説明

磁性体含有ろ過助剤の洗浄装置及びこれを用いた水処理方法

【課題】 磁性体含有ろ過助剤と浮遊物を効率良く分離することができる洗浄装置およびこれを用いた水処理方法を提供する。
【解決手段】 ろ過された原水中の異物と磁性体含有ろ過助剤をともに含む分散溶液が導入される洗浄容器56と、前記洗浄容器内で回転駆動され、遠心力の作用により前記分散溶液を撹拌する撹拌羽根55と、前記撹拌羽根の回転半径よりも内側の領域に配置され、磁場を生成し、生成磁場の電磁誘導の力を前記分散溶液中の磁性体含有ろ過助剤に作用させ、電磁誘導の作用により前記撹拌羽根の回転半径よりも内側の領域に向かって移動する磁性体含有ろ過助剤13を、遠心力の作用により前記撹拌羽根の回転半径よりも外側の領域に向かって移動する異物から分離させる磁場生成手段53,54,53a,54aとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁性体含有ろ過助剤の洗浄装置とこれを用いた水処理方法に係り、とくに排水中の浮遊物(SS)と磁性体含有ろ過助剤とを分離してろ過助剤を回収するために、ろ過残留物を効率よく洗浄する洗浄装置とこれを用いた水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、工業の発達や人口の増加により水資源の有効利用が求められている。そのためには、工業排水などの廃水の再利用が非常に重要である。これらを達成するためには水の浄化、すなわち水中から他の物質を分離することが必要である。
【0003】
液体からほかの物質を分離する方法としては、各種の方法が知られており、たとえば膜分離、遠心分離、活性炭吸着、オゾン処理、凝集、さらには所定の吸着材による浮遊物質の除去などが挙げられる。このような方法によって、水に含まれるリンや窒素などの環境に影響の大きい化学物質を除去したり、水中に分散した油類、クレイなどを除去したりすることができる。
【0004】
これらのうち、膜分離はもっとも一般的に使用されている方法のひとつであるが、水中に分散した油類や微小な浮遊物(SS)を除去する場合には膜の細孔にこれらが詰まり易く、膜の寿命が短くなりやすいという問題がある。このため、水中の油や微小浮遊物を除去するには膜分離は適切でない場合が多い。これを解決するために、例えば特許文献1には、難ろ過性物質を含有する排水に常磁性体(磁性体)を加えて撹拌したあと、ろ過することにより難脱水性物質を除去する方法が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1に記載の磁性体含有ろ過助剤を洗浄して再利用する場合、特許文献1に記載の磁気フィルターで分離をすると、磁気フィルターで回収された磁性体含有ろ過助剤が積層するため、この層が浮遊物をろ過する形になり磁性体含有粒子と浮遊物の分離効率が落ちるという問題がある。
【0006】
また、特許文献2に記載されている従来の磁性体含有ろ過材の洗浄方法では、磁石はろ過助剤の流出防止にのみ使用されていて、特許文献1に記載の磁気フィルターによる分離と同様に磁性体と浮遊物の分離効率が落ちるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平09-327611号公報
【特許文献2】特開2000-5512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、磁性体含有ろ過助剤と浮遊物を効率良く分離することができる洗浄装置およびこれを用いた水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態に係る洗浄装置は、ろ過された原水中の異物と磁性体含有ろ過助剤をともに含む分散溶液が導入される洗浄容器と、前記洗浄容器内で回転駆動され、遠心力の作用により前記分散溶液を撹拌する撹拌羽根と、前記撹拌羽根の回転半径よりも内側の領域に配置され、磁場を生成し、生成磁場の電磁誘導の力を前記分散溶液中の磁性体含有ろ過助剤に作用させ、電磁誘導の作用により前記撹拌羽根の回転半径よりも内側の領域に向かって移動する磁性体含有ろ過助剤を、遠心力の作用により前記撹拌羽根の回転半径よりも外側の領域に向かって移動する異物から分離させる磁場生成手段と、を具備することを特徴とする。
【0010】
本発明の実施形態に係る水処理方法は、(a)磁性体含有ろ過助剤と分散媒とを混合して懸濁液を調整し、(b)前記懸濁液をろ過器のフィルターに通水するか又はフィルターに塗布し、前記フィルター上に前記磁性体含有ろ過助剤が堆積して成る粒子堆積層を形成し、(c)前記フィルター上の粒子堆積層に対して原水を通水し、該原水中に含まれる異物をろ過し、(d)前記ろ過器内に分散媒を供給し、前記フィルター上から前記粒子堆積層を脱離させて分散媒中に溶解させ、前記磁性体含有ろ過助剤と異物が分散媒中に分散する分散溶液を生成し、(e)前記分散溶液を前記ろ過器から撹拌羽根および磁場生成手段を有する洗浄装置へ移送し、前記洗浄装置内で前記撹拌羽根を回転させて前記分散溶液に遠心力を付与するとともに、前記撹拌羽根の回転半径よりも内側の領域において前記磁場生成手段により磁場を生成し、生成磁場の電磁誘導により生じる力を前記分散溶液中の磁性体含有ろ過助剤に作用させ、電磁誘導の作用により前記撹拌羽根の回転半径よりも内側の領域に向かって移動する前記磁性体含有ろ過助剤を、遠心力の作用により前記撹拌羽根の回転半径よりも外側の領域に向かって移動する前記異物から分離し、(f)分離した磁性体含有ろ過助剤を回収して再利用する、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の実施形態に係る水処理方法は、(i)原水に磁性体含有ろ過助剤を添加・混合して混合液を調整し、(ii)前記混合液をろ過器のフィルターに通水し、前記原水中に含まれる異物とともに前記磁性体含有ろ過助剤をろ過し、(iii)前記ろ過器内に分散媒を供給し、前記フィルター上からろ過物を脱離させて分