説明

磁性材料及びコイル部品

【課題】透磁率の向上と絶縁抵抗の向上を両立する磁性材料及びコイル部品の提供。
【解決手段】Fe−Si−M系軟磁性合金(但し、MはFeより酸化し易い金属元素である。)からなる複数の金属粒子を集積してなる磁性材料であって、この磁性材料1についてのエネルギー分散型X線分光機能付き電子顕微鏡観察像は酸素原子濃度に関する高濃度相50と低濃度相51とを有し、高濃度相50は磁性材料1の全域にわたって連続的に繋がっているマトリクスを形成し、低濃度相51は高濃度相50が形成するマトリクス中に離散的に存在する、磁性材料1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコイル・インダクタ等において主に磁心として用いることができる磁性材料およびコイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯機器等に使用される電源用インダクタは、小型化や薄型化、直流抵抗の低減とともに、大電流化動作(直流重畳特性の向上)が求められる。このため、磁性材料としては、高透磁率、高飽和磁束密度(Bs)の材料の使用が望まれる。磁性体材料として、従来、透磁率の高いNiZn系のフェライト材料が主に使用されてきた。このフェライト材料はBsの大きさに限界があり、直流重畳特性に課題があった。この解決策としてBsがNiZn系フェライトよりも大きいFe−Si等の金属磁性材料をコア材とする方法が提案されている。Fe−Si等の金属磁性材料は抵抗率が低いため、インダクタ向けのコアとして使用する場合は渦電流損失を抑える必要がある。具体的には、金属磁性材料を数μm程度の粒子状にし、さらに粒子を樹脂等の絶縁材料でコーティングして渦電流を粒子内部にとどめる手法がある。例えば、特許文献1には金属磁性体粉末と熱硬化性樹脂とを含む複合磁性体の発明が開示されている。また、特許文献2には非酸化雰囲気中で焼鈍された金属磁性材料粉末と所定量の絶縁性結着剤とを混合してなる複合磁性材料の発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−305108号公報
【特許文献2】特開2008−195970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の手法では絶縁材料のコーティングによって粒子間の磁気的な結合が損なわれ、透磁率がバルク金属材料と比較して大幅に低下する。これを防ぐために、樹脂と複合化した金属磁性粒子からなるコアに熱処理を実施し、粒子表面に酸化物を形成して絶縁性を確保すると同時に、粒子同士を部分的に焼結させて磁気的な結合を与え、透磁率を向上させる方法が提案されてきた。しかしこの方法では、電源インダクタに要求される小型化と直流抵抗の低減の要求を満たすのに十分な透磁率が得られず、金属磁性コアの透磁率をさらに向上する必要が生じていた。
【0005】
これらのことを考慮し、本発明は、高透磁率と高抵抗とを高い水準で両立させる磁性材料及びコイル部品の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意研究の結果、以下の本発明を完成した。
本発明の磁性材料は、Fe−Si−M系軟磁性合金(但し、MはFeより酸化し易い金属元素である。)からなる複数の金属粒子を集積してなる磁性材料である。この磁性材料の断面についてのエネルギー分散型X線分光機能付き電子顕微鏡観察像は酸素原子濃度に関する高濃度相と低濃度相とを有し、高濃度相は磁性材料の全域にわたって連続的に繋がっているマトリクスを形成する。低濃度相は、高濃度相が形成するマトリクス中に離散的に存在する。
【0007】
別途、好適には、前記高濃度相は、前記金属粒子と、前記金属粒子の表面に形成された前記軟磁性合金の酸化物からなる酸化被膜と、隣接する金属粒子表面に形成された酸化被膜を介しての結合部とを有し、前記低濃度相は、前記金属粒子と、隣接する金属粒子どうしの結合部とを有する。
【0008】
本発明によれば、上述の磁性材料と、前記磁性材料の内部または表面に形成されたコイルと、を備えるコイル部品も提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高透磁率、高絶縁抵抗を両立する磁性材料が提供される。より詳細には、酸素原子濃度に関する低濃度相では、金属粒子同士の接点は、熱処理によって粒子同士が焼結を起こし、粒子間の磁気的な結合が得られ、反磁界係数が低減された結果、透磁率の向上が得られる。他方、酸素原子濃度に関する高濃度相では、絶縁性が担保される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の磁性材料のEDS機能付き電子顕微鏡観察における模式図断面図である。
【図2】本発明の磁性材料の微細構造を模式的に表す断面図である。
【図3】未熱処理成形体の微細構造の模式断面図である。
【図4】本発明による磁性材料の一例の外観を示す側面図である。
【図5】本発明のコイル部品の一例の一部を示す透視した側面図である。
