子の荷電状態に関する情報を得ることができる。
【0077】
ゼータ電位の測定に利用された計器は、Zetasizer 3000(Malvern Instruments Ltd.社、英国ウースターシャー(Worcestershire)、マルバーン(Malvern))で、これはゼータ電位規格DTS0050(同社)により較正されている。
【0078】
本明細書における以下の例1〜4および8では、ナノ粒子を生成するための合成手順と、前記ナノ粒子を特徴付けするため使用する方法と、前記ナノ粒子を官能基化する方法と、生体内用途の最終生成物生成用にChL6抗体およびING−1抗体(例示的な系としてのみ使用)を共役させるため使用する方法と、について詳述している。これらの例でナノ粒子組成物を合成するための全般的アプローチとしては、以下のとおりコア−シェル法を採用する。
【0079】
第1に、アンモニアの存在下、塩化第二鉄および塩化第一鉄を沈殿させて初期酸化鉄懸濁液を生成する(例1)。第2に、高圧均質化条件下で、この酸化鉄コアをデキストランでコーティングする(例2)。第3に、ポリエチレングリコールスペーサーにより、これらのナノ粒子をカルボン酸基で官能基化する(例3)。そして第4に、前記ChL6抗体(例4)または前記ING−1抗体(例8)を前記粒子表面に共有結合させる。
【実施例1】
【0080】
例1:酸化鉄の沈殿および分析(ロット146−T)
54.1g(0.2mol)のFeCl×6HOおよび31.4g(0.158mol)のFeCl×4HOを、300ミリリットル(ml)の脱イオン水に溶解した。この鉄塩の溶液を、1L容量の2首フラスコを使い、室温で、スターラーにより500回転/分(rpm)で機械的に撹拌した。この溶液に、蠕動ポンプで30分間にわたり220mlの25%水酸化アンモニウムを加えた。水酸化アンモニウムを加えた後、撹拌処理を10分間継続した。2つの500ml遠心分離ビーカーを使い、1100rpmで10分間、前記酸化鉄懸濁液を遠心分離精製した。上清を除去した後、この酸化鉄のペレットを200mlの脱イオン水で2回再懸濁した。この酸化鉄懸濁液を連続中和処理するため、上記の再懸濁液をさらに3回遠心分離した。この酸化鉄懸濁液を、2つの500mlビーカーにより、1100rpmで、10分間再び遠心分離した。上清を除去した後、この酸化鉄を2回25mlの脱イオン水で再懸濁して1つの500mlビーカーに合わせた後、1100rpmで10分間さらに遠心分離した。
【0081】
このペレットを50mlの脱イオン水で再び懸濁し、1100rpmで10分間遠心分離した。その上清を生成物容器に加えた。このペレットの、50mlの脱イオン水での再懸濁工程と、1100rpm、10分間の遠心分離と、得られた上清の追加とをさらに2回繰り返して、全体の生成量として200mlの酸化鉄懸濁液を得た。比較的大きな凝集体を最終的に除去するため、この酸化鉄懸濁液を700rpmで10分間遠心分離した。その上清を、ガラス繊維フィルタでろ過した。(MN 85/90、Macherey−Nagel社、ドイツ。サイズ排除:600nm以上)。最後に、固体濃度45ミリグラム/ミリリットル(mg/ml)の、ロット146−Tの酸化鉄懸濁液200mlを得た(固体酸化鉄の生成量9g)。
【0082】
ロット146−Tの粒子について得られたサイズ分布の代表的なプロットを図2aに示す。粒子数によるこのピーク分析は、透過型電子顕微鏡によるサイズ決定結果と一貫している。
【0083】
前記ロット146−Tの酸化鉄懸濁液のPCSサイズ測定から、平均流体力学的直径は400nm〜450nmとなった。多分散度指数は0.227で、単一モードのサイズ分布を示している。個々の酸化鉄結晶は、このように懸濁液中で凝集した。この効果は、付加的な処理、具体的にはデキストランでのコーティングの必要性を示唆している。前記バイオプローブを形成する公称ナノ粒子の生成用に沈殿物をデキストランでコーティングできるようにするには、沈殿させた粒子を再懸濁させて安定化させる必要がある。公称結晶サイズを決定するには、他の特徴付け技術を使用しなければならない。例えば、酸化鉄粒子のゼータ電位を測定すると、その粒子の荷電状態に関する情報を得ることができる。これらの粒子を生体適合性にするには、これら粒子の電荷をほぼゼロ(理想的にはゼロ)にすることが不可欠である。Zetasizer 3000を自動滴定装置(Mettler−Toledo,Inc.社より入手可能。米国オハイオ州コロンバス(Columbus))と併用し、ゼータ電位の溶液pH依存性を決定した。まず、前記ナノ粒子懸濁液を0.1Mの水酸化ナトリウム(NaOH)で滴定して、pH値を約10に増加させた。次に、0.1Mの塩酸(HCl)での滴定中、pH=9からpH=3までゼータ電位−pHプロファイルを測定した。
【0084】
前記ロット146−Tの酸化鉄ナノ粒子のゼータ電位−pH関数は、図3のとおりである。この観測では、pH値がゼータ電位に及ぼす有意な影響が見られる。アルカリ性から中性へのpH範囲では、前記ナノ粒子は−43ミリボルト(mV)〜−29mV範囲の強い負の表面電位を有する。pH=6.1の等電点通過後、このナノ粒子は、5〜3の酸性pH範囲で+27mV〜+35mVと高い正表面電位を示す。
【0085】
ロット146−T酸化鉄ナノ粒子の磁気特性は、種々の標準磁気技術を使って分析した。飽和磁化(M)、保磁力(H)、および残留磁気比(残留磁気の飽和磁化との比(M/M))を測定した。これらの磁気測定値は粒子で優勢な磁気特性の指標であり、これらを使うとマグネタイト(Fe)およびマグヘマイト(γ−Fe)の相対濃度を決定できる。表IIでは、これら磁気測定値と、粒子のマグネタイト含有量の決定値とを示す。