散媒中に溶解させ、前記磁性体含有ろ過助剤と異物が分散媒中に分散する分散溶液を生成し、(iv)前記分散溶液を前記ろ過器から撹拌羽根および磁場生成手段を有する洗浄装置へ移送し、前記洗浄装置内で前記撹拌羽根を回転させて前記分散溶液に遠心力を付与するとともに、前記撹拌羽根の回転半径よりも内側の領域において前記磁場生成手段により磁場を生成し、生成磁場の電磁誘導により生じる力を前記分散溶液中の磁性体含有ろ過助剤に作用させ、電磁誘導の作用により前記撹拌羽根の回転半径よりも内側の領域に向かって移動する前記磁性体含有ろ過助剤を、遠心力の作用により前記撹拌羽根の回転半径よりも外側の領域に向かって移動する前記異物から分離し、(v)分離した磁性体含有ろ過助剤を回収して再利用することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態の水処理方法に用いられる装置の概要を示す構成ブロック図。
【図2】実施形態の洗浄装置を示す内部透視図。
【図3】図2の洗浄装置内における水の流動を模式的に示す内部透視図。
【図4】他の実施形態の洗浄装置を示す内部透視図。
【図5】他の実施形態の洗浄装置を含む水処理装置を示す要部模式図。
【図6】比較例の洗浄装置を示す内部透視図。
【図7】実施形態の水処理方法を示すフローチャート。
【図8】他の実施形態の水処理方法を示すフローチャート。
【図9】(a)は磁性体含有ろ過助剤の拡大断面模式図、(b)は表面にカップリング剤が被覆された磁性体粒子の拡大断面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための種々の形態を説明する。
【0014】
(1)本実施形態の洗浄装置は、ろ過された原水中の異物と磁性体含有ろ過助剤をともに含む分散溶液が導入される洗浄容器と、前記洗浄容器内で回転駆動され、遠心力の作用により前記分散溶液を撹拌する撹拌羽根と、前記撹拌羽根の回転半径よりも内側の領域に配置され、磁場を生成し、生成磁場の電磁誘導の力を前記分散溶液中の磁性体含有ろ過助剤に作用させ、電磁誘導の作用により前記撹拌羽根の回転半径よりも内側の領域に向かって移動する磁性体含有ろ過助剤を、遠心力の作用により前記撹拌羽根の回転半径よりも外側の領域に向かって移動する異物から分離させる磁場生成手段と、を具備することを特徴とする。
【0015】
本実施形態によれば、磁性体含有ろ過助剤と異物との比重差による遠心分離作用に加えて、さらに磁場生成手段で生成した磁場により電磁誘導された力を磁性体含有ろ過助剤中の磁性体に作用させ、電磁誘導の作用により磁性体含有ろ過助剤を撹拌羽根の回転半径よりも内側の領域(回転中心領域)に向かって移動させ、遠心力の作用により撹拌羽根の回転半径よりも外側の領域(周縁領域)に向かって移動する異物から磁性体含有ろ過助剤が分離される。
【0016】
(2)上記(1)の装置において、磁場生成手段は、撹拌羽根に取り付けられた電磁石からなることが好ましい。
【0017】
本実施形態では、磁場生成手段に電磁石を用い、電磁石を撹拌羽根に取り付けることで、撹拌羽根の回転により生じる水流に対して直に磁場が印加され、それにより引き起こされる電磁誘導の力をろ過助剤中の磁性体に最大限作用させることができるため、磁性体含有ろ過助剤を撹拌羽根の回転中心に向けて移動させ、遠心力の作用により撹拌羽根の回転中心から遠ざかる異物(SS)から磁性体含有ろ過助剤を高効率で分離することができる。なお、磁場生成手段として電磁石の他に永久磁石を用いることも可能であるが、電源をON/OFF制御するだけで吸着した磁性体含有ろ過助剤を容易に脱離させることができる点で電磁石のほうが永久磁石よりも利便性に優れている。また、電磁石はS極とN極の両磁極が少なくとも1組揃っていればよいが、複数組の磁極を有する電磁石を用いることも可能である。
【0018】
(3)上記(1)の装置において、撹拌羽根が洗浄容器に着脱可能に取り付けられ、さらに、磁場生成手段により分離された磁性体含有ろ過助剤を回収するための回収容器と、分離された磁性体含有ろ過助剤を前記磁場生成手段とともに洗浄容器から回収容器まで移動させる移動機構と、をさらに有することが好ましい。
【0019】
本実施形態では、異物の入った洗浄容器とは別に回収容器を設けることにより、分離した磁性体含有ろ過助剤を実質的に異物が存在しない回収容器内において高回収率で回収することができる。
【0020】
(4)本実施形態の水処理方法は、(a)磁性体含有ろ過助剤と分散媒とを混合して懸濁液を調整し、(b)前記懸濁液をろ過器のフィルターに通水するか又はフィルターに塗布し、前記フィルター上に前記磁性体含有ろ過助剤が堆積して成る粒子堆積層を形成し、(c)前記フィルター上の粒子堆積層に対して原水を通水し、該原水中に含まれる異物をろ過し、(d)前記ろ過器内に分散媒を供給し、前記フィルター上から前記粒子堆積層を脱離させて分散媒中に溶解させ、前記磁性体含有ろ過助剤と異物が分散媒中に分散する分散溶液を生成し、(e)前記分散溶液を前記ろ過器から撹拌羽根および磁場生成手段を有する洗浄装置へ移送し、前記洗浄装置内で前記撹拌羽根を回転させて前記分散溶液に遠心力を付与するとともに、前記撹拌羽根の回転半径よりも内側の領域において前記磁場生成手段により磁場を生成し、生成磁場の電磁誘導により生じる力を前記分散溶液中の磁性体含有ろ過助剤に作用させ、電磁誘導の作用により前記撹拌羽根の回転半径よりも内側の領域に向かって移動する前記磁性体含有ろ過助剤を、遠心力の作用により前記撹拌羽根の回転半径よりも外側の領域に向かって移動する前記異物から分離し、(f)分離した磁性体含有ろ過助剤を回収して再利用する、ことを特徴とする。
【0021】
本実施形態では、プレコート法により原水からろ過した異物と磁性体含有ろ過助剤を分離するにあたり、磁性体含有ろ過助剤と異物との比重差による遠心分離作用に加えて、さらに磁場生成手段で生成した磁場により電磁誘導された力を磁性体含有ろ過助剤中の磁性体に作用させ、電磁誘導の作用により磁性体含有ろ過助剤を撹拌羽根の回転半径よりも内側の回転中心領域に向かって移動させている。これにより、遠心力の作用で撹拌羽根の回転半径よりも外側の周縁領域に向かって移動する異物から磁性体含有ろ過助剤が有効に分離される。なお、分散媒として水を用い、工程(c)での原水の通水は加圧下で行うことが好ましい。