【図6】図5のコイル部品の内部構造を示す縦断面図である。
【図7】積層インダクタの外観斜視図である。
【図8】図7のS11−S11線に沿う拡大断面図である。
【図9】図7に示した部品本体の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を適宜参照しながら本発明を詳述する。但し、本発明は図示された態様に限定されるわけでなく、また、図面においては発明の特徴的な部分を強調して表現することがあるので、図面各部において縮尺の正確性は必ずしも担保されていない。
本発明によれば、磁性材料は所定の粒子が所定の結合様式で集積されてなる粒子成形体からなる。
本発明において、磁性材料はコイル・インダクタ等の磁性部品における磁路の役割を担う物品であり、典型的にはコイルにおける磁心などの形態をとる。
【0012】
本発明において、磁性材料は、微視的には、もともとは独立していた多数の金属粒子どうしが集積してなる集合体として把握される。個々の金属粒子の多くはその周囲の少なくとも一部、好ましくは概ね全体にわたって酸化被膜が形成されているため、磁性材料には酸素原子も存在する。
【0013】
個々の金属粒子は特定の軟磁性合金から主として構成される。本発明では、金属粒子11はFe−Si−M系軟磁性合金からなる。ここで、MはFeより酸化し易い金属元素であり、典型的には、Cr(クロム)、Al(アルミニウム)、Ti(チタン)などが挙げられ、好ましくは、CrまたはAlである。
【0014】
軟磁性合金がFe−Cr−Si系合金である場合におけるSiの含有率は、好ましくは0.5〜7.0wt%であり、より好ましくは、2.0〜5.0wt%である。Siの含有量が多ければ高抵抗・高透磁率という点で好ましく、Siの含有量が少なければ成形性が良好であり、これらを勘案して上記好適範囲が提案される。
【0015】
軟磁性合金がFe−Cr−Si系合金である場合におけるクロムの含有率は、好ましくは2.0〜15wt%であり、より好ましくは、3.0〜6.0wt%である。クロムの存在は、熱処理時に不動態を形成して過剰な酸化を抑制するとともに強度および絶縁抵抗を発現する点で好ましく、一方、磁気特性の向上の観点からはクロムが少ないことが好ましく、これらを勘案して上記好適範囲が提案される。
【0016】
軟磁性合金がFe−Si−Al系合金である場合におけるSiの含有率は、好ましくは1.5〜12wt%である。Siの含有量が多ければ高抵抗・高透磁率という点で好ましく、Siの含有量が少なければ成形性が良好であり、これらを勘案して上記好適範囲が提案される。
【0017】
軟磁性合金がFe−Si−Al系合金である場合におけるアルミニウムの含有率は、好ましくは2.0〜8wt%である。CrとAlの違いは以下のとおりである。
【0018】
なお、軟磁性合金における各金属成分の上記好適含有率については、合金成分の全量を100wt%であるとして記述している。換言すると、上記好適含有量の計算においては酸化被膜の組成は除外している。
【0019】
軟磁性合金がFe−Si−M系合金である場合において、SiおよびM以外の残部は不可避不純物を除いて、鉄であることが好ましい。Fe、SiおよびM以外に含まれていてもよい金属としては、マグネシウム、カルシウム、チタン、マンガン、コバルト、ニッケル、銅などが挙げられ、非金属としてはリン、硫黄、カーボンなどが挙げられる。
【0020】
磁性材料における各々の金属粒子を構成する合金については、例えば、磁性材料の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影し、その化学組成をエネルギー分散型X線分光(EDS)におけるZAF法で算出することができる。
【0021】
図1は本発明の磁性材料についての上述のEDS機能付き電子顕微鏡観察における模式図断面図である。ここで、EDS機能によって酸素原子の分布をマッピングする。本発明によれば、磁性材料1における酸素原子濃度に関して、高濃度相50と低濃度相51とが存在する。
【0022】
高濃度相50と低濃度相51との認識は以下のように行う。
まず、電子顕微鏡観察像において軟磁性合金粒子の平均粒径を求める。次に、平均粒径の3倍四方の濃度分析領域で、EDS機能の面分析による酸素濃度分析を行う。具体的には、酸素についてEDS元素分析で128回以上の積算を行ない、得られたデータを、画像処理ソフトを用いて256諧調の強度に分け、10以上のピクセルを酸素検出点であると認識する。酸素検出点が濃度分析領域全体のピクセル数の、15%以上の場合、その濃度分析領域全体は高濃度相であり、15%以下の場合、その濃度分析領域全体は低濃度相であると認識する。一つの磁性材料において、この濃度分析領域を400個以上測定して、それぞれの濃度分析領域が高濃度相であるか低濃度相であるかをマッピングする。
【0023】