【0086】
【表2】

【0087】
飽和磁化の標準的値は、純粋なマグネタイトの場合0.1271電磁単位(electromagnetic unit、略称emu)/mg−Feで、純粋なマグヘマイトの場合0.1087emu/mg−Feである。残留磁気比は、粒子の磁区特性について、平均すなわち単一磁区か複数磁区の測度となる。安定した単一磁区特性を呈する磁性ナノ粒子の場合、理論的な値はM/M=0.5である。30nm未満の「磁性」粒子サイズで低温残留磁気曲線がブロッキング温度(T)分布を有する場合は、超常磁性(Superparamagnetic、略称SP)的な振る舞いが観測される。
【0088】
マグネタイトは、ブロックされた振る舞いからブロックされていない振る舞いへ磁区が転移するに伴い、100°K付近で低温残留磁気曲線上にフェルヴェイ(Verwey)転移を呈する。他方、マグヘマイトにはフェルヴェイ転移がない。マグネタイト粒子が超常磁性的振る舞いを示す場合は、通常、このタイプの実験において、SPの熱的ブロック解除効果によるフェルヴェイ転移の磁気効果を見ることは困難である。この場合、フェルヴェイ転移は観測されなかった。
【0089】
中性子粉末回折法の準備に際し、前記ロット146−Tのナノ粒子懸濁剤を、数日間真空オーブンで乾燥した。これは微量の水もすべて除去するために必要で、これは、水素の散乱断面積により高い背景信号がデータに生じるためである。この研究では、National Institute of Standards and Technology(米国標準技術局)、Center for Neutron Research(中性子研究センター)(米国メリーランド州ゲイザーズバーグ(Gaithersburg))の中性子粉末回折装置を使って測定を行った。モノクロメータとしては、データ回収時間は多くの場合4時間(h)〜24hと長いが高散乱の角度で最良な分解能が得られるSi(531)モノクロメータを使用した。このモノクロメータは、取り出し角120°で、波長1.590オングストローム(Å)の中性子を生成する。回折強度は、Cu(311)モノクロメータで得られるものの約30%である。7’のコリメーションでは、わずか10′(Δd/d= 8×10−4、ここでdは線幅)の半値全幅(full width at half maximum、略称FWHM)で完全にガウス分布線形状が観測されたが、ほとんどの試料は、試料固有の広がりの方が計器分解能より大きい。このため、Si(531)モノクロメータの使用は、最高の分解能が明らかに必要で、十分な質および量の試料が利用できる用途に制限される。
【0090】
測定値に基づくと、前記ナノ粒子の平均結晶サイズは約12nmであり、この試料は大部分マグネタイトからなり、さらに結晶性格子内の8面体配位Fe原子の平均磁気モーメントは4.4ボーア磁子で、4面体配位原子の平均磁気モーメントは3.9ボーア磁子であることが結論される。この後者の結果は、磁気測定から得られた結論、すなわち前記結晶に約20%のマグヘマイトが存在するという結論と一貫している。
【0091】
NPD測定値から得られた平均結晶サイズは、磁気特性でフェルヴェイ転移が観測されなかったこと、保磁力が低いこと、および残留磁気比が低いことの説明にも役立つ。これらの結果を合わせると、前記ナノ粒子の優勢なSP的性質の起因はその小サイズ(<<30nm)のためであり、この組成物の大きな割合がマグヘマイト成分からなるためではないことが実証される。
【実施例2】
【0092】
例2:デキストランでコーティングしたナノ粒子の合成および特徴付け(ロット152−W)
21gのデキストラン(分子量(MW)=40.000ドルトン。Carl Roth,GmbH社から入手可能。ドイツ、カールスルーエ(Karlsruhe))を、100mlの脱イオン水に溶解した。ロット146−Tからの75mlの酸化鉄懸濁液(濃度=45mg/ml)を、高圧ホモジナイザー(Fluidizer Y110、Microfluidics,Inc.社、米国マサチューセッツ州ニュートン(Newton))により、500バールで7分間均質化した。これは、高い剪断応力を強制するため、100マイクロメートル(μm)ダイヤモンド間隙に流体を通過させ駆動する圧縮空気駆動式プランジャポンプである。事前に加熱したデキストラン溶液(約45℃)を前記懸濁液に加え、前記ホモジナイザーにより1000バールで90℃に加温し、1000バールで30分間、87℃〜92℃の温度で処理した。室温への冷却後、このナノ粒子懸濁液を結晶皿へ移し(直径12センチメートル(cm))、永久磁石プレート上に1時間配置した。次に、その上清を第2の結晶皿(直径12cm)へ移し、永久磁石プレート上に16時間配置した。前記第1の結晶皿から得たペレットを20mlの等張生理食塩水で再懸濁して、ロット152−W1のナノ粒子分画を生成した。16時間の磁選後、前記第2の結晶皿の上清を除去し保管した。そのペレットを20mlの等張生理食塩水で再懸濁して、ロット152−W2のナノ粒子分画を生成した。
【0093】