【0022】
(5)本実施形態の水処理方法は、(i)原水に磁性体含有ろ過助剤を添加・混合して混合液を調整し、(ii)前記混合液をろ過器のフィルターに通水し、前記原水中に含まれる異物とともに前記磁性体含有ろ過助剤をろ過し、(iii)前記ろ過器内に分散媒を供給し、前記フィルター上からろ過物を脱離させて分散媒中に溶解させ、前記磁性体含有ろ過助剤と異物が分散媒中に分散する分散溶液を生成し、(iv)前記分散溶液を前記ろ過器から撹拌羽根および磁場生成手段を有する洗浄装置へ移送し、前記洗浄装置内で前記撹拌羽根を回転させて前記分散溶液に遠心力を付与するとともに、前記撹拌羽根の回転半径よりも内側の領域において前記磁場生成手段により磁場を生成し、生成磁場の電磁誘導により生じる力を前記分散溶液中の磁性体含有ろ過助剤に作用させ、電磁誘導の作用により前記撹拌羽根の回転半径よりも内側の領域に向かって移動する前記磁性体含有ろ過助剤を、遠心力の作用により前記撹拌羽根の回転半径よりも外側の領域に向かって移動する前記異物から分離し、(v)分離した磁性体含有ろ過助剤を回収して再利用する、ことを特徴とする。
【0023】
本実施形態では、ボディーフィード法により原水からろ過した異物と磁性体含有ろ過助剤を分離するにあたり、磁性体含有ろ過助剤と異物との比重差による遠心分離作用に加えて、さらに磁場生成手段で生成した磁場により電磁誘導された力を磁性体含有ろ過助剤中の磁性体に作用させ、電磁誘導の作用により磁性体含有ろ過助剤を撹拌羽根の回転半径よりも内側の回転中心領域に向かって移動させている。これにより、遠心力の作用で撹拌羽根の回転半径よりも外側の周縁領域に向かって移動する異物から磁性体含有ろ過助剤が有効に分離される。
【0024】
(6)上記(4)または(5)のいずれかの方法において、磁性体含有ろ過助剤が磁性体粒子を凝集した細孔を有する多孔質体からなることが好ましい。
【0025】
本実施形態によれば、磁性体含有ろ過助剤に多孔質体を用いるため、ろ過助剤の表面に凹凸ができ、この表面凹凸により水中に浮遊する異物を捕捉しやすくなる。また、油分と固形分(SS)とが共存する排水を処理する場合においては、油分が細孔を通って多孔質体の内部に浸透して、油分と固形分(SS)とを有効に分離することも可能である。
【0026】
(7)上記(4)または(5)のいずれかの方法において、磁性体含有ろ過助剤が磁性体粒子を親油性に優れるバインダー樹脂で凝集させた多孔質体からなることが好ましい。
【0027】
本実施形態によれば、親油性に優れるバインダー樹脂を用いて磁性体を凝集させているため、その凝集体は排水中に浮遊する異物(SS)をより効果的及び効率的に吸着除去することができる。親油性に優れるバインダー樹脂として、スチレン樹脂、水添加スチレン樹脂、ブタジエン樹脂、イソプレン樹脂、アクリロニトリル樹脂、シクロオレフィン樹脂、アルキルアクリレート樹脂、フェノール樹脂及びアルキルメタアクリレート樹脂のうちのいずれか1種または2種以上を用いることができる。
【0028】
磁性体粒子として、室温領域で強磁性を示す材料、例えば鉄および鉄系合金、磁鉄鉱、チタン鉄鉱、磁硫鉄鉱、マグネシアフェライト、コバルトフェライト、ニッケルフェライト、バリウムフェライトのうちのいずれか1種又は2種以上の微粒子を用いることができる。これらのうちフェライト系化合物は、水中での安定性に優れているので、下水や工場排水などからリンや窒素を含む有機高分子化合物を回収するような操作において好適に用いることができる。特に、磁鉄鉱であるマグネタイト(Fe)は安価であるだけでなく、水中でも磁性体として安定し、元素としても安全であるため、水処理に使用しやすい好適な材料である。なお、所望の通水量が得られるようにするために、磁性体粒子には平均粒子径が0.5〜100μmの範囲の微粒子を用いることが好ましい。
【0029】
(8)上記(4)または(5)のいずれかの方法において、磁性体含有ろ過助剤が磁性体粒子をトルアルコキシシランの縮合物で凝集させた多孔質体からなることが好ましい。
【0030】
本実施形態では、トルアルコキシシランの縮合物を、磁性体粒子を凝集させて凝集体の形態に維持するバインダーとして用いることができる。トルアルコキシシランを原料としてトルアルコキシシラン化合物を合成し、合成されたトルアルコキシシラン化合物を縮合させると、特異な構造とサイズを有する縮合化合物が得られる。例えば水酸基を有するトルアルコキシシラン化合物を縮合反応させると、縮合物として籠状構造をもつシルセスキオキサン微粒子が得られる。このような特異な構造とサイズの微粒子を磁性体粒子の表面に塗布(被覆)すると、磁性体粒子同士が近接して凝集しやすくなる。
【0031】
以下、添付の図面を参照して本発明を実施するための種々の好ましい形態を説明する。
【0032】
(第1の実施形態)
先ず図1を参照して洗浄装置を備えた水処理システムの全体の概要を説明する。
【0033】
本実施形態の水処理システム1は、工業排水を浄化処理するために工場内に設けられた水処理設備の一例であり、主ラインL1,L2,L6に沿って上流側から順に原水槽2、混合槽3、ろ過器4、処理水槽7を有し、また循環ラインL2,L3,L4,L5に沿って混合槽3、ろ過器4、洗浄装置5、回収装置6を有し、さらにろ過器4に洗浄水を供給する洗浄水供給装置9および洗浄装置5から排出される浮遊物濃縮液(異物含有排水)を一時的に貯留する浮遊物濃縮液貯留槽8を有している。
【0034】
原水槽2は、浮遊物として油分や粘土粒子などの異物を含む工業排水(原水)を一時的に貯留しておき、図示しない開閉弁を定期的にあるいは必要時に随時開けて供給ポンプP1の駆動によりラインL1を介して混合槽3に原水を供給するようになっている。