上記において、軟磁性合金粒子の平均粒子径は、電子顕微鏡像を取得して画像解析に供して得られるd50値である。具体的には、電子顕微鏡像の中から平均的な大きさの粒子を300個以上選び出して、それらの電子顕微鏡像における面積を測定し、粒子が球体であると仮定して平均粒子径を算出する。粒子を選び出す方法としては、例えば次のような方法が挙げられる。前記の電子顕微鏡像内に存在する粒子が300個未満の場合は、該電子顕微鏡像内の粒子をすべてサンプリングし、これを複数個所行って300個以上選び出す。前記の電子顕微鏡像内に300個以上粒子が存在する場合は、該電子顕微鏡像内に所定間隔で直線を引いて、その直線上にかかった粒子を全部サンプリングして、300個以上選び出す。
【0024】
本発明によれば、図1のように酸素原子に関して濃度が濃い領域と低い領域とが比較的明瞭に認識できる。磁性材料1において、高濃度相50は磁性材料1の全域にわたって連続的に繋がっているマトリクスを形成する。具体的には、EDS機能付き電子顕微鏡観察像において、一辺が平均粒径の60倍である正方形を包含する領域において酸素原子濃度が高い領域が連続的に繋がっていることにより、高濃度相50からなるマトリクスの存在を確認することができる。高濃度相50は金属粒子の周囲に形成される酸化被膜の量が相対的に多いことを意味する。
【0025】
本発明によれば、磁性材料1において、低濃度相51は離散的に存在する。低濃度相は、周囲に酸化被膜が存在しないか少量のみ存在する金属粒子が集積している領域に相当する。上述した高濃度相50からなるマトリクスを海に喩えると、海に浮かぶ島の如く、低濃度相51が存在する。上述のEDS機能付き電子顕微鏡観察像において、高濃度相50の面積を100とするとき、低濃度相51の面積は好ましくは10〜3200である。高濃度相50と低濃度相51との面積比率については、後述する、原料となる金属粒子へのバインダの被覆の程度などにより制御することができる。
【0026】
酸素原子に関する高濃度相50がマトリクスを形成することにより磁性材料1全体としての絶縁性が確保され、前記マトリクス中に離散的に低濃度相51が存在することにより、絶縁抵抗の低下を抑えつつ、金属粒子同士を部分的に焼結させて磁気的な結合を与え、透磁率の向上に寄与している。
【0027】
以下、本発明の磁性材料のより微視的な構造の非限定的な例を示す。
図2は本発明の磁性材料の微細構造を模式的に表す断面図である。本発明において、磁性材料1を構成するために集積している個々の金属粒子11の多くはその周囲の少なくとも一部、好ましくは概ね全体にわたって酸化被膜12が形成されていて、この酸化被膜12により磁性材料1の絶縁性が確保される。隣接する金属粒子11どうしは、主として、それぞれの金属粒子11の周囲にある酸化被膜12どうしが結合することにより、一定の形状を有する磁性材料1を構成している。酸化被膜12が多く形成した金属粒子11が集まった領域が上述の高濃度相50を構成する。
【0028】
本発明によれば、酸化被膜12どうしの結合部22に加えて、部分的には、隣接する金属粒子11の金属部分どうしの結合部21が存在してもよい。図2において太先の丸印で囲った部分が金属部分どうしの結合部21の存在を示す。金属部分どうしの結合部21によって結合する金属粒子11群が上述の低濃度相51を構成する。酸化被膜12が存在しないか少ない金属粒子11が集まり、そこでは隣接する金属粒子11が金属部分どうしで結合することにより、酸素原子に関して低濃度である領域が離散的に形成して低濃度相51を構成する。
【0029】
本発明では、硬化性樹脂からなるマトリクスは実質的に存在しないことが好ましい。
【0030】
本発明の磁性材料は、上述の所定の軟磁性合金からなる金属粒子を成形して熱処理を施すことにより製造することができる。その際に、好適には、原料となる金属粒子(以下、「原料粒子」とも表記する。)そのものが有していた酸化被膜のみならず、原料の金属粒子においては金属の形態であった部分の一部が酸化して酸化被膜12を形成するように熱処理が施される。このように、本発明においては、酸化被膜12は金属粒子11を構成する合金粒子の酸化物からなり、主として金属粒子11の表面部分が酸化してなるものである。好適態様では、金属粒子11が酸化してなる酸化物以外の酸化物、例えば、シリカやリン酸化合物等は、本発明の磁性材料には含まれない。
【0031】
磁性材料1を構成する個々の金属粒子11にはその周囲の少なくとも一部に酸化被膜12が形成されている。酸化被膜12は磁性材料1を形成する前の原料粒子の段階で形成されていてもよいし、原料粒子の段階では酸化被膜が存在しないか極めて少なく、成形過程において酸化被膜を生成させてもよい。酸化被膜12の存在は、走査型電子顕微鏡(SEM)による3000倍程度の撮影像においてコントラスト(明度)の違いとして認識することができる。酸化被膜12の存在により磁性材料全体としての絶縁性が担保される。
【0032】