残りの上清は、高傾斜磁場で前記ナノ粒子を分離してロット152−W3のナノ粒子分画を生成するために利用した。コーティングした鉄グレイン(粒子)で充填したカラムを、永久磁場に導入した。このカラムに前記上清を充填した。磁性粒子はこのカラムに保持した。このカラムに非磁性材料、特に過剰なデキストランを通過させた。等張生理食塩水で前記粒子を洗液した後、前記カラムを前記磁場から取り外し、前記ナノ粒子をこのカラムから取り出して等張生理食塩水で再懸濁した。図4にロット152−W1、152−W2、および152−W3用の工程経路図を示す。すべての粒子分画を滅菌フィルタ(Rotilabo(R)、0.22μm、PES、P668.1。Carl Roth GmbH社より入手可能)でろ過した。単一分画の粒子生成量を重量法で決定した。Spectroquant(R)‐Kit(Merck&Co.,Inc.社、米国ニュージャージー州ホワイトハウスステーション(Whitehouse Station)。VWR International GmbH社、ドイツ、ダルムシュタット(Darmstadt))を使い、分光光度法で全分画の鉄濃度を測定した。表IIIは、前記磁性ナノ粒子の特性を示したものである。
【0094】
【表3】

【0095】
サイズの特徴付け:前記ロット152−Wのナノ粒子分画の流体力学的直径を、PCS(図2bおよび図2cを参照)により測定した。その結果得られたデータを表IVに示す。
【0096】
【表4】

【0097】
図3には、デキストランでコーティングした前記ロット152−Wの酸化鉄ナノ粒子のゼータ電位測定値を示した。ロット146−Tの初期酸化鉄粒子と、それに対応するデキストランでコーティングした粒子とのゼータ電位−pH関数を比較すると、3〜9のpH範囲全体にわたり有意な減少が見られる。pH=6.1における前記酸化鉄懸濁液の等電点は、HPH条件下でのデキストランコーティングにより5.4にシフトしている。
【実施例3】
【0098】
例3:デキストランでコーティングしたナノ粒子のPEGカルボキシル化(ロット202−G)
粒子濃度25mg/mlの、デキストランでコーティングした152−Wタイプのナノ粒子懸濁液6ml(例2)の、0.1M β−モルホリノエタンスルホン酸水和物緩衝液(pH=6.3)溶液を、カルボジイミド活性化3,6−ジオキサオクタン二酸で、その量を増加させながら処理して、表Vに示すように種々のPEG−COOH密度を伴った複数ロットのナノ粒子202−G1〜202−G4を生成した。
【0099】
【表5】

【0100】
等量(表V参照)の1−(3−ジメチル−アミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)および3,6−ジオキサオクタン二酸を、1.5mlの0.5M β−モルホリノエタンスルホン酸水和物緩衝液(pH=6.3)に溶解し、50℃で10分間インキュベートして、前記粒子懸濁液に加えた。この粒子懸濁液を2時間室温で振盪した後、永久磁石を使ってこの溶液から分離した粒子を水で2回洗浄し、結果として濃度約20mg/mlのPEG−カルボキシル化ナノ粒子懸濁液を5ml得た。0.1MのNaOHによるpH=10への滴定後、0.1のM HClによるpH=3への滴定を行い、全ロットのPEG−COOH修飾ナノ粒子についてゼータ電位−pHプロファイルを決定した。
【0101】
一般に、PEG−COOH修飾を行うと、アルカリ性pH範囲での前記ナノ粒子の負のゼータ電位がより高まり、酸性pH範囲での前記ナノ粒子の正のゼータ電位がより高まる。125ナノモル(nmol)/mgを超える理論的PEG−COOH密度で一定のゼータ電位を達成すると、PEG−COOH密度を増加させた場合の粒子のゼータ電位−pH関数を使って、官能基による粒子表面の飽和範囲を導出することができる。これによると、前記ロット202−G3およびロット202−G4のナノ粒子が示すPEG−COOH基での被覆率は、(図5に示したように)わずか低〜中程度である。前記ナノ粒子の等電点は、(図6に示すように)表面上のPEG−COOH密度が最も低い前記粒子202−G4の場合のpH=5.9から、それに対応する、粒子表面上PEG−COOH基飽和度が最も高い粒子202−G1の場合のpH=4.8へと酸性方向に変化した。
【実施例4】
【0102】
例4:デキストランでコーティングしたナノ粒子の表面上におけるChL6抗体の共有結合(ロット206−G)
2.4mg(12.6μmol)の1−(3−ジメチル−アミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩、および4.8mg(42μmol)のN−ヒドロキシスクシンイミドを、1.25mlの0.5Mβ−モルホリノエタンスルホン酸水和物緩衝液(pH=6.3)に溶解し、PEG−COOH官能基化ロット202−G2(例3)を含む濃度20mg/mlの粒子懸濁液5mlに加えた。この粒子懸濁液を2時間振盪した後、永久磁石を使ってこの溶液から分離した粒子を、リン酸緩衝生理食塩水(pH=7.4)5mlで洗浄し、5mlのリン酸緩衝生理食塩水(pH=7.4)で懸濁した。1mgのChL6抗体(UC−Davis校より取得)を1mlのリン酸緩衝生理食塩水(pH=7.4)に溶解し、前記粒子懸濁液に加えた。この粒子懸濁液を4時間室温で振盪した後、グリシンの0.3Mリン酸緩衝生理食塩水溶液2ml(pH=7.4)を加えて、前記粒子表面の残りの活性部位をブロックした。この粒子懸濁液をさらに30時間室温で振盪した後、永久磁石を使ってこの溶液から分離した粒子を各回5mlのリン酸緩衝生理食塩水(pH=7.4)で3回洗浄し、結果としてナノ粒子濃度7mg/mlの懸濁液を5ml得た。ChL6でコーティングしたナノ粒子(ロット206−G)の平均流体力学的直径をPCSで決定したところ、45nm〜55nm範囲であった。この粒子の鉄含有量は、56%〜60%(w/w)の範囲と決定された。
【実施例5】
【0103】
例5:カルボキシ−デキストランでコーティングしたナノ粒子の合成(ロット200−W)