【0035】
混合槽3は、図示しないモータにより回転駆動される回転スクリュウ31を有し、原水槽2からの原水と回収装置6からの磁性体含有ろ過助剤とが混合・撹拌され、所望のろ過助剤を含むスラリーまたは溶液が調整されるようになっている。
【0036】
ろ過器4は、所定孔径のろ布からなるフィルター41を内部に有し、フィルター41の前室は循環ラインL3を介して洗浄装置5に接続され、フィルター41の後室は処理水排出ラインL6を介して処理水槽7に接続されている。ろ過器4においてフィルター41の前室には洗浄水供給ラインL8を介して洗浄水供給装置9が接続されている。
【0037】
洗浄装置5については後述する。
【0038】
ろ過助剤回収装置6は、スラリー状または粒子状の磁性体含有ろ過助剤を混合槽3に供給する一方で、洗浄装置5により洗浄処理された磁性体含有ろ過助剤を回収するものである。ろ過助剤回収装置6には、濃度調整手段として図示しない水供給タンクが接続されるとともに、図示しない加熱ヒータが取り付けられている。すなわち、回収した磁性体含有ろ過助剤の濃度が高いときは水供給タンクから給水されて回収物の濃度を低下させ、回収した磁性体含有ろ過助剤の濃度が低いときは加熱ヒータで回収物を加熱して回収物の濃度を上昇させるようになっている。
【0039】
処理水槽7は、フィルター41を透過した処理水をろ過器4から排出ラインL6を介して供給され、供給された処理水を一時的に貯留しておき、必要に応じて必要な設備や装置に処理水を送るようになっている。
【0040】
浮遊物濃縮液貯留槽8は、固形分(SS)などの異物を高濃度に含む浮遊物濃縮液を一時的に貯留し、これを廃液として図示しない廃液処理装置に定期的に又は随時送るようになっている。
【0041】
洗浄水供給装置9は、ろ過器4のフィルター41の前室に分散媒としての洗浄水を供給し、フィルター41上に堆積したろ過堆積物(プレコート層などを含む)をフィルター41から脱離させ分解・分散させ、磁性体含有ろ過助剤および異物が分散する分散溶液を生成させるものである。この生成された分散溶液は、循環ラインL3を通って洗浄装置5に送られ、洗浄装置5において処理されるようになっている。
【0042】
次に図2を参照して洗浄装置5を詳しく説明する。
【0043】
洗浄装置5は、円筒状の洗浄容器56、モータ51、回転駆動軸52、撹拌羽根55、1対の電磁石53,54を有している。本実施形態では2本の棒状電磁石53,54を撹拌羽根55の回転半径より内側の領域で、かつ撹拌羽根55の少なくとも上端から下端までの間に配置している。すなわち、電磁石53,54の両磁極が撹拌羽根55の回転半径より内側の領域(回転中心領域)2rに位置するように図示しない支持部材により支持されている。本実施形態の洗浄装置5では、電磁石53,54の両磁極を撹拌羽根55と回転駆動軸52との間に配置している。なお、電磁石53,54の両磁極には図示しない電源が接続され、電磁石の電源は図示しない制御器によってオンオフ制御されるようになっている。
【0044】
図3を参照して洗浄容器56の内部に生じる水流について説明する。
【0045】
撹拌羽根55の回転半径より外側の領域(周縁領域)に押し出された水は、図中にて矢印で示すように下方領域を循環する水流17と上方領域を循環する水流18とに分かれ、各水流17,18が撹拌羽根55の上端と下端から円筒状の空間2r(回転半径領域)の内部に戻り、撹拌羽根55により再び外側の領域に押し出される。このとき電磁石53,54に通電して回転半径領域2rに磁場を発生させているので、水流17,18に随伴されている磁性体含有ろ過助剤が電磁誘導の作用により電磁石53,54の両磁極に吸着される。これにより磁性体含有ろ過助剤が異物から分離され回収される。また、撹拌羽根55による遠心力の向き(外側の向き)と反対の向き(内側の向き)に電磁力を作用させることができるため、ろ過助剤と浮遊異物(SS)とが効率よく分離される。このように磁性体含有ろ過助剤と異物との比重差による遠心分離作用に加えて、さらに電磁石53,54で生成した磁場により電磁誘導された力を磁性体含有ろ過助剤中の磁性体に作用させ、電磁誘導の作用により磁性体含有ろ過助剤を撹拌羽根55の回転半径よりも内側の領域2r(回転中心領域)に向かって移動させ、遠心力の作用により撹拌羽根の回転半径よりも外側の領域(周縁領域)に向かって移動する異物から磁性体含有ろ過助剤が分離される。そして、分離後の洗浄液は、排水管57を使用して洗浄容器56の外部に排出され、洗浄が完了する。
【0046】
洗浄する液体は、どのような液体でも構わないが、例えば水、アルカリ溶液、酸溶液、界面活性剤溶液、アルコール溶液、アルコール単体、有機溶剤などが挙げられる。特に本発明では、物理的な力で分離するため、ろ過助剤と浮遊物(SS)のゼータ電位を変えるアルカリ溶液や酸溶液が好ましい。ろ過助剤と浮遊物(SS)が剥がれやすいものでは、水でおこなうのがよい。
【0047】
(第2の実施形態)
次に図4を参照して第2の実施形態の洗浄装置について説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と重複する部分の説明は省略する。
【0048】
本実施形態の洗浄装置5Aでは、撹拌羽根55の内側の末端に2本の電磁石53a,54aを直に取り付けている。これらの磁極に電気を供給するために、撹拌軸52の内部に電線が備え付けられており、撹拌軸52の上部に電気供給用の給電ブラシ58を取り付けている。上記第1の実施形態と同様に、洗浄容器56内に、非磁性体の懸濁成分を含有する磁性体含有ろ過助剤を用いて撹拌すると、撹拌羽根55の回転により水中の懸濁成分とろ過助剤に洗浄容器56の中心から外側へ向かう遠心力が働く。この時に電磁石53a,54aを作動させると、磁性体を含有するろ過助剤のみが中心方向への磁力を受けるため、遠心力が働いている浮遊物(SS)とろ過助剤を分離することができる。
【0049】