好適には、酸化被膜12には、鉄元素よりも金属M元素の方が、モル換算において、より多く含まれる。このような構成の酸化被膜12を得るためには、磁性材料を得るための原料粒子に鉄の酸化物がなるべく少なく含まれるか鉄の酸化物を極力含まれないようにして、磁性材料1を得る過程において加熱処理などにより合金の表面部分を酸化させることなどが挙げられる。このような処理により、鉄よりも酸化しやすい金属Mが選択的に酸化されて、結果として、酸化被膜12に含まれる金属Mのモル比率が相対的に鉄よりも大きくなる。酸化被膜12において鉄元素よりも金属M元素のほうが多く含まれることにより、合金粒子の過剰な酸化を抑制するという利点がある。
【0033】
磁性材料1における酸化被膜12の化学組成を測定する方法は以下のとおりである。まず、磁性材料1を破断するなどしてその断面を露出させる。ついで、イオンミリング等により平滑面を出し走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影し、酸化被膜12をエネルギー分散型X線分析(EDS)におけるZAF法で化学組成を算出する。
【0034】
酸化被膜12における金属Mの含有量は鉄1モルに対して、好ましくは1.0〜5.0モルであり、より好ましくは1.0〜2.5モルであり、さらに好ましくは1.0〜1.7モルである。前記含有量が多いと過剰な酸化の抑制という点で好ましく、一方、前記含有量が少ないと金属粒子間の焼結という点で好ましい。前記含有量を多くするためには、例えば、弱酸化雰囲気での熱処理をするなどの方法が挙げられ、逆に、前記含有量を多くするためには、例えば、強酸化雰囲気中での熱処理などの方法が挙げられる。
【0035】
酸化被膜12どうしの結合部22を生じさせるためには、例えば、磁性材料1の製造の際に酸素が存在する雰囲気下(例、空気中)で後述する所定の温度にて熱処理を加えることなどが挙げられる。
【0036】
好適態様によれば、磁性材料1において、酸化被膜12どうしの結合部22のみならず、金属粒子11どうしの結合部21が存在する。上述の酸化被膜12どうしの結合部22の場合と同様に、例えば、約3000倍に拡大したSEM観察像などにおいて、隣接する金属粒子11どうしが同一相を保ちつつ結合点を有することを視認することなどにより、金属粒子11どうしの結合部21の存在を明確に判断することができる。金属粒子11どうしの結合部21の存在により透磁率のさらなる向上が図られる。
【0037】
金属粒子11どうしの結合部21を生成させるためには、例えば、原料粒子として酸化被膜が少ない粒子を用いたり、磁性材料1を製造するための熱処理において温度や酸素分圧を後述するように調節したり、原料粒子から磁性材料1を得る際の成形密度を調節することなどが挙げられる。熱処理における温度については金属粒子11どうしが結合し、かつ、酸化物が生成しにくい程度を提案することができる。具体的な好適温度範囲については後述する。酸素分圧については、例えば、空気中における酸素分圧でもよく、酸素分圧が低いほど酸化物が生成しにくく、結果的に金属粒子11どうしの結合が生じやすい。
【0038】
本発明では、酸化被膜12の形成の制御方法の一例として、加熱前の金属粒子11への樹脂材料(バインダ)被覆の制御を挙げることができる。本発明者らの新知見によれば、バインダ被覆を施した金属粒子11(以下、「バインダ被覆粉」ともいう。)を加熱すると金属粒子11の周囲に酸化被膜12が多く形成しやすく、バインダ被覆を施さない金属粒子11(以下、「非被覆粉」ともいう。)を加熱すると酸化被膜12が少量のみ形成するかあるいは形成しないことを見出した。この新知見に基づき、バインダ被覆粉と非被覆粉との混合比率を制御することにより、磁性材料1における高濃度相50と低濃度相51の形態の制御に成功した。以下、本発明の磁性材料の製造方法を説明する。
【0039】
本発明の磁性材料は、所定の合金からなる金属粒子を成形することにより製造することができる。その際に、隣接する金属粒子どうしが主として酸化被膜を介して結合し、そして、好ましくは、酸化被膜を介さずに金属部分どうしが、部分的に、結合することにより全体として所望の形状の粒子成形体を得ることができる。
【0040】
本発明の磁性材料の製造において原料として用いる金属粒子(原料粒子)は、好適には、Fe−M−Si系合金、より好ましくはFe−Cr−Si系合金からなる粒子を用いる。原料粒子の合金組成は、最終的に得られる磁性材料における合金組成に反映される。よって、最終的に得ようとする磁性材料の合金組成に応じて、原料粒子の合金組成を適宜選択することができ、その好適な組成範囲は上述した磁性材料の好適な組成範囲と同じである。
【0041】
個々の原料粒子のサイズは最終的に得られる磁性材料における磁性材料1を構成する粒子のサイズと実質的に等しくなる。原料粒子のサイズとしては、透磁率と粒内渦電流損を考慮すると、d50が好ましくは2〜30μmであり、より好ましくは2〜20μmであり、d50のさらに好適な下限値は5μmである。原料粒子のd50はレーザー回折・散乱による測定装置により測定することができる。
【0042】