例2と同様に、例1で説明した酸化鉄をデキストランの代わりにカルボキシデキストラン(Innovent e.V.社より入手可能。ドイツ、イェーナ(Jena))でコーティングし、初期デキストラン構造にすでに存在するカルボン酸基が、デキストランシェルの完全性および密度に及ぼす影響を調べた。結果として得られたロット200−Wのナノ粒子は、COOH密度180nmol/mg(高分子電解質の滴定により決定)で、例4で説明した手順に従って抗体で直接コーティングできる。
【0104】
例6〜8では、高圧均質化(HPH)により酸化鉄ナノ粒子を生成するための合成手順(例6)と、HPHで生成した酸化鉄をデキストランでコーティングしたナノ粒子を生成するための合成手順(例7)と、ナノ粒子を官能基化するための合成手順と、ING−1抗体を共役させて生体内適用のための最終生成物を生成するため使用する方法(例8)について詳述している。
【実施例6】
【0105】
例6:高圧均質化による酸化鉄ナノ粒子の合成(ロット176−W)
13.5gのFeCl*6HOおよび7.85gのFeCl*4HOを250mlの水に溶解した。この溶液の温度を80℃に上昇させた。この鉄塩溶液をMicrofluidizer M−110Yリザーバに充填し、1000バールの圧力で均質化した。250mlの2N水酸化ナトリウム溶液を80℃に加熱し、撹拌しながら前記鉄塩溶液に加えた。この均質化は90℃で30分間行った。次に、結果として得られた懸濁液を室温に冷却した。この酸化鉄懸濁液を連続遠心分離により中和し、水で洗浄して安定な酸化鉄コロイド水溶液を生成した。その結果得られたナノ粒子の平均流体力学的直径を(PCSで)決定したところ、200nm〜500nm範囲であった。
【実施例7】
【0106】
例7:HPHで生成した酸化鉄をデキストランでコーティングしたナノ粒子の合成および特徴付け(ロット178−W)
21gのデキストラン(MW=40,000 D、Fluka)を、100mlの水に溶解して50℃に加熱した。2.6gの酸化鉄を含む例6の酸化鉄懸濁液200mlをMicrofluidizer M−110Y内に配置し、700バールで10分間処理した。撹拌中、加熱前のデキストラン溶液を前記懸濁液に加え、前記均質化処理をさらに40分間1000バールの圧力で継続した。この工程中、温度を85℃〜90℃の範囲に維持した。その結果得られた懸濁液を室温に冷却した。過剰なデキストランを前記ナノ粒子の磁選により除去し、そのナノ粒子を水で再懸濁した。その結果得られたナノ粒子の平均流体力学的直径を(PCSで)決定したところ、20nm〜80nm範囲であった。前記ナノ粒子の鉄含有量は、45%〜55%(w/w)の範囲と決定された。
【実施例8】
【0107】
例8:デキストランでコーティングしたナノ粒子へのING−1抗体結合(ロット07304−G)
6gのデキストランを20mlの水に溶解した。粒子濃度46mg/mlを有する、ロット178−Wのデキストランでコーティングしたナノ粒子(例7)22mlを前記デキストラン溶液に加えた。この粒子懸濁液を100℃に加熱しながら回転速度400rpmで1時間撹拌した。室温に冷却した後、永久磁石を使って磁性粒子を分離して、過剰なデキストランを上清から除去した。この粒子を20mlの水で懸濁して、58mg/mlの粒子濃度を得た。
【0108】
この粒子懸濁液2.6mlを2.4mlの水で希釈して、30mg/mlの粒子濃度を得た。3.6mg(18.8μmol)の1−(3−ジメチル−アミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩、および3.6mg(20.2μmol)の3,6−ジオキサオクタン二酸を、1.25mlの0.5Mβ−モルホリノエタンスルホン酸水和物緩衝液(pH=6.3)に溶解し、50℃で10分間インキュベートして、前記粒子懸濁液に加えた。この粒子懸濁液を2時間室温で振盪した後、永久磁石を使ってこの溶液から分離した粒子を5mlの0.1 M β−モルホリノエタンスルホン酸水和物緩衝液(pH=6.3)で2回洗浄し、結果として濃度10mg/mlのPEG−カルボキシル化ナノ粒子懸濁液を5ml得た。
【0109】
6mg(31.4μmol)の1−(3−ジメチル−アミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩、および12mg(104μmol)のN−ヒドロキシスクシンイミドを、1.25mlの0.5Mβ−モルホリノエタンスルホン酸水和物緩衝液(pH=6.3)に溶解し、前記粒子懸濁液に加えた。この粒子懸濁液を2時間振盪した後、永久磁石を使ってこの溶液から分離した粒子を、リン酸緩衝生理食塩水(pH=7.4)5mlで洗浄し、4mlのリン酸緩衝生理食塩水(pH=7.4)で懸濁した。500μgのING−1抗体(XOMA Inc.社より取得。米国カリフォルニア州オークランド(Oakland))を200μlのリン酸緩衝生理食塩水(pH=7.4)に溶解し、前記粒子懸濁液に加えた。この粒子懸濁液を4時間室温で振盪した後、グリシンの0.3Mリン酸緩衝生理食塩水溶液2ml(pH=7.4)を加えて、前記粒子表面の残りの活性部位をブロックした。この粒子懸濁液をさらに30時間室温で振盪した後、永久磁石を使ってこの溶液から分離した粒子を各回5mlのリン酸緩衝生理食塩水(pH=7.4)で3回洗浄し、結果としてナノ粒子濃度8mg/mlの懸濁液を5ml得た。ING−1でコーティングしたナノ粒子(ロット07204−G)の平均流体力学的直径をPCSで決定したところ、60nm〜70nm範囲であった。このナノ粒子の鉄含有量は、58%〜60%(w/w)の範囲と決定された。
【実施例9】
【0110】