本実施形態の洗浄装置5Aが上記第1の実施形態の洗浄装置5よりも優れている点は、ろ過助剤を回転する撹拌羽根55に固定していることにより、水とのせん断力により異物(SS)をろ過助剤から効率よく引き剥がすことができ、この剥がされた異物(SS)は撹拌羽根55の回転で遠心力が働き、速やかにろ過助剤と分離することができる。
【0050】
また、本実施形態では、電磁石53a,54aが撹拌羽根55の内側端部(内側の辺縁)に沿って取り付けられているため、ここが水流の通り道となり、ろ過助剤の回収効率に優れている。
【0051】
(第3の実施形態)
図5を参照して第3の実施形態の洗浄装置について説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と重複する部分の説明は省略する。
【0052】
本実施形態の洗浄装置5Bでは、撹拌羽根55が洗浄容器56に対して着脱可能に取り付けられ、さらに電磁石53,54により分離された磁性体含有ろ過助剤を回収するための回収容器61と、分離された磁性体含有ろ過助剤を電磁石53,54とともに洗浄容器56から回収装置6の回収容器61まで移動させる可動台19とを備えている。移動機構としての可動台19は、洗浄容器56と回収容器61を載せた状態で図中に矢印で示したように垂直方向および水平方向にそれぞれ移動できるようになっている。
【0053】
本実施形態では、磁性体含有ろ過助剤と異物(SS)の分離をおこなったあと、電磁石53,54をON動作のままの状態で可動台19を下降させ、ろ過助剤を吸着保持した電磁石53,54を洗浄容器56から外部に出し、次いで可動台19を水平移動させて電磁石53,54の直下に回収容器61を位置させ、次いで可動台19を上昇させ、ろ過助剤を吸着保持した電磁石53,54を回収容器61のなかに位置させる。そして、電磁石53,54への通電をOFFにすることにより、ろ過助剤を回収容器61に落下させて回収することができる。なお、図3において撹拌機と洗浄容器の分離に洗浄容器を固定している台を動かしたが、撹拌機を可動できるようにして移動させても良い。
【0054】
本実施形態によれば、洗浄液を代えなくてもろ過助剤を洗浄し続けることができる。ろ過助剤により回収された懸濁物を濃縮して回収したい場合に有用である。
【0055】
(水処理方法)
次に実施形態の水処理方法を説明する。なお、本実施形態の水処理方法として2種類が存在するので、以下それぞれの方法について説明する。
【0056】
(第1の排水処理方法)
図7を参照して第1の水処理方法としてのプレコート法を説明する。
【0057】
最初に、磁性体含有ろ過助剤と分散媒とを混合し、ろ過助剤を含む懸濁液を調整する(工程S1)。分散媒は主に水を用いるが、適宜その他の分散媒を用いることができる。懸濁液中のろ過助剤濃度は以下の操作によってプレコート層、すなわち粒子堆積層が形成できれば特に問わないが、例えば10000〜200000mg/L程度に調整する。
【0058】
次いで、懸濁液をろ過器4のろ布41に通水し、懸濁液中のろ過助剤をろ別して、フィルター上に残留させ、ろ過助剤が凝集してなる粒子堆積層層(プレコート層)を形成する(工程S2)。なお、通水は加圧下で行われる。
【0059】
また、粒子堆積層層は、上述のように外力の作用によって形成及び保持されるので、上述したフィルタリングは、例えば、上記ろ布41を所定の容器の容器口を塞ぐようにして配置し、このように配置したろ布41上にろ過助剤が残留し、配列及び積層されるようにする。この場合、上記容器の壁面からの外力及び上方に位置するろ過助剤の重さに起因した下方に向けての外力(重力)によって、上記粒子堆積層は形成及び保持されることになる。
【0060】
なお、粒子堆積層、すなわちプレコート層の厚さは処理する液の濃度で変わってくるが、概ね1〜100mm程度である。
【0061】
次いで、上述のようにして形成した粒子堆積層(プレコート層)に対して排水を通水して排水中の除去対象成分である異物(SS)を除去する(工程S3)。通水は主に加圧下で行われる。
【0062】
このとき、異物(SS)は、粒子堆積層(プレコート層)、具体的には粒子堆積層を構成する磁性体含有ろ過助剤の表面に吸着することによって除去される。
【0063】
このようにして排水中の浮遊物(SS)を除去した後は、粒子堆積層を分散媒中に分散させ、粒子堆積層をろ過助剤に分解するとともに、ろ過助剤を洗浄する(工程S4)。この洗浄は図1〜図4に示したような遠心力と磁力との組合せによりろ過助剤と異物が分離される機構を有する装置でおこなう。
【0064】
次いで、洗浄後のろ過助剤を磁気分離を用いて回収する(工程S5)。具体的には、ろ過助剤を電磁石で固定したあと、洗浄容器の排水口から洗浄液を排出する方法や、電磁石でろ過助剤を固定したあとに他の容器に移動させて回収する方法などが挙げられる。
【0065】
(第2の排水処理方法)
図8を参照して第2の排水処理方法としてのボディーフィード法を説明する。
【0066】
ボディーフィード法は、排水中の浮遊物(SS)濃度が高い場合に有効である。
【0067】
本方法においても、最初にろ過助剤と分散媒とを混合し懸濁液を調整するが、この場合に使用する分散媒は、被処理水(排水)とする。すなわち、本方法では排水中に直接ろ過助剤を投入して排水から懸濁液を調整する(工程K1)。懸濁液中の1次凝集体濃度は以下の操作によって粒子堆積層が形成できれば特に問わないが、例えば10000〜200000mg/L程度に調整する。
【0068】
次いで、懸濁液(排水)をろ過器のフィルター41に通水し、懸濁液(排水)中のろ過助剤をろ別して、フィルター41上に残留させ、ろ過助剤が凝集してなる粒子堆積層を形成する(工程K2)。なお、通水は加圧下で行われる。
【0069】
また、2次凝集体は、上述のように外力の作用によって形成及び保持されるので、上述したフィルタリングは、例えば、上記フィルターを所定の容器の容器口を塞ぐようにして配置し、このように配置したフィルター上にろ過助剤が残留し、配列及び積層されるようにする。この場合、上記容器の壁面からの外力及び上方に位置するろ過助剤の重さに起因した下方に向けての外力(重力)によって、上記粒子堆積層は形成及び保持されることになる。