原料粒子は例えばアトマイズ法で製造される粒子である。上述のとおり、磁性材料1には酸化被膜12を介しての結合部22のみならず、金属粒子11どうしの結合部21も存在する。そのため、原料粒子には酸化被膜が存在してもよいが過剰には存在しない方がよい。アトマイズ法により製造される粒子は酸化被膜が比較的に少ない点で好ましい。原料粒子における合金からなるコアと酸化被膜との比率は以下のように定量化することができる。原料粒子をXPSで分析して、Feのピーク強度に着目し、Feが金属状態として存在するピーク(706.9eV)の積分値FeMetalと、Feが酸化物の状態として存在するピークの積分値FeOxideとを求め、FeMetal/(FeMetal+FeOxide)を算出することにより定量化する。ここで、FeOxideの算出においては、Fe(710.9eV)、FeO(709.6eV)およびFe(710.7eV)の三種の酸化物の結合エネルギーを中心とした正規分布の重ねあわせとして実測データと一致するようにフィッティングを行う。その結果、ピーク分離された積分面積の和としてFeOxideを算出する。熱処理時に合金どうしの結合部21を生じさせやすくすることによって結果として透磁率を高める観点からは、前記値は好ましくは0.2以上である。前記値の上限値は特に限定されず、製造のしやすさなどの観点から、例えば0.6などが挙げられ、好ましくは上限値は0.3である。前記値を上昇させる手段として、還元雰囲気での熱処理に供したり、酸による表面酸化層の除去などの化学処理等に供することなどが挙げられる。還元処理としては、例えば、窒素中に又はアルゴン中に25〜35%の水素を含む雰囲気下で750〜850℃、0.5〜1.5時間保持することなどが挙げられる。酸化処理としては、例えば、空気中で400〜600℃、0.5〜1.5時間保持することなどが挙げられる。
【0043】
上述したような原料粒子は合金粒子製造の公知の方法を採用してもよいし、例えば、エプソンアトミックス(株)社製PF20−F、日本アトマイズ加工(株)社製SFR−FeSiAlなどとして市販されているものを用いることもできる。市販品については上述のFeMetal/(FeMetal+FeOxide)の値について考慮されていない可能性が極めて高いので、原料粒子を選別したり、上述した熱処理や化学処理などの前処理を施すことも好ましい。
【0044】
原料粒子から成形体を得る方法については特に限定なく、磁性材料製造における公知の手段を適宜取り入れることができる。以下、典型的な製造方法として原料粒子を非加熱条件下で成形した後に加熱処理に供する方法を説明する。本発明ではこの製法に限定されない。
【0045】
原料粒子を非加熱条件下で成形する際には、バインダとして有機樹脂を加えることが好ましい。有機樹脂としては熱分解温度が500℃以下であるPVA樹脂、ブチラール樹脂、ビニル樹脂などからなるものを用いることが、熱処理後にバインダが残りにくくなる点で好ましい。成形の際には、公知の潤滑剤を加えてもよい。潤滑剤としては、有機酸塩などが挙げられ、具体的にはステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどが挙げられる。潤滑剤の量は原料粒子100重量部に対して好ましくは0〜1.5重量部であり、より好ましくは0.1〜1.0重量部であり、さらに好ましくは0.15〜0.45重量部であり、特に好ましくは0.15〜0.25重量部である。潤滑剤の量がゼロとは、潤滑剤を使用しないことを意味する。
【0046】
上述した、酸素原子に関する高濃度相50と低濃度相51との制御のために、バインダの添加について例えば以下のような制御を行うことが好ましい。バインダが被覆されていない原料粒子のうち、所定割合についてはバインダを被覆してバインダ被覆粉を製造し、残りについてはバインダを被覆せずにそのまま非被覆粉として用いる。バインダ被覆粉と非被覆粉との合計重量100wt%に対する非被覆粉の重量は好ましくは1〜90wt%であり、より好ましくは10〜50wt%である。前記範囲内である場合に、高濃度相50と低濃度相51とのバランスに優れ、本発明の効果がいっそう顕著になる。バインダ被覆粉の割合が多いほど高濃度相50が多く形成する傾向にあり、バインダ被覆粉の割合が少ないほど逆の傾向にある。
【0047】
原料粒子に対して任意的にバインダ及び/又は潤滑剤を加えて攪拌した後に、所望の形状に成形する。成形の際には例えば2〜20ton/cmの圧力をかけることなどや、成形温度を例えば20〜120℃にすることなどが挙げられる。図3は、バインダ被覆粉と非被覆粉とからなる未熱処理成形体の微細構造の模式断面図である。未熱処理成形体2はバインダ15が被覆された金属粒子11とバインダ15が被覆されていない金属粒子11とを含んでいる。太線の黒丸で示した領域16は非被覆粉どうしの接触箇所を示しており、この領域16を含む金属粒子11が所定程度集まったところが、熱処理後に低濃度領域51になる。
【0048】
熱処理の好ましい態様について説明する。