例9:オリゴdT20(oligo−dT20)で修飾しカルボキシ−デキストランでコーティングしたナノ粒子の合成(ロット208−G)
6mg(31.4μmol)の1−(3−ジメチル−アミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩、および12mg(104μmol)のN−ヒドロキシスクシンイミドを、1.25mlの0.5M β−モルホリノエタンスルホン酸水和物緩衝液(pH=6.3)に溶解し、(例8から得られた)濃度10mg/mlの、PEGをカルボキシル化したナノ粒子の懸濁液5mlに加えた。この粒子懸濁液を2時間室温で振盪した後、永久磁石を使ってこの溶液から分離した粒子を、イミダゾール緩衝液(pH=7.0)5mlで洗浄し、4mlのイミダゾール緩衝液(pH=7.0)で懸濁した。200nmolのオリゴdT20 C6アミノ連結(5’)(Thermo Electron Corporation社より入手可能。ドイツ、ウルム(Ulm))を、200μlのイミダゾール緩衝液(pH=7.0)に溶解し、前記粒子懸濁液に加えた。この粒子懸濁液を4時間室温で振盪した後、粒子を各回5mlの10mMトリス緩衝液(pH=7.5)で3回洗浄し、さらに500mMのKClで核酸を結合させた。オリゴdT20でコーティングしたナノ粒子(ロット208−G)の平均流体力学的直径をPCSで決定したところ、55nm〜65nm範囲であった。このナノ粒子の鉄含有量は、58%〜60%(w/w)の範囲と決定された。
【実施例10】
【0111】
例10:ナノ粒子SAR値の熱量測定
使用機器:
・タンク回路付きTIG 10/300 RF電源(Huttinger Electronic Inc.社、米国コネチカット州ファーミントン(Farmington))
・8巻き、0.75" ID、および2.2"長のRFコイル(ソレノイド)(Triton BioSystems,Inc.社、米国マサチューセッツ州チェルムスフォード(Chelmsford))
・FOT−M/2M温度プローブおよびチャート作成ソフトウェア付きUMI−4温度プローブコントローラ(Fiso,Inc.社、カナダ、ケベック)
・TDS−3014オシロスコープ(Tektronix,Inc.社、米国オレゴン州ビーバートン(Beaverton))
・リッツ線磁気プローブ(Centre for Induction Technology,Inc.社、米国ミシガン州オーバーンヒルズ(Auburn Hills))
前記装置は、出力電圧の20、40、60、80、90、および100%に電源を設定して較正した。各設定では、前記リッツ線プローブおよびオシロスコープを使ってコイルの中心におけるピーク磁場強度を測定した。軸方向および動径方向のオフセットを小さくとって場も測定したところ、この場は、計画した1mlの試料体積にわたり10%内で均一であると決定された。ピーク場強度を電源の出力電圧パーセントに対してチャートに作成した。この曲線では、電源の電圧測定値により場強度の事前設定が可能であった。熱量較正も行った。これは、計画した各場強度でSAR試験の直前に脱イオン(DI)水試料を流した後、同じ加熱手順を実施することにより達成した。DI試料から得られた温度曲線を前記SAR試料のものから減算することにより、絶縁材を介した熱損失(または加熱)を考慮した。
【0112】
完全にボルテックスした後、1mlの試料を8mmガラス試験管に注いだ。一部のケースでは、この試料を脱イオン水で希釈し、加熱速度を容易に測定できる限界内に維持した(試料サイズはすべての場合で1mlに維持)。前記試験管をボルテックスし、セラミックフェルトの絶縁材に包んで前記ソレノイドコイル内に配置した。これをガラスの台に置き、前記液体試料が軸方向および動径方向について前記コイルの中央に配置されるようにした。前記温度プローブをこの試料に浸漬したところ、チャート作成ソフトウェアが開始した。10秒でRFを適用し、60秒でこのRFを低下させた。前記DI検量線を生ウォームアップデータから減算した後、結果として特性加熱曲線を得た。この曲線の傾きと、粒子および鉄の濃度とを以下の式に入力した。
【0113】
【数1】

【0114】
【表6】

【0115】
コーティングしたナノ粒子、特に前記デキストランでコーティングした酸化鉄ナノ粒子の加熱速度強化には、(例1〜7に示したとおり)前記HPH工程を使用した。これらのナノ粒子は、約370〜約500Oeの交互変動磁場(AMF)振幅を適用した場合、加熱した。まず、Fe(II)/Fe(III)比=1.58:2.0の磁性材料を選択した。この材料は、約370〜約1600OeのAMF振幅を印加すると、一定の加熱速度を呈する(HPH工程を経ず酸化鉄沈着で生成した場合)。前記酸化鉄を洗浄し、HPH工程を利用してこのナノ粒子をデキストランでコーティングした。この工程により前記ナノ粒子の加熱速度は強化され、約370〜500W/g FeのAMF振幅を適用した場合、240 W/g Fe以上のSAR値で加熱が生じるようになる。
【0116】
本発明の組成物は、ヒトを対象(患者)として適用可能であり、哺乳類、臓器提供者、死体などにも適用可能である。
【0117】
上記のとおり、本発明は、高圧均質化工程により調製された、治療的および生物学的な種々の用途のための生体適合性の磁性ナノ粒子組成物に関する。本発明は上記の特定の実施形態に限定されると見なすべきではなく、むしろ添付した請求項に適正に記載したとおり、本発明のすべての態様をカバーするものと理解すべきである。本発明が適用可能な種々の変更(修正)形態、対応工程、また多数の構成は、本発明に該当する当業者であれば、本明細書を検討することにより容易かつ明確に理解される。前記請求項は、このような変更(修正)形態および装置をカバーするよう意図したものである。
