説明

磁性体の検知方法

【課題】被探知磁性体のピーク磁界強度が磁気センサの検出可能な上限磁界強度を越える場合でも、その磁性体の位置の探知を可能とする。
【解決手段】2個の磁気センサを所定の間隔を隔て所定の同一方向にて配設した対磁気センサを使用し、この対磁気センサまたは磁性体を前記所定の方向に走行させて両磁気センサの検出出力が実質的に等しくなる位置を探知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性体の位置を探知する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁性体の位置を磁気センサのスキャニングにより探知することが知られている。例えば、カテーテルを患者の口または鼻から食道を経て胃にまで挿入する場合、カテーテルの先端に磁性体を取付け、前記の挿入中、磁気センサを人体の表面に沿い走行させて磁性体の位置を探知することが知られている。(例えば、特許文献1,2)
【特許文献1】特開2004−215992公報
【特許文献2】特表平9−503054号公報
【0003】
図1に示すように、磁化された磁性体Aに対し、所定の高さの経路に沿う磁界の垂直成分強度の絶対値の分布は、磁性体の直上位置を頂点とする山状となる。磁性体の位置を磁気センサにより探知するには、従来では、この磁界分布の山のピーク位置を探知している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1において、Hhは磁気センサの検出可能な上限値(センサ素子が磁気飽和する境界値)を示し、磁性体の磁化が強くて前記のピーク磁界強度が検出可能な上限値を越える場合、前記の従来法では、磁性体の位置を探知できない。
食料品や衣料品の製造工程では、機械破片等の鉄系磁性異物を除去するための検査が要求されている。しかしながら、異物の大きさ、磁化率(応力や地磁気により磁化される)等により、前記したピーク磁界強度が相違し、磁化率の高い異物では、ピーク磁界強度が磁気センサの検出可能な上限値を越えてその異物の探知が不可となって検査の信頼性を満足に保証し難い。
【0005】
本発明の目的は、被探知磁性体のピーク磁界強度が磁気センサの検出可能な上限磁界強度を越える場合でも、その磁性体の位置の探知を可能とする方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る磁性体の検知方法は、磁気センサを被探知磁性体に対し、または被探知磁性体に対し磁気センサを走行させることによりその磁性体の位置を探知する方法であり、前記磁気センサに、2個の磁気センサを所定の間隔を隔て所定の同一方向にて配設した対磁気センサを使用し、この対磁気センサまたは磁性体を前記所定の方向に走行させて両磁気センサの検出出力が実質的に等しくなる位置を探知することを特徴とする。
請求項2に係る磁性体の検知方法は、磁気センサを被探知磁性体に対し、または被探知磁性体に対し磁気センサを走行させ、その走行中に検出可能な上限値以上の磁界が作用する場合にその磁性体の位置を探知する方法であり、前記磁気センサに、2個の磁気センサを所定の間隔を隔て所定の同一方向にて配設した対磁気センサを使用し、この対磁気センサまたは磁性体を前記所定の方向に走行させて両磁気センサの検出出力が実質的に等しくなる位置を探知することを特徴とする。
請求項3に係る磁性体の検知方法は、請求項1または2の磁性体の探知方法において、磁気センサが磁界強度の絶対値を検出する磁気センサであることを特徴とする。
請求項4に係る磁性体の検知方法は、請求項1〜3何れかの磁性体の探知方法において、対磁気センサに、勾配磁界検出センサを使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
図1に示すように、被探知磁性体に対し所定の高さ隔てた経路に沿っての被探知磁性体の磁界強度分布をH(x)とし、対磁気センサの各磁気センサS,Sの検出可能な上限値をH、下限値をHとする。対磁気センサSeを前記の経路に沿って走行させていき、図2に示すように、対磁気センサSeの中央点oが被探知磁性体Aの直上に達すると、各磁気センサS,Sが感磁する磁界強度がhc,hdとなり、磁界強度分布の垂直線n−n’に対する左右対称性から、hc=hdが成立する。従って、各磁気センサS,Sの検出出力が等しくなる位置から磁性体Aの位置を探知できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1において、Aは磁化された磁性体を示し、磁化方向は垂直方向であるとする。H(x)は磁性体に対し所定の高さを隔てた水平経路に沿っての磁性体Aの垂直方向磁界強度の分布を示している。Seは対磁気センサであり、2個の磁気センサS,Sを距離Lを隔てて配設してなり、各磁気センサの検出可能な上限磁界強度をHで示し、下限磁界強度をHで示している。図1におけるp−p間の距離L、p’−p’間の距離Lに対し、2個の磁気センサS,S間の距離Lを、L<L<Lを満たすように設定してある。
【0009】
本発明により磁性体の位置を探知するには、対磁気センサを上記経路に沿い、かつ各磁気センサS,Sの感磁軸方向を共に垂直方向に向けた状態で走行させていく。図2において、(イ)→(ロ)→(ハ)→(ニ)は対磁気センサSeの経時位置を示している。
図2の(イ)では、対磁気センサの磁気センサSが磁界強度haに対する検出出力を発生し、磁気センサSが磁界強度hcに対する検出出力を発生する。ha≠hcである。(ロ)では、対磁気センサの磁気センサSが磁界強度hbに対する検出出力を発生し、磁気センサSが上限Hhに対する飽和検出出力を発生する。hb≠Hhである。(ハ)では、対磁気センサの磁気センサSが磁界強度hcに対する検出出力を発生し、磁気センサSが磁界強度hdに対する検出出力を発生する。(ニ)では、対磁気センサの磁気センサSが磁界強度hdに対する検出出力を発生し、磁気センサSが磁界強度heに対する検出出力を発生する。hd≠heである。