熱処理は酸化雰囲気下で行うことが好ましい。より具体的には、加熱中の酸素濃度は好ましくは1%以上であり、これにより、酸化被膜どうしの結合部22および金属どうしの結合部21が両方とも生成しやすくなる。酸素濃度の上限は特に定められるものではないが、製造コスト等を考慮して空気中の酸素濃度(約21%)を挙げることができる。加熱温度については、酸化被膜12を生成して酸化被膜12どうしの結合を生成させやすくする観点からは好ましくは600℃以上であり、酸化を適度に抑制して金属どうしの結合部21の存在を維持して透磁率を高める観点からは好ましくは900℃以下である。加熱温度はより好ましくは700〜800℃である。酸化被膜12どうしの結合部22および金属どうしの結合部21を両方とも生成させやすくする観点からは、加熱時間は好ましくは0.5〜3時間である。酸化被膜12を介した結合および金属粒子どうしの結合部21が生じるメカニズムは、例えば600℃程度より高温域における、いわゆるセラミックスの焼結と似たようなメカニズムであると考察される。すなわち、本発明者らの新知見によれば、この熱処理においては、(A)酸化被膜が十分に酸化雰囲気に接するとともに金属元素が金属粒子から随時供給されることにより酸化被膜自体が成長すること、ならびに、(B)隣接する酸化被膜どうしが直接接して酸化被膜を構成する物質が相互拡散すること、が重要である。よって、600℃以上の高温域において残存し得る熱硬化性樹脂やシリコーンなどは熱処理の際に実質的に存在しないことが好ましい。このとき、バインダ被覆粉においてはバインダが酸素の供給源となり、酸化被膜が多く形成することが本発明における新知見である。
【0049】
得られた磁性材料1には、その内部に空隙が存在する。この空隙の少なくとも一部に樹脂材料を充填してもよい。樹脂材料の充填に際しては、例えば、液体状態の樹脂材料や樹脂材料の溶液などといった、樹脂材料の液状物に磁性材料1を浸漬して製造系の圧力を下げたり、上述の樹脂材料の液状物を磁性材料1に塗布して表面近傍の空隙に染みこませるなどの手段が挙げられる。磁性材料1の空隙に樹脂材料を充填させることにより、強度の増加や吸湿性の抑制という利点があり、具体的には、高湿下において水分が磁性材料内に入りにくくなるため、絶縁抵抗が下がりにくくなる。樹脂材料としては、有機樹脂や、シリコーン樹脂などを特に限定なく挙げることができ、好ましくはシリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、シリケート系樹脂、ウレタン系樹脂、イミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂およびポリエチレン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる。
【0050】
本発明によれば、このような磁性材料1からなる磁性材料を種々の電子部品の構成要素として用いることができる。例えば、本発明の磁性材料をコアとして用いてその周囲に絶縁被覆導線を巻くことによりコイルを形成してもよい。あるいは、上述の原料粒子を含むグリーンシートを公知の方法で形成し、そこに所定パターンの導体ペーストを印刷等により形成した後に、印刷済みのグリーンシートを積層して加圧することにより成形し、次いで、上述の条件で熱処理を施すことで、粒子成形体からなる本発明の磁性材料の内部にコイルを形成してなるインダクタ(コイル部品)を得ることもできる。その他、本発明の磁性材料を用いて、その内部または表面にコイルを形成することによって種々のコイル部品を得ることができる。コイル部品は表面実装タイプやスルーホール実装タイプなど各種の実装形態のものであってよく、それら実装形態のコイル部品を構成する手段を含めて、磁性材料からコイル部品を得る手段については、電子部品の分野における公知の製造手法を適宜取り入れることができる。
【0051】
コイル部品の一例を示す。図4は、本発明による磁性材料の一例の外観を示す側面図である。図5は、コイル部品の一例の一部を示す透視した側面図である。図6は、図5のコイル部品の内部構造を示す縦断面図である。図4に示す磁性材料110は、巻線型チップインダクタのコイルを巻回するための磁心として用いられるものである。ドラム型の磁心111は、回路基板等の実装面に並行に配設されコイルを巻回するための板状の巻芯部111aと、巻芯部111aの互いに対向する端部にそれぞれ配設された一対の鍔部111bを備え、外観はドラム型を呈する。コイルの端部は、鍔部111bの表面に形成された外部導体膜114に電気的に接続されている。
【0052】
このコイル部品としての巻線型チップインダクタ120は、上述の磁心111と図示省略した一対の板状磁心112を有する。この磁心111および板状磁心112は本発明の磁性材料110からなる。板状磁心112は磁心111の両鍔部111b、111b間をそれぞれ連結する。磁心111の鍔部111bの実装面には一対の外部導体膜114がそれぞれ形成されている。また、磁心111の巻芯部111aには絶縁被覆導線からなるコイル115が巻回されて巻回部115aが形成されるとともに、両端部115bが鍔部111bの実装面の外部導体膜114にそれぞれ熱圧着接合されている。外部導体膜114は、磁性材料110の表面に形成された焼付導体層114aと、この焼付導体層114a上に積層形成されたNiメッキ層114b、およびSnメッキ層114cを備える。上述した板状磁心112は、樹脂系接着剤により上記磁心111の鍔部111b、111bに接着されている。外部導体膜114は、磁性材料110の表面に形成されており、外部導体膜114に磁心の端部が接続されている。外部導体膜114は、銀にガラスを添加したペーストを、所定の温度で磁性材料110へ焼き付けてなるものである。