【図面の簡単な説明】
【0118】
本発明は、本発明の種々の実施形態に関する以下の詳細な説明を添付の図面とともに考慮することで、より完全に理解される。
【図1】図1は、本発明の実施形態に係るバイオプローブ構成を概略的に例示した図。
【図2a】図2aは、本発明の実施形態に係る種々の試料のサイズプロットをグラフで例示した図であり、ロット番号146−Tのサイズプロット(酸化鉄、例1)。
【図2b】図2bは、本発明の実施形態に係る種々の試料のサイズプロットをグラフで例示した図であり、ロット番号152−W1のサイズプロット(デキストランでコーティングした酸化鉄、第1分画、例2)。
【図2c】図2cは、本発明の実施形態に係る種々の試料のサイズプロットをグラフで例示した図であり、ロット番号152−W2のサイズプロット(デキストランでコーティングした酸化鉄、第2分画、例2)。
【図3】図3は、本発明の実施形態に係るロット番号146−T(例1)の酸化鉄およびロット番号152−W(例2)のデキストランでコーティングした酸化鉄について、ゼータ電位の結果をグラフで例示した図。
【図4】図4は、本発明の実施形態に係る試料152−W1、152−W2、および152−W3(例1および例2)について、工程経路図を例示した図。
【図5】図5は、本発明の実施形態に係る、異なるPEG−COOH密度のタイプ152−Wナノ粒子、ロット番号202−G1〜202−G4(例3)について、ゼータ電位およびpHの関数をグラフで例示した図。
【図6】図6は、本発明の実施形態に係る、異なるPEG−COOH密度のタイプ152−Wナノ粒子の等電点(isoelectric point、略称IEP)をグラフで例示した図。 本発明は種々の変更(修正)形態および代替形態が可能であるが、図面に示す具体的内容は例示を目的としたもので、以上詳細に説明している。ただし、これらは本発明を特定の実施形態に限定するよう意図されたものではないことを理解すべきである。むしろ、添付の請求の範囲で定義しているとおり、本発明の要旨の範囲に含まれる変更(修正)形態、対応形態、および代替形態をすべてカバーするよう意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性ナノ粒子組成物を調製する方法であって、
a.第1の工程段階において、予備成形した金属含有磁性材料を乱流ゾーンを通して処理することにより、金属含有磁性材料を生成し、第2の工程段階において、前記第1の工程段階の結果得られた改善済み磁性材料および生体適合性コーティング材料を使って、乱流ゾーンを通して磁性ナノ粒子組成物を生成する工程、または、
b.第1の工程段階において、乱流ゾーンを通して金属含有溶液から金属含有磁性材料を生成し、第2の工程段階において、前記第1の工程段階の結果得られた磁性材料および生体適合性コーティング材料を使って、乱流ゾーンを通して磁性ナノ粒子組成物を生成する工程、または、
c.単一の工程段階において、金属含有溶液から金属含有磁性材料を生成し、乱流ゾーンを通して前記金属含有磁性材料を生体適合性コーティング材料で処理することにより、磁性ナノ粒子組成物を形成する工程
を有する方法。
【請求項2】
請求項1の方法において、前記第1の工程段階および前記第2の工程段階は、水を有する液体媒体中、または水酸化アンモニアか、水酸化ナトリウムか、水酸化カリウムを主成分とするアルカリ水溶液を有する液体媒体中で実施されるものである。
【請求項3】
請求項1の方法において、前記予備成形した金属含有磁性材料は、a)異なる複数の金属、b)異なる複数の金属化合物、c)価数が異なる複数の金属、またはd)これらの任意の組み合わせ、のうち1つ、または2若しくはそれ以上の組み合わせを有するものである。
【請求項4】
請求項3の方法において、前記予備成形した金属含有磁性材料は、Fe(II)およびFe(III)の組み合わせをモル比1:1〜1:2で有するものである。
【請求項5】
請求項1の方法において、前記金属含有溶液は、金属か、金属塩か、金属アルコキシドか、金属水素化物か、金属酸化物か、金属酸化物水和物か、2若しくはそれ以上の金属の金属合金か、これらの任意の組み合わせかから調製されるものである。
【請求項6】
請求項5の方法において、前記金属含有溶液は、Fe(II)塩およびFe(III)塩の組み合わせをモル比1:1〜1:2で有するものである。
【請求項7】
請求項1の方法において、前記生成された前記金属含有磁性材料は、金属か、金属塩か、金属アルコキシドか、金属水素化物か、金属酸化物か、金属酸化物水和物か、2若しくはそれ以上の金属の金属合金か、これらの任意の組み合わせかを有するものである。
【請求項8】
請求項7の方法において、前記金属酸化物は酸化鉄である。
【請求項9】
請求項8の方法において、前記酸化鉄は、マグネタイト(磁鉄鉱)か、ヘマタイト(赤鉄鉱)か、マグヘマイト(磁赤鉄鉱)か、これらの任意の組み合わせかである。
【請求項10】
請求項8の方法において、前記酸化鉄には、2価または3価の金属イオンがドープされるものである。
【請求項11】
請求項1の方法において、前記生体適合性コーティング材料は、高分子か、金属化合物か、トランスフェクション剤か、これらの任意の組み合わせかを有するものである。
【請求項12】
請求項11の方法において、前記高分子は、天然高分子か、合成高分子か、半合成高分子かである。
【請求項13】
請求項11の方法において、前記高分子は、少なくとも1つの反応性基またはイオン基、あるいはこれらの任意の組み合わせを有するものである。