【0070】
次いで、上述のようにして形成した粒子堆積層に対して排水(懸濁液)を通水して排水(懸濁液)中の除去対象成分である異物(SS)を除去する。通水は主に加圧下で行われる。なお、上述したように、異物(SS)は、粒子堆積層、具体的には粒子堆積層を構成するろ過助剤の表面に吸着することによって除去される。
【0071】
このようにして排水中の異物(SS)を除去した後は、粒子堆積層を分散媒中に分散させ、粒子堆積層をろ過助剤に分解するとともに、ろ過助剤を洗浄する(工程K3)。この洗浄は図1〜図4に示されたような遠心力と磁力との組合せによりろ過助剤と異物が分離される機構を有する装置でおこなう。
【0072】
次いで、洗浄後のろ過助剤を磁気分離を用いて回収する(工程K4)。具体的には、ろ過助剤を電磁石で固定したあと、洗浄容器の排水口から洗浄液を排出する方法や、電磁石でろ過助剤を固定したあとに他の容器に移動させて回収する方法などが挙げられる。
【0073】
(ろ過助剤)
本実施形態におけるろ過助剤は、磁性体粒子を含有する粒子(凝集体)である必要がある。例えば図9に示すように、磁性体含有ろ過助剤13は、複数の磁性体粒子11をバインダー12で凝集させた凝集体からなるものである。また、例えば図10に示すように、磁性体含有ろ過助剤に含まれる磁性体粒子11をカップリング剤14で被覆するようにしてもよい。
【0074】
ろ過助剤13は磁性体粒子単体であってもよいし、この磁性体粒子が何らかの物質に分散していてもよいし、また磁性体粒子がバインダー等で凝集されていてもよい。磁性体粒子としては、上記水処理方法の磁気分離によるろ過助剤の回収を容易化するために、室温領域において強磁性を示す物質であることが望ましい。しかしながら、本実施形態においてはこれらに限定されるものではなく、強磁性物質を全般的に用いることができ、例えば鉄、および鉄を含む合金、磁鉄鉱、チタン鉄鉱、磁硫鉄鉱、マグネシアフェライト、コバルトフェライト、ニッケルフェライト、バリウムフェライトなどが挙げられる。
【0075】
フェライト系化合物は、水中での安定性に優れているので、本実施形態のように、廃液から有機高分子を回収するような操作においては好適に用いることができる。特に、磁鉄鉱であるマグネタイト(Fe)は安価であるだけでなく、水中でも磁性体として安定し、元素としても安全であるため、水処理に使用しやすいので好ましい。
【0076】
なお、磁性体コア粒子の大きさ・形状は特に限定されるものではないが、好ましくは通水量が得られる粒子径0.5〜100μmのものを用いるのが良い。ここで、平均粒子径は、レーザー回折法により測定されたものである。具体的には、株式会社島津製作所製のSALD−DS21型測定装置(商品名)などにより測定することができる。なお、磁性体粒子に対しては、必要に応じてCuメッキ、Niメッキなど、通常のメッキ処理を施すことができる。また、表面の腐食防止などの観点から表面処理することもできる。
【0077】
1次凝集体をバインダーを用いて形成する場合、前記バインダーとしては、スチレン樹脂、水添加スチレン樹脂、ブタジエン樹脂、イソプレン樹脂、アクリロニトリル樹脂、シクロオレフィン樹脂、アルキルアクリレート樹脂、フェノール樹脂及びアルキルメタアクリレート樹脂等を用いることが好ましい。これらの樹脂は親油性に優れため、1次凝集体は、排水中の浮遊物(SS)をより効果的及び効率的に吸着除去することができる。また、上記同様の理由から、前記バインダーは、カップリング剤の縮合物とすることができる。この場合、磁性体粒子の表面をカップリング剤で処理する。処理は、乾式及び湿式のいずれであってもよい。
【0078】
カップリング剤としては、トリアルコキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、へキシルトリメトキシシラン、ドデカトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等のアルキルシラン、フェニルトリメトキシシラン、ナフタレントリメトキシシラン等の芳香族シラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシメトキシシラン等のビニルシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン、およびγ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシランからなる群より選択される1種又は2種以上のケイ素系化合物を原料とし、選択したケイ素系化合物を縮合反応させて得られた縮合物を挙げることができる。その他、チタネート,アルミキレート,ジルコアルミネート等を出発原料とする化合物もカップリング剤として用いることができる。
【0079】
また、磁性体コア粒子の融解で得られる凝集体を用いることもできる。例えばフェライトの原料を有機系のバインダーを用いて仮に凝集させたあと、高温に熱してフェライトを合成する際に一部融解するのを利用して得ることができる。このようなフェライトとしては、例えばCu-Zn系、Li-MG-Ca系、Mn-Mg-Sr系などが挙げられる。
【0080】
粒子が凝集したポーラス体をろ過助剤として使用すると、ろ過助剤表面に凹凸ができるため、浮遊物(SS)を捕捉しやすくなる。また、上述したように、ろ過助剤表面を親油性にすることにより、親油性の浮遊物との吸着を促進する。また、油分と浮遊物(SS)が共存する排水の処理においては、油分がポーラス体の内部に浸透して、油分とSSを分離することも可能である。
【実施例】
【0081】
以下、実施例により詳細に説明する。
【0082】
(水処理装置の作製と試験の準備)