【0053】
このコイル部品製造の際に、好ましくはコイル115の巻回に先立って、磁心111における磁性材料の空隙に樹脂材料が充填される。
【0054】
コイル部品の別の例として積層インダクタを挙げることができる。積層インダクタは、コイル導体の大部分が磁性体層の積層体の中に埋没している構造を有する。図7は、積層インダクタの外観斜視図である。図8は、図7のS11−S11線に沿う拡大断面図である。図9は、図7に示した部品本体の分解図である。この積層インダクタ210は、直方体形状の部品本体211と、該部品本体211の長さ方向の両端部に設けられた1対の外部端子214及び215とを有している。部品本体211は、図8に示したように、直方体形状の磁性体部212と、該磁性体部212によって覆われた螺旋状のコイル部213とを有しており、該コイル部213の一端は外部端子214に接続し他端は外部端子215に接続している。磁性体部212は、図9に示したように、計20層の磁性体層ML1〜ML6が一体化した構造を有している。コイル部213は、計5個のコイルセグメントCS1〜CS5と、該コイルセグメントCS1〜CS5を接続する計4個の中継セグメントIS1〜IS4とが、螺旋状に一体化した構造を有する。このコイル部213は、Ag粒子やCu粒子等の金属粉などを原料とする。典型的には、コイル導体は螺旋状に形成されたコイルであり、その他、渦巻き状のコイル、ミアンダ(蛇行)状の導線、あるいは直線状の導線等が挙げられる。
【0055】
4個のコイルセグメントCS1〜CS4はコ字状を成し、1個のコイルセグメントCS5は帯状を成している。最上位のコイルセグメントCS1は、外部端子214との接続に利用されるL字状の引出部分LS1を連続して有し、最下位のコイルセグメントCS5は、外部端子15との接続に利用されるL字状の引出部分LS2を連続して有している。各中継セグメントIS1〜IS4は磁性体層ML1〜ML4を貫通した柱状を成している。各外部端子214及び215は、部品本体211の長さ方向の各端面と該端面近傍の4側面に及んでいる。一方の外部端子214は最上位のコイルセグメントCS1の引出部分LS1の端縁と接続し、他方の外部端子215は最下位のコイルセグメントCS5の引出部分LS2の端縁と接続している。この各外部端子214及び215もAg粒子等の金属粉などを原料とする。
【0056】
このような積層インダクタの製造方法は従来技術を適宜参照することができ、一般的には、まず、ドクターブレードやダイコータ等の塗工機を用いて、予め用意した磁性体ペースト(スラリー)からグリーンシートを形成し、内部電極パターンを形成して、積層し、熱処理をして必要な外部電極を形成する工程を主として有する。
【実施例】
【0057】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に記載された態様に限定されるわけではない。
【0058】
(実施例1〜3)
(原料粒子)
アトマイズ法で製造されたCr4.5wt%、Si3.5wt%、残部Feの組成をもち、平均粒径d50が6μmである市販の合金粉末を原料粒子として用いた。この合金粉末の集合体表面をXPSで分析し、上述のFeMetal/(FeMetal+FeOxide)を算出したところ、0.25であった。
【0059】
この原料粒子100重量部を、熱分解温度が400℃であるアクリルバインダ1.5重量部とともに撹拌混合し、潤滑剤として0.5重量部のステアリン酸Znを添加してバインダ被覆粉を得た。他方、上述の原料粒子にバインダを被覆せず2tの圧力で成形し、粉砕したのちに篩で150μm以下に分級したものを非被覆粉とした。バインダ被覆粉と非被覆粉とを所定の割合で混合し、その後、12tの圧力で成形し、20.6%の酸素濃度である酸化雰囲気中750℃にて1時間熱処理を行い、磁性材料を得た。
【0060】
得られた磁性材料について、上述したEDS機能付き電子顕微鏡観察を行った。電子顕微鏡はHitachi S−4300、EDXは、EDAX Genesis Apex Energy Dispersive Spectroscopy (EDS) System、加速電圧は15kV、を適用した。
全実施例において、高濃度相が電子顕微鏡観察像の全域にわたって繋がっており、その高濃度相の中に低濃度相が離散的に存在していた。得られた磁性材料について透磁率と比抵抗を測定した。
【0061】
なお、磁性材料の断面のSEM観察(3000倍)により、全実施例について、軟磁性合金からなる金属粒子の表面に形成された酸化被膜を介しての結合部が高濃度相に存在し、酸化被膜が存在しない部分における金属粒子どうしの結合部が低濃度相に存在することを確認した。