(ハ)において、対磁気センサSeの中央点oが被探知磁性体Aの直上に位置すると、磁界強度分布の垂直線n−n’に対する左右対称性から、hc=hdが成立する。従って、各磁気センサS,Sの検出出力が等しくなる位置から磁性体Aの位置を探知できる。
【0010】
図2の(ハ)に対し、図3に示すように対磁気センサSeの中央点oが磁性体Aの直上位置からΔLずれると、各磁気センサS,Sの感磁磁界強度hc、hdにΔhの差が生じて検出出力に差ΔEoutが生じるが、差ΔEoutが予め定めた所定の微小値以内であれば、ΔLを充分に小さく抑えることができ、対磁気センサの両磁気センサの検出出力差が予め定めた所定の微小値以内になる対磁気センサの位置からでも、磁性体の位置を充分な精度で探知できる。
【0011】
上記の例では、磁性体の磁化方向を垂直方向としたが、磁性体の磁化方向は通常、垂直方向のものと水平方向とのものとのベクトル合成方向で与えられる。
図4の(イ)は、磁化方向が水平方向の磁性体の、磁性体に対し所定高さの経路に沿っての垂直方向磁界強度の分布を示し、磁性体Aの位置を対称中心とする点対称である。しかし、その磁界強度に対する絶対値強度の分布は、図4の(ロ)に示すように、磁性体を通る垂直線に対し左右対称となる。図4の(ロ)において、Hは各磁気センサの検出可能な上限磁界強度を、Hは下限磁界強度を示している。
磁化方向が水平方向の磁性体の位置を探知するには、対磁気センサの各磁気センサに磁界強度の絶対値を検出するものを使用し、対磁気センサの両磁気センサの間隔をL<L<Lを満たすように設定し、前記と同様にして磁性体の位置を探知する。
【0012】
本発明において、対磁気センサの各磁気センサには、絶対磁界検出センサが使用される。この絶対磁界検出センサとしては、センサの被検出磁界−検出出力特性が図5の(イ)に示すように左右対称のもの、図5の(ロ)に示すように、極性判別可能な出力特性のセンサの出力を全波整流するもの等を使用できる。
【0013】
前記対磁気センサに、所定の距離Lを隔てて配設した両磁気センサの出力差を検出量として出力する勾配磁界センサを使用し、検出量0の位置から磁性体の位置を検知することができる。
【0014】
前記の距離Lは、被探知磁性体の磁化強度や各磁気センサの検出可能上限磁界強度などに左右され、実験により定められる。通常、前記した経路の高さの0.5〜5倍の範囲から設定される。その距離は調整可能としておき、探知経路の高さなどに応じ調整することができる。
【0015】
上記の例では、磁気センサにより検出する磁界強度を垂直磁界強度としているが、水平磁界強度を検出するようにしてもよい。
本発明において、磁気センサには、磁気インピーダンス効果センサ、MRセンサ、フラックスゲートセンサ等を使用できる。
【0016】
上記の例では、対磁気センサを走行させているが、例えば、コンベアにより搬送される部品中に磁性体異物が含まれているか否かを検査する場合、対磁気センサを固定し、この対磁気センサの直下または直上に部品を走行させることができる。
【0017】
本発明に実施にあたり、被探知磁性体を磁化器により垂直方向または水平方向の単一方向に磁化したうえで本発明を実施することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る磁性体の探知方法における磁性体の磁界強度分布と対磁界センサを示す図面である。
【図2】本発明に係る磁性体の探知方法における対磁気センサの移動状態を示す図面である。
【図3】本発明に係る磁性体の探知方法における位置探知精度を示すために使用した図面である。
【図4】磁性体の磁化方向が水平方向であるときの本発明に係る磁性体の探知方法を示すための図面である。
【図5】本発明で使用する絶対磁界検出センサの被検出磁界−検出出力特性を示す図面である。
【符号の説明】
【0019】
Se 対磁気センサ
磁気センサ
磁気センサ
L 磁気センサS,S間の間隔
検出可能上限磁界強度
検出可能下限磁界強度
A 磁性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気センサを被探知磁性体に対し、または被探知磁性体に対し磁気センサを走行させることによりその磁性体の位置を探知する方法であり、前記磁気センサに、2個の磁気センサを所定の間隔を隔て所定の同一方向にて配設した対磁気センサを使用し、この対磁気センサまたは磁性体を前記所定の方向に走行させて両磁気センサの検出出力が実質的に等しくなる位置を探知することを特徴とする磁性体の検知方法。
【請求項2】
磁気センサを被探知磁性体に対し、または被探知磁性体に対し磁気センサを走行させ、その走行中、磁気センサに検出可能な上限値以上の磁界が作用する場合にその磁性体の位置を探知する方法であり、前記磁気センサに、2個の磁気センサを所定の間隔を隔て所定の同一方向にて配設した対磁気センサを使用し、この対磁気センサまたは磁性体を前記所定の方向に走行させて両磁気センサの検出出力が実質的に等しくなる位置を探知することを特徴とする磁性体の検知方法。
【請求項3】
磁気センサが磁界強度の絶対値を検出する絶対磁界検出センサであることを特徴とする請求項1または2記載の磁性体の探知方法。
【請求項4】
対磁気センサに、勾配磁界検出センサを使用することを特徴とする請求項1〜3何れか記載の磁性体の探知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−209240(P2008−209240A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−46337(P2007−46337)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(000225337)内橋エステック株式会社 (115)
【Fターム(参考)】