原水をポンプP1で混合槽3に供給する。同時に磁性体含有ろ過助剤を回収装置の容器61から連続的に供給し、混合槽3内で原水と混合し、ろ過助剤のスラリーを作製する。作製されたスラリーは、スラリー供給ポンプP2の駆動により加圧下でろ過器4に送られて、異物(SS)の除去された処理水と、異物(SS)が吸着したろ過助剤とに分離される。ろ過器のろ布41は、通気度60cc/cm2・sのものを使用した。その後、このろ過器4に洗浄水を入れて、ろ過助剤のケーキを洗浄装置5へ運搬し、洗浄装置5で異物(SS)とろ過助剤とに分離する。洗浄水に異物(SS)が濃縮されて装置5より排出され、洗浄されたろ過助剤はろ過助剤回収装置6の回収容器61へ輸送され、混合槽3に送られて再利用される。
【0083】
原水(排水)としては、平均粒子径37μmのセルロース(日本製紙ケミカル社(株)製,KCフロックW-100GK(商品名))を400mg/L、鉱油((株)紅椿工業所社製,B-111(商品名))を1000mg/Lそれぞれ水道水に混合したものを使用した。この被処理水をそのままろ過器4へ投入したところ、30秒で詰まりが発生し、処理水を得ることができなかった。
【0084】
(実施例1)
洗浄装置として、図1に示す構造の洗浄装置5を用いた。また、ろ過助剤としては、平均粒子径2μmの不定形マグネタイトを用いた。ポンプP1を用いて原水を混合槽3に連続的に供給し、原水に対して50000mg/Lの割合でろ過助剤を混合した。その後スラリー供給ポンプP2を用いてろ過器4を通したところ、セルロースと鉱油が99%以上除去された処理水を得た。このろ過器4に洗浄水を通してろ過助剤を洗浄装置5に輸送した。撹拌羽根55で3分間混合した後、電磁石53,54を作動させてさらに3分間混合を続けると、電磁石53,54に全量のろ過助剤が回収され、浮遊物(SS)の濃縮液が得られた。この浮遊物濃縮液を排水管57からラインL7を介して貯留槽8に排出し、電磁石53,54と撹拌棒52を取り外し、ろ過助剤回収容器61内で磁場を解除し、ろ過助剤を回収した。浮遊物の濃縮液を分析したところ、水中から回収した浮遊物の約95%が分離された。
【0085】
(比較例)
比較例として図6に示す洗浄装置5Cを用いて上記実施形態と実質的に同じ分散溶液を洗浄処理した。比較例の洗浄装置5Cは、実施形態1の洗浄装置5における電磁石の配置とは異なり、電磁石59a,59bを撹拌羽根55の回転半径の外側領域(周縁領域)に配置している。
【0086】
洗浄装置以外は実施例1と同様に試験を行い、異物(SS)の付着したろ過助剤を洗浄装置に供給した。撹拌羽根55で3分混合後、電磁石59a,59bを作動させてさらに3分混合を続けると、電磁石59a,59bに全量のろ過助剤が回収され、浮遊物の濃縮液が得られた。ただし、回収されたろ過助剤には白いセルロースの混入が確認された。浮遊物の濃縮液を分析したところ、水中から回収した浮遊物の60%しか分離できなかった。
【0087】
以上のことから、本発明のように撹拌羽根の内部に電磁石をおくことにより、遠心力と磁力の方向が逆になるため、磁性体含有ろ過助剤と非磁性体である異物(SS)との分離が促進されることが確認できた。
【0088】
(実施例2)
洗浄装置として、図4に示す構造の洗浄装置5Aを用いたこと以外は実施例1と同様に試験を行った。撹拌羽根55で3分間混合した後、電磁石53a,54aを作動させてさらに3分混合を続けると、電磁石53a,54aに全量のろ過助剤が回収され、異物(SS)の濃縮液が得られた。濃縮液を排水管57より排出して、電磁石53a,54aと撹拌棒を取り外し、ろ過助剤回収容器61内で磁場を解除し、ろ過助剤を回収した。異物の濃縮液を分析したところ、水中から回収した浮遊物の約97%が分離された。
【0089】
(実施例3)
洗浄装置として、図1に示す構造の洗浄装置5を用い、ろ過助剤として、アクリル樹脂をバインダーとして凝集させた多孔質体を用いたこと以外は実施例1と同様に試験をおこなった。多孔質体の製造方法は、まずポリメチルメタクリレート138重量部を2400mlのアセトン中に溶解させて溶液とし、その溶液中に平均粒子径2μmのマグネタイト粒子1500重量部を分散させて溶液とした。この溶液をミニスプレードライヤー(柴田科学株式会社製、B−290型)を用いて噴霧し、球状に凝集した平均2次粒子径が60μmの磁性体の凝集体(ポーラス体)を作製した。
【0090】
撹拌羽根55で3分間混合した後、電磁石53,54を作動させてさらに3分間混合を続けると、電磁石53,54に全量のろ過助剤が回収され、異物(SS)の濃縮液が得られた。濃縮液を排水管57より排出して、電磁石53,54と撹拌棒を取り外し、ろ過助剤回収容器61内で磁場を解除し、ろ過助剤を回収した。浮遊物の濃縮液を分析したところ、水中から回収した浮遊物の約90%が分離された。また、回収したろ過助剤100gに対し、ヘキサン300mlを加えて抽出したところ、初期投入量の約80%のミシン油を回収した。
【0091】
(実施例4)
洗浄装置として、図1に示す構造の洗浄装置5を用い、ろ過助剤として、シランカップリング材の凝集物をバインダーとして凝集させた多孔質体を用いたこと以外は実施例1と同様に試験をおこなった。ポーラス体の製造方法は、フェニルトリエトキシシラン100重量部を3000mlの水と10重量部の酢酸とに溶解させ、その溶液中に平均粒子径2μmのマグネタイト粒子1500重量部を分散させて溶液とした。この溶液をミニスプレードライヤー(柴田科学株式会社製、B−290型)を用いて噴霧し、球状に凝集した平均2次粒子径が40μmの磁性体の凝集体を作製した。
【0092】
撹拌羽根55で3分間混合した後、電磁石53,54を作動させてさらに3分間混合を続けると、電磁石53,54に全量のろ過助剤が回収され、異物(SS)の濃縮液が得られた。濃縮液を排水管57より排出して、電磁石53,54と撹拌棒を取り外し、ろ過助剤回収容器61内で磁場を解除し、ろ過助剤を回収した。異物の濃縮液を分析したところ、水中から回収した異物の約90%が分離された。また、回収したろ過助剤100gに対し、ヘキサン300mlを加えて抽出したところ、初期投入量の約70%のミシン油を回収した。