【0062】
表1に製造条件と測定結果を示す。表1における非被覆粉量は、バインダ被覆粉と非被覆粉量との合計重量に対する非被覆粉量の割合である。
【0063】
【表1】

【0064】
(実施例4)
(コイル部品の製造)
上述の非被覆粉量が50wt%の例において、コイル部品としての巻線型チップインダクタを製造した。
図4は、この実施例で製造した磁性材料の外観を示す側面図である。図5は、この実施例で製造したコイル部品の一例の一部を示す透視した側面図である。図6は、図5のコイル部品の内部構造を示す縦断面図である。図4に示す磁性材料110は、巻線型チップインダクタのコイルを巻回するための磁心として用いられるものである。ドラム型の磁心111は、回路基板等の実装面に並行に配設されコイルを巻回するための板状の巻芯部111aと、巻芯部111aの互いに対向する端部にそれぞれ配設された一対の鍔部111bを備え、外観はドラム型を呈する。コイルの端部は、鍔部111bの表面に形成された外部導体膜114に電気的に接続されている。巻芯部111aのサイズは、幅1.0mm、高さ0.36mm、長さ1.4mmにした。鍔部111bのサイズは、幅1.6mm、高さ0.6mm、厚さ0.3mmにした。
【0065】
このコイル部品としての巻線型チップインダクタ120は、上述の磁心111と図示省略した一対の板状磁心112を有する。この磁心111および板状磁心112は実施例2のものと同じ原料粒子から実施例2と同様の条件で製造した磁性材料110からなる。板状磁心112は磁心111の両鍔部111b、111b間をそれぞれ連結する。板状磁心112のサイズは長さ2.0mm、幅0.5mm、厚さ0.2mmにした。磁心111の鍔部111bの実装面には一対の外部導体膜114がそれぞれ形成されている。また、磁心111の巻芯部111aには絶縁被覆導線からなるコイル115が巻回されて巻回部115aが形成されるとともに、両端部115bが鍔部111bの実装面の外部導体膜114にそれぞれ熱圧着接合されている。外部導体膜114は、磁性材料110の表面に形成された焼付導体層114aと、この焼付導体層114a上に積層形成されたNiメッキ層114b、およびSnメッキ層114cを備える。上述した板状磁心112は、樹脂系接着剤により上記磁心111の鍔部111b、111bに接着されている。外部導体膜114は、磁性材料110の表面に形成されており、外部導体膜114に磁心の端部が接続されている。外部導体膜114は、銀にガラスを添加したペーストを、所定の温度で磁性材料110へ焼き付けて形成した。磁性材料110の表面の外部導体膜114の焼付導体膜層114aの製造に際しては、具体的には、磁性材料110からなる磁心111の鍔部111bの実装面に、金属粒子とガラスフリットとを含む焼付型の電極材料ペースト(本実施例では焼付型Agペースト)を塗布し、大気中で熱処理を行うことで、磁性材料110の表面に直接電極材を焼結固着させた。このようにしてコイル部品としての巻線型チップインダクタを製造した。
【符号の説明】
【0066】
1:磁性材料、2:未熱処理成形体、11:金属粒子、12:酸化被膜、15:バインダ、16:非被覆粉どうしの接触箇所、21:金属粒子どうしの結合部、22:酸化被膜を介しての結合部、50:高濃度相、51:低濃度相、110:磁性材料、111、112:磁心、114:外部導体膜、115:コイル、210:積層インダクタ、211:部品本体、212:磁性体部、213:コイル部、214、215:外部端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Fe−Si−M系軟磁性合金(但し、MはFeより酸化し易い金属元素である。)からなる複数の金属粒子を集積してなる磁性材料であって、この磁性材料の断面についてのエネルギー分散型X線分光機能付き電子顕微鏡観察像は酸素原子濃度に関する高濃度相と低濃度相とを有し、高濃度相は磁性材料の全域にわたって連続的に繋がっているマトリクスを形成し、前記マトリクス中に低濃度相が離散的に存在する、磁性材料。
【請求項2】
前記高濃度相は、前記金属粒子と、前記金属粒子の表面に形成された前記軟磁性合金の酸化物からなる酸化被膜と、隣接する金属粒子表面に形成された酸化被膜を介しての結合部とを有し、
前記低濃度相は、前記金属粒子と、隣接する金属粒子どうしの結合部とを有する、
請求項1記載の磁性材料。
【請求項3】
請求項1又は2記載の磁性材料と、前記磁性材料の内部または表面に形成されたコイルと、を備えるコイル部品。

【図8】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−238842(P2012−238842A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−71974(P2012−71974)
【出願日】平成24年3月27日(2012.3.27)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】