【請求項14】
請求項11の方法において、前記高分子は、ホモポリマー(単独重合体)か、コポリマー(共重合体)か、ポリマーブレンドかを有するものである。
【請求項15】
請求項11の方法において、前記高分子は生物材料を有するものである。
【請求項16】
請求項15の方法において、前記高分子は、多糖類か、ポリアミノ酸か、タンパク質か、脂質か、脂肪酸か、ヘパリンか、ヘパリン硫酸塩か、コンドロイチン硫酸塩か、キチンか、キトサンか、アルギン酸塩か、グリコサミノグリカンか、セルロースか、デンプンか、ヒスチジン含有高分子か、ヒドロゲル高分子か、これらの任意の誘導体か、これらの任意の組み合わせかを有するものである。
【請求項17】
請求項16の方法において、前記多糖類はデキストランである。
【請求項18】
請求項17の方法において、前記デキストランは1若しくはそれ以上の官能基を有するものである。
【請求項19】
請求項12の方法において、前記合成高分子は、ポリビニル化合物か、ポリアミンか、ポリイミンか、ポリオールか、ポリエーテルか、ポリカルボン酸か、ポリケイ酸か、ポリアクリル酸塩か、ポリシロキサンか、ポリアルキレングリコールか、パリレンか、ポリ乳酸か、ポリグリコール酸か、これらの任意の誘導体か、これらの任意の組み合わせかを有するものである。
【請求項20】
請求項2の方法において、前記第1の工程段階および前記第2の工程段階は、液体担体媒体内において100バールを超える圧力下で処理されるものである。
【請求項21】
請求項2の方法において、前記第1の工程段階および前記第2の工程段階は、液体担体媒体内において1000バールを超える圧力下で処理されるものである。
【請求項22】
請求項1の方法において、前記第1の工程段階および前記第2の工程段階は、液体担体媒体内において約40℃から前記媒体の沸点までの範囲の温度で処理されるものである。
【請求項23】
請求項1の方法において、前記第1の工程段階および前記第2の工程段階は、液体担体媒体内において約75℃〜約95℃の範囲の温度で処理されるものである。
【請求項24】
請求項1の方法において、使用される成分は、各工程段階において乱流ゾーンを通して約20ml/分〜約200ml/分範囲の流量で処理されるものである。
【請求項25】
請求項2の方法において、結果として得られた磁性ナノ粒子は、安定な水溶性コロイドを形成するものである。
【請求項26】
請求項2の方法において、結果として得られた磁性ナノ粒子は、安定なコロイドの生理溶液を形成するものである。
【請求項27】
請求項2の方法において、結果として得られた磁性ナノ粒子は、外部磁場により前記担体媒体から分離されるものである。
【請求項28】
請求項27の方法において、結果として得られた磁性ナノ粒子は、永久磁石により分離されるものである。
【請求項29】
磁性ナノ粒子組成物であって、
a.外部磁場が印加されると磁化され低磁場を有する、少なくとも1つの金属含有磁性ナノ粒子と、
b.前記少なくとも1つのナノ粒子を懸濁するための適切な媒体と
を有し、
前記少なくとも1つのナノ粒子は、200nm未満の流体力学的直径を有し、少なくとも50質量パーセントの金属を含み、
前記少なくとも1つの金属含有磁性ナノ粒子は、生体適合性コーティング材料を有するものである
磁性ナノ粒子組成物。
【請求項30】
請求項29の磁性ナノ粒子組成物において、前記外部磁場は、約0〜約400エルステッド範囲の振幅を有するものである。
【請求項31】
請求項29の磁性ナノ粒子組成物において、前記ナノ粒子組成物は、約2μmol/g〜約250μmol/g範囲のPEG密度を有するものである。
【請求項32】
請求項29の磁性ナノ粒子組成物において、前記少なくとも1つの磁性ナノ粒子は、a)金属か、b)金属酸化物か、c)金属酸化物水和物か、d)金属水素化物か、e)2若しくはそれ以上の金属の金属合金か、f)これらの任意の組み合わせかを有するものである。
【請求項33】
請求項32の磁性ナノ粒子組成物において、前記少なくとも1つの磁性ナノ粒子は、鉄酸化物を有するものである。
【請求項34】
請求項33の磁性ナノ粒子組成物において、前記酸化鉄は、マグネタイトか、ヘマタイトか、マグヘマイトか、これらの任意の組み合わせかである。
【請求項35】
請求項33の磁性ナノ粒子組成物において、前記酸化鉄には、2価または3価の金属イオンがドープされるものである。
【請求項36】
請求項29の磁性ナノ粒子組成物において、前記少なくとも1つの磁性ナノ粒子は、強磁性か、反強磁性か、フェリ磁性か、反フェリ磁性(antiferrimagnetic)か、超常磁性かの特性を有するものである。
【請求項37】
請求項29の磁性ナノ粒子組成物において、前記生体適合性コーティングは高分子を有するものである。
【請求項38】
請求項37の磁性ナノ粒子組成物において、前記高分子は、天然高分子か、合成高分子か、半合成高分子かである。
【請求項39】
請求項37の磁性ナノ粒子組成物において、前記高分子は、ホモポリマー(単独重合体)か、コポリマー(共重合体)か、ポリマーブレンドかを有するものである。
【請求項40】
請求項37の磁性ナノ粒子組成物において、前記高分子は、少なくとも1つの反応性基またはイオン基、あるいはこれらの任意の組み合わせを有するものである。
【請求項41】
請求項37の磁性ナノ粒子組成物において、前記高分子は生物材料を有するものである。
【請求項42】