【0093】
以上のことから、多孔質体を用いた場合は、鉱油が多孔質体内部にしみこむため、異物(SS)と鉱油の分離も可能になることを確認した。
【0094】
本発明によれば、洗浄タンクと洗浄タンク内を撹拌する撹拌羽根を有する洗浄装置において、撹拌羽根の回転半径より中心部分に電磁石を有することにより、磁力と遠心力の作用により磁性体含有ろ過助剤と浮遊物を簡単に分離できる洗浄装置と、これを用いた水処理方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0095】
1…水処理システム、2…原水槽、3…混合槽、
4…ろ過器、41…フィルター(ろ布)、
5,5A,5B,5C…洗浄装置、
51…モータ、52…回転駆動軸(撹拌棒)、
53,54…電磁石(磁場生成手段)、55…撹拌羽根、
56…洗浄容器、57…排水管、58…給電ブラシ、
6…回収装置、61…回収容器、
7…処理水貯留槽、8…浮遊物濃縮液貯留槽、9…洗浄水供給装置、
11…磁性体粒子、12…バインダー、13…ろ過助剤、14…カップリング剤、
17,18…水流、19…可動台(移動機構)、
P1,P2…ポンプ、L1〜L8…ライン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろ過された原水中の異物と磁性体含有ろ過助剤をともに含む分散溶液が導入される洗浄容器と、
前記洗浄容器内で回転駆動され、遠心力の作用により前記分散溶液を撹拌する撹拌羽根と、
前記撹拌羽根の回転半径よりも内側の領域に配置され、磁場を生成し、生成磁場の電磁誘導の力を前記分散溶液中の磁性体含有ろ過助剤に作用させ、電磁誘導の作用により前記撹拌羽根の回転半径よりも内側の領域に向かって移動する磁性体含有ろ過助剤を、遠心力の作用により前記撹拌羽根の回転半径よりも外側の領域に向かって移動する異物から分離させる磁場生成手段と、
を具備することを特徴とする磁性体含有ろ過助剤の洗浄装置。
【請求項2】
前記磁場生成手段は、前記撹拌羽根に取り付けられた電磁石からなることを特徴とする請求項1記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記撹拌羽根が前記洗浄容器に着脱可能に取り付けられ、
さらに、前記磁場生成手段により分離された磁性体含有ろ過助剤を回収するための回収容器と、
分離された磁性体含有ろ過助剤を前記磁場生成手段とともに前記洗浄容器から前記回収容器まで移動させる移動機構と、
を有することを特徴とする請求項1記載の磁性体含有ろ過助剤の洗浄装置。
【請求項4】
(a)磁性体含有ろ過助剤と分散媒とを混合して懸濁液を調整し、
(b)前記懸濁液をろ過器のフィルターに通水するか又はフィルターに塗布し、前記フィルター上に前記磁性体含有ろ過助剤が堆積して成る粒子堆積層を形成し、
(c)前記フィルター上の粒子堆積層に対して原水を通水し、該原水中に含まれる異物をろ過し、
(d)前記ろ過器内に分散媒を供給し、前記フィルター上から前記粒子堆積層を脱離させて分散媒中に溶解させ、前記磁性体含有ろ過助剤と異物が分散媒中に分散する分散溶液を生成し、
(e)前記分散溶液を前記ろ過器から撹拌羽根および磁場生成手段を有する洗浄装置へ移送し、前記洗浄装置内で前記撹拌羽根を回転させて前記分散溶液に遠心力を付与するとともに、前記撹拌羽根の回転半径よりも内側の領域において前記磁場生成手段により磁場を生成し、生成磁場の電磁誘導により生じる力を前記分散溶液中の磁性体含有ろ過助剤に作用させ、電磁誘導の作用により前記撹拌羽根の回転半径よりも内側の領域に向かって移動する前記磁性体含有ろ過助剤を、遠心力の作用により前記撹拌羽根の回転半径よりも外側の領域に向かって移動する前記異物から分離し、
(f)分離した磁性体含有ろ過助剤を回収して再利用する、
ことを特徴とする水処理方法。
【請求項5】
(i)原水に磁性体含有ろ過助剤を添加・混合して混合液を調整し、
(ii)前記混合液をろ過器のフィルターに通水し、前記原水中に含まれる異物とともに前記磁性体含有ろ過助剤をろ過し、
(iii)前記ろ過器内に分散媒を供給し、前記フィルター上からろ過物を脱離させて分散媒中に溶解させ、前記磁性体含有ろ過助剤と異物が分散媒中に分散する分散溶液を生成し、
(iv)前記分散溶液を前記ろ過器から撹拌羽根および磁場生成手段を有する洗浄装置へ移送し、前記洗浄装置内で前記撹拌羽根を回転させて前記分散溶液に遠心力を付与するとともに、前記撹拌羽根の回転半径よりも内側の領域において前記磁場生成手段により磁場を生成し、生成磁場の電磁誘導により生じる力を前記分散溶液中の磁性体含有ろ過助剤に作用させ、電磁誘導の作用により前記撹拌羽根の回転半径よりも内側の領域に向かって移動する前記磁性体含有ろ過助剤を、遠心力の作用により前記撹拌羽根の回転半径よりも外側の領域に向かって移動する前記異物から分離し、
(v)分離した磁性体含有ろ過助剤を回収して再利用する、
ことを特徴とする水処理方法。
【請求項6】
前記磁性体含有ろ過助剤が、磁性体粒子を凝集した細孔を有する多孔質体からなることを特徴とする請求項4または5のいずれか1項記載の水処理方法。
【請求項7】
前記磁性体含有ろ過助剤が、磁性体粒子を親油性に優れるバインダー樹脂で凝集させた多孔質体からなることを特徴とする請求項4または5のいずれか1項記載の水処理方法。
【請求項8】
前記磁性体含有ろ過助剤が、磁性体粒子をトルアルコキシシランの縮合物で凝集させた多孔質体からなることを特徴とする請求項4または5のいずれか1項記載の水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−187506(P2012−187506A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52811(P2011−52811)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】