請求項37の磁性ナノ粒子組成物において、前記高分子は、多糖類か、ポリアミノ酸か、タンパク質か、脂質か、脂肪酸か、ヘパリンか、ヘパリン硫酸塩か、コンドロイチン硫酸塩か、キチンか、キトサンか、アルギン酸塩か、グリコサミノグリカンか、セルロースか、デンプンか、ヒスチジン含有高分子か、ヒドロゲル高分子か、これらの任意の誘導体か、これらの任意の組み合わせかを有するものである。
【請求項43】
請求項42の磁性ナノ粒子組成物において、前記多糖類はデキストランである。
【請求項44】
請求項43の磁性ナノ粒子組成物において、前記デキストランは1若しくはそれ以上の官能基を有するものである。
【請求項45】
請求項38の磁性ナノ粒子組成物において、前記合成高分子は、ポリビニル化合物か、ポリアミンか、ポリイミンか、ポリオールか、ポリエーテルか、ポリカルボン酸か、ポリケイ酸か、ポリアクリル酸塩か、ポリシロキサンか、ポリアルキレングリコールか、パリレンか、ポリ乳酸か、ポリグリコール酸か、これらの任意の誘導体か、これらの任意の組み合わせかを有するものである。
【請求項46】
請求項29の磁性ナノ粒子組成物において、前記磁性ナノ粒子組成物は、1若しくはそれ以上の部分構造を有するものである。
【請求項47】
請求項46の磁性ナノ粒子組成物において、前記部分構造は、少なくとも1つのリガンドまたはキレート剤か、これらの組み合わせかを有するものである。
【請求項48】
請求項47の磁性ナノ粒子組成物において、前記少なくとも1つのリガンドまたはキレート剤は、ペプチドか、タンパク質か、核酸か、酵素か、抗体か、抗体片か、これらの任意の組み合わせを有するものである。
【請求項49】
請求項48の磁性ナノ粒子組成物において、前記抗体はING−1である。
【請求項50】
請求項46の磁性ナノ粒子組成物において、前記部分構造は生物活性物質を有するものである。
【請求項51】
請求項50の磁性ナノ粒子組成物において、前記生物活性物質は、製薬剤か、ペプチドか、脂質か、生化学的因子か、これらの任意の組み合わせかを有するものである。
【請求項52】
請求項1の方法に従って生成される磁性ナノ粒子組成物。
【請求項53】
請求項52の磁性ナノ粒子組成物において、前記磁性ナノ粒子組成物は、1若しくはそれ以上の部分構造を有するものである。
【請求項54】
請求項29の磁性ナノ粒子組成物において、前記組成物は、固化か、分離か、輸送か、標的のマーキングまたはコーディングか、エネルギー変換かの工程に使用されるものである。
【請求項55】
請求項54の磁性ナノ粒子組成物において、前記組成物は、生体分子の分離または精製、あるいはこれらの任意の組み合わせにおいて使用されるものである。
【請求項56】
請求項54の治療方法組成物は、核酸か、核酸誘導体か、核酸片か、タンパク質か、タンパク質誘導体か、タンパク質片か、これらの任意の組み合わせかの、分離か、精製か、これらの任意の組み合わせかにおいて使用されるものである。
【請求項57】
請求項54の磁性ナノ粒子組成物において、前記組成物は、細胞の分別(ソート)および精製において使用されるものである。
【請求項58】
請求項54の磁性ナノ粒子組成物において、前記組成物は放射性核種治療において使用されるものである。
【請求項59】
請求項54の磁性ナノ粒子組成物において、前記組成物は分析工程または診断アッセイにおいて使用されるものである。
【請求項60】
請求項59の磁性ナノ粒子組成物において、前記組成物は造影剤として使用されるものである。
【請求項61】
治療方法であって、
a.標的を有する対象の身体か、身体部分か、組織か、細胞か、体液かの少なくとも一部に、請求項46の磁性ナノ粒子組成物を投与する工程と、
b.前記磁性ナノ粒子組成物と前記標的とを組み合わせたものにエネルギーを与える工程と
を有する治療方法。
【請求項62】
請求項61の治療方法であって、この治療方法は、さらに、
交互に変動する磁場(alternating magnetic field、略称AMF)を印加する工程を有する治療方法。
【請求項63】
請求項61の治療方法において、前記組成物は、注射か、局所投与か、経皮投与か、経口摂取か、直腸挿入か、経口または経鼻での吸入か、これらの任意の組み合わせかにより投与されるものである。
【請求項64】
請求項61の治療方法において、前記方法は、癌か、AIDSか、有害な血管形成か、再狭窄か、アミロイドーシスか、結核か、多発性硬化症か、心臓血管のプラークか、血管のプラークか、肥満症か、マラリアか、ウイルスによる疾患か、これらの任意の組み合わせかの治療に利用されるものである。
【請求項65】
請求項61の治療方法において、前記磁性ナノ粒子は、生物活性物質を輸送および放出するものである。
【請求項66】
治療方法であって、
a.標的を有する対象の身体か、身体部分か、組織か、細胞か、体液かの少なくとも一部に、請求項53の磁性ナノ粒子組成物を投与する工程と、
b.前記磁性ナノ粒子組成物と前記標的とを組み合わせたものにエネルギーを与える工程と
を有する治療方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−530422(P2007−530422A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518906(P2006−518906)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/021905
【国際公開番号】WO2005/013897
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(503461995)トリトン バイオシステムズ、インク. (5)
【Fターム(参